JP3807041B2 - 汚染金属の除染方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染金属の除染方法に係り、特に鉄合金系廃棄物からウラン,超ウラン元素を除去するものである。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所、燃料製造施設、再処理施設などで発生する放射性廃棄物が、汚染金属材である場合には、発生量が多大になることもあいまって、貯蔵処分容積の減少要求が高くなっている。
【0003】
技術例1:特公平05−062319号公報では、放射性物質で汚染された金属廃棄物を全溶融状態として、比重差を利用してスラグ相と溶融金属相とに分離した後、溶融金属相を下方に設けたるつぼに鋳造して固化させ、しかる後に、帯域純化法でさらに除染率を高めるようにしている。
技術例2:特公平05−011597号公報では、錫及びシリコンとFe,Co,Niの親和力の差を利用して、FeからCo,Niを分離するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、技術例1では、物質の拡散と装置上の制約から大量処理に難点があり、技術例2では、ウラン系元素には適用できないという課題が残されている。
【0005】
本発明は、このような課題を有効に解決するとともに、以下の目的を達成しようとするものである。
▲1▼汚染金属からウラン系元素を除去する連続除染を可能にして、大量処理を実施すること。
▲2▼ウラン系元素の除去とともに、除染後の金属の再利用を容易にすること。
▲3▼溶湯の攪拌を抑制と方向性凝固の組み合わせによりスラグと金属の分離性を高めること。
▲4▼金属の溶解槽の減肉の発生を抑制すること。
▲5▼除染効率を向上させ、かつ除染作業性を高めること。
▲6▼産業界で運用実績が多い雰囲気誘導溶解炉等の応用を可能にするとともに、実用性を高めること。
【0006】
【課題を解決するための手段】
放射性物質で汚染された鉄合金系廃棄物を、不活性ガス雰囲気及びカーボン飽和の状態で溶解するとともに、その溶解時に、CaO,SiO2 等の造滓材を介在させることによりスラグを生成し、その際に、酸化材を投入することにより、ウラン,超ウラン元素の酸化物の生成を促進させて、鉄合金系廃棄物中に含まれるウラン,超ウラン元素の酸化物をスラグに捕捉させて取り込ませ、スラグを溶湯から除去することにより、ウラン,超ウラン元素を金属相から除去する除染を行なう技術を採用する。
鉄合金系廃棄物は、必要量のカーボンとともにカーボンるつぼの内部に装填され、高周波加熱コイルを使用して、カーボンるつぼとともに鉄合金系廃棄物を誘導加熱し、鉄合金系廃棄物を溶解状態に導く。
カーボンるつぼの内部の溶湯の温度は、高周波加熱量により調整される。
カーボンるつぼの内部に、酸化鉄または酸素ガス等の酸化材とともに造滓材を添加し、スラグを生成する。
カーボンるつぼの上部の加熱を継続しながら、下部への加熱量を減少して、溶湯をるつぼ下部より凝固させ、スラグの浮上を充分な状態とする技術が採用される。
スラグをカーボンるつぼから取り出して除去する際に、カーボンるつぼを傾動することによりスラグを流下させ、溶湯から分離する技術も採用される。
カーボンるつぼの加熱位置を切り替える手段として、高周波加熱コイルの一部のみに通電する技術や、高周波誘導加熱コイルを昇降させる技術が採用され、溶湯の上下方向の温度調整を行なうことにより、溶湯の下部を凝固させた状態や、溶湯の下部を溶融状態として、鉄合金等の金属相の流下を促進させる技術が採用される。
上記により流下させた金属は、そのままインゴットに鋳造する等の処理がなされる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る汚染金属の除染方法の一実施形態について、図1ないし図7を参照して説明する。
【0008】
〔汚染金属の投入〕
図1に示すように、放射性物質で汚染された鉄合金系廃棄物(汚染金属,TRU金属廃棄物)Xを、後述するように傾動可能なカーボンるつぼ(溶融槽)1の内部に投入するとともに、CaO,SiO2 等の造滓材(スラグ材)S、及びSiO2 ,酸化鉄等の酸化材や、必要に応じて、または造滓材SとともにカーボンCを添加した後、カーボンるつぼ1の回りに高周波加熱コイル(高周波加熱手段)2を配して、不活性ガス雰囲気に保持したまま、高周波加熱コイル2に例えば500〜3000Hz程度の高周波電流を通電することにより、カーボンるつぼ1及び鉄合金系廃棄物Xを誘導加熱する。
高周波により誘導加熱した場合には、表皮効果によって導電体であるカーボンるつぼ1に渦電流が流れ易く、鉄合金系廃棄物Xの温度上昇よりも、カーボンるつぼ1の温度上昇の方が顕著になる現象が起こり易くなるものの、鉄合金系廃棄物Xも誘導加熱され、かつ溶融後の溶湯の攪拌はセラミックスるつぼの場合よりも緩やかである。
【0009】
〔二相分離〕
図2に示すように、鉄合金系廃棄物Xを不活性ガス雰囲気で加熱して溶解させると、その溶解時に、造滓材S,カーボンC及び酸化材をそれぞれ投入し、カーボン飽和(カーボンリッチ)雰囲気としてスラグ化を行なうことにより、鉄合金系廃棄物X中に含まれるウラン,超ウラン元素(TRU金属)を選択的に酸化せしめて、溶湯が金属相Aとスラグ相Bとに分離するとともに、ウラン,超ウラン元素(TRU金属)酸化物がスラグ相Bに捕捉されて取り込まれた状態となる。
カーボンるつぼ1の内部における溶湯の温度は、高周波加熱コイル2の通電量(高周波加熱量)により調整される。
【0010】
〔カーボンるつぼの減肉抑制〕
カーボンるつぼ1の内部には、カーボン飽和の状態で鉄合金系廃棄物Xを溶解するようにしているために、ウラン,超ウラン元素が選択的に酸化される。一方、鉄合金系廃棄物X中のFeO,MnO等の他の酸化物は還元されるために、溶湯中等のカーボンが徐々に消費される。
したがって、カーボンるつぼ1の内部に、必要に応じて、カーボンを追加することにより、カーボンるつぼ1がカーボンの酸化に基づいて、減肉状態となる現象の発生を抑制することが行なわれる。
【0011】
〔金属凝固〕
カーボンるつぼ1及びその内部の溶湯を全体的に誘導加熱すると、磁束の一部が溶湯に交差することにより、磁気攪拌作用が生じるため、微細なスラグ粒は十分に浮上できずに、溶湯中に懸濁状態で残ってしまうことが考えられる。
そこで、カーボンるつぼ1の上部部分の加熱を継続しながら、カーボンるつぼ1の下部への加熱量を徐々に減少する方法等により、金属相Aの下部温度が低くなるように設定し、金属相Aを下部より上方に向かって凝固させる。
カーボンるつぼ1の上部部分を主として加熱する方法としては、図3に示すように、高周波加熱コイル2を上方に移動させる技術が適用される。
【0012】
〔スラグ除去〕
溶湯が75〜85%凝固した時点で、図4に示すように、カーボンるつぼ1を傾動することにより、溶融状態のスラグ相B及びスラグ粒混在となっている溶湯の上部部分を、収納容器3に流下させて排出する。
スラグ相B及びスラグ粒を溶湯から流下させることにより、ウラン,超ウラン元素(TRU金属)を金属相Aから除去し、金属相Aの除染を行なうことができる。
なお、スラグ及びスラグ粒混在金属は、貯蔵または処理場へ移送されて、隔離,保管または再処理される。
【0013】
〔金属相の再溶解〕
傾動させたカーボンるつぼ1を、正立させた元の状態に戻すとともに、図5に示すように、高周波加熱コイル2を再びカーボンるつぼ1の回りに配して、凝固状態の金属相Aを加熱することにより再溶解させる。
【0014】
〔金属相の取り出し〕
金属相Aの溶融状態を保持したまま、図6に示すように、カーボンるつぼ1の底部から、またはカーボンるつぼ1を再度傾動させることにより、鉄合金等の金属相Aを流出させて、前述のウラン,超ウラン元素(TRU金属)の酸化物の除去によって除染された状態となった溶融金属を、例えば鋳型に流し込んで固化処理する。
金属相Aの取り出し後、新たな鉄合金系廃棄物Xを再投入して溶解させる工程等が繰り返される。
また、鋳造により形成されたインゴットは、そのまま保管または除染された鉄合金等の金属材として再利用可能である。
【0015】
〔検討例〕
金属等の酸化物の標準生成エネルギーについて検討すると、図7に示すように、前述のウラン(U),超ウラン元素(Pu,Sr等のTRU金属)の酸化物の標準生成エネルギーは、カーボン飽和雰囲気におけるFeOやCO,CO2 と比較して、非常に大きいために、カーボン共存状態で容易に酸化物が生成される。その結果、スラグに簡単に取り込まれて、ウラン及び超ウラン元素を含むスラグ相Bと、ウラン及び超ウラン元素が除かれた金属相Aとに比較的容易に分離させることができる。
なお、CO,CO2 は、溶湯が形成される温度雰囲気でガス化して取り除かれる。
【0016】
〔他の実施の形態〕
a)放射性物質の例として、ウラン及び超ウラン元素を取り上げたが、核燃料物質またはその派生物であるアクチニド元素またはその化合物を包含するものである。
b)鉄合金系廃棄物X及び溶湯,またはカーボンるつぼ1の加熱位置を切り替える手段として、高周波加熱コイル2を固定しておいて、カーボンるつぼ1を昇降させる技術を採用することもできる。
【0017】
【発明の効果】
本発明に係る汚染金属の除染方法によれば、以下のような効果を奏する。
(1) 鉄合金系廃棄物を溶解するとともに、ウラン,超ウラン元素の酸化物をスラグに捕捉させ、生成されたスラグを溶湯から浮上,分離させて除去することにより、ウラン,超ウラン元素を濃縮した状態で確実に除去し、放射性物質の拡散を防止することができる。
(2) 高周波誘導溶解炉は、設備,技術とも金属産業分野で実用に供されており、大量の鉄合金系廃棄物の除染にも容易に適用できる。
(3) エレクトロスラグ法と比較して、スラグ発生量が少なく、スラグの電気特性を考慮する必要がないので、除染装置の製作時の制限を受けにくく容易に実施することができる。
(4) ウラン系元素の除去により、金属相の除染が行なわれ、除染後の金属を再利用することができる。
(5) 鉄合金系廃棄物の溶解をカーボンるつぼの内部で、誘導加熱することにより、溶湯の磁気攪拌を抑制して、スラグ粒の巻き込みを少なくすることができる。
(6) カーボンるつぼの内部にカーボンを添加することにより、カーボンるつぼのカーボンの消費を阻止し、カーボンるつぼが減肉される現象の発生を抑制することができる。
(7) カーボンるつぼの上下の温度管理を実施することにより、スラグの浮上性を高め、除染効率を向上させるとともに、除染作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る汚染金属の除染方法の一実施形態における材料投入状況を示す正断面図である。
【図2】 図1の後工程における汚染金属の溶融状況を示す正断面図である。
【図3】 図2の後工程における金属の凝固状況を示す正断面図である。
【図4】 図3の後工程におけるスラグの排出状況を示す正断面図である。
【図5】 図4の後工程における金属の再溶融状況を示す正断面図である。
【図6】 図5の後工程における金属相の取り出し状況を示す正断面図である。
【図7】 金属等の酸化物における温度と標準生成エネルギーと関係曲線図である。
【符号の説明】
X 鉄合金系廃棄物(汚染金属,TRU金属廃棄物)
1 カーボンるつぼ(溶融槽)
2 高周波加熱コイル(高周波加熱手段)
3 収納容器
S 造滓材(スラグ材)
C カーボン
A 金属相
B スラグ相
Claims (9)
- 放射性物質で汚染された鉄合金系廃棄物(X)をカーボン飽和の状態で溶解するとともに、造滓材を介在させることによりスラグ相(B)を生成してウラン,超ウラン元素をスラグ相に捕捉させた後、スラグを溶湯から除去することを特徴とする汚染金属の除染方法。
- 造滓材とともに酸化材を投入して、ウラン,超ウラン元素の酸化物を生成し、該酸化物をスラグ相(B)に捕捉させることを特徴とする請求項1記載の汚染金属の除染方法。
- 鉄合金系廃棄物(X)を、高周波加熱することによりカーボンるつぼ(1)の内部で溶解させることを特徴とする請求項1または2記載の汚染金属の除染方法。
- カーボンるつぼ(1)を、高周波加熱することにより溶湯の温度調整を行なうことを特徴とする請求項3記載の汚染金属の除染方法。
- カーボンを添加して、カーボンるつぼ(1)の減肉を抑制することを特徴とする請求項3または4記載の汚染金属の除染方法。
- カーボンるつぼ(1)の下部への加熱量を減少して溶湯をるつぼ下部より凝固させ、スラグを浮上させることを特徴とする請求項4または5記載の汚染金属の除染方法。
- カーボンるつぼ(1)を傾動することにより、スラグを流下させて溶湯から除去することを特徴とする請求項4、5または6記載の汚染金属の除染方法。
- カーボンるつぼ(1)の高周波加熱位置を切り替えて、溶湯の上下方向の温度調整を行なうことを特徴とする請求項4、5、6または7記載の汚染金属の除染方法。
- 溶湯の上下方向の温度調整を高周波誘導加熱コイル(2)の昇降により行なうことを特徴とする8記載の汚染金属の除染方法。
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