JP3806747B2 - 強磁性材料の検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁界と結合されて材料壁内での超音波の励起および/または検出のために用いられる少なくとも1つの高周波電流コイルと、磁界を発生させる少なくとも1つの磁石系とから成る少なくとも1つの電磁的な超音波変換器が設けられており、該電磁的な超音波変換器は材料壁内で予備磁界を発生させる付加的な磁石装置のそれぞれ異なる極性の各磁極領域の間に配置されている、たとえば導管などの強磁性材料を欠陥、亀裂および腐蝕について検査する装置に関する。
超音波を用いることで材料の非破壊検査を行うことができ、その際、圧電振動子が用いられ、それらから超音波が送出され、たとえば水のような結合媒体によって部材に超音波が導入される。しかしながら、ガスパイプラインをたとえば亀裂のような欠陥について管の外側で超音波により検査するためには基本的に、たとえば空気伝送音、レーザを用いた超音波励起または電磁的な超音波励起によるような管の内側でのドライな結合だけしか行えない。
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3511076号明細書によればたとえば、強磁性材料から成る導管壁の非破壊的な検査および監視のために、いわゆるテストスクレーパ(test scraper)またはテスト・ゴーデビル(test go-devil)が知られている。この場合、外側または内側などからのさびによる腐蝕によって管壁が弱くなっていることを検出するために、漂遊磁界測定システムのうちの1つから生成される磁界が、超音波の電気力学的な励起および漂遊磁束測定のために使われる。スクレーパ部材には同じ形状で周囲に配分された電磁石が設けられており、それらの電磁石は軸線方向に一列に並んでいるそれぞれ2つの測定ヘッドと、それらの測定ヘッドを結ぶヨークと、それらの測定ヘッドの上に設けられた磁化コイルを有している。その際、各電磁石の磁界は管中央軸に対し平行に延在している。超音波測定のために、磁極ないし磁気ヘッドのうちの少なくとも1つにじかに空心コイルが配置されており、このコイルに著しく急傾斜の側縁をもつ強い電流パルスが印加される。この電流パルスと材料壁領域で有効な磁界とがいっしょになって材料中で生じる超音波の伝播時間が測定され、評価される。このようなテストスクレーパを用いたときの欠点は、高周波コイルの設けられた測定ヘッドの運動により生じるバルクハウゼン・ノイズである。このノイズは、強磁性材料における強磁性磁区が運動時に磁界の強い変化により跳躍的に新たな平衡状態に移ることに起因するものである。これにより電流が誘導され、この電流は増幅器を介してスピーカにおいてクリック音として聞こえる可能性がある。しかもこの場合、磁界が次々と急速に変化すれば、ザーザーと音をたてるいわゆるクラックリング・ノイズが発生してしまう。
たとえばヨーロッパ特許出願公開第0609754号に記載されているような、導電性材料の超音波検査および材料特性分析に用いられる他の公知の電磁的な超音波変換器の場合、少なくとも2列の永久磁石に、交互に設けられた磁極配列体と、水平偏波の横波(SH波)を印加するためその下に配置された高周波コイルとが設けられている。このような超音波変換器の場合も、強磁性材料のダイナミックな検査においてバックグラウンドノイズが高まり、つまり有効なダイナミックレンジが小さくなることが認められる。それというのも、電磁的な超音波変換器が運動した場合、強磁性のコンポーネントを介して材料の個々の磁区内でやはり磁気モーメントの持続的な状態変化/磁化状態の変化により、バルクハウゼン・ノイズが生じるからである。このノイズの大きさは、スキャン速度に応じて25dBまでになる。
したがって本発明の課題は、これまで挙げてきた欠点を解消しながら、冒頭で述べた形式の装置において、強磁性材料の上で電磁的な超音波変換器が運動したときに、十分なSN比が得られるようバルクハウゼン・ノイズを抑えることができるように構成することにある。
本発明によれば上記の課題は、冒頭で述べた形式の強磁性材料の検査装置において、付加的な磁石装置は静的な予備磁界を発生させる永久磁石から成る装置であり、前記電磁的な超音波変換器は、交互に変わる磁極配列による複数の永久磁石セグメントの配列体により形成されていることにより解決される。
本願発明によれば、被検査材料における超音波励起のためにすでに用いられている超音波変換器自体を、本発明によれば次のようにして磁石装置によって取り囲まれるように構成する。すなわち、超音波変換器が材料壁の上を動くとき、変換器が到来する前にそのつど被検査領域において材料壁が予備磁化されるようにし、その領域において超音波変換器の作用によっても磁化状態の変化ないしモーメントの状態変化がもはや起こらないよう、予備磁化が行われるのである。
したがって本発明によるこのような配置構成により、被検査材料壁の水平方向での均質な予備磁化が達成される。付加的な予備磁界用磁化ユニットを使用することで、対象領域に超音波変換器が到来する前にほぼ磁気飽和状態まで材料壁が磁化されるので、超音波変換器自体によっても、材料壁における磁界の強い変化が生じることはない。そのような磁界の強い変化とは、超音波変換器が動いたときに磁気モーメントが反転し、つまり個々の磁区において状態が変化するようなものであり、このことでバルクハウゼン・ノイズを引き起こす電流が励起されてしまうが、このような強い変化が生じることはないのである。
予備磁界磁化のための磁石装置として交流電流磁石から成るユニットを用いれば、最大磁化磁界強度の領域で予備磁界の磁化のための交番する水平方向の磁化磁界に合わせて、高周波送信パルスをトリガさせるようにすることができる。予備磁界磁化のためのこの最大磁化磁界強度の領域ではバルクハウゼン・ノイズは最小である。その理由は、もっとも強いノイズは予備磁界磁化用の磁石装置における交流電流のゼロ点通過領域で生じるからである。したがってこの場合、それに応じて十分なSN比で測定を行うことができる。
しかしながら、交流電流磁石から成るこの磁石装置のためのエネルギー供給を節約するとともに、システム全体の複雑なトリガ動作を省けるようにするために有利であるのは、それぞれ異なる極性をもつ少なくとも2つの磁極片を有する永久磁石により付加的な磁石装置を形成することである。このように十分な強度の永久磁石を設けることで静的な水平方向の予備磁界を発生させることができ、その際、磁気飽和状態まで磁化を行うことでバルクハウゼン・ノイズの発生が確実に抑圧される。このようにすれば、交流電磁石を利用した場合に起こるような測定の欠落が存在しないので、1〜2m/secの高速なスキャン速度で動作させることができる。このことは、本発明によるような予備磁界の磁化を行わない従来の超音波変換器では不可能である。
有利には、付加的な磁石装置の各磁極片の間の中央に超音波変換器が配置されていることで、超音波励起による検査中、超音波変換器はそのつど予備磁界の均質な領域中にあるので、材料壁におけるモーメントに対する作用が確実に排除される。その際、超音波変換器は超音波の励起ならびに超音波の受信のためだけに用いられるし、付加的な磁石装置は材料壁における予備磁界の磁化のためだけに用いられる。
有利な実施形態によれば超音波変換器は、水平偏波された横波つまりいわゆるSH波を被検査材料において励起/発生させるために用いられる。このような水平偏波の横波は垂直偏波の横波(SV波)に対し、SH波のいわゆる第1のモードは分散性がないという利点を有しており、つまり比較的厚い壁厚には反応せず、被検査材料の被覆にはほとんど反応しない。6〜20mmの厚さの導管のような壁厚の厚い部材を検査するためにいわゆるSV波を利用すると、種々のラム・モード(Lamb mode)が励起され、それらすべてのモードが著しく分散し、その結果、大きな到達距離が得られない。
しかし、殊にガスパイプラインなどになると絶縁のためアスファルトで被覆されているので、垂直偏波された横波を利用すると不利に作用してしまうことになる。さらに、SH波が反射しても限界面でモードの変換が起こらないのに対し、SV波の場合にはそれが起こってしまう。また、殊に液体に係わる環境ではSV波の通常の成分が液体に入力結合する可能性があり、このことで測定結果が誤ったものになってしまう。
超音波を用いて、たとえば管の外側における亀裂のような欠陥についてガスパイプラインを検査するために本発明による装置を用いようとするのであれば、漂遊磁束測定に使われる磁化/測定ユニットにおける各磁極領域つまり各磁極片の間に、電磁的な超音波変換器を配置するのがよい。漂遊磁束測定に使われるこのような磁石システムは、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第3511076号明細書により、いわゆるテストスクレーパ(test scraper)というコンポーネントとして知られている。しかしこの場合、超音波を発生させるためにはこれまで、磁極片のうちの1つの上に高周波電流コイルが載置されていた。そしてこのことにより、先に挙げたような欠点が引き起こされる。これに対し本発明による装置によれば、漂遊磁束測定システムのそれぞれ異なる極性をもつ各磁極の間において、被検査導管壁の軸線方向あるいは周方向に、電磁的な超音波変換器が配置され、これにより著しく簡単かつスペースを節約しながら超音波測定を行うことができるようになり、かつ同時にバルクハウゼン・ノイズの抑圧が可能になる。この場合、必要とされる水平方向の静的な予備磁界は、テストスクレーパにすでに設けられている漂遊磁束磁石システムにより形成される。ここでいう水平方向とは、予備磁界が管壁に対し実質的に平行に軸線方向ならびに周方向で延在することを意味する。
有利には、付加的な磁石装置のそれぞれ異なる極性の磁極片により形成される管壁の静的な予備磁化が、電磁的な超音波変換器の動作点を設定するために用いられる。
有利には、間に電磁的な超音波変換器を収容する付加的な磁石装置のそれぞれ異なる極性の磁極領域ないし磁極片は、たとえば導管等のような被検査材料に対し軸線方向に平行に配置されている。その際、このような磁石装置は有利には、静的な予備磁化ないし新たな予備磁界の生成のほかに、相応のセンサを用いて管の軸線方向に対し交差する方向または斜めの方向に延在する亀裂または開口部により生じる漂遊磁界を検出するためにも同時に用いられる。しかし同様にあるいは同時に、付加的な磁石装置ないしは、被検査材料たとえば導管等の周方向に配置されている漂遊磁束磁石システムにおけるそれぞれ異なる極性の2つの磁極領域ないし磁極片の間に、電磁的な超音波変換器を設けることも可能である。このような磁石装置により、静的な予備磁化を行いながら導管ないし材料壁における長手方向の亀裂が検出される。バルクハウゼン・ノイズを抑圧しながらも材料壁において電磁的に超音波を励起するためには、被検査材料壁の予備磁化を水平方向に広がる静的な予備磁界によって行うだけでよい。それが軸線方向で生じるか周方向で生じるかは、測定には重要ではない。
別の有利な実施形態によれば、付加的な磁石装置のそれぞれ異なる極性の磁極領域ないし磁極片の間に、予備磁界の磁界方向に対し次のように電磁的な超音波変換器が配置される。すなわち、その放射方向が予備磁界の磁界方向に対し垂直または平行になるように配置される。これは以下のことにより可能となる。すなわち、被検査壁における水平偏波された横波の励起が超音波変換器だけによって行われるようにし、高周波コイルとたとえば漂遊磁束磁化/測定ユニットとの組み合わせによっては行われないようにすることで可能となる。つまり付加的な磁石装置は、もっぱらバルクハウゼン・ノイズの抑圧に必要な強い静的な水平方向の磁界を発生させるためだけに用いられ、漂遊磁束ユニットであれば、発生する漂遊磁界の測定により長手方向および軸線方向に延在する亀裂を検出するためだけに用いられる。
電磁的な超音波変換器の高周波コイルには空心コイルを用いることができ、この場合、その空心コイルをメアンダ状に蛇行する巻線を有するフラットなコイルとして形成するのが有利である。
水平偏波された横波(SH波)を励起および受信するための電磁的な超音波変換器は有利には、交互に変わる磁極配列をもつ永久磁石セグメントの配置構成と、その永久磁石セグメントに下に配置された少なくとも1つの高周波コイルにより形成される。この実施形態の場合、被検査材料壁における水平偏波された横波の励起は、電気的な超音波変換器自体によってのみ行われる。SH波を励起するために、交互に変わる磁極配列をもつ一連の永久磁石セグメントとその下に配置された高周波コイルを使用することで、小さい永久磁石により生じる磁界の有効範囲がその磁石のすぐ下の領域つまり高周波コイルに制限され、実質的に被検査壁の表面に制限されることになり、その結果、それらの磁界は強い予備磁界に対し反対に作用することはどのようにして起こらず、つまり壁における磁化状態が変化する現象が発生することはなく、したがってバルクハウゼン・ノイズが確実に抑圧される。しかも、U字型の磁石の磁極片の間に配置された高周波コイルに対し、電磁的な超音波変換器のこのような構造の有する利点とは、材料においてSH波を励起する際、このSH波の純粋な磁気ひずみによる励起しか起こらないのではないことである。つまり磁気ひずみによる励起はある程度、材料特性に依存するものであり、したがって誤った信号を得ることがないよう、その励起をかなり手間をかけて精確に制御しなければならない。交互に変わる磁極配列による永久磁石セグメントの配置構成と、その下に配置された少なくとも1つの高周波コイルにより形成された超音波変換器によっても、これまで強磁性材料ならびに壁の静的な検査のためにしか利用できなかった。それというのも、被検査材料の上を著しく速く運動すると、すでに述べたようなバルクハウゼン・ノイズが発生してしまったからである。
さらに別の実施形態によれば電磁的な超音波変換器は、交互に変わる磁極配列による2列の永久磁石から成る配列構成をもっており、それらの上に方形コイルが巻回されている。その際に有利であるのは、同じ電流方向の高周波コイル部材が同じ極性順序の永久磁石の列にそれぞれ対応づけられるよう、交互に変わる磁極配列による永久磁石の列の下に高周波コイルを配置させることである。このように配置された高周波コイルないし方形コイルに高周波電流を印加することによって、被検査強磁性材料に渦電流が発生し、それらの渦電流のパターンは高周波コイルの電流のパターンに対応する。それらの渦電流と永久磁石セグメントにより形成された磁界との相互作用により、渦電流に対し垂直に、および印加された磁界に対し垂直に、材料においてじかにローレンツ力がはたらくことになる。
永久磁石セグメントの1つの列において隣り合うセグメントが互いに異なる極性を有していることで、交番する方向で剪断力が発生し、これにより材料においてSH波が励起されることになる。このようにして生じる力は、隣り合う永久磁石セグメントの列の下にある高周波コイルの配列および配置により同じ方向となるので、作用するローレンツ力に関して最適に、強磁性材料における粒子の偏向を生じさせることができ、これによって壁中央に関して対称に配向された双方向の指向特性をもつ超音波が励起されることになる。磁気ひずみによる超音波の励起とは異なり、ローレンツ力によるこのような励起によれば、用いられる材料に対する依存性がなく、したがって磁気ひずみによる励起に付随する欠点がなくなることになる。
永久磁石セグメントのマトリックスを磁石のセグメント順序の下に配置された高周波コイル部材とともに用いるので、電磁的な超音波変換器の両方の側で水平偏波された横波が”放射され”、その結果、個々の信号と放射方向との対応づけ、つまり発生した材料欠陥の明確な位置特定は、電磁的な超音波変換器の位置が固定されていると不可能である。
したがって別の実施形態によれば電磁的な超音波変換器は、それぞれ異なる極性をもち配向に関して碁盤目状に分配された複数の永久磁石と、それらの下にそれぞれ配置された高周波コイル部材とから成る少なくとも2つのセットにより構成される。つまりこの実施形態の場合、超音波変換器全体が、複数の磁石セグメントと高周波コイル部材とから成る個々のセットに分けられ、有利にはそれらに対し時間的に遅延されて信号が印加される。この変換器は、フェーズド・アレイ方式に従って動作する。この技術は、個々の波を重ね合わせて合成された波を生じさせることに基づくものであり、つまり、複数の異なる変換器コイルが発生した個々の波を重畳し、合成波として所望の形の超音波を生じさせるものである。この場合、変換器を所期の通り位相をずらして励起して、複数の送信機および受信機を介して送信および受信を行うことによって、精確に調整された位相遅延で所期の強め合う干渉ならびに弱め合う干渉を発生させることができる。そしてこの有利な実施形態によって、所望の前後電磁界比を設定することができる。
さらに別の実施形態によれば電磁的な超音波変換器は、交互に変化する極性をもつ複数の永久磁石セグメントから成る少なくとも4列の配列体を有しており、この場合、複数の永久磁石セグメントから成る隣り合う2つの列は、各列の個々の永久磁石の周期の4分の1だけそれらの長手方向軸に沿ってそれぞれずらされており、それぞれ隣り合う永久磁石配列体に対し1つ固有の高周波コイルが設けられている。これによれば、2つの高周波コイルを互いに90°位相の遅延された信号によって印加することができるので、ローレンツ力により形成される高品質の水平偏波された横波の単方向指向特性を、被検査強磁性材料に生じる寄生的な音波を著しく抑えながら実現できる。この場合も、双方向に放射される2つの波が一方の方向では強め合う干渉を起こし、他方の方向では相殺される。そしてこのようにして所望の前後電磁界比を達成することができ、別の実施形態によればこの目的のためには、2つの高周波コイルが互いにネストされて重ね合わせられていることも役立つ。
これまで述べてきた実施形態の場合には、交互に変化する極性をもつ永久磁石セグメントの下に配置された空心コイルがそれぞれ用いられてきたが、他方、さらに別の実施形態によれば、磁気伝導性のコアに巻回された高周波コイルを設けるように構成される。コアとしてリングバンドコア(ring band core)を用いると有利であり、このコイルは交番する磁極配列による永久磁石の複数の列から成る配列体を部分的に取り囲んでいる。この実施形態の場合、音響励起に必要な渦電流は、ダイナミックな高周波磁界の印加により材料表面に間接的に入力結合される。
このように、強磁性材料を電磁的に検査する装置において、強磁性の成分に対し水平偏波された横波のための電磁的な超音波変換器を用いることで、超音波変換器が被検査体の上を動いても、これまで発生していたバルクハウゼン・ノイズを確実に抑えることができ、これによって高いSN比が達成される。
本発明のその他の利点や特徴は、請求項ならびに以下の説明に示されている。次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明を説明する。
図1は、被検査導管内の漂遊磁束磁化ユニットにおける各磁極片の間に配置された本発明による電磁超音波変換器の構成を示す図である。
図2は、超音波変換器の分解図であり、永久磁石セグメントが交互に設けられた2列の磁極配列体とその下に配置された高周波コイルを示す図である。
図3は、電磁超音波変換器の分解図であり、永久磁石セグメントの3つのセットをその下に配置された高周波コイルとともに示す図である。
図4は、入射平面に対し垂直に偏波された単方向指向特性をもつ横波のための超音波変換器の分解図である。
図5aは、リングバンドコアに巻回された高周波コイルを備えた電磁超音波変換器を示す図である。
図5bは、図5aの側面図である。
図6は、磁化ユニットにおける各磁極領域の間に本発明による装置が設けられていないときの電磁超音波変換器の測定信号を示す図である。
図7は、本発明による装置の測定装置の測定信号を示す図である。
図1に略示されており部分的にしか示されていない本発明による装置1は、図示の実施例の場合、やはり部分的にしか示されていない壁2を有する導管内に配置されている。この装置はU字型永久磁石のかたちの2つの漂遊磁化ユニット3,4を有しており、これらのユニットはそれぞれ、軸線に平行に並置された2つの磁極片5,5′,6,6′を備え、それらはヨーク7,8を介してそれぞれ互いに結合されている。磁化ユニット3の磁極片5,5′の間の中央において、それらの磁極片5,5′間で水平方向に延在する静的な磁界中に、電磁超音波変換器9(EMUS変換器)が配置されている。この超音波変換器は図示の実施例の場合、材料壁2内の超音波励起について、磁化ユニット3により生成される静的な予備磁界の磁界方向に対し垂直に延在する放射方向をもっている。導管等のような強磁性材料においてどのようにして励起が行われるのかについては、図面の説明を続けながらあとで詳述する。この場合、単にわかりやすくするという目的で、磁化ユニット3,4の各磁極片5,6′の間において周方向でやはり磁極5,6′間の中央に、別の変換器11が配置されていて、これは静的な予備磁界の磁界方向に対し平行に配向された放射方向をもつものである。
その際、個々の変換器9,11の放射方向は、壁2の予備磁化に用いられる永久磁石3,4の静的な予備磁界には依存しない。その理由は、被検査材料壁2における超音波励起は超音波変換器9,11だけにより行われ、したがって漂遊磁束磁化ユニット3,4は壁2の予備磁化ならびに漂遊磁束測定のためだけに用いられるからである。
図2に示されている実施例の場合、水平偏波された横波を励起するための超音波変換器17は、周期的に配置された複数の永久磁石19つまり交互に極性の変わる永久磁石系19による2つの列18から成る磁石装置を有しており、それらの上に方形コイル20が配置されている。このコイルは、ここでは分解図として磁石装置の下に示されている。高周波電流(その方向は実例として選ばれた一定の時点について参照符号21で示されている)を方形波コイル20に印加することにより、導管壁のような導電材料においてローレンツ力により粒子の偏向が生じ、これによって上述の形式の超音波のダイレクトな励起が引き起こされる。図2に示されているように、高周波コイル20のセグメントは個々の列18の下に次のように配置されている。すなわち、高周波コイル20への電流21がそれぞれ第1の列18に同じ方向で流れ、隣り合う第2の列では異なる方向に流れるように配置されている。電流パルスにより被検査材料中に、高周波コイルの電流に対応するパターンをもつ渦電流が発生し、このことでそれらの渦電流と永久磁石19により生じる磁界との相互作用によって、発生する渦磁界と材料中の磁界方向に対し垂直にローレンツ力がはたらくことになる。
両方の列において隣り合う永久磁石19′,19″の極性は互いに逆であるが、これら両方の列における電流パルスも互いに逆方向であるので、永久磁石19′,19″の下ではたらく力は互いに同じ方向でありながら、1つの列内で隣り合う永久磁石19の力に対しては逆方向である。そしてこれにより、水平偏波された所望の横波を励起することができる。このようにして生成された超音波は、変換器中央部に関して対称に配向された双方向指向特性をもつものである。ここではこの変換器中央部には、対称平面をもとにして参照符合22が付されている。生成された超音波は変換器中央部22に対して対称に両方の側に”放射される”ので、受信信号の評価が難しくなる。それというのも、超音波変換器17の位置が固定されている場合、個々の信号を放射方向に対応づけることはできないからである。したがって材料欠陥の明確な位置特定は、電磁超音波変換器を動かすことによってしか行えない。
図3に示されている実施例の場合、水平偏波された横波(SH波)を励起するための電磁超音波変換器23は、配向に関して碁盤目状に配置された永久磁石27の3つのセット24,25,26と、それらの下にそれぞれ配置された高周波コイル部材28,29,30を有している。この種のEMUS変換器は、8つのセットの永久磁石配列体を有することができる。図示の実施例の場合、高周波コイル28,29,30は4回メアンダ状に蛇行したループ形状体を有しており、それらの下にここでは5×3個の永久磁石27が配置されている。この電磁超音波変換器23の高周波コイル28,29,30は、それぞれ時間遅延して励起される。これらのコイルの電流の流れは矢印で示されている。この場合、高周波コイル部材/セグメント28,29,30の配分は、先に述べた実施例の場合のように個々の列の下で行われるので、これについてはこれ以上詳細に説明しない。高周波コイルが時間的に遅延されて励起されることで、先の実施例とは異なり前/後電磁界比の設定が可能である。
図4に示されている実施形態の場合、SH波を励起するための電磁超音波変換器31は、周期的に配置された複数の永久磁石36から成る6つの列32,33,34,35を有している。この場合、それぞれ隣り合う列32と33ないし32と35ないし35と34ないし34と33は、単一の永久磁石36の半分の幅だけ互いにずらされて配置されている。図4に示されているようにこの実施例の場合、第1の列32はちょうど4列後に繰り返されて設けられている。
2つの永久磁石配列体つまり列33と35の個々の永久磁石36は、ベースライン38に関して同じ高さにあるがそれぞれ互いに異なる極性で配置されており、このような2つの永久磁石配列体のところに、列ごとに電流方向40も交番する2重方形コイル39が取り付けられている。この実施例では残りの3つの列32および34の上に、第2の2重方向コイル39が最初のものとネストして重ね合わせて取り付けられており、この場合にやはり電流方向は磁石の列ごとに交番している。これら両方の高周波コイル39,39′は送信時、互いに90°位相のずらされた送信電流信号で駆動される。
この電磁超音波変換器31を用いることで、やはり単方向指向特性を実現することができる。この場合、磁石の寸法と高周波は、材料に印加すべき超音波信号の”放射角度”が永久磁石36の下側の平面41をかすめて位置するように選定される。永久磁石および高周波コイルから成り横波を印加する”超音波源”を波長の4分の1だけ空間的にずらすことで(このことはベースライン38に対し相対的にずらされた永久磁石の配置により得られる)、一方の放射方向において180°の信号位相差が生じ、つまり信号の相殺が起こり、他方の放射方向では0°ないし360°の位相差で信号が強め合って重畳されることになる。
図2〜図4に示したSH波励起および受信用の電磁超音波変換器すべてに共通するのは、高周波電流コイルのリード線ならびに遷移区間ができるかぎり小さく保持されることであり、これによりローレンツ力を用いた粒子の偏向による水平偏波された横波の最適な励起を行わせることができる。しかも有利なことに、交番する極性をもつ複数の永久磁石セグメントから成る各列の幅はそれらの長さよりも小さく、その結果、2つの対応の永久磁石列間における各高周波コイルの上述の遷移区間を、複数の永久磁石セグメントから成る各列の長さよりも小さく保持することができる。
図5aおよび図5bに示した最後の実施形態によれば、SH波の励起および受信に用いられる電磁超音波変換器42は、磁気伝導性のリングバンドコア43に巻回された高周波コイル44を有している。この場合、リングバンドコア43は、交番する磁極配列の永久磁石セグメント45から成る複数の列構成体の上に配置されていて、側方でそれらの列構成体を取り囲んでいる。水平偏波された横波を励起するためこの装置は、複数の永久磁石セグメント45から成る列がその長手方向の側でダイナミックなB磁界の方向に位置するようにされている。この電磁超音波変換器42を用いることで、音響励起に必要な渦電流が間接的に、ダイナミックな高周波磁界の印加により材料平面に入力結合される。
図3に示した電磁超音波変換器は、本発明によればたとえば漂遊磁化ユニットの強い永久磁石から成る付加的な磁石装置の各磁極片の間に配置されているが、このような電磁超音波変換器を用いることにより、図7に示されているように高いSN比で測定信号を得ることができる。本発明による装置構成がなければ、図3の超音波変換器により生じるバルクハウゼン・ノイズに起因して、図6に示されているような測定信号しか得られない。

Claims (21)

  1. 磁界と結合されて材料壁内での超音波の励起および/または検出のために用いられる少なくとも1つの高周波電流コイルと、磁界を発生させる少なくとも1つの磁石系とから成る少なくとも1つの電磁的な超音波変換器(9,11,17,23,31,42)が設けられており、
    該電磁的な超音波変換器(9,11,17,23,31,42)は、材料壁内で予備磁界を発生させる付加的な磁石装置(3,4)のそれぞれ異なる極性の各磁極領域(5,5′,6,6′)の間に配置されている、
    磁性材料を欠陥、亀裂および蝕について検査する装置において、
    前記付加的な磁石装置(3,4)は静的な予備磁界を発生させる永久磁石から成る装置であり、
    前記電磁的な超音波変換器は、交互に変わる磁極配列による複数の永久磁石セグメント(18,19,24,25,26,27,32,33,34,35,36)の配列体により形成されていることを特徴とする、
    強磁性材料を検査する装置。
  2. 前記の付加的な磁石装置(3,4)は、それぞれ異なる極性をもつ少なくとも2つの磁極片を有する永久磁石により形成されている、請求項1記載の装置。
  3. 前記超音波変換器(9,11,17,23,31,42)は、前記の付加的な磁石装置(3,4)の各磁極片(5,5′,6,6′)の間の中央に配置されている、請求項1または2記載の装置。
  4. 前記超音波変換器(9,11,17,23,31,42)は、被検査材料中に水平偏波された横波(SH波)を励起/発生させるために用いられる、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
  5. 前記少なくとも1つの電磁的な超音波変換器(9,11,17,23,31,42)は、漂遊磁束測定に用いる磁化測定ユニット(3,4)における各磁極片(5,5′,6,6′,14,14′)の間に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の装置。
  6. 対称軸をもつ材料が検査され、前記電磁的な超音波変換器(9)を間に収容する付加的な磁石装置(3)におけるそれぞれ異なる極性の磁極領域ないし磁極片(5,5′)は、被検査材料(2)に対し軸線に平行に配置されている、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  7. 対称軸をもつ材料が検査され、前記電磁的な超音波変換器(11)を間に収容する付加的な磁石装置(3,4)におけるそれぞれ異なる極性の磁極領域ないし磁極片(5,6′)は、被検査材料(2)の周方向に配置されている、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  8. 電磁的な超音波変換器(9)の放射方向は、前記の付加的な磁石装置(3)により発生する予備磁界の磁界方向に対し垂直に位置する、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  9. 電磁的な超音波変換器(11)の放射方向は、前記の付加的な磁石装置(3,4)により発生する予備磁界の磁界方向に対し平行に位置する、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  10. 前記高周波コイル(13,20,28,29,30,39)は空心コイルである、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  11. 前記高周波コイル(13,20,28,29,30,39)は、メアンダ状に蛇行する巻線によるフラットコイルである、請求項10記載の装置。
  12. 電磁的な超音波変換器(17,23,31)は、前記永久磁石セグメント(18,19,24,25,26,27,32,33,34,35,36)の下に配置された少なくとも1つの高周波コイル(20,28,39,39′)を有する、請求項1〜11のいずれか1項記載の装置。
  13. 電磁的な超音波変換器(17)は、交互に変わる磁極配列による複数の永久磁石(19)の2つの列(18)から成る配列体を有しており、該配列体の上に少なくとも1つの方形コイル(20)が配置されている、請求項12記載の装置。
  14. 交互に変わる磁極配列による複数の永久磁石(19,27,36)から成る列(18,32,33,34,35)の下に高周波コイル(20,28,39,39′)が配置されていて、同じ電流方向の高周波コイル部材(20,28,39,39′)は、同じ極性順序の永久磁石列にそれぞれ対応づけられている、請求項12または13記載の装置。
  15. 電磁的な超音波変換器(23)は、配向に関し碁盤目状に配分されたそれぞれ異なる極性の永久磁石(27)による少なくとも2つのセット(24,25,26)と、それらの下に配置された高周波コイル部材(28,29,30)により構成されている、請求項12または14記載の装置。
  16. 前記高周波コイル部材(28,29,30)に対し時間的に遅延されて信号が印加される、請求項15記載の装置。
  17. 電磁的な超音波変換器(31)は、交互に変わる極性の複数の永久磁石セグメント(36)から成る少なくとも4つの列(32,33,34,35)を有しており、複数の永久磁石セグメント(36)から成る互いに隣り合う2つの列(32,33,34,35)は、各列(32,33,34,35)の個々の永久磁石(36)による周期の4分の1だけそれらの長手軸に沿ってずらされており、それぞれ隣り合う複数の永久磁石セグメント(36)から成る列(32,33,34,35)のために1つの固有の高周波コイル(39,39′)が設けられている、請求項1214のいずれか1項記載の装置。
  18. 互いに隣り合う列の2つの高周波コイル(39,39′)に対し90°位相のずらされた信号が印加される、請求項17記載の装置。
  19. 2つの高周波コイル(39,39′)は互いに重なり合っており、かつ各高周波コイル(39,39′)はそれぞれ異なる列(32,33,34,35)のところに配置されている、請求項17または18記載の装置。
  20. 電磁的な超音波変換器(42)は、磁気伝導性のコア(43)に巻回された高周波コイル(44)を有する、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  21. 前記コア(43)はリングバンドコアであって、該コアは交互に変わる磁極配列の永久磁石(45)から成る複数の列による配列体を部分的に取り囲んでいる、請求項20記載の装置。
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