JP3806139B1 - 医療用ガイドワイヤ、および医療用ガイドワイヤとカテーテルとの組立体 - Google Patents

医療用ガイドワイヤ、および医療用ガイドワイヤとカテーテルとの組立体 Download PDF

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Abstract

【課題】重力の作用で垂れ下がり易い先端部内部に浮力室を形成することにより、操作性を向上できるガイドワイヤの提供。
【解決手段】少なくともコイル先部31が放射線不透過材からなるコイルスプリング体3内に、先端側部21が細径で手元側部22が太径の芯材2の先端側部21を貫挿するとともに、コイルスプリング体3の先端と芯材2の先端とを固着し、コイルスプリング体3の外周に樹脂被覆4を施した医療用ガイドワイヤ1において、コイルスプリング体3のコイル先部31内に浮力室5を形成した。
【選択図】図1

Description

この発明は、血流を有効利用して血管内への到達性を改善した医療用ガイドワイヤに関する。
血管にカテーテルを挿入する際にまずガイドワイヤを人体の目的箇所に挿入する必要があり、湾曲部など挿入の困難な位置に円滑にガイドワイヤを到達させるため、各種の提案がなされている。
特許文献1には、芯材の先端にX線不透過性金属コイルが装着され、この金属コイルの外周を包み込む樹脂チューブおよび樹脂チューブを膨潤させて被覆するガイドワイヤが開示されている。この構成では、樹脂チューブの平滑性による滑り性、血栓付着防止性および芯材先端の細径による挿入時のプッシュアビリティの向上などを得ている。
特許文献2には、柔軟性を有する先端部と剛性の高い本体部が存在し、先端部に高X線造影性金属が挿入され、全体を樹脂被覆および湿潤時に潤滑特性を示すガイドワイヤが記載されている。この提案では、湿潤時の潤滑性に優れてガイドワイヤの操作性(押し込み、引き戻し)を向上させることを目的としている。
特許文献3には、芯材の先端部に放射線不透過コイルが固定されて、芯材に樹脂被覆および親水性被覆が施され、摩擦係数の低下による操作性を向上させたガイドワイヤが提案されている。
特開2000−135289号公報 特開平4−9162号公報 実用新案登録第2588582号公報
従来のガイドワイヤにおいては、内部空間を血管中において血液ないし血流における浮力を、ガイドワイヤの操作性の向上に有効利用しようとする思想は存在していない。
この発明の目的は、重力の作用で垂れ下がり易いガイドワイヤの内部に浮力室(気室)を積極的に形成することにより、操作性を向上できるガイドワイヤの提供にある。
請求項1に記載の発明は、側に放射線不透過材からなる放射線不透過部を有し、放射線不透過部の後端側に放射線透過材からなる放射線透過部とを有するコイルスプリング体と、放射線不透過部のコイルスプリング体内に、手元側が太径で先端側が先端側へ板厚を薄く設定した多段扁平部を設けて先端側から貫挿する芯材とを備え、コイルスプリング体の先端と芯材の先端とを気密的に固着し、コイルスプリング体の外周に樹脂被覆を施した医療用ガイドワイヤにおいて、放射線不透過部のコイルスプリング体の後端部に、芯材とコイルスプリング体とを気密的に固着する気密壁を設け、コイルスプリング体の放射線不透過部内に、コイルスプリング体の先端と芯材の先端とを気密的に固着した部分と気密壁と樹脂被覆とによる浮力室を形成し、浮力室により、放射線不透過部の屈曲変形時に浮力室内の気体圧力が増大し、また、屈曲変形の解消により、増大した内部圧力を元の状態に戻す浮力室内の弾性復元力を利用したことを特徴とする。
この構成では、ガイドワイヤの先端部に形成した浮力室が、血管内で血液ないし血流により浮力を受けるため、重力によるガイドワイヤ先端部の垂れ下がりが防止でき、ガイドワイヤの操作性が向上する
芯材先端部に多段偏平部を形成することに伴い、屈曲狭窄病変部での深部挿入を可能とすることができる。すなわち、芯材に多段偏平部を設けることにより、各段差部毎の曲率半径が順次大きくなるように異なった状態に芯材先端部が屈曲変形する。このため、芯材先端部の屈曲変形が容易になり、芯材先端部が屈曲狭窄病変部に沿って忠実に追従しながら進行する利点が得られる。
請求項2に記載の発明は、コイルスプリング体は、先端側に、ステンレス鋼線よりもスプリングバック量が小さい放射線不透過材からなる放射線不透過部を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、コイルスプリング体は、先端側に、ステンレス鋼線よりもスプリングバック量が小さい放射線不透過材からなる放射線不透過部を有し、放射線不透過部の後端側に、ステンレス鋼線からなる放射線透過部を有し、放射線不透過部は、放射線透過部よりも外径が径小であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、コイルスプリング体は、放射線不透過材と放射線透過材とを溶接により接合して、縮径伸線加工後の線材をコイル状に螺旋巻きして形成され、先端側を放射線不透過材のコイル体にしたことを特徴とする。
従来の医療用ガイドワイヤは、放射線透視下で使用されるため、放射線不透過コイル体と放射線透過コイル体との組合わせを用いている。この場合、放射線不透過コイル体と放射線透過コイル体とは、コイル部分をねじ込み合った重合部分にハンダ又はロー材等を用いて接合している。
これに対して、請求項では、コイルスプリング体をコイル状に螺旋巻きするに先立って、放射線不透過材と放射線透過材とを溶接により接合しているので、ハンダやロー材等が不要となり、軽量化を達成して浮力性能の向上に寄与することができる。
請求項に記載の発明は、樹脂被覆は、疎水性被覆の固体層である第一層と、親水性被覆流動層である第二層とから成っていることを特徴とする。
この場合、疎水性被覆の固体層とは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミドなどにより被覆された固体層のことをいう。親水性被覆の流動層とは、湿潤時に潤滑特性を示す流動層のことをいい、具体的には、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸エチルエステル共重合体およびポリエチレンオキサイドなどによるものである。
請求項に記載の発明は、樹脂被覆は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとの混合物から成り、疎水性ポリマーの重量比が親水性ポリマーの重量比よりも大きな第一層を有し、この第一層の外層側に親水性ポリマーの重量比が第一層における親水性ポリマーの重量比よりも大きくて、外層側からさらに外層方向に至るにつれて親水性ポリマーの重量比が次第に大きくなる層を設けたことを特徴とする。
この場合、親水性ポリマーとの混合物として用いる疎水性ポリマーは、セルロースエステル、ポリメチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体などであり、セルロースエステルが最も好ましい。そして、疎水性ポリマーの柔軟性を高めるため、樟脳、カストール油あるいはジオクチルフタレートなどの可塑剤を付加してもよい。
請求項に記載の発明において、芯材とコイルスプリング体がロー材等により固定された浮力室は、発泡体を封入して形成されていることを特徴とする。浮力室への発泡体の封入により、芯材およびコイルスプリング体の塑性変形を効果的に阻止し、弾性復元力を増大することができる。
請求項8に記載の発明において、芯材とコイルスプリング体がロー材等により固定された浮力室は、発泡ビーズまたはマイクロバルーンを封入して形成されていることを特徴とする。
この場合、発泡ビーズまたはマイクロバルーンは隣接中空粒子などとの接触点が少なく、浮力室の形成に好都合な空隙を多く形成することができる。また、無機材料のマイクロバルーンを用いることにより、屈曲変形時の耐圧縮荷重に強く、内包された気体を外部に漏らすことがない。
請求項に記載の医療用ガイドワイヤとカテーテルとの組立体において、医療用ガイドワイヤの外径は概ね0.254mm(0.010インチ)で、内径が概ね1.7mmから2.0mmのカテーテル内へ挿入されるようになっていることを特徴とする。
この場合、浮力室の浮力を利用し、医療用ガイドワイヤの先端部を血流に乗せて血管内深部に挿入することができるので、芯材の細径化に伴い、カテーテルの細径化が可能となって病変部に対する低侵襲性の要請に応え、施術時、患者への負担軽減に寄与することができる。
この発明の最良の実施形態を、図に示す実施例とともに説明する。
図1は、実施例1の医療用ガイドワイヤ1を示し、医療用ガイドワイヤ1は、芯材(コア)2と、芯材先端部としての芯材2の先端側部21に同軸的に外嵌めされたコイルスプリング体(以下コイル体)3とを有する。芯材2はステンレス線で形成され、約300mmの先端側部21が細径で、残りの約1200mmまたは約2700mmが太径の手元側部22となっている。先端側部21は、手元側から強テーパー部23、弱テーパー部24、円柱部25、弱テーパー部26、および多段偏平部27からなり、例えば、先端から手前側へ向かう板厚が、順に0.040mm、0.050mm、0.063mmとなるように設定されている。
多段偏平部27の横断面積が略同一に形成された構造の場合、金型が先端側部21に対して略平行状態にプレス成形することになる。これにより、プレス成形後の多段偏平部27の微細な寸法が安定するとともに、金型の長寿命化も図られる。
コイル体3は、所定長さの白金線とステンレス線とを溶接して所定の外径寸法に伸線加工した後、コイル状に螺旋巻して形成され、芯材2の先端側部21と同等の約300mmの全長を有する。このため、コイル体3は、コイル先部31が約50mmの白金など放射線不透過材からなり、コイル先部31の後側のコイル後部32は約250mmのステンレスなどの放射線透過材からなる。
コイル体3は、先端3Aが芯材2の先端とロー付け部10により気密的に固着され、後端3Bは、芯材2の強テーパー部23にロー付けされ固着されている。コイル体3の外周および芯材2の手元側部22には、ポリウレタンなどの樹脂被覆4が施されている。この実施例では、樹脂被覆4の外周を、ポリビニルピロリドンなどの親水性被覆による粘性のある流動層(親水性ポリマー層)42で被覆している。
コイル体3の、コイル先部(放射線不透過部、以下、不透過コイルとも称する)31とコイル後部(放射線透過部、以下、透過コイルとも称する)32との接合部分には、ロー付けにより気密壁11が形成されている。この結果、コイル体3のコイル先部(不透過コイル)31内は、ロー付け部10、気密壁11および樹脂被覆4により気密性が確保され、内部の空間により浮力室5が形成されている。つまり、ガイドワイヤ1は、先端部12に浮力室5を備えている。
浮力室5は、以下のような作用、効果を有する。
イ)放射線による造影目的として、ガイドワイヤ1のコイル体3には、少なくともコイル先部31に白金が用いられるが、白金は比重が21.4で、ステンレスの比重7.9に比較して約2.7倍である。
ロ)ガイドワイヤ1の先端部12は柔軟性が要求されるため、芯材2は細径化されている。このため、コイル先部(不透過コイル)31の比重が大きいほど、自由状態においてガイドワイヤ1の先端部12は大きく垂れ下がり、この傾向はガイドワイヤ1が差し込まれる血管内の血液流中においても同様である。
ハ)このコイル先部31が重いガイドワイヤ1を血管内へ挿入すると、ガイドワイヤ1の先端部12の垂れ下がりにより血管内壁への接触度合いが大きいため、血管の解離または内膜剥離を生じ易い。とくに、血管の分岐位置において、この垂れ下がりにより、手術者が所望の方向へガイドワイヤ1を挿入する際の、血管選択性が低下する。
ニ)この発明では、ガイドワイヤ1の先端部12に浮力室5を有するため、血管内の血流中では、先端部12は浮力により垂れ下がりが低減する。このため、ガイドワイヤ1の先端部12を血流に乗せて、屈曲、蛇行した血管の深部まで、円滑かつ容易に挿入できる。
ホ)浮力室5は密封状態であるため、屈曲時の弾力性が保持されることにより復元力の低下が生じ難い。コイル体3は、放射線不透過材として白金以外に、金、銀、タングステンなどの線材が用いられ、放射線透過材としては生体適合性の関係からステンレス線が使用される。白金線などの放射線不透過材は、ステンレス鋼線に比較してスプリングバック量が小さく塑性変形し易い材料である。たとえば、線径0.072mmの線材を外径0.355mmのコイル体に巻回形成すると、白金線コイルのほうがステンレス鋼線コイルよりもコイル外径が0.02mm以上小さくなる。すなわち、先端部12に用いられている不透過コイル31は塑性変形し易いため、屈曲、蛇行した血管内への挿入時において、変形し易く、曲がり癖を生じ易い。
ヘ)この発明のガイドワイヤ1は、この塑性変形し易いコイル先部(不透過コイル)31の内側に密閉された浮力室5を設けている。このため、屈曲変形時には浮力室5内の気体の圧力が増大し、屈曲変形を解消すれば、増大した内部圧力により元の状態に戻る性質を有する。つまり、気体など充填された浮力室5内の弾性復元力を利用することにより先端部12の塑性変形を低減させて、先端部12が常に初期の形状を安定維持できる。
コイル体3は、白金線などの放射線不透過材とステンレス線の放射線透過材とのスプリングバック量の差により、先端部ほど先細り状態に縮径されるとともに、浮力室5の形成に基づく形状の安定維持効果も生じる。この結果、狭窄病変部に対するコイル先部31の通過性を一段と向上させることができる。
ト)細径化することが可能となるため、浮力室5を設けて血流に乗せて生体の深部に挿入できるため、手術の低侵襲化の要請に応えることが容易で、患者の負担を軽減できる。たとえば心臓血管閉塞部の拡径治療、つまり経皮的経血管冠動脈形成術(PTCA)においては、一般にガイドワイヤは外径0.35mm、拡径治療に用いるバルーンカテーテルを導入するカテーテルは7F〜8F(内径が2.3mm〜2.7mm)が用いられる。ガイドワイヤは、屈曲蛇行血管内の深部へ挿入するために、トルク伝達性、押し込み特性等の各種機械的な特性が要求されるため、一般に用いられる外径は0.355mmである。
芯材2の先端側部21に多段偏平部27を形成することに伴い、屈曲狭窄病変部での深部挿入を可能とすることができる。すなわち、芯材2に多段偏平部27を設けることにより、図2に示すように、各段差部T1、T2、T3毎に曲率半径r1、r2、r3が順次大きくなるように異なった状態に多段偏平部27が屈曲変形する。このため、先端側部21の屈曲変形が容易になり、先端側部21が屈曲狭窄病変部に沿って忠実に追従する利点が得られる。
チ)この発明のガイドワイヤ1は、機械的な特性を利用して血管内の深部までの挿入性が向上することの他に、浮力室5の浮力を利用して血流に乗せて血管内深部へ挿通する効果を併せ持つ。このため、この発明のガイドワイヤ1は、トルク伝達特性等の機械的要求特性を軽減させ、ガイドワイヤ1の芯材2を細径化することが可能となる。たとえば、ガイドワイヤ1の外径が0.014インチから0.010インチ(0.355mmから0.254mm)へ、カテーテルは、7F〜8Fから5F、6F(内径2.3mm〜2.7mmから内径1.7mm〜2.0mm)へ細径化することができる。これにより、低侵襲化の要請に応えることが可能で、手術時の患者負担が軽減できる。
実施例1の構成では、コイル体3は、コイル先部(不透過コイル)31とコイル後部(透過コイル)32とからなり、不透過コイル31内に密閉された浮力室5を設けているため以下の効果を奏する。
血液中においてガイドワイヤ1の全体のバランスが改善され、先端部12が大きく垂れ下がる不具合が解消できる。一般の経皮的経血管冠動脈治療法(PTCA)に用いられるガイドワイヤ1のコイル体3内部の芯材2は、透過コイル32側から不透過コイル31の先端に向かって徐々に細径化した構造になっていて、上記の如く、不透過コイル31は比重が大きく、かつ芯材2の先端側部21が細径化している。従って、ガイドワイヤ1の先端部12は、自由状態において先端側ほど垂れ下がり易い構造となっている。
この発明では、芯材2が細くかつ比重の大きい不透過コイル31部分に浮力室5を設けることにより、血液中において、不透過コイル31が大きく垂れ下がることが有効に防止でき、一定のストレート状態を維持することができる。このように、血液流体内における先端部12の垂れ下がりを軽減することにより、血管壁との接触、摩擦を軽減させて、解離または内膜剥離などの発生を防ぐことができる。
浮力室5が芯材2とコイル体3とを固定するロー付け部10、気密壁11および樹脂被覆4により気密性が確保され、密閉された状態となっている。芯材2の先端とコイル体3の先端とは、ボールハンダ(錫)又はロー材等を用いて隙間のない状態で固着され、不透過コイル31の後端と芯材2とはボールハンダ(錫)又はロー材等を用いて隙間のない状態で固着する。その後、ポリウレタン被覆の樹脂被覆4を少なくとも浮力室5の全周囲に施す。
なお、樹脂被覆4は、コイル体3の全体、さらには芯材2全体に施してもよい。樹脂被覆4の形成方法としては、押出成形、ディッピング工法および熱収縮チューブによる成形方法など、いずれであってもよいが、浮力室5を密閉できることが必要である。コイル体3内に浮力室5を密閉して形成するためには、被覆形成時に加圧されて、浮力室5内に樹脂が入り込まずに気体が残存したままで形成できる熱収縮チューブによる成形方法またはディッピング工法が望ましい。特に、加圧されずに樹脂溶着端部処理が不要なディッピング工法が最も望ましい。
なお、浮力室5の外部への気体洩れを防ぐため、樹脂の二層被覆を行ってもよく、また二層構造としての最外層に血液と異なる粘性のある流動層(親水性ポリマー層)42を設けた構造であってもよい。
この構造により、以下の作用効果がある。
コイル体3の外周部は、弾力性のある樹脂被覆4により密閉されているため、先端部12が局部座屈変形しても浮力室5の内圧が増大して弾性変形し、かつこの増大した内圧により元に戻る復元力が発生する。また、樹脂被覆4は、塑性変形し易い細線の芯材2を保護する作用も合わせ持つ。
樹脂の二層構造、つまり第一層として固体層(ポリウレタン層)である樹脂被覆4、その外層に粘性のある流動層(親水性ポリマー層)42を設けることにより、次の利点が得られる。
(a)例えば、樹脂被覆4に微細なピンホールあるいは傷などが発生している場合、親水性ポリマー層42の液体粘性流動体を樹脂被覆4の全体に包被することにより、浮力室5内の気体が外部に漏れることを防いで浮力室5の密閉状態を維持することができる。
(b)親水性ポリマー層42の液体粘性流動体を樹脂被覆4の全体に包被することに伴い、血管壁との摩擦を軽減させることができる。
樹脂被覆4を、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとの混合物から形成する場合、次のようにすることができる。
すなわち、疎水性ポリマーの重量比が親水性ポリマーの重量比よりも大きな第一層を有し、この第一層の外層側に親水性ポリマーの重量比が第一層における親水性ポリマーの重量比よりも大きくて、外層側からさらに外層方向に至るにつれて親水性ポリマーの重量比が次第に大きくなる層を有するようにすることである。これにより、浮力室5の密閉状態をさらに維持するとともに、樹脂被覆4と血管壁との摩擦を一段と軽減させることができる。
図3は実施例2にかかるガイドワイヤ1を示す。この実施例では、コイル後部(透過コイル)32の手元側端に、芯材2の手元側部22を包む多条中空コイル体33を接続し、芯材2の後端と多条中空コイル体33の後端とをロー付け又は溶接している。
この際、手元側において、中実体を用いた例と、多条中空コイル体内に中実体の芯材2を用いた例とを比較した場合、手元側の外径が同一外径の時、外装に多条中空コイル体33を用いれば、隣接素線間に凹状の隙間が生じているので、中実体の芯材に比べて軽量化を図ることができる。また、芯材2を血管に挿入する際、血液が多条中空コイル体33に沿って流動することにより、芯材2に推進力を付与して狭窄病変部への深部挿入が可能となる。
図4は実施例3にかかるガイドワイヤ1を示す。この実施例では、コイルは不透過コイル31のみであり、ガイドワイヤ1の全体を樹脂被覆4で包囲している。実施例2および実施例3の構成でも、実施例1と同様の作用、効果を有する。
図5の(イ)は、実施例4を示す。この実施例では、浮力室5を発泡体層(スポンジ)51により形成している。
発泡体層51は、芯材2とコイル体3とをロー付けした後、発泡材液の容器内にコイル体3の所定部位まで浸漬(ディッピング)して引き上げ、治具を通して付着した発泡材の外径を均一にして、発泡材が固化するまで放置、もしくは加熱する。その後、前記ディッピング工法などにより、コイル体3および芯材2の全体に樹脂被覆4を施す。なお、スプレー式の発泡材を用いてもよい。
発泡体層51は樹脂(弾性体)に発泡剤を加えた材料を用い、樹脂はポリエステル、スチレン・メタクリル酸共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が使用できる。発泡剤としては、炭酸ガス等の揮発性発泡剤、炭酸アンモニウム等の分解性発泡剤など公知のものが使用できる。一例として、比重が0.06〜0.3の架橋ポリオレフィン発泡体を用いる。
発泡体層51は、ゴムに発泡剤を加えたものであってもよく、ゴム材料としてはシリコーンゴム、クロロプレンゴムを用いる。シリコーンゴム発泡剤としは、アゾビスイソブチロニトリルなど公知の発泡剤が使用できる。発泡体層51の構造は、気泡が連続している連続気泡構造よりも独立気泡構造が望ましく、気泡の大きさは微細であることが望ましい。一例として、圧縮永久歪みに優れ、低比重(0.41程度)で平均セル径が110μm程度の微細セル構造のシリコーンスポンジが望ましい。
実施例4の構成により、以下の特有の作用効果がある。
芯材2とコイル体3との間に発泡体層51が介在するため、コイル体3の外周に樹脂被覆成形の際にコイル先部31が押出成形によって加圧されても、コイル体3の内部に樹脂が入り込むことはない。発泡体層51が独立気泡であれば、コイル体3の内部に樹脂が入り込むことをより一層有効に阻止でき、浮力室5が確保できる。また、発泡体層51が弾性体であるため、芯材2およびコイル体3の塑性変形をより有効に阻止できるとともに弾性復元力を増大できる。
一般にコイル体3のコイル先部(不透過コイル)31は、より柔軟性を付与するため、コイル線間に微小な隙間を設けている。このため、樹脂被覆(外被)4の成形時に、この隙間内に樹脂被覆4の樹脂が入り込んで柔軟性を阻害する。コイル体3の外周面まで発泡体層51により一体化されているため、この弊害を防ぎ、コイル先部31の柔軟性を安定維持できる。
図5の(ロ)は実施例5を示す。この実施例では、浮力室5を繊維線または繊維束52で形成している。繊維束52に使用する繊維としては、ポリエチレン繊維、パラ系アラミド繊維、PBO繊維を用い、形状は円形、異形いずれでもよいが、束状になしたとき、気体を多く含む形状がよく、中空糸が望ましい。また、太さは2〜100μm程度を用い、束状もしくは紐状にしてもよい。ポリ乳酸など生体適合性に優れた生体内分解吸収ポリマー繊維を用いることもでき、この場合の繊維径は0.5〜50μm、繊維長が3〜50mm程度の生体内分解吸収ポリマーが有効である。
実施例5の構造により、以下の特有の作用効果を有する。
極細繊維(2〜10μm)を用いることにより、比較的容易に多くの気体を包み込むことができる繊維束52により浮力室5を形成できる。この浮力室5は繊維状のため、ガイドワイヤ1の先端部12に要求される柔軟性を阻害することがない。また、紐状として芯材2に巻回して巻回する量により、浮力室5に占有する樹脂繊維量の調整ができ、比較的容易に浮力室5の形成ができる。生体内分解吸収性ポリマー繊維を用いる場合には、仮に血液流体内に洩れ出しても、体内で分解され、患者が違和感を覚えることがなく、合併症を誘発することもない。
図6の(イ)は、実施例6を示す。この実施例では、浮力室5を発泡ビーズまたはマイクロバルーンなどの球状の中空粒体53により形成している。発泡ビーズとしては、合成樹脂発泡ビーズを用い、材料は実施例4に示した材料を球状体に形成したものを使用する。この例として、比重0.06〜0.5で50〜100μm程度の球状体を用いる。マイクロバルーンとしては、無機質材料の微小中空体を用いる。無機質材料としては、ガラス、アルミナ、シリカなどを用いてバルーン状に成形する。一例として、比重が0.2〜0.7、粒径が1〜150μmを用いる。なお、これ単体で浮力室5を形成してもよく、バインダーとして各種樹脂とゴムとの混合体、および前記発泡体層51、繊維束52とを併用してもよい。一例として、前記発泡体層51に比重0.2、粒径10μm程度のマイクロバルーンを混合して用いる。
実施例6の構成では、以下の特有の作用効果を奏する。
ビーズまたはマイクロバルーンなどの球状の中空粒体53は、発泡体でかつ球状構造であることから、たとえば多角形状とは異なり隣接中空粒子等との接触点が少なく、空隙を多く形成できる。無機質材料のマイクロバルーンを用いることにより、屈曲変形時の耐圧縮荷重に強く容易に変形することなく、内包された気体が外部に洩れることがない。さらに、軽量の気体、ヘリウムなどを封入させることにより、浮力を増大できる。
中空粒体53のバインダーとして、発泡体層51を用いることにより、容易に不透過コイル31内に浮力室5が形成できると同時に、中空粒体53内に軽量ガスを封入して、より浮力を増大させることができる。なお、この場合の製造方法としては、前記発泡体層51にマイクロバルーンなど中空粒体53を一定量混入させるのみで、実施例4と同様の工法で形成できる。
図6の(ロ)は、実施例7を示す。この実施例においては、不透過コイル31と芯材2との間に、発泡体層51、繊維束52、または中空粒体53、もしくはこれらの複合体により浮力室5を形成している。コイル体3は、後端を芯材2とロー付けした構成でもよい。
実施例7の構成では、以下の特有の作用効果を奏する。
従来のガイドワイヤでは、外被の樹脂被覆4の成形時に芯材にコイル体が固定していないと、位置ずれを起こす。このため、芯材に不透過コイルを密着して接着またはかしめなどの手段により固着させており、先端部の柔軟性が損なわれている。
この発明のガイドワイヤ1では、コイル体3と芯材2との間は発泡体層51、繊維束52、または中空粒体53により固着している。このため、コイル体3の内側凹凸形状との相乗作用により位置ずれを起こすことなく樹脂被覆4の成形ができ、先端部12の柔軟性を損なう不具合が防止できるとともに、復元力増大による塑性変形の防止の効果がある。
[他の実施例]
浮力室5は、図7に示す如く、不透過コイル31の内側のみでなく、気密壁11の後側に浮力室5Aを形成してもよく、さらには、コイル体3の内側にロー付けにより複数の気密壁14を設け、透過コイル32の内側にも浮力室5A、5B、5C…を形成して浮力を発生させてもよい。この場合には、コイル体3の全体を包被する樹脂被覆4により密閉状とするのが望ましく、コイル体3の先端部から手元側(芯材2)へ被覆を延長する。また、芯材2とコイル体3との固着は、ロー材のみでなく、密閉されていれば、プラズマ溶接、ティグ(TIG)溶接など他の溶接を用いてもよい。なお、図示の如く、芯材2の大部分を包被してもよい。この場合、ガイドワイヤ1の先端部へ向かって浮力が増大する構造とし、浮力を選択的に変化させることも可能である。これにより、血液流体内で水平に保つことが可能で、遊泳特性を向上させることが容易になる。
ガイドワイヤ、芯材の正面図、断面図および側面図である。(実施例1) 段偏平部を有する芯材の作用説明図である。(実施例1) ガイドワイヤの正面図および要部拡大断面図である。(実施例2) ガイドワイヤの正面図である。(実施例3) ガイドワイヤの先端部の拡大断面図である。(実施例4、5) ガイドワイヤの先端部の拡大断面図である。(実施例6、7) ガイドワイヤの断面図である。(他の実施例)
符号の説明
1 医療用ガイドワイヤ
10 ロー付け部
11 気密壁
12 先端部
2 芯材
21 芯材の先端側部(芯材先端部)
22 手元側部(手元側)
27 多段偏平部
3 コイルスプリング体(コイル体)
31 コイル先部(放射線不透過部、不透過コイル)
32 コイル後部(放射線透過部、透過コイル)
4 樹脂被覆
42 流動層
5 浮力室
51 発泡体層(発泡体)
52 繊維束
53 中空粒体(発泡ビーズ、マイクロバルーン)

Claims (9)

  1. 側に放射線不透過材からなる放射線不透過部を有し、前記放射線不透過部の後端側に放射線透過材からなる放射線透過部とを有するコイルスプリング体と、
    前記放射線不透過部の前記コイルスプリング体内に、手元側が太径で先端側が先端側へ板厚を薄く設定した多段扁平部を設けて先端側から貫挿する芯材とを備え、
    前記コイルスプリング体の先端と前記芯材の先端とを気密的に固着し、前記コイルスプリング体の外周に樹脂被覆を施した医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記放射線不透過部の前記コイルスプリング体の後端部に、前記芯材と前記コイルスプリング体とを気密的に固着する気密壁を設け、
    前記コイルスプリング体の前記放射線不透過部内に、前記コイルスプリング体の先端と前記芯材の先端とを気密的に固着した部分と前記気密壁と前記樹脂被覆とによる浮力室を形成し
    前記浮力室により、前記放射線不透過部の屈曲変形時に前記浮力室内の気体圧力が増大し、また、屈曲変形の解消により、増大した内部圧力を元の状態に戻す前記浮力室内の弾性復元力を利用したことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  2. 請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記コイルスプリング体は、先端側に、ステンレス鋼線よりもスプリングバック量が小さい放射線不透過材からなる前記放射線不透過部を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  3. 請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記コイルスプリング体は、先端側に、ステンレス鋼線よりもスプリングバック量が小さい放射線不透過材からなる前記放射線不透過部を有し、前記放射線不透過部の後端側に、ステンレス鋼線からなる前記放射線透過部を有し、
    前記放射線不透過部は、前記放射線透過部よりも外径が径小であることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記コイルスプリング体は、放射線不透過材と放射線透過材とを溶接により接合して、縮径伸線加工後の線材をコイル状に螺旋巻きして形成され、先端側を前記放射線不透過材のコイル体にしたことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  5. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記樹脂被覆は、疎水性被覆の固体層である第一層と、親水性被覆の流動層である第二層とから成っていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  6. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記樹脂被覆は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとの混合物から成り、
    前記疎水性ポリマーの重量比が前記親水性ポリマーの重量比よりも大きな第一層を有し、この第一層の外層側に前記親水性ポリマーの重量比が前記第一層における前記親水性ポリマーの重量比よりも大きくて、前記外層側からさらに外層方向に至るにつれて前記親水性ポリマーの重量比が次第に大きくなる層を設けたことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  7. 請求項1〜のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記芯材と前記コイルスプリング体がロー材等により固定された前記浮力室は、発泡体を封入して形成されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  8. 請求項1〜のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
    前記芯材と前記コイルスプリング体がロー材等により固定された前記浮力室は、発泡ビーズまたはマイクロバルーンを封入して形成されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1つに記載の医療用ガイドワイヤとカテーテルとの組立体において、
    前記医療用ガイドワイヤの外径は、概ね0.254mm(0.010インチ)で、内径が概ね1.7mmから2.0mmの前記カテーテル内へ挿入されるようになっていることを特徴とする医療用ガイドワイヤとカテーテルとの組立体。
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