JP3805363B2 - 電気化学センサおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、請求項1の上位概念に記載の、ガスの酸素含量を測定するための、特に内燃機関の排気ガス中の酸素含量を測定するための電気化学センサおよびその製造方法に関する。
従来の技術
冒頭に記載の形式の電気化学センサは公知である。これらのセンサは、例えば、固体電解質が密閉された管として金属ケーシング内に密に固定されたセンサ素子を形成するいわゆるフィンガー構造で構成されている。この場合、センサ素子の外側の測定電極は直接測定ガスにさらされ、一方内側の、基準電極として用いる電極は基準ガス、例えば空気酸素にさらされている。電極は、密閉された管の内側と外側に案内された導体路を介して、測定装置に接続されている。測定電極に測定ガス、例えば自動車輌の排気ガスが当ると、測定電極と基準電極に異なる酸素分圧が生じる。その結果電極間で電圧信号を測定することができる。この電圧信号は排気ガス中の酸素含量の測定に用いられ、その結果、内燃機関の運転の帰納的推論を行うことができる。特に、内燃機関の運動に用いられる、空気と燃料の混合物の組成の1つの尺度であるいわゆるラムダ値を求めることができる。空気あるいは燃料のいずれから化学量論的過剰で存在することに応じて、ラムダ値は1以上または1以下である。
公知の電気化学センサは、直接排気ガス管にさらされているので、基準電極を排気ガス路に対して充分なシールを必要とする点で共通している。このために、一方で排気ガスに対して基準電極のシールを可能にし、他方で基準ガス、つまり空気酸素の基準電極への供給を行う特殊なパッキンを多数配置することは公知である。このパッキン装置は複雑で無駄の多い構造をもっている。特に自動車輌の特定の運転状況、例えば始動の際、未燃焼燃料は排気ガス路に達し、センサの周囲を洗うような形になり、それによって気密されていても基準領域への燃料の流入は排除されない。
発明の効果
それに対して、請求項1に記載の特徴を有する本発明によるセンサは、簡単に基準電極のシールが達成可能であるという利点を提供する。基準電極に、高いガス拡散抵抗を有する層で覆われた基準電極が配属されていることにより、基準電極のシールを、ポンプ基準容積部を覆う層に制限することが簡単に可能である。ポンプ基準容積部は、基準電極のための内部の酸素供給源を形成する。基準電極と、測定ガスにさらされる測定電極との間にポンプ電圧を印加することによって、ポンプ基準容積部に測定ガスから常に新たな酸素イオンを供給することができる。それにより、ポンプ基準容積部と大気との結合、およびそれに伴い必要となる異物の侵入に対するシールを省くことができる。基準ポンプ電圧は常にセンサ素子に印加されており、かつ該電圧に測定ガス内、従って測定電極と、ポンプ基準容積部内、従って基準電極とにおける酸素濃度差に基づいて生じる電圧信号が重畳される。評価回路により簡単にポンプ電圧信号を測定電圧で平衡調整できるので、酸素濃度に相応する信号が得られる。
本発明の有利な実施態様によれば、ポンプ基準容積部はセンサ素子の底部に配置され、好ましくは100%でないガス不透過性を有する層によって覆われている。それにより、ポンプ基準容積部を覆う層は同時に、ポンプ基準容積部内で常時印加されるポンプ基準電圧信号に基づき大きすぎる酸素濃度が生じる場合に開始するポンプ機能を負うことができる。ポンプ基準容積部内で発生する過圧は、一定の限界値に達すると放圧される。
さらに有利には、ポンプ基準容積部および/またはポンプ基準容積部を覆う層は、センサ素子と同じ材料からなる。ポンプ基準容積部およびこれを覆う層の機能は、異なる多孔率の選択により調整するのが有利である。従って周知の、技術的に制御可能な処理工程で簡単にセンサの組立てが可能である。
本発明によれば前記課題はさらに、請求項8に記載の特徴によって解決される。筒状のセンサ素子の基準側にポンプ基準容積部および該ポンプ基準容積部を覆う層を施すこの操作は、有利にはポンプ基準容積部および層を形成する材料の規定の滴下により行うことにより、簡単に筒状のセンサ素子に密閉されたポンプ基準容積部を設けることが可能である。管状センサ素子のポット状の形状により、ポンプ基準容積部を形成する材料を簡単にセンサ素子中に滴下できるので、一定量の材料を調量投与することによりセンサ素子内に規定のポンプ基準容積部を形成可能である。
形成されたポンプ基準容積部は有利には、ポンプ基準容積部に比して高いガス拡散抵抗を有する、別の滴下材料層によって覆うことができる。ポンプ基準容積部およびポンプ基準容積部を覆う層を形成する材料は、センサ素子と一緒に同時焼結することができるので、1作業工程で完全なセンサ素子が製造可能である。従ってポンプ基準容積部および該ポンプ基準容積部を覆う層の組込み方法は、センサ素子の製造の周知の処理工程に適合可能であり、大量生産に適している。
別の有利な実施態様は、請求項2以降に記載の構成要件から明らかである。
図面
次に本発明を添付図面を参照して実施例で詳細に説明する。図中、
図1は、電気化学センサの断面図、
図2は、発明によるセンサ素子の斜視断面図である。
実施例の説明
図1には、断面図において全体的に10で示されたセンサが示されている。該センサ10は金属製のケーシング12を有し、該ケーシングはその外側に、図示されていない測定ガス管に固定するために6面体かぎ14およびねじ山16を有する。ケーシング12はスリーブ状に形成されかつ貫通孔18を有する。該貫通孔18は段状孔として形成されかつシール座20を形成する。ケーシング12の貫通孔18内にセンサ素子22が案内されている。該センサ素子22は膨らんだ形のヘッド24を有し、該ヘッドはリング状肩26を形成する。センサ素子22とケーシング12の間にシール部材28が配置されている。
図1に示されたセンサ10は無電位形に配置されたセンサ素子22を有し、この場合原理的構造は同様に電位結合形に配置されたセンサ素子22にもあてはまる。無電位と電位結合形に配置されたセンサ素子22の間の相違は、当業者には周知であるので、ここで詳細に述べることはしない。
該センサ素子22は、この実施例では有利に特に自動車輌における排気ガス中の酸素の酸素分圧を測定するために使用される自体公知の酸素ゾンデである。該センサ素子22は管状固体電解質30を有し、該電解質の測定ガス側の末端区分は底部32によって閉鎖されている。固体電解質30の測定ガスにさらされる外側面に、層状の通気性の測定電極34が配置されている。該外側面の向かい側の、固体電解質の内側面に通気性かつ同様に層状の基準電極36が配置されている。測定電極34は導体路38を介して第1の電極接点40と接続されている。測定電極34の上および部分的に導体路38の上に、多孔性の保護層42が施されている。基準電極36は第2の導体路44を介して第2の電極接点46と接続されている。電極接点40と46はそれぞれ固体電解質30の解放端部から形成された端面48上にある。導体路38および44は有利にはセルメット層として構成され同時焼結されている。
測定ガス側でケーシング12の貫通孔18から突出したセンサ素子22は間隔をもって保護管50により包囲されており、該保護管は測定ガスの出入りのために開口52を有する。該保護管50は、ケーシング12の測定ガス側の端部に保持されている、例えば溝54内に嵌合されている。
固体電解質30の中空室56には、基準電極36を介してポンプ基準容積部(Pumpreferenzvolumen)58が配置されている。ポンプ基準容積部58は、基準ガスの吸収のための多孔質を有するセラミック材料からなる。ポンプ基準容積部58は、例えば固体電解質30と同じ材料でできていてもよい。固体電解質30同様ポンプ基準容積部58も、例えば安定化した酸化ジルコニウムでできていてもよい。多孔質は安定剤、例えば酸化イットリウムの混和によって生じる。異なる量の安定剤を添加および/または別の焼結過程の間に溶解する成分によって、固体電解質30同様ポンプ基準容積部58の多孔率を調整することができる。ポンプ基準容積部58はほぼ半球状をしており、固体電解質30の中空室56の、その底部32の領域に満たされ充填している。ポンプ基準容積部58の上には層60が配置されている。層60はポンプ基準容積部58を、その内部に面した全面にわたって覆っている。層60はその外周に、固体電解質30の測定ガスから離れた端部の方向へ向いたカラー62を形成する。さらに層60は、基準電極36を電極接点46と接続する導体路44の上にも配置されている。層60はここでは有利には、導体路44の領域だけで、つまり固体電解質30の内部全体に設けられているのではない。同様に層60も有利には、高いガス拡散抵抗をもつセラミック材料からなる。層60のための材料としても例えば同様に酸化ジルコニウムを使用することができ、その際にはガス拡散抵抗を相応する安定剤により調整することができる。
第1の電極接点40の上に第1の接触部材64および第2の電極接点46の上に第2の接触部材66が位置する。これらの接触部材64および66は、測定電極リード線68および基準電極リード線70と接続している。電極リード68および70は図示されていない接続ケーブルと接触されかつ外側に向って測定または制御装置に導かれている。
さらに、ケーシング12の貫通孔18内に絶縁スリーブ72が挿入されており、該絶縁スリーブは有利にはセラミック材料からなる。図示されていない機械的手段により、絶縁スリーブ72は接触部材64および66に押圧され、それにより電極接点40および46に対する電気的接続が実現される。
さらに固体電解質30の内部56の残りの部分に、ここで図示されていない加熱装置が挿入されていてもよい。
図2には、固体電解質30の斜視断面図が示されている。図1と同じ部分には同じ参照番号を付し、説明の重複はしない。斜視図によれば、中空室56内の固体電解質30の底部32にいかにしてポンプ基準容積部58が配置されているか明確である。ポンプ基準容積部58は、図2で図示されていない基準電極36を完全に覆っている。ポンプ基準容積部58の上には、層60が設けられており、該層は一方はカラー62になり、他方は導体路44を覆っている。
図1および図2に図示されたセンサ10は以下の機能をもつ:
電極リード68と70、ならびに導体路38と44を介して測定電極34と基準電極36の間に、一定の固定されたポンプ電圧信号が印加される。ポンプ電圧信号は図示されていない測定装置または制御装置によって与えられる。印加されたポンプ電圧に基づいて、開口52を経てケーシング50に侵入できる測定ガスから、酸素イオンがポンプ基準容積部58に送り込まれる。測定ガスからのポンプ基準容積部への酸素イオンのポンピングプロセスは周知である。測定ガス内の酸素濃度が変化すると、測定電極34の酸素分圧は、基準電極36の酸素分圧に対して変化する。これにより、測定電極34と基準電極36の間の酸素濃度に比例する一定の電圧信号を測定することができる。この電圧信号は、図示されていない測定装置または制御装置の評価回路内で調整され、測定ガス内の酸素濃度の尺度である測定信号が得られる。この測定信号は、周知方法で自動車輌の内燃機関の噴射装置の制御のために使用することができる。
ポンプ基準容積部58の上に配置された層60は、ポンプ基準容積部58への異物、特にベンゼン蒸気または液状燃料が入り込めないことを保証する。カラー62の構造と、また導体路44の上に層60が存在するため、燃料もしくは燃料蒸気のポンプ基準容積部58への侵入が妨げられる。それに伴い、層60の構造によって、燃料もしくは燃料蒸気に対する中空室56のシールにもはや特別な条件は課せられない。従って、電極リード68および70のシールされた貫通案内を保証する、付加的な高価なシール部材を配置することはもはや必須ではない。
層60の一定の高いガス拡散抵抗の調整によって、ポンプ基準容積部58の燃料もしくは燃料蒸気に対するシールと並んで、ポンプ基準容積部58のバルブ機能が可能である。測定電極34と基準電極36の間の永久的に印加されたポンプ電圧に基づき、ポンプ基準容積部58内部の酸素イオンの追加ポンピングの結果圧力が上昇すると、該圧力は、固定可能な限界値への到達の際層60によって開放される。限界値は層60の多孔率によって調整される。この多孔率は同時に層60のガス拡散抵抗を決定づける。こうしてセンサ素子22は同時に、ポンプ基準容積部58内部の高すぎる圧力による破壊から守る。
センサ素子22の製造は次のように行われる。固体電解質30の中空室56の中に、基準電極36と、該基準電極を電極接点46と接続する導体路44との配設後、ポンプ基準容積部58を生じる材料を、図1に示された測定ガスから離れた側の開口を通して充填する。この充填は例えば、セラミック材料の滴下によっても行う。セラミック材料を、固体電解質30の内部の充填状態が基準電極36の覆いが保証されたと判明するまで充填する。さらに別の可能性は、固体電解質30の中空室56にセラミック材料を完全に満たし、ポンプ基準容積部58に必要な充填度に到るまで、例えば吸出しによって排出することよりなる。
次いでポンプ基準容積部58を形成するセラミック材料の上に層60を形成するセラミック材料を被覆する。層60の被覆は例えば同様に、一定量のセラミック材料の一定の滴下によって行うことができる。層60の挿入は例えば同様に、カラー62および導体路44を覆う成分も含め層60の輪郭を有する、すでに完成したシートの挿入によっても可能である。ポンプ基準容積部58同様層60を形成するセラミック材料には、一定の多孔率の調整を可能にする安定剤を混入する。この調整は、ポンプ基準容積部58は酸素の蓄積のために適し、一方層60は燃料もしくは燃料蒸気に対する不透過性バリヤーを形成するように行う。一定の限界圧力値に達した際のポンプ基準容積部58からセンサ素子22の内部56への酸素の逃散は、層60を経て、該層が正確に規定された高いガス拡散抵抗を有することにより行なわれる。ポンプ基準容積部58もしくは層60を形成するセラミック材料の組込み後、センサ素子22の焼結を行うことができる。この場合焼結は、固体電解質30、ポンプ基準容積部58もしくは層60を1作業工程において焼結させることにより、いわゆる同時焼結として行うことができる。しかしながらまた、例えばまず固体電解質30を測定電極34、基準電極36および導体路38もしくは34と焼結させ、その後初めてさらにポンプ基準容積部58および層60を焼結させることによる、連続的焼結も可能である。セラミック材料の焼結は周知であり、この明細書中ではこれ以上の説明は省略する。

Claims (15)

  1. 筒状のセンサ素子を有し、該センサ素子の外側に測定ガスにさらされる測定電極、および内側に基準電極が配置された、ガスの酸素含量を測定するため電気化学センサにおいて、基準電極(36)がス拡散抵抗を有する層(60)で覆われ、それにより基準電極(36)と層(60)の間にポンプ基準容積部(58)が形成され、ポンプ基準容積部(58)が多孔質材料を有することを特徴とする、電気化学センサ。
  2. ポンプ基準容積部(58)がセンサ素子(22)の底部(32)に配置され、層(60)によって覆われている、請求項1記載のセンサ。
  3. 層(60)が同時に、基準電極(36)と接している導体路(44)を覆っている、請求項1又は2記載のセンサ。
  4. 層(60)が、その外周部に、センサ素子(22)の内壁に接するカラー(62)を形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサ。
  5. ポンプ基準容積部(58)および/または層(60)がセンサ素子(22)と同じ材料からなる、請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサ。
  6. センサ素子(22)、ポンプ基準容積部(58)および層(60)に使用したセラミック材料の異なる多孔率の選択により、その時々の機能が調整可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサ。
  7. 基準電極(36)と測定電極(34)に永久的にポンプ電圧信号を与えることができ、それによりポンプ基準容積部(58)への酸素イオンのポンピングが可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサ。
  8. 筒状のセンサ素子を有し、該センサ素子の外側に測定ガスにさらされる測定電極、および内側に基準ガスにさらされる基準電極が配置された、ガスの酸素含量を測定するため電気化学センサを製造する方法において、基準電極に多孔質材料からなるポンプ基準容積部とポンプ基準容積部を覆う層を施すことを特徴とする、電気化学センサの製造方法。
  9. ポンプ基準容積部およびこれを覆う層を、センサ素子(22)の焼結前に施す、請求項8記載の方法。
  10. ポンプ基準容積部とこれを覆う層を、筒状のセンサ素子の内部への挿入によって形成する、請求項8又は9記載の方法。
  11. ポンプ基準容積部とこれを覆う層を、一定の量のセラミック材料を内部(56)に充填することによって形成する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
  12. ポンプ基準容積部とこれを覆う層を、一定量のセラミック材料の滴下によって形成する、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. ポンプ基準容積部とこれを覆う層を、任意の量のセラミック材料の充填および引き続いての、充填されたセラミック材料の過剰量の一定の吸出しによって形成する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. ポンプ基準容積部とこれを覆う層をセンサ素子と同時焼結させる、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
  15. センサ素子、ポンプ基準容積部またはこれを覆う層を、異なる工程で焼結させる、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
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