JP3803633B2 - ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の低減方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の低減方法に関するものである。
【0002】
この種の粒子状物質は、炭素系固形分(soot)と、それを覆う有機溶剤可溶分(SOF:Soluble Organic Fraction)とよりなる二重構造を有することが知られている。
【0003】
【従来の技術】
従来、例えばディーゼルエンジン等の排気ガスに含まれる粒子状物質を低減する方法としては、セラミックフィルタ(ディーゼル微粒子フィルタ)を排気管内に設置してそのフィルタに粒子状物質を捕集させ、その粒子樹物質の捕集量が所定値になったとき、エンジン制御等により排気ガス温度を上昇させて粒子状物質を燃焼させる、といった方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来法によると、セラミックフィルタによって排気抵抗が大となるためエンジン出力を十分に生かせなくなり、また排気ガス温度を上昇させるためのエンジン制御が煩雑であり、その上、粒子状物質の燃焼中にフィルタ温度が1000℃を超えることもあってセラミックフィルタの損傷を招く、といった問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粒子状物質を酸化により連続的に浄化して大幅に低減することが可能であると共に排気抵抗の上昇を低く抑え得る前記粒子状物質の低減方法を提供することを目的とする。
【0006】
前記目的を達成するため本発明によれば、ディーゼルエンジンから排出されて粒子状物質を含む排気ガス中にて、電界の強さEをE≧3.0kV/ mm に設定し且つ電力密度DwをDw≧1W/ cm 3 に設定したプラズマ発生条件下でプラズマを発生させることにより、複数のO(1 D)ラジカルの生成、それに次ぐ複数のパーハイドロオキサイド励起種HOO * の生成を惹起させ、それらパーハイドロオキサイド励起種HOO * により前記粒子状物質を酸化させる、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の低減方法が提供される。
【0007】
排気ガス中にて、上記プラズマ発生条件下でプラズマを発生させると、電極からの放出電子と酸素分子との衝突によるO(1 D)ラジカルおよびオゾン励起種の生成→それらと水分との反応によるハイドロオキサイド励起種の生成→そのハイドロオキサイド励起種と酸素との反応による、酸化力の強いパーハイドロオキサイド励起種HOO* の生成、が排気ガス中で惹き起される。このパーハイドロオキサイド励起種の生成は排気ガス温度に依存することなく行われる。そして、粒子状物質はパーハイドロオキサイド励起種HOO * により酸化され浄化される。この粒子状物質の酸化による浄化は連続的に、しかも比較的低温にて行われる。
【0008】
またプラズマ発生装置はフィルタに比べれば通気性が良いので、そのプラズマ発生装置を排気管内に組込んでも、排気抵抗の上昇は低く抑えられ、したがってエンジン出力に影響を与えるようなことはない。
【0009】
プラズマ発生条件において、電界の強さEをE≧3.0kV/mmに設定し、また電力密度DwをDw≧1W/cm3 に設定すると、プラズマ中における高エネルギの放出電子の存在量が増大するためパーハイドロオキサイド励起種HOO * の生成が効率良く行われ、これにより粒子状物質の酸化による浄化を高めることが可能である。ただし、E≧3.0kV/mmおよびDw≧1W/cm3 の少なくとも一方の要件が欠如すると、前記効果を得ることはできない。
【0010】
さらに、プラズマ発生装置の相対向する両電極の少なくとも一方において、他方の電極との対向面を誘電体により覆うと、電圧印加時に誘電体の表面全体が一様に荷電されるため、誘電体およびそれと対向する他方の電極間の空間全体がプラズマ空間となり、これにより粒子状物質とパーハイドロオキサイド励起種との邂逅頻度を高めて、粒子状物質の酸化による浄化を高めることが可能である。両電極の相対向する両面をそれぞれ誘電体により覆った場合には、インピーダンスの増加に伴い印加電圧の増大を招くが、プラズマ発生条件を前記のように設定することによって、片面のときと同等の浄化性能を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に示す粒子状物質低減テスト用設備1において、粒子状物質を含む排気ガスの発生源として市販のディーゼル発電機2が選定され、そのディーゼル発電機2の排気管3に第1流量調節弁41 が装置される。排気管3において、ディーゼル発電機2と第1流量調節弁41 との間に導管5の一端が接続され、その導管5に排気管3側から順次、第2流量調節弁42 、ヒータ6、プラズマ発生装置PGおよび流量計8が装置される。導管5の他端は大気に開放されている。
【0012】
導管5において、ヒータ6とプラズマ発生装置PGとの間に第1分岐管91 の一端が接続され、その他端は三方弁10の第1ポートp1に接続される。また導管5において、プラズマ発生装置PGと流量計8との間に第2分岐管92 の一端が接続され、その他端は三方弁10の第2ポートp2に接続される。三方弁10の第3ポートp3に別の導管11の一端が接続され、その他端は吸引ポンプ12の吸引口に接続される。その導管11にはフィルタ13が装置されている。
【0013】
ディーゼル発電機2は本田技研工業社製、EXT12Dであって、その諸元は次の通りである。エンジン形式:水冷3気筒4サイクルディーゼルエンジン;総排気量:1061cc;使用燃料:ディーゼル軽油;定格出力:12kVA.フィルタ13はゲルマンラボラトリー社製、テフロンコーティングフィルタであって、網目の大きさは0.3μmメッシュである。
【0014】
図2において、プラズマ発生装置PGは、複数、実施例では板状をなす金属製第1〜第6電極141 〜146 を備え、それら第1〜第6電極141 〜146 は排気ガス流通方向Aと平行に、且つ相隣る両電極141 ,142 ;142 ,143 ;143 ,144 ;144 ,145 ;145 ,146 が相対向するようにハウジング15(図1参照)内に設置される。一端側に存する第1電極141 の第2電極142 との対向面は被覆無しの金属面であるが、第2電極142 の第1電極141 との対向面はその全体を誘電体16により覆われている。この第1、第2電極141 ,142 における対向面の構成関係は、第2、第3電極142 ,143 ;第3、第4電極143 ,144 ;第4、第5電極144 ,145 ;および第5、第6電極145 ,146 について同じである。そして、第1、第3、第5電極141 ,143 ,145 がリード線17を介して電源18に接続され、一方、第2、第4、第6電極142 ,144 ,146 がリード線19を介して接地される。
【0015】
このように構成すると、電圧印加時に各誘電体16の表面全体が一様に荷電されるため、各誘電体16およびそれと対向する他方の電極141 〜145 間の空間全体がプラズマ空間Ppとなる、つまり第1、第2電極141 ,142 間、第2、第3電極142 ,143 間、第3、第4電極143 ,144 間、第4、第5電極144 ,145 間および第5、第6電極145 ,146 間にそれぞれ相対向する両電極により規定されたプラズマ空間Ppが形成される。
【0016】
第1〜第6電極141 〜146 はステンレス鋼(例えば、JIS SUS316)より構成され、その寸法は縦20mm、横50mm、厚さ1.0mmであって、その横辺が排気ガス流通方向Aに沿っている。各誘電体16は厚さ0.5mmのアルミナ(Al2 O3 )層よりなり、そのアルミナ層は機械的押付けにより第2〜第6電極142 〜146 に接合されている。この接合には接着剤による接着、溶射等も適用される。また各プラズマ空間Ppのギャップg、つまり相隣る、電極141 〜145 と誘電体16との間の距離は0.5mmである。
【0017】
前記設備1を用いて、粒子状物質低減テストを次のような手順で行った。
【0018】
(1)ディーゼル発電機2を運転し、そのディーゼル発電機2から排出された排気ガスを排気管3および導管5を通じて流通させた。
【0019】
(2)導管5、したがってプラズマ発生装置PGを流通するテスト用排気ガスの流量を、流量計8により測定しつつ第1、第2流量調節弁41 ,42 により調節して7.0L/min とした。
【0020】
(3)ヒータ6を作動させて約70℃の排気ガスを150℃に昇温させると共に三方弁10の第1、第3ポートp1、p3を連通させ、次いで、吸引量 5.0L/min にて吸引ポンプ12を駆動することにより導管5を流通するテスト用排気ガスを第1分岐管91 に分流して、10分間に亘りフィルタ13を通じ流通させ、そのテスト用排気ガス中の粒子状物質をフィルタ13によって捕集した。そして、粒子状物質捕集前、後のフィルタ重量から捕集された粒子状物質の重量を求め、これをプラズマ処理前の粒子状物質量とした。
【0021】
(4)プラズマ発生装置PGを作動させると共に三方弁10の切換えにより第2、第3ポートp2、p3を連通させ、次いで、吸引量5.0L/min にて吸引ポンプ12を駆動することにより、プラズマ発生装置PGから排出されて導管5を流通するテスト用排気ガスを第2分岐管92 に分流して,10分間に亘り新たなフィルタ13を通じ流通させ、そのテスト用排気ガス中の粒子状物質をフィルタ13によって捕集した。そして、粒子状物質捕集前、後のフィルタ重量から捕集された粒子状物質の重量を求め、これをプラズマ処理後の粒子状物質量とした。
【0022】
実施例において、プラズマ発生装置PG内の排気ガスのプラズマ励起状態として、発光分光光度計(大塚電子社製、IMUC−7000)により排気ガスの励起スペクトルを分析したところ、プラズマ発生によって複数の励起酸素原子の生成が認められ、特に、6eV以上の励起スペクトルがあることからO(1 D)ラジカルの存在があり、このことから複数のハイドロオキサイド励起種およびパーハイドロオキサイド励起種HOO* が生成されている、と言える。
【0023】
表1は、実施例および比較例1,2に関するプラズマ発生条件を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1において、電界の強さEは、第1、第2電極141 ,142 間等の相対向する両電極間に印加される電圧[(kVP-P )/2]をギャップg(mm)で除した値であり、また電力密度Dwは、相対向する両電極により規定されたプラズマ空間Ppにおける電力(0.54W×5=2.7W)をプラズマ空間Ppの体積[(2cm×5cm×0.05cm)×5=2.5cm3 ]で除した値である。
【0026】
表2は、実施例および比較例1,2に関する粒子状物質のプラズマ処理前、後の量ならびにプラズマ処理による粒子状物質の減少量および減少率を示す。
【0027】
【表2】
【0028】
図3は、表2に基づいて実施例および比較例1,2に関するプラズマ処理前、後の粒子状物質量をグラフ化したものである。表1,2および図3から明らかなように、実施例によれば、電界の強さEをE≧3.0kV/mmに、また電力密度DwをDw≧1W/cm3 にそれぞれ設定することによって、パーハイドロオキサイド励起種HOO* の生成を効率良く行わせ、これにより粒子状物質の減少率を約84.6%に高めることができる。
【0029】
比較例1,2の場合は、前記電界の強さEおよび前記電力密度Dwの一方が前記要件を満たしていないことから粒子状物質の減少率が低く、実施例のほぼ半分となっている。
【0030】
本発明は自動車、工場等から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質の低減に適用される。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、ディーゼルエンジンから排出されて粒子状物質を含む排気ガス中にて、電界の強さEをE≧3.0kV/ mm に設定し且つ電力密度DwをDw≧1W/ cm 3 に設定したプラズマ発生条件下でプラズマを発生させることにより、複数のO( 1 D)ラジカルの生成、それに次ぐ複数のパーハイドロオキサイド励起種HOO * の生成を惹起させ、それらパーハイドロオキサイド励起種HOO * により前記粒子状物質を酸化させるようにしたので、排気ガス中にて、上記プラズマ発生条件下でプラズマを発生させることにより、酸化力の強いパーハイドロオキサイド励起種HOO * の生成が排気ガス中で効率よく行われ、このパーハイドロオキサイド励起種HOO * により排気ガス中の粒子状物質が酸化されて浄化され、この浄化は連続的に、しかも比較的低温にて行われ、排気ガス中の粒子状物質を大幅に低減可能である。またこの方法は、排気抵抗を大きく上昇させてエンジン出力に影響を与える、といった不具合を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 粒子状物質低減テスト用設備の説明図である。
【図2】 プラズマ発生装置の説明図である。
【図3】 実施例等に関する、プラズマ処理前、後における粒子状物質量を示すグラフである。
【符号の説明】
1…………粒子状物質低減テスト用設備
2…………ディーゼル発電機
141 〜146 ………第1〜第6電極
16………誘電体
PG………プラズマ発生装置
Claims (2)
- ディーゼルエンジンから排出されて粒子状物質を含む排気ガス中にて、電界の強さEをE≧3.0kV/ mm に設定し且つ電力密度DwをDw≧1W/ cm 3 に設定したプラズマ発生条件下でプラズマを発生させることにより、複数のO(1 D)ラジカルの生成、それに次ぐ複数のパーハイドロオキサイド励起種HOO * の生成を惹起させ、それらパーハイドロオキサイド励起種HOO * により前記粒子状物質を酸化させることを特徴とする、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の低減方法。
- 相対向する両電極(141 ,142 ;142 ,143 ;143 ,144 ;144 ,145 ;145 ,146 )の少なくとも一方(142 〜146 )において、他方の前記電極(141 〜145 )との対向面が誘電体(16)によって覆われている、請求項1記載のディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の低減方法。
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