JP3803222B2 - ヘリコプター用bvi騒音低減方法および装置 - Google Patents

ヘリコプター用bvi騒音低減方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヘリコプターのローターブレードのBVI(Blade Vortex Interaction:翼端渦干渉)騒音を低減させるのに用い得る方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、ヘリコプターの騒音の低減化が望まれており、その対策としては例えば特開平10−271852号公報に記載のものが知られている。この公報記載の技術は、ローターブレードの後縁に小型フラップを設け、その小型フラップの角度を、ローターブレード内に設けたピエゾ素子利用の捩じりアクチュエーターできめ細かく制御することで、ローターブレードの空力特性を改善し、それによりローターの回転速度を低くして騒音を低減させるというものである。
【0003】
しかしながら、高速回転中のローターブレードにおいてフラップを的確に作動させるには、大きな制御力と高い応答性とが要求されため、フラップによる対策は実際上は容易ではない。
【0004】
ところで、ヘリコプターの騒音のうちで特にBVI騒音は、他の騒音に卓越した大きなものである。従ってBVI騒音を低減させれば、ヘリコプターの騒音全体の低減に大きな効果を得ることができる。
【0005】
ここでBVI騒音について説明する。図5に矢印Bで示すようにローター系1が回転して揚力が発生し、機体HBが上昇および前進すると、ローターブレード2の先端から翼端渦BVが発生する。この翼端渦BVはローターブレード2の先端から離れたのち、ローター系1の回転中心に向かいながら、ローター後流とともに下方の後方へ流れてゆく。かかる先行するローターブレード2の翼端渦BVを含んだローター後流の中に、図示の領域Cにおけるように、その先行するローターブレード2に続く次のローターブレード2が突入すると、図6(a)に翼端渦BVとローターブレード2との位置関係を示すとともに図6(b)に翼上面上の圧力分布を示すように、突入前には翼前縁の圧力がさほど高くなかったのが、同様に図7(a)に翼端渦BVとローターブレード2との位置関係を示すとともに図7(b)に翼上面上の圧力分布を示すように、突入時には翼前縁の圧力が極めて高くなり、ローターブレード2の迎え角に影響するローターブレード2の上面上の局所的な圧力分布の変動を引き起こす。かかる圧力分布の変動は、他の騒音に卓越した衝撃的な騒音となる。この騒音が、スラップノイズあるいは、翼端渦とローターブレードとの干渉で引き起こされることからBVI(翼端渦干渉)騒音と呼ばれているものである。
【0006】
それゆえ本願発明者は、ヘリコプターの騒音の低減化のためにこのBVI騒音を減少させるべく研究を重ねたところ、ローターブレードの前縁と後縁との間にスポイラーを設けて、それをローターブレードの上下面から高速で出し入れすれば、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができ、またそのスポイラーの上下振動によっても、ローターブレードの振動を抑制して騒音を低減させることができ、しかもかかる中間位置のスポイラーの進退移動にはさほど大きい制御力が必要とされないので、アクチュエーターを容易に構成できるとともに、高い応答性も容易に達成することができるという点に想到した。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
この発明は、上記知見に鑑みて先の従来技術の課題を有利に解決した騒音低減方法および装置を提供するものであり、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減方法は、ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させるに際し、前記ローターブレードの前縁と後縁との間に後縁から離間させて、そのローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に直線的に進退移動し得るスポイラーを設けるとともに、前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に、前記スポイラーを進退移動させるアクチュエーターを設け、前記ローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して前記スポイラーが進退移動するように前記アクチュエーターを作動させることを特徴とするものである。
【0008】
かかる方法によれば、ローターブレードを含むローター系に設けたアクチュエーターを作動させて、ローターブレードの前縁と後縁との間にそのローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に進退移動し得るスポイラーを、ローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して進退移動させるので、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することでBVI騒音を低減させることができ、またそのスポイラーの上下振動によっても、ローターブレードの振動を抑制してBVI騒音を低減させることができる。
【0009】
しかも、かかる中間位置のスポイラーの進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、スポイラーを駆動するアクチュエーターを容易に、ローター系に納め得る程度に小型に構成できるとともに、スポイラーの高い応答性も容易に達成することができる。
【0010】
なお、この発明の方法においては、前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに発電機のコイルを設け、前記ドライブシャフトの回転によって前記発電機で発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給するようにしても良く、このようにすれば、ローター系のドライブシャフトを支持するマストにアクチュエーターへの電力供給用のスリップリングを設ける必要がなく、ローター系に独立した騒音低減装置を搭載することができるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0011】
また、この発明の方法においては、前記発電機が発電した電力の位相から検出した、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦にそれに続く前記ローターブレードが接近する回転タイミングに基づき、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦をそれに続く前記ローターブレードが避けるように、前記アクチュエーターを作動させて前記スポイラーを進退移動させるようにしても良く、このようにすれば、アクチュエーターへの電力供給用の発電機を利用して安価かつ容易に、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができる。
【0012】
さらに、この発明の方法においては、前記ローターブレードの前縁に設けた圧力センサーからの出力信号に基づき、前記スポイラーの突出方向および突出量の少なくとも一方を制御するようにしても良く、このようにすれば、圧力センサーからの出力信号によって翼端渦を避け得ているかどうかを検出し得るので、より確実に翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができる。
【0013】
そしてこの発明の方法においては、前記ローターブレードに設けた振動センサーからの出力信号の振動数に基づき、前記アクチュエーターで前記スポイラーをその進退移動方向に振動させることとしても良く、このようにすれば、ローターブレードの振動を抑制してBVI騒音を低減させることができる。なお、かかる制振による騒音低減方法は、単独で使用しても良いが、ローターブレードが接近する回転タイミングに基づいてローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和する騒音低減方法と併用しても良い。
【0014】
一方、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置は、ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させる装置において、前記ローターブレードの前縁と後縁との間に後縁から離間して設けられて、そのローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に直線的に進退移動し得るスポイラーと、前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に設けられて、前記スポイラーを進退移動させるアクチュエーターと、前記ローター系に設けられて、前記スポイラーが前記ローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して進退移動するように前記アクチュエーターを作動させる制御装置と、を具えることを特徴としている。
【0015】
かかるこの発明の装置にあっては、ローターブレードを含むローター系に設けられたアクチュエーターが、ローターブレードの前縁と後縁との間に設けられたスポイラーをローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に進退移動させ、そして、これもローター系に設けられた制御装置が、スポイラーがローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して進退移動するようにアクチュエーターを作動させる。
【0016】
従って、この発明の装置によれば、ローターブレードが翼端渦の位置に到達する時に、ローターブレードの高さを局所的に変化させるとともにローターブレード前縁付近の圧力を瞬時に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することで、BVI騒音を低減させることができ、またそのスポイラーを上下振動させることによっても、ローターブレードの振動を抑制してBVI騒音を低減させることができる。
【0017】
しかも、かかる中間位置のスポイラーの進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、スポイラーを駆動するアクチュエーターを容易に、ローター系に納め得る程度に小型に構成できるとともに、スポイラーの高い応答性も容易に達成することができる。
【0018】
なお、この発明の装置は、前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに設けられたコイルを有し、そのドライブシャフトの回転によって発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給する発電機を具えていても良く、かかる構成によれば、ローター系に独立した騒音低減装置を搭載し得て、ローター系のドライブシャフトを支持するマストにアクチュエーターへの電力供給用のスリップリングを設ける必要がなくなるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0019】
またこの発明の装置においては、前記アクチュエーターは、弾性平板をピエゾ素子によって撓ませて前記スポイラーを移動させるものであっても良く、かかる構成によれば、軽量で薄型かつ応答性の高いアクチュエーターとなるので、アクチュエーターを、薄いローターブレード内に搭載することができる。しかも、アクチュエーターへの供給電力が止まった場合でも、スポイラーが弾性平板の弾性力で自動的に中立位置に戻るので、通常のヘリコプターの操縦性を確保することができる。
【0020】
さらにこの発明の装置においては、前記スポイラーは、前記ローターブレードの高効率作動部位に配置されていても良く、かかる構成によれば、スポイラーのわずかな進退移動でもローターブレードを上下させることができるので、より軽量かつ小型のアクチュエーターを用いることができる。
【0021】
そしてこの発明の装置においては、前記スポイラーは、断面形状が先端部から基端部まで略一定の前記ローターブレードの先端部からそのローターブレードの全長の1/4程度基端部寄りの部位に配置されていても良く、かかる構成によれば、スポイラーがローターブレードの高効率作動部位に位置するので、スポイラーのわずかな進退移動でもローターブレードを上下させ得て、より軽量かつ小型のアクチュエータを用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置の一実施例の構成を、ローター系を側方から見た状態で示す模式図、図2は、その実施例のBVI騒音低減装置の構成を、ローター系を上方から見た状態で示す模式図、図3(a)は、その実施例のBVI騒音低減装置のスポイラーおよびアクチュエーターを、ローターブレードを切り欠いて示す斜視図、図3(b)は、図3(a)のA−A線に沿う断面図、そして図4は、その実施例のBVI騒音低減装置の発電機および制御装置をアクチュエーターとともに示す構成図である。
【0023】
図1〜図3に示すように、この実施例のBVI騒音低減装置は、ヘリコプターの図示しない機体に対して回転するローター系1に含まれる複数枚のローターブレード2の各々の前縁と後縁との間に、そのローターブレード2の前縁から後縁へ向かう気流を遮るように、ローターブレード2の前縁と後縁とを通ってローターブレード2を上下に分割する横断平面に対して概略直角な方向に延在するとともにローターブレード2の長手方向に延在する向きに配設された、小さな板状のスポイラー3を具えている。
【0024】
また、この実施例のBVI騒音低減装置は、これも各ローターブレード2内に配設されて上記スポイラー3を支持し、図1および図3(b)に実線および仮想線で示すように、ローターブレード2の上面および下面の各々に対しその面から突出する位置とローターブレード2内に収容されてその面から突出しない位置との間で概略上下方向に、すなわち上記横断平面に対して概略直角な方向にそのスポイラー3を進退移動させる板状のアクチュエーター4を具えている。
【0025】
ここにおけるアクチュエーター4は、図3に示すように、ローターブレード2内の二枚のリブ2aに両端部を支持された弾性平板4aと、その弾性平板4aの上下面に複数枚ずつ貼り着けられたピエゾ素子4bとを有して、いわゆるスマート・アクチュエーターを構成しており、このアクチュエーター4は弾性平板4aの上面と下面とのピエゾ素子4bへの互いに逆向きの給電によって、上面のピエゾ素子4bが伸びると同時に下面のピエゾ素子4bが縮むと、図3(b)に実線で示すように、弾性平板4aを上方へ撓ませてスポイラー3をローターブレード2の上面から上方に突出させ、また上面のピエゾ素子4bが縮むと同時に下面のピエゾ素子4bが伸びると、図3(b)に仮想線で示すように、弾性平板4aを下方へ撓ませてスポイラー3をローターブレード2の下面から下方に突出させる。
【0026】
さらに、この実施例のBVI騒音低減装置は、図4に示すように、スポイラー3がローターブレード2の回転タイミングに対応して進退移動するようにアクチュエーター4を作動させる制御装置5と、その制御装置5およびアクチュエーター4に電力を供給する発電機6とを具えており、ここにおける発電機6は、これも上記ローター系1に含まれてローターブレード2を回転させるドライブシャフト7に配設されたローターコイル6aと、ドライブシャフト7を回転自在に支持するマスト8に配設されたステーターコイル6bとを有していて、そのステーターコイル6bへの通電と、ドライブシャフト7の回転に伴うローターコイル6aの回転とにより発電した電力を、ローターコイル6aから制御装置5に供給する。
【0027】
加えて、この実施例のBVI騒音低減装置は、図3に示すように、各ローターブレード2の前縁2bの、スポイラー3の位置に対応する位置に内蔵された圧力センサー9を具えている。なお、この実施例では、各ローターブレード2の断面形状が先端部(図では左端部)から基端部(図ではドライブシャフト7側の端部)まで略一定であることから、スポイラー3および圧力センサー9は、図2に示すように、ローターブレード2の先端部からそのローターブレード2の全長の1/4程度基端部寄りの部位に配置されている。
【0028】
そして、ここにおける制御装置5は、図1に示すように、ドライブシャフト7の上端部に固定されたドーム状のフェアリング10内に配置されるとともに、図4に示すように、CPU(中央処理ユニット)5aと、駆動アンプ5bと、CPU5aの作動を制御する図示しないメモリーとを有しており、ここでCPU5aは、発電機6のローターコイル6aからの電力供給を受けて作動しつつ、そのローターコイル6aからの電力の位相から機体に対する各ローターブレード2の回転位置を検出するとともに、上記圧力センサー9がローターブレード2前縁付近の圧力を検出して出力する信号を入力して、各ローターブレード2がその回転方向前方のローターブレード2の翼端渦と干渉する回転位置に到達するタイミングで、各ローターブレード2の高さを局所的に変化させてその翼端渦との干渉を緩和するように駆動信号を出力し、駆動アンプ5bは、発電機6のローターコイル6aからの電力供給を受けて作動し、CPU5aからの駆動信号を増幅した駆動電力をアクチュエーター4に供給する。なお、制御装置5は、ドライブシャフト7の回転停止時もデータを上記メモリー内に保持しておくため、フェアリング10内にさらに、図示しないバックアップ用電池を有している。
【0029】
かかる実施例のBVI騒音低減装置を用いた、この発明のBVI騒音低減方法実施例にあっては、ローター系1を構成するローターブレード2に内蔵されたアクチュエータ4が、ローターブレード2の前縁と後縁との間に設けられたスポイラー3をローターブレード2の上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に進退移動させ、そしてこれもローター系1を構成するドライブシャフト7の上端部に固定されたフェアリング10内の制御装置5が、各スポイラー3が各ローターブレード2の回転タイミングに対応して進退移動するように各アクチュエータ4を作動させる。
【0030】
従って、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、各ローターブレード2がその回転方向前方のローターブレード2の翼端渦と干渉する回転位置に到達するタイミングで、各スポイラー3をローターブレード2の上面または下面から、翼端渦との干渉の度合いを緩和する方向に適宜突出させて、ローターブレード2の高さを局所的に変化させるとともにローターブレード2の前縁付近の圧力を瞬時に変化させることで、翼端渦とローターブレード2との干渉を緩和して、BVI騒音を低減させることができ、しかも、かかる中間位置のスポイラー3の進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、スポイラー3を駆動するアクチュエーター4を容易に、ローター系1の特にローターブレード2内に納め得る程度に小型に構成できるとともに、スポイラー3の高い応答性も容易に達成することができる。
【0031】
さらに、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、ローター系1に含まれてローターブレード2を回転させるドライブシャフト7に設けられたローターコイル6aを有し、ドライブシャフト7の回転によって発電した電力をローターコイル6aからアクチュエーターに供給する発電機6を具えているので、ドライブシャフト7を支持するマスト8にアクチュエーター4への電力供給用のスリップリングを設ける必要がなく、ローター系1に独立した騒音低減装置を搭載することができるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0032】
また、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、アクチュエーター4が、弾性平板4aをピエゾ素子4bによって撓ませて、その撓み力でスポイラー3を進退移動させるものであるので、アクチュエーター4が、軽量で薄型かつ応答性の高いものとなり、それゆえアクチュエーター4を薄いローターブレード2内に搭載することができ、しかも、しかも、アクチュエーター4への供給電力が止まった場合でも、スポイラー3が弾性平板4aの弾性力で自動的に中立位置に戻るので、通常のヘリコプターの操縦性を確保することができる。
【0033】
さらに、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、この実施例が適用されるローターブレード2は断面形状が先端部から基端部まで略一定であることから、そのローターブレード2の先端部からそのローターブレード2の全長の1/4程度基端部寄りの部位に配置されているスポイラー3は、そのローターブレード2の高効率作動部位に位置していることになるので、スポイラー3のわずかな進退移動でもローターブレード2を上下させ得て、アクチュエーター4をより軽量かつ小型のものとすることができる。
【0034】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えばこの発明においては、ローターブレード2の先端部内に振動センサーを設けて、その振動センサーが検出するローターブレード2の振動を打ち消すように、制御装置5でアクチュエーター4を作動させてスポイラー3を進退移動させて、スポイラー3をダイナミックダンパーのように振動させてもも良い。
【0035】
また、この発明においては、上記圧力センサー9およびCPU5aを省略するとともに上記発電機6を制御装置としても機能させ、ローターコイル6aからアクチュエーター4に直接的に、あるいは駆動アンプを介して電力を供給して、ローターコイル6aの出力電力の位相変化によってアクチュエーターを進退移動させるようにしても良い。
【0036】
そして、この発明においては、スポイラーを駆動するアクチュエーターを電磁ソレノイド式のものとして、PWM(パルス幅変調)制御によってそのアクチュエーターを作動させるようにしても良い。
【0037】
さらに、この発明においては、アクチュエーターを、ローター系の他の場所、例えばドライブシャフトの上端部や周囲部等に配置しても良い。
【0038】
なお、この発明におけるスポイラーは、BVI騒音を低減し得るだけでなく、各ローターブレードに設けられるフラップの代わりに各ローターブレードの揚力を微調整し得て、ローター系の振動を抑制することができるとともに、各ローターブレードが後方へ向かって回転する際のローターブレードからの気流の剥離を防止し得て、ローター系の作動効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置の一実施例の構成を、ローター系を側方から見た状態で示す模式図である。
【図2】 上記実施例のBVI騒音低減装置の構成を、ローター系を上方から見た状態で示す模式図である。
【図3】 (a)は、その実施例のBVI騒音低減装置のスポイラーおよびアクチュエーターを、ローターブレードを切り欠いて示す斜視図、(b)は、(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 上記実施例のBVI騒音低減装置の発電機および制御装置をアクチュエーターとともに示す構成図である。
【図5】 翼端渦騒音(BVI)の発生状況を示す説明図である。
【図6】 (a)は、翼端渦へのローターブレードの突入前のそれらの位置関係を示す説明図、(b)は、(a)の位置関係での翼上面上の圧力分布を示す説明図である。
【図7】 (a)は、翼端渦へのローターブレードの突入時のそれらの位置関係を示す説明図、(b)は、(a)の位置関係での翼上面上の圧力分布を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ローター系
2 ローターブレード
2a リブ
2b 前縁
3 スポイラー
4 アクチュエーター
4a 弾性平板
4b ピエゾ素子
5 制御装置
5a CPU
5b 駆動アンプ
6 発電機
6a ローターコイル
6b ステーターコイル
7 ドライブシャフト
8 マスト
9 圧力センサー
10 フェアリング

Claims (10)

  1. ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させるに際し、
    前記ローターブレードの前縁と後縁との間に後縁から離間させて、そのローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に直線的に進退移動し得るスポイラーを設けるとともに、
    前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に、前記スポイラーを進退移動させるアクチュエーターを設け、
    前記ローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して前記スポイラーが進退移動するように前記アクチュエーターを作動させることを特徴とする、ヘリコプター用BVI騒音低減方法。
  2. 前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに発電機のコイルを設け、前記ドライブシャフトの回転によって前記発電機で発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給することを特徴とする、請求項1記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
  3. 前記発電機が発電した電力の位相から検出した、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦にそれに続く前記ローターブレードが接近する回転タイミングに基づき、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦をそれに続く前記ローターブレードが避けるように、前記アクチュエーターを作動させて前記スポイラーを進退移動させることを特徴とする、請求項2記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
  4. 前記ローターブレードの前縁に設けた圧力センサーからの出力信号に基づき、前記スポイラーの突出方向および突出量の少なくとも一方を制御することを特徴とする、請求項1から請求項3までの何れか記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
  5. 前記ローターブレードに設けた振動センサーからの出力信号の振動数に基づき、前記アクチュエーターで前記スポイラーをその進退移動方向に振動させることを特徴とする、請求項1から請求項4までの何れか記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
  6. ヘリコプターのローターブレード(2)のBVI騒音を低減させる装置において、
    前記ローターブレードの前縁と後縁との間に後縁から離間して設けられて、そのローターブレードの上面および下面の各々に対しその面から突出する位置と突出しない位置との間で概略上下方向に直線的に進退移動し得るスポイラー(3)と、
    前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系(1)に設けられて、前記スポイラーを進退移動させるアクチュエーター(4)と、
    前記ローター系に設けられて、前記スポイラーが前記ローターブレードの回転タイミングまたは振動数に対応して進退移動するように前記アクチュエーターを作動させる制御装置(5)と、
    を具えることを特徴とする、ヘリコプター用BVI騒音低減装置。
  7. 前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフト(7)に設けられたコイル(6a)を有し、そのドライブシャフトの回転によって発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給する発電機(7)を具えることを特徴とする、請求項6記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
  8. 前記アクチュエーターは、弾性平板(4a)をピエゾ素子(4b)によって撓ませて前記スポイラーを進退移動させるものであることを特徴とする、請求項6または請求項7記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
  9. 前記スポイラーは、前記ローターブレードの高効率作動部位に配置されていることを特徴とする、請求項6から請求項8までの何れか記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
  10. 前記スポイラーは、断面形状が先端部から基端部まで略一定の前記ローターブレードの先端部からそのローターブレードの全長の1/4程度基端部寄りの部位に配置されていることを特徴とする、請求項9記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
JP2000001685A 2000-01-07 2000-01-07 ヘリコプター用bvi騒音低減方法および装置 Expired - Fee Related JP3803222B2 (ja)

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