JP3802779B2 - 異種光ファイバの接続方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モードフィールド径(MFD)が異なる異種光ファイバを接続するための異種光ファイバの接続方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、光通信システムの大容量化が要求されており、この要求に応えるべく、単一モード光ファイバ(例えば1300nm零分散光ファイバ)と、この単一モード光ファイバの分散および分散スロープを補償する分散補償光ファイバ(例えば、DCF(Dispersion Compsating Fiber)、DSCF(Dispersion Slope Compsating Fiber)、RDF(Reverse Dispersion Fiber)等)とを接続し、例えば1550nm帯の高速通信を行う分散マネージメント線路が盛んに検討されている。このような分散マネージメント線路が光海底ケーブル等に使用される場合には、低損失かつ高強度な異種光ファイバの接続が望まれている。
【0003】
単一モード光ファイバである例えば1300nm零分散光ファイバの波長1550nmでのMFDは9〜11μmである。また、MFD拡大型単一モード光ファイバにおいては、MFDは11μm以上である。これに対して、負の高分散特性を持つ分散補償光ファイバは、比屈折率差Δが3%前後と高く、コア径が2〜3μmであり、MFDは5μm程度である。このように、分散補償光ファイバは、単一モード光ファイバに比べて、コア径およびMFDが小さい。
【0004】
このようなMFDが異なる異種光ファイバを接続すると、MFDの違いに起因して、接続損失が大きくなる。例えば、MFDが10μmである単一モード光ファイバと、MFDが5μmである分散補償光ファイバとを光軸を一致させて接続した場合の接続損失は、約1.94dBとなる。
【0005】
この接続損失増加を抑制するために、異種光ファイバの接続端面同士を接続した後に、例えばTEC法(Thermally Difused Expanded Core)による処理を行う。その処理とは、例えば、単一モード光ファイバと分散補償光ファイバとの接続部分を加熱し、これにより、コア内のGe(ドーパント)を拡散させて分散補償光ファイバのMFDを拡大して単一モード光ファイバのMFDに合わせる処理である。この処理を施すことによって、接続損失を大幅に低減できることとなる。
【0006】
図7には従来の異種光ファイバの接続工程の一例を示すフロー図が表されている。まず、例えば単一モード光ファイバと分散補償光ファイバというような異種光ファイバの各接続端部の被覆層をそれぞれ除去して光ファイバの接続端部を露出させる(ステップ101)。そして、それら各光ファイバの露出部分を洗浄する(ステップ102)。次に、その洗浄が成された各光ファイバの露出部分の表面に保護層を形成する(ステップ103)。
【0007】
その後、各光ファイバの先端部分を切断する(ステップ104)。然る後に、それら異種光ファイバの接続端面同士を突き合わせて融着接続する(ステップ105)。そのような光ファイバの切断処理と、光ファイバの融着接続処理とを行う際には、光ファイバの露出部分(先端部分)を例えば固定部材に形成されたV溝に配置し、その上側からクランプ部材によって押え付けることによって、光ファイバの露出部分を固定部材に位置決め固定する。このような把持固定状態で、光ファイバの切断処理や融着接続処理が行われる。ステップ103にて光ファイバの露出部分の表面に形成された保護層は、把持固定に因る光ファイバへの悪影響を軽減するためのものである。
【0008】
然る後に、接続し合う光ファイバの接続端部のMFDを合わせるための加熱処理を行う(ステップ106)。
【0009】
ところで、融着接続処理や加熱処理の加熱に起因して異種光ファイバの接続部分の表面部には微小なクラックが発生する。このようなクラックがあると、異種光ファイバの接続部分の強度が低下することから、この強度劣化を防止するために、加熱処理後に、光ファイバの接続部分の表面部をエッチングしてクラックを除去する(ステップ107)。
【0010】
然る後に、光ファイバの露出部分の表面に被覆層を形成して異種光ファイバの接続部分を覆う(ステップ108)。その後に、プルーフテストにより、異種光ファイバが規格通りに接続されたか否かが検査される(ステップ109)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今までのやり方では、単一モード光ファイバと分散補償光ファイバの接続部分の平均的な破断強度は約1GPa程度であり、満足のいく強度が得られていなかった。
【0012】
その原因を本発明者が探ったところ、次に示すようなことが分かった。異種光ファイバの接続部分の加熱処理時に、異種光ファイバの接続部分に形成されている保護層が燃焼して異物が多量に発生し、その異物が光ファイバ表面に焼き込まれて微小なクラックが多数生じていた。このような異物焼き込みに因るクラックは、エッチング処理によって取り除くことができていなかった。このため、その除去されなかったクラックに起因して異種光ファイバの接続部分の強度が劣化していた。
【0013】
そこで、異種光ファイバの接続工程において、光ファイバ切断処理や、異種光ファイバの接続端部の融着接続処理を行う際に、被覆が除去されている光ファイバ露出部分を把持固定するのではなく、被覆層により覆われている光ファイバ部位(被覆部分)を把持固定する構成とした。これにより、把持固定による露出光ファイバへの悪影響を考慮する必要が無くなり、図5の異種光ファイバの接続工程のフロー図に示されるように、光ファイバの露出部分に保護層を形成しないことが考えられる。
【0014】
この場合、異種光ファイバの接続部分の加熱処理時に、異種光ファイバの接続部分に保護層が形成されていないので、保護層が燃焼して異物が多量に発生する事態は発生せず、異物の焼き込みに起因したクラック発生を低減することができる。
【0015】
しかしながら、この手法では、確かに、異種光ファイバの接続部分の強度劣化を防止することはできたが、破断実験により、図6に示されるような光ファイバ1,2の露出部分と、被覆部分(被覆層3により覆われている部分)との境界領域Kにおいて、破断し易くなっていることが分かった。
【0016】
その原因は次に示すようなことであった。図6に示すように、異種光ファイバ1,2の接続部分にエッチング液5を付着させて、その接続部分のエッチング処理を行っているが、このエッチング処理時に、エッチング液5から気化したエッチングガスが異種光ファイバ1,2の接続部分の周囲に漂い、その一部が、図6の矢印の如く光ファイバ1,2の外周面と被覆層3との間の微小な隙間に入り込み滞留する。これにより、その隙間に浸入したエッチングガスによって光ファイバ1,2が過剰にエッチングされてしまい、これに起因して、その光ファイバ部分Kの強度が劣化してしまうというものであった。
【0017】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、接続損失が低く、かつ、満足のいく強度を持つ異種光ファイバの接続状態を得ることができる異種光ファイバの接続方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、ファイバ外周が被覆層により覆われていてモードフィールド径が異なる異種光ファイバを接続する方法において、光ファイバの接続端部の被覆層を除去して光ファイバを露出させた後に、異種光ファイバの接続端面同士を突き合わせて融着接続し、その後、その接続部分を加熱して当該接続部分の各光ファイバのモードフィールド径を合わせる加熱処理を行い、然る後に、少なくとも露出光ファイバの根元外周面を被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆い、その後、エッチング液により保護層を溶解して加熱処理が施された光ファイバ表面部分を露出させるとともに、加熱処理が施された光ファイバ表面部分をエッチングすることを特徴として構成されている。
【0019】
第2の発明は、第1の発明の構成を備え、加熱処理を行う直前の処理として、少なくとも加熱処理対象の部位を洗浄することを特徴として構成されている。
【0020】
第3の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、エッチング処理区間は加熱処理区間を含み、かつ、エッチング処理区間とその両側の被覆層除去端面との間は非エッチング処理区間と成していることを特徴として構成されている。
【0021】
この発明では、異種光ファイバの接続部分に保護層が形成されていない状態で、その異種光ファイバの接続部分の加熱処理を行う。これにより、保護層の燃焼に因る異物の多量発生を回避することができる。このため、異物焼き込みに起因したクラック発生を低減できて、クラックに起因した異種光ファイバの接続部分の強度劣化が防止できる。
【0022】
また、この発明では、加熱処理の後に、少なくとも露出光ファイバの根元外周面を被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆ってから、加熱処理が施された光ファイバ表面部分をエッチングする。これにより、加熱に起因した異種光ファイバの接続部分表層のクラックをエッチング除去する。このとき、露出光ファイバの根元外周面は被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆われているので、エッチングガスが光ファイバの外周面と被覆層との間の隙間に入り込むのを防止することができる。これにより、光ファイバの露出部分と被覆部分との境界領域において光ファイバの強度が劣化する事態を防止できる。
【0023】
よって、異種光ファイバを低損失で、かつ、高強度で接続することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0025】
この実施形態例における異種光ファイバの接続工程において特徴的なことは、図1のフロー図に示されるように、異種光ファイバの接続部分を加熱処理する直前の処理として、光ファイバの少なくとも加熱処理対象領域を洗浄すること(ステップS5)と、加熱処理の後に露出光ファイバの根元外周面を被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆うこと(ステップS7)である。
【0026】
すなわち、この実施形態例では、まず、ステップS1において、図2(a)に示されるように、単一モード光ファイバと分散補償光ファイバというようなMFD(モードフィールド径)が異なる異種光ファイバ1,2の各接続端部の被覆層3を除去する。そして、ステップS2において、その露出した各光ファイバ1,2の接続端部を洗浄し、ステップS3において、図2(b)に示すように、それら各露出光ファイバの先端部分を設定の長さ分だけ切断する。その後、ステップS4において、図2(c)に示すように、それら切断後の各光ファイバ1,2の先端面(接続端面)同士を突き合わせて融着接続する。
【0027】
この実施形態例では、光ファイバ1,2の切断処理や、融着接続処理を行う際には、被覆層3によって覆われている光ファイバ被覆部分を把持固定する。
【0028】
次に、ステップS5において、異種光ファイバ1,2の接続部分を洗浄して、異種光ファイバ1,2の接続部分に付着している異物を低減する。この洗浄は、例えば、異種光ファイバ1,2の接続部分を洗浄液に漬けることによって行う。洗浄液の例を挙げると、例えば、アルコール、アセトン、強酸(硫酸、塩酸、硝酸等)、弱酸(強酸を純水で希釈したものも含む)等がある。
【0029】
然る後に、ステップS6において、異種光ファイバ1,2のMFDを合わせるための加熱処理を行う。この加熱処理を行う際には、異種光ファイバ1,2のうちの一方側の端部を光源に接続し、他端側の端部をパワーメータ等に接続する。そして、光源から光を入射させ、他方側の端部から出射した光をパワーメータにより検出して、異種光ファイバ1,2の接続部分の接続損失をモニタしながら、加熱処理を行う。そのモニタされた接続損失が予め定めた設定値(例えば、波長1550nmでの接続損失が0.1dB以下)となったときに、加熱処理を終了する。
【0030】
ところで、この実施形態例では、ステップS3の光ファイバ切断処理や、ステップS4の融着接続処理において、被覆層3により覆われている光ファイバ被覆部分を把持固定する構成としている。これにより、異種光ファイバ1,2の接続部分を加熱処理する前に、把持固定の悪影響を防止するための保護層を光ファイバ1,2の露出部分に形成しなくて済むこととなる。このため、この実施形態例では、光ファイバ切断処理の前の保護層形成工程(図7のステップ103)が省略されており、加熱処理を行う際には、異種光ファイバ1,2の接続部分には保護層が形成されていない状態である。
【0031】
これにより、従来のような加熱処理時における保護層の燃焼による異物大量発生を無くすことができる。その上、この実施形態例では、加熱処理直前の洗浄工程によって異種光ファイバ1,2の接続部分表面の異物が低減された状態で加熱処理が行われる。これらのことから、加熱処理時に、異物の焼き込みに起因したクラック発生を小さく抑制することができることとなり、その異物の焼き込みに因るクラックに起因した異種光ファイバ1,2の接続部分の強度劣化を防止することができる。
【0032】
ステップS7において、図3(a)に示すように、異種光ファイバ1,2の接続部分から被覆層3の除去端面Tを介し被覆層3の端部上面に掛けて保護層8を形成する。これにより、露出光ファイバ1,2の根元外周面は被覆層3の除去端面Tと共に保護層8により覆われた状態となる。保護層8を構成する材料としては、例えば、ワニス(ウレタン系、エステル系、アミド系、ナイロン系など)や、樹脂系接着剤等がある。
【0033】
次に、ステップS8において、図3(b)に示されるように、少なくとも異種光ファイバ1,2の加熱処理が施された部位に、エッチング液5を付着させる。これにより、エッチング液5が付着した部分の保護層8は溶解して、光ファイバ1,2が露出してエッチング液5に晒されて、その光ファイバ1,2の表面部がエッチングされる。このエッチング処理により、異種光ファイバ1,2の接続部分の表面部に形成されていたクラックを除去する。
【0034】
この実施形態例では、エッチング処理区間LEは加熱処理区間LHを含み、かつ、エッチング処理区間LEとその両側の被覆層3の除去端面Tとの間は非エッチング区間と成している。換言すれば、エッチング処理区間LEは加熱処理区間LH以上、かつ、被覆層3が除去されている区間(ベアファイバ区間LB)未満の区間(LH≦LE<LB)である。
【0035】
然る後に、ステップS9において、光ファイバ1,2の露出部分を再び被覆し、ステップS10において、それら異種光ファイバ1,2の接続部分のプルーフテストを行う。
【0036】
この実施形態例によれば、光ファイバ切断処理や、異種光ファイバ1,2の融着接続処理を行う際に、被覆層3により覆われている光ファイバ1,2の被覆部分を把持固定する構成とし、これにより、異種光ファイバ1,2の接続部分に保護層が形成されていない状態で、加熱処理を行う構成とした。このため、異種光ファイバ1,2の加熱処理時に、保護層の燃焼に因る異物の多量発生を無くすことができる。
【0037】
その上、この実施形態例では、加熱処理を行う直前に、異種光ファイバ1,2の接続部分を洗浄するので、加熱処理工程において、異種光ファイバ1,2の接続部分の周囲に浮遊している異物を非常に少なくすることができる。
【0038】
これにより、異物の焼き込みに起因して異種光ファイバ1,2の接続部分のクラック発生を非常に少なく抑制することができる。よって、異種光ファイバ1,2の接続部分の強度を向上させることができる。
【0039】
また、この実施形態例では、加熱処理を行った後に、異種光ファイバ1,2の接続部分から被覆層3の端部にかけて保護層8を形成したので、図3(b)の矢印に示されるように、保護層8によって、エッチングガスが被覆層3と光ファイバ1,2との間の隙間に浸入することが阻止されることとなる。
【0040】
これにより、光ファイバ1,2の露出部位と被覆部分との境界領域Kにおける光ファイバの過剰エッチングを防止することができて、その境界領域Kにおける強度劣化を回避することができる。
【0041】
したがって、接続損失が低く、かつ、高強度な異種光ファイバ1,2の接続を得ることができる。
【0042】
本発明者は、この実施形態例の効果を実験により確認している。その実験とは、加熱処理直前の洗浄の有無と、加熱処理時の保護層の有無と、エッチング幅LEとの各条件の組み合わせが互いに異なる接続手法でもって異種光ファイバ1,2を接続して、サンプルA〜Fの異種光ファイバ1,2の接続部分を形成した。そして、それらサンプルA〜Fに関して、それぞれ、破断強度を調べたものである。
【0043】
なお、サンプルA〜Fは、何れも、MFD拡大型単一モード光ファイバと分散補償光ファイバを接続したものである。そのMFD拡大型単一モード光ファイバは、コアがGeO2ドープシリカにより形成され、クラッドが純シリカにより形成されており、MFDが12μmのものである。また、分散補償光ファイバのコアは、コアがGeO2高濃度ドープシリカにより形成され、クラッドが純シリカにフッ素がドープされて形成されており、MFDは4.9μmのものである。また、この実験では、各サンプルとも10個ずつ形成し、それら10個の平均破断強度と、その標準偏差と、破断位置とを調べた。
【0044】
表1には、各サンプルA〜Fに関する破断実験の結果が、加熱処理直前の洗浄の有無と、加熱処理時の保護層の有無と、エッチング幅LEとの各条件と共に示されている。なお、表1における「主な破断位置」の欄において、K1は異種光ファイバ1,2の接続部分において破断したことを表し、K3は光ファイバ1,2の露出部分と被覆部分との境界領域Kにおいて破断したことを表している。
【0045】
【表1】
【0046】
この表1に示されるように、加熱処理の前に保護層を形成したもの(サンプルA、C)に比べて、この実施形態例の如く加熱処理後に保護層を形成したもの(サンプルD、E、F)は破断強度が向上している。これにより、加熱処理後に保護層を形成することによって、異種光ファイバ1,2の接続部分に異物焼き込みに因るクラック発生を抑制できて、異種光ファイバ1,2の接続部分の強度劣化が防止できることが分かる。
【0047】
特に、サンプルDとサンプルEの比較から、加熱処理の直前に異種光ファイバ1,2の接続部分を洗浄することによって、より一層、異種光ファイバ1,2の接続部分の異物焼き込みに起因したクラック発生が防止されて、異種光ファイバ1,2の接続部分の強度劣化を抑制することができることが分かる。
【0048】
また、サンプルBよりもサンプルD、Eは破断強度が向上している。かつ、サンプルBは光ファイバ1,2の露出部分と被覆部分との境界領域Kで破断しているものがあるのに対して、サンプルD、Eでは、その境界領域Kで破断しているものは無い。この結果から、エッチング処理を行う際に、露出光ファイバ1,2の根元外周面が被覆層3の除去端面Tと共に保護層8により覆われていることによって、光ファイバ1,2の露出部分と被覆部分との境界領域Kにおける過剰エッチングが防止できて、光ファイバ1,2の強度劣化を防止できていることが分かる。
【0049】
さらに、サンプルCと、サンプルD、Eとの比較から、エッチング処理区間LEは加熱処理区間LHを含む(LE≧LH)もの(サンプルD、E)は、エッチング処理区間LEが加熱処理区間LHよりも狭い(LE<LH)もの(サンプルC)よりも、破断強度が強いことが分かる。これにより、サンプルCは、破断強度が弱く、しかも、破断位置が異種光ファイバ1,2の接続部分であることから、加熱処理に因るクラックをエッチングにより除去しきれず、残存しているのに対して、サンプルD、Eでは、異種光ファイバの接続部分のクラックをエッチングにより除去できて、強度劣化が防止できていることが分かる。
【0050】
さらにまた、サンプルEとサンプルFの比較から、エッチング処理区間LEと被覆層3の除去端面Tとの間に非エッチング区間を設けることにより、強度劣化を抑制できることが分かる。サンプルFの如く、エッチング処理区間LEが光ファイバ1,2の露出区間LBを越えると、露出光ファイバ1,2の根元外周面から被覆層3の端部に掛けて保護層8により覆われていても、エッチング液5により保護層8が溶解されてエッチング液5が光ファイバ1,2と被覆層3との間の隙間に浸入して過剰な光ファイバ1,2のエッチングが行われる。これにより、光ファイバ1,2の露出部分と被覆部分の境界領域Kにおいて、強度が劣化してしまうこととなる。これに対して、サンプルEの如く、エッチング処理区間LEと被覆層3の除去端面Tとの間に非エッチング区間を設けることにより、そのような過剰エッチングを防止できることが分かる。
【0051】
なお、この発明は本実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、この実施形態例では、加熱処理の直前の処理として、光ファイバ1,2の接続部分を洗浄していたが、例えば、低塵空間内(例えばクリーン度がクラス1000以下の空間内)で加熱処理を行うとした場合には、図4のフロー図に示されるように、加熱処理の直前の処理としての光ファイバ洗浄処理を省略してもよい。
【0052】
【発明の効果】
この発明によれば、少なくとも露出光ファイバの根元外周面を被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆ってから、異種光ファイバの接続部分の表面部分をエッチングする。これにより、光ファイバの外周面と被覆層との間の隙間にエッチングガス等が浸入して光ファイバが過剰にエッチングされてしまうのを防止しつつ、加熱に起因した異種光ファイバの接続部分のクラックをエッチング除去することができる。これにより、光ファイバの強度劣化を防止することができる。
【0053】
また、加熱処理を行う際には、異種光ファイバの接続部分には保護層が形成されていないので、保護層の燃焼に起因した異物多量発生を回避することができる。このため、異物の焼き込みに起因したクラック発生を防止することができる。このことも、光ファイバの強度劣化を防止することができる要因の一つである。
【0054】
さらに、モードフィールド径が異なる異種光ファイバの接続であるが、モードフィールド径を合わせる加熱処理を行っているので、異種光ファイバの接続損失を低く抑制することができる。
【0055】
したがって、低損失、かつ、高強度の異種光ファイバの接続を得ることができる。
【0056】
加熱処理を行う直前の処理として、少なくとも加熱処理対象の部位を洗浄するものにあっては、異種光ファイバの接続部分の表面の異物を低減した状態で、加熱処理を行うことができるので、異物の焼き込みに起因したクラック発生を、より一層削減することができる。これにより、異種光ファイバの接続部分の強度劣化を、より抑制することができる。
【0057】
エッチング処理区間は加熱処理区間を含み、かつ、エッチング処理区間とその両側の被覆層除去端面との間には、非エッチング処理区間と成しているものにあっては、エッチング液が光ファイバの外周面と被覆層との間の隙間に浸入することを確実に防止することができて、無用なエッチングに起因した光ファイバの強度劣化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る異種光ファイバの接続方法の一実施形態例を示す接続工程のフロー図である。
【図2】図1に示す異種光ファイバの接続工程を説明するためのモデル図である。
【図3】図2に引き続き、異種光ファイバの接続工程を説明するためのモデル図である。
【図4】その他の実施形態例を示す接続工程のフロー図である。
【図5】異種光ファイバの接続工程の提案例を示す接続工程のフロー図である。
【図6】保護層を形成せずにエッチング処理を行った場合の問題点を説明するための図である。
【図7】異種光ファイバの接続工程の従来例を示す接続工程のフロー図である。
【符号の説明】
1,2 光ファイバ
3 被覆層
5 エッチング液
8 保護層
Claims (3)
- ファイバ外周が被覆層により覆われていてモードフィールド径が異なる異種光ファイバを接続する方法において、光ファイバの接続端部の被覆層を除去して光ファイバを露出させた後に、異種光ファイバの接続端面同士を突き合わせて融着接続し、その後、その接続部分を加熱して当該接続部分の各光ファイバのモードフィールド径を合わせる加熱処理を行い、然る後に、少なくとも露出光ファイバの根元外周面を被覆層の除去端面部分と共に保護層により覆い、その後、エッチング液により保護層を溶解して加熱処理が施された光ファイバ表面部分を露出させるとともに、加熱処理が施された光ファイバ表面部分をエッチングすることを特徴とした異種光ファイバの接続方法。
- 加熱処理を行う直前の処理として、少なくとも加熱処理対象の部位を洗浄することを特徴とした請求項1記載の異種光ファイバの接続方法。
- エッチング処理区間は加熱処理区間を含み、かつ、エッチング処理区間とその両側の被覆層除去端面との間は非エッチング処理区間と成していることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の異種光ファイバの接続方法。
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