JP3802175B2 - 経皮吸収治療用製剤の連続製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、研究用並びに教育用、実験等に供される経皮吸収治療用製剤の連続製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
経皮吸収治療用製剤は、バッキング膜の片面に経皮治療用の薬剤を塗布することにより形成され、薬剤塗布層を患部等に貼付することにより貼り製剤として使用されるものであるが、このような製剤は、例えば薬剤の塗布層を多層構造とすることにより薬効を時間制御することができること等から、人体用、植物用等の各種の用途が考えられている。
このような製剤の薬効等については、従来より薬科大学や企業の研究室や研究所において各種の研究、実習等が行われているが、その際、研究、実習用に供される経皮吸収治療用製剤はその都度手作りで作成するか、個々の研究室において特定の製剤毎に専用の製造装置の開発を行う必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述ような手作りの経皮治療用製剤は、一定品質のものを複数作成することが難しく、品質保証も困難であり一般に再現性が悪く、薬効等の臨床試験、研究に供するには不適であった。
また従来の機械による製造では、長い乾燥工程が必要であるが、乾燥時間は塗布する薬剤の種類等により異なるため、乾燥時間が短い場合は乾燥工程を停止させ乾燥終了を待つ必要があり、製造工程の連続性が無く、品質が一定しないという問題もあった。
【0004】
そこで、研究用の経皮吸収治療用製剤を一定品質で製造することのできる汎用的な製造装置が望まれていた。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、研究用等に供される経皮吸収治療用製剤を連続的に製造することができ、単層から多層膜まで各種の製剤を製造可能な小型軽量の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、
第1に、第1のフィルムを供給する第1の供給リールと、同第1の供給リールから供給された第1のフィルムの表面に薬剤を塗布する薬剤塗布部と、上記第1のフィルムを通過させることにより同フィルムの薬剤を乾燥する乾燥経路と、第2のフィルムを供給する第2の供給リールと、上記第2の供給リールから供給された第2のフィルムを上記乾燥経路を通過してきた上記第1のフィルムの薬剤塗布面に圧着して貼り合わせフィルムを形成する圧着ロール部と、同ロール部を出た上記貼り合わせフィルムを巻き取る巻き取りリールとを有し、上記薬剤塗布部から上記圧着ロール部に至る上記乾燥経路を周回経路とし、同周回経路の終端部に上記圧着ロール部を設けたことを特徴とする経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
第2の供給リールに例えば経皮吸収治療用製剤のバッキング膜のロールを第2のフィルムとして取り付け、その先端部を圧着ロール部を介して巻き取りリールに巻き付けてその先端を貼り付ける。一方、第1の供給リールに例えば経皮吸収治療用製剤のリリースライナーロールを第1のフィルムとして供給し、同ライナー先端部を薬剤塗布部、乾燥経路、圧着ロール部を介して巻き取りリールに巻き付け貼り付ける。その後上記第1の供給リール、第2の供給リール、及び巻き取りリールを所定方向に回転して、両フィルムの上記巻き取りリールへの巻き取りを開始する。上記リリースライナーは、薬剤塗布部によりその表面に薬剤が塗布され、薬剤の塗布されたリリースライナーが乾燥経路に導かれ、同ライナーは周回経路に沿って走行し、塗布層の乾燥が行われる。リリースライナーには上記乾燥経路の終端部の圧着ロール部において同ライナーの薬剤塗布面側に第2の供給リールから供給されるバッキング膜が圧着し、リリースライナー、薬剤塗布層及びバッキング膜からなる貼り合わせフィルムが形成され、その状態で巻き取りリールに巻き取られる。上記乾燥経路は周回経路を構成し、その終端部に圧着ロール部を設けているので、乾燥経路が長い場合でも装置全体をコンパクトに構成することができる。また、巻き取りリール等の回転速度を変化させることにより乾燥時間を制御することができる。
第2に、上記第2の供給リールに隣接して第3のリールを設け、上記第2の供給リールに上記貼り合わせフィルムを取り付けて同フィルムから剥ぎ取った一方のフィルムのみを上記第3のリールで巻き取り可能とし、上記貼り合わせフィルムの薬剤の塗布された他方のフィルムを上記圧着ロール部に供給し、上記他方のフィルムの薬剤塗布面と上記第1のフィルムの薬剤塗布面を上記圧着ロール部で圧着することにより多層膜の貼り合わせフィルムを製造するものであることを特徴とする上記第1記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
巻き取りリールに巻き取られた貼り合わせフィルム(リリースライナー、薬剤塗布層及びバッキング膜により形成されるフィルム)の第2の供給リールへの巻き替えを行い、巻き替え後の貼り合わせフィルムのリリースライナー(一方のフィルム)のみを剥ぎ取り、その先端を第3のリールに貼り付けて巻き取り可能とし、上記貼り合わせフィルムの薬剤の塗布されたバッキング膜(他方のフィルム)を上記圧着ロール部を介してその先端を巻き取りリールに貼付ける。一方、第1のフィルムは、上記薬剤塗布部、乾燥経路から上記圧着ロール部を通過させた後、その先端部を上記巻き取りリールに貼り付ける。その後、上記第1の供給リール、第2の供給リール、巻き取りリール、及び第3のリールを所定方向に回転して、上記リリースライナー(一方のフィルム)の上記第3のリールへの巻き取り(剥ぎ取り)を行いながら、第1のフィルムと上記バッキング膜(他方のフィルム)の上記巻き取りリールへの巻き取りを行う。これにより、バッキング膜の薬剤の塗布面と第1のフィルムの薬剤の塗布面が上記圧着ロール部により圧着され、多層膜の貼り合わせフィルムとして巻き取りリールに巻き取られる。これにより、多層膜の経皮吸収治療用製剤を製造することができる。
第3に、上記乾燥経路に沿って複数の案内ロールを所定間隔を以って設け、同案内ロールにより上記第1のフィルムの裏面を案内するものであることを特徴とする上記第1又は2に記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成される。
乾燥経路の第1のフィルムは、同経路に沿って設けられた複数の案内ロールにその裏面を案内されながら走行する。従って、案内ロールへの薬剤の付着を防止することができ、また、案内ロールへの第1のフィルムの架け渡しを行う際、乾燥経路に沿ういくつかの案内ロールへの架け渡しを省略してバイパスすることにより乾燥経路の長さを変化させることが可能となり、例えば案内ロール全体を使用して第1のフィルムを通過させた場合の乾燥経路と比較して、より短い乾燥経路を容易に構成することができる。
第4に、上記薬剤塗布部は、薬剤の供給される薬剤受皿と、同皿内に下部が位置するように設けられた薬剤塗布ロールと、同薬剤塗布ロールに近接配置され同ロールとの間隙を調整可能に設けられた膜厚調整ロールと、上記第1のフィルムを上記薬剤塗布ロールに圧着する圧着ロールにより構成し、上記薬剤塗布ロールの回転により上記間隙を通過した薬剤を上記薬剤塗布ロールと圧着ロールとの間を通過する上記第1のフィルムの表面に塗布するものであることを特徴とする上記第1又は2又は3に記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
薬剤塗布部において薬剤塗布ロール及び圧着ロールを回転すると、薬剤受皿内の薬剤が上記塗布ロールの回転に伴って同ロール表面に供給され、膜厚調整ロールと上記塗布ロールとの間隙により膜厚が決定され、かかる間隙を通過した所定厚の薬剤が第1のフィルムに塗布される。従って、上記間隙を調整することにより薬剤の膜厚を高精度にコントロールすることができる。
第5に、上記薬剤塗布部は、上記受皿の内部に一対の仕切板を設けて同仕切板間に薬剤投入部を構成し、上記仕切板を左右方向に摺動自在としたものであることを特徴とする上記第4記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
薬剤は薬剤受皿において一対の仕切板により構成される薬剤投入部内に投入される。この場合、仕切板を左右方向に摺動させることにより第1のフィルムへの薬剤の塗布幅を任意に決定することができ、また極めて少量の薬剤にも対応することが可能である。
第6に、乾燥経路を通過した後の上記第1のフィルムの裏面に対向してカッターを着脱自在に設け、走行中の第1のフィルムを上記カッターにより走行方向に沿って切断するものであることを特徴とする上記第1〜5の何れかに記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
上記乾燥経路を通過した第1のフィルムとしてのリリースライナーは、薬剤の塗布されていない裏面に設置されたカッターにより走行経路に沿って切り込みが入れられ切断される。かかる切り込みは、貼り合わせフィルム裁断後の経皮吸収用の貼り製剤を使用する場合、第1のフィルムのみを剥ぎ取って塗布層を露出する際の基準線となる。
第7に、上記第2の供給リールと上記巻き取りリールの間に上記貼り合わせフィルムを所定の大きさに刳り貫く裁断刃を設けたものであることを特徴とする上記第1〜6の何れかに記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置により構成されるものである。
切断刃を往復駆動することにより、走行中の貼り合わせフィルムの表面を順次刳り貫き、連続して経皮吸収治療用の貼り製剤を製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図9に基づいて本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置の側面断面図であり、かかる図において、1は装置本体であり、前面側の機枠1aにリリースライナーロール2を支持する供給リール3(第1の供給リール)が軸支されている。上記リール3からは第1のフィルムとしてのリリースライナーRが矢印g方向に引き出される。
【0007】
4は上記供給リール3に引き続いて上記本体1の前面側上部に設けられた薬剤塗布部であり、同本体1に固設さた一対の支持板5と、同支持板5下部に固設され薬液Dの入った薬剤受皿6と、同受皿6内に下部が位置することにより同下部が薬液Dに接するように上記支持板5に軸支され、モータにより矢印a方向に回転駆動される薬剤塗布ロール7と、同塗布ロール7の上方位置において上記支持板5に軸支されると共に上下方向(矢印c,d方向)に摺動することにより薬液Dの塗布膜厚tを調整し得る膜厚調整ロール8と、上記リリースライナーRを上記塗布ロール7に圧着し、モータにより矢印a方向に回転駆動される圧着回動ロール9により構成されている。
上記圧着回動ロール9は、本体上面に軸支10aされバネにより矢印h方向に付勢された回動板10の先端部に軸支されており、上記供給リール3から案内軸22a,22bを介して供給されるリリースライナーRを上記塗布ロール7に圧着するものである。この回動ロール9は、上記矢印a方向に回転駆動されることにより、上記リリースライナーRを矢印g方向に送り出し、このとき上記薬剤塗布ロール7の表面から上記間隙tを通過してきた薬液Dが同ライナーRの表面に塗布される構成となっている。尚、上記バネの付勢力はスイッチにより解除することが可能である。
【0008】
上記薬剤受皿6は、図4,5に示すように同受皿6内を所定幅に仕切る一対の仕切板6a、6bを備えており、同仕切板6a,6bはその前端部を上記受皿6の前方突出部6’に設けられた左右方向スリットSに螺子28,28止めされ、同仕切板6a,6b間に薬剤投入部6cが形成されている。かかる仕切板6a,6bは、上記螺子を緩めて上記スリットSに沿って左右方向(矢印m,n方向)に摺動させることにより上記薬剤投入部6cの幅を調整することができるようになっており、これにより上記リリースライナーRへの薬液Dの塗布幅T、及び薬剤投入部6cの大きさを任意に調整可能となっている。
【0009】
11a乃至11iは案内ロールであり、上記薬剤塗布部4から上記本体1内中央部に設けられたフィルム貼り合わせ部12に至るまでの間に、同貼り合わせ部12を略2周するように所定間隔おきに渦巻き状に配置されている。上記薬剤塗布部4で薬液の塗布されたリリースライナーRはその薬液の塗布されていない面を上記各案内ロール11a乃至11iにより案内されながら、上記貼り合わせ部12の外周を内向き渦巻き状に略2周した後、上記張り合わせ部12の入り口12aに至る構成となっている。かかる渦巻き状の周回経路は本体1の内壁1aと上記貼り合わせ部12の外壁12bにより囲まれた乾燥経路13を構成しており、上記ライナーRに塗布された薬剤はかかる経路を周回中に上記内壁1aに設けられたヒータ14,14により乾燥される。また、薬剤の種類によって乾燥時間が異なるので、例えばリリースライナーRを案内ロール11bから直接案内ロール11gに架け渡すことにより、案内ロール11cから11fまでの経路を省略して、乾燥経路を短くすることができる。尚、15は上記本体1側面に設けられた排気口である。
【0010】
上記貼り合わせ部12において、16はモータにより矢印a方向に回転駆動される送りロール、17は圧着回動ロールであり、同回動ロール17は本体1に軸支18aされた回動板18の先端部に軸支され、同回動板がバネにより矢印i方向に付勢されることで上記送りロール16側に付勢されるようになっている。また上記バネの付勢力は上記圧着回動ロール9と同様にスイッチにより解除することが可能である。尚、本実施の形態では上記圧着回動ロール17及び送りロール16により圧着ロール部が構成されている。
19は、上記貼り合わせ部12の入り口12a直後に着脱自在に設けられたカッターであり、図2に示すようにリリースライナーRの裏面2カ所に対応する位置に所定間隔を以って刃19a,19bが設けられており、リリースライナーR裏面側から切り込みC1,C2を入れて、同ライナーRを3つに切断するものである。尚、切り込みを入れる必要のない場合は、上記カッター19は取り外すことが可能である。
【0011】
20は、バッキング膜Bの供給リール(第2の供給リール)であり、フィルム貼り合わせ時は巻き取りリール21の回転駆動により矢印b方向に回転してバッキング膜Bを矢印j方向に送り出すものである。送り出されたバッキング膜Bは上記送りロール16により矢印g方向に移送されるリリースライナーRの薬剤塗布面側に圧着され、同ライナーRと貼り合わされてリリースライナーR、薬剤塗布層及びバッキング膜Bからなる貼り合わせフィルムF(図6(b)参照)を形成するようになっている。尚、上記供給リール20は後述する貼り合わせフィルムの巻替え時にはモータにより矢印a方向に回転駆動される。
21は巻き取りリールであり、モータにより矢印b方向に回転駆動され、貼り合わせ後の上記フィルムFを案内軸22c,22dを介して巻き取るものである。
【0012】
23は裁断部であり、図3に示すように先端部に2つの略正方形状のトムソン刃24a,24bを備えた裁断刃24及び同裁断刃24を前後方向(矢印e,f方向)に駆動する駆動部25からなり、上記各刃24a,24bが矢印f方向に移動したときに上記案内軸22c,22d間を通過するフィルムFをその切り込みC1,C2を中心として略正方形状に刳り貫きカットし、一度に2つの経皮吸収用の貼り製剤29,29’を製造するものである。カットされた製剤29,29’は上記裁断部23下方に設けられた受け皿26に受け止められる。
27はモータにより矢印a方向に回転駆動される剥ぎ取り用のリール(第3のリール)であり、薬剤層が多層構造の経皮吸収用製剤を作成するときに、供給リール20に巻き替え後の貼り合わせフィルムFを取り付けた状態において、同フィルムFのリリースライナーRのみを矢印a方向に回転することにより剥ぎ取るものである(図8,9参照)。
【0013】
本発明は上述のように構成されるものであり、次に本装置の動作を説明する。
(1)単層膜の経皮吸収治療用製剤の製造(図6参照)
まず、装置の電源をオンし、乾燥機のヒータ14をオンする。その後、圧着回動リール9及び17のバネをオフしてフリー状態とし、リール3にリリースライナーRのロール2を取り付け、さらに巻き取りリール21に巻き取り用の芯を、リール20にバッキング膜Bのロール(合わせフィルムロール)を取り付ける。そして、バッキング膜Bを圧着回動ロール17、案内軸22c,22dを介して巻き取りリール21の芯に巻き付けてその先端をテープ等で貼り付け、供給リール3からリリースライナーRを引き出し、薬剤塗布ロール7、案内ロール11a乃至11i、送りロール16、案内軸22c、22dを介して巻き取りリール21の芯に巻き付け、同じく先端をテープ等で貼り付ける。その後は、圧着回動ロール9及び17のバネをオンする。これにより、各バネの付勢力により薬剤塗布部4においてリリースライナーRが薬剤塗布ロール7に圧着され、フィルム貼り合わせ部12においてリリースライナーR及びバッキング膜Bが送りロール16に圧着される。このとき、巻き取りリール21を1、2周程度矢印b方向に回して同リール21にフィルムを少し巻き付けておく。
【0014】
次に、薬剤受皿6の仕切板6a,6bを所定の幅に固定し、薬剤投入部6c内に薬液Dを投入し、各モータの連動スイッチをオンすると、薬剤塗布ロール7が矢印a方向に、圧着回動ロール9が矢印a方向に、案内ロール16が矢印a方向に、巻き取りリール21が矢印b方向に回転駆動される。すると、薬剤受皿6内の薬液Dは上記塗布ロール表面を圧着回動ロール9方向に送られるが、このとき仕切板6a,6bの幅で塗布層の幅Tが決定され、塗布厚調整ロール8と上記塗布ロール7との間隙tにより薬剤の塗布膜の厚さが決定される。このとき、薬剤投入部6cの範囲を上記仕切板6a,6bにより調整可能であるため、例えば薬液が極めて少量であっても何ら支障無く薬液Dの供給を行うことができる。
上記リリースライナーRは、上記リールの回転駆動により、矢印g方向に走行し、上記薬剤塗布ロール7と圧着回動ロール9との間を通過するときに薬液Dを表面に塗布され、塗布層D1を外向きにした状態で案内ロール11a,11bを経て乾燥経路13に移行する。
【0015】
上記リリースライナーRは案内ロール11b乃至11iに案内されることにより、フィルム貼り合わせ部12の周囲の乾燥経路13を約2回周回し、この間ヒータ14により表面に塗布された塗布層D1の乾燥が行われる。尚、リリースライナーRを案内ロール11bから案内ロール11gに架け渡すことにより乾燥経路13を短縮することができる。また、リール21等の回転速度を制御することにより、乾燥速度を調整することができる。
上記リリースライナーRは案内ロール11iを出たところで上記貼り合わせ部12の入り口12aに至り、カッター19の刃19a,19bにより図2に示す2カ所の切り込みC1,C2が入れられる。その後、上記ライナーRの薬剤塗布面には、バッキング膜供給リール20から供給されるバッキング膜Bが、圧着回動ロール17の付勢力により圧着し、第6図(b)に示すようなリリースライナーR、塗布層D1及びバッキング膜Bからなる単層膜の貼り合わせフィルムFが形成される。該フィルムFは案内軸22c,22dを介して巻き取りリール21により巻き取られていく。以上の工程により単層膜の貼り合わせフィルムFを製造することができる。尚、上記実施の形態では貼り合わせ前にリリースライナーRの切り込みを入れたが、フィルムFの貼り合わせ後に切り込みを入れることも可能である。
【0016】
(2)多層膜の経皮吸収治療用製剤の製造
(a)巻替え(図7参照)
次に、多層膜のフィルムFを製造する場合は、まずカッター19を取り外し、上記(1)と同じ工程で単層膜の貼り合わせフィルムFを巻き取りリール21に巻き取ることにより、切り込みC1,C2の無い貼り合わせフィルムF(図6(b))を製造する。上記巻き取りリール21でフィルムFの巻き取りが終了すると、同リール21の手前でフィルムFを切断し、そのフィルムFの後端をバッキング膜供給リール20の芯に巻き付け、同後端をテープ等で貼り付ける(図7参照)。
その後、図7に示すように、巻替えスイッチをオンすることでバッキング膜供給リール20を矢印a方向に回転駆動し、上記フィルムFを上記供給リール20に巻き取って行き、全部の巻替えが終わったところで巻替えスイッチをオフして、供給リール20の駆動を停止する。
【0017】
(b)多層膜の製剤の製造(図8、図9参照)
巻替え終了後、剥ぎ取りリール27に巻き取り用の芯を取り付け、供給リール20に巻き取った貼り合わせフィルムFのリリースライナーRのみを剥ぎ取り、その先端を剥ぎ取りリール27の芯に貼り付け、塗布層D1を有するバッキング膜Bを圧着回動リール17、案内軸22c,22dを介して巻き取りリール21に巻き付け先端を貼り付ける(図8参照)。
一方、薬剤塗布部4で薬剤を塗布され(塗布層D2とする)、乾燥経路13を通過してきたリリースライナーR’を、案内ロール16及び案内軸22c,22dを通して、その先端を巻き取りリール21の芯に貼り付ける。
【0018】
この状態で、連動スイッチをオンすると、薬剤塗布ロール7が矢印a方向に、圧着回動ロール9が矢印a方向に、送りロール16が矢印a方向に、巻き取りリール21が矢印b方向に、剥ぎ取りリール27が矢印a方向に回転駆動される(図8(a)参照)。これにより、リリースライナーR’の塗布層D2の塗布面に上記供給ロール20から供給されたバッキング膜Bの薬剤塗布面(塗布層D1)が圧着し、図8(b)に示すように塗布層D1,D2の2層膜のフィルムFを製造することができる。
さらに3層膜のフィルムを作成する場合は、上記の手順で作成した2層膜(D1,D2)のフィルムを上記(2)(a)の手順でバッキング膜供給リール20に巻替えを行い、その後は、図9に示すように上記と同様に各ロールを回転駆動すると、2層膜のフィルムFのリリースライナーR’のみを剥ぎ取りリール27で剥ぎ取りながら、乾燥経路13を通過してきたリリースライナーR”の薬剤塗布面(塗布層D3とする)に上記供給リール20から供給されたバッキング膜Bの塗布層D2が圧着され、図9(b)に示すように塗布層D1,D2,D3の3層膜の貼り合わせフィルムFを作成することができる。
【0019】
多層膜のフィルムを製造する場合、塗布層D1乃至D3が、例えばアクリル系ポリマーのような粘着性のある高分子基剤の場合は、そのまま貼り付けることができる。一方、上記塗布層(薬剤分散層)が、例えばシリコ−ン系エラストマーのように粘着性のない高分子基剤の場合は、薬剤分散層の張り合わせには別に粘着層が必要となる。この場合、図9(b)における塗布層D2のみが薬剤分散層となり、塗布層D1,D3は粘着層となる。また、粘着性のない高分子基材の場合は、図8、図9に示す2層目のリリースライナーR’にシリコーン加工面をもつフィルムを使用すると、塗布層D2がリリースライナーR’貼り付いてしまい同ライナーR’のみを剥がすことができなくなるので、この場合ライナーR’の裏面R’aにはシリコーンが張り付かない特殊加工が必要である。
上述の工程によれば、各塗布層の成分を変えることにより複数の薬効を有する経皮吸収治療用製剤を製造することができ、多層膜の一層を時間制御膜とすること等により時間制御可能な経皮吸収製剤を製造することができる。
尚、4層以上の構造のフィルムも同様の工程で製造することができる。
【0020】
(3)裁断
次に、上述の工程で製造した貼り合わせフィルムFを裁断して経皮吸収治療用の貼り製剤を製造する工程を説明する。
まず、バッキング膜供給リール20に上記(1)又は(2)において製造した貼り合わせフィルムFを取り付け、巻き取りリール21に芯を取り付け、同フィルムFの先端部を送りロール16、案内軸22c,22dを介して上記巻き取りリール21の芯に貼り付ける。その後、連動スイッチをオンすると、巻き取りリール21が矢印b方向に回転駆動され、さらに裁断刃24の駆動部25が駆動され、裁断刃24が矢印e,f方向に連続的に往復摺動する。すると、トムソン刃24a,24bが案内軸22c,22d間を矢印g方向に通過するフィルムの2カ所を順次刳り貫きカットしていき、図3に示す貼り製剤29,29’を製造することができる。切断された製剤は受け皿26に受け止められる。かかる貼り製剤29,29’は、切り込みC1,C2に沿ってリリースライナーRのみを剥ぎ取り、薬剤の塗布層を患部等に張り付けることにより使用される。
【0021】
本発明は上述のように、フィルム貼り合わせ部12を本体1内の中央部に設け、乾燥経路13を上記貼り合わせ部12の周囲を囲む様に内向き渦巻き状に設け、乾燥経路13の終端部に圧着ロール部を設ける構成としたので、製剤の高分子化や乾燥に時間を要する場合でも、乾燥経路として十分な長さを確保しながら装置全体をコンパクト、軽量にすることができ、研究室、病院等の施設内での持ち運びが容易である。尚、実際には、例えば通常のエレベータに入る程度の大きさとし、装置下部に車輪等を取り付けることにより手押し運搬を可能とするコンパクトな装置を実現することができる。また、各リールの回転速度を制御してリリースライナーRの走行速度を変えることにより、薬剤塗布層の乾燥時間を容易に制御することができる。
【0022】
また、薬液Dの成分等を変えることにより、各塗布層の成分の異なる多層膜の製剤も容易に製造することができ、臨床試験を含む各種の実験、研究用として一定品質の複数種の貼り製剤を容易に製造することができる。
また、乾燥経路13を複数の案内ロール11a乃至11iを渦巻き状に配置することにより構成したので、各案内ロール11b乃至11iへの薬液の付着を防止することができ、また途中の案内ロールへのリリースライナーRの架け渡しを省略することにより乾燥経路の長さの短縮等、乾燥経路の長さを容易に変化させることができ、各種の製剤の製造に際して、薬剤塗布から乾燥に至る工程を中断することなく連続的に行うことができ、複数種の製剤を一定品質で製造することが可能となる。
【0023】
また、従来は困難であった塗布層の膜厚も塗布厚調整ロール8により高精度にコントロールすることができるため、各種の実験、研究用として膜厚の異なる複数種の製剤を容易に製造することができる。
また、薬剤投入部6cの範囲を上記仕切板6a,6bにより調整可能であるため、薬液が極めて少量であっても何ら支障無く薬液Dの供給を行うことができ、薬剤塗布部4が極めて少量から中規模までの生産に対応可能である。また、リリースライナーRへの薬剤の塗布層の幅Tも容易に調整することができる。
【0024】
また、従来、機械生産で大量生産するには研究用としては量が多すぎるため、同一の貼り製剤を少量作成するには手作りに頼らざるを得なかったが、本装置によれば、少量であっても同一品質の貼り製剤を容易に製造することができる。 また薬剤の膜厚、乾燥時間等を一定に保つ等、製造時の条件を維持することができるため、同一品質の製剤を反復して製造することができ、再現性が保証され、製造される製剤の品質管理を行うことができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は上述のように、乾燥経路を周回経路としてその終端部に圧着ロール部を設けたので、乾燥経路として十分な長さを確保しながら装置全体をコンパクト、軽量にすることができ、研究室、病院等の施設内での持ち運びが容易な経皮吸収治療用製剤の連続製造装置を実現することができる。また、フィルムの巻き取り速度を制御することにより、薬剤塗布層の乾燥時間も容易に制御することができる。
また、多層構造の製剤も容易に製造することができ、各種の実験、研究用として品質の一定した複数種の製剤を容易に製造することができる。
また、周回経路を構成する乾燥経路に沿って複数の案内ロール配置したので、各案内ロールへの薬液の付着を防止することができ、また乾燥経路の長さを変化させることができ、各種の製剤の製造に際して、薬剤塗布から乾燥に至る工程を中断することなく連続的に行うことができ、複数種の製剤を一定品質で製造することが可能となる。
また、塗布層の膜厚もコントロールすることができるため、臨床試験を含む各種の実験、研究用として膜厚の異なる複数種の製剤を容易に製造することができる。
また、薬剤塗布部に仕切板を設けたので、極めて少量から中規模までの生産に対応することができ、第1のフィルムへの薬剤の塗布層の幅も容易に調整が可能である。
また膜厚、乾燥時間等を一定に保つ等、製造時の条件を維持することができるため、同一品質の製剤を反復して製造することができ、再現性が保証され、製造される製剤の品質管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る経皮吸収治療用製剤の連続製造装置の側面断面図である。
【図2】同上装置におけるリリースライナーRに切り込みを入れる状態を示す要部斜視図である。
【図3】同上装置におけるフィルムの裁断状態を示す要部斜視図である。
【図4】(a)は同上装置における薬剤投入部の正面図、(b)は(a)図のA−A’断面図である。
【図5】同上装置における薬剤投入部の斜視図である。
【図6】(a)は単層膜のフィルムを製造する場合のフィルム貼り合わせ部の要部側面図、(b)は単層膜のフィルムの断面図及び巻き取り方向を示す図である。
【図7】(a)はフィルムの巻替えを行う場合のフィルム貼り合わせ部の要部側面図、(b)はその巻き取り方向を示す図である。
【図8】(a)は2層膜のフィルムを製造する場合のフィルム貼り合わせ部の要部側面図、(b)は2層膜のフィルムの断面図及び巻き取り、引き出し方向を示す図である。
【図9】(a)は3層膜のフィルムを製造する場合のフィルム貼り合わせ部の要部側面図、(b)は3層膜のフィルムの断面図及び巻き取り、引き出し方向を示す図である。
【符号の説明】
1 本体
2 リリースライナーロール
R リリースライナー
3 供給リール
4 薬剤塗布部
6 薬剤受皿
6a,6b 仕切板
6c 薬剤投入部
7 薬剤塗布ロール
8 膜厚調整ロール
9 圧着回動ロール
11a乃至11i 案内ロール
13 乾燥経路
16 送りロール
17 圧着回動ロール
19 カッター
20 バッキング膜供給リール
21 巻き取りリール
24 裁断刃
27 剥ぎ取りリール
Claims (6)
- 第1のフィルムを供給する第1の供給リールと、
同第1の供給リールから供給された第1のフィルムの表面に薬剤を塗布する薬剤塗布部と、
上記第1のフィルムを通過させることにより同フィルムの薬剤を乾燥する乾燥経路と、
第2のフィルムを供給する第2の供給リールと、
上記第2の供給リールから供給された第2のフィルムを上記乾燥経路を通過してきた上記第1のフィルムの薬剤塗布面に圧着して張り合わせフィルムを形成する圧着ロール部と、
同ロール部を出た上記貼り合わせフィルムを巻き取る巻き取りリールとを有し、
上記薬剤塗布部から上記圧着ロール部に至る上記乾燥経路を内向き渦巻き状の周回経路とし、
上記乾燥経路に沿って複数の案内ロールを所定間隔を以って設け、同案内ロールにより上記第1のフィルムの裏面を案内するものであり、
上記周回経路の終端部に上記圧着ロール部を設けたことを特徴とする経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。 - 上記第2の供給リールに隣接して第3のリールを設け、上記第2の供給リールに上記貼り合わせフィルムを取り付けて同フィルムから剥ぎ取った一方のフィルムのみを上記第3のリールで巻き取り可能とし、
上記貼り合わせフィルムの薬剤の塗布された他方のフィルムを上記圧着ロール部に供給し、上記他方のフィルムの薬剤塗布面と上記第1のフィルムの薬剤塗布面を上記圧着ロール部で圧着することにより多層膜の貼り合わせフィルムを製造するものであることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。 - 上記薬剤塗布部は、薬剤の供給される薬剤受皿と、同皿内に下部が位置するように設けられた薬剤塗布ロールと、同薬剤塗布ロールに近接配置され同ロールとの間隙を調整可能に設けられた膜厚調整ロールと、上記第1のフィルムを上記薬剤塗布ロールに圧着する圧着ロールにより構成し、
上記薬剤塗布ロールの回転により上記間隙を通過した薬剤を上記薬剤塗布ロールと圧着ロールとの間を通過する上記第1のフィルムの表面に塗布するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。 - 上記薬剤塗布部は、上記受皿の内部に一対の仕切板を設けて同仕切板間に薬剤投入部を構成し、上記仕切板を左右方向に摺動自在としたものであることを特徴とする請求項3記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。
- 乾燥経路を通過した後の上記第1のフィルムの裏面に対向してカッターを着脱自在に設け、走行中の第1のフィルムを上記カッターにより走行方向に沿って切断するものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。
- 上記第2の供給リールと上記巻き取りリールの間に上記貼り合わせフィルムを所定の大きさに刳り貫く裁断刃を設けたものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の経皮吸収治療用製剤の連続製造装置。
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