JP3801580B2 - 歯がため玩具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば比較的月齢の低い乳幼児が、手指や肘肩及び手首を含めた運動と、噛む動作とを、同時に学習または訓練することができる歯がため玩具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、乳歯が生え始める前後の乳幼児が使用する歯がためには、本出願人が以前提案した特許第3260243号の「歯がため」のように、歯根膜に刺激を与え、口腔に取り込んだ際における対象物の硬さの違いを体験する等の学習のため、手や指の動きが未発達の乳幼児でも、口にくわえる歯がため部を口唇まで運ぶことができるような工夫がなされていた(特許文献1参照)。
また、比較的月齢の低い乳幼児等について、形状への関心をひき、それにともない動作の学習また訓練を行うものに、本出願人が提案した「口唇トレーナー」がある(特許文献2参照)。
【0003】
図27において、口唇トレーナー1は、長い形状の本体4と、本体4の両端にそれぞれ設けられ、本体4の中心軸に対して交差する方向に拡がった、くわえるための部分2及び3を有している。
図28に示すように、幼児Iは、本体4を掴んで、くわえるための部分2を口唇で挟むことによって、口唇の動きを訓練することができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特許第3260243号
【特許文献2】
特開2000−279487
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した歯がためや、口唇トレーナー1といった製品は、主として口や口唇の動きを訓練する目的で使用されるものであり、たとえば、月齢が8か月程度の乳幼児等に必要とされる手の動き、すなわち、手指や肘肩及び手首を含めた運動を適切に学習させるものではなかった。
ところが、近年乳幼児が以下の発達段階をたどることが、発明者等の研究を通じて判明しつつあり、従来の歯がためや口唇トレーナー等においてより必要とされる機能が明らかになって来た。
【0006】
月齢の低い乳幼児にあっては、手は、他の五感とともに、自己の外界の事物を検知もしくは検出するための機能を果たし、手に触れたものと検知することが、発達途上の脳に刺激を与え、さらに脳はこれらの検知結果を学習し、検知結果に基づいた判断を下して、手の機能を用いて、種々の作業を行う。このような過程を通じて、脳それ自体の発達が促される。
【0007】
発達の初期段階においては、このような検知手段としては、手よりも口が先に発達する。口は哺乳運動を通じて、外部から栄養源となるものを取り入れるための不可欠な手段であり、自己の外界にあって自己に必要なものを判断する最も初期の手段である。
この時期には、口唇の発達が促され、母乳やミルク以外の食品を摂取するのに必要な運動を訓練する「歯がため」等の口唇を閉じるための練習具を用いると好ましい。またこの時期から、手は、口に取り込む物を運搬する手段として、徐々に手と口の共働が行われる。口唇の訓練とともに、手と口唇との共働を訓練するための口唇トレーナー等を用いることが好ましい。
【0008】
個人差は存在するが、月齢8か月頃からは、歯が生えはじめ、口(口唇)は、それまで手によって口に運んだものが全て食べ物ではなかった経験から、口は食べ物を摂取する際における検知手段として特化してくる。そして、手は食品を口に運ぶ手段にとどまらず、次第に、外界の事物に触ってこれを検知する上述した検知手段としての役割を果して来る。そして、次第に、手で触れた触感により事物を判断することが行われるようになる。しかしながら、月齢8か月ないし14か月頃においては、未だ手に触れて運べるものを口に含む習慣が残っているために、この時期に用いられる学習具は口に入れても危険でないものであることが必要とされる。また、この時期の乳幼児の関心を引くためには、口に入れることも可能な形態であることが考慮されるべきである。
【0009】
さらに、検知手段としての手は、自己の手近にある物に触れて、その感触によりその物の性質等を判断する。このため、このような機能の発達を促すためには、様々な物に触れて体験する必要があるが、この時期においては、特に丸い形状や柔らかい物に対して反応することが多く、このような形態を備えたものがものであることが好ましい。
【0010】
また、手は、このような検知手段としての機能から、次第に上述した脳からの命令に基づく役割を果たす道具としての機能を持ちはじめる。
このような道具としての手の機能を分析すると、いくつかの種類に分類できる。このような機能の詳細は別として、例えば、食事の訓練にように、食品を口に運ぶ意味で、手が口と協調するための訓練を行うものや、包帯を巻くときのように、口が手の補助を行う意味で、口と手が協調するための訓練が行えるものが道具としてあれば好ましい。
【0011】
さらに手を道具として用いる中で、操作の対象となる物への関心の向け方にも変化が生じる。つまり、外界にある物がバラバラに多く存在すると、関心を向けるべき物が多いことや、所定の形態をとっている対象物が分解されること等によって、形を変えることが可能とされている状態に「おもしろさ」を感じ、これが発展して、ある物をバラバラに分解することが「おもしろい」と感じるようになる。このため、道具としての手による操作は、対象物を「バラバラ」にすることに向けられる(バラバラ期)。このような乳幼児による「遊び」は、やがて、例えば、月齢18か月頃から、バラバラに存在する物を組み合わせたりして、構成することに関心が向けられるようになる(構成期)。したがって、少なくとも、このバラバラ期に対応して、ブロック玩具のような複雑な操作や強い力を用いなくても、比較的簡単に分解や分離ができる道具が提供されると好ましい。
特に、月齢8か月程度の段階では、手の道具としての機能のうち、物を曲げたり、押したり、振ったりする動作が訓練できるものが好ましい。したがって、これらの動作の練習ができて、さらにこれらの簡単な動作による分解等が行われる道具であることが好ましい。
【0012】
また、手の動きが脳の発達に関与していることから、右手が左脳の支配下にあり、左手が右脳の支配下にあることを前提とすると、左右の脳をバランスよく発達させるためには、両手の協調の訓練ができることが好ましい。
そして、これらの各操作を受ける対象物がこの時期の乳幼児にとって使用できない程、操作しにくい物であると、訓練を促しにくいので、例えば、「硬い」物ではなく、変形等をしやすい道具であることが好ましい。
【0013】
このような観点から、口唇の動きの訓練を行うだけでなく、検知手段としての口の機能を、脳の検知手段としての手の機能の訓練へと橋渡しして、上述した乳幼児の発達過程を玩具を通して適切に訓練することができれば、好ましいと考えられる。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、口の検知機能から、検知手段としての手の機能の訓練へと橋渡しを行うことができるように、口唇の動きと手や指による操作を同時に学習させることができる歯がため玩具を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明にあっては、全体が変形可能となるように弾性材料で形成された歯がため部材と、内部に発音部材が収容された本体部であって、少なくとも部分的に透明な中空体である支柱部を備えたベース部材とを有しており、前記歯がため部材が、その表面に凸部及び/または凹部を有し、かつ、前記ベース部材に着脱可能とされており、前記ベース部材の前記支柱部に前記歯がため部材を複数個装着して、該支柱部の内部を隠すと、前記発音部材が外部から見えなくなる構成とした歯がため玩具により、達成される。
【0017】
請求項2の発明は請求項1の構成において、前記歯がため部材は複数個形成されており、かつ前記凹部及び/または凸部を利用して歯がため部材どうしが互いに嵌合されるように構成したことを特徴とする。
請求項2の構成によれば、歯がため部材どうしを嵌合させることで、簡易的な積み木のように遊ぶことができ、組立期の乳幼児においては、歯がため部材は、ある時は口に入れて噛んだり、これを互いに嵌合したりという使用が可能である。
【0018】
請求項3の発明は請求項1または2のいずれかの構成において、前記歯がため部材はリング形状とされ、かつ、該リング形状の一部が切欠かれることによる分離部を備え、該歯がため部材が、前記支柱部に装着された状態から、前記分離部を開くように変形することにより、装着を外す構成とされており、前記ベース部材の前記支柱部の両端部がフランジ部によりそれぞれ閉止されており、前記歯がため部材の前記リング形状は、前記フランジ部の外形よりも小さな内径を有する開口を備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項3の構成によれば、ベース部材の本体に支柱部を設けることで、把持しやすくなる。そして、ベース部材から歯がため部材を分離することによって、例えば前記した「バラバラ期」にある乳幼児の分解操作を中心とした手の動き、指の動き等を訓練することができる。特に前記歯がため部材は、リング形状を基本形態としており、発達初期の指によって掴みやすくリング形状の一部が切欠かれた分離部とされることで、この分離部はリング形状の各端部が対向する構造となることから、端部を持って変形させることが容易である。つまり、前記端部を掴んで引っ張ったり、それぞれの手の各指で、各端部を持って拡げたり、掴んだ状態で変形させたりすることができる。このように、歯がため部材はつかみ易く、変形させることができることで、興味を引きやすく、変形により操作する乳幼児の興味を維持して、様々な操作の訓練を行うことができるものである。
さらに、このリング状の歯がため部材は、前記各分離部を大きく離すように変形させて、異なる歯がため部材どうしを結合することができるだけではなく、ベース部材に装着することができ、この状態では歯がため部材の内径はベース部材の前記フランジ部の外形よりも小さいので、抜けることなく装着状態を保持できる。この点において、ベース部材と歯がため部材を用いることで、例えば、前記した構成期の乳幼児の手や指等の訓練に用いることもできる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、前記複数個装着される歯がため部材は、前記ベース部材の前記支柱部の長さ方向に沿って、一方の前記フランジ部から他方の前記フランジ部までの間を埋める数とされていることを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明の構成において、前記歯がため部材の開口が、前記ベース部材の前記支柱部の外径よりも僅かに大きな内径を備えていることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0027】
第1の実施形態
図1は、本発明の歯がため玩具の第1の実施形態の一部を構成する歯がため部材の概略斜視図であり、図2は本発明の歯がため玩具の第1の実施形態の他の一部を構成するベース部材を示す概略斜視図である。
歯がため部材
先ず、歯がため部材10について説明する。図3は歯がため部材10の概略平面図、図4は図3のA−A線概略断面図である。
歯がため部材10は、図1、図3、図4を参照して理解されるように、リング形状であり、その一部が切欠かれた形状である。歯がため部材10は、全体が柔軟で弾性に富んだ材料で形成されており、乳幼児等が口に含んでも危険がないように配慮された材料で形成されており、例えば、熱可塑性のエラストマーやシリコーン等により、一体に成形することにより形成されている。歯がため部材10は、その硬度がJIS−K6253におけるタイプAデュロメータ試験において、10度ないし70度、好ましくは20度ないし50度の範囲とすることで、乳幼児が上下の歯列で挟んだ際に適度な弾力にて変形しやすく、また手指で持って変形させることもできて、操作の練習を促すことができる。この実施形態では、特に、硬度40度のものを使用している。
なお、歯がため部材10の材料としては、他に例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを薄肉となるように成形し、内部が中空になるようにして変形可能に構成してもよく、また、硬度の異なる材料を一体として弾性体を使用し、変形可能に構成してもよい。
【0028】
具体的には、歯がため部材10は、図3に示されているように、ほぼ円形の本体11を有している。本体11は円形のリング形状であり、内側に開口12を有している。開口12は後述するベース部材のフランジ部の外形よりも小さな内径を有している。つまり、本体11は、例えば、内径が30mm程度、外径が54mm程度である。
円形の本体11はその一部が切欠れており、分離部13を構成している。つまり、円形の本体11の一部を切欠いて、両端部14,14を形成したもので、この場合、各端部14,14は、例えば図示するように球状とされている。分離部13は、本体11の両端部14,14を互いに対向するように位置させて分離する箇所または部分である。なお、両端部14,14の間の区間となる分離部13は、後述するベース部材の支柱部の径よりも小さな間隔とされている。
ここで、本体11は、リング状であれば、円形に限らず、長円や楕円、多角形の角部を丸めた形態等で一部が分離されたループ状に形成することができる。
なお、乳幼児に歯がため部材10を変形させるような操作を促すために、適切な柔軟性を持たせるには、上述した硬度とともに歯がため部材10における本体11の太さも重要な要素であり、乳幼児が把持して操作することを考慮すると、本体11は長円や楕円、多角形の角部を丸めた形態を含む略円形の断面を有し、その直径が10mmないし20mm程度とすることが好ましく、本実施形態では、その直径を12mmとしている。
【0029】
図4に示されているように、本体11は中実の構造であり、その断面はほぼ円形である。本体11の図4における左側面及び右側面である主面17には、凸部と凹部とが形成されている。本体11の図4における左側面を第1の主面17aと呼び、右側面を第2の主面17bと呼ぶ。
図4において、第1の主面17a側には、一端に僅かに突出する凸部15が形成されている。第2の主面17b側には、部分的に僅かに凹状とされることで形成された凹部16が形成されている。図4に示されている箇所では、凸部15は複数ある凸部のうちのひとつの凸部である15cであり、凹部16は複数ある凹部のうちのひとつの凹部である16cである。
【0030】
ここで、凹部16は、凸部15を受容できる大きさであり、凹部16は、凸部15を受容した状態で緩く嵌合される。したがって、凸部15と凹部16とは嵌合手段を形成している。この意味で凸部15は嵌合部であり、凹部16は被嵌合部である。
また、図4に示されているように、第の主面17a側において凸部15が形成された位置に対応する第2の主面17b側には、凹部16が形成されるようになっている。
さらに、図3を参照すると理解されるように、本体11の第1の主面17aには、リング形状の周方向に沿って、凸部15a、凹部16b、凸部15c、凹部16d、凸部15eがそれぞれ等間隔で、すなわち、ひとつの主面には、凸部と凹部とが等間隔で交互に配置されるように、ともに複数個形成されている。言い換えれば、ひとつの主面には、凸部と凹部とが、円形の本体11の中心(図示せず)に関して、等角度間隔で並ぶように配置されている。
図1において、底面側となった第2の主面17bにも、同様に凸部と凹部とが等間隔で交互に配置されるように、ともに複数個形成されており(図示せず)、図4で説明したように、凸部の裏側には凹部が位置するようにされている。
【0031】
ベース部材
次に、本実施形態の歯がため玩具の一部であるベース部材の構成を説明する。
図2に示すように、ベース部材20は、本体部を構成する所定の長さの支柱部と、この支柱部に設けたフランジ部を有しており、この実施形態では、支柱部21の長さ方向の両端部にそれぞれフランジ部22,23が設けられている。フランジ部22,23はこの実施形態では、中空の支柱部を塞ぐ蓋手段としての機能を有するとともに、後述する歯がため部材の抜け止め手段とされている。
図5はベース部材20からフランジ部23を除いた状態の概略正面図、図6はベース部材20からフランジ部23を除いた状態の概略平面図、図7は図5のB−B線概略断面図である。
ベース部材20の支柱部21の高さは、例えば、68mm程度であり、各フランジ部22,23の外径は、例えば50mm程度である。
【0032】
図5ないし図7に示されているように、ベース部材20の支柱部21は、好ましくは中空体であり、例えば円柱形状とされている。ベース部材20の少なくとも支柱部21の少なくとも一部は透明とされている。
支柱部21が円柱状とされることで、後述するように、乳幼児等がこれを使用する場合には、支柱部21を掴んで保持しやすい構成となっている。支柱部21の外径を、例えば28.6mm程度として、前述した歯がため部材10の開口12の内径よりも僅かに小さくしている。これにより、後述するようにベース部材20に歯がため部材10を装着した状態で、遊びを持たせることができ、歯がため部材10をベース部材20の支柱部21の周囲で回して遊ぶことができるようになっていると共に、後述するように歯がため部材10をベース部材20から取り外す際にも、指を挿入しやすく、分解しやすいようになっている。
【0033】
支柱部21は、この実施形態では中空で、その全体が透明とされており、図2に示されているように、内部に発音手段としての例えば小球体24が収容されている。小球体24は一個以上、複数個、もしくは多数個収容されている。
そして、好ましくは小球体24は個々に色分けされており、使用者を視覚的に楽しませることができるようになっている。
これにより、支柱部21に収容された小球体24は、ベース部材20の動きに応じて転動することで音を出し、所謂「ガラガラ」としての機能を持つことができる。特に、支柱部21が透明とされていることで、小球体24の動きが見え、種々の色に着色された球体等を用いているので、使用者である乳幼児の視覚的注意を強く引き、興味を強めることができる。
【0034】
また、後述するように、ベース部材20の支柱部21に歯がため部材10を複数個装着して、内部を隠すと、小球体24は見えなくなり、歯がため部材10を全て取り去ると小球体24が見えるようになることから、特に月齢の低い乳幼児には、このような現象を利用して、その注意を強く引くことができる。
【0035】
図8は、支柱部21に固定されるフランジ部23の構造を示す概略断面図である。フランジ部22は支柱部21と一体に構成されているが、フランジ部23は支柱部21と別体に構成されており、中空の支柱部21内に小球体24を収容後、フランジ部23を支柱部21に固定することで、ベース部材20が形成されるようになっている。
図8に示すように、このフランジ部23の支柱部21を固定する面には、円形の溝23aが形成されている。この溝23aは支柱部21の端部を受容して固定できる形態とされている。このような溝23aを利用して、図2に示すようにフランジ部23を接着や溶着によって固定することにより、例えば、乳幼児がベース部材20を口に運んで、その唾液がベース部材20やフランジ部23に付着しても、支柱部21の内部まで入り込まないようにされている。
【0036】
本実施形態の歯がため玩具は以上のように構成されており、その歯がため部材10または歯がため部材10とベース部材20は、例えば、次のように使用される。
図10は、乳幼児Iが歯がため部材10を両手F1,F2で持って、口に含んで使用している状態を示している。歯がため部材10は、全体が弾性材料で形成されていて、全体が変形可能であるため、どの部分を図10のように口腔内にいれて歯がためや歯茎で噛んで刺激を得ることができ、歯がためとして適切に機能する。特に、表面に凸部15及び凹部16を有しているので、これらが無い箇所と、これらが形成されている箇所とで噛んだ時の刺激を変化させることができ、歯根膜に刺激を与え、口腔内に取り込んだ際における硬さの違いを体験する等の学習をすることができる。
【0037】
すなわち、図10のように、対象物を口に運ぶ習慣は、乳幼児Iの発達の最初期において、最も最初に表れる行動であるとともに、その後のバラバラ期や構成期を通じて、しばしば乳幼児の行動として残る習慣である。このため、歯がため部材10は、このような習慣を満足させつつ、さらに、手や指の検知手段としての機能の発達及び操作の訓練に発展させることができる。
すなわち、歯がため部材10は、開口12(図3参照)を利用して指を開口12内に入れて端部14,14をつかみ易く、変形させることができることで、乳幼児等の興味を引きやすく、変形により操作する乳幼児の興味を維持して、様々な操作の訓練を行うことができるものである。この時、乳幼児は歯がため部材10を掴んで変形させ開く動きだけでなく、歯がため部材10が元に戻ろうとする力に抗しながら、捩じったりして、さらに異なる形状に変形させることができる。
【0038】
図11は、このようにして、乳幼児Iが歯がため部材10を変形させて、例えば左手F1で中間付近で持ち、片方の端部14を口に入れて、歯がためとして使用している状態を示している。
つまり、歯がため部材10は全体が弾性材料で形成されていて、全体が変形可能であるため、乳幼児の手の各指や両手で、歯がため部を曲げたり、引っ張ったりして変形させることができ、手や指の操作の訓練を同時に行うことができる。歯がため部材10は、その本体11のリング形状を基本形態としており、発達初期の指によって掴みやすくリング形状の一部が切欠かれた分離部13とされることで、この分離部はリング形状の各端部14,14が対向する構造となることから、端部14を持って変形させることが容易である。
【0039】
また、このような歯がためとして、口腔と手が関係した操作以外の操作の一例として、図9に示すように、複数個の歯がため部材10−1,10−2の各凸部15と凹部17(図1参照)を利用して歯がため部材どうし10を互いに嵌合させた状態を示している。
このようにすることで、簡易的な積み木のように遊ぶことができ、組立期の乳幼児においては、歯がため部材10は、ある時は口に入れて噛んだり、これを互いに嵌合したりという使用が可能である。
【0040】
図12は、本実施形態の歯がため玩具30の全体を示す概略斜視図であり、ベース部材20に対して、複数の歯がため部材10を分離部13が同じ位置に配置されるように装着した状態を示している。好ましくは、歯がため部材10は、ベース部材20の支柱部21の長さ方向にそってフランジ部22からフランジ部23までを埋める数用意すると好ましい。
この場合、歯がため部材10の開口12(図3参照)が、円柱状の支柱部21の外径よりも僅かに大きな内径を備えていることから、図12のように、ベース部材20に歯がため部材10を装着した状態で、遊びを持たせることができ、歯がため部材10をベース部材20の支柱部21の周囲で回転もしくは回動させて遊ぶことができる。
【0041】
図13は、図12の状態の歯がため玩具30に対して、歯がため部材10−2を外そうとする様子を示している。
すなわち、バラバラ期の乳幼児が、手F1で歯がため玩具30の端部付近を持っており、手F2の特に親指PFを歯がため部材10−2のひとつの端部14に当てて、分離部13を開くように変形させ、歯がため部材10−2を外そうとする様子を示している。
このように、バラバラ期の乳幼児等においては、ベース部材20の支柱部21から、各歯がため部材10を外す、または取り付ける行為によって、手指で様々な握り方を試みながら、歯がため部材10の端部14を摘んだり、掴んだり、捩じったり、引っ張ったりといった動きの訓練もしくは学習を行うことができる。
さらに、図12に示すように、ベース部材20の支柱部21に多数の歯がため部材10を装着すると、中空体である支柱部21の内部を隠すことで、図2で説明した多数の小球体24が見えなくなる。そして、図13のような操作により、歯がため部材10を取り去ると、小球体24が見えるようになることから、特に月齢の低い乳幼児には、このような現象を利用して、その注意を強く引くことができる。
【0042】
第2の実施形態
図14は、本発明の歯がため玩具の第2の実施形態を構成するための単位となる歯がため部材40を示す概略斜視図であり、図15は、図14の歯がため部材の概略正面図、図16は図15の歯がため部材の概略平面図、図17は図15の歯がため部材の概略左側面図である。この実施形態の歯がため玩具は、図示の歯がため部材40を2以上用いて構成されるものである。
【0043】
図14において、歯がため部材40は、中央受容部47と、この中央受容部47両側にそれぞれ一体に配置された双曲線状の第1の曲線部分41bと第2の曲線部分41cと、第1の曲線部分41bと第2の曲線部分41cとが、中央受容部47から外方に向かって延びる各先端付近を繋ぐように一体に配置された枠状の歯がため部48とを有する本体41を備えている。歯がため部48はこの実施形態では円環状であり、外方に突出している。
これにより、歯がため部材40は、全体として、リング状もしくは円状の基本形状を呈している。
したがって、図14ないし図16からも明らかなように、挿入部43と受容部44とは、同一平面上に複数個並ぶように配置されている。そして、ひとつの挿入部43と、これと隣り合う受容部44との間に歯がため部48が位置している。
このため、後述するように、歯がため部材40の任意の場所を把持して、歯がため部48を口唇に近づけることができる。また、挿入部43と受容部44の間に位置して外方に突出している歯がため部48を保持して、挿入部43と受容部44による連結操作を行うことができるので、操作しやすい。しかも挿入部43と受容部44が複数個設けられているから、連結の方向や向きを選択して種々の連結形態を実現できるようになっており、それに対応して歯がため部48も複数箇所(ここでは4箇所)形成されている。
【0044】
本体41は、斜線で示すように、比較的柔軟な弾性体41aにより被覆されている。つまり、本体41は、剛性を備えた成形材料で基本形態を形成し、その上に、これより柔軟な弾性体を覆うようにしたもので、基本形態の成形体は、例えば、ある程度剛性が高く、僅かな弾性を備えた合成樹脂材料として、例えば、ポリプロピレンや、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリアミド等で形成し、その上に被覆される弾性材料としては、例えば、熱可塑性のエラストマーやシリコーン等を使用することができる。
この場合、上記した剛性の高い樹脂材料は、曲げ弾性率が通常状態で7000kg/平方センチメートル以上のものとされており、弾性材料としては、その硬度がJIS−K6253におけるタイプAデュロメータ試験において、10度ないし70度、好ましくは20度ないし50度の範囲とすることで、適切な変形を行いやすく、使用者が変形させて手指の操作を行う上で適している。この実施形態では、硬度40度のものを使用している。
なお、歯がため部48は、上記した剛性の高い合成樹脂材料よりなる骨格(基本構造)に露出部48aとなる凸部または突起を設けて、弾性体41aで被覆しており、露出部48aの表面と弾性体41aの表面は同じ高さで、ほぼ同一のレベルとなるようにされている。この場合、露出部48aと弾性体41aの境界が僅かな凹凸状態となる。また、露出部48aと弾性体41aとがほとんど平坦で、凹凸状態が実質的にない状態でも、露出部48aが上述のように剛性の高い材料で形成されていることにより、硬質部となるので、歯がため部48を噛んだ際に弾性体41aが潰れ、硬質部である露出部48aは変形しないので、結果的に凹凸状態と同様の状態となる。このため、歯がため部48を口にくわえた際には、変化のある刺激を与えることになる。また、露出部48aの剛性の高い合成樹脂材料による凸部は、弾性体41aの表面よりも高くなるような凸部として、全体として凹凸面を形成するようにしてもよく、露出部48aの表面に弾性体41aが薄肉に覆う構成とされることで、噛んだ状態において、上述した歯がためとしての効果が発現するようにしてもよい。
また、弾性体41aの部分に適宜に着色することにより、乳幼児の注意を強く引く色彩とすることができる。好ましくは、複数の歯がため部材40を色分けすることで、全体としてカラフルで、乳幼児に色の認識を持たせる学習に役立つだけでなく、操作の関心を好適に引きつける歯がため玩具とすることができる。
【0045】
歯がため部材40は、互いに連結するための連結手段45を備えている。
連結手段45は、ひとつの歯がため部材40の挿入部と、この挿入部を嵌合させるための他の歯がため部材40の受容部とから構成されるが、歯がため部材40どうしを互いに連結できるようにするために、ひとつの歯がため部材40は、図14に示すように挿入部43と受容部44とを少なくとも一組有している。
この実施形態では、本体41の第1の曲線部分41bの両先端にそれぞれ軸部42及び挿入部43が形成されており、本体41の第2の曲線部分41cの両先端にそれぞれ受容部44が形成されている。
これにより、歯がため部材40は、中央受容部47と直交する方向に沿った同一の平面に形成され、中央受容部47に関して互いに対称な位置に、それぞれ挿入部43,43と受容部44,44とを互いに交差する方向で二組配置した構成とされている。
【0046】
挿入部43は球状に形成されており、連結の際に挿入部の挿入方向に自由度を有するようにされている。挿入部43は、図14に示すように、本体41から延びる軸部42の先端に形成されている。軸部42は、所定の長さとして、L1の長さを有し、図16に示すL2の外径を備えており、このL2は挿入部43の外径L3よりも小さくなるように設定されている。
ここで、L1は例えば、5.0mm、L2は例えば、5.0mm、L3は例えば、10.0mm程度である。
なお、挿入部43の球状とは、真球に限るものではなく、嵌合の方向性に自由度を備えるような曲面形状とされていればよい。例えば、長円状とされた形態も含まれる。
【0047】
受容部44は、一端が開放された筒状で、外方に向けて開口した凹部46を備えている。凹部46は、図17のA−A線部分切断端面図(図18(a))およびB−B線部分切断端面図(図18(b))を示した図18に詳しく示されている。
受容部である凹部44は、その端面開口径W1が球状の挿入部43の外径よりも大きく、かつ端面開口に向かって開口面積が大きくなるように形成されており、凹部44の奥行きD1の中間付近に係止手段51が形成されている。係止手段51が形成されている箇所の内径W2は端面開口径W1よりも小さく、かつ球状の挿入部43の外径よりも僅かに小さく形成されている。
【0048】
この実施形態では、係止手段51は、内径W2の位置で凹部44の対向する壁面に形成された貫通孔であり、受容部としての凹部44に挿入される挿入部43を凹部44内に弾性的に受容した状態で、容易に抜けないように係止するものである。すなわち、球状の挿入部43が凹部44に挿入されると、貫通孔である係止手段51付近が僅かに弾性変形して挿入部43の球面の一部の受容し、これが係止手段である貫通孔に受容されて保持されるようになっている。このため貫通孔の孔径SLは、挿入部43の外径L3よりも小さく設定されることが必要で、SLは例えば、直径4.0mm程度である。
この場合、挿入部43を受容部である凹部44内に挿入する際に必要とされる力と、挿入部43を凹部44から引き抜く力は、寸法W2と挿入部43の外径L3との関係で決めることにより調整することができる。
この実施形態では、W1は例えば、直径14.0mm、W2は例えば、直径9.4mm、D1は例えば9.5mm程度であり、球状の挿入部43の直径L3に対して、端面開口径W1は140パーセント程度に形成されており、係止手段21となる壁面の内径W2は球状の挿入部43の直径L3に対して、ほぼ93ないし95パーセント程度、この実施形態では94パーセントとなるように形成されている。
このように構成することで得られた歯がため部材40では、その挿入部43と凹部44との嵌合強度は、オートグラフ(島津製作所社製、AGS−5kNG)を使用し、一方の歯がため部材40の凹部44を固定側として固定し、他方の歯がため部材40の挿入部43を移動させて、300mm/分のスピードで移動させて、挿入時と離脱(解除もしくは取り外し)時の測定を行うと、この場合、挿入時、離脱時ともに5N(ニュートン)ないし30Nの範囲内となるようにすることができ、好ましくは5Nないし15Nに調整でき、この場合、離脱時の力が、挿入時の力よりも僅かに大きくなる。
このような嵌合強度とすることで、乳幼児が使用する際に嵌合や離脱を行い易い。すなわち、挿入と取り外しがしやすいだけでなく、挿入した場合に、後述するように、その挿入角度を維持して保持されることができ、このため、乳幼児は挿入時の角度を決めることで意図した形態で嵌合,保持させることができ、このようなこと行うための手や指の操作を適切に促すことができる。
【0049】
図19は、挿入部43を受容部である凹部44内に挿入した状態を示している。挿入部43は、凹部44内に収容された状態で、係止手段51(図18参照)の機能により、抜け止めがされるだけでなく、仮固定状態で保持される。この場合、挿入部43は、その仮想の軸線JCが、受容部である凹部44側の仮想の中心線(軸線)LCに対して角度θだけ傾斜した状態で、それ以上軸線JCの倒れがないように保持されることができる。
つまり、挿入部43は球状であるから、互いの軸線が一致しなくても受容部44内に挿入することができる。そして、軸部42が挿入部43の外径よりも細いために、挿入部43が凹部44内に受容された状態では、軸部42の外径が受容部44の開口周縁に当接するまで矢印Pの方向に沿って変位することができ、挿入部43の中心Oに関して、角度θの範囲で規制される円錐状の空間に含まれる全ての方向において変位した所望の位置で係止手段51の機能により、その位置を維持した状態で保持されるようになっている。そして、好ましくは、角度θは軸部42の外径(図16のL2)と、凹部44の端面開口径W1の決定寸法等に基づいて、25度ないし45度、好ましくは25度ないし35度程度とすることができ、本実施形態ではほぼ30度とされている。
角度θを25度ないし45度、好ましくは25度ないし35度程度としたのは、乳幼児が円形を好む傾向を考慮し、異なる数の歯がため部材40を使用しても組み合わせた形態において円形を構成することができるようにするためである。さらに、θが上記の範囲とされることで、θの角度範囲内で任意の角度で嵌合させることで、異なる角度に応じて組み立てられる形状もしくは形態の変化を学習することができる。そして、この角度θが45度を超えると、可変角度範囲が大きくなり過ぎることにより、嵌合により形成される形態に変化が出すぎてしまい、かえってこのような認識を得るための学習効果が阻害されてしまう。
また、一定強度を有するように軸部42の太さを調整した場合に、角度θが25度より小さくなると角度の変化が少なくなるため、円形(輪形)を形成するに当たって多くの歯がため部材40が必要となり、この時期の乳幼児にとって円形(輪形)を構成することが困難となってしまう。また、角度θが45度より大きくなるように、凹部44の深さを浅くすると、こんどは十分な嵌合強度を得られず、組立てにより実現される形態を損なうおそれがある。このため、角度θは上記範囲とされている。
【0050】
さらに、図20の部分拡大断面図に示されているように、受容部である凹部44は、奥側の壁部53が、この壁部を曲面とした場合の符号52の位置よりも開口端側に位置するように形成された当接部53aとされている。
つまり、当接部53aは、挿入部43の球状の外面に相当する曲面52に対して、僅かに突出された当接面とされており、その頂部が挿入部43の球状の外面とほぼ同等の曲面よりなる凹面形状を有する凹面当接部53bとされて、凹部44内に図15に示すように挿入部43を嵌入した際に、挿入部43がこの壁部53に当接した際の衝撃が大きくなり、これに起因して、装着の際に音を発生する構成とすることができる。
しかも、壁部53が曲面52と比較して、当接部53aの突出分だけ凹部44の開口端側に僅かに変位して位置することで、係止手段51と壁部53とに、共に当接した状態で収容される挿入部43に対して、緊密な保持力を与えることができ、しかも、凹面当接部53bが挿入部43とほぼ同等の曲面を有するため、挿入部43との接触面積が確保されることにより、図19のような傾斜状態における位置で、図示のような姿勢を維持したまま保持しやすくなる。
このように構成することにより、挿入部43を凹部44に挿入して連結した際に、使用者である乳幼児が連結手段45の位置で、連結角度を変えられるとともに、一方の歯がため部材40を保持した状態で、他方の歯がため部材40が自重等により容易に保持された角度がすぐに変わってしまうことのない程度の連結状態を維持することができる。
【0051】
図21は、図14の中央受容部47の構成を示しており、受容部の異なる構成例を示している。中央受容部47は、図14に示されているように、歯がため部材40の厚み方向、すなわち図15におけるZ方向(紙面背後向き)に開口した凹部とされている。すなわち、他の受容部44は、このZ方向と直交する図15のXY平面に沿って開口していて、開口方向が90度交差している。
また、中央受容部47の係止手段は、凹部の内周面において、互いに対向する位置で爪状に隆起する係止片51−1,51−1もしくはリブ片とされている。
この場合、凹部46の内径は挿入部43の外形とほぼ同等の大きさで形成されており、係止片51−1,51−1間の距離が挿入部43の外形よりも僅かに小さく形成されていることにより、挿入部43を挿入した際に僅かに弾性変形して受容することができるようになっている。
また、中央受容部47の開口は、受容部44と同様に端面開口が最大径となり、内側に向かって僅かに縮径され、底面(奥側の面)には底面(奥側)開口47aが設けられることで貫通しており、係止片51−1,51−1が容易に成形されるとともに、挿入部43の着脱が容易に行われるようになっている。
この場合、係止片51−1,51−1から、中央受容部47の底面までの距離を調整することにより、中央受容部47における挿入部43の嵌合強度を適切な強度に調整することができる。
これにより、中央受容部51においても、他の受容部44と同様に、挿入部43を受容した状態で係止することができる。また、他の受容部44の係止手段も図21のように構成してもよい。
【0052】
本実施形態の歯がため玩具は以上のように構成されており、例えば、次のように使用される。
図22ないし図25は、乳幼児等が歯がため玩具の歯がため部材40を操作している様子を示す図である。
この歯がため玩具は、同じ構造の歯がため部材40を複数用意することで構成されている。これら歯がため部材40はリング状の円形の外観を基本形態としており、月齢1年6か月程度の乳幼児にとっては、円形はきわめて関心を引く傾向が確認されている。したがって、複数の歯がため部材40がバラバラに存在している状態では、円形をした個々の歯がため部材40は乳幼児の関心を引きやすい。
【0053】
そして、バラバラに存在する歯がため部材40−1,40−2がある場合に、乳幼児が、これら2つの歯がため部材40−1と歯がため部材40−2とを連結する上で、最も簡単な方法が図22に示されている。
すなわち、図22に示すように、例えば、乳幼児(図示せず)は、右手F3でひとつの歯がため部材40−1の本体41を床等(図示せず)の平面に上から押しつけるように押さえ、歯がため部材40−1と同じ向きとした歯がため部材40−2の本体41を左手F4で押さえ、矢印方向に移動させると、歯がため部材40−2の軸部42の先端にある挿入部を歯がため部材40−1の対向する受容部としての凹部44内に差し込むことができる。
【0054】
これにより、図15で示した状態と同様に、挿入部43は受容部である凹部44内に挿入され、球面が図20の当接部53に当接することで音を発するので、乳幼児は連結されたことが容易に認識できる。また、このような音が乳幼児の連結作業に対する興味を増加させ、操作を行わせるように促す効果がある。この状態においては、係止手段51,51が挿入部43の球面を両側から挟むようにして係止するので、容易に抜けない状態で保持される。
このように、平面に押さえつけながら水平に移動させる動きで挿入できるため、手や指でうまく両手でそれぞれの歯がため部材40−1と歯がため部材40−2とをそれぞれ高い位置で保持した状態で、三次元的な位置の調整ができない乳幼児にとって、これら歯がため部材40−1と歯がため部材40−2とを同一平面上で位置合わせすればよいことから、容易に装着することができる。
【0055】
また、このような作業を行う上で、歯がため部材40の本体41は所定の剛性のある材料で形成されているので、柔らかい材料で形成されている場合と比べて、保持した状態で力を加え易く、位置ずれ等を生じないで連結作業を行うことができる。
つまり、歯がため部材40は、表面の少なくとも一部に弾性体41aを配置することで、持ちやすいだけでなく、露出部48aの箇所(剛性のある材料が露出している)や連結手段45と比べて、手で触れた際における感触の相違が得られることから、触れることに対する興味を与えることで、手に取って上述した操作を促す動機を与えることができる。そして、本体41は、乳幼児が手にとった時には、図14で説明したように表面の弾性体41aの弾性ある感触により、安心感が得られ、かつ、上述のような操作を行う上では、剛性を備えているので、作業がし易い。
なお、母親等の介助者が、早めな使用開始時期にあたる月齢6か月程度の乳幼児に本実施形態の歯がため部材40を与えて使用させる場合において、乳幼児が着脱操作を行うことはできないものの、ひとつの歯がため部材40を手にとると、歯がため部48が外方に湾曲して張り出していて、表面が弾性体41aで覆われていることで、これを口唇に含むと、所謂「歯がため」として口腔を閉じる練習を行うことができる。この場合、歯がため部48では、弾性体41aと剛性の高い材料が露出した露出部48aとが形成されているので、乳幼児に異なった感触を与えることができる。
【0056】
図23は、2つの歯がため部材40−1と歯がため部材40−2を床等の上に置かないで、それぞれ左手F4と右手F3で保持した状態で、空中で連結する作業を示している。
この場合、両手の動きを協調させて作業する能力が発達途上にある乳幼児にとって、左手F4と右手F3で別々に保持した歯がため部材40−1と歯がため部材40−2とを共に同一平面に保持して接近させ、連結作業を行うことはかなり難しい。あるいは、歯がため部材40−1と歯がため部材40−2を、個々に水平に保持することも困難である。図示の場合は、歯がため部材40−1の連結に使用する受容部44はやや下を向き、歯がため部材40−2の連結に使用する挿入部(軸部42)もより大きく傾斜して下を向いている。
【0057】
この状態で、挿入部を受容部44に差し込んでも、既に図19で説明したように、挿入部は球状であるから、互いの軸線が、最大30度程度の傾斜範囲で、一致しなくても受容部44内に挿入することができる。特に、受容部44の端部開口径W1が大きく形成され、内部で縮径されているので、受容部44の開口に挿入部43を配置しやすく、一旦、挿入部43を開口に配置した後で、力をこめて受容部44の奥側の壁部53に向かって押すことで、挿入部43は受容部44内に簡単に挿入することができる。そして、軸部42が球状の挿入部の外径よりも細いために、図示のように傾斜していても、挿入部が凹部44内に受容されるので、両手の動きをうまく協調させることができない段階の乳幼児でも、図23のように受容部44に挿入部43を嵌入した後で、図24に示すように、歯がため部材40−1と歯がため部材40−2とを連結することができる。
この場合、歯がため部材の本体41は、多少無理な力や、斜めの力がかかっても撓むことがなく、扱いやすい。このようにして、操作の練習をしながら、構成期の乳幼児の遊びの関心に適合して、個々の歯がため部材をひとつの構成体とすることができる。
【0058】
しかも、このようない連結した状態から、図22の矢印の方向と逆の方向に操作することで連結は簡単に解除することができる。
また、このような動きを床等の上でなく、空中で行う場合、挿入部43と受容部44の軸線が一致する方向に離間させれば、連結を解除できるが、乳幼児には、上述したとおりこのような動作は難しい。
そこで、図23に示すように、挿入部43と受容部44の軸線を傾斜させ、さらにこれを大きく傾斜させれば、図19に示す構造に基づいて、受容部44の開口周縁が、軸部42の外周に当接して、さらに傾斜を大きくすると、梃子の原理により容易に連結を解除することができる。したがって、乳幼児は、本実施形態の歯がため玩具を使用することで、不完全な協調状態を繰り返しながら、両手の協調した動きが実現できるように学習することができる。
このように使用した場合、特に、手や指を使用して対象物を把持し、その把持した物の位置を任意に変化させながら付与する力の調整を行う練習をすることができる。なお、この場合における手や指による握り方は、歯がため部材40が略円形状とされているために、様々な握り方が可能であり、握り方と力の入れ方により対象物の挙動の違いも体験することができる。
さらに、バラバラに存在している対象物を組み合わせ、まとまった他の構成物に変化させるという認識を身につけることもできる。
【0059】
また、例えば、図23で説明したようにして、複数の歯がため部材40を、各挿入部43と受容部44とを用いて、順次連結すること等により、全体として円環状の形態を形成する構成することができる。
この場合、乳幼児は、円や輪といった形態に強く興味を引かれる傾向があり、円環状の形態が身近に置かれることで、これを手にとる動機を与えることができる。そして、円環状の形態から、個々の歯がため部材をバラバラにする操作を促すことができる。
【0060】
図25は、歯がため部材40−1を床等の平面上に置いた状態で、例えば右手F3で他の歯がため部材40−2の本体を持ち、歯がため部材40−1の中央受容部47に、手に持った歯がため部材の挿入部43を嵌入させる様子を示している。
この場合には、歯がため部材40−1は、床等に水平に保持されているので、手に持った歯がため部材の挿入部43を歯がため部材40−1の中央受容部47に当てて、上から力をかけやすく、簡単に連結することができる。
このように連結した状態で、歯がため部材40−2の上部を右手F3の指でつまみ、歯がため部材40−2を回動させるなど、指先を使用した操作の練習を行うこともできる。
さらに、このように立体的な連結が行えることにより、より複雑で立体的な構造を作ることもできる。
【0061】
図26は、乳幼児INが、本実施形態の歯がため部材40を両手F3,F4で保持して、歯がため部48を口に入れている様子を示している。
この場合、リング状の歯がため部材40の円周方向のどの位置の歯がため部48を選択していもよく、使用上における自由度が高い。
そして、このような使用を行うにあたり、歯がため部材40は、図示された状態からも理解されるように、外方に突出した歯がため部48を有している。このため、歯がため部48は、外側から口唇によりくわえやすい。そして、乳幼児INの歯または歯茎で噛むことで、柔軟な材料が弾力により好適な刺激をもたらすことで、歯がためとしての基本的な機能を発揮する。特に、歯がため部48は、表面に露出部48a等で形成された凸部または凹部を有しているので、これらが無い箇所と、これらが形成されている箇所とで噛んだ時の刺激を変化させることができる。
【0062】
また、歯がためを使用するような、対象物を口に運ぶ習慣は、乳幼児INの発達の最初期において、最も最初に表れる行動であるとともに、その後のバラバラ期や構成期を通じて、しばしば乳幼児の行動として残る習慣である。このため、歯がため部材40は、このような習慣を満足させつつ、さらに、上述したような操作を行うことで、手や指の検知手段としての機能の発達及び操作の訓練に発展させることができる。すなわち、図14で説明したように、本体41には連結手段45を有し、この連結手段が、外方に突出した挿入部43と、挿入部43の少なくとも一部を受容する受容部44とを備え、ひとつの歯がため部材40が、他の歯がため部材40と連結可能な構成とされているので、歯がため部材40どうしを連結する操作を学習することができ、「構成期」における乳幼児の手や指の操作の学習を適切に行うことができる。
【0063】
この発明は上述の実施形態に限定されない。
第2の実施形態のような連結手段45を有する変形例として、湾曲した本体の頂部に凸部や凹部を設けた歯がため部を形成し、一方の端部に受容部44を設け、他方の端部に挿入部43を設けた形態としても良い。
また、第1の実施形態における歯がため部材10の端部14,14を略半球状とするのではなく、端部どうしを連結可能として、本体11を一体につながったリング状とすることができるようにし、分離部13は、端部どうしの連結を解除した場合に現れるようにしてもよい。そして、歯がため部材10どうしを、これらの端部を利用して連結することで、連続した螺旋状に形成できるようにしてもよい。
各実施形態の各構成は、その一部を省略することもできるし、実施形態相互において、適宜組み合わせることができ、あるいは、上述の説明のない他の構成を付加することもできる。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、口の検知機能から、検知手段としての手の機能の訓練へと橋渡しを行うことができるように、口唇の動きと手や指による操作を同時に学習させることができる歯がため玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による歯がため玩具の第1の実施形態における歯がため部材の構成例を示す概略斜視図。
【図2】本発明による歯がため玩具の第1の実施形態におけるベース部材の構成例を示す概略斜視図。
【図3】図1の歯がため部材の概略正面図。
【図4】図3のA−A線概略断面図。
【図5】図2のベース部材の一部を示す概略正面図。
【図6】図2のベース部材の一部を示す概略底面図。
【図7】図5のB−B線概略断面図。
【図8】図2のベース部材の後から固定するフランジ部の概略断面図。
【図9】歯がため部材を重ねて結合した様子を示す概略斜視図。
【図10】乳幼児が歯がため部材を変形させないで口に含んだ様子を示す概略斜視図。
【図11】乳幼児が歯がため部材を変形させて口に含んだ様子を示す概略斜視図。
【図12】歯がため玩具の全体を示す概略斜視図。
【図13】ベース部材から歯がため部材を取り外すことで手指の操作の練習(学習)をする様子を示す概略斜視図。
【図14】本発明による歯がため玩具の第2の実施の形態における歯がため部材の構成例を示す概略斜視図。
【図15】図14の歯がため部材の概略正面図。
【図16】図14の歯がため部材の概略平面図。
【図17】図14の歯がため部材の概略左側面図。
【図18】受容部(凹部)の構造を示す図であり、(a)は図17のA−A線部分切断端面図、(b)は図17のB−B線部分切断端面図。
【図19】図14の歯がため部材どうしの連結の様子を示す部分断面図。
【図20】受容部(凹部)の部分概略断面図。
【図21】中央受容部の概略斜視図。
【図22】歯がため玩具の歯がため部材を用いて手指の操作の練習(学習)をする様子を示す概略斜視図。
【図23】歯がため玩具の歯がため部材を用いて手指の操作の練習(学習)をする様子を示す概略斜視図。
【図24】歯がため玩具の歯がため部材を用いて手指の操作の練習(学習)をする様子を示す概略斜視図。
【図25】歯がため玩具の歯がため部材を用いて手指の操作の練習(学習)をする様子を示す概略斜視図。
【図26】乳幼児が図14の歯がため部材を口にくわえた様子を示す概略斜視図。
【図27】口唇トレーナーの概略断面図。
【図28】図27の口唇トレーナーの使用状態を示す概略斜視図。
【符号の説明】
10,40・・・歯がため部材、11・・・本体、13・・・分離部、14,14・・・端部、15・・・凸部、16・・・凹部、20・・・ベース部材、21・・・支柱部、22・・・フランジ部、23・・・フランジ部、41・・・本体、43・・・挿入部、44・・・受容部、45・・・連結手段、48・・・歯がため部。
Claims (5)
- 全体が変形可能となるように弾性材料で形成された歯がため部材と、
内部に発音部材が収容される本体部であって、少なくとも部分的に透明な中空体である支柱部を備えたベース部材と
を有しており、
前記歯がため部材が、その表面に凸部及び/または凹部を有し、かつ、前記ベース部材に着脱可能とされており、
前記ベース部材の前記支柱部に前記歯がため部材を複数個装着して、該支柱部の内部を隠すと、前記発音部材が外部から見えなくなる構成とした
ことを特徴とする、歯がため玩具。 - 前記歯がため部材は複数個形成されており、かつ前記凹部及び/または凸部を利用して歯がため部材どうしが互いに嵌合されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の歯がため玩具。
- 前記歯がため部材はリング形状とされ、かつ、該リング形状の一部が切欠かれることによる分離部を備え、
該歯がため部材が、前記支柱部に装着された状態から、前記分離部を開くように変形することにより、装着を外す構成とされており、
前記ベース部材の前記支柱部の両端部がフランジ部によりそれぞれ閉止されており、
前記歯がため部材の前記リング形状は、前記フランジ部の外形よりも小さな内径を有する開口を備えている
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の歯がため玩具。 - 前記複数個装着される歯がため部材は前記ベース部材の前記支柱部の長さ方向に沿って、一方の前記フランジ部から他方の前記フランジ部までの間を埋める数とされていることを特徴とする請求項3に記載の歯がため玩具。
- 前記歯がため部材の開口が、前記ベース部材の前記支柱部の外径よりも僅かに大きな内径を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の歯がため玩具。
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