JP3800691B2 - 湧出し式質量流量計 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、管内を流れる流体の質量流量を差圧を利用して測定する装置、とくに、管内に絶対値が等しく符号が逆の正負二つの湧出しを形成し、各湧出しの上流と下流の間の静圧差を測定して、これら二つの静圧差と湧出しの強さとから、管内の質量流量を知る流量計に係わる。
【0002】
【従来の技術】
差圧式の質量流量計として、いわゆるシモンズの流量計がよく知られている。図2はシモンズの原理による従来の差圧式質量流量計の例を示している。図2において、1は密度ρの流体が体積流量Qで流れている断面積Sの主管、23および24は分流管、25は合流管、21および22は互いに流量の等しい定流量ポンプ、26および27は互いに装置定数の等しいオリフィス、28は差圧計である。定流量ポンプ21は分流管23から、一方、定流量ポンプ22は分流管24から、それぞれ一定の体積流量qを吸い込み、共に合流管25に吐出している。このとき、オリフィス26を通過する体積流量はQ−q、オリフィス27を通過する体積流量はQ+qとなる。オリフィス26の上流とオリフィス27の下流の差圧Δp28は、k28をオリフィスと主管断面積Sによって決まる定数として、Δp28=k28ρQqとなる。ここで、流量qが既知であるから、差圧計28の出力から主管内の質量流量ρQを知ることができる。図2の質量流量計においては、定流量ポンプの流量qは主管1の流量Qよりも大きい値を用いる。このため、測定しようとする流量Qが大きい場合には、非常に大きな定流量ポンプを必要とする。また、二つのオリフィス26および27の装置定数が一定で互いに等しい事を原理上の前提としている
【0003】
シモンズの質量流量計では、オリフィスを用いているため、大きな圧力損失が発生する。この欠点を解決した差圧式質量流量計として、シモンズの流量計からオリフィスを取り去った質量流量計がある(芝亀吉他「差圧式質量流量計」、応用物理、第37巻、第4号、334ページ)。図3に示すのはその構成である。図3において、1は密度ρの流体が体積流量Qで流れている断面積Sの主管、23および24は分流管、25は合流管、21と22は互いに流量の等しい定流量ポンプ、28は差圧計、33および34は主管1に穿たれた導圧口である。定流量ポンプ21は分流管23から、一方、定流量ポンプ22は分流管24から、それぞれ一定の体積流量qを吸い込み、共に合流管25に吐出している。30、31および32は、それぞれ、分流管23、合流管25および分流管24と主管1との接続点である。接続点30、31、32を境とする主管内の領域における体積流量は、上流から順にQ、Q−q、Q+q、Qとなる。ここで、主管1の上流から下流に至る流線に沿ってベルヌーイの定理を適用すれば、導圧口33における圧力p33と、導圧口34における圧力p34に対して、
【0004】
【数1】
【0005】
が成り立つ。従って、圧力p33と圧力p34の差は、
【0006】
【数2】
【0007】
となり、定流量ポンプの体積流量qが既知であるから、差圧計28の出力から主管1内の質量流量ρQを知ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
シモンズの原理に基づく質量流量計においては、オリフィスを用いているため大きな圧力損失が生じる事、二つのオリフィスの装置係数が互いに等しい事が原理上の前提になっているが、オリフィスの装置定数は厳密には流量や粘度の関数であるため、流れの条件によって装置定数が変化した分が測定誤差となる事、特性のそろった定流量ポンプが必要で構造が複雑である事などの問題がある。シモンズの流量計からオリフィスを取り去った質量流量計においても、特性のそろった定流量ポンプを必要とするといった構造の複雑さの問題、流体の粘性に起因する圧力降下が差圧出力に重畳し、この圧力降下の大きさが流れの条件によって変化するため、誤差を生じるという問題がある。このように、従来の差圧式質量流量計には、構造が複雑である事、圧力損失が大きい事、粘性等の流れの条件の変化によって誤差を生じる事などの問題点がある。本発明は、圧力損失が小さく、構造が単純で、流体の粘性に起因する圧力降下の影響を受けない差圧式質量流量計を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明においては、絶対値が等しく符号が逆の強さを持つ正負二つの湧出しを形成して、主管内の流れに既知の交番的流量変動を加え、上流側湧出しの上流下流間の差圧と下流側湧出しの上流下流間の差圧の二つの差圧を測定し、これら二つの差圧と流量変動とから主管内の質量流量を求める。
【0010】
【作用】
主管内に湧出しを形成して流れに流量変動を加えると、湧出し点の上流の流量と下流の流量の間には差が生じ、湧出し点の上流の静圧と下流の静圧には、流量変動の大きさと管内の質量流量とに比例した差が発生する。もし流体の粘性が無視できるなら、この差圧の大きさを測定することで主管内の質量流量を知ることができる。しかし実際の流体には粘性があるので、湧出し点の上流と下流の間の差圧には、質量流量に比例する差圧成分の他に、粘性に起因する圧力降下分が含まれる。このため、一つの湧出し点の上下流の差圧から質量流量を求めようとすると、粘性に起因した誤差を生じる。本発明においては、正負二つの湧出しを形成し、二つの湧出し点において絶対値が等しく符号が逆の交番的流量変動を加えている。このとき、二つの湧出し点の上下流の差圧には、質量流量に比例する差圧成分が逆相で含まれるのに対して、流体の粘性に起因する圧力降下分は同相成分として含まれる。従って、二つの静圧差を測定してその差を取ることで、粘性による圧力降下の影響を除いて、主管内の質量流量を知ることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の詳細を図1に示す実施例をもとに説明する。図1において、1は、密度ρの流体がQなる体積流量で流れている断面積Sの主管である。2は、上流側湧出し点11と下流側湧出し点12で主管1に接続し、内に隔膜としてダイアフラム3が取り付けられた湧出し管である。4は、電磁力によりダイアフラム3を一定の周波数と一定振幅で正弦的に振動させる駆動装置である。駆動装置4がダイアフラム3を振動させることにより、主管1内の流れに対して、上流側湧出し点11では、一定の周波数と一定振幅の正弦的な流量変動−q=−q0 sinωtが加えられ、一方、下流側湧出し点12では流量変動q=q0 sinωtが加えられる。7は上流側差圧計で、導圧管5および5’によって導かれた主管1内の圧力の差を検出している。8は下流側差圧計で、導圧管6および6’によって導かれた主管1内の圧力の差を検出している。上流側差圧計7の導圧管5は、上流側湧出し点11より上流の導圧口13において、また導圧管5’は、上流側湧出し点11よりも下流で、下流側湧出し点12よりも上流の導圧口14において、主管1と接続されている。下流側差圧計8の導圧管6は、上流側湧出し点11よりも下流で下流側湧出し点12よりも上流の導圧口15において、また導圧管6’は、下流側湧出し点12よりも下流の導圧口16において、主管1と接続されている。本実施例は、湧出し点11、12および導圧口13、14、15、16が含まれる断面の、主管1の管軸に沿って測った位置について、次の条件が満たされるように作製されている。すなわち、導圧口14と上流側湧出し点11の断面間の距離は、導圧口15と下流側湧出し点12の断面間の距離に等しく、また、導圧口13と上流側湧出し点11の断面間の距離は、導圧口16と下流側湧出し点12の断面間の距離に等しい。9は、信号処理装置で、上流側差圧計7および下流側差圧計8の出力から、主管内の質量流量ρQを計算して指示計器10に出力している。
【0012】
湧出し管2、ダイアフラム3および駆動装置4の働きにより、主管1内の、上流側湧出し点11より上流における体積流量はQ、上流側湧出し点11より下流で下流側湧出し点12より上流の範囲における体積流量はQ−q、下流側湧出し点12より下流における体積流量はQとなる。導圧口13より上流の点を通って導圧口16の下流に至る流線に沿って圧力方程式を適用すると、導圧口13、14、15、16の断面内の圧力をそれぞれp13、p14、p15、p16として、
【0013】
【数3】
【0014】
【数4】
【0015】
が成り立つ。実際には、流体に粘性があるため圧力降下が生じ、結局、上流側差圧計7の出力Δp7 および下流側差圧計8の出力Δp8 は、それぞれ
【0016】
【数5】
【0017】
【数6】
【0018】
となる。数5および数6の右辺第三項は、流量変動の時間微分の項、すなわち流れの加速度の項である。一方、右辺第四項は、粘性に起因する圧力降下の項で、流量変動qに比例した成分を含んでいる。本実施例では、導圧口13、14、15、16と湧出し点11、12とが、湧出し点11と12から等距離にある断面を基準にして対称に配置されているため、数5と数6の右辺第三項および右辺第四項の大きさはそれぞれ互いに等しくなる。すなわち、k7 =k8 およびτ7 =τ8 が成り立つ。従って、差圧Δp8 とΔp7 の差をとれば、加速度項および粘性項は互いに相殺して
【0019】
【数7】
【0020】
となる。通常、流量変動qは主管流量Qより十分に小さく設定されるので、数7の右辺第二項は、同第一項に比較して高次の微小量として無視することができ、二つの差圧Δp 8 とΔp 7 の差は、右辺第一項にほぼ等しい。流量変動の大きさqと主管1の断面積Sは既知であるから、数7右辺第一項の大きさから、主管1内の質量流量ρQを知ることができる。なお、より高精度の測定が要求される場合や、流量変動qがQに較べて十分に小さいとは言えない場合には、信号処理装置9において、流量変動と同相同波形の信号sinωtを参照信号として同期検波をおこなえば、数7の右辺の第一項と第二項とを分離してそれぞれの大きさを求めることができる。また、本実施例では、導圧口を上述のように対称性を持たせて配置して、粘性項が相殺するようにしたが、必ずしもこのように配置する必要はなく、非対称に配置し、差圧Δp8 とΔp7 に適当な重み係数を乗じた上で差をとることで粘性項を相殺するようにしても構わない。この場合には、流れの加速度項である数5および数6の右辺第三項にアンバランスが生じ、完全には相殺されなくなる可能性があるが、非常に高い周波数の流量変動を用いる場合を除けば、加速度項は小さく、無視することができる。なお、高い周波数の流量変動を用いる場合でも、信号処理装置9において同期検波処理を用いれば、相殺しきれない加速度項を位相の直交する成分として分離することができるから,その影響を除くことが可能である。
【0021】
【発明の効果】
本発明では、主管内の流れに既知の流量変動を与える正負二つの湧出しを形成し、上流側湧出しの上流側と下流側の差圧と、下流側湧出しの上流側と下流側の差圧の二つの差圧を測定し、これら二つの差圧と流量変動とから、主管内の質量流量を測定する。本発明では、流れの中に障害物を置くことが原理的に不要であり、管路を曲げる等の必要も無いため、流量計挿入に伴う圧力損失が全く生じない。また、定流量ポンプを用いて定常的な流量変化を加えていた従来の差圧式質量流量計と異なって、交番的に変動する流量変動を用いることで、流量変化を与えるための機構が非常に単純・小型にできる。さらに、二つの変動する湧出しの上下流の差圧をとり、二つの差圧を用いることによって、粘性に起因する誤差を生じることなく質量流量を測定することが可能である。このように、本発明によって、圧力損失が無く、構造が単純で、粘性に起因する誤差を生じないという特長を備えた質量流量計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である。
【図2】シモンズの原理に基づいた質量流量計の例である。
【図3】オリフィスを用いない差圧式質量流量計の例である。
【符号の説明】
1 主管
2 湧出し管
3 ダイアフラム
4 駆動装置
5、5’、6、6’導圧管
7 上流側差圧計
8 下流側差圧計
9 信号処理装置
10 指示計器
11 上流側湧出し点
12 下流側湧出し点
13、14、15、16、33、34 導圧口
21、22 定流量ポンプ
23、24 分流管
25 合流管
26、27 オリフィス
28 差圧計
30、32 主管と分流管の接続点
31 主管と合流管の接続点
Claims (1)
- 差圧を測定して管内の質量流量を知る差圧式質量流量計において、
主管(1)内の流れに、上流側湧出し点(11)において交番的な流量変動を加え、下流側湧出し点(12)において前記上流側湧出し点(11)における流量変動と絶対値が等しく符号が反対の流量変動を加える手段(2、3、4)と、
主管(1)に、前記上流側湧出し点(11)より上流の導圧口(13)と、上流側湧出し点(11)より下流でかつ前記下流側湧出し点(12)より上流の導圧口(14)で接続され、前記上流側湧出し点(11)の上流と下流の間の前記主管内静圧差を測定する上流側差圧計(7)と、
主管(1)に、上流側湧出し点(11)より下流でかつ下流側湧出し点(12)より上流の導圧口(15)と、下流側湧出し点(12)より下流の導圧口(16)とで接続され、前記下流側湧出し点(12)の上流と下流の間の主管内静圧差を測定する下流側差圧計(8)とを備え、
前記主管の流れに加えられる前記流量変動の大きさと、前記上流側差圧計および前記下流側差圧計の出力とから、
前記主管内の質量流量を知ることを特徴とする湧出し式質量流量計。
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-
1996
- 1996-10-03 JP JP28342596A patent/JP3800691B2/ja not_active Expired - Fee Related
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