JP3800284B2 - 発光装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流励起によって発光可能な有機発光層を用い、フォトニックバンドギャップ構造を有する発光装置に関する。
【0002】
【背景技術および発明が解決しようとする課題】
近年、フォトニクス結晶を利用した半導体発光素子が検討されている(例えば、特開平9−232669号公報参照)。この種の半導体発光素子では、結晶内部に光を強く閉じ込める共振器を作成でき、きわめて高い効率でコヒーレント光が得られることが期待されている。
【0003】
しかし、半導体を用いた場合、単位媒質(周期構造の一単位)が結晶であるため、単位媒質の界面が不規則な状態になったり、あるいは、不純物の影響を受けるために均一な周期構造を得にくく、そのため、優れたフォトニクス結晶としての特性を持った良好な性能の発光素子が得られにくい。また、半導体を用いた場合、屈折率の異なる組合せの材料の選択に限界がある。
【0004】
本発明の目的は、フォトニックバンドギャップを利用し、きわめて高い効率でスペクトル幅が狭い光が得られ、かつ有機発光材料を用いて製造できる発光装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る発光装置は、
一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成しうる回折格子と、
前記回折格子の一部に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように形成された欠陥部と、
電流励起によって発光可能な有機発光層と、
前記有機発光層に電界を印加するための一対の電極層と、を含む。
【0006】
この発光装置においては、一対の電極層、すなわち陰極と陽極とからそれぞれ電子とホールとが有機発光層内に注入され、この電子とホールとを有機発光層で再結合させて、分子が励起状態から基底状態に戻るときに光が発生する。このとき、前記回折格子のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子内を伝搬できず、前記欠陥に起因するエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが回折格子内を伝搬できる。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位の幅を規定することにより、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0007】
前記有機発光層と前記回折格子の前記欠陥部とは、以下の態様をとりうる。
【0008】
(1)前記有機発光層は、前記欠陥部に形成され、欠陥部としても機能する。
【0009】
(2)前記有機発光層は、前記欠陥部および前記回折格子の少なくとも一部としても機能する。
【0010】
(3)前記有機発光層は、前記欠陥部と異なる領域に形成される。
【0011】
より具体的に、発光装置は、以下の構成をとりうる。
【0012】
(A)発光装置は、基板と、
前記基板上に形成された第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された回折格子と、
前記回折格子上に形成された第2の電極と、を含み、
前記回折格子は、
一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成する第1の回折格子および第2の回折格子と、
前記第1の回折格子と前記第2の回折格子との間に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように設定された欠陥部と、
前記欠陥部に形成された有機発光層と、を含む。
【0013】
前記第2の電極は、前記有機発光層の形成領域に対応した領域に局所的に形成することができる。この場合、前記回折格子は、エアギャップ構造を有することもできる。
【0014】
この態様の発光装置は、さらに、ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方を有することが望ましい。
【0015】
前記回折格子は、多くの態様をとることができる。例えば、ホール輸送層または電子輸送層を有する場合には、前記回折格子は、それぞれ、ホール輸送層または電子輸送層がひとつの媒質を構成することができる。前記回折格子は、ホール輸送層や電子輸送層ではなく、絶縁性の第1の媒質と第2の媒質とが周期的に配列された構造を有してもよい。さらに、前記回折格子は、有機発光層がひとつの媒質を構成してもよい。
【0016】
(B)発光装置は、基板と、
前記基板と平行方向に形成され、かつ、一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成する回折格子と、
前記回折格子の一部に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように設定された欠陥部と、
電流励起によって発光可能な有機発光層と、
前記有機発光層に電界を印加するための第1の電極および第2の電極と、
を含み、
前記有機発光層は前記欠陥部と異なる領域に形成されている。
【0017】
この発光装置は、さらに、ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方を有することが望ましい。この場合、前記欠陥部は、電子輸送層あるいはホール輸送層から構成され、該欠陥部と前記有機発光層とが接することが望ましい。また、前記有機発光層は連続して形成されていてもよい。
【0018】
(C)発光装置は、基板と、
前記基板と垂直方向に形成され、かつ、一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成する回折格子と、
前記回折格子の一部に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように設定された欠陥部と、
電流励起によって発光可能な有機発光層と、
前記有機発光層に電界を印加するための第1の電極および第2の電極と、
を含む。
【0019】
この発光装置は、さらに、ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方を有することが望ましい。また、前記有機発光層は連続して形成されていてもよい。
【0020】
次に、本発明に係る発光装置の各部分に用いることができる材料の一部を例示する。これらの材料は、公知の材料の一部を示したにすぎず、例示したもの以外の材料を選択できることはもちろんである。
【0021】
(有機発光層)
有機発光層の材料は、所定の波長の光を得るために公知の化合物から選択される。
【0022】
このような有機化合物としては、例えば、特開平10−153967号公報に開示された、アロマティックジアミン誘導体(TPD)、オキシジアゾール誘導体(PBD)、オキシジアゾールダイマー(OXD−8)、ジスチルアリーレン誘導体(DSA)、ベリリウム−ベンゾキノリノール錯体(Bebq)、トリフェニルアミン誘導体(MTDATA)、ルブレン、キナクリドン、トリアゾール誘導体、ポリフェニレン、ポリアルキルフルオレン、ポリアルキルチオフェン、アゾメチン亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、フェナントロリンユウロピウム錯体などが使用できる。
【0023】
より具体的には、有機発光層の材料としては、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135361号公報、同2−135359号公報、同3−152184号公報、さらに、同8−248276号公報および同10−153967号公報に記載されているものなど、公知のものが使用できる。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】
(回折格子)
回折格子の媒質としては、公知の無機材料および有機材料を用いることができる。
【0025】
代表的な無機材料としては、例えば特開平5−273427号公報に開示されているような、TiO2、TiO2−SiO2混合物、ZnO、Nb25、Si34、Ta25、HfO2またはZrO2などを例示することができる。
【0026】
また、代表的な有機材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および光硬化性樹脂など、公知の樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、層の形成方法などを考慮して適宜選択される。例えば、熱および光の少なくとも一方のエネルギーによって硬化することができる樹脂を用いることで、汎用の露光装置やベイク炉、ホットプレートなどが利用できる。
【0027】
このような物質としては、例えば、本願出願人による特願平10−279439号に開示された紫外線硬化型樹脂がある。紫外線硬化型樹脂としては、アクリル系樹脂が好適である。様々な市販の樹脂や感光剤を利用することで、透明性に優れ、また、短期間の処理で硬化可能な紫外線硬化型のアクリル系樹脂を得ることができる。
【0028】
紫外線硬化型のアクリル系樹脂の基本構成の具体例としては、プレポリマー、オリゴマー、またはモノマーがあげられる。
【0029】
プレポリマーまたはオリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、ポリエーテルアクリレート類、スピロアセタール系アクリレート類等のアクリレート類、エポキシメタクリレート類、ウレタンメタクリレート類、ポリエステルメタクリレート類、ポリエーテルメタクリレート類等のメタクリレート類等が利用できる。
【0030】
モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、カルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、1,3−ブタンジオールアクリレート等の単官能性モノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート等の二官能性モノマー、トリメチロールプロバントリアクリレート、トリメチロールプロバントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能性モノマーが利用できる。
【0031】
以上、回折格子の媒質を構成する無機材料あるいは有機材料を例示したが、前述したように、媒質としては、有機発光層、ホール輸送層および電子輸送層のいずれかが媒質として機能する場合には、これらの層を構成する材料も採用し得る。
【0032】
(ホール輸送層)
必要に応じて設けられるホール輸送層の材料としては、公知の光伝導材料のホール注入材料として用いられているもの、あるいは有機発光装置のホール注入層に使用されている公知のものの中から選択して用いることができる。ホール輸送層の材料は、ホールの注入あるいは電子の障壁性のいずれかの機能を有するものであり、有機物あるいは無機物のいずれでもよい。その具体例としては、例えば、特開平8−248276号公報に開示されているものを例示することができる。
【0033】
(電子輸送層)
必要に応じて設けられる電子輸送層の材料としては、陰極より注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料は公知の物質から選択することができる。その具体例としては、例えば、特開平8−248276号公報に開示されたものを例示することができる。
【0034】
(電極層)
陰極としては、仕事関数の小さい(例えば4eV以下)電子注入性金属、合金電気伝導性化合物およびこれらの混合物を用いることができる。このような電極物質としては、例えば特開平8−248276号公報に開示されたものを用いることができる。
【0035】
陽極としては、仕事関数の大きい(例えば4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を用いることができる。陽極として光学的に透明な材料を用いる場合には、CuI,ITO,SnO2,ZnOなどの導電性透明材料を用いることができ、透明性を必要としない場合には金などの金属を用いることができる。
【0036】
本発明において、回折格子はフォトニックバンドギャップを構成するように、媒質の材料(その屈折率など)、格子のピッチ、アスペクト比などが調整される。
【0037】
本発明において、回折格子の形成方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その代表例を以下に例示する。
【0038】
▲1▼リソブラフィーによる方法
ポジまたはネガレジストを紫外線やX線などで露光および現像して、レジスト層をパターニングするこにより、回折格子を作成する。ポリメチルメタクリレートあるいはノボラック系樹脂などのレジストを用いたパターニングの技術としては、例えば特開平6−224115号公報、同7−20637号公報などがある。
【0039】
また、ポリイミドをフォトリソブラフィーによりパターニングする技術としては、例えば特開平7−181689号公報および同1−221741号公報などがある。さらに、レーザアブレーションを利用して、ガラス基板上にポリメチルメタクリレートあるいは酸化チタンの回折格子を形成する技術として、例えば特開平10−59743号公報がある。
【0040】
▲2▼光照射による屈折率分布の形成による方法
光導波路の光導波部に屈折率変化を生じさせる波長の光を照射して、光導波部に屈折率の異なる部分を周期的に形成することにより回折格子を形成する。このような方法としては、特に、ポリマーあるいはポリマー前駆体の層を形成し、光照射などにより部分的に重合を行い、屈折率の異なる領域を周期的に形成させて回折格子とすることが好ましい。この種の技術として、例えば、特開平9−311238号公報、同9−178901号公報、同8−15506号公報、同5−297202号公報、同5−32523号公報、同5−39480号公報、同9−211728号公報、同10−26702号公報、同10−8300号公報、および同2−51101号公報などがある。
【0041】
▲3▼スタンピングによる方法
熱可塑性樹脂を用いたホットスタンピング(特開平6−201907号公報)、紫外線硬化型樹脂を用いたスタンピング(特願平10−279439号)、電子線硬化型樹脂を用いたスタンピング(特開平7−235075号公報)などのスタンピングによって回折格子を形成する。
【0042】
▲4▼エッチングによる方法
リソグラフィーおよびエッチング技術を用いて、薄膜を選択的に除去してパターニングし、回折格子を形成する。
【0043】
以上、回折格子の形成方法について述べたが、要するに、回折格子は互いに異なる屈折率を有する少なくとも2領域の周期構造をゆうすればよく、例えば、屈折率の異なる2種の材料により2領域を形成する方法、一種の材料を部分的に変性させるなどして、屈折率の異なる2領域を形成する方法、などにより形成することができる。
【0044】
また、発光装置の各層は、公知の方法で形成することができる。たとえば、有機発光層は、その材質によって好適な成膜方法が選択され、具体的には、蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェット法などを例示できる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下に例示する実施の形態のうち、第1〜第3の実施の形態は、有機発光層が回折格子の欠陥部に形成された例である。
【0046】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る発光装置1000を模式的に示す断面図である。発光装置1000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。
【0047】
回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、その形状(寸法)や媒質の組合せに基づいて、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。そして、第2の媒質140は、ホール輸送層30によって形成されている。第1の媒質130は、第2の媒質140との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。たとえば、第1の媒質として空気などの気体であってもよい。このように、気体の層でいわゆるエアギャップ構造の回折格子を形成する場合には、発光装置に用いる一般的な材料の選択範囲で、回折格子を構成する2媒質の屈折率差を大きくすることができる。
【0048】
有機発光層40は、欠陥部120に埋め込まれている。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40としても機能している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0049】
陰極60は、有機発光層40の表面を覆うように、局部的に形成される。このように、陰極60を有機発光層40上のみに形成することにより、電流を有機発光層40に集中して供給することができ、電流の損失を小さくできる。
【0050】
本実施の形態の発光装置1000は、一次元のフォトニックバンドギャップを有する回折格子100によって、光を閉じ込めるので、回折格子100ののびる方向(図1におけるX方向)のみでの光伝搬が制御される。したがって、その他の方向には漏れモードの光の伝搬が許容される。これらの漏れモードの光の伝搬を抑制するために、必要に応じて、光の閉じ込めを目的として、図示しないクラッド層や誘電体多層ミラーを設けることもできる。このことは、他の実施の形態でも同様である。
【0051】
次に、この発光装置1000の動作および作用について説明する。
【0052】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位で基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0053】
発光装置1000の回折格子100の製造方法および各層を構成する材料などについては、前述した方法あるいは材料などを適宜用いることができる。これらの製造方法および材料については、以下に述べる他の実施の形態でも同様である。
【0054】
(第2の実施の形態)
図2は、本実施の形態に係る発光装置2000を模式的に示す断面図である。発光装置2000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、電子輸送層50、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20および陰極60は、連続して形成され、ホール輸送層30および電子輸送層50は、不連続に形成されている。
【0055】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120には有機発光層40が形成されている。欠陥部120の両側に、それぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。第1の媒質130は、陽極20から陰極60に達する状態で形成されている。第2の媒質140は、ホール輸送層30と電子輸送層50との間に介在している。そして、第1および第2の媒質130および140は、それぞれ絶縁性を有する。第1および第2の媒質130および140が絶縁性を有することにより、陽極20と陰極60とに電圧が印加されたとき、ホール輸送層40および電子輸送層50を介して、欠陥部120に形成された有機発光層40のみに電流が流れる。そして、第1の媒質130および第2の媒質140は、周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0056】
有機発光層40は、欠陥部120に埋め込まれている。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40としても機能している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0057】
次に、この発光装置2000の動作および作用について説明する。
【0058】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子輸送層50を介して電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位で基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0059】
(第3の実施の形態)
図3は、本実施の形態に係る発光装置3000を模式的に示す断面図である。発光装置3000は、前述した発光装置2000と似ているが、ホール輸送層30に絶縁性の層を形成せず、これを連続的に形成している点で異なる。発光装置3000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20、ホール輸送層30および陰極60は、連続して形成されている。
【0060】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120には有機発光層40が形成されている。欠陥部120の両側に、それぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。第1の媒質130および第2の媒質140は、ホール輸送層30と陰極60との間に介在している。そして、第1および第2の媒質130および140は、それぞれ絶縁性を有する。第1および第2の媒質130および140が絶縁性を有することにより、陽極20と陰極60とに電圧が印加されたとき、陰極60からの電流は、欠陥部120に形成された有機発光層40に流れる。そして、第1の媒質130および第2の媒質140は、周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0061】
有機発光層40は、欠陥部120に埋め込まれている。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40としても機能している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0062】
次に、この発光装置3000の動作および作用について説明する。
【0063】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0064】
本実施の形態では、電子輸送層を有さないが、もちろん有機発光層40と陰極60との間に電子輸送層を形成してもよい。また、ホール輸送層と電子輸送層の両者を設ける必要は必ずしもなく、いずれか一方の輸送層を設けるだけでもよい。このことは、他の実施の形態においても同様である。
【0065】
(第4の実施の形態)
図4は、本実施の形態に係る発光装置4000を模式的に示す断面図である。発光装置4000は、前述した発光装置1000,2000および3000と、欠陥部と有機発光層とを異なる領域に形成した点で異なる。発光装置4000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20および陰極60は、連続して形成され、ホール輸送層30は不連続で形成されている。
【0066】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。欠陥部120および第1の媒質130は、ホール輸送層30によって形成されている。第2の媒質140は、絶縁性を有する。そして、第2の媒質140は、ホール輸送層30を兼ねる第1の媒質130との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。また、欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0067】
有機発光層40は、欠陥部120を兼ねるホール輸送層30の上に形成され、ホール輸送層30と陰極60との間に介在する。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40と異なる領域で形成されている。この実施の形態では回折格子100の欠陥部120がホール輸送層30を兼ねるため、有機発光層40と欠陥部120は、少なくとも一部で接触するように形成されている。さらに、有機発光層40の両側には、回折格子100と陰極60との間に、絶縁層70が形成されている。
【0068】
絶縁性を有する第2の媒質140および絶縁層70を有することにより、陽極20と陰極60とに電圧が印加されたとき、陽極20および陰極60からの電流は、欠陥部120を兼ねるホール輸送層30と有機発光層40に集中して流れる。
【0069】
次に、この発光装置4000の動作および作用について説明する。
【0070】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位で基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0071】
(第5の実施の形態)
図5は、本実施の形態に係る発光装置5000の回折格子100を模式的に示す断面図である。この実施の形態では、回折格子100の変形例を示す。第1〜第3の実施の形態では、有機発光層40は回折格子100の欠陥部120にのみ埋め込まれた状態で形成されている。これに対し、本実施の形態では、有機発光層40は、欠陥部120のみならず回折格子100の媒質の一部を構成する。つまり、欠陥部120に近い領域の第2の媒質140は、有機発光層40の材料で埋め込んで形成されている。このように、有機発光層40を欠陥部120を含むより広い領域で形成することにより、有機発光層の形成が容易となる。
【0072】
具体的には、回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130、第2の媒質140および第3の媒質150が、配列している。欠陥部120には、有機発光層40が形成されている。そして、欠陥部120の近傍では、第1の媒質130と有機発光層40からなる第2の媒質140とが交互に配列し、途中から第1の媒質130と第3の媒質150とが交互に配列している。そして、少なくとも第1および第3の媒質130および150は、周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。また、欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0073】
図5に示した回折格子100は、回折格子の一例であって、前述した第1〜第3の実施の形態と同様な発光装置をはじめとして、さらに他の構成の発光装置にも適用できる。
【0074】
以下に例示する実施の形態のうち、第6〜第9の実施の形態は、発光層が回折格子の媒質を構成する例である。
【0075】
(第6の実施の形態)
図6は、本実施の形態に係る発光装置6000を模式的に示す断面図である。発光装置6000は、基板10、陽極20、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。
【0076】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。そして、第2の媒質140は、有機発光層40によって形成されている。第1の媒質130は、第2の媒質140との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0077】
有機発光層40は、欠陥部120および第2の媒質140の形成領域に埋め込まれ、さらに層の上部で連続している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0078】
本実施の形態では、有機発光層40は、回折格子100の欠陥部120および第2の140としても機能している。有機発光層が連続して形成されていると、層の形成が容易である。このことは、後述する第7および8の実施の形態でも同様である。
【0079】
次に、この発光装置6000の動作および作用について説明する。
【0080】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0081】
なお、本実施の形態では、図示はしないが、陽極20および陰極60は、欠陥部120となる有機発光層40の部分にのみ対応して形成することもできる。このように電極を形成することにより、有機発光層40への電流注入効率を高めることができる。
【0082】
(第7の実施の形態)
図7は、本実施の形態に係る発光装置7000を模式的に示す断面図である。発光装置7000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、電子輸送層50、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20および陰極60は、連続して形成され、ホール輸送層30および電子輸送層50は、不連続に形成されている。
【0083】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120には有機発光層40が形成されている。欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。第1の媒質130は、陽極20から陰極60に達する状態で形成されている。第2の媒質140は、有機発光層40からなり、ホール輸送層30と電子輸送層50との間に介在している。そして、第1の媒質130は、絶縁性を有する。第1の媒質130が絶縁性を有することにより、陽極20と陰極60とに電圧が印加されたとき、ホール輸送層30および電子輸送層50を介して、欠陥部120に形成された有機発光層40に効率よく電流が流れる。そして、第1の媒質130は、第2の媒質140との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0084】
有機発光層40は、欠陥部120に埋め込まれている。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40としても機能している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0085】
次に、この発光装置7000の動作および作用について説明する。
【0086】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子輸送層50を介して電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0087】
(第8の実施の形態)
図8は、本実施の形態に係る発光装置8000を模式的に示す断面図である。発光装置8000は、基板10、陽極20、有機発光層40、電子輸送層50、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20、有機発光層40、電子輸送層50および陰極60は、それぞれ連続して形成されている。
【0088】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120には電子輸送層50が埋め込まれている。欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。第1の媒質130は、有機発光層40によって形成されている。第2の媒質140は、電子輸送層50によって形成されている。そして、第1の媒質130および第2の媒質140は、有機発光層および電子輸送層としての機能を有し、さらに両者の周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0089】
有機発光層40は、欠陥部120を兼ねる電子輸送層50の下に形成され、電子輸送層50と陽極20との間に介在する。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40と異なる領域で形成されている。この実施の形態では回折格子100の欠陥部120が電子輸送層50を兼ねるため、有機発光層40と欠陥部120は、少なくとも一部で接触するように形成されている。そして、欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0090】
次に、この発光装置8000の動作および作用について説明する。
【0091】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子輸送層50を介して電子が、陽極20からホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0092】
以下に例示する実施の形態のうち、第9および第10の実施の形態は、有機発光層が回折格子の欠陥部と異なる例である。
【0093】
(第9の実施の形態)
図9は、本実施の形態に係る発光装置9000を模式的に示す断面図である。発光装置9000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20および陰極60は、連続して形成され、ホール輸送層30および有機発光層40は、不連続に形成されている。
【0094】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120には第1の媒質130を構成する物質によって形成されている。欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。第1の媒質130は、陽極20から陰極60に達する状態で形成されている。第2の媒質140は、ホール輸送層30と陰極60との間に介在している。第1の媒質130は、絶縁性を有する。第1の媒質130が絶縁性を有することにより、陽極20と陰極60とに電圧が印加されたとき、ホール輸送層50を介して、第2の媒質140を構成する有機発光層40のみに電流が流れる。そして、第1の媒質130は、第2の媒質140との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0095】
有機発光層40は、第2の媒質140を兼ね、ホール輸送層30と陰極60とのとの間に介在する。また、欠陥部120は、第1の媒質130を兼ねる。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40と異なる領域で形成されている。そして、欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0096】
次に、この発光装置9000の動作および作用について説明する。
【0097】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0098】
(第10の実施の形態)
図10は、本実施の形態に係る発光装置10000を模式的に示す断面図である。発光装置10000は、基板10、陽極20、ホール輸送層30、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。そして、陽極20、有機発光層40および陰極60は、連続して形成されている。ホール輸送層30は、不連続に形成されている。
【0099】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。欠陥部120および第1の媒質130は、ホール輸送層30によって形成されている。第2の媒質140は、絶縁性を有する。そして、第2の媒質140は、ホール輸送層30を兼ねる第1の媒質130との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。また、欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0100】
有機発光層40は、欠陥部120を兼ねるホール輸送層30の上に形成され、回折格子100と陰極60との間に介在する。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、有機発光層40と異なる領域で形成されている。
【0101】
次に、この発光装置10000の動作および作用について説明する。
【0102】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホール輸送層30を介してホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0103】
(第11の実施の形態)
図11は、本実施の形態に係る発光装置11000を模式的に示す断面図である。発光装置11000は、前述した実施の形態と、回折格子の形成方向が異なる。この発光装置11000は、基板10、陽極20、有機発光層40、陰極60および回折格子100を有する。そして、回折格子100は、基板10に対して垂直方向に形成されている。
【0104】
前記回折格子100は、欠陥部120を有し、この欠陥部120の両側にそれぞれ第1および第2の回折格子100aおよび100bを有する。これらの回折格子100aおよび100bは、所定の波長帯域に対してフォトニックバンドギャップを形成しうる。各回折格子100aおよび100bは、屈折率の異なる第1の媒質130と第2の媒質140とが、交互に配列している。そして、第1の媒質130は、有機発光層40によって形成されている。第2の媒質140は、第1の媒質130との周期的な分布によってフォトニックバンドギャップを形成しうる物質であればよく、その材質は特に限定されない。
【0105】
有機発光層40は、欠陥部120に埋め込まれている。つまり、本実施の形態では、回折格子100の欠陥部120は、発光層40としても機能している。欠陥部120は、その欠陥に起因するエネルギー準位が、有機発光層40の電流励起による発光スペクトル内に存在するように形成される。
【0106】
陽極20および陰極60は、基板10に対して垂直方向に形成されている。
【0107】
次に、この発光装置11000の動作および作用について説明する。
【0108】
陽極20と陰極60とに所定の電圧が印加されることにより、陰極60から電子が、陽極20からホールが、それぞれ有機発光層40内に注入される。有機発光層40内では、この電子とホールとが再結合されることにより励起子が生成される。そして、回折格子100のフォトニックバンドギャップに相当する波長帯域の光は、回折格子100内を伝搬できないので、励起子は、欠陥に起因するエネルギー準位でに基底状態に戻り、このエネルギー準位に相当する波長帯域の光のみが発生する。したがって、前記欠陥に起因するエネルギー準位によって規定された、発光スペクトル幅の非常に狭い光を高効率で得ることができる。
【0109】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、有機発光層を用い、優れたフォトニックバンドギャップとしての特性を持った、発光スペクトル幅の非常に狭い高性能の発光装置が提供される。
【0110】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第9の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の第10の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の第11の実施の形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10 基板
20 陽極
30 ホール輸送層
40 有機発光層
50 電子輸送層
60 陰極
100,100a,100b 回折格子
120 欠陥部
130,140,150 媒質

Claims (3)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された第1の電極と、
    前記第1の電極上に形成された回折格子と、
    前記回折格子上に形成された第2の電極と、
    ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方と、を含み、
    前記回折格子は、
    一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成する第1の回折格子および第2の回折格子と、
    前記第1の回折格子と前記第2の回折格子との間に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように設定された欠陥部と、
    前記欠陥部に形成された有機発光層と、を含み、
    前記回折格子は、ホール輸送層または電子輸送層がひとつの媒質を構成する、発光装置。
  2. 請求項1において、
    前記第2の電極は、前記有機発光層の形成領域に対応した領域に局所的に形成された、発光装置。
  3. 基板と、
    前記基板と平行方向に形成され、かつ、一次元の周期的な屈折率分布を有し、フォトニックバンドギャップを構成する回折格子と、
    前記回折格子の一部に形成され、欠陥に起因するエネルギー準位が所定の発光スペクトル内に存在するように設定された欠陥部と、
    電流励起によって発光可能な有機発光層と、
    前記有機発光層に電界を印加するための第1の電極および第2の電極と、
    ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方と、
    を含み、
    前記有機発光層は前記欠陥部と異なる領域に形成され、
    前記欠陥部は、電子輸送層あるいはホール輸送層から構成され、該欠陥部と前記有機発光層とが接する、発光装置。
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