JP3798943B2 - 金属板のプレス成形時における寸法精度不良量の予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に自動車車体に適用される薄鋼板やアルミ板等の金属板をプレス成形したときに生じる寸法精度不良量を予測する方法に関し、殊にプレス成形の離型後の弾性回復に起因する成形品の寸法精度不良量(主に壁反り量や角度変化量等)を、プレス成形前に予め簡単に且つ正確に予測することのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体の多くの部品は、薄鋼板をプレス成形した部品から構成されているのが一般的である。しかしながら、これらの部品をプレス成形によって成形する際には、離型(成形後に金型から取り出すこと)後の弾性回復挙動によって、成形品の形状(寸法)が設計値から変化し、成形品同士の組み立て時や接合(多くはスポット溶接による接合)時に不具合が生じる場合がある。これらの不具合は、総称して寸法精度不良と呼ばれており、こうした寸法精度不良としては、壁反りや角度変化等様々なものが知られている(例えば、「プレス成形難易ハンドブック」第2版(1997)、第175頁、日刊工業新聞社)。
【0003】
近年、自動車車体の軽量化や安定性の観点から、自動車車体には強度がより高い薄鋼板や、鋼板と比べて軽量であるがヤング率の低いアルミ板が使用される機会が多くなっており、上記の様な寸法精度不良は顕著な問題となってきている。
【0004】
こうした問題を解決し、寸法精度を更に向上させる手段としては、(A)新技術の開発、(B)見込み技術による調整、等が主に行われている。上記(A)の技術として本発明者らは、プレス末期にしわ押え力を強くして壁部に張力を付加することによって、壁反り量を軽減させる方法を提案している(特願平11−203751号)。また上記(B)の技術としては、離型後の弾性回復量を予測し、金型寸法を目標製品寸法から弾性回復量の予測値を差し引いた値で作製し、離型後に正規寸法に調整する方法が知られている。
【0005】
上記いずれの手段を採用するにしても、予め成形する金属板や成形条件等の情報に基づいて、成形後の寸法精度不良量をより正確に予測することは極めて重要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、金属板のプレス成形後の寸法精度不良量を予測に当たっては、(1)熟練作業者の経験や、過去の結果の蓄積等によって予測する方法、(2)数値シミュレーションによって予測する方法、等が知られている。しかしながら、いずれの方法においても下記する様な問題があることが指摘されている。
【0007】
上記(1)の方法では、経験・技術蓄積の少ない技術者では、正確な予測をすることは困難であり、実操業に適した方法とは言えない。一方、上記(2)の方法は、これまで「塑性と加工」[例えば、vol.36,no.410(1995)p203〜210、vol.37,no.410(1996)p1352〜1366等]に提案された種々の技術が知られているが、数値シミュレーションや数学等の専門知識が必要であり、またコンピュター等のシミュレーション設備が大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は、こうした状況の下でなされたものであって、その目的は、経験・技術蓄積を有さない技術者が、数値シミュレーションや数学等の専門知識を有さずとも、金属板のプレス成形時における寸法精度不良量を、プレス成形前に予め簡単に且つ正確に予測することのできる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の予測方法とは、金属板のプレス成形時における寸法精度不良量を予測する方法であって、下記(A)〜(E)の過程からなるものである点に要旨を有するものである。
(A)金属板について、降伏後は一定の応力値を有する弾完全塑性体モデルに基づいて応力−ひずみ関係を設定する、
(B)前記弾完全塑性体モデルに基づいた応力−ひずみ関係を用いて寸法精度不良量の予測式を導く、
(C)金属板について、引張強度以下で降伏強度を超える値をみかけの降伏強度として設定する、
(D)前記寸法精度不良量の予測式における降伏強度を前記みかけの降伏強度で置換することにより加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を導く、
(E)前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を用いて、寸法精度不良量を求める。
【0010】
上記方法における具体的な構成としては、前記みかけの降伏強度として、下記(1)によって求められる値を用いることが挙げられる。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(1)
ここで、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、YS:降伏強度(実測値;MPa)、TS:引張強度(実測値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。
【0011】
また、上記(1)式における前記内分係数kは、引張強度TSと板厚tの比(TS/t)の関数として表すことができ、具体的には0<k<1の範囲の値をとるものである。
【0012】
上記本発明方法において、予測対象の寸法精度不良量がプレス成形時の壁反り量である場合には、この壁反り量を求めるための前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を下記(2)式の様に設定すれば良い。
ρ=[3σp’/(E・t)]・{1−D・[(σT/TS)−0.3]2}
−C・(rd−5) ……(2)
ここで、ρ:壁反り量(曲率;1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)、TS:引張強度(実測値;MPa)、σT:壁部に働く張力(MPa)、rd:プレス成形用工具のダイ肩半径(mm)、C:正の定数(1/mm2)、D:正の定数、を夫々示す。
【0013】
また、プレス成形時の壁反り量を求める方法においては、前記みかけの降伏強度σp’は下記(3)式に基づいて求めることができ、前記内分係数kは下記(4)式に基づいて求めることができる。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(3)
ここで、YS:降伏強度(実側値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。
k=A・(TS/t)+B ……(4)
ここで、TS:前記引張強度(MPa)、t:前記板厚(mm)、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、を夫々示す。
【0014】
一方、上記本発明方法において、予測対象の寸法精度不良量がプレス成形時の角度変化量である場合には、この角度変化量を求めるための前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を下記(5)式および(6)式の様に設定すれば良い。
△θ=−θ・(rp+t/2)・Δρ ……(5)
Δρ=[−3σp’/(E・t)]・{1+exp(−G・rp)] ……(6)
ここで、Δθ:角度変化量(度)、θ:曲げ角度(度)、rp:曲げ工具の肩半径(mm)、t:板厚(mm)、Δρ:曲率変化量(1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、G:正の定数(mm)、を夫々示す。
【0015】
また、プレス成形時の角度変化量を求める方法においては、前記みかけの降伏強度σp’は下記(7)式に基づいて求めることができ、前記内分係数kは下記(8)式に基づいて求めることができる。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(7)
ここで、YS:降伏強度(実側値;MPa)、TS:引張強度(実測値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。
k=A・(TS/t)+B ……(8)
ここで、TS:引張強度(実測値;MPa)、t:板厚(1/mm)、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、を夫々示す。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、様々な角度から検討した。その結果、上記構成を採用すれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明が完成された経緯に沿って、本発明の作用・効果について図面に基づいて説明する。尚以下の説明では、説明の便宜上、寸法精度不良量を予測する対象部材として、自動車車体の部品に多く用いられるハットチャンネル部材を成形する場合を取り上げて説明するが、もとより本発明で寸法精度不良量を予測する部材はこうしたハットチャンネル部材に限定されるものではない。
【0017】
図1は、上記ハットチャンネル部材の外観形状例を示す説明図であるが、こうしたハットチャンネル部材の主な成形方法としては、図2に示す様な絞り成形方法[図2(a)]と、曲げ成形方法[図2(b)]がある。これらの成形方法において、特に問題となる寸法精度不良は、主に絞り成形時に発生する「壁反り」現象と、主に曲げ成形時に発生する「角度変化」現象である。
【0018】
ハットチャンネル部材の設計(目標)形状(軸直角断面形状)が、図3(a)に示されたものとした場合に、「壁反り」現象は図3(b)の破線部分に示す様に、R止まり(Rはプレス成形用工具のダイ肩半径)間の壁部が反った現象である。また、「角度変化」現象は、図3(c)の破線部分に示す様に、曲げ部分の目標とする角度をθ[図3(a)]として、その角度よりも大きな角度θ1で成形される現象である。そして、壁反り量ρは、前記Rの曲率(1/mm)で表わされ、角度変化量Δθは、目標角度θと成形後に形成された角度θ1との差(θ1−θ)で表わされる。次に、これら壁反り量ρや角度変化量Δθを予測する為の具体的方法について、以下詳細に説明する。
【0019】
絞り成形時には、成形される金属板は、プレス成形用工具(ダイ)肩部を通過する際に、曲げ・曲げ戻し変形を受けることになる。こうしたことから、成形時における壁部には、板厚方向表裏で異符号の応力差(引張り応力と圧縮応力の差)が生じる[後記図9、10参照]。この異符号の応力差によって板厚方向には曲げモーメントが生じているが、離型時に外力が除荷されると材料のもつ弾性のために変形が幾分戻る(弾性回復)。この弾性回復挙動こそが壁反りの原因であることが知られている(例えば、「プレス成形難易ハンドブック」第2版(1997)、第191頁、日刊工業新聞社)。尚、弾性回復挙動は上記曲げモーメントが0となるように生じ、板厚方向には後記図11(b),(c)のようなひずみ、応力が残留する。
【0020】
また、壁反り量ρに関して、下記▲1▼〜▲5▼の傾向があることが知られている。尚、壁反りに及ぼす主な影響因子と壁反り量ρとの関係を図4に示す。
【0021】
▲1▼金属材料の強度(引張強度TS)が大きくなるにつれて、壁反り量ρも大きくなる[図4(a)]。
▲2▼金属板の板厚tが薄くなるにつれて、壁反り量ρが大きくなる[図4(b)]。
▲3▼金属材料のヤング率Eが小さくなるにつれて、壁反り量ρが大きくなる[図4(c)]。
▲4▼プレス成形用工具のダイ肩半径rdが大きくなるにつれて、壁反り量ρが小さくなる(但し、ダイ肩半径rdが極小の領域は除く)[図4(d)]。
▲5▼壁部に働く張力σT(しわ押え力)が大きくなるにつれて、壁反り量ρが小さくなる(但し、張力が極小の領域は除く)[図4(e)の破線領域]。
【0022】
本発明者らは、上記知見に基づき、これらの傾向を正確(定量的)に且つ簡便に予測できる予測式の実現を目指して、様々な角度から検討した。そして、まず本発明者らは、壁反り量予測の為の従来技術において、数値シミュレーション等の複雑な計算が行なわれている理由について考察した。その結果、その大きな理由の一つとして、従来技術では、変形(ひずみ)付加時の応力−ひずみ関係として、図5に示す様に現実に近い関係、即ち塑性ひずみの増加と共に応力も増加するという塑性変形域における加工硬化分も数値シミュレーションの直接的な対象として考慮しているからであると考えることができた。
【0023】
そこで本発明者らは、予測式をより簡略化する為に、現実の材料挙動とは異なるが、金属材料が加工硬化しないとする応力−ひずみ関係を想定し、こうした関係の中でより簡単な予測式を導くことを試みた。即ち、図6に示す様に、降伏後(降伏強度σp)は、応力は一定値で加工硬化しない塑性体(こうした塑性体を一般に「弾完全塑性体」と呼ばれている)を仮定し、こうした塑性体に基づいて予測式を導くことを試みた。
【0024】
その結果、曲げ・曲げ戻し変形後の弾性回復による曲率変化量(張力が非常に小さい場合の壁反り量ρ)は、下記(I)式の様な簡単な式で表現できることが分かった。また、通常のプレス成形時に多く用いられている様な、ダイ肩半径が3〜20mm程度のダイを用いる場合には、(I)式は下記(II)式の様に、更に簡略化した式で表現できることも判明した。
ρ=[3σp/(E・t)]・
{1−7/3・[〔2σp/(E・t)〕・rd]2} ……(I)
ρ≒{3σp/(E・t)} ……(II)
ここで、ρ:壁反り量(曲率;1/mm)、σp:降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)、rd:プレス成形用工具のダイ肩半径(mm)、を夫々示す。
【0025】
上記(I)式および(II)式は、プレス成形の際の変形ステップにおける曲げモーメント変化を解析することによって導けるものであるが、この経緯を、図面を参照しつつ説明する。図7は、プレス成形(特に絞り成形)される金属板の壁部における変形履歴を説明する為の図である。この図において、金属板は図7(a)→図7(b)→図7(c)の様にプレス成形されていくが、金属板における壁反りが発生する部分を着目点として×印で示してある。尚、図7(a)はプレス成形前の段階、図7(b)は曲げの段階、図7(c)は曲げ戻しの段階の夫々を示したものである。
【0026】
一方、図8〜図10は、上記図7(a)→図7(b)→図7(c)の様にプレス成形した場合の各段階において、金属板(前記着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および金属板内の弾性域・塑性域の分布を示したものであり、図8は前記図7(a)の段階、図9は前記図7(b)の段階、図10は図7(c)の段階に、夫々対応するものである。また、離型した後の金属板(前記着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および金属板内の弾性域・塑性域の分布を図11に示す。尚図8〜11の各(a)図は金属板内の弾性域・塑性域の分布、各(b)図はひずみεの分布、各(c)図は応力σの分布を、夫々示している。
【0027】
まず、前記図7(a)に示した段階では、着目点×において板厚方向全域に亘って弾性域になっており[図8(a)]、またひずみεおよび応力σの分布も発生していない[図8(b),(c)]。その結果、この段階では曲げモーメントが発生しないことになる。従って、このときに板厚tの中心部分に働く曲げモーメント量M▲1▼は、板厚方向位置ηを変数としたときに下記(III)式の様に表せる。
【0028】
【数1】
【0029】
次に、前記図7(b)に示した段階(曲げの段階)では、前記着目点×において、金属板の板厚方向の両端面側が塑性域となり、中央部分が弾性域となる[図9(a)]。そして、ひずみεの分布は、曲率をκ(=1/rd:rdはダイ肩半径)としたときに、最大ひずみ量がκ・(t/2)のひずみが異方向に発生することになる[図9(b)]。また、このときの応力σの分布は、加工硬化量を無視したときには(前記図6)、最大応力σがσp(σpは降伏強度)の応力が表面側と裏面側に異なる方向(圧縮応力と引張応力)に発生することになり[図9(c)]、このときの応力分布によって曲げモーメントが発生することになる。そして、金属板の中心部分に働く曲げモーメント量M▲2▼は、板厚方向位置ηを変数とし、板厚中心から弾性域両端部までの距離を夫々+y1,−y1としたときには[図9(c)]、y1=σp/(E・κ)(但し、E:ヤング率、κ:曲率)となるので、下記(IV)式の様に表せる。
【0030】
【数2】
【0031】
更に、前記図7(c)に示した段階(曲げ戻しの段階)では、材料の着目点×において、全域が一度弾性域に戻った後、前記図7(b)の段階とは逆方向で再び降伏していき[図10(a)]、ひずみεの分布は発生しない[図10(b)]。またこのときの応力σの分布は、加工硬化量を無視したときには、最大応力σがσp(σpは降伏応力)の応力が異方向で且つ上記図9(c)とは逆の方向に発生することになる[図10(c)]。このときに金属板の中心部分に働く曲げモーメント量M▲3▼は、板厚方向位置ηを変数とし、板厚中心から弾性域両端部(弾塑性境界)までの距離を夫々+y2,−y2としたときには[図10(c)]、y2=2σp/(E・κ)(但し、E:ヤング率、κ:曲率)となるので、下記(V)式の様に表せる。
【0032】
【数3】
【0033】
そして離型時には、外力が解放されて金属板の板厚方向全域において弾性域となると共に[図11(a)]、材料のもつ弾性のために有していた曲げモーメント量が0となるように弾性回復(壁反りρ)が生じる。この際に板厚方向に生じるひずみ、応力分布は図11(b)[最大ひずみε=ρ・(t/2)]、図11(c)のようになる。
【0034】
そして、上記弾性回復によって軽減される曲げモーメント量eは、下記(VI)式の様に表すことができ、また弾性回復は、成形時の応力分布によって生じている前記曲げモーメント量M▲3▼を打ち消す様に発生するので、壁反り量ρは、下記(VII)式を満足する曲げモーメント量M▲4▼に対応して発生することになる。
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
上記(VII)式を壁反り量ρについて整理すると、下記(VIII)式が導かれ、この(VIII)式に前記(V)式の関係を代入して整理すると、前記(I)式が導かれることになる。
ρ={12/(E・t3)}・M▲3▼ ……(VIII)
【0038】
ところで、通常のプレス成形においては、前記(I)式中の右辺第2項中の7/3[〔2σp/(E・t)〕・rd]2の値は、1よりも非常に小さな値となる。例えば、σp=600MPa,rd=5mm,E=205800MPa,t=1.2mmの場合には、7/3[〔2σp/(E・t)〕・rd]2の値は、1.38×10-3(≪1)となる。従って、前記(I)式の右辺第2項{1−7/3・[〔2σp/(E・t)〕・rd]2}は、ほぼ1となるので無視してもよく、(I)式は前記(II)式の様に更に簡略化できることになる。
【0039】
本発明者らは、種々の材料強度、成形条件による実験により得られた壁反り量の実測値と上記(II)式による予測値とを比較した。尚、このとき用いた実測値は、ダイ肩半径が極小領域以上で且つ張力(しわ押え力)が比較的小さな領域[図4(d),(e)の破線で囲んだ領域]での採取値である。その結果、壁反り量を正確に予測する為には、やはり加工硬化を加味する必要があることが分かった。
【0040】
そこで本発明者らは、加工硬化の影響をできるだけ反映させる為に、更に検討を重ねた。その結果、前記(II)式の降伏強度σpの代りに、図12に示す様に引張強度以下で降伏強度σp超の値を、現実とは異なる加工硬化分を補正したみかけの降伏強度σp’とし、このみかけの降伏強度σp’に基づいて下記(II)’式によって壁反り量ρを予測すれば良いことを見出した。また、上記みかけの降伏強度σp’として、実測の降伏強度YSと引張強度TSに基づき下記(1)式により求められる内分値とすることや、下記(1)式の係数を引張強度TSと板厚tの比(TS/t)の関数[k=f(TS/t)]とすれば、実測値と予測値とは比較的良い一致を示すことも分かった。
【0041】
ここで、上記降伏強度YSと上記引張強度TSは、通常の引張試験等で求められる値を使用すればよい。また、kを(TS/t)の関数とすれがよいとする根拠は、次の様に説明できる。一般的に、引張試験等により応力−ひずみ線図を測定すると、図21に示すような加工硬化の傾向が観測される。引張強度、板厚が違う材料について、同じひずみ値(同じ工具での加工)での加工硬化の度合いをまとめると、下記▲1▼、▲2▼のようになる。
【0042】
▲1▼引張強度が高いほど、TSに到達するひずみ値が小さくなり[図21(a)参照]、同じひずみ値での加工硬化の度合い[例えば、図21(a)においてY1/Y2で評価する。]は大きくなる。その結果、加工硬化後の降伏強度はより引張強度TSに近い値となる。
▲2▼板厚が薄いほど、引張強度TSに到達するひずみ値が小さくなり[図21(b)参照」、同じひずみ値での加工硬化の度合いが大きくある。その結果、加工硬化後の降伏強度はより引張強度TSに近い値となる。
【0043】
これらの傾向を踏まえたkとTSおよびtとを関係付けた関係式の形は種々考えられるが、その中でもkをTS/tの関数の形にすると、実測値と予測値がよく一致することが実験的に確かめられた。
ρ={3σp’/(E・t)} ……(II)’
ここで、ρ:壁反り量(曲率;1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)を夫々示す。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(1)
ここで、kは内分係数。
【0044】
ところで、上記(II)’式では、ダイ肩半径rdの影響については表現しきれていないが、本発明者らが実験による実測値の変化具合によって検討したところによれば、上記(II)’式に実験による補正項[−C・(rd−5)]を追加して下記(II)’’式となる様な補正を行なえば、予測精度が更に向上することも分かった。
ρ={3σp’/(E・t)}−C・(rd−5) ……(II)’’
【0045】
但し、この(II)’’式においても、張力(しわ押え力)の影響については、十分に表現しきれていない。つまり、上記(II)’’は、張力が比較的小さい領域[図4(e)の頂点近傍の領域]でのみ使用可能である。そこで本発明者らは、張力が大きい場合の補正について、実験による実測値の変化具合によって検討したところによれば、上記(II)’’式に対して、更に下記(2)式となる様な補正を行なえば、良好な予測精度が得られることが分かった。即ち、上記の様にして求められる下記(2)式を満足させると共に、みかけの降伏強度σp’として、引張試験によって求められる実測の降伏強度YSと引張強度TSに基づき下記(3)式[前記(1)式と同じ]により求められる内分値とし、且つ下記(3)式の内分係数kを引張強度TSと板厚tの比(TS/t)の関数[k=f(TS/t)]として下記(4)式を採用すれば、壁反り量ρを簡単に且つ正確に予測できたのである。
ρ={3σp’/(E・t)}・{1−D・[(σT/TS)−0.3]2}
−C・(rd−5) ……(2)
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(3)
k=A・(TS/t)+B ……(4)
ここで、ρ:壁反り量(曲率;1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)、TS:引張強度(実測値;MPa)、YS:降伏強度(実側値;MPa)、σT:壁部に働く張力(MPa)、rd:プレス成形用工具のダイ肩半径(mm)、k:内分係数、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、C:正の定数(1/mm2)を夫々示す。
【0046】
次に、角度変化量Δθを予測する場合について説明する。曲げ成形時には、成形される金属板は、プレス成形用工具としてのパンチの肩部等で曲げ変形を受けることになる。その為に、曲げ成形時の金属板には、絞り成形に場合と同様に板厚方向表裏で異符号の応力差(引張り応力と圧縮応力の差)が生じることになる。そして、こうした応力差は、離型時に外力が解放されて曲げモーメント量が0となるところで釣り合った状態になっても、その一部が残ることによって、前記の様な角度変化の現象が生じることが知られている。また、角度変化量Δθに関しては、下記▲1▼〜▲4▼の傾向があることが知られている。
【0047】
▲1▼金属材料の強度(引張強度TS)が大きくなるにつれて、角度変化量Δθも大きくなる[図13(a)]。
▲2▼金属板の板厚tが薄くなるにつれて、角度変化量Δθが大きくなる[図13(b)]。
▲3▼金属材料のヤング率Eが小さくなるにつれて、角度変化量Δθが大きくなる[図13(c)]。
▲4▼曲げ工具(パンチ等)の肩半径rpが大きくなるにつれて、角度変化量Δθが大きくなる[図13(d)]。
【0048】
本発明者らは、予測式をより簡単にする為に、前述した壁反り量ρの予測式と同様に、現実の材料挙動とは異なるが、材料が加工硬化しないとする応力−ひずみ関係を仮定し[前記図6]、こうした関係の中でより簡単な予測式を導くことを試みた。但し、曲げ成形時に生じる角度変化不良は、パンチ肩部等の曲げしか受けない部位で発生するから、曲げ戻し現象は考慮しなくても良い。
【0049】
その結果、曲げ変形および弾性回復後の角度変化量Δθは、下記(5)式および(IX)の様な簡単な式で表現できることが分かった。
△θ=−θ・(rp+t/2)・Δρ ……(5)
Δρ={−3σp/(E・t)}・
{1-1/3[〔2σp’/(E・t)〕・rp]2] ……(IX)
ここで、Δθ:角度変化量(度)、θ:曲げ角度(度)、rp:曲げ工具の肩半径(mm)、t:板厚(mm)、Δρ:曲率変化量(1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)を夫々示す。
【0050】
上記(5)式および(IX)式は、次の様にして求められる。即ち、曲げ成形後の弾性回復による曲げ部の曲率変化Δρは、前記(VII)式を求めた場合と同様に、曲げモーメントM▲3▼を打ち消す様に生じることから、Δρは下記(X)式を満足する様に発生することになる。
【0051】
【数6】
【0052】
その為、曲率変化量Δρについては、下記(XI)式の様に表現でき、この式を整理すると前記(IX)式が導かれることになる。
Δρ={−12/(E・t3)}・M▲2▼ ……(XI)
一方、上記曲率変化量Δρを幾何学的に変換することを考え、曲率変化後も板厚中央部の長さは変化しないので、下記(XIII)式の関係が成立することになり、この(XIII)式を角度変化量Δθについて整理すると、前記(5)式が導かれる。
θ/[1/[rp+(t/2)]]
=(θ+Δθ)/[1/[rp+(t/2)]−Δρ] ……(XIII)
ここで、Δθ:角度変化量(度)、θ:曲げ角度(度)、rp:曲げ工具の肩半径(mm)、t:板厚(mm)、Δρ:曲率変化量(1/mm)を夫々示す。
【0053】
尚、通常のプレス成形時に多く用いられている様な、パンチ肩半径が3〜20mm程度のパンチを用いる場合には、上記(IX)式は、上記絞り成形の場合と同様にすれば、下記(XII)式の様に、更に簡略化した式で表現できる。
Δρ={−3σp/(E・t)} ……(XII)
【0054】
また本発明では、加工硬化の影響をできるだけ簡略化して考慮する為に、壁反り量の予測式の場合と同様に、降伏強度σpの値として、実測値と異なるが前記(1)式によって定義した加工硬化分を補正したみかけの降伏強度σp’を用いる。また、上記(XII)式においても、曲げ工具(パンチ等)の肩半径の影響については表現しきれていないので、実測値の変化具合によって判断し、下記(6)式の様な補正を行なえば良い予測精度が得られることが分かった。
Δρ={−3σp’/(E・t)}・{1+exp(−G・rp)}……(6)
【0055】
即ち、上記の様にして求められる(5)式および(6)式と共に、みかけの降伏強度σp’として、引張試験によって求められる実測の降伏強度YSと引張強度TSに基づき下記(7)式[前記(1),(3)式と同じ]により求められる内分値とし、且つ下記(7)式の係数kを引張強度TSと板厚tの比(TS/t)の関数[k=f(TS/t)]として下記(8)式を採用すれば、角度変化量Δθを比較的正確に予測できたのである。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(7)
k=A・(TS/t)+B ……(8)
ここで、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、YS:降伏強度(実側値;MPa)、TS:引張強度(実測値;MPa)、k:内分係数、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、を夫々示す。
【0056】
以下、本発明の効果を実施例によって更に具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0057】
【実施例】
実施例1
まず、張力が比較的小さい領域[前記図4(e)参照]での予測精度について確認を行なった。下記表1に示す降伏強度YP、引張強度TSおよび板厚tの各種鋼板を用い、同表1に示す成形条件(ダイ肩半径rd)でハットチャンネル部材の成形実験を行なった。このとき、壁反り量に及ぼす張力σTの影響ができるだけ小さくなる様に、張力σTと引張強度TSの比(σT/TS)がほぼ一定[0.3:前記図4(e)の頂点近傍の領域]となる様にBHF(しわ押え力)を調整した。
【0058】
【表1】
【0059】
その際の壁反り量(曲率)ρについて、実測値(ρmes)を表1に示す。これらの実測値を用い、まず前記(2)〜(4)式の定数A、BおよびCの値を決定した。ここでは、σT/TS=0.3としているため、D・[(σT/TS−0.3)]2の値はDの値によらず0となる。従って、Dの値を無視して考える。尚、Dの値の決定方法については後述する。そうした上で、実測値とそれらの式による予測値とのA,BおよびCの値を決定した。その結果、A=−9.708×10-4(mm/MPa),B=0.8161,C=1.082×10-7(1/mm2)となった。求められたA,BおよびCの値並びに(2)〜(4)式を用いて求めた予測値(ρcal)も表1に示す。また、それらの実測値(ρmes)および予測値(ρcal)とを、比較して図14に示す。両者には高い相関関係が認められ、良好な精度で壁反り量が予測できていることが分かる。
【0060】
次に、上記の実験で用いた鋼板とはヤング率が大きく異なるアルミ板の成型にも(2)〜(4)式および上記実験で求められたA,BおよびCの値が適用できるかどうかを確認した。下記表2に示す降伏強度YP、引張強度TSおよび板厚tの各種アルミ板(3000系,7000系)を用い、同表2に示す成形条件(ダイ肩半径rd)で、σT/TS=0.3として[前記図4(e)参照]でハットチャンネル部材の成形実験を行ない、上記と同様にして、壁反り量(曲率)ρの実測値(ρmes)と、前記(2)〜(4)式に基づく予測値(ρcal)を比較した。その結果を、図15に示すが、両者には高い相関関係が認められ、良好な精度で壁反り量が予測できていることが分かる。
【0061】
【表2】
【0062】
次に、張力σTが比較的大きな領域での予測精度についても確認を行なった。ここでは、張力の影響を補正するために係数Dの調整を行なった。このとき、前記表1のNo.2のものについて、BHF(しわ押さ力)を調整して張力σTを200MPa,300MPaおよび450MPaと変化させて成形を行なったときの壁反り量について、実測値(ρmes)を求めた。これらの実測値および前記実験で求められた定数A,BおよびCの値を用い、実測値と前記(2)〜(4)式による予測値(ρcal)との差の2乗和が最小になるよう、ニュートン−ラプソン法を用いてDの値を決定した。その結果、D=3.559となった。それら実測値(ρmes)と予測値(ρcal)とを比較した結果を、図16に示す。両者には高い相関関係が認められ、良好な精度で壁反り量が予測できていることが分かる。
【0063】
実施例2
角度変化量Δθの予測式の予測精度について、基礎曲げ実験によって評価を行なった。まず、下記表3に示す降伏強度YP、引張強度TSおよび板厚tの各種鋼板を用い、同表3に示す成形条件(パンチ肩半径rp)でL曲げ成形実験を行なった。L曲げ成形実験の状態を模式的に図17に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
その際の角度変化量Δθについて、実測値(Δθmes)を表3に示す。これらの実測値を用い、前記(5)〜(8)式の各定数に値を求めた。定数A,BおよびCは、壁反り量ρの予測式と同様に、加工硬化を考慮したみかけの降伏強度σp’を決定するための定数である。従って、それらの値は前述の壁反り量の実験で求められた値と同じ値とした。ここでは、rpの影響を補正するための係数Gについてのみ、実測値とそれらの式による予測値との差の2乗和が最小となるよう、ニュートン−ラプソン法を用いてその値を決定した。その結果、G=0.1012(mm)となった。求められた係数の値および(5)〜(8)式を用いて求められた予測値(Δθcal)も、さらに表3に示す。これらの実測値(Δθmes)と予測値(Δθcal)とを比較した結果を図18に示す。両者には高い相関関係が認められ、良好な精度で角度変化量が予測できていることが分かる。
【0066】
次に、パンチ肩半径rpが比較的大きな領域での予測精度について確認するために、下記表4に示す降伏強度YP、引張強度TSおよび板厚tの鋼板を用い、同表4に示す成形条件(パンチ肩半径rp)でU曲げ成形実験を行なった。U曲げ成形実験の状態を模式的に図19に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
前記のA,B,CおよびGの値並びに前記(5)〜(8)式を用いて角度変化量Δθの予測を行なった。実測値(Δθmes)と、前記(5)〜(8)式に基づく予測値(Δθcal)を、比較して図20に示す。両者には高い相関関係が認められ、良好な精度で角度変化量が予測できていることが分かる。
【0069】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、経験・技術蓄積を有さない技術者が、数値シミュレーション等の専門知識を有せずとも、プレス成形時の寸法精度不良量を簡便且つ正確に予測できるようになり、こうした方法は、近年特に重要問題とされている寸法精度不良に対して早急且つ効果的に寸法精度向上対策を打ち出すことが可能となり、その技術的意義は極めて大きいものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハットチャンネル部材の外観形状例を示す説明図である。
【図2】ハットチャンネル部材の主な成形方法を示す概略説明図である。
【図3】本発明で対象とする寸法精度不良を説明する為の図である。
【図4】壁反りに及ぼす主な影響因子と壁反り量ρとの関係を示したグラフである。
【図5】従来の予測手法で用いられている応力−ひずみ線図である。
【図6】弾完全塑性体(加工硬化の考慮なし)を仮定した応力−ひずみ線図である。
【図7】プレス成形される材料の壁部における変形履歴を説明する為の図である。
【図8】図7(a)の段階において、材料(図7の着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および材料内の弾性域・塑性域の分布を示した図である。
【図9】図7(b)の段階において、材料(図7の着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および材料内の弾性域・塑性域の分布を示した図である。
【図10】図7(c)の段階において、材料(図7の着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および材料内の弾性域・塑性域の分布を示した図である。
【図11】離型した後の材料(図7の着目点×)の板厚方向に作用するひずみεや応力σの分布、および材料内の弾性域・塑性域の分布を示した図である。
【図12】本発明で用いる応力−ひずみ線図である。
【図13】角度変化に及ぼす主な影響因子と角度変化量Δθとの関係を示したグラフである。
【図14】表1に示した各種鋼板の壁反り量(曲率)ρについて、実測値(ρmes)と、前記(2)〜(4)式に基づく予測値(ρcal)を、比較して示したグラフである。
【図15】表2に示した各種アルミ板の壁反り量(曲率)ρについて、実測値(ρmes)と、前記(2)〜(4)式に基づく予測値(ρcal)を、比較して示したグラフである。
【図16】張力σTが比較的大きな場合の壁反り量(曲率)ρについて、実測値(ρmes)と、前記(2)〜(4)式に基づく予測値(ρcal)を、比較して示したグラフである。
【図17】L曲げ成形実験の状態を示す模式図である。
【図18】表3に示した各種鋼板の角度変化量Δθについて、実測値(Δθmes)と、前記(5)〜(8)式に基づく予測値(Δθcal)を、比較して示したグラフである。
【図19】U曲げ成形実験の状態を示す模式図である。
【図20】U曲げ成形時の角度変化量Δθについて、実測値(Δθmes)と、前記(5)〜(8)式に基づく予測値(Δθcal)を、比較して示したグラフである。
【図21】引張強度や板厚が加工硬化に与える影響を示したグラフである。
Claims (9)
- 金属板のプレス成形時における寸法精度不良量を予測する方法であって、下記(A)〜(E)の過程からなるものであることを特徴とする金属板のプレス成形時における寸法精度不良量の予測方法。
(A)金属板について、降伏後は一定の応力値を有する弾完全塑性体モデルに基づいて応力−ひずみ関係を設定する、
(B)前記弾完全塑性体モデルに基づいた応力−ひずみ関係を用いて寸法精度不良量の予測式を導く、
(C)金属板について、引張強度以下で降伏強度を超える値をみかけの降伏強度として設定する、
(D)前記寸法精度不良量の予測式における降伏強度を前記みかけの降伏強度で置換することにより加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を導く、
(E)前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式を用いて、寸法精度不良量を求める。 - 前記みかけの降伏強度として、下記(1)式によって求められる値を用いる請求項1に記載の予測方法。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(1)
ここで、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、YS:降伏強度(実測値;MPa)、TS:引張強度(実測値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。 - 前記内分係数kを、前記引張強度TSと板厚tの比(TS/t)の関数として設定する請求項2に記載の予測方法。
- 請求項1に記載の寸法精度不良の予測方法であって、予測対象の寸法精度不良量がプレス成形時の壁反り量であり、この壁反り量を求めるための前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式が下記(2)式である予測方法。
ρ=[3σp’/(E・t)]・{1−D・[(σT/TS)−0.3]2}
−C・(rd−5) ……(2)
ここで、ρ:壁反り量(曲率;1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)、TS:引張強度(実測値;MPa)、σT:壁部に働く張力(MPa)、rd:プレス成形用工具のダイ肩半径(mm)、C:正の定数(1/mm2)、D:正の定数、を夫々示す。 - 前記みかけの降伏強度σp’を下記(3)式に基づいて求める請求項4に記載の予測方法。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(3)
ここで、YS:降伏強度(実側値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。 - 前記内分係数kを下記(4)式に基づいて求める請求項5に記載の予測方法。
k=A・(TS/t)+B ……(4)
ここで、TS:前記引張強度(MPa)、t:前記板厚(mm)、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、を夫々示す。 - 請求項1に記載の寸法精度不良の予測方法であって、予測対象の寸法精度不良量が角度変化量であり、この角度変化量を求めるための前記加工硬化を加味した寸法精度不良量の予測式が下記(5)式および(6)式である予測方法。
Δθ=−θ・(rp+t/2)・Δρ ……(5)
Δρ=[−3σp’/(E・t)]・{1+exp(−G・rp)] ……(6)
ここで、Δθ:角度変化量(度)、θ:曲げ角度(度)、rp:曲げ工具の肩半径(mm)、t:板厚(mm)、Δρ:曲率変化量(1/mm)、σp’:みかけの降伏強度(MPa)、E:ヤング率(MPa)、G:正の定数(mm)、を夫々示す。 - 前記みかけの降伏強度σp’を下記(7)式に基づいて求める請求項7に記載の予測方法。
σp’=k・YS+(1−k)TS ……(7)
ここで、YS:降伏強度(実側値;MPa)、TS:引張強度(実測値;MPa)、k:内分係数、を夫々示す。 - 前記内分係数を下記(8)式に基づいて求める請求項8に記載の予測方法。
k=A・(TS/t)+B ……(8)
ここで、TS:引張強度(実測値;MPa)、t:板厚(1/mm)、A:負の定数(mm/MPa)、B:正の定数、を夫々示す。
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