JP3798191B2 - 金属ハニカムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属ハニカムの製造方法に関する。すなわち、ステンレスやアルミニウム合金を母材とした中空柱状のセルの平面的集合体よりなる、金属ハニカムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
まず、技術的背景について詳述する。セル壁にて区画形成された中空柱状のセルの平面的集合体よりなるハニカムコアは、重量比強度に優れるのを始め種々の優れた特性を備えており、各種の構造材として広く用いられている。
ハニカムコアのセル壁の母材としては、用途に応じ、金属,プラスチック,紙等が用いられるが、金属としては、ステンレスやアルミニウム合金が代表的である。
周知のごとく、ステンレスは、耐熱性,高温強度,耐酸化性,耐食性,加工性等々に優れる、という基本性能を備えている。又、マグネシウムMgを含有したアルミニウム合金も、耐熱性,高温強度,耐食性,加工性、等々に優れるという基本性能を得えており、例えば、A6951に代表される熱処理型の6000系合金や非熱処理型の5000系合金は、特に強度面に優れている。
もって、箔状のステンレスやアルミニウム合金を母材としたハニカムコアは、ハニカムコアとしての特性と共に、母材のこのような優れた基本性能に鑑み、例えば航空機用や鉄道車輌用の構造材,構造部品として使用されると共に、その他多くの分野において、多岐にわたる用途に使用されている。
【0003】
次に、ハニカムコアの製造方法としては、展張方式とコルゲート方式とが、一般的である。まず展張方式では、箔状の母材に条線状に接着剤やろう材を塗布した後、多数枚を半ピッチずつずれた位置関係で重積し、次に、加圧,加熱して母材間を条線状に接着やろう付けしてから、重積方向に引張力を加えて展張することにより、ハニカムコアを製造していた。
これに対しコルゲート方式では、箔状の母材を波板にコルゲート成形した後、成形された多数枚の波板を半ピッチずつずらせ、谷部と頂部とを合わせる位置関係で重積すると共に、相互間を接着剤やろう材(含.スポット溶接)にて、条線状に接着やろう付けすることにより、ハニカムコアを製造していた。
【0004】
ハニカムコアの製造方法では、このように、展張方式およびコルゲート方式共に、条線状の接合対象部(ノード部)の接合に、接着剤やろう材が一般的に用いられ、接着やろう付けが行われていた。しかしながら、まず接着による場合は、次の難点が指摘されていた。すなわち、接着剤は耐熱温度が低く(一般的には300℃以下)、接合強度も弱い。
そこで、前述したステンレスやアルミニウム合金を母材としたハニカムコアの製造に際し、接着剤を用いて接着を行うと、製造されたハニカムコアについて、母材の優れた基本性能が生かされなくなり、耐熱性,高温強度等に難点が生じ、用途が大きく限定されていた。
【0005】
他方、ろう付けによる場合も、次の難点が指摘されていた。すなわち、ステンレスのろう付けには、ニッケル基ろう材等のろう材が用いられ、アルミニウム合金のろう付けには、アルミニウム基ろう材等のろう材が用いられている。そして、ステンレスやアルミニウム合金を母材としたハニカムコアの製造に際し、ニッケル基ろう材やアルミニウム基ろう材等のろう材を用いてろう付けを行うと、例えばニッケル基ろう材の場合は1000℃程度の所定温度でろう付けが行われるので、ある程度の耐熱性,高温強度は期待できるものの、このような所定温度以上では溶融してしまうことになる。
もって、製造されたハニカムコアについて、母材の優れた基本性能が生かされなくなることが多々あり(例えば1000℃以上でろう材が溶融してしまう)、耐熱性,高温強度に限界が生じ、用途が限定されることになる。又、ろう付けにより製造されたハニカムコアは、母材たるステンレスやアルミニウム合金間に、これらとは組成が異なる異種金属たるろう材が介在していることに起因して、耐酸化性,耐食性等に問題が生じることがあり、この面からも、母材の優れた基本性能が生かされず、用途が限定されていた。
更に、アルミニウム合金を母材としたハニカムコアの製造に用いられるろう材は、粉末状やペースト状ではなく、予め板状とされたブレージングシートの形態で使用されることが多いが、100μm未満の肉厚(箔厚)のブレージングシートを圧延して得ることは困難であり、実際上、100μm以上の肉厚のものが用いられていた。しかしながら、このような肉厚のブレージングシートは、その肉厚分だけ重量が重くなり、もって製造されたハニカムコアについて、その重量比強度に優れるという特性が生かされず、この面から用途が限定されることがあった。
【0006】
母材としてステンレスやアルミニウム合金を用いると共に、接着剤やろう材を用いて、ハニカムコアを製造すると、このように、ハニカムコアの特性や母材の基本性能等が生かされず、用途が限定されることが多々あった。
すなわち、展張方式やコルゲート方式による従来の金属ハニカムの製造方法にあっては、接着やろう付けを行うことに起因し、限界が存していた。技術的背景については、以上の通り。
【0007】
さて、このような技術的背景のもと、接着やろう付けに代え拡散接合を利用した、金属ハニカムの製造方法が開発されつつある。
すなわち、ステンレスやアルミニウム合金を用いた母材について、その条線状の接合対象部(ノード部)を接合する際、接着剤やろう材を一切用いず、これを拡散接合にて直接的に接合し、もってハニカムコアを製造する、金属ハニカムの製造方法が最近開発されつつある。
この拡散接合による金属ハニカムの製造方法によると、母材間が同一組成にて直接接合され、接着剤やろう材が一切介在しない。従って、製造されたハニカムコアは、母材たるステンレスやアルミニウム合金の基本性能がそのまま生かされ、耐熱性,高温強度,耐酸化性,耐食性等々に優れると共に、重量比強度に優れるというハニカムコアの特性も生かされるようになる。
【0008】
ところで、この最近開発されつつある拡散接合による金属ハニカムの製造方法は、展張方式に適用され、コルゲート方式には適用されない。
すなわち、拡散接合を行うためには、母材間を、加熱すると共に高圧にて加圧することが必須的に必要である。展張方式では、重積された平坦な平板、つまり箔状の母材を上下から加圧するので、母材はその加圧力に容易に耐えることができる。これに対しコルゲート方式では、箔状の母材を波板にコルゲート成形してから重積し、このような波板を拡散接合のために上下から加圧することになるが、これでは、波板たる母材がこの加圧力に耐えることができない。
なお一般的に、展張方式はコルゲート方式に比べ、大きな全体サイズのハニカムコアの製造が容易であり、しかも製造コスト面に優れていることが知られている。
【0009】
さて、この最近開発された拡散接合を利用した製造方法により、ステンレスやアルミニウム合金を母材とし、展張方式によりハニカムコアを製造する際は、離型剤が必須的に使用される。
すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、まず箔状の母材に対し、離型剤が、条線状に地肌を残しつつ塗布される。つまり、箔状の母材たるステンレスやアルミニウム合金を、地肌間にて条線状に直接的に拡散接合するのに先立ち、このような拡散接合対象部以外の非接合部について、予め離型剤を塗布して覆っておき、拡散接合されないようにしておくこと、が必要となる。離型剤の塗布は、印刷方式や塗装方式により行われる。
しかる後、このような母材を半ピッチずつずらして重積してから、真空炉内で加圧,加熱することにより、拡散接合対象部たる露出,接触した地肌間にて、条線状に拡散接合が行われる。それから、重積方向に引張力を加え、離型剤にて覆われていた非接合部を展張することにより、母材をセル壁としたハニカムコアが製造される。なお、このように製造されたハニカムコアは、事後において洗浄され、残存していた離型剤の離型粉末等が除去される。
【0010】
拡散接合を利用した展張方式による金属ハニカムの製造方法では、このように、離型剤が必須的に使用されていた。
そして、この離型剤は、離型効果を発揮する離型粉末と共に、離型粉末を塗布可能にして母材に固定する樹脂製のバインダー、を含有していた。そして離型剤は、母材に塗布され母材が重積された後、真空炉内における母材間の拡散接合に際し、当初の加圧,加熱により、含有されていたバインダーが、熱分解するか灰化する。つまり、離型剤中に含有されていた樹脂製のバインダーは、拡散接合のための加熱により、一部は、熱分解,蒸発,消失し、残りは、灰化し灰となって残留する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この最近開発された金属ハニカムの製造方法にあっては、従来、次の問題が指摘されていた。
第1に、母材がステンレスの場合、上述したように、塗布された離型剤中に含有されていた樹脂製のバインダーが、拡散接合当初において灰化し、もって残留した灰が母材と反応して浸炭してしまい、クロム炭化物を生成し、脆化,高温酸化,粒界腐食の原因となる、という問題が従来指摘されていた。
すなわち、この灰は、有機成分からなっていたので、炭素Cを主成分としており、ステンレス製の母材間の拡散接合時や事後の高温環境下において、1000℃前後の温度で加熱された際、母材と反応して浸炭が発生してしまう。
浸炭は、周知のごとく母材のステンレスの表面部の炭素C量を高め、もって硬度・強度を高めるものの、機械的強度が変化してしまう。そして、高温環境下や腐食環境下において、母材のステンレス中のクロムCrがこの炭素Cと反応して、クロム炭化物を生成,析出,粗大化せしめ、もって母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等を誘発する原因となる。
【0012】
そして、ステンレスを母材つまりセル壁として製造されたハニカムコアは、このような高温環境下や腐食環境下において使用されることが多く、脆化,高温酸化,粒界腐食等の発生は、極めて望ましくないとされていた。
このように第1に、母材がステンレスの場合、塗布されていた離型剤中のバインダーの灰化,浸炭に基づく、脆化,高温酸化,粒界腐食等が、従来問題となっていた。
【0013】
第2に、母材がステンレスの場合、同様に、塗布された離型剤中のバインダーの灰化,浸炭に基づき、事後、残存した離型剤の洗浄,除去が困難化する、という問題も従来指摘されていた。
すなわち、製造されたハニカムコアは、事後において洗浄され、残存していた離型剤が除去される。そして、このような洗浄に際し、ステンレス製の母材よりなるセル壁の表面部は、バインダーの灰化により浸炭しており、クロム炭化物が生成していることもある。そこで、残存していた離型剤の離型粉末が、母材つまりセル壁の表面部に対し、付着したようになっており離れにくくなり、洗浄による除去が非常に困難化していた。母材がステンレスの場合は、第2に、このように洗浄,除去が困難化する、という問題も従来指摘されていた。
【0014】
第3に、ところで母材がアルミニウム合金の場合も、事後、残存した離型剤の洗浄,除去が困難化する、という問題が従来指摘されていた。
すなわち、前述したように、拡散接合当初の加圧,加熱により、塗布された離型剤中に含有されていた樹脂製のバインダーは、熱分解するか灰化する。そして、母材が前述したようにステンレスの場合は、拡散接合のため1000℃前後の高温で加熱が行われるので、バインダーは、所期のごとく一部が熱分解,蒸発,消失し、残りが灰化する。
これに対し、母材がアルミニウム合金の場合は、拡散接合のための加熱温度が、500℃から600℃程度と低いので、バインダーの熱分解,蒸発,消失は進展せず、灰の残留量が極めて多くなる。
【0015】
そこで、製造されたハニカムコアについて、残存していた離型剤を除去すべく洗浄する際、洗浄が困難化するようになる。
つまり、上述したように余りに多量の灰が残留しているので、残存していた離型剤、つまり離型剤の離型粉末やこのような灰が、母材つまりセル壁の表面部に対し、付着したようになっており離れにくく、洗浄による除去が非常に困難化していた。母材がアルミニウム合金の場合は、第3に、このように洗浄,除去が困難化する、という問題が従来指摘されていた。
【0016】
第4に、母材がアルミニウム合金の場合については、更に、塗布された離型剤中に含有されたバインダーの熱分解,蒸発に起因して、母材の拡散接合に支障が生じることがある、という問題も従来指摘されていた。
すなわち、母材がマグネシウムMgを含有したアルミニウム合金の場合は、真空炉内での拡散接合のための加圧,加熱により、まず、含有されていたマグネシウムMgが蒸発して、母材の地肌表面を強固に安定的に覆っていた酸化皮膜(アルミナAl2O3)を破壊,分散せしめ、もってアルミニウムAlが地肌表面に露出して、拡散接合が可能となる。
ところで、このようなマグネシウムMgの蒸発は、400℃程度から顕著になるが、この温度域で塗布されていた離型剤中に含有されていた樹脂製のバインダーの熱分解,蒸発が起きると(前述したように灰化する部分の方が多いが)、一定の真空雰囲気に保たれていた真空炉内の真空度が落ち、もって上述したマグネシウムMgの蒸発が、阻害され起こらなくなってしまう事態が発生する。
このようにマグネシウムMgが蒸発せず、アルミニウム合金製の母材の地肌表面が、酸化皮膜で覆われたままとなって露出せず、もって拡散接合が不能化して、ハニカムコアの製造に支障が生じることがあった。
【0017】
更に、拡散接合に際し、仮にマグネシウムMgの蒸発が行われ、母材の地肌表面の酸化皮膜を破壊,分散せしめたとしても、その直後に400℃程度以上の温度域で、塗布された離型剤中に含有されていた樹脂製のバインダーが熱分解,蒸発すると、再び酸化皮膜が形成され易くなる。
すなわち、バインダーの熱分解,蒸発により、真空炉内の真空度が落ちるので、放出された酸素Oが母材の露出した地肌表面のアルミニウムAlと容易に反応して、これを酸化せしめ、もって再び酸化皮膜(アルミナAl2O3)を形成してしまう。
このように、アルミニウム合金製の母材の地肌表面について、一旦マグネシウムMgの蒸発により酸化皮膜が破壊,分散せしめられたとしても、事後再び酸化皮膜で覆われてしまい、もって拡散接合が不能化し、ハニカムコアの製造に支障が生じることがあった。母材がアルミニウム合金の場合は、第4に、このように拡散接合が不能化する、という問題も従来指摘されていた。
【0018】
第5に、母材がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、真空炉内における母材間の拡散接合に際し、塗布された離型剤に含有されていたバインダーが、一気に熱分解,蒸発してしまうことに起因して、処理が中断することがある、という指摘もあった。
すなわち真空炉内は、一定の真空雰囲気に保たれているが、もしも加圧,加熱による拡散接合処理中に、真空度が大きく落ち極端に悪化した場合には、装置保護のため付設された安定装置が作動して、拡散接合処理を中断するようになっている。そして、真空炉内における母材間の拡散接合に際し、加圧,加熱中に、塗布されていた離型剤中に含有されたバインダー(完全ケン化された樹脂製よりなる)が、一度に一気に熱分解,蒸発することに起因して、真空炉内の真空度が大きく悪化してしまうことがあった。
そこで、安全装置が作動してしまい、拡散接合処理が中断することが多々あり、生産効率上の不具合を生じる、という指摘があった。母材がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、第5に、このような不具合が、従来指摘されていた。
【0019】
第6に、母材がステンレスの場合更にはアルミニウム合金の場合については、更に、塗布された離型剤中に含有されていた離型粉末が、高温環境下において、還元されたりして母材と反応し、脆化,高温酸化,粒界腐食等の原因となる、という指摘があった。
すなわち、離型剤に含有される離型粉末としては、従来、ボロン窒化物BN(六方晶窒化ホウ素L−BN)が代表的に使用され、更にイットリア安定化ジルコニアY2O3−ZrO2やアルミナAl2O3も使用されている。これらは、熱力学的に安定しているとして採用されているが、ボロン窒化物BNでは900℃、イットリア安定化ジルコニアY2O3−ZrO2では1000℃、アルミナAl2O3でも1200℃が、使用できる限界温度となっている。
そして、このような離型剤の離型粉末が、これらの限界温度を越えて加熱される高温環境下(含.母材の拡散接合のための高温環境下)では、還元されたりして母材と反応し、もって金属間化合物,酸化物,窒化物,炭化物等を生成する。これらの生成物は、母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等を誘発する原因となる。
【0020】
ステンレスやアルミニウム合金をセル壁の母材として製造されたハニカムコアは、このような高温環境下(例えば1300℃以上の温度域)で使用されることも多く、脆化,高温酸化,粒界腐食等の発生は、極めて望ましくないとされていた。
製造されたハニカムコアについては、事後、残存していた離型粉末等の離型剤が、洗浄により除去されることになっているが、このような洗浄が不十分,困難な場合もあり、もって、離型剤の離型粉末が除去されずに残存し、上述により母材つまりセル壁と反応して、母材つまりセル壁の脆化,高温酸化,粒界腐食等が発生することがあった。第6に、離型剤の離型粉末に起因した、このような脆化,高温酸化,粒界腐食等が、従来問題となることもあった。
【0021】
本発明は、このような実情に鑑み、この最近開発された拡散接合による展張方式の金属ハニカムの製造方法における、この種従来例の課題を解決すべくなされたものであって、含有率が所定重量%に設定されたセラミックス粉末と、ポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、溶剤と、を含有した離型剤を採用したことにより、拡散接合に際し、離型剤中のバインダーの熱分解,蒸発が促進され灰化が抑えられるので、第1に、母材がステンレスの場合に、浸炭が抑えられ母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等が防止されると共に、第2に、離型剤の洗浄,除去も容易化され、第3に、母材がアルミニウム合金の場合も、離型剤の洗浄,除去が容易化されると共に、第4に、酸化皮膜も確実に破壊,分散せしめられ、拡散接合がスムーズに行われるようになる、金属ハニカムの製造方法を提案することを目的とする。
【0022】
そして更に、離型剤のバインダーとして、部分ケン化されたポリビニル系樹脂を採用したことにより、上述に加え第5に、バインダーの熱分解,蒸発が促進されると共に、徐々に緩慢なスピードで行われ、拡散接合処理が中断せず行われるようになる。又、離型剤のセラミックス粉末として、3A族元素の酸化物の粉末を採用したことにより、第6に、高温環境下での還元そして母材との反応が回避され、この面からも、母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等が防止されるようになる、金属ハニカムの製造方法を提案することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、まず、箔状のステンレスや、マグネシウムを含有した箔状のアルミニウム合金を、母材とし、該母材に離型剤を、条線状に地肌を残しつつ塗布して乾燥させる。
次に、複数枚の該母材を、該離型剤間に条線状に残されて露出した地肌が半ピッチずつずれた位置関係で、重積してから、炉内で加圧,加熱することにより、該母材間を、接触した該地肌間にて条線状に拡散接合させる。
それから、重積方向に引張力を加えて展張することにより、該母材をセル壁とし、該セル壁にて区画形成された中空柱状の多数のセルの平面的集合体たるハニカムコアを得た後、残存していた該離型剤のセラミックス粉末等の洗浄,除去が行われる。
そして、このような金属ハニカムの製造方法において、該離型剤として、5重量%以上で60重量%以下であると共に粒径が5μm以下のセラミックス粉末と、1重量%以上で40重量%以下であると共に溶剤に可溶なポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、該溶剤と、を含有してなるものが用いられている。
【0024】
該離型剤の該バインダーは、ポリビニル系樹脂よりなるので、前記拡散接合の初期段階において、拡散接合のための当初の加熱により、熱分解,蒸発,消失が促進され、炭化として灰となって残留することが抑えられる。
かつ、該離型剤の該バインダーは、部分ケン化されたポリビニル系樹脂よりなり、もって、上記熱分解,蒸発,消失が一段と容易化し促進される。これと共に、未ケン化部分と完全ケン化部分とで熱分解,蒸発温度が異なり、未ケン化部分がまず熱分解,蒸発,消失し、次に完全ケン化部分が熱分解,蒸発,消失するので、上記熱分解,蒸発,消失が、一度に一気に行われることなく、広い温度範囲のもとで段階的に徐々に緩慢なスピードで行われる。
又、該溶剤は、該バインダーを溶かして液状化し薄めるために、つまり該バインダーを溶解,希釈するために使用され、該バインダーに適したものが用いられており、乾燥時に揮発,蒸発,消失する。
該離型剤の該セラミックス粉末は、周期表の3A族元素の酸化物の粉末よりなること、を特徴とする。
【0025】
本発明の金属ハニカムの製造方法は、このようになっているので、次のようになる。まず、箔状の母材たるステンレスやアルミニウム合金は、条線状に地肌を残しつつ離型剤が塗布され乾燥された後、半ピッチずつずらして重積され、加圧,加熱により条線状に拡散接合される。
なお、母材がアルミニウム合金の場合は、まず、含有されたマグネシウムが蒸発して、地肌表面の酸化皮膜を破壊,分散せしめることにより、アルミニウムが地肌表面に露出し拡散接合が可能となる。
しかる後、重積,拡散接合された母材を展張することにより、母材をセル壁とし、セル壁にて区画形成されたセルの平面的集合体たる、ハニカムコアが製造され、事後に洗浄が行われる。
【0026】
さて、この金属ハニカムの製造方法では、セラミックス粉末と、ポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、溶剤とを、所定重量%で含有した離型剤が採用されている。
そして、塗布された離型剤は、乾燥により、溶剤が揮発,蒸発,消失し、拡散接合当初の加圧,加熱により、バインダーが熱分解,蒸発,消失してしまい、バインダーが灰化し灰となって残留することはほとんどない。
そこで、母材がアルミニウム合金の場合、含有されたマグネシウムの蒸発そして酸化皮膜の破壊,分散が確実化し、拡散接合がスムーズに行われる。母材がステンレスの場合は、事後の加熱による浸炭も生じない。更に、製造されたハニカムコアを洗浄する際、離型剤として残存するのはセラミックス粉末のみであり、簡単容易に除去される。
【0027】
更に、離型剤のバインダーとして、部分ケン化されたポリビニル系樹脂を採用してなる。そこで拡散接合に際し、このバインダーは、熱分解,蒸発が一段と促進されると共に、徐々に緩慢なスピードで行われ、もって拡散接合処理の中断の原因となることもない。
又、離型剤のセラミックス粉末として、3A族元素の酸化物の粉末を採用してなるので、事後、高温環境下における還元そして母材との反応が、回避される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、図面に示す発明の実施の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3,図4は、本発明の実施の形態の説明に供する。
そして、図1は斜視説明図であり、(1)図は準備された母材を、(2)図は離型剤を塗布した状態を、(3)図は重積する状態を、(4)図は拡散接合した状態を、(5)図はスライスする状態を、それぞれ示す。
図2は斜視説明図であり、(1)図は展張した状態を、(2)図はトリミングした状態を、(3)図は得られたハニカムコアの要部を、それぞれ示す。図3は正面拡大図であり、(1)図は離型剤を塗布した状態を、(2)図は拡散接合時の状態を示す。
図4は要部の正面説明図であり、(1)図は、ステンレス製の母材間が拡散接合される前の状態を、(2)図は、同母材間が拡散接合された後の状態を示し、(3)図は、アルミニウム合金製の母材間が拡散接合される前の状態を、(4)図は、同母材間が拡散接合される直前の状態を、(5)図は、同母材間が拡散接合された後の状態を示す。
【0029】
まず、離型剤1について説明する。本発明に係る金属ハニカムの製造方法では、次のような離型剤1が採用されている。
この離型剤1は、母材2たる箔状のステンレスや、マグネシウムMgを含有した箔状のアルミニウム合金を拡散接合する際に、非接合部3を設定すべく、予め塗布して使用される(図1を参照)。そして、この離型剤1は、セラミックス粉末とバインダーと溶剤とを、必須的に含有してなり、更に、その他として分散剤や消泡材が、適宜必要に応じて含有せしめられる。
(離型剤1=セラミックス粉末+バインダー+溶剤+その他)
【0030】
まず、離型剤1のセラミックス粉末について述べる。セラミックス粉末は、離型粉末として用いられ、母材2たるステンレスやアルミニウム合金と反応性が少なく、母材2間の離型効果に優れたものが選択使用される。つまり、母材2たるステンレス相互間やアルミニウム合金相互間の拡散接合を防止すべく使用される。
例えば、母材2のステンレスを構成する鉄Fe,クロムCr,ニッケルNi,炭素C等の元素の化合物の中では、クロム酸化物Cr2O3が熱力学的に安定しているが、セラミックスは、それよりも熱力学的に安定している。つまり、拡散接合のための800℃から1200℃程度の加熱により、その酸化物の酸素OがクロムCrと反応して、クロム酸化物Cr2O3となるようなことはない。
アルミニウム合金を母材2とした場合も、上述に準じセラミックスは熱力学的に安定しているが、特に、アルミニウム合金を母材2とした場合の拡散接合は、500℃から600℃と比較的低い温度の加熱により行われるので、より安定するようになる。
このようなセラミックスとして、具体的には、ボロン窒化物BN,イットリア安定化ジルコニアY2O3-ZrO2,マグネシア安定化ジルコニアMgO-ZrO2,アルミナAl2O3,マグネシアMgO,カルシアCaO,シリカSiO2,セリアCe2O3,イットリアY2O3,トリアThO2等が、適宜選択使用される。
【0031】
そして、これらのセラミックスの中でも、周期表(長周期表)の3A族元素の酸化物,希土類元素の酸化物が、代表的に用いられる。
すなわち、元素の中でも3A族元素、例えばスカンジウムSe,イットリウムY,ランタノイド元素La〜Lu,アクチノイド元素Ac〜Lrは、その標準生成自由エネルギーが低く熱力学的に安定している。又、元素の化合物、例えば窒化物,酸化物,硫化物,塩化物,炭化物等々の中で、酸化物は、その標準生成自由エネルギーが低く熱力学的に安定している。
従って、3A族元素の酸化物、例えばセリアCe2O3,イットリアY2O3,トリアThO2等が適しており、特に、イットリアY2O3がコスト的に最も適している。すなわち、イットリアY2O3等の3A族元素の酸化物は、ステンレスやアルミニウム合金よりなる母材2の拡散接合に際し、加熱により還元そして母材2と反応しないのは勿論のこと、事後例えば1300℃以上の高温環境下でも、還元そして母材2と反応しない。又、イットリアY2O3は、各種用途に広く使用されている。
【0032】
このように、この離型剤1では、セラミックスを粉末化したセラミックス粉末、特に3A族元素の酸化物の粉末が使用される。そして、このセラミックス粉末は、5重量%以上で60重量%以下であると共に、粒径が5μm以下のものが用いられる。
まず、このセラミックス粉末の粒径は5μm以下であり、もしも5μmを越えると、その粒径の大きさが支障となって離型剤1を薄く塗布できなくなる。
又、セラミックス粉末は、離型剤1中に最低5重量%以上の割合で含有されており、もしも含有率が5重量%未満だと、離型剤1としての離型効果が不足する。更にセラミックス粉末は、離型剤1中に最高60重量%以下の割合で含有されており、もしも含有率が60重量%を越えると、セラミックス粉末が多過ぎて、離型剤1としての液状化,ペースト状化が困難化すると共に、離型剤1として薄く塗布できなくなる。
この離型剤1は、このような3A族元素の酸化物の粉末等のセラミックス粉末を、必須的に含有している。
【0033】
次に、離型剤1のバインダーについて述べる。バインダーは、上述したセラミックス粉末を離型剤1として塗布可能とするため、そして離型剤1として塗布された後に、セラミックス粉末が母材2から剥離,脱落しないよう接着固定すべく、糊として用いられる。
このバインダーとしては、ポリビニル系樹脂が用いられる。すなわち、この種のバインダーとして、通常は、有機系の一般的に広く用いられている接着剤,塗料,インク等が使用されているが、本発明では、特に熱分解,蒸発,消失しやすいポリビニル系樹脂が選択使用される。ポリビニル系樹脂は、真空炉内等における400℃未満の低温加熱によっても、容易に熱分解,蒸発,消失することが知られている。
【0034】
このようにバインダーとして用いられるポリビニル系樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール,ポリビニルアルコール(PVA,PVAL)や,ポリビニルホルマール(PVF),ポリビニルエタノール,ポリビニルプロパノール,ポリビニルブチラール(PVB),ポリビニルベンザール,ポリ酢酸ビニル(PVAC),ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテル,ポリビニルエチルエーテル,ポリビニルイソブチルエーテル)等が代表的であり、これらは、水を含む1種類以上の溶剤に可溶であり、このような溶剤に溶解,希釈して使用される。
又、これらのポリビニル系樹脂の中では、ポリビニルアルコール(PVA,PVAL)は、特に熱分解,蒸発しやすく、このバインダーとして特に適しており、又、ポリビニルブチラール(PVB)は、ケトン系,芳香族系,アルコール類,その他各種の溶剤に可溶であり、取り扱いやすく、このバインダーとして特に適している。なお、ポリビニル系樹脂ではあるが、ポリ塩化ビニル樹脂は、加熱により熱分解した際において、人体に有害な物質である塩素を含む化合物が生じやすいので、この離型剤1のバインダーとしては使用されない。
【0035】
ところで、このようにバインダーとして用いられるポリビニル系樹脂は、完全ケン化(鹸化)されたものも使用可能であるが、本発明では、部分ケン化(鹸化)されたものが使用される。
すなわち、100重量%完全ケン化に至らずケン化度が80重量%以下程度と、生成反応が未完成な部分ケン化のものが用いられており、熱分解,蒸発が、一段と容易化し促進されるようになると共に、段階的に徐々に緩慢なスピードで行われるようになる。つまり、部分ケン化のものでは、未ケン化部分が、より不安定な状態にあるので極めて容易に熱分解,蒸発しやすく、まず先に熱分解,蒸発し、それから次に、完全ケン化部分が、熱分解,蒸発するようになる。
このように、部分ケン化されたポリビニル系樹脂は、未ケン化部分と完全ケン化部分とで部分的に熱分解,蒸発温度が異なり、その温度範囲が広くなる。なお同じ機能は、熱分解,蒸発温度が異なる2種類以上のポリビニル系樹脂を混ぜて使用すること、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)とポリビニルブチラール(PVB)との混合バインダーを使用することによっても、達成可能であるが、勿論、これに加え更に、上述した部分ケン化のものを併用するようにしてもよい。
【0036】
この離型剤1では、このようなバインダーが使用される。そして、このポリビニル系樹脂よりなるバインダーは、離型剤1中に、1重量%以上で40重量%以下の割合で含有される。
つまり、バインダー・糊としての機能を発揮するため、最低1重量%以上必須的に含有されると共に、最高40重量%以下含有され、40重量%を越える高濃度の場合は、溶剤で希釈しても熱分解,蒸発が遅れる事態が発生する。
この離型剤1は、このようなバインダーを、必須的に含有している。
【0037】
次に、離型剤1の溶剤について述べる。溶剤は、上述したバインダーを、溶かして液状化したり薄めるために、つまり溶解,希釈するために、そのバインダーに適したものが用いられる。
この溶剤としては、ポリビニル系樹脂よりなるバインダーに溶解しやすい、ケトン系の例えばイソホロン,N-メチル2-ピロリドン(NMP)等、芳香族系の例えばキシレン,シクロヘキサン等、各種アルコール類の例えばエタノール,メタノール,エチレングリコール,デカノール、等々が適宜選択使用される。勿論、水もこの溶剤として使用可能である。
この離型剤1では、このような溶剤が使用される。そして、この溶剤は、まず離型剤1中に94重量%以下(前述したセラミックス粉末の含有率5重量%以下と、バインダーの含有率1重量%以上に対応)、含有される。勿論、バインダーは、その溶剤に可溶なものが選択使用される。又、このような溶剤として、2種類以上のものを混合した混合溶剤を用いることも考えられる。
【0038】
なお第1に、離型剤1の塗布厚T(図3を参照)を極薄化する目的のため、離型剤1中に溶剤を多量に含有せしめる構成が考えられる。
この場合、溶剤は、離型剤1中に30重量%以上で94重量%以下、含有されるが、最低でも30重量%以上含有されることが必要であり、もしも含有率30重量%未満だと、離型剤として塗布可能な粘度が得られなくなり、一層の極薄化をめざす上記目的が達成困難となる。
すなわち、この場合の離型剤1は、5重量%以上で60重量%以下のセラミックス粉末と、溶剤に可溶な1重量%以上で40重量%以下のバインダーと、30重量%以上で94重量%以下の溶剤と、を含有してなる。なおこの場合、セラミックス粉末とバインダーとの合計含有率は、70重量%未満に設定される(溶剤の30重量%以上に対応)。このように第1に、溶剤を多量に含有せしめる構成が考えられる。
【0039】
なお第2に、離型剤1塗布時の溶剤の乾燥,揮発,蒸発防止による作業性の向上の目的と、事後の乾燥時の揮発,蒸発スピードの緩慢化による離型剤1塗布膜の破損回避の目的のため、溶剤として、沸点が100℃以上で300℃以下であると共に、相互に沸点が異なる2種類以上が混合された混合溶剤、を用いる構成が考えられる。
この場合の離型剤1も、前述と同様に、5重量%以上で60重量%以下のセラミックス粉末と、この2種類以上の溶剤に可溶な1重量%以上で40重量%以下のバインダーと、30重量%以上で94重量%以下の溶剤と、を含有してなる。セラミックス粉末とバインダーとの合計含有率は、70重量%未満に設定される。
この場合、沸点(VP)が100℃から300℃と高沸点の溶剤としては、ケトン系では、例えばイソホロン(VP≒215℃),N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(VP≒204℃)等、芳香族系では、例えばシクロヘキサン(VP≒156℃)等、アルコール類では、例えばエチレングリコール(VP≒197℃),ジェチレングリコール(VP≒244℃),トリエチレングリコール(VP≒287℃),デカノール(VP≒230℃),トリデカノール(VP≒253℃)、等々が代表的であり、適宜選択使用される。勿論、水も使用可能である。
沸点が100℃未満の溶剤では、塗布作業時の乾燥,揮発,蒸発防止の上記目的が達成困難となり、300℃を越える溶剤では、事後の乾燥による揮発,蒸発に高温を要し面倒となり、拡散接合との絡みでも好ましくない。そして、このように沸点が100℃以上で300℃以下である高沸点の溶剤について、2種類以上のものが選択,混合される。その際、それぞれの溶剤の沸点が20℃以上異なるものを選択することが、乾燥時の揮発,蒸発スピードの段階的な緩慢化の上記目的上、特に好ましい。このように第2に、高沸点の混合溶剤を用いる構成も考えられる。
この離型剤1は、このような溶剤を必須的に含有してなる。
【0040】
上述したように離型剤1は、例えば3A族元素の酸化物の粉末よりなるセラミックス粉末と、ポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、溶剤と、を含有してなる。
組合わせの1例としては、セラミックス粉末(例えばイットリアY2O3)+ポリビニルアルコール(PVA)+水や、セラミックス粉末(例えばイットリアY2O3)+ポリビニルブチラール(PVB)+ケトン系溶剤(例えばイソホロン)+芳香族系溶剤(例えばシクロヘキサン)、等がある。
なお、離型剤1については、更に必要に応じ適宜、分散剤や消泡材が含有せしめられる。分散剤は、離型剤1中のセラミックス粉末が相互に凝集,結合,固化しないように混入され、消泡材は、離型剤1塗布時の泡立ちを防止すべく混入される。このような分散剤や消泡材としては、例えばメタノール等の有機溶剤が代表的である。
又、この分散剤や消泡材は、離型剤1中に0重量%以上で10重量%以下の割合で、含有される。
【0041】
さて離型剤1は、上述したようにセラミックス粉末,バインダー,溶剤,更に分散剤,消泡材等を、前述した所定の含有率に基づき、配合,調合してなる。
(離型剤1=セラミックス粉末+バインダー+溶剤+その他)
すなわち、溶剤で溶解,希釈されたバインダー中に、セラミックス粉末を混合,分散させることにより、この離型剤1は配合,調合される。その際、次に述べる塗布方式に応じ、その塗布方式に最適な粘度を得るため必要な場合は、セラミックス粉末や溶剤の含有率が調整され、もって離型剤1としての粘度が調整される。いずれにしても離型剤1は、ある程度の粘性を備えた液状又はペースト状をなすが、エマルジョン化していても良い。
【0042】
ここで、離型剤1の塗布方式について述べておく。離型剤1の母材2への塗布は、塗装方式や印刷方式にて行われる。
塗装方式は、予め条線状の拡散接合対象部4を、それぞれマスキングしておいてから、スプレーや浸漬・ディッピング等にて、離型剤1を非接合部3に対して塗布した後、マスキングを除去することにより行われる。
印刷方式としては、スクリーン印刷等の孔版印刷や、転写ロール印刷等の凹版印刷や、凸版印刷等が、利用される。スクリーン印刷は、母材2を所定長さに切断した後に行うのに適しているが、勿論、ロール・ツー・ロールにて行うこと(切断前の帯状の母材2をロール間にて流しつつ印刷すること)も可能であり、転写ロール印刷は、ロール・ツー・ロールの印刷に適している。
このような塗装方式や印刷方式等の塗布方式により、離型剤1が母材2に対し、条線状に地肌5を残しつつ、塗布される(図1の(2)図や図3の(1)図を参照)。そして、母材2に対する離型剤1の塗布厚T(図3を参照)は、いずれの塗布方式によっても、実際上は、塗布時において30μm程度が一般的に制御可能な限界値であるが、理論上、拡散接合時における離型効果の面からは最低0.5μm程度は必要である。離型剤1の塗布は、このように行われる。
離型剤1は、以上説明したようになっている。
【0043】
本発明に係る金属ハニカムの製造方法では、このような離型剤1が採用されている。この離型剤1は、所定のセラミックス粉末,ポリビニル系樹脂よりなるバインダー,溶剤等を含有してなり、塗装方式や印刷方式にて塗布される。
次に、このような離型剤1を用いた、金属ハニカムの製造方法について、製造工程の順に説明する。すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、(1)準備工程,(2)塗布工程,(3)乾燥工程,(4)重積工程,(5)接合工程,(6)展張工程,(7)洗浄工程、等を順に辿る展張方式により、ハニカムコアHが製造される。
【0044】
まず、(1)準備工程について述べる。この製造方法では、まず、図1の(1)図に示したように、母材2が準備される。この母材2は、ハニカムコアHの製造に供されることに鑑み、肉厚が200μm以下の薄い箔状をなすステンレス、又は、マグネシウムMgを含有したアルミニウム合金よりなる。
ステンレスは、周知のごとく鉄Feに10%以上のクロムCrを加えてなり、更に多くの場合、ニッケルNi,炭素C,その他を添加してなり、耐熱性,高温強度,耐酸化性,耐食性,加工性、等々に優れている。マグネシウムMgを含有したアルミニウム合金も、耐熱性,高温強度,耐食性,加工性、等々に優れており、A6951に代表される6000系合金や5000系合金は、特に強度面に優れていることが知られている。
そして、このようなステンレスやアルミニウム合金よりなる箔状の母材2は、帯状に圧延された後、必要に応じ脱脂その他により洗浄されてから、一定幅や一定長さ毎に切断される。一定長さへの切断は、図示例によらず、次に述べる(2)塗布工程や(3)乾燥工程の後に、行うようにしてもよい。
なお、母材2たるアルミニウム合金の地肌5表面は、通常、酸化皮膜6(図4の(3)図を参照)にて覆われており、洗浄してもすぐに酸化されて酸化皮膜6が形成される。この酸化皮膜6は、アルミナAl2O3として知られている。(1)準備工程では、このような母材2が準備される。
【0045】
次に、(2)塗布工程について述べる。この製造方法では、図1の(2)図や図3の(1)図に示したように、次に離型剤1が塗布される。すなわち、上述した(1)準備工程で準備された母材2に対し、離型剤1が、条線状に地肌5を残しつつ塗布される。離型剤1は、前に詳述した構成よりなり、各種の塗布方式にて、多くの場合30μm程度の塗布厚Tにて、塗布される。
そして離型剤1は、母材2に対し、拡散接合対象部4(ノード部)となる地肌5を、一定幅とピッチの条線状に残すように間隔を存しつつ、一定幅とピッチで例えば幅方向に塗布され、このように離型剤1が塗布された部分が、母材2の非接合部3となる。
図示例では、母材2の片面(表面)に対してのみ、離型剤1が一定幅とピッチで塗布され、このような母材2のみが、以下に述べるように重積,接合,展張されることになる。なお、このような図示例によらず、母材2の両面(表面と裏面)に対して、離型剤1が一定幅とピッチで塗布される場合もあり、この場合は、このように両面に離型剤1が塗布された母材2と、離型剤1が両面共に全く塗布されないままの母材2とが、順次交互に重積された後、接合,展張される。(2)塗布工程では、このように離型剤1の塗布が行われる。
【0046】
次に、(3)乾燥工程について述べる。この製造方法では、(2)塗布工程で離型剤1が塗布された母材2は、次に乾燥される。
すなわち、離型剤1が塗布された母材2は、直ちに、常温程度から300℃以下程度に設定された乾燥炉へと搬入され、熱風等により乾燥される。そして、このような乾燥により、塗布された離型剤1中に含有されていた溶剤が、揮発,蒸発,消失せしめられると共に、離型剤1が母材2にしっかりと固定される。(3)乾燥工程では、このように母材2が乾燥される。
【0047】
次に、(4)重積工程について述べる。この製造方法では、図1の(3)図に示したように、母材2の重積が行われる(図3の(2)図も参照)。すなわち、上述した(2)塗布工程で離型剤1が塗布された後、(3)乾燥工程で離型剤1が乾燥された母材2は、次に複数枚が、離型剤1間に条線状に残されて露出した地肌5が半ピッチずつずれた位置関係で、重積される。
例えば、400枚程度の母材2が、上下にブロック状に重積され、その際、図示例では片面について条線状に残された地肌5が、上下の各母材2間で、左右に互いに半ピッチずつずれた位置関係で、位置決めされる。(4)重積工程では、このように母材2が重積される。
【0048】
次に、(5)接合工程について述べる。この製造方法では、図1の(4)図や図3の(2)図に示したように、次に、母材2間の拡散接合が行われる。すなわち、上述した(4)重積工程でブロック状に重積された母材2間を、加圧,加熱することにより、接触した地肌5間にて条線状に拡散接合する。
このような拡散接合について、更に詳述する。重積されたブロック状の母材2は、適当な治具に拘束されると共に必要な荷重が加えられ、真空炉等に搬入されて所定の温度と時間にて加熱され、もって条線状に固相のまま拡散接合される。
【0049】
まず、この固相拡散接合は、次のa.温度,b.荷重,c.雰囲気,d.時間、等の条件下で行われる。これらの各条件は、母材2の具体的な構成内容・材質や、他の条件との兼合いによって変化するが、一応次のように設定されることが多い。
a.温度条件は、母材2がステンレスの場合は、800℃から1200℃程度に設定され、母材2がアルミニウム合金の場合は、500℃から600℃程度に設定され、もって重積された母材2が加熱される。
b.荷重条件は、母材2がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、0.1g/mm2から10g/mm2程度に設定され、もって重積された母材2が加圧される。
c.雰囲気条件は、真空雰囲気が代表的であり、もってこの固相拡散接合は、重積された母材2を真空炉中に搬入して行われることが多い。他に、還元雰囲気,不活性ガス雰囲気,アルゴンAr等を加えた減圧雰囲気、等のもとでも可能であり、これらの場合には、それぞれの専用炉が用いられる。
d.時間条件は、5分間から10時間程度に設定され、もって重積された母材2が、この設定時間、真空炉中等で加熱,加圧される。
【0050】
このようなa.温度,b.荷重,c.雰囲気,d.時間等の条件下で、固相拡散接合が実施される。もって、母材2の非接合部3を設定する離型剤1間の条線状に露出した地肌5が、各々拡散接合対象部4として接触,当接,密着される。図示例では、重積されてそれぞれ上下に対向する母材2について、下側の母材2表面の条線状に露出した地肌5と、上側の母材2裏面の離型剤1が塗布されずに全面的に露出した地肌5との間が、拡散接対象部4となって接触,当接,密着される。
そして、このような地肌5の拡散接合対象部4間で、母材2のステンレスやアルミニウム合金を構成する金属元素について、原子が粒界面で拡散移動し、もって、ブロック状に重積されていた各母材2間が、条線状に固相拡散接合される。
【0051】
図4の(1)図,(2)図には、母材2がステンレスよりなる場合について、このような固相拡散接合の要部の進行状態が示されている。図4の(3)図,(4)図,(5)図には、母材2がマグネシウムMgを含有したアルミニウム合金よりなる場合について、このような固相拡散接合の要部の進行状態が示されている。
すなわち、図4の(3)図に示したように、固相拡散接合前において、アルミニウム合金よりなる母材2は、地肌5表面が、酸化皮膜6にて強固に安定的に覆われている。そして、図4の(4)図に示したように、固相拡散接合のための加圧,加熱開始により、母材2たるアルミニウム合金に含有されたマグネシウムMg(真空中では400℃程度で簡単に蒸発することが知られている)が、蒸気化して蒸発し、酸化皮膜6を破壊,分散せしめる。
もって、図4の(5)図に示したように、母材2のアルミニウム合金のアルミニウムAlが、無垢の状態で露出して、所期の固相拡散接合が進行する。
【0052】
なお、このような固相拡散接合に際し、離型剤1に含有されたポリビニル系樹脂よりなるバインダーの熱分解,蒸発,消失を促進するため、その熱分解温度にて、一旦保持するとよい。
すなわち、固相拡散接合当初の初期段階において、バインダーとして使用されたポリビニル系樹脂の熱分解温度にて、加熱温度をそのまま途中で一旦保持する。なお通常、母材2がステンレスの場合は、300℃から600℃程度の熱分解温度のバインダーが使用され、母材2がアルミニウム合金の場合は、300℃から400℃程度の熱分解温度のバインダーが使用されるが、ポリビニル系樹脂は、熱分解温度が一般的に400℃未満よりなる。
そして、このように加熱昇温途中の初期段階で、加熱温度をこのような熱分解温度にて一旦保持することにより、離型剤1中のポリビニル系樹脂よりなるバインダーが、熱分解,蒸発,消失する。そして事後、更に加熱を進め、温度が上昇して前述した温度条件に達すると、固相拡散接合が開始されることになる。このように、固相拡散接合の開始前の初期段階で、離型剤1中のバインダーの熱分解が行われると、事後の固相拡散接合の開始時の雰囲気を、清浄に保つことができる利点がある。(5)接合工程では、このように拡散接合が行われる。
【0053】
次に、(6)展張工程について述べる。この製造方法では、次に、図1の(5)図に示したようにスライスが行われた後、図2の(1)図に示したように展張が行われる。
すなわち、上述した(5)接合工程で条線状に拡散接合された、ブロック状に重積された母材2は、まず、長さ方向に沿ってスライスされ、必要な大きさに切断される。このスライスは、例えばウォータージェット,ワイヤー放電,バンドソー,切断砥石、等を利用した方式にて行われる。図中7は、そのスライス具である。
それから、このように必要な大きさにスライスされたブロック状の母材2は、重積方向Dに引張力を加えて、展張される。すなわち、ブロック状に重積されると共に条線状に拡散接合された母材2は、図面上では上下の重積方向Dに沿って引張力が加えられて、展張される。もって各母材2は、条線状の拡散接合対象部4の縁に沿って上下方向に折曲されると共に、拡散接合対象部4以外の離型剤1にて覆われていた非接合部3が、伸長を伴いつつ広がるように上下に分離,離隔される。(6)展張工程では、このように展張が行われる。
【0054】
次に、(7)洗浄工程について述べる。この製造方法では、次に、上述した図2の(1)図の(6)展張工程で展張されて得られたハニカムコアHは、図2の(2)図に示したように、外周部がトリミングされ、必要な大きさに切断され整えられる。このトリミングは、前述したスライスに準じた方式にて行われる。
そして、製造されたハニカムコアHは、事後、エアブローや水洗等にて洗浄され、残存していた離型剤1のセラミックス粉末や僅かなバインダーの灰等が、除去される。(7)洗浄工程では、このように洗浄が行われる。
【0055】
この金属ハニカムの製造方法では、このような(1)準備工程,(2)塗布工程,(3)乾燥工程,(4)重積工程,(5)接合工程,(6)展張工程,(7)洗浄工程、等を順に辿る展張方式により、ハニカムコアHが製造される。
このように製造されたハニカムコアHは、図2の(2)図や(3)図に示したように、条線状に拡散接合されたステンレス又はアルミニウム合金よりなる母材を、セル壁8とし、セル壁8にて区画形成された中空柱状の多数のセル9の平面的集合体よりなる。
このハニカムコアHは、このように、セル壁8の母材2として、ステンレスやアルミニウム合金が用いられると共に、セル壁8は、このような母材2が加熱,加圧による拡散接合にて、条線状に接合されてなる。セル壁8そしてセル9の断面形状は、図示の正六角形状のものが代表的であるが、これによらず縦長や横長の六角形状,その他の六角形状,台形状,略四角形状,その他各種形状のものも可能である。
【0056】
ハニカムコアHは、多くの場合、その両開口端面たるセル端面に、それぞれ表面板が接合され、もってハニカムサンドイッチパネルとして、使用に供される。 そして、ハニカムコアHやハニカムサンドイッチパネルは、一般のものと同様に、重量比強度に優れ、軽量であると共に高い剛性・強度を備えてなり、更に整流効果に優れ,単位容積当たりの表面積が大である等々の特性を備え、そのハニカムサンドイッチパネルは、平面精度,保温性,遮音性等にも優れてなる。
そして、このハニカムコアHは、更に、母材2たるステンレスやアルミニウム合金の基本性能を生かし、耐熱性,高温強度,耐酸化性,耐食性,加工性等々にも優れており、例えば航空機用や鉄道車輌用の構造材,構造部品としての用途、その他各種の用途に使用される。
この金属ハニカムの製造方法では、このようなハニカムコアHが製造される。
【0057】
本発明は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。この金属ハニカムの製造方法では、まず、(1)準備工程で準備された母材2たるステンレスや、マグネシウムMgを含有したアルミニウム合金は、肉厚が200μm以下の極薄の箔状をなし、(2)塗布工程で、条線状に地肌5を残しつつ離型剤1が塗布され、(3)乾燥工程で乾燥された後、(4)重積工程で、半ピッチずつずらして複数枚が重積され、もって(5)接合工程において、真空炉中等で加圧,加熱することにより、拡散接合される(図1の(1)図,(2)図,(3)図,(4)図や図3の(1)図,(2)図等を参照)。
すなわち、母材2の離型剤1間の条線状に露出した地肌5が、各々拡散接合対象部4となって接触,当接,密着し、もって母材2のステンレスやアルミニウム合金を構成する金属元素について、原子が粒界面で拡散移動することにより、重積された母材2間が拡散接合される(図4の(1)図,(2)図等を参照)。
なお、母材2がアルミニウム合金の場合は、まず、含有されていたマグネシウムMgが蒸発して、アルミニウム合金の地肌5表面を覆っていた酸化皮膜6を破壊,分散せしめることにより、アルミニウムAlが無垢の状態で地肌5に露出し、上述した拡散接合が可能となる(図4の(3)図,(4)図,(5)図等を参照)。
【0058】
しかる後、このように重積,拡散接合された母材2を、(6)展張工程において、重積方向Dに引張力を加えて展張することにより、母材2は、条線状の拡散接合対象部4の縁に沿って折曲されると共に、離型剤1にて覆われていた非接合部3が、分離,離隔される(図2の(1)図を参照)。
このようにして、ステンレスやアルミニウム合金製の母材2をセル壁8とし、セル壁8にて区画形成された中空柱状の多数のセル9の平面的集合体たる、ハニカムコアHが製造される(図2の(2)図,(3)図等を参照)。製造されたハニカムコアHは、(7)洗浄工程で洗浄される。
【0059】
さて、この金属ハニカムの製造方法では、離型剤1として、5重量%以上で60重量%以下の離型粉末たるセラミックス粉末、例えば3A族元素の酸化物の粉末と、1重量%以上で40重量%以下のポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、30重量%以上で94重量%以下溶剤と、を含有したものが採用されている。
そして、(2)塗布工程で塗布された離型剤1は、まず(3)乾燥工程で乾燥されることにより、溶剤が揮発,蒸発,消失し、次に(4)重積工程後の(5)拡散接合に際し、つまり重積後の母材2間の拡散接合に際し、当初の初期段階の加圧,加熱により、バインダーがポリビニル系樹脂よりなるので熱分解,蒸発,消失し、灰となって残留することはほとんどない。
さてそこで、この金属ハニカムの製造方法では、次の第1,第2,第3,第4,第5,第6,第7,第8のようになる。
【0060】
第1に、上述したように塗布された離型剤1中に含有されていたバインダーは、ポリビニル系樹脂よりなる。もって、(5)接合工程における真空炉内等での母材2間の拡散接合に際し、当初の初期段階の加圧,加熱により、このポリビニル系樹脂よりなるバインダーは、400℃未満で熱分解,蒸発,消失してしまい、灰化し灰となって残留することはほとんどない。
このように、炭素Cを主成分とする灰はほとんど発生しないので、母材2がステンレスの場合に、拡散接合や事後の高温環境下で1000℃前後の温度で加熱された際、灰と母材2とが反応して浸炭が生じるようなことは、ほとんどない。
つまり、ステンレス製の母材2の表面部の炭素C量を高め、もって機械的強度を変化させると共に、高温環境下や腐食環境下において、母材2のステンレス中のクロムCrがこの炭素Cと反応して、クロム炭化物を生成,析出,粗大化せしめる原因となる、浸炭の発生は回避される。
【0061】
第2に、同様に離型剤1のバインダーとしてポリビニル系樹脂を採用してなるので、(5)接合工程での当初の加圧,加熱により、熱分解,蒸発,消失しやすく、灰となって残留することはほとんどない。
このように、炭素Cを主成分とする灰の発生,残留がないので、母材2がステンレスの場合に表面部が浸炭することもなく、勿論、クロム炭化物の生成もない。もって、離型剤1として残存するのは、離型粉末たるセラミックス粉末のみであると共に、この残存したセラミックス粉末が、母材2の表面部に対し付着したように離れにくくなることも、回避される。
そこで、ステンレスを母材2として製造されたハニカムコアHについて、事後に実施される(7)洗浄工程において、残存していた離型剤1つまりセラミックス粉末は、母材2つまりセル壁8の表面部から、エアブローや水洗等による洗浄により、除去されるようになる。
【0062】
第3に、同様に離型剤1のバインダーとしてポリビニル系樹脂を採用してなるので、このバインダーは、400℃未満の低温でも容易に熱分解,蒸発,消失しやすい。
母材2がアルミニウム合金よりなる場合、(5)接合工程における母材2間の拡散接合は、500℃から600℃程度の低い加熱温度で行われるが、その当初の初期段階の加圧,加熱により、このポリビニル系樹脂のバインダーは、熱分解,蒸発,消失してしまい、灰となって残留することはほとんどない。
【0063】
このように、拡散接合のための加熱温度は低いものの、バインダーの熱分解,蒸発は進展し、多量の灰が残留するようなことは回避され、離型剤1として残存するのはセラミックス粉末のみとなると共に、このセラミックス粉末が、母材2の表面部に対し付着したように離れにくくなることも、回避される。
そこで、アルミニウム合金を母材2として製造されたハニカムコアHについて、事後に実施される(7)洗浄工程において、残存していた離型剤1つまりセラミックス粉末は、母材2つまりセル壁8の表面部から、洗浄により除去されるようになる。
【0064】
第4に、同様に離型剤1のバインダーとしてポリビニル系樹脂を採用してなるので、このバインダーは、(5)接合工程において、アルミニウム合金製の母材2間が、500℃から600℃程度で拡散接合される際に、当初の初期段階の加圧,加熱により、400℃未満の低温で、熱分解,蒸発,消失してしまう。
母材2がアルミニウム合金の場合、真空炉内等での加圧,加熱により、まず、含有されていたマグネシウムMgが蒸発して、地肌表面を強固に安定的に覆っていた酸化皮膜(アルミナAl2O3)を破壊,分散せしめ、もってアルミニウムAlが地肌表面に露出して始めて、拡散接合が可能となる。
そして、このようなマグネシウムMgの蒸発は、真空中では400℃程度から顕著となるが、この温度域では、上述によりバインダーの熱分解,蒸発は既に完了している。
【0065】
そこで、アルミニウム合金を母材2とした場合、その拡散接合の前提となる母材2からのマグネシウムMgの蒸発は、支障なく行われるようになる。
すなわち、マグネシウムMgが蒸発する温度域で、もしもバインダーの熱分解,蒸発が起こるようなことがあると、例えば真空炉内の真空度が落ち、マグネシウムMgの蒸発が阻害されるが、バインダーは既に熱分解,蒸発済なので、このような事態発生は回避される。
このように(5)接合工程において、マグネシウムMgが支障なく蒸発し、酸化皮膜が破壊,分散せしめられて、アルミニウムAlが地肌表面に露出し、もって、アルミニウム合金製の母材2間が、所期の通り拡散接合されるようになる。
【0066】
更に、上述したように離型剤1のバインダーは、拡散接合当初の加圧,加熱により、400℃未満で熱分解,蒸発を完了する。そこで一旦、マグネシウムMgの蒸発により酸化皮膜が破壊,分散せしめられた場合において、その直後の400℃程度以上の温度域で、バインダーが熱分解,蒸発する事態は回避される。
もしもこの温度域で、バインダーが熱分解,蒸発するようなことがあると、例えば真空炉内の真空度が落ちると共に、放出された酸素Oが、母材2の露出した地肌表面のアルミニウムAlと反応して、これを酸化せしめ、もって再び酸化皮膜(アルミナAl2O3)を形成してしまい、拡散接合に支障が生じることになるが、このような事態は、回避される。
もって、この面からも(5)接合工程において、アルミニウム合金製の母材2間が、所期の通り拡散接合されるようになる。
【0067】
第5に、(5)接合工程では、一定の真空雰囲気に保たれた真空炉が代表的に使用されるが、この真空炉には、もしも拡散接合処理中に真空度が悪化した場合において、装置保護のため作動する安全装置が付設されており、安全装置が作動した場合、拡散接合処理は中断される。(なお、還元雰囲気,不活性ガス雰囲気,減圧雰囲気等の雰囲気条件の場合、それぞれの専用炉についても、これに準じる。以下同様。)
そして、この真空炉内等における拡散接合に際し、離型剤1のバインダーとして、部分ケン化されたポリビニル系樹脂が用いられた場合は、緩慢なスピードで熱分解,蒸発するようになる。この点は、母材2がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、変わりはない。
【0068】
すなわち、離型剤1のバインダーとして、完全ケン化されたポリビニル系樹脂を用いた場合には、一度に一気に熱分解,蒸発するので、例えば真空炉内の真空度が悪化し、完全装置が作動してしまう虞がある。
これに対し、バインダーのポリビニル系樹脂として部分ケン化のものが用いられているので、その熱分解,蒸発は、段階的に徐々に緩慢なスピードで行われる。もって上述した完全ケン化の場合に比し、真空度の悪化が最小限に抑えられ、拡散接合処理の途中で、安全装置が作動してしまう虞はない。
なお、部分ケン化のものが用いられているので、完全ケン化のものを用いた場合に比し、更に、熱分解,蒸発がより促進される。つまり、未ケン化部分が極めて熱分解,蒸発しやすい状態にあるので、完全ケン化部分より先に熱分解,蒸発するので、(上述したように全体的に見るとスピードが緩慢化されると共に、)その分だけ熱分解,蒸発が、より促進されることになる。
【0069】
第6に、更に離型剤1の離型粉末,セラミックス粉末として、3A族元素の酸化物の粉末が用いられているので、次のようになる。
3A族元素の酸化物は、熱力学的に極めて安定している。そこで、製造途中の(5)接合工程における母材2間の拡散接合のための加圧,加熱や、製造されたハニカムコアHの高温環境下(例えば1300℃以上の温度域)での使用等に際し、還元されたりして母材2つまりセル壁8と反応することはなく、金属間化合物,酸化物,窒化物,炭化物、等を生成せしめることはない。
もって、これらが原因となって、製造されたハニカムコアHについて、母材2つまりセル壁8の脆化,高温酸化,粒界腐食等を誘発する事態は回避される。この点は、母材2がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、変わりはない。
【0070】
なお、製造されたハニカムコアHは、事後の(7)洗浄工程において洗浄が実施され、もって、残存していた離型剤1のセラミックス粉末たる3A族元素の酸化物の粉末も、通常は、洗浄により確実に除去される筈である。しかしながら、このような洗浄が不十分な場合もあり、この場合には、離型剤1のセラミックス粉末が、除去されずに残存することになる。
そしてこの場合、つまり仮りに離型剤1のセラミックス粉末が残存したとしても、3A族元素の酸化物の粉末よりなるので、上述により、ハニカムコアHの母材2つまりセル壁8とは反応することはなく、脆化,高温酸化,粒界腐食等の悪影響を及ぼすことは、回避される。
【0071】
第7に、この製造方法では、離型剤1として、粒径が5μm以下と小さくしかも含有率を60重量%以下に限定したセラミックス粉末と、例えば含有率40重量%以下のポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、溶剤とを、含有してなるものを採用してなる。
そして(5)接合工程において、拡散接合のための当初の加熱により、離型剤1中のポリビニル系樹脂よりなるバインダーは、熱分解,蒸発,消失し、炭化して灰となることはほとんどない。もしも灰が僅かでも生じるようなことがあっても、灰は強度がなく、体積的にもバインダー当時の半分以下となり、拡散接合のための加圧により、セラミックス粉末間の隙間に事実上無視できる程度に圧縮,充填される。
もって離型剤1は、セラミックス粉末を粒径5μm以下で含有率60重量%以下に限定しておいたことと、このようなバインダーの熱分解とにより、拡散接合の初期段階の次の開始段階においては、全体の塗布厚Tが大きく極薄化される。つまり離型剤1は、事前の(2)塗布工程の塗布時(図1の(2)図,図3の(1)図を参照)においては、例えば30μm程度の塗布厚Tであったとしても、(5)接合工程における拡散接合開始時(図1の(4)図,図3の(2)図を参照)には、塗布厚Tを、18μm以下程度まで極薄化することができる。
【0072】
更にこれに加え、離型剤1として、上述した含有率のセラミックス粉末とバインダーに加え、含有率30重量%以上で94重量%以下の溶剤を含有したものを採用した場合は、次のように、塗布厚Tが一段と極薄化される。すなわち、このように多量に含有せしめられた溶剤は、(3)乾燥工程での乾燥により揮発,蒸発,消失してしまうので、離型剤1全体の塗布厚Tが、更に一段と極薄化される。
つまり離型剤1は、(2)塗布工程の塗布時においては、セラミックス粉末とバインダーと溶剤とにより、例えば30μm程度の塗布厚Tであったとしても、(3)乾燥工程における溶剤の揮発,蒸発,消失と、上述した(5)接合工程の初期段階におけるバインダーの熱分解,蒸発,消失とを合わせることにより、(5)接合工程における拡散接合開始時には、塗布厚Tを13μm以下程度まで薄くすることができる。
【0073】
このように離型剤1は、(5)接合工程における拡散接合開始時には、極めて薄い塗布厚Tとなっている。そこで、重積された母材2は、このような左右の離型剤1間に条線状に露出した上下の地肌5間が、左右の離型剤1の塗布厚Tに邪魔されることなく、加圧,加熱により、確実に接触,当接,密着するようになる(図3の(2)図,図4の(2)図,図4の(5)図等を参照)。従って、重積された母材2は、相互間が条線状に確実に拡散接合される。
つまり(5)接合工程において、離型剤1の塗布厚Tが支障となって、母材2の拡散接合対象部4たる地肌5間が、ぴったりと接触,当接,密着せず、もって、接合強度が不足したり未接合箇所が発生したりすること(製造されたハニカムコアHについて、各セル9間がセル壁8にて確実に区画されない目飛びが発生すること)は、確実に回避される。
これらの点は、セルサイズS(図2の(3)図を参照)が10mm以下更には5mm以下等、セルサイズSが小さなハニカムコアHを製造する際、特に顕著となる。
【0074】
第8に、このように(5)接合工程において、重積された母材2間は、離型剤1の塗布厚Tが邪魔となることもなく、相互間が条線状に確実に拡散接合される。そこで、拡散接合時の加圧を、比較的低圧,低荷重のもとにて、行えるようになる。すなわち、母材2の肉厚が200μm以下である一般的前提のもと、前述したように0.1g/mm2から10g/mm2程度の低荷重により、ブロック状に重積された母材2を加圧することにより、母材2間が確実に拡散接合される。
これに対し、もしも離型剤1の塗布厚Tが30μm程度のままの場合において、この離型剤1の塗布厚Tに邪魔されることなく、母材2の地肌5間の確実な接触,当接,密着そして確実な拡散接合を実現するためには、1Kg/mm2程度の高荷重にて加圧することが、(5)接合工程において必要となる。
これらの点は、セルサイズSが10mm以下更には5mm以下と小さなハニカムコアHを製造する際、特に顕著となる。
【0075】
【発明の効果】
本発明に係る金属ハニカムの製造方法は、以上説明したように、含有率が所定重量%に設定されたセラミックス粉末と、ポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、溶剤と、を含有した離型剤を採用したことにより、拡散接合に際し、塗布されていた離型剤中に含有されたバインダーの熱分解,蒸発が促進され、灰化が抑えられる。そこで、次の第1,第2,第3,第4の効果を発揮する。
【0076】
第1に、母材がステンレスの場合に、浸炭が抑えられ、母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等が防止される。すなわち、この金属のハニカムの製造方法では、離型剤のバインダーとしてポリビニル系樹脂を採用してなるので、拡散接合に際し熱分解,蒸発,消失しやすく、灰となって残留することはほとんどない。
そこで、前述したこの種従来例のように、残留した灰がステンレス製の母材と反応して浸炭が生じるようなことは、極めて少ない。もって、母材の機械的強度が変化することもなく、高温環境下や腐食環境下において、クロム炭化物を生成,析出,粗大化せしめ、母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等を誘発することもない。
そこで、この金属ハニカムの製造方法にて、ステンレスを母材つまりセル壁として製造されたハニカムコアは、高温環境下や腐食環境下において、支障なく使用可能である。
【0077】
第2に、母材がステンレスの場合、離型剤の洗浄,除去が容易化される。この金属ハニカムの製造方法では、離型剤のバインダーとして、ポリビニル系樹脂を採用してなるので、拡散接合に際し熱分解,蒸発,消失し、灰となって残留することはほとんどない。
すなわち、前述したこの種従来例のように、灰の残留がなく、母材つまりセル壁の表面部の浸炭,クロム炭化物の生成もなく、離型剤として残存するのはセラミックス粉末のみである。そこで、残存していた離型剤は、製造されたハニカムコアについて実施される洗浄により、前述したこの種従来例のように除去が困難化することもなく、簡単容易に除去される。
【0078】
第3に、母材がアルミニウム合金の場合も、離型剤の洗浄,除去が容易化される。すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、離型剤のバインダーとしてポリビニル系樹脂を採用してなる。アルミニウム合金製の母材間の拡散接合は、比較的低い加熱温度で行われるが、その際このバインダーは、ほとんど熱分解,蒸発,消失してしまう。
前述したこの種従来例のように、拡散接合のための加熱温度が低いことに起因して、バインダーの熱分解,蒸発,消失が進展せず、多量の灰が残留するようなことはなく、離型剤として残存するのは、セラミックス粉末のみである。そこで、残存していた離型剤は、製造されたハニカムコアについて実施される洗浄により、前述したこの種従来例のように除去が困難化することもなく、簡単容易に除去される。
【0079】
第4に、母材がアルミニウム合金の場合、酸化皮膜が確実に破壊,分散せしめられ、拡散接合がスムーズに行われる。
すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、離型剤のバインダーはポリビニル系樹脂よりなり、拡散接合当初の加圧,加熱により,熱分解,蒸発,消失してしまう。そこで、アルミニウム合金製の母材に含有されていたマグネシウムの蒸発は、前述したこの種従来例のように、例えば真空炉内の真空度等が落ちることもなく、支障なく行われる。もって、母材の酸化皮膜は確実に破壊,分散せしめられ、拡散接合がスムーズに行われ、ハニカムコアが支障なく製造されるようになる。
更に、上述したように離型剤のバインダーは、熱分解,蒸発,消失してしまう。そこで一旦、マグネシウムの蒸発により酸化皮膜が破壊,分散せしめられたとしても、事後、前述したこの種従来例のように、バインダーの熱分解,蒸発により例えば真空炉内の真空度が落ち、もって再び酸化皮膜が形成されてしまうようなこともない。この面からも、拡散接合がスムーズに行われ、ハニカムコアが支障なく製造されるようになる。
【0080】
そして更に、離型剤のバインダーとして、部分ケン化されたポリビニル系樹脂を採用したことにより、上述に加え、次の第5の効果を発揮する。
第5に、離型剤のバインダーの熱分解,蒸発が、より促進されると共に、徐々に緩慢なスピードで行われ、拡散接合処理が中断せずに行われるようになる。
すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、母材がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、塗布される離型剤のバインダーとして、部分ケン化されたポリビニル系樹脂を採用してなる。
もって、例えば真空炉内等における母材間の拡散接合に際し、加圧,加熱により、このバインダーは熱分解,蒸発がより促進されるようになると共に、緩慢なスピードで行われるようになる。
そこで、完全ケン化されたバインダーを用いた場合に比し、熱分解,蒸発がより確実化すると共に、一気に熱分解,蒸発して例えば真空炉内の真空度が悪化し、もって付設された安全装置が作動して、拡散接合処理が中断してしまうこともない。このように、この金属ハニカムの製造方法によると、生産効率上の不具合が解消されるに至る。
【0081】
又、離型剤のセラミックス粉末として、3A族元素の酸化物の粉末を採用したことにより、次の第6の効果を発揮する。
第6に、高温環境下での還元そして母材との反応が回避され、この面からも母材の脆化,高温酸化,粒界腐食等が防止されるようになる。
すなわち、この金属ハニカムの製造方法では、母材がステンレスの場合もアルミニウム合金の場合も、塗布される離型剤の離型粉末たるセラミックス粉末として、3A族元素の酸化物の粉末を採用してなる。
そこで、前述したこの種従来例のように、高温環境下で還元されたりして母材と反応し、もって金属間化合物,酸化物,窒化物,炭化物等を生成するようなことはない。従って、製造されたハニカムコアは、高温環境下で使用されても、母材つまりセル壁の脆化,高温酸化,粒界腐食等が誘発されることもなく、支障なく使用可能である。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る金属ハニカムの製造方法について、発明の実施の形態の説明に供する斜視説明図であり、(1)図は、準備された母材を、(2)図は、離型剤を塗布した状態を、(3)図は、重積する状態を、(4)図は、拡散接合した状態を、(5)図は、スライスする状態を、それぞれ示す。
【図2】 同発明の実施の形態の説明に供する斜視説明図であり、(1)図は、展張した状態を、(2)図は、トリミングした状態を、(3)図は、得られたハニカムコアの要部を、それぞれ示す。
【図3】 同発明の実施の形態の説明に供する正面拡大図であり、(1)図は、離型剤を塗布した状態を、(2)図は、拡散接合時の状態を示す。
【図4】 同発明の実施の形態の説明に供する要部の正面説明図であり、(1)図は、ステンレス製の母材間が拡散接合される前の状態を、(2)図は、同母材間が拡散接合された後の状態を示し、(3)図は、アルミニウム合金製の母材間が拡散接合される前の状態を、(4)図は、同母材間が拡散接合される直前の状態を、(5)図は、同母材間が拡散接合された後の状態を示す。
【符号の説明】
1 離型剤
2 母材
3 非接合部
4 拡散接合対象部
5 地肌
6 酸化皮膜
7 スライス具
8 セル壁
9 セル
D 重積方向
H ハニカムコア
Mg マグネシウム
S セルサイズ
T 塗布厚
Claims (1)
- 箔状のステンレスや、マグネシウムを含有した箔状のアルミニウム合金を、母材とし、該母材に離型剤を、条線状に地肌を残しつつ塗布して乾燥させた後、
複数枚の該母材を、該離型剤間に条線状に残されて露出した地肌が半ピッチずつずれた位置関係で、重積してから、炉内で加圧,加熱することにより、該母材間を、接触した該地肌間にて条線状に拡散接合させた後、
重積方向に引張力を加えて展張することにより、該母材をセル壁とし、該セル壁にて区画形成された中空柱状の多数のセルの平面的集合体たるハニカムコアを得た後、残存していた該離型剤のセラミックス粉末等の洗浄,除去が行われる、金属ハニカムの製造方法において、
該離型剤として、5重量%以上で60重量%以下であると共に粒径が5μm以下のセラミックス粉末と、1重量%以上で40重量%以下であると共に溶剤に可溶なポリビニル系樹脂よりなるバインダーと、該溶剤と、を含有してなるものが用いられており、
該離型剤の該バインダーは、ポリビニル系樹脂よりなるので、前記拡散接合の初期段階において、拡散接合のための当初の加熱により、熱分解,蒸発,消失が促進され、炭化して灰となって残留することが抑えられ、
かつ、該離型剤の該バインダーは、部分ケン化されたポリビニル系樹脂よりなり、もって、上記熱分解,蒸発,消失が一段と容易化し促進されると共に、未ケン化部分と完全ケン化部分とで熱分解,蒸発温度が異なり、未ケン化部分がまず熱分解,蒸発,消失し、次に完全ケン化部分が熱分解,蒸発,消失するので、上記熱分解,蒸発,消失が、一度に一気に行われることなく広い温度範囲のもとで段階的に徐々に緩慢なスピードで行われ、
該溶剤は、該バインダーを溶かして液状化し薄めるために、つまり該バインダーを溶解,希釈するために使用され、該バインダーに適したものが用いられており、乾燥時に揮発,蒸発,消失し、
該離型剤の該セラミックス粉末は、周期表の3A族元素の酸化物の粉末よりなること、を特徴とする金属ハニカムの製造方法。
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