JP3796058B2 - ロータリーハース型炉を用いた還元鉄の製造方法 - Google Patents

ロータリーハース型炉を用いた還元鉄の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は微粉鉄鉱石や製鉄工程で使用されている高炉、転炉或いは電気炉等から回収される酸化鉄含有ダストなどの酸化鉄含有原料から還元鉄を製造する方法、特に、ロータリーハース型炉を用いて還元鉄を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、製鉄工程から回収される酸化鉄含有ダストを還元する方法としては、ロータリーキルンで直接還元する方法や、シャフト炉で溶融還元する方法が採用されている。しかしながら、ロータリーキルンの場合、ペレット状で装入した材料が処理中に粉化したり、キルン内部に還元途中の製品がリング状に堆積することによって操業不能に陥ることがしばしば発生する。また、シャフト炉の場合、ダストと石炭の粉末を混練してペレットを作り、炉内で溶融還元する、いわゆる高炉に近いプロセスでダスト中の酸化鉄分を還元する方法であるが、一度炉を立ち上げると、高炉と同様に炉を簡単に停止できない問題や炉内に発生する溶融スラグの処理、投入材料の前処理工程の複雑さがあり、その結果処理コストが高くなるという問題がある。このため、酸化鉄含有ダストから低コストで還元して還元鉄を製造する方法の開発が要望されている。
【0003】
他方、電炉製鋼の伸張とともに鉄源需要が増大し、その需要を満たすため微粉鉄鉱石を原料とする還元鉄の製造法が種々開発されている。その中でも、石炭を使用した還元鉄製造プロセスが還元鉄を安価に製造することができる方法として注目されている。この石炭を使用した還元鉄製造プロセスは、微粉鉄鉱石と石炭の混合粉末をペレット化し、これをロータリーハース型炉で1200〜1450℃で加熱することによって酸化鉄を還元する方法である。
【0004】
前記ロータリーハース型炉は、図4に示すように、回転炉床式炉本体1と、これに原料の微粉鉄鉱石と石炭粉末をペレット化して供給する原料供給系と、前記炉本体1で生じた排ガスを処理する排ガス処理系とで構成されている。炉本体1の内部には、酸化性雰囲気領域(加熱領域)1a、還元性雰囲気領域(還元領域)1b及び冷却領域1cが、炉床の回転方向(図では矢印で示すように反時計方向)に順次形成されている。酸化性雰囲気領域1aにはバーナ2a及び二次燃焼空気供給口3aが配設され、それに続く還元性雰囲気領域1bにはバーナ2b及び二次燃焼空気供給口3bが配設されている。各バーナ2a、2bには燃料供給ライン4と燃焼空気供給ライン5が接続され、燃料と600〜650℃の燃焼用空気が供給される。また、二次燃焼空気供給口3a、3bには、600〜650℃の二次燃焼用空気が供給される。
【0005】
還元鉄製造に際しては、原料供給系のホッパー6a、6b、6cから原料の微粉鉄鉱石、石炭粉末及びバインダを所定の割合でミキサー7に供給し、そこで混合して均一化した後、ペレタイザー8でペレット化し、得られたペレットをドライヤ9で乾燥した後、炉本体1内に供給する。炉本体1内に供給されたペレットは、バーナ2a、2bの燃焼熱とペレット自体から発生する可燃ガス(主にCOガス)の二次燃焼熱による1200〜1450℃の雰囲気下で輻射加熱されることで、ペレット内で還元反応が行われて酸化鉄から金属鉄に還元され、生成した還元鉄は、1000〜1200℃に冷却されて炉外へ排出される、又は、この還元鉄を半溶融させて半溶融銑鉄として取り出される。
【0006】
他方、炉内の排ガスは、排ガス処理系の吸引ファン10の作用により酸化性雰囲気領域1aあるいは還元性雰囲気領域1bに配置された煙道11を介して炉外へ排気されるが、この排ガスは抽出側から煙道11へ流れる排ガスと装入側から煙道11へ流れる排ガスとの混合排ガスであることから、排ガス中の未燃焼ガスを空気で燃焼させた後、煙道11から排出される。この排ガスは、水噴霧により900〜1000℃に降温した後、熱交換器12に入り、空気を600〜650℃に予熱し、排ガス自体は400℃前後に降温した後、排ガス処理設備13に送られ、脱硫、脱塵して煙突14から大気中に放出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のロータリーハース型炉では、排ガスが1400℃以上と極めて高温で熱交換器12の耐熱性の問題からそのまま熱交換器12に直接供給することができないため、別に設けた水噴霧装置で水を煙道11内に噴霧して排ガスを熱交換器の耐熱温度、例えば、900〜1000℃に降温させる必要がある他、熱交換器12を出た排ガスも排ガス処理設備13での脱硫や除塵に適した200℃前後にまで水を噴霧して冷却しなければならないという問題がある。
【0008】
このため、従来のロータリーハース型炉では、排ガスの熱損失が大きく、炉全体の総発熱量の約50%程度しか熱を回収できず、熱効率が著しく低いという問題がある。また、排ガス温度が高いため、水噴霧設備などの排ガス冷却設備が大型化し、更には、排ガス量が増加するため、必然的に熱交換器や排ガス処理設備などの付帯設備が大型化することになり、設備費、運転費、保守点検費など諸費用が著しく増大する。
【0009】
従って、本発明は、ロータリーハース型炉を用いて酸化鉄含有ダストや微粉鉄鉱石などの酸化鉄含有原料から還元鉄を製造するに際して、大気中に放出される排ガスの顕熱を効率良く回収して熱効率を高め、設備費及び運転、保守点検費を低減することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、酸化鉄含有原料を還元して還元鉄を製造するに際して、炉の酸化性雰囲気領域及び/又は還元性雰囲気領域に複数対の給排気手段と当該給排気手段に連通する複数対の蓄熱式熱交換器を設けたロータリーハース型炉を用い、各対の一方の蓄熱式熱交換器を通して炉内高温排ガスを排気して当該蓄熱式熱交換器を蓄熱状態にする一方、当該対の他方の蓄熱式熱交換器を通して前記炉内に炉内可燃性成分を燃焼させる燃焼用空気を供給して当該蓄熱式熱交換器を非蓄熱状態にし、前記各対の蓄熱式熱交換器を蓄熱状態と非蓄熱状態とに所定時間毎に交互に切り換えることにより前記炉内高温排ガスの顕熱で前記燃焼用空気を所定温度に昇温させるようにしたものである。
【0011】
前記給排気手段は、羽口又は前記酸化性雰囲気領域及び/又は還元性雰囲気領域に設ける蓄熱式バーナで構成される。蓄熱式バーナを給排気手段として使用する場合、対の蓄熱式バーナのうち二次燃焼用空気供給手段として機能する蓄熱式バーナには、燃料の燃焼に必要な量の空気と酸化性雰囲気領域及び/又は還元性雰囲気領域で発生する可燃性ガスを燃焼させるのに必要な量の空気とを合わせた量の空気が供給され、他方の排気手段として機能する蓄熱式バーナは、酸化性雰囲気領域及び/又は還元性雰囲気領域から高温排ガスを吸引して非蓄熱状態の蓄熱式熱交換器に供給する。
前記還元性雰囲気領域に複数対の蓄熱式熱交換器を設ける場合、還元性雰囲気領域からの炉内高温排ガスは可燃性成分を含有するため、炉内高温排ガス中に含まれる可燃性成分を空気で燃焼させて酸化性排ガスにして蓄熱式熱交換器に供給するのが望ましい。
【0012】
また、前記炉の熱効率を向上させるため、前記炉の酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域から炉内排ガスを排気すると共に、この排気ガスを空気で希釈降温させた後、ドライヤへ供給するのが好適である。
【0013】
更に、前記炉からの排ガス総量を増加させないため、前記炉の酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域から排出される炉内排ガスを蓄熱式熱交換器を通過した低温排ガスで希釈降温させて燃焼空気予熱用熱交換器に供給するのが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る還元鉄製造用ロータリーハース型炉を示す添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。図中、同一若しくは同等の部材は同じ参照符号を付してある。
【0015】
図1は本発明に係る還元鉄製造用ロータリーハース型炉を示し、この炉は、回転炉床式炉本体1と、これに酸化鉄含有原料を供給する原料供給系と、前記炉の排ガスを処理する排ガス処理系とで構成されている。炉本体1内には、酸化性雰囲気領域(加熱領域)1a、還元性雰囲気領域(還元領域)1b及び冷却領域1cが形成され、前記加熱領域1a及び還元領域1bには円周方向に相互に所定間隔をおいて複数のバーナ2a、2bがそれぞれ配設されている。前記加熱領域1aの各バーナ2aには燃料供給ライン4aと常温空気の燃焼空気供給ライン5が接続され、還元領域1bの各バーナ2bには燃料供給ライン4bと予熱空気の燃焼空気供給ライン35が接続されている。なお、還元領域1bにもバーナを配設したのは、この還元領域1bは加熱処理時に発生する可燃性ガスの不完全燃焼によって還元雰囲気に維持されるが、発生ガスの二次燃焼だけでは還元反応を維持するのに十分な熱量が得られないことから、これを補うためである。
【0016】
前記加熱領域1aには、炉本体1の円周方向に所定間隔を置いて複数対の蓄熱式熱交換器(20a1、20b1)、(20a2、20b2)、・・・・・・(20an、20bn)が羽口と連通して配設され、各蓄熱式熱交換器に収納されたセラミックスその他の耐熱性材料からなる蓄熱媒体を介して対の給排気ダクト(21a1、21b1)、(21a2、21b2)、・・・・・・(21an、21bn)に連通している。各対の給排気ダクト(21an、21bn)は、それぞれ開閉弁V1、V2を介して排ガス排出ライン17に、開閉弁V3、V4を介して空気供給ライン18にそれぞれ接続されている。前記空気供給ライン18にはブロア19が配設されている。
【0017】
前記排ガス排出ライン17は、吸引ファン22を介して排気系主排気ライン23と排ガス希釈系排気ライン24とに分岐され、排気系主排気ライン23は排ガス流量制御弁V5を介して排ガス処理設備13に接続されている。排ガス希釈系排気ライン24は排ガス温度制御弁V6を介して空気予熱用排ガスライン25に接続されている。この排ガス希釈系排気ライン24の低温排ガスは、空気予熱用排ガスライン25の高温排ガスを希釈降温して熱交換器26に供給され、そこで空気を予熱した後、炉内圧力調節弁29を経て排気系主排気ライン23の低温排ガスと混合され、所定温度に希釈昇温して排ガス処理設備13に供給される。
【0018】
乾燥用空気供給ライン31は、流量制御弁V8、V15、混合器32及び吸引ファン33を含み、混合器32には排気ライン30が接続され、煙道11から1200〜1450℃の高温排ガスが温度制御弁V10を介して供給される。煙道11の高温排ガスは。吸引ファン33の作用により混合器32に供給され、そこで流量制御弁V8を介して流入する空気で350〜400℃に希釈降温され、乾燥用空気としてドライヤ9に供給される。なお、この排気ライン30を分岐させて高温排ガスの一部を空気予熱用排ガスライン25を介して熱交換器26に供給しているが、両排気ライン25、30はそれぞれ独立したラインとしても良い。
【0019】
前記空気予熱用熱交換器26ではブロア27からの空気が排ガスとの熱交換により600〜700℃の所定温度にまで予熱され、この予熱空気は、燃焼空気供給ライン35から流量制御弁V9を経て還元領域1bの各バーナ2b及び二次燃焼用空気供給口3bに供給される。原料供給系及び排ガス処理系など他の構成は図4のものと同じであるので図1では省略してある。
【0020】
微粉鉄鉱石と石灰とからの還元鉄製造に際しては、従来と同様にホッパー6a、6b、6cから微粉鉄鉱石、石炭粉末及びバインダを所定割合でそれぞれミキサー7に供給し、そこで混合して均一化した後、ペレタイザー8に供給してペレット化し、このペレットをドライヤ9で乾燥して炉本体1内に供給する。炉本体1内に供給されたペレットは、炉床の回転により反時計方向に搬送され、バーナ2a、2bの燃焼熱とペレット自体から発生する可燃性ガスの二次燃焼熱により1200〜1450℃の雰囲気温度下で輻射加熱されることで、ペレット内で還元反応が行われて酸化鉄が金属鉄に還元され、生成した還元鉄は冷却領域2cで1000〜1200℃の所定温度にまで冷却され、回転炉床がほぼ1回転したところで炉外へ排出される。
【0021】
前記ロータリーハース型炉においては、複数対の蓄熱式熱交換器(20a1、20b1)、(20a2、20b2)、・・・・・・(20an、20bn)が各対の給排気ダクト(21a1、21b1)、(21a2、21b2)、・・・・・・(21an、21bn)及び開閉弁V1、V2、V3、V4によって所定時間毎に切り替え使用されるが、その時の動作を一対の蓄熱式熱交換器(20a1、20b1)を例に挙げて説明する。
【0022】
今、開閉弁V1及びV4が開、V2及びV3が閉の状態にあるとすると、加熱領域1a内の高温酸化性排ガスは、吸引ファン22の作用により対の一方の蓄熱式熱交換器20a1及び排気ダクト21a1を経て炉外へ排出される。この高温酸化性排ガスは、蓄熱式熱交換器20a1を通過する過程でその内部の蓄熱媒体に熱を吸収され、所定の温度(例えば、160〜180℃)にまで降温した後、低温排ガスとなって開閉弁V1を介して排ガス排出ライン17に排気され、吸引ファン10の作用により排ガス処理設備13の方へ直接送られる。また、この低温排ガスの一部は、排ガス希釈系排気ライン24及び流量制御弁V6を経て空気予熱用排ガスライン25の1200〜1450℃の高温排ガスと混合され、これを900〜1000℃の中温排ガスに希釈降温させた後、熱交換器26に供給される。この熱交換器26ではブロア27からの空気を600〜650℃に昇温させ、排ガス自体は400〜500℃に降温し、排気系主排気ライン23の低温排ガスと混合され、排ガス処理設備13に供給される。
【0023】
このとき、対の他方の蓄熱式熱交換器20b1は、その内部の蓄熱媒体が蓄熱状態にあって、開閉弁V4が開で開閉弁V2が閉であるため、ブロア19から送給された空気は、蓄熱式熱交換器20b1を通過する過程で蓄熱媒体から吸熱し、炉内温度に近い温度1100〜1250℃に昇温して加熱領域1aに直接供給される。このため、初期の立ち上がりの段階では、天然ガスや重油等の燃料をバーナ2aで燃焼させて加熱領域1aを加熱する必要があるが、設備全体が所定の温度パターンを確立して定常状態に入った後は、ペレットから発生する可燃性ガス成分の二次燃焼だけで加熱領域1aの温度を維持することができることもあるため、その場合、加熱領域1aでバーナ2aを燃焼し続ける必要はない。従って、定常操業中、燃料供給ライン4aの流量制御弁V12と燃焼空気供給ライン5の流量制御弁V7を閉じてバーナ2aの燃焼を停止させれば良いので、燃料消費量を著しく低減できる。
【0024】
また、前記蓄熱式熱交換器20a1内部の蓄熱媒体は、非蓄熱状態にあって高温排ガスから熱を吸収し、時間の経過と共に昇温し、他方の蓄熱式熱交換器20b1内部の蓄熱媒体は、蓄熱状態にあって空気によって熱を奪われるため時間の経過と共に降温する。蓄熱式熱交換器20a1の吸熱開始(蓄熱式熱交換器20b1では放熱開始)から所定時間(例えば、30〜60秒)経過後、図示しない制御手段により開閉弁V1及びV4が開から閉へ、V2及びV3が閉から開へ切り替えられる。この結果、一方の蓄熱式熱交換器20a1は非蓄熱状態から蓄熱状態に、他方の蓄熱式熱交換器20b1は蓄熱状態から非蓄熱状態に切り替えられ、前述の場合の逆の動作を繰り返す。また、前記動作は他の対の蓄熱式熱交換器でも並行して或いは一定の時差をもって行われる。
【0025】
従って、炉本体1内の加熱領域1aからの高温酸化性排ガスの顕熱は、蓄熱式熱交換器の蓄熱媒体で一旦吸収された後、該蓄熱媒体に吸収された熱が新鮮な空気によって回収され炉内に戻される結果、熱損失は排ガスの蓄熱式熱交換器の出口側温度を低くすれば低くするほど少なくすることができる。この蓄熱式熱交換器出口側の排ガス温度は、蓄熱媒体の熱容量及び非蓄熱状態から蓄熱状態への切替又はその逆の切替の設定時間によって任意に設定できるが、排ガス中のSO3含有量に対応する酸露点以上を確保することが好ましい。
【0026】
他方、炉本体1内の排ガスは、煙道11部で合流し、排ガス中の未燃焼ガスを加熱領域1aの余剰酸素で燃焼させつつ排ガス処理系の吸引ファン10の作用により煙道11を経て炉外へ排気される。
【0027】
前記煙道11を出た1200〜1450℃の高温排ガスは、前述の如く、その一部が排ガス希釈系排気ライン24の低温排ガスと混合されて750〜850℃の中温排ガスに降温した後、熱交換器26に送られ、そこでブロア27からの空気が600〜650℃に予熱され、排ガス自体は400℃前後に降温した後、排気系主排気ライン23の低温排ガスと混合され、排ガス処理設備13の要求する温度にまで降温した後、排ガス処理設備13に送られる。
【0028】
従って、本発明に係る炉では、高温排ガスの顕熱は、その大部分が回収され、一次燃焼用空気及び二次燃焼用空気及びペレット乾燥用空気の加熱用熱として有効利用される。因みに、本発明に係る前記構成の還元鉄製造用ロータリーハース型炉と、約600〜650℃の予熱空気を一次空気及び二次空気として供給する従来の還元鉄製造用ロータリーハース型炉とを用いてそれぞれペレットを加熱した際の温度変化を測定した結果は図2に示す通りである。図中、曲線Aは本発明に係る炉内の加熱領域におけるガス温度の変化を、曲線Bは該加熱領域でのペレットの温度変化を、曲線Cは従来炉内の加熱領域でのペレットの温度変化をそれぞれ示す。
【0029】
図から明らかなように、本発明では加熱領域に蓄熱式熱交換器で約1200℃に加熱して二次燃焼用空気を供給しているため、常温のペレットが1200℃に昇温するまでの加熱時間は約1.15分と、従来の1.5分に比べて約15%短縮している。従って、従来の炉では加熱開始から還元が完全に完了するまでに8〜10分を要していたが、加熱時間が短縮されるため、その分だけ所要時間を3.5〜4.4%短縮できる。
【0030】
前記実施態様では、加熱領域に複数の蓄熱式熱交換器を設けた例について説明したが、還元領域に複数対の蓄熱式熱交換器を設けても良い。この場合、各蓄熱式熱交換器と炉本体との間に後燃焼室を設け、そこに空気を供給してアフターバーンさせた後、蓄熱式熱交換器に高温排ガスを供給するのが望ましい。このようにすると、還元領域からの排ガスに鉄分粉塵が含まれていても、後燃焼室で排ガス中の未燃焼成分が燃焼すると同時に、鉄分粉塵が酸化し蓄熱媒体に溶融付着するのを防止でき、蓄熱媒体が閉塞する恐れはない。また、煙道11からの高温排ガスの一部は、吸引ファン33の作用により混合器32に吸引され、そこで乾燥用空気が直接添加され、ペレットを乾燥するのに適した温度、例えば、380℃にまで希釈降温された後、ドライヤ8に供給してペレットを乾燥させる。ドライヤ8の出口ガスは冷却用空気として冷却領域に供給するのが好ましい。
【0031】
図3は本発明に係る還元鉄製造用ロータリーハース型炉の他の実施態様を示し、給排気手段として羽口を設ける代わりに、蓄熱式熱交換器を一体的に設ける蓄熱式バーナとしたものである。
【0032】
前記加熱領域1A及び還元領域1bには、炉本体1の内外両側壁にそれぞれその円周方向に所定間隔を置いて複数対の蓄熱式バーナ(40A1、40B1)、(40A2、40B2)、・・・・・・(40An、40Bn)が配設されている。各蓄熱式バーナ(40An、40Bn)はそれぞれ一体的に構築された蓄熱式熱交換器(41A1、41B1)、(41A2、41B2)・・・・・・(41An、41Bn)を介して対の給排気ダクト(42A1、42B1)、(42A2、42B2)、・・・・・・(42An、42Bn)に連通している。各対の給排気ダクトは、それぞれ開閉弁(VA1・・・・・・VAn、VC1・・・・・・VCn)を介して排ガス排出ライン17に、開閉弁(VB1・・・・・・VBn、VD1、VD2・・・・・・VDn)を介して空気供給ライン18にそれぞれ接続されている。また、各蓄熱式バーナ(40A1・・・・・・40An、40B1・・・・・・40Bn)は開閉弁(VEA1・・・・・・VEAn、VEB1・・・・・・VEBn)を介して燃料供給ライン4に接続されている。他の構成は図1のものと同じであるので、説明を省略してある。
【0033】
使用に際しては、各対の一方の蓄熱式バーナが蓄熱式熱交換器で熱交換した高温空気で燃焼している間、他方の蓄熱式バーナは炉内の高温排ガスを排出する排気口の役割をし、その高温排ガスの顕熱は当該蓄熱式バーナの蓄熱式熱交換器内部の蓄熱媒体に蓄積される。即ち、A系列のバーナ40A1、40A2、・・・・・・40Anが燃焼中で、B系列のバーナ40B1、40B2・・・・・・40Bnが排気中であると仮定し、一対の蓄熱式バーナ40A1、40B1を例にして説明すると、燃料供給ライン4の開閉弁はVEA1が開、VEB1が閉で、空気供給ライン17の開閉弁はVB1が開、VD1が閉で、排ガス排出ライン17の開閉弁はVA1が閉、VC1が開の状態にある。従って、蓄熱式バーナ40A1には開閉弁VEA1を介して燃料ガスが供給されると共に、開閉弁VB1及び蓄熱式熱交換器41A1を介して空気が供給される。蓄熱式熱交換器41A1に供給された空気は、その内部の蓄熱状態にある蓄熱媒体と熱交換して炉温に近い温度にまで加熱されて供給され、そこで燃料ガスを燃焼させて炉内を加熱する。この時、蓄熱式バーナ40A1に供給される空気量は、燃焼に必要な理論量と炉内で発生する可燃性ガス成分を燃焼させるのに必要な空気量の総和である。
【0034】
この時、前記蓄熱式バーナ40A1と対の他方の蓄熱式バーナ40B1は、吸引ファン22の作用により炉内から高温排ガスを吸引し、この高温排ガスは蓄熱式熱交換器41B1を通過する過程で非蓄熱状態にある蓄熱媒体に熱を奪われ、200℃以下の低温排ガスとなって開閉弁VC1を介して排ガス排出ライン17に排気される。
【0035】
設定時間が経過すると、燃料供給ライン4の開閉弁、空気供給ライン18の開閉弁及び排ガス排出ライン17の開閉弁が切り替えられ、燃焼と排気が切り替えられ、前記動作が行われる。従って、本実施例の場合も、図1の実施態様の場合と同様に、炉本体1内の加熱領域1aからの高温酸化性排ガスの顕熱は、蓄熱式熱交換器の蓄熱媒体で一旦吸収された後、該蓄熱媒体に吸収された熱が新鮮な空気によって回収され炉内に戻される結果、熱損失を著しく低減することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、微粉鉄鉱石や製鉄ダストなどの酸化鉄含有原料から還元鉄を製造するロータリーハース型炉において、前記炉の酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域に複数対の給排気手段を介して複数対の蓄熱式熱交換器を設け、各対の非蓄熱状態の蓄熱式熱交換器を通して前記炉内の高温排ガスを排気する一方、該対の蓄熱状態の蓄熱式熱交換器を通して可燃性雰囲気を燃焼させる空気を炉内に供給することを所定時間毎に交互に切り換える構成としたので、次のような優れた効果が得られる。
【0037】
(1)酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域の高温排ガスの顕熱は蓄熱式熱交換器を通過する際に大部分を蓄熱媒体に吸収され、その熱は蓄熱媒体に供給される空気によって吸収され、1100〜1250℃の高温空気となって炉内に供給されるため、酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域の高温排ガスが持つ顕熱の90%以上を回収でき、また、排出ライン中の排ガスの残存顕熱も排ガス処理設備で有効利用できるので、熱損失を著しく低減することができる。
【0038】
(2)加熱領域に供給される空気は炉内温度とほぼ同じであるので、炉内温度を設定温度に維持するために必要な熱量は加熱時に発生する可燃性ガス成分の燃焼熱だけで補えるため、補助燃料費を著しく削減することができる。
【0039】
(3)蓄熱式熱交換器で約1200℃に加熱して二次燃焼用空気を供給するため、加熱時間の短縮ができる。
【0040】
(4)加熱領域と同様に、還元領域に蓄熱式熱交換器を設け、これを所定時間毎に切替えて使用することにより加熱領域からの熱損失をも低減できる。
【0041】
(5)加熱領域あるいは還元領域から排出される排ガスの一部を前記排気ダクトからの低温排ガスで希釈降温させて燃焼空気予熱用熱交換器の熱源と使用する一方、残余の排ガスに空気を直接混合してペレットドライヤの乾燥用空気として使用しているため、煙道からの排ガスの顕熱をほぼ100%利用にすることができる。
【0042】
(6)煙道からの排ガスの冷却のため従来必要であった水噴霧装置が不要となり、しかも、高温にさらされる機器は乾燥空気供給ラインのブロア(400℃前後)だけであるので、設備の損傷によりリスクを著しく低減することができる。
【0043】
(7)動力を要する機器はブロアや吸引ファンだけであり、設備のランニングコストを著しく低減できる。
【0044】
(8)空気予熱用熱交換器は、蓄熱式熱交換器からの低温排ガスとの混合比を調整することにより煙道からの排ガス温度を適切に設定できるため、高度の耐熱性を要求されず、しかも、排ガス冷却用の水噴霧装置を必要としないので、排ガス総量を増加させることがなく、設備全体を単純化でき、設備費及び保守点検費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す還元鉄製造用ロータリーハース型炉の説明図
【図2】 本発明及び従来例での炉内加熱領域におけるペレットの温度変化を示す図
【図3】 本発明の他の実施形態を示す還元鉄製造用ロータリーハース型炉の説明図
【図4】 従来の還元鉄製造用ロータリーハース型炉の説明図
【符号の説明】
1: 炉本体
1a: 酸化性雰囲気領域(加熱領域)
1b: 還元性雰囲気領域(還元領域)
1c: 冷却領域
11: 煙道
9: ドライヤ
20a1、20a2、20an: 蓄熱式熱交換器
20b1、20b2、20bn: 蓄熱式熱交換器
21a1、21b1: 排気ダクト
23: 排気系主排気ライン
24: 排ガス希釈系排気ライン
25: 空気予熱用排ガスライン
26: 熱交換器
V1、V2、V3、V4:開閉弁
30: 排気ダクト
31: 乾燥用空気供給ライン
32: 混合器
40A1、・・・・・・40An: 蓄熱式バーナ
40B1、・・・・・・40Bn: 蓄熱式バーナ
41A1、・・・・・・41An: 蓄熱式熱交換器
41B1、・・・・・・41Bn: 蓄熱式熱交換器

Claims (4)

  1. 酸化鉄含有原料を還元して還元鉄を製造するに際して、炉の酸化性雰囲気領域及び/又は還元性雰囲気領域に複数対の給排気手段と当該給排気手段に連通する複数対の蓄熱式熱交換器を設けたロータリーハース型炉を用い、各対の一方の蓄熱式熱交換器を通して炉内高温排ガスを排気して当該蓄熱式熱交換器を蓄熱状態にする一方、当該対の他方の蓄熱式熱交換器を通して前記炉内に炉内可燃性成分を燃焼させる燃焼用空気を供給して当該蓄熱式熱交換器を非蓄熱状態にし、前記各対の蓄熱式熱交換器を蓄熱状態と非蓄熱状態とに所定時間毎に交互に切り換えることにより前記炉内高温排ガスの顕熱で前記燃焼用空気を所定温度に昇温させることを特徴とする還元鉄の製造方法。
  2. 前記給排気手段から排出された炉内高温排ガス中に含まれる可燃性成分を空気で燃焼させて酸化性排ガスにした後、前記蓄熱式熱交換器を介して排気することを特徴とする請求項1記載の還元鉄の製造方法。
  3. 前記炉の酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域から排出される炉内排ガスの一部を空気で希釈降温させた後、ドライヤへ供給して酸化鉄含有原料を含んでなるペレットを乾燥させ、当該ペレットを炉に供給することを特徴とする請求項1又は2記載の還元鉄の製造方法。
  4. 前記炉の酸化性雰囲気領域あるいは還元性雰囲気領域から排出される炉内排ガスを前記蓄熱式熱交換器から排出される低温排ガスで希釈降温させた後、空気予熱用熱交換器に供給して空気を所定温度に予熱させ、当該予熱された空気を前記蓄熱式熱交換器を介して前記還元性雰囲気領域に供給することを特徴とする請求項3記載の還元鉄の製造方法。
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