JP3877443B2 - 溶解装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばキュポラを用いた、鋳鉄などの金属のための溶解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
屑鉄などを主鉄源とする鋳鉄溶解装置において、その鋳鉄溶解の手段としては、キュポラ、電気炉、ガス炉などがある。このうち、コークスによるキュポラ溶解は有効な手段である。なぜなら、鋼屑のリサイクルの要請が増加すると見込まれる今後に、コークスが鋳鉄のための加炭材と燃料とを兼ね、また連続大量出湯が容易なためである。さらに、エネルギー源としてのコークス(石炭)は、化石燃料の中では可採埋蔵量も多いためである。
【0003】
図4はキュポラを用いた従来の溶解装置を示す。ここで1は溶解炉であり、その頂部には装入口2が設けられている。この装入口2を利用して、溶解炉1の内部に、鉄源3とコークス4と石灰石などの造滓材5とが投入される。溶解炉1の底部には出湯口6が形成され、それよりも上方にはスラグ排出口7が設けられている。スラグ排出口7よりも上方には羽口部8が設けられている。
【0004】
溶解炉1の頂部における装入口2よりも下側には排ガス吸引部9が設けられ、この排ガス吸引部9には排ガス路10が接続されている。そして排ガス路10には、CO、CO2 、O2 計11と、排ガス燃焼炉12と、送風予熱器13と、排ガス冷却器14と、集塵装置15と、脱硫装置16と、排風機17とが、溶解炉に近い側からこの順で設けられている。排ガス燃焼炉12と送風予熱器13との間における排ガス路10の部分には、冷却用送風機18からの空気が供給されるように構成されている。
【0005】
このような構成において、溶解炉1の操業時には、コークスの燃焼によって発熱が行われるとともに炉内にCO2 が発生する。このCO2 は、炉内の高温燃焼帯において吸熱反応により上部からのコークスと接し、その一部がCOガスに還元され、弱酸性雰囲気となる。これにより、溶湯性状が良好に保たれる。したがって、排ガス路10には溶解炉1からCOとCO2 と微量のO2 とを含むガスが排出される。排ガス燃焼炉12では、このようにして排出されたCOを燃焼させてCO2 を発生させる。このとき、CO、CO2 、O2 計11によってそれらの濃度を検出し、その濃度に応じて、送風機19から燃焼炉12への供給空気量を制御する。
【0006】
このようにして排ガス燃焼炉12から多量のCO2 を含むガスが排出されるが、このガスは、冷却用送風機18から供給される空気によって、送風予熱器13に送り込むのに適した温度に冷却される。送風予熱器13では、送風機20からの空気が熱交換により予熱され、この予熱された空気は、羽口部8に供給されることで溶解炉1のための燃焼用空気として利用される。送風予熱器13から排出されたガスは、排ガス冷却器14に送り込まれ、送風機21からの空気によって熱交換により冷却される。冷却された排ガスは、集塵装置15に送られることで排ガスダスト22が除去され、次に脱硫装置により脱硫が行われたうえで、排風機17によって排出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の溶解装置の熱収支を図3(b)に示す。溶解炉1に供給される熱量の合計を100%として、投入コークス4による熱量が87%、送風予熱器13によって羽口部8への熱風として回収される熱量が11%、その他の熱量が2%となっている。そして、この100%の供給熱量のうち、42%が鉄の昇温、溶解に伴って溶湯に移行し、10%がスラグ、冷却水、周囲環境への移行による損失となる。そして残りの48%が排ガスに移行し、その48%のうちの11%が上述のように送風予熱により回収され、残りの、48%のうちの37%に相当する部分が排出されている。この37%のうちの幾分かは、上述のように排ガス冷却器14によって回収されている。
【0008】
しかしながら、このような回収には高価な設備を要し、その割にはエネルギー変換ロスが存在して、有効回収率に限界があるという問題点を有する。
【0009】
また、上述のように排ガス燃焼炉12から多量のCO2 を含むガスが排出されるため、溶解量当たりのCO2 排出量を比較すると、電気炉が60kg/ton相当、天然ガス炉が45kg/tonであるのに比して、キュポラでは106kg/tonと汚染度が大である。
【0010】
さらに、溶解炉1は溶解速度に見合った炉径を必要とし、炉1の断面各部で材料が均等に溶け落ちることが必要条件となる。この場合に、コークスの燃焼に必要なO2 ガスのみを吹き込んで供給したのでは、ガスの量が不足して、炉1の内部に分散投入された鉄源とコークスとに行き亘らず、均一な燃焼と溶解とができない。そこで、従来においては、O2 がN2 によって希釈された状態となっている空気を炉1の内部に吹き込むことによって、炉内の熱分散を確保している。しかし、このような従来の構成では、O2 の富化率に限界がある。
【0011】
また、このようにO2 の供給のために常時新たな空気を用いたのでは、この空気の約8割を占めるN2 は、上述のO2 の希釈作用を果たすものの、CO2 とともに上述のように投入熱量の37%を持ち出してしまい、さらにNOxを発生させ、しかもその対策のためのガス処理系統の大型化や動力の増加を招くという問題点もある。
【0012】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、エネルギーロスの削減を図るとともに、系外への排出ガス量を低減させ、しかも、O2 の希釈作用を確保したうえで、排出ガスの処理系統を小型化できるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、屑鉄などの金属材料を溶解させるための溶解炉からの排ガス中のCO分を燃焼させる燃焼炉と、この燃焼炉からの燃焼ガスであって前記CO分の燃焼にもとづく多量のCO 2 を含むことにより酸化性が高くなった燃焼ガスの大部分をO2 ガスとともに前記溶解炉へ供給する手段とを有するようにしたものである。
【0015】
このような構成であると、溶解炉からの排ガスにおけるCO分を燃焼させたのち、前記溶解炉に再循環させて、新たに必要なO2 分のみを補充することになるため、CO、CO2 、O2 が熱量を保有したまま循環し、これらの顕熱とCO分の燃焼熱とがともに溶解炉内に直接に還元され、したがってエネルギーロスが大幅に削減されるとともに、系外への排出ガス量が低減され、しかも排出ガスの処理系統が小型化されることになる。また、排ガスにおけるCO分を燃焼させたのちのガスを、O2 ガスとともに溶解炉へ供給するため、これらの排ガスにおけるCO分を燃焼させたのちのガスによって希釈されたO2 ガスを溶解炉内に供給することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の溶解装置を、図面にもとづき、図6に示した部材と同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の溶解装置の概略構成を示す。ここでは、図6における送風予熱器13は設けられておらず、その代わりに、排ガス燃焼炉12からの燃焼ガスの大部分を、送風機31によって溶解炉1の羽口部8へ供給するための燃焼ガス供給路32が設けられている。排ガス路10は、供給路32へ送られなかった残部のガスを排ガス冷却器14へ供給するように構成されている。冷却用送風機18からの空気は、排ガス路10における、供給路32の分岐部と排ガス冷却器14との間の部分に供給される。羽口部8には、95%以上に純度を高めたO2 ガスの供給路33が接続されている。
【0018】
このような構成であると、排ガス燃焼炉12におけるCOの燃焼により多量のCO2 を含む状態となった高温の燃焼ガスの大部分は、送風機31の作用により供給路32を介して羽口部8より溶解炉1の内部に加圧状態で吹き込まれる。また溶解炉1の内部には、供給路33から羽口部8を通って、純度を高めたO2 ガスが、上記の燃焼ガスとともに加圧状態で吹き込まれる。
【0019】
すると、燃焼炉12からの熱量を保有したガスが溶解炉1に循環されることになり、このガスの顕熱と燃焼炉12でのCO分の燃焼熱とが溶解炉1に直接還元されることになって、エネルギーロスが大幅に低減されることになる。
【0020】
図3(a)は、図1の溶解装置の熱収支を示す。溶解炉1に供給される熱量の合計を100%とすると、同図(b)の場合と同様に、そのうちの42%が溶湯の加熱に用いられ、10%が損失となり、また48%が排ガスに移行する。しかし、排ガスに移行した48%のうちの43%が、上述のように溶解炉1に還元され、系外への熱の排出は48%のうちのわずか5%しか発生しないことになる。このため、図4の従来装置においては排ガスを本発明のように還元させずに系外に排出していたことに伴うエネルギーロスを、大幅に削減できることになる。
【0021】
このため、溶解炉1に供給される熱量の合計を100%として、そのうちの43%を、このように再循環される排ガスによってまかなうことができる。その結果、投入コークスによる熱量を100%のうちの55%まで低減することができる。これは、図3(b)の従来のものでは100%のうちの87%をコークスにより供給していたのに比べ、この従来のコークス投入量を100として、63まで低減させて燃料を節約することが可能であることを意味する。
【0022】
また、系外への排出ガス量は、系外への排出熱量に比例するが、図3(b)の従来のものでは全熱量の37%が排出されていたのに対し、図3(a)の本発明のものでは、全熱量の5%しか排出されず、これは従来の排出量の約13%にしかならない。すなわち、系外に排出される排ガスの量は、新たに補給されるコークスの燃焼ガス相当量のみにしかならない。このため、集塵、脱硝、脱硫などの処理のための設備を小型化でき、そのため資源を節減することができる。
【0023】
また、排ガス中のダストも、除塵することなく供給路32を介して溶解炉1に還元されるため、炉内でスラグに転化されて再利用に供されることになり、したがって別個の処理を施す必要が無くなるなどの利点がある。
【0024】
しかも、供給路32によって溶解炉1へ循環させるガスとともに、純度を高めたO2 ガスを、供給路33によって溶解炉1に供給するため、コークスの燃焼に必要なO2 ガスのみを炉内に供給して、循環ガスにより均等に希釈すなわち分散させることができる。したがって、この際に空気すなわちN2 ガスが炉内に導入されないようにすることができ、このためNOxの発生を防止できることになる。
【0025】
溶解炉1から排出されて、排ガス路10により排ガス燃焼炉12に送られる排ガスは、CO、CO2 、O2 計11によって、その濃度が測定される。そして、この測定された濃度と、純度を高めたO2 ガスとともに溶解炉へ循環されるガスの量とにもとづいて、溶解炉1に供給される燃料すなわちコークス4の量が決められる。また、供給路33から溶解炉1に供給される純度を高めたO2 ガスの量は、CO、CO2 、O2 計11によって測定されるCOとCO2 との濃度比がCO/CO2 =1.2〜1.8となるように設定される。この濃度比が1.2を下回ると、炉内が酸化性雰囲気となって、溶湯が酸化しやすくなる。また濃度比が1.8を上回ると、炉内でCO2 がCOに変化する反応が強く起こることになる。
【0026】
すなわち、溶解炉1の内部の反応系を所定の状態に維持して、正常な出湯を得るには、投入熱量、ガス速度、炉内雰囲気すなわち酸化・還元度をそれぞれ適正にコントロールする必要がある。
【0027】
溶解炉1の操業立ち上げ時には、上述のような本格的な排ガスの循環はなく、空気送風のみが行われる。そして、炉内の燃焼により、溶解炉1の炉頂における排ガスの量は、送風量の約113%となる。このため、系外への排出熱ロスは約5%のみとなる。さらに、このうちの余剰分の13%の排ガスが排出されて他の部分が繰り返し使用され、またその後はコークス4とO2 ガスのみが炉内に供給されることになるので、操業開始当初に溶解炉1内に存在していたN2 ガスは速やかに減少し、排ガスの組成はCO2 とCOとが大部分を占めるようになる。両者の比率は、上述のように溶解炉1の内部のガスの還元性雰囲気を維持するために、供給されるO2 の比率によって制御される。
【0028】
図2は、溶解炉1の炉頂部における装入口2の構成を示す。この装入口2には、上下二段の可動式の仕切り34、35が交互に開閉するように設けられ、これらの仕切り34、35は、それぞれ水平方向に作動することによって開閉を行うように構成されている。また上下の仕切り34、35の間は、鉄源3やコークス4や造滓材5からなる原材料の1回の装入分を収容可能な容量を有するように構成されている。
【0029】
上側の仕切り34よりも上方には原材料バッグ36が設けられ、また装入口2には、上下の仕切り34、35の間の空間に連通する集塵装置37が設けられている。
【0030】
このようなものであると、公知の溶解炉のように炉頂部の装入口を大気に開放して、炉内への吸引流を発生させただけのものに比べ、上下の仕切り34、35を交互に開閉することにより、原材料の装入時を含めて溶解炉1の炉頂部が常時閉止されることになる。したがってN2 を含む外気を炉内に吸引したり、炉内からのガスの吹き出しが生じたりすることを、確実に防止できる。
【0035】
次に、本発明の他の実施の形態の溶解装置について説明する。この装置では、溶解炉1から排ガス燃焼炉12までの構成は図1のものと同じであるが、排ガス路10に沿った排ガス燃焼炉12よりも後流側の構成が相違する。
【0036】
すなわち、排ガス路10に沿って、排ガス燃焼炉12よりも後流側には、耐熱型の濾過集塵機と、脱硝装置と、排ガス冷却器14と、CO 2 分離回収装置と、脱硫装置16と、排風機17とが、この順序で設けられる
【0037】
このような構成であると、排ガスにおける溶解炉1側へ供給されない部分は、含有する未燃COガスが燃焼炉12で燃焼され、耐熱型の集塵機によってダストの集塵が行われた後に、脱硝装置によって500℃以上の高温で処理され、次いで排ガス冷却器14によって排熱の回収が行われる。そして、その状態のガスの成分の大部分を占めるCO2 分離回収装置によって回収され、高濃度CO2 ガスまたは液化CO2 ガスとして製品化される。そのうえで、残りの少量の排ガスについて、脱硫装置16によって脱硫処理が行われ、排風機17によって外部に排出される。これにより、省エネルギーと、CO2 排出の極少化と、脱硫による無害化とが同時に実現されることになる。
【0038】
したがって、排ガスをCO2 分離用原料ガスであるとすると、従来はその21%しかCO2 が存在しないが、上述の本発明の装置によると排ガスの99%がCO2 になる。このため、回収、分離コストにすぐれたシステムを構築することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、溶解炉からの排ガスにおけるCO分を燃焼させたのち、前記溶解炉に再循環させて、新たに必要なO2 分のみを補充することになるため、CO、CO2 、O2 が熱量を保有したまま循環し、これらの顕熱とCO分の燃焼熱ともに溶解炉内に直接に還元でき、したがってエネルギーロスを大幅に削減できるとともに、系外への排出ガス量を低減でき、しかも排出ガスの処理系統を小型化できることになる。また、排ガスにおけるCO分を燃焼させたのちのガスを、O2 ガスとともに溶解炉へ供給するため、これらの排ガスにおけるCO分を燃焼させたのちのガスによって希釈されたO2 ガスを溶解炉内に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の溶解装置の概略構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施の形態の溶解装置における溶解炉の炉頂の部分の概略構成を示す図である。
【図3】 本発明の実施の形態の溶解装置と従来の溶解装置との熱収支を対比して示す図である。
【図4】 従来の溶解装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 溶解炉
10 排ガス路
11 CO、CO2 、O2
12 排ガス燃焼炉
31 送風機
32 燃焼ガス供給路
33 O2 ガスの供給路

Claims (5)

  1. 屑鉄などの金属材料を溶解させるための溶解炉からの排ガス中のCO分を燃焼させる燃焼炉と、この燃焼炉からの燃焼ガスであって前記CO分の燃焼にもとづく多量のCO 2 を含むことにより酸化性が高くなった燃焼ガスの大部分をO2 ガスとともに前記溶解炉へ供給する手段とを有することを特徴とする溶解装置。
  2. 溶解炉からの排ガス中のCOとCO2 とO2 との濃度を測定する手段を有し、この濃度測定手段によって測定された濃度と、O2 ガスとともに溶解炉へ供給されるガスの量とにもとづいて、溶解炉に供給される燃料の量を決めるように構成され、かつ前記濃度測定手段によって測定される排ガス中のCOとCO2 との濃度比がCO/CO2 =1.2〜1.8となるように、溶解炉へ供給されるO2 ガスの量を決めるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の溶解装置。
  3. 排ガス中のダストも除塵することなく溶解炉へ供給するように構成されていることを特徴とする請求項1または2項記載の溶解装置。
  4. 燃焼炉からの燃焼ガスであって溶解炉へ供給しない分の燃焼ガス中のダストを除塵する手段と、除塵後のガスを脱硝処理する手段と、脱硝処理されたガス中のCO2 を分離回収する手段と、残りの排ガスについて脱硫処理を施す手段とを有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の溶解装置。
  5. 溶解炉の頂部に原材料の装入口を設け、この装入口に交互に開閉する上下二段の可動式仕切りを設けて、前記溶解炉の頂部が常時閉止されているように構成したことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の溶解装置。
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