JP3795869B2 - 光モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信や光伝送技術及び光情報記録技術に用いられる光モジュールに係わり、特に光半導体素子と光伝送路とを結合するための光モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光通信や光伝送及び光情報記録技術などにおいては、光を搬送波として強度変調や位相変調などによって信号を伝送することが広く用いられるようになっている。このような光伝送のためには、発光素子や受光素子などの光半導体素子と光ファイバなどの光伝送路とを光学的に結合するための光結合装置が必要となる。
【0003】
この種の装置において、扱う光信号が高速化するにつれ、発光素子や受光素子の電気的な寄生容量が無視できなくなり、素子の活性層或いは受光領域の寸法が小さくなっている。例えば、GaAs系のpin型フォトダイオードの受光面の直径は、10GHz以上の応答を得るために40〜50μm程度まで微小化してきている。そのため、マルチモード光ファイバからの出力光を受光素子に入力する際には、ビームの広がりなどから光結合効率の低下が起こり、耐雑音特性が劣化し伝送距離を稼げないといった問題が出てくる。
【0004】
また、光半導体素子と光ファイバとの相対位置のトレランスを大きく取るためにも光路中にレンズを挿入することが必要になってくる。しかし、レンズを挿入することで部品点数が増えて益々位置合わせが困難となり、実装コストが上昇する傾向にあるという問題がある。
【0005】
そこで、部品の集積化やセルフアライン技術といった技術で実装コストの低減をはかる技術が盛んに研究開発されている。例えば、光ファイバと発光素子或いは受光素子との光結合技術として、以下のような例がある。
【0006】
第1の例として、光ファイバから入射した光を半導体レンズ或いは平板マイクロレンズに入射させ、反射面で光路を変えて下方に向かって出射させ、受光素子の受光領域に入射させる受光モジュールがある。しかし、この構成では、光ファイバ,レンズ,受光素子をそれぞれ位置決め固定する必要があり、実装コストが上昇するという問題がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
第2の例として、シリコン基板上に形成されたV溝に固定された光ファイバに光を入射し、シリコン基板に形成された斜面によって反射された光を受光素子に入射する光結合部材がある。受光素子の素子底面はレンズを有しており、光ビームは集光されて光吸収領域に入射する。受光素子は、シリコン基板に形成されたパッドにフリップチップ実装されるため、光ファイバ,反射面,受光素子の位置はセルフアラインで決定され、実装コストは低くなる。
【0008】
しかし、この構成では、集光のためのレンズを受光素子底面に集積化した構造であり、受光素子の厚さとレンズの曲率を設計に合わせて調節する必要があるため、作製にコストがかかる。さらに、レンズの曲率を小さくして圧肉レンズの形成が困難であるため、十分なビームの屈折を得ることが難しい。そのため、集光の効率は低くなりやすい。また、受光素子の表面に受光部や電極、裏面にレンズがあるため、素子の取り扱いに特別の注意が必要となり、結局実装のコストが下がりにくいといった問題がある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
第3の例として、半導体レーザチップから出射した光をブロックに形成された凹型立ち上げミラーにより反射・集光させて外部に絞られた光ビームとして出力するレーザ発光装置がある。この構成では、凹型立ち上げミラーをレーザビームの長径方向にのみ形成することで、ビームの非点隔差を補正することが可能となっている。しかし、この構成では、ビームの集光のために凹部曲率を大きく取る必要があるが、凹部を切削など機械加工で作製した場合には形状の制御と位置精度の確保が困難である。また、化学的にエッチングなどで加工する場合には、エッチングの精密な制御と長い工程時間が必要となり、いずれの場合にもコストが上昇するという問題がある(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
第4の例として、ミラー上に半球状レンズを一体化することで薄型の光モジュールを実現した光モジュールがある。この場合、ミラーと半球状レンズを一体化させたことにより部品点数が少なくなり取り扱い性が向上するとともに、通常の別部品で構成する場合と同様にレンズでの屈折を2回利用することが出来るので十分な集光の効果を得ることが出来る。しかしながら、この構成では、パッケージ筐体にミラー一体型レンズをアセンブリしているため、光軸調整などはパッケージ部材およびアセンブリの精度に依存し、光素子の活性領域の有効径が小さくなり、トレランスが小さくなってくるとパッケージ部材やアセンブリに高い精度が要求され、コストが上昇し高速動作が困難に成ってくるという問題がある(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−273444号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平6−275870号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平11−214797号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2002−243990号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来、光伝送路と光半導体素子の光結合効率を上げるためにレンズ体を光路に挿入すると、部品のコストが高くなると共に、高い実装精度が要求されることになり、全体としてコストが上昇するという問題があった。
【0016】
本発明は、上記事情を考慮して成されたもので、その目的とするところは、光伝送路と光半導体素子との間にレンズを挿入して結合効率を高めることができ、かつ光伝送路と光半導体素子との位置決めが容易で、低コストで製造可能な光モジュールを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
(構成)
上記課題を解決するために本発明は、次のような構成を採用している。
【0018】
即ち本発明は、光モジュールにおいて、表面側に段差部を有し、この段差部に斜面が形成された基板と、前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、前記半球状レンズの底面と前記斜面との境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、前記基板の一部に設けられ、前記反射鏡に対して斜め方向から光を照射、又は前記反射鏡からの反射光が入射される光半導体素子と、を具備してなり、前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、光モジュールにおいて、表面側に段差部を有し、この段差部に斜面が形成された基板と、前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、前記半球状レンズの底面と前記斜面の境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、前記基板の一部に設けられ、光路方向が基板表面と平行方向に規定され、光路の延長方向に前記反射鏡が位置するように配置された光伝送路と、を具備してなり、前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、第1の面とこれよりも高さが低い第2の面との間に斜面を有する基板と、前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、前記半球状レンズの底面と前記斜面の境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、前記基板の第2の面に設けられ、光路方向が基板表面と平行方向に規定され、光路の延長方向に前記反射鏡が位置するように配置された光伝送路と、前記基板の第1の面に設けられ、光の出射方向又は入射方向が基板表面と垂直方向に規定され、前記反射鏡に対して斜め方向から光を照射、又は前記反射鏡からの反射光が入射される光半導体素子と、を具備してなる光モジュールであって、前記反射鏡による光路の変換により、前記光半導体素子と光伝送路が光結合されておりなり、前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする。
【0021】
ここで、本発明の望ましい実施態様としては次のものが挙げられる。
【0022】
(1) 反射鏡の反射率が波長依存性又は偏波依存性を持つこと。
【0023】
(2) 基板がシリコンからなり、斜面が前記基板の(111)面から成ること。
【0024】
(3) 光伝送路は光ファイバであり、基板に設けられたV溝に位置決め保持されていること。
【0025】
(4) 光半導体素子や光伝送路の数に応じて、半球状レンズ及び反射鏡は複数個設けられていること。
【0026】
(作用)
本発明によれば、半球状レンズの位置はあらかじめ形成された窪みにより位置決め可能であり、各部品のアセンブリ位置を半導体プロセスを用いた基板を基準にアセンブリすることが可能なため、各部品の光素子あるいは光伝送路とレンズおよび反射鏡の相対位置は無調整で高い精度での位置決めが可能である。ここで、半球状レンズの場合、光はレンズ界面を2回通ることになりレンズ効果が大となる。従って、十分大きな集束効果が得られる。
【0027】
また、凹レンズに対して半球状レンズは、複雑な機械加工やエッチングを要することなく、表面張力等を利用して簡易に作製可能であるため、部品コストの上昇を抑えることができる。さらに、半球状レンズや反射鏡の位置はあらかじめ形成された窪みにより決めることができ、光結合のための位置決めが容易となる。従って、製造コストの低減をはかることが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる光モジュール(光半導体装置)の概略構成を説明するためのもので、(a)は断面図、(b)は部分斜視図である。
【0030】
図中の10はSi基板であり、この基板10の表面側は一部除去されて凹部が形成されている。基板10の最上面(第1の面)11と凹部底面(第2の面)12との間の段差部には45°傾斜の斜面13が形成されている。凹部底面12には、基板表面と平行で段差部と直交する方向に複数本のV溝15が形成されている。ここで、凹部,段差部の斜面13及びV溝15などは、異方性エッチングにより形成することができる。例えば、KOH等を用いた異方性エッチングなどにより、斜面13及びV溝15を簡易に形成することができる。
【0031】
V溝15には、光ファイバ(光伝送路)20が位置決め固定されている。斜面13には、光ファイバ20の光軸上に相当する位置に窪み18が設けられ、この窪み18内に反射鏡30が形成されている。そして、反射鏡30を覆うように半球状レンズ40が形成されている。即ち、半球状レンズ40の底面と斜面13(窪み18の底面)との境界面に反射鏡30が形成されている。ここで、半球状レンズ40の底部の大きさは反射鏡30よりも大きくしたが、半球状レンズ40の底部の大きさを反射鏡30と同じにしてもよい。さらに、半球状レンズ40の底部の大きさを反射鏡30よりも小さくし、半球状レンズ40を反射鏡30上のみに形成するようにしてもよい。
【0032】
なお、V溝15が複数本設けられて、各々の溝内にそれぞれ光ファイバ20が固定されている場合、反射鏡30及び半球状レンズ40も光ファイバ20の数に合わせて複数個設けられている。
【0033】
窪み18は、斜面13を異方性エッチングにより形成後、再度、所望の位置のみシリコンが露出するようにマスク材(酸化膜や窒化膜など)に窓を開けて、再度KOHなどにより異方性エッチングを施すことで形成される。この窪み18は、半球状レンズ40が形成される際の表面張力によってレンズ40の位置決めをする目的で付加されている。窪み18によって位置決めを行うことで、一括プロセスでの作製を可能とする構造である。
【0034】
また、図中の50はフォトダイオードなどの表面入射型の受光素子であり、この受光素子50は、基板10の最上面11上に形成されたパッド16にフリップチップ実装されている。受光素子50の受光領域51は下向きとなっており、反射鏡30の上方に位置するようになっている。
【0035】
光ファイバ20を伝播してきた光は、その端面で放射され光ファイバ20の導波路屈折率分布によって決まる放射角で放射される。放射された光ビームは半球状レンズ40の表面で屈折して集光され反射鏡30で反射される。反射鏡30で反射された光ビームは再び半球状レンズ40の表面で屈折して集光され上方へ向かい、受光素子50の表面に形成された受光領域51に入射される。半球状レンズ40は、斜面上に表面張力等により形成することができるので、ほぼ球面をなしており曲率半径を小さくすることが可能である。
【0036】
図2に、半球状レンズ40の作成方法の概略の一例を示す。この図では、基板10の斜面13の一部のみを示し、更に斜面13を水平方向に仮想的に配置している。
【0037】
図2(a)に示すように、窪み18の底部には予め反射鏡30が形成されている。まず、窪み18内に盛り上げる形で固化前の樹脂41をインクジェットの手法などにより所定量ディスペンスする。図で45はノズルである。
【0038】
次いで、図2(b)に示すように、窪み18内に設けられた樹脂41を加熱することで、表面張力によって半球状に整形する。つまり、窪み18により材料の流れ出しを防止すると共に、斜面平坦部と窪み18の縁との間の表面張力の差により、キュアする際に位置決めがなされる。また、この構造によれば樹脂41の流動性が高い場合にも適用可能であるため、より材料の選択の幅を広げることが可能となる。
【0039】
この方法では、位置決めはフォトリソグラフィを用いて規定できるため、高い精度で所望の位置にパターンを作ることが可能であり、更に一括して製造可能であるため低コストで作製可能である。また、反射鏡30を半球状レンズ40の底面に形成することにより、レンズ表面で2回屈折されるため、ほぼ球レンズと同等のレンズ効果を得ることが可能である。
【0040】
また、受光素子50は、基板10に形成されたパッド16にフリップチップ実装可能であるため、セルフアライン効果で無調整実装が可能であると共に、光ファイバ20を基板10に形成したV溝15に固定することによって、光軸に垂直な面内での位置を無調整で位置決めが可能である。さらに、半球状レンズ40の位置はあらかじめ形成された窪みより位置決め可能なため、各部品の相対位置は無調整で高い精度での位置決めが可能である。また、反射鏡30を用いることで受光素子50が面実装可能であるため、外部に置かれる駆動用LSIや実装ボードへの実装と親和性が高い構造となっている。
【0041】
従って、無調整で部品実装可能であり、かつ高い倍率での屈折を得られるレンズを搭載可能な光モジュールが実現できる。高速応答可能とするため、受光素子の受光面積が小さい場合でも高い結合効率が得られ、耐雑音特性に優れた装置を低コストに実現できる。
【0042】
以上の光モジュールは以下のようにして実現可能である。シリコンから成る基板10を酸化膜や窒化膜をマスクとして、KOHなどで異方性エッチングすることにより、斜面13を形成する。このとき、斜面13はエッチング速度の遅い面が選択的に表出する。例えば、基板主面を(100)面から9.7°オフした基板を用いることによって、斜面の(111)面を主面に対して45°の角度に設定することが可能となる。その後、斜面13の所望の位置のみを再度KOHなどで異方性エッチングすることにより窪み18を形成する。
【0043】
続いて、同様にして光ファイバ20搭載用のV溝15を形成した後、表面を酸化膜等の絶縁膜を形成し、通常のフォトリソグラフィを用いたエッチング法やリフトオフ法、或いはメッキ法によって、受光素子搭載用のパッド16や半田バンプ等を形成する。続いて、斜面の所定の位置にリフトオフ法などでAuなどの反射鏡30を形成する。この際、パッド16の形成と反射鏡30の形成を同時に行っても良い。
【0044】
その後、前記図2に示した方法で半球状レンズ40を形成する。受光素子50をフリップチップ実装した後、光ファイバ30をV溝15等に接着剤などで搭載して完成する。この際、受光素子50の実装時の熱履歴は、レンズ40の固定温度以下に設定しておく必要がある。例えば、ポリイミドの場合、キュア温度は約300℃〜400℃であるため、通常の鉛スズ共晶半田や、スズ−Ag系の鉛フリー半田で実装可能である。
【0045】
このように本実施形態によれば、基板10上に光ファイバ20と受光素子50を搭載し、これらの間で良好な光結合を有する光モジュールを実現することができる。そしてこの場合は、受光素子50、半球状レンズ40、反射鏡30、光ファイバ20を無調整で位置決め可能であり、光ファイバ20から受光素子への光結合効率が高く、かつ低コストで製造可能であるという効果がある。また、基板10としてシリコンを用いているため、通常の半導体プロセスを用いてウェハ状態での電極形成や反射鏡、窪み、V溝の形成などを行うことができる。
【0046】
また、反射鏡30を誘電体多層膜等で構成することにより偏波フィルタ機能や波長フィルタ機能を付加することも可能である。これにより、特定の波長のみ受光することが可能であり、WDM用途に適用することも可能である。WDMのように、多くの波長に対応させるために多くの受光素子を必要とするような場合には、レンズの位置合わせが不要である本発明の効果がより一層際立ち、低コスト化に多大な効果が発揮される。
【0047】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係わる光モジュールの概略構成を示す断面図である。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0048】
基板10の形状や反射鏡30及び半球状レンズ40の配置位置は第1の実施形態とほぼ同様である。但し、基板10の最上面11には受光素子50は配置されていない。また、基板10の凹部底面12にはV溝15は形成されておらず、この部分には光ファイバ20ではなく、端面出射型の半導体レーザ60が半田などで接着固定されている。
【0049】
このような構成であれば、基板表面に設置された端面出射型の半導体レーザ60からのレーザ光を、反射鏡30により光路変換して基板表面と垂直方向に取り出すことができ、更に半球状レンズ40により光ビームを集束することができる。これにより、無調整で相対位置精度の高いレンズ付小型の面型光源を低いコストで得ることが可能となる。
【0050】
上述した実施形態ではレンズ位置決め用の窪みを、エッチングにより斜面をさらに掘ることにより形成しているが、斜面上にメタルなどで土手を形成して土手の内側を等価的に窪みとする構造も可能である。
【0051】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係わる光モジュールの概略構成を示す断面図である。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0052】
窪み18は、周辺に設けられた厚膜のメタルや選択エピタキシャル成長により形成された土手18−1に囲まれた内部にある。これにより、異方性エッチングを1回のみ行って反射鏡用斜面の形成が可能になるため、複数回エッチングすることにより形成する場合に比して、プロセスの制御が簡単になり、また、エッチング工程や基板の洗浄工程中に混入する汚染物質等によるエッチング面荒れの影響を少なくすることができ、反射鏡の品質を高くすることが容易になるという効果がある。
このような構成は、次のようにして実現される。シリコンから成る基板10を酸化膜や窒化膜をマスクとして、KOHなどで異方性エッチングすることにより、斜面13を形成する。このとき、斜面13はエッチング速度の遅い面が選択的に表出する。例えば、基板主面を(100)面から9.7°オフした基板を用いることによって、斜面の(111)面を主面に対して45°の角度に設定することが可能となる。
【0053】
続いて、熱酸化膜などを全面に形成後、土手18−1に相当する位置の酸化膜をパターニングして、エピタキシャルによりシリコンを成長させる。このとき、再成長部は、土手として機能すればよいので、成長面精度等は、厳密には要求しない。
【0054】
続いて、斜面13の形成と同様にして光ファイバ20搭載用のV溝15を形成した後、表面を酸化膜等の絶縁膜を形成し、通常のフォトリソグラフィを用いたエッチング法やリフトオフ法、或いはメッキ法によって、受光素子搭載用のパッド16や半田バンプ等を形成する。続いて、斜面の所定の位置にリフトオフ法などでAuなどの反射鏡30を形成する。この際、パッド16の形成と反射鏡30の形成を同時に行っても良い。
【0055】
なお、土手18−1を再成長シリコンの代わりに厚膜のメタルで形成することも可能である。この場合、上述の手順で電極及び反射鏡を形成後に同様に、メッキやリフトオフ法により所望の位置にリング状に土手を形成する。
【0056】
その後、前記図2に示した方法で半球状レンズ40を形成する。受光素子50をフリップチップ実装した後、光ファイバ30をV溝15等に接着剤などで搭載して完成する。この際、受光素子50の実装時の熱履歴は、レンズ40の固定温度以下に設定しておく必要がある。例えば、ポリイミドの場合、キュア温度は約300℃〜400℃であるため、通常の鉛スズ共晶半田や、スズ−Ag系の鉛フリー半田で実装可能である。
【0057】
このように本実施形態によれば、基板10上に光ファイバ20と受光素子50を搭載し、これらの間で良好な光結合を有する光モジュールを実現することができる。そしてこの場合は、受光素子50、半球状レンズ40、反射鏡30、光ファイバ20を無調整で位置決め可能であり、光ファイバ20から受光素子への光結合効率が高く、かつ低コストで製造可能であるという効果がある。また、基板10としてシリコンを用いているため、通常の半導体プロセスを用いてウェハ状態での電極形成や反射鏡、窪み、V溝の形成などを行うことができる。
【0058】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、基板材料をシリコンとしているが、これに限定されるものではない。基板材料として、例えばセラミックを用いた場合には、プロセスはやや複雑化するもの、材料が絶縁物であるため、絶縁膜の形成の必要がないことや、誘電率を自由に変えられることにより電極の電気特性を改善することも可能である。また、ガラス基板を用いた場合、材料コストが安くできるなど他の材料でも実現可能な構造である。
【0059】
また、前記図1の構成において、光半導体素子を除去し、基板10上に光ファイバ20のみを搭載した構成に適用することも可能である。また、光伝送路としては、必ずしも光ファイバに限るものではなく、光を特定方向に伝送できる構成であればよい。例えば、基板の第2の面に薄膜積層型の導波路を作り付けるようにしても良い。
【0060】
また、基板に形成する斜面は必ずしも45°傾斜に限るものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。同様に、半球状レンズの曲率(半径)等も、仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、光半導体素子、レンズ、反射鏡、光伝送路を無調整で位置決め可能であり、光伝送路から受光素子へ、或いは発光素子から光伝送路への光結合効率が高く、かつ低コストで製造可能であるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる光モジュールの概略構成を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に用いたレンズの製造工程を示す断面図。
【図3】第2の実施形態に係わる光モジュールの概略構成を示す断面図。
【図4】第3の実施形態に係わる光モジュールの概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
10…基板
11…基板最上面(第1の面)
12…凹部底面(第2の面)
13…斜面
15…V溝
16…パッド
18…窪み
20…光ファイバ(光伝送路)
30…反射鏡
40…半球状レンズ
41…樹脂
42…マスク
45…ノズル
50…受光素子(光半導体素子)
51…受光面
60…半導体レーザ(光半導体素子)
Claims (5)
- 表面側に段差部を有し、この段差部に斜面が形成された基板と、
前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、
前記半球状レンズの底面と前記斜面との境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、
前記基板の一部に設けられ、前記反射鏡に対して斜め方向から光を照射、又は前記反射鏡からの反射光が入射される光半導体素子と、
を具備してなり、
前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする光モジュール。 - 表面側に段差部を有し、この段差部に斜面が形成された基板と、
前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、
前記半球状レンズの底面と前記斜面との境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、
前記基板の一部に設けられ、光路方向が基板表面と平行方向に規定され、光路の延長方向に前記反射鏡が位置するように配置された光伝送路と、
を具備してなり、
前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする光モジュール。 - 第1の面とこれよりも高さが低い第2の面との間に斜面を有する第1の基板と、
前記斜面の一部に形成された半球状レンズと、
前記半球状レンズの底面と前記斜面との境界の少なくとも一部に形成された反射鏡と、
前記第1の基板の第2の面に設けられ、光路方向が基板表面と平行方向に規定され、光路の延長方向に前記反射鏡が位置するように配置された光伝送路と、
前記第1の基板の第1の面にフリップチップ実装された第2の基板と、
前記第2の基板の前記第1の基板側の表面に設けられ、光の出射方向又は入射方向が前記第2の基板の基板表面と垂直方向に規定され、前記反射鏡に対して斜め方向から光を照射し、又は前記反射鏡からの反射光が入射される光半導体素子と、
を具備してなり、
前記反射鏡による光路の変換により、前記光半導体素子と光伝送路が光結合されており、
前記斜面が窪みを有し、前記半球状レンズの底部の少なくとも一部が前記窪み内にあることを特徴とする光モジュール。 - 前記反射鏡の反射率が波長依存性又は偏波依存性を持つことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光モジュール。
- 前記基板がシリコンからなり、前記斜面が前記基板の(111)面から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光モジュール。
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