JP3795441B2 - 電動式射出装置及びそれの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスクリューの背圧制御を精度良く実施することのできる電動式射出装置及びそれの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、射出装置として電動式射出装置が知られている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−84798号公報(第6−7頁、図2)
【0004】
上記特許文献1の第6頁右欄下から2〜3行に「溶融樹脂46(図9参照)の反力によってスクリュー44は上方へ押戻され、該反力がロードセル67で検出され」と記載があり、この記載から背圧制御にロードセル67が利用されることが分かる。また、同第7頁左欄上から10〜11行に「射出圧力を保持する保圧を行う。」との記載があり、この保圧圧力はロードセル67で検出されることは周知の通りである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおりに従来の電動式射出装置では、ロードセルにより背圧制御、射出圧制御、保圧制御などに必要な圧力情報の全てを取得する。
このロードセルは機械的変位を電気的信号に変換する計測部品の一種である。計測部品は、不可避的な誤差を含み、一般に電気的計測部品では、その誤差はFS×α%(FSはフルスケールであり、計測範囲のスパーンに相当する。αは0.10などの数値であり、規格などで定められ値若しくはメーカで保証する値である。)
【0006】
背圧は、射出圧より格段に小さな圧力であり、例えば背圧が射出圧の1/100であるとすれば、この小さな背圧に、射出圧と同じFS×α%の誤差が含まれる可能性がある。この結果、背圧制御が不正確若しくは不安定になりやすい。
すなわち、圧力情報をロードセルで一括して取得する従来の電動式射出装置においては、低圧で実施する背圧制御での精度が悪くなる。
【0007】
さらには、竪型射出装置ではスクリューや連結軸の荷重がロードセルに直接的に作用し、これらが制御上の外乱になるため背圧制御がより不安定になる。
そこで、本発明の目的はロードセルを備える電動式射出装置、特に電動式竪型射出装置において、背圧制御の精度を飛躍的に高めることのできる技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、加熱筒にスクリューを進退自在に且つ回転自在に収納し、可塑化・計量工程では前記スクリューを回しながら材料を加熱筒の先端に貯留し、この貯留による反力でスクリューを後退させ、射出工程ではスクリューを前進させて加熱筒から材料を射出させる電動式射出装置において、
この電動式射出装置は、射出工程でスクリューを前進させる電動シリンダ機構と、可塑化・計量工程でスクリューの後退時の背圧を制御する背圧制御シリンダとを、各々備え、前記スクリューは前記背圧制御シリンダに常時連結するが、前記電動シリンダ機構とは可塑化・計量時に分離可能にしたことを特徴とする。
【0009】
スクリューに常時連結した背圧制御シリンダと、スクリューから分離することのできる電動シリンダ機構とを、各々電動式射出装置に備えたため、可塑化・計量工程では電動シリンダ機構、すなわちロードセルに影響されることなく、背圧制御シリンダで背圧制御を実施することができる。
射出工程では、ロードセルで圧力情報を取得し、この情報に基づき圧力制御を実施する。
【0010】
請求項2の電動式射出装置は、スクリューを立て、このスクリューの上に電動シリンダ機構を配置した竪型電動式射出装置であることを特徴とする。
ロードセルで背圧制御をも行う従来の竪型電動式射出装置では、スクリューや連結軸の荷重がロードセルに直接的に作用し、これらが制御上の外乱になるため背圧制御が大いに不安定になる。この点、本発明では、ロードセルでは背圧制御を行わず、背圧制御を背圧制御シリンダで実施するため、制御精度を高めることができる。
【0011】
請求項3は、請求項2記載の竪型電動式射出装置を用い、射出工程では背圧制御シリンダはフリー状態にし、電動シリンダ機構でスクリューを前進させ、射出完了後に、電動シリンダ機構を後退させて同シリンダのラムをスクリューから分離し、可塑化・計量工程では背圧制御シリンダでスクリューに所定の背圧制御を施すことを特徴とする電動式射出装置の制御方法である。
【0012】
可塑化・計量工程では電動シリンダ機構、すなわちロードセルに影響されることなく、背圧制御シリンダで背圧制御を実施することができる。背圧制御シリンダは、軽量なスクリューを制御対象とするため、制御は容易であり、制御精度を容易に高めることができる。この結果、精密成型を実施することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る電動式射出装置の正面図であり、電動式射出装置10は、型締め機構の固定盤11に、立てた第1タイロッド12・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)と、これらの第1タイロッド12・・・の上部に固定した上部固定盤13と、図示せぬ昇降手段で空中に保持された第1昇降盤14と、この第1昇降盤14に回転自在に取付けた電動シリンダ機構15の射出ねじ軸16と、この射出ねじ軸16に平行に、第1昇降盤14から下方へ延ばし且つ前記上部固定盤13を貫通させた第2タイロッド17・・・と、これらの第2タイロッド17・・・の下部に固定した加熱筒保持板18と、この加熱筒保持板18に取付けた加熱筒20と、この加熱筒20に回転自在に且つ往復移動可能に収納したスクリュー21と、このスクリュー21の上端から延ばしたスプライン軸22と、このスプライン軸22を回転するために上部固定盤13に取付けたスクリュー回転モータ23と、このスクリュー回転モータ23の動力をスプライン軸22に伝達するベルト24及びボールナット25と、前記第1昇降盤14から前記射出ねじ軸16を囲うように下げた背圧制御シリンダ26、26と、これらの背圧制御シリンダ26、26で吊った第2昇降盤27と、この第2昇降盤27を前記スプライン軸22の上端に連結するスプライン軸端保持部28と、からなる。
【0014】
電動シリンダ機構15は、第1昇降盤14に取付けた射出サーボモータ29と、このサーボモータ29のモータ軸及び射出ねじ軸16に取付けたプーリ30、31と、これらのプーリ30、31に掛け渡したベルト32と、前記射出ねじ軸16と、この射出ねじ軸16にねじ込んだナット33と、このナット33の底に配置したロードセル34と、このロードセル34を挟むようにして前記ナット33の底面に連結した押圧板35と、からなる。36.36はブッシュである。
【0015】
電動シリンダ機構15は、文字通りにモータ回転をねじ機構を介して直線運動に変える構造体であり、射出サーボモータ29を回動することで、押圧板35を下降させ、この押圧板35でスプライン軸端保持部28を下げ、スクリュー21を下降させることで射出作用をなす。
【0016】
ロードセル34は、機械的変位量を電気信号に変換する荷重計であり、圧電セラミックスや歪みゲージを内蔵した計測部品である。周知の部品であるから、詳細構造の説明は省略する。
【0017】
図2は図1の2部の断面詳細図であり、スプライン軸端保持部28は、スプライン軸22の端部に設けた鍔部37を、ラジアルベアリング38及びスラストベアリング39を介してキャップ部材41で囲い、このキャップ部材41をボルト42、42で第2昇降盤27に固定することにより、スプライン軸22が回転し得るようにした。
【0018】
なお、40、40はストッパ(他の図では記載を省略)であり、第2昇降盤27の下限ストッパである。これらのストッパ40、40を設けることにより、図1においてスクリュー21の先端(下端)が加熱筒20のノズル付近に当たること、すなわち底突き現象の発生を防止することができる。
【0019】
図3は図1の3部の断面詳細図であり、加熱筒保持板18に加熱筒20をボルト43、43にて取付け、この加熱筒20に収納したスクリュー21の上端をカップリング44を用いてスプライン軸22の下端に連結したことを示す。図から明らかなように、加熱筒20に対して、スクリュー21を回転させること及びスクリュー21を往復移動(図上下への移動)させることができる。45は材料供給管である。
【0020】
図4は本発明に係る背圧制御シリンダの制御原理図であり、3個の丸Cはドレーン、丸D,Eは圧力系が図右の背圧制御シリンダ26に接続することを意味する。
符号51の丸Pは油圧源又は圧縮空気源であり、符号52はスクリューの前進/後退を決める制御弁sol5であり、A、N、Bの3位置電磁弁である。
【0021】
背圧制御は、液晶樹脂などの低粘度樹脂を取扱う場合はより精密な制御を行う必要があるので、この精密制御を「微背圧制御」と呼ぶ。
それ以外の一般樹脂を取扱う場合の背圧制御を「一般背圧制御」と呼ぶ。
【0022】
符号53は一般背圧制御に用いる圧力制御弁であり、符号54は制御弁sol6であり、A、Nの2位置電磁弁である。
符号55は制御弁sol7であり、A、Nの2位置電磁弁であり、符号56は微背圧制御に用いる圧力制御弁である。
制御弁sol5〜7の切替えテーブルを次に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
射出時は、制御弁sol5〜7の全てをNにする。この結果、背圧制御シリンダ26、26は、共にドレーンに開放されるため、ピストン57、57は自由に上下動可能となり、射出動作を妨げない。
【0025】
一般背圧制御では、制御弁sol5、7をNのままとし、制御弁sol6をAに切替える。可塑化・軽量時は樹脂反力により、スプライン軸22が上昇する。この上昇により、ピストン57、57に上向き力が作用する。ピストン57の下方のシリンダ内圧力は大気圧であるため、ピストン57の移動を妨げない。ピストン57の上方のシリンダ内圧力は圧力制御弁53で制限される。すなわち、ピストン57が上昇し、圧力制御弁53の一次側の圧力が一定圧に達するまでは圧力制御弁53は閉じたままで、同一次圧が一定圧を越えると弁開となって圧力超過分をドレーンへ放出する。この結果、常にピストン57、57の上方のシリンダ内圧力は一定圧になる。この一定圧が予め定めた背圧になる。そのために、一般背圧制御を実行することができる。
【0026】
微背圧制御では、制御弁sol6がA位置のままであるから、ピストン57、57の上方のシリンダ内圧力は圧力制御弁53の作用により定まる。制御弁sol5をNからBに切替えることにより、油圧源若しくは圧縮空気源51の圧がピストン57、57の下方のシリンダ内へ向うが、同時に制御弁sol7がNからAに切り替るため、ピストン57、57の下方のシリンダ内圧力は圧力制御弁56により定まる。ピストン57、57の下方のシリンダ内圧力で、スクリュー21、第2昇降盤27、スプライン軸22などの重量をキャンセルする。この結果、一般背圧より微少の微背圧制御が実施できる。
【0027】
デコンプ時は、制御弁sol7をAからNに切替える。この結果、ピストン57、57の下方のシリンダ内圧力が高まり、ピストン57、57を上昇させるため、デコンプを実行することができる。
以上の述べたとおり、本発明の背圧制御シリンダ及び同制御システムによれば、通常の射出工程などを妨げることなく、一般背圧制御並びの微背圧制御とデコンプが実行することができる。
【0028】
次に電動式射出装置の全体の作用を述べる。
図5は射出工程完了時の状態図であり、射出サーボモータ29により、射出ねじ軸16を回し、ナット33を下降させ、押圧板35を下降させてキャップ部材41を押し下げ、スプライン軸22を下降させ、スクリュー21を下降させたことを示す。射出圧力はロードセル34で検出する。なお、この射出工程では背圧制御シリンダ26、26はフリーの状態にしておく。
【0029】
図6は可塑化・計量工程の準備段階の状態図であり、射出サーボモータ29を逆回転させ、ナット33を上昇させることにより、押圧板35を上昇させる。
キャップ部材41、スプライン軸22及びスクリュー21は上昇せずに、残る。この結果、押圧板35とキャップ部材41との間にはGだけ隙間が空く。
【0030】
図7は可塑化・計量工程の途中図であり、スクリュー回転モータ23を所定方向へ回し、ベルト24、ボールナット25を介してスプライン軸22を回し、スクリュー21を回しつつ、材料供給管45から材料を供給すると、材料は加熱筒20内を下降しつつ可塑化され、スクリュー21の下方に溜まる。スクリュー21は材料48の溜まり量に応じて上昇する。
【0031】
このときに、背圧制御シリンダ26、26を作動さ、一般背圧制御又は微背圧制御を実施する。
すなわち、第2昇降盤27とスプライン軸22とスクリュー21のトータル重量に相当する上向き力を背圧制御シリンダ26、26で発生させれば、機械重量をゼロにすることができる。
この間、押圧板35とキャップ部材41との間に隙間g(0<g<G)が存在する。
【0032】
図8はデコンプ終了後の状態図である。デコンプとは、鼻垂れを防止するためにスクリューを若干後退させて加熱筒内を減圧することを言う。
押圧板35にキャップ部材41が接触したとしても、押圧板35はキャップ部材41を下方へ押す作用は果たさない。背圧制御シリンダ26、26のピストンロッドが第2昇降盤27、キャップ部材41、スプライン軸22、スクリュー21の順で機械的に繋がり、加熱筒20の下部に溜まった材料48とスクリュー21との位置関係を保持する。
【0033】
押圧板35を下降させれば、キャップ部材41、スプライン軸22及びスクリュー21が下がり、加熱筒20から材料48を射出することができ、図5の状態になる。これで、射出サイクルが完了する。
【0034】
図1において、電動シリンダ機構15は、所定の射出速度及び射出力を発生させるために射出ねじ軸16、ナット33を備え、このナット33の底にロードセル34を備えた。
このロードセル34では、背圧制御、特に微背圧制御のための正確な圧力検出は到底できない。
【0035】
そこで、本発明ではロードセル34では射出圧力のような大きな圧力の検出をさせる。そして、図7、8に示したとおりに、可塑化・計量工程では、押圧板35とは無関係に、背圧制御を行うため、背圧制御は極めて容易になる。すなわち、背圧制御シリンダ26、26に対する負荷は小さいので、背圧制御シリンダ26、26は小型、軽量なシリンダユニットで済ませることができる。
【0036】
なお、実施例は竪型電動式射出装置で説明した。しかし、横型電動式射出装置にも本発明は適用することは差し支えない。
【0037】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、スクリューに常時連結した背圧制御シリンダと、スクリューから分離することのできる電動シリンダ機構とを、各々電動式射出装置に備えたため、可塑化・計量工程では電動シリンダ機構、すなわちロードセルに影響されることなく、背圧制御シリンダで背圧制御を実施することができる。
射出工程では、ロードセルで圧力情報を取得し、この情報に基づき圧力制御を実施する。
【0038】
請求項2の電動式射出装置は、スクリューを立て、このスクリューの上に電動シリンダ機構を配置した竪型電動式射出装置であることを特徴とする。
ロードセルで背圧制御をも行う従来の竪型電動式射出装置では、スクリューや連結軸の荷重がロードセルに直接的に作用し、これらが制御上の外乱になるため背圧制御が大いに不安定になる。この点、本発明では、ロードセルでは背圧制御を行わず、背圧制御を背圧制御シリンダで実施するため、制御精度を高めることができる。
【0039】
請求項3は、請求項2記載の竪型電動式射出装置を用い、射出工程では背圧制御シリンダはフリー状態にし、電動シリンダ機構でスクリューを前進させ、射出完了後に、電動シリンダ機構を後退させて同シリンダのラムをスクリューから分離し、可塑化・計量工程では背圧制御シリンダでスクリューに所定の背圧制御を施すことを特徴とする電動式射出装置の制御方法である。
【0040】
可塑化・計量工程では電動シリンダ機構、すなわちロードセルに影響されることなく、背圧制御シリンダで背圧制御を実施することができる。背圧制御シリンダは、軽量なスクリューを制御対象とするため、制御は容易であり、制御精度を容易に高めることができる。この結果、精密成型を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動式射出装置の正面図
【図2】図1の2部の断面詳細図
【図3】図1の3部の断面詳細図
【図4】本発明に係る背圧制御シリンダの制御原理図
【図5】射出工程完了時の状態図
【図6】可塑化・計量工程の準備段階の状態図
【図7】可塑化・計量工程の途中図
【図8】デコンプ終了後の状態図
【符号の説明】
10…電動式射出装置、15…電動シリンダ機構、20…加熱筒、21…スクリュー、26…背圧制御シリンダ、29…射出サーボモータ。
Claims (3)
- 加熱筒にスクリューを進退自在に且つ回転自在に収納し、可塑化・計量工程では前記スクリューを回しながら材料を加熱筒の先端に貯留し、この貯留による反力でスクリューを後退させ、射出工程ではスクリューを前進させて加熱筒から材料を射出させる電動式射出装置において、
この電動式射出装置は、射出工程でスクリューを前進させる電動シリンダ機構と、可塑化・計量工程でスクリューの後退時の背圧を制御する背圧制御シリンダとを、各々備え、前記スクリューは前記背圧制御シリンダに常時連結するが、前記電動シリンダ機構とは可塑化・計量時に分離可能にしたことを特徴とする電動式射出装置。 - 前記スクリューを立て、このスクリューの上に電動シリンダ機構を配置した竪型電動式射出装置であることを特徴とする請求項1記載の電動式射出装置。
- 請求項2記載の竪型電動式射出装置を用い、射出工程では背圧制御シリンダはフリー状態にし、電動シリンダ機構でスクリューを前進させ、射出完了後に、電動シリンダ機構をスクリューから分離し、可塑化・計量工程では背圧制御シリンダでスクリューに所定の背圧制御を施すことを特徴とする電動式射出装置の制御方法。
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