JP3795343B2 - 試料冷却方法および試料冷却システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱分析装置における試料の冷却に好適な試料冷却方法および試料冷却ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱分析装置などに組み込まれる試料冷却ユニットとして、液体窒素(LN)等の液化冷却媒体を用いた図4に示すごとき構造のものが知られている。
同図に示す試料冷却ユニット200は、供給タンク201に貯留してある液体窒素(液化冷却媒体)を、冷媒供給経路202を介し試料冷却部203に供給して、この試料冷却部203を冷却する。試料冷却部203は、試料保持容器204の周囲に設けられ、内部が中空となっている。この中空部203aに冷媒供給経路202から液体窒素が供給される。また、試料冷却部203には、冷媒排出経路205が連通しており、試料冷却部203で吸熱した冷却媒体を、この冷媒排出経路205を通して試料冷却部203から排出する構成を備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上述した試料冷却システムを熱分析装置に利用する場合、次のような課題があった。
すなわち、通常、熱分析装置の測定開始直後は試料保持容器204が室温になっていることが多く、その周囲に設けた試料冷却部203も、液体窒素の供給前は同様に室温となっている。そこへ供給タンク201から液体窒素が供給されると、液体窒素は一瞬にして気化し、窒素ガスが試料冷却部203の中空部203a内に充満することになる。気化した窒素ガスは体積がきわめて大きくなるため、冷媒排出経路205からの排出に時間がかかる。そして、試料冷却部203の中空部203a内に窒素ガスが充満した状態においては、液体窒素の供給が阻害されてしまう。その結果、冷却初期段階において、試料冷却部203を所望の温度まで冷却するための時間が長くなり、このことが測定作業を遅延させる一因となっていた。
【0004】
冷却初期段階において、試料冷却部203の中空部203aに充満する窒素ガスを速やかに排出して、液体窒素の供給効率を向上させるためには、冷媒排出経路205を構成する配管の口径を太くすればよい。
【0005】
一方、試料冷却部203が充分に冷却されて定常冷却段階に入ると、液体窒素は中空部203a内での吸熱量が減少するため、気化せずに極低温を維持することになる。このように気化していない液体窒素は、できるだけ長い時間、試料冷却部203の中空部203a内に滞留させておく方が、液体窒素の消費量を節約する上で好ましい。
【0006】
しかしながら、上述のごとく冷媒排出経路205を構成する配管の口径を太くした場合は、単位時間あたりの液体窒素排出量が大きくなるので、試料冷却部203の中空部203a内に液体窒素を滞留させておく時間が短くなり、その結果、液体窒素の消費量が多く不経済となる課題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、請求項1の発明は、試料冷却部に冷媒供給経路を介して液化した冷却媒体を供給するとともに、試料冷却部に供給された冷却媒体を冷媒排出経路を介して排出する試料冷却方法において、試料の冷却期間を、少なくとも冷媒排出経路に気化した冷却媒体が排出されてくる冷却初期段階と、冷媒排出経路に液化した冷却媒体が排出されてくる定常冷却段階とに区分し、冷却初期段階では、定常冷却段階に比べ、試料冷却部から排出される冷却媒体の排出量を多くすることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、冷却初期段階では、定常冷却段階に比べ、試料冷却部から排出される冷却媒体の排出量が多くなるように構成したので、試料冷却部において冷却媒体の多くが気化してしまう冷却初期段階は、迅速に冷却媒体を排出して冷却効率を向上させることができる。一方、試料冷却部における冷却媒体の吸熱量が減少した定常冷却段階では、冷却初期段階に比べて試料冷却部から排出される冷却媒体の排出量が少なくなるので、試料冷却部での冷却媒体の滞留時間が長くなり、その結果、冷却媒体の消費量を節約して経済性の向上を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明は、試料冷却部と、この試料冷却部に液化した冷却媒体を供給する冷媒供給経路と、試料冷却部に供給された冷却媒体を排出する冷媒排出経路とを含む試料冷却システムにおいて、冷媒排出経路は、冷却媒体を導通または遮断する開閉手段を備えた第1の冷媒排出経路と、冷却媒体を排出する第2の冷媒排出経路と、を含むことを特徴とする。
【0010】
したがって、例えば、冷却初期段階において、開閉手段を開放して第1の冷媒排出経路からも冷却媒体を排出するようにすれば、複数の冷媒排出経路(第1,第2の冷媒排出経路)から冷却媒体が排出されてその排出量が多くなり、それに伴って試料冷却部への新たな冷却媒体の供給量を増加させることができるので、冷却効率が向上する。
【0011】
一方、定常冷却段階においては、開閉手段を閉塞し、冷却媒体を第2の冷媒排出経路からのみ排出するようにすれば、冷却媒体の排出量が抑制されて試料冷却部での冷却媒体の滞留時間を長くすることができ、その結果、冷却媒体の消費量を節約して経済性の向上を図ることができる。
【0012】
ここで、第1,第2の冷媒排出経路は配管により構成し、さらに第1の冷媒排出経路は、少なくとも第2の冷媒排出経路に比べ大きな内径を有し、且つ経路長さの短い配管で構成することが好ましい(請求項3)。このように構成することで、第1の冷媒排出経路は流路抵抗が減少するので、この第1の冷媒排出経路が開いている間は、多量の冷却媒体を速やかに排出して冷却効率を一層向上させることが可能となる。
【0013】
さて、試料冷却部と、この試料冷却部に液化した冷却媒体を供給する冷媒供給経路と、試料冷却部に供給された冷却媒体を排出する冷媒排出経路とを含む試料冷却システムにおいて、冷媒供給経路の流路抵抗が大きく試料冷却部に至るまでの距離が長い場合や、試料冷却部での流路抵抗が大きい場合などにあっては、供給される冷却媒体の流動速度が遅くなり、そのため冷媒供給経路の途中で冷却媒体が周囲の熱を吸熱して気化することがある。
【0014】
このように冷媒供給経路の途中で気化した冷却媒体は体積がきわめて大きくなり、上流側から続いて送られてくる冷却媒体の円滑な流れを阻害するおそれがある。
【0015】
そこで、請求項4の発明にあっては、冷媒供給経路に、気化した冷却媒体が排出されるガス抜き経路を分岐して備える構成として、冷媒供給経路内で気化した冷却媒体をこのガス抜き経路から速やかに排出して、冷媒供給経路での冷却媒体の円滑な流れを確保するようにして、冷却効率の向上を図っている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1はこの発明の第1実施形態に係る試料冷却システムの全体構成を示す模式図である。
試料冷却システム1は、熱分析装置に組み込まれ測定対象となる試料を所望の温度に冷却するもので、冷却媒体供給源としての供給タンク10と、冷媒供給経路20と、冷媒供給経路20を介して送られてきた冷却媒体により試料を冷却する試料冷却部30と、試料冷却部30から冷却媒体を排出す冷媒排出経路40とを備えている。
【0017】
供給タンク10には、液体窒素(LN)等の液化冷却媒体が封入されている。この供給タンク10は、その内圧が調節可能となっており、本実施形態にあっては、0.14MPa程度に設定されている。この内圧調整は、例えば、供給タンク10の内部にヒータを内臓し、そのヒータへの印可電圧を制御すること等により行うことができる。この供給タンク10の容量は任意であるが、例えば、液体窒素を充填したものであれば、100リットル程度の容量のものが既に市販されている。
【0018】
冷媒供給経路20は、金属(例えば、ステンレス)パイプ等からなる配管で構成してあり、この冷媒供給経路20の途中には電磁弁21が設けられている。配管の外周は、テフロン材料等の断熱材で被覆してある。冷媒供給経路20を形成する配管の口径は任意であるが、本実施形態にあっては、例えば、口径8mm程度に設定してある。
【0019】
試料冷却部30は、その内部に中空部31が形成してあり、この中空部31に冷媒供給経路20を介して供給されてくる冷却媒体が充填可能となっている。この試料冷却部30は、熱分析装置50に設けられた試料装着部51の周囲に設置してあり、試料装着部51に装着された試料を周囲から冷却する。なお、52は、試料装着部51を加熱する加熱ヒータである。
【0020】
中空部31には、液化冷却媒体が満たされる所定の高さ位置にレベルスイッチ32が設けてあり、このレベルスイッチ32により、中空部31内に充填された液化冷却媒体の液面レベルが検出可能となっている。
【0021】
冷媒排出経路40は、第1の冷媒排出経路41と、この第1の冷媒排出経路41から分岐して設けた第2の冷媒排出経路42とで構成されている。第1の冷媒排出経路41および第2の冷媒排出経路42は、ともに金属(例えば、ステンレス)パイプ等からなる配管で構成してある。そして、第1の冷媒排出経路41は、第2の冷媒排出経路42に比べ、大きな内径を有し、その長さが短く設定されている。例えば、本実施形態においては、第1の冷媒排出経路41が少なくとも8mm以上の口径に設定してあり、一方、第2の冷媒排出経路42は、4mm乃至6mm程度に設定してある。なお、これら各冷媒排出経路41,42を構成する配管の外周は、テフロン材料等の断熱材で被覆してある。
【0022】
また、第1の冷媒排出経路41には、第2の冷媒排出経路42との分岐点41aより下流側に、開閉手段としての電磁弁43が設けてあり、この電磁弁43の開閉操作によって冷却媒体を導通または遮断する。
【0023】
次に、図1および図2に基づいて、試料冷却システム1による試料の冷却動作を詳細に説明する。
まず、熱分析装置50による試料の熱分析が開始されると、冷媒供給経路20および冷媒排出経路40の各電磁弁21,43が開放され、供給タンク10から冷媒供給経路20を介して試料冷却部30に冷却媒体が供給されるとともに、試料冷却部30から第1の冷媒排出経路41および第2の冷媒排出経路42を介して冷却媒体が排出される(図1参照)。
【0024】
この冷却初期段階においては、冷媒供給経路20および試料冷却部30が室温になっていることが多く、そこへ供給タンク10から液化冷却媒体が供給されると、その液化冷却媒体は一瞬にして気化して試料冷却部30の中空部31内に充満することになる。気化した冷却媒体は体積がきわめて大きくなるが、本実施形態の試料冷却システム1では、第1の冷媒排出経路41が充分に大きな口径の配管により形成されおり、しかもその経路長さが短いので流路抵抗が小さく、気化して体積が増大した冷却媒体をも速やかに試料冷却部から排出することができる。
【0025】
このように試料冷却部30からの冷却媒体排出動作が速やかに実行されれば、供給タンク10からの液化冷却媒体の供給も滞ることなく実行され、その結果、試料冷却部30を短時間で所望の温度に冷却することができる。
【0026】
試料冷却部30が充分に冷却された後は、液化冷却媒体が気化することなく試料冷却部30の中空部31内に満たされることになる。そして、所定の高さまで液化冷却媒体が充填されたことをレベルセンサ32が検知すると、定常冷却段階に移行して、その検知信号に基づき電磁弁43が閉じられる(図2参照)。
【0027】
電磁弁43が閉じられた後は、冷媒排出経路40は口径が小さい第2の冷媒排出経路42だけとなる。したがって、試料冷却部30での液化冷却媒体の滞留時間が長くなり、その結果、液化冷却媒体の消費量を節約して経済性の向上を図ることができる。
【0028】
次に、図3に基づいて、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
この第2実施形態に係る試料冷却システム100は、熱分析装置の試料装着部を内包する高真空炉101を周囲から冷却するもので、供給タンク110に連通する冷媒供給経路120と、この冷媒供給経路120から連続して形成した試料冷却部130と、さらにこの試料冷却部130から連続して形成した冷媒排出経路140とを備えている。
【0029】
これら冷媒供給経路120、試料冷却部130、および冷媒排出経路140は、連続する金属(例えば、ステンレス)パイプで形成された配管によって形成されており、その配管経路は流路抵抗が大きい。なお、試料冷却部130は、高真空炉101に外周に巻回してある。
【0030】
このような構成の試料冷却システム100にあっては、配管経路の流路抵抗が大きいゆえに、供給タンク110から供給される冷却媒体の流動性が悪く、したがって試料冷却部130に到達する前の冷媒供給経路120内で、液化冷却媒体の一部が気化してしまうことがある。
【0031】
冷媒供給経路120内で冷却媒体が気化すると、その体積が極めて大きくなって経路内の内圧が増大する。その結果、供給タンク110内の圧力との差圧が減少して、液化冷却媒体の単位時間あたりの供給量が著しく減少するおそれがある。
【0032】
そこで、本実施形態の試料冷却システム100は、冷媒供給経路120の途中にガス抜き経路150を分岐して設けてある。このガス抜き経路150には、例えば電磁弁151からなる開閉手段が設けてあり、電磁弁151の開閉操作によってガス抜き経路150を閉塞または開放できる構成となっている。
【0033】
特に、冷却初期段階や周囲の温度が高温の場合等においては、電磁弁151を開きガス抜き経路150を開放して、冷媒供給経路120内で気化した冷却媒体をガス抜き経路150から外部に放出する。これにより、冷媒供給経路120内の圧力が低下して、液化冷却媒体を試料冷却部130へと円滑に供給することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能であることは勿論である。
【0035】
例えば、上述した第1実施形態においては、冷媒排出経路40を第1の冷媒排出経路41から第2の冷媒排出経路42を分岐させた構成としているが、試料冷却部30に第1の冷媒排出経路41および第2の冷媒排出経路42を直接連通する構成としてもよい。また、各冷媒排出経路41,42の一方または双方を複数本備えた構成とすることもできる。さらに、第1実施形態において、冷媒供給経路20あるいは試料冷却部30にガス抜き経路を設ける構成としてもよい。
【0036】
第2実施形態においても、冷媒排出経路140を第1実施形態と同様な第1,第2の冷媒排出経路41,42をもって構成し、さらに第1冷媒排出経路41には電磁弁43などの開閉手段を設けた構成としてもよい。
さらにまた、供給タンクの内圧を調節したり、あるいは各経路に設けた電磁弁の開き量を任意に調整することで、窒素供給量を微調整する構成としてもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、試料冷却部において冷却媒体の多くが気化してしまう冷却初期段階は、迅速に冷却媒体を排出して冷却効率を向上させるとともに、試料冷却部における冷却媒体の吸熱量が減少した定常冷却段階では、冷却媒体の消費量を節約して経済性の向上を図ることができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係る試料冷却システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】同じく試料冷却システムにおける定常冷却段階での冷却動作を説明するための模式図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る試料冷却システムの全体構成を示す模式図である。
【図4】従来の試料冷却システムの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1:試料冷却システム
10:供給タンク
20:冷媒供給経路
21:電磁弁
30:試料冷却部
31:中空部
32:レベルスイッチ
40:冷媒排出経路
41:第1の冷媒排出経路
42:第2の冷媒排出経路
43:電磁弁
50:熱分析装置
100:試料冷却システム
110:供給タンク
120:冷媒供給経路
130:試料冷却部
140:冷媒排出経路
150:ガス抜き経路
151:電磁弁

Claims (4)

  1. 試料冷却部に冷媒供給経路を介して液化した冷却媒体を供給するとともに、前記試料冷却部に供給された冷却媒体を冷媒排出経路を介して排出する試料冷却方法において、
    試料の冷却期間を、少なくとも前記冷媒排出経路に気化した冷却媒体が排出されてくる冷却初期段階と、前記冷媒排出経路に液化した冷却媒体が排出されてくる定常冷却段階とに区分し、
    前記冷却初期段階では、前記定常冷却段階に比べ、前記試料冷却部から排出される冷却媒体の排出量を多くすることを特徴とする試料冷却方法。
  2. 試料冷却部と、この試料冷却部に液化した冷却媒体を供給する冷媒供給経路と、前記試料冷却部に供給された冷却媒体を排出する冷媒排出経路とを含む試料冷却システムにおいて、
    前記冷媒排出経路は、冷却媒体を導通または遮断する開閉手段を備えた第1の冷媒排出経路と、冷却媒体を排出する第2の冷媒排出経路と、を含むことを特徴とする試料冷却システム。
  3. 請求項2記載の試料冷却システムにおいて、
    前記第1,第2の冷媒排出経路を配管により構成するとともに、
    前記第1の冷媒排出経路は、少なくとも前記第2の冷媒排出経路に比べ、大きな内径を有し、且つ経路長さの短い配管で構成したことを特徴とする試料冷却システム。
  4. 請求項2記載の試料冷却システムにおいて、
    前記冷媒供給経路は、気化した冷却媒体が排出されるガス抜き経路を分岐して備えることを特徴とする試料冷却システム。
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