JP3794968B2 - 熱風弁の弁体補修方法と弁体補修用シートリング - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱風炉からの熱風の供給管路に設けられ、炉切替による休風時に、供給管路を遮断する用途などに用いられる熱風弁の弁体の補修方法とそれに用いる補修用シートリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱風弁21は、一例を、図5に示すように、熱風炉22から熱風を高炉23へ供給するための熱風導管24と熱風炉22との間の熱風支管25に設けられ、この熱風弁21は、熱風炉22で混合ガスを燃焼して蓄熱中などの休風時に、高炉23内の高温ガスが熱風炉22に逆流しないようにこれらの熱風管路を遮断し、熱風を高炉23に供給するときのみ開くようになっている。
【0003】
前記熱風弁21には、通常、仕切り弁が用いられており、図6および図7に示すように、弁箱本体1aとその上部に取り付けたキャップ部1bとからなる弁箱1の内部に、弁箱1内の流路2を開閉するように、弁体3が取り付けられ、この弁体3は、弁本体4とその外周縁に設けた環状のシートリング5とから形成されている。
【0004】
前記弁本体4は、図8および図9に示すように、鋼板製の2枚の円板状の弁板6、6aが、その中心から外周縁にわたって冷却水流路7を形成する一対の渦巻き状のプレート8、8aによって連結されており、この連結された弁板6、6aの外周縁に、前記冷却水流路7と連通した中空構造の環状のシートリング5が溶接により取り付けられている。
【0005】
前記シートリング5は、図8に示したように、周壁5aと側壁5b、5cとからなって、断面形状がコ字形に形成されており、この側壁5b、5cの内周側の端部に、弁板6、6aの外周縁の内面にあてがう溶接用の裏当て部9、9aが一体に形成されている。
【0006】
前記シートリング5の弁本体4への取り付けは、まず、シートリング5を弁本体4の、渦巻き状のプレート8を取り付けた一方の弁板6の外周縁の内面に、シートリング5の裏当て部9をあてがって、溶接により固定する。次に、渦巻き状のプレート8aを固定した他方の弁板6aの外周縁をシートリング5の裏当て部9aにあてがって溶接により固定する。前記渦巻き状のプレート8a、8は、それらの端面が弁板6、6aに押し当たる位置で溶接により固定されて、弁板6、6aが連結されて弁本体4が形成され、この弁本体4の外周縁にシートリング5が取り付けられ、弁体3が形成されている。
【0007】
前記弁体3の上部中央のシートリング5の周壁5aには、シートリング5の中空部から、前記のプレート8、8aによって形成された、弁板6、6aの中心から外周縁にわたる渦巻き状の冷却水流路7に供給される冷却水の給水口10および排水口10aが設けられている。
【0008】
図6に示したように、この給水口10および排水口10aに中空構造の一対の弁棒11、11aが並行して接続され、弁棒11、11aの上部には、冷却水の入口12および出口13がそれぞれ設けられている。弁体3への冷却水は、この入口12から供給され、弁棒11の内部を通過して、前記給水口10からシートリング5の内部をまず通過して渦巻き状の冷却水流路7に入り、弁本体4の中心部を経て排水口10aから弁棒11aの内部を通過して、出口13から排出され、シートリング5および弁本体4が一様に冷却されるようになっている。
【0009】
前記弁棒11、11aの上端側には、例えば、図示していない無端状のチェーン部材が取り付けられ、このチェーン部材が、駆動装置によりスプロケットを介して駆動されて、弁棒11、11aに連結された弁体3が昇降し、前記熱風支管25を遮断または開放するようになっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような熱風弁21では、熱風炉22の休風時には、閉弁状態になり、前記シートリング5は、弁箱側シート部に密着して弁体3の他の部分よりも低温であるが、送風時、即ち開弁状態では、高温の熱風が高流速でシートリング5に接触しながら、前記熱風支管25などの管路を通過していくため、シートリング5は、弁体で最も急激な温度変化を受ける部位となって、大きな繰返し熱応力が作用する。
【0011】
このため、この繰返し熱応力の作用によって金属疲労が発生し、シートリング5にクラックなどの損傷が発生することが多く、補修が必要となる場合に、損傷したシートリングのみを切断して、新しいシートリングを弁体に溶接して取り付けることができなかった。その理由は、シートリング5を弁本体4の弁板6、6aに欠陥なく、確実に溶接するためには、前記の裏当て部9、9aが必要であり、弁板6、6aと渦巻き状のプレート8、8aとから、図8に示したように、円盤状の弁本体4を組み立てた後に、この弁本体4の外周縁に、前記側壁5b、5cの内面端部に裏当て部分9、9aを設けたシートリング5を組み込むことができないためである。
【0012】
このため、新しいシートリングを組み込むためには、弁板や渦巻き状のプレートには余り損傷がなく、まだ使用が可能な状態にある場合でも、弁本体を新たに組み立てる必要があり、弁体全体を新作せざるを得なく、修理コストが嵩み、また、手間を要し、修理期間が長くなるなどの問題があった。
【0013】
そこで、この発明の課題は、損傷の少ない弁本体を再利用して、損傷の激しいシートリングのみを取り替えることにより、修理費用の低減と工期の短縮を可能とする熱風弁の弁体補修方法とこの補修用シートリングを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
【0015】
即ち、2枚の弁板間に、その中心から外周縁にわたって渦巻き状の冷却水流路が形成された弁本体と、この弁本体の外周縁に前記冷却水流路と連通するように取り付けたシートリングとで弁体が形成された熱風弁の弁体補修方法であって、損傷したシートリングを前記弁本体の2枚の弁板から、その中心から異なる半径でそれぞれ切り離し、この弁板の直径が異なった切断後の弁本体と、予め準備した、周壁とその両側に内径の異なる環状の側壁を有する補修用のシートリングとを組み合わせて固定するようにしたのである。
【0016】
このように、損傷したシートリングを、弁本体の2枚の弁板から、その中心から異なる半径で切り離すことにより、弁板の直径が異なった切断後の弁本体と、内径の異なる環状の側壁を有する補修用のシートリングとを、組み合わせて固定することができるので、シートリングに比べて損傷の少ない弁本体を再利用することができる。
【0017】
前記補修用シートリングの内径が大きい方の側壁内面の端部に環状の裏当て部を設け、前記切断後の弁本体の小径側の弁板内面の外周縁に環状の裏当て板を同芯状に固定し、前記裏当て部の内径を、前記環状の裏当て板を通過できる大きさで、かつ、前記切断後の弁本体の大径側の弁板の外径よりも小さくし、前記裏当て部が大径側の弁板の内面に、補修用シートリングの内径が小さい方の側壁を前記裏当て板の外面に嵌め合せた状態で、補修用のシートリングと前記切断後の弁本体とを溶接により固定することが望ましい。
【0018】
このようにすれば、補修用のシートリングの前記裏当て部を、切断後の弁本体の小径側の外周縁の裏当て板を通過させて、大径側の弁板外周縁の内面に嵌め合わせ、かつ、補修用シートリングの内径が小さい方の側壁を前記裏当て板の外面に嵌め合せた状態で、前記裏当て部および前記裏当て板の存在により、欠陥なく確実に溶接して、補修用のシートリングと切断後の弁本体とを固定することができる。
【0019】
熱風弁の弁体補修用シートリングを、周壁と、その両側に環状の側壁とを有し、一方の側壁の内面端部に環状の溶接用裏当て部を設け、この裏当て部を設けた側壁の内径を、他方の側壁の内径よりも大きくして形成することができる。
【0020】
このようにすれば、上記の損傷したシートリングを切り離した前記弁本体に、この補修用シートリングを、内径の大きい、溶接用裏当て部を設けた側壁の方から組み込むことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施形態を添付の図1から図4に基づいて説明する。
【0022】
図1は、既出の図8に示した熱風弁の弁体3のシートリング5を、前述のように、熱衝撃などによる損傷のために切り離して、補修用のシートリングに取り替える際に、弁本体4の弁板6、6aをそれぞれ、その中心から異なる半径R1 、R2 (R1 <R2 )の位置AおよびBで切断した状態の弁本体14およびこの弁本体14に組み込む、予め準備した補修用のシートリング15を示したもので、補修用のシートリング15は、損傷した前記シートリング5と同様に、周壁15aと側壁15b、15cとから断面形状がコ字形に形成されている。
【0023】
前記切断した弁本体14の小径側の弁板16の内面の外周縁に、溶接用の環状の裏当て板17が同芯状に取り付けられている。前記弁本体14の大径側の弁板16aに溶接する側壁15cの内面の端部には裏当て部18が、その内径D3 が環状の裏当て板17を通過できる大きさで、かつ、弁板16aの外径D1 よりも小さくなるように一体に形成され、小径側の弁板16に溶接する側壁15bの内径D4 は、前記裏当て板17の外径D2 よりも小さく形成されている。そして、小径側の弁板16と大径側の弁板16aの外周面、およびこれらの外周面に対向するシートリング15の側壁15b、15cとは、それぞれテーパ状の開先を形成している。
【0024】
前記裏当て部18を設けた側壁15cの内径D3 は、側壁15bの内径D4 よりも大きく、前記側壁15b、15cの端部を、弁本体14の小径側の弁板16、および大径側の弁板16aに溶接して弁本体14に取り付けたときに、弁体3aの外径が、元の損傷したシートリング5を取り付けていたときの外径と等しくなるように、側壁15bの半径方向の長さL1 は、側壁15cの半径方向の長さL2 よりも大きく形成されている(L1 >L2 )。
【0025】
このように、補修用のシートリング15の側壁に一体に形成した裏当て部18の内径D3 が、小径側の弁板16に取り付けた裏当て板17の外径D2 よりも大きいため、前記シートリング15は環状の裏当て板17を通過でき、図2に示すように、小径側の弁板16の側から、溶接用裏当て部18を設けた側壁の方を前方にして、弁本体14に組み込むことができる。そして、この裏当て部18の内径D3 が、大径側の弁板16aの外径D1 よりも小さく、側壁15bの内径D4 が、環状の裏当て板17の外径D2 よりも小さく形成されているために、図3および図4に示すように、組み込んだ補修用シートリング15を、大径側の弁板16aの外周縁の内面におよび側壁15bの内面外周縁を裏当て板17の外面に嵌め合せた状態で、溶接により固定して、弁本体14に固定することができる。
【0026】
そして、小径側の弁板16との溶接部には裏当て板17が、大径側の弁板16aとの溶接部には、側壁15cに一体に設けた裏当て部18がそれぞれ設けられているので、補修用シートリング15の側壁15bおよび15cと、小径側および大径側の弁板16、16aとは、それぞれ欠陥なく、確実に溶接により固定されて、補修用シートリング15と損傷したシートリングを切り離した弁本体14とを組み合わせることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、損傷したシートリングを取り替える必要が生じた場合に、この損傷したシートリングを切断する弁本体の中心からの位置を、左右の弁板で異ならせたので、損傷の少ない弁本体は再利用して、この弁本体に、小径の弁板の側から補修用のシートリングを組み込むことができ、シートリングの補修にあたって、弁体全体を新作せずに済む。それによって、熱風弁の弁体の修理費用の低減と工期の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態の熱風弁の弁体補修方法において、損傷したシートリングを切り離した弁本体とそれに組み合わせる補修用のシートリングとを示す縦断正面図
【図2】補修用シートリングを弁本体に組み込む状況を示す斜視図
【図3】補修用シートリングを弁本体に組み合わせた弁体を示す斜視図
【図4】図3に示した弁体の縦断正面図
【図5】熱風弁の使用箇所を示す説明図
【図6】上記熱風弁の斜視図
【図7】同上の縦断正面図
【図8】従来技術の熱風弁の弁体の要部を示す縦断正面図
【図9】同上の熱風弁の弁体の縦断側面図
【符号の説明】
1 弁箱
1a 弁箱本体
1b キャップ部
2 流路
3、3a 弁体
4 弁本体
5 シートリング
5a 周壁
5b、5c 側壁
6、6a 弁板
7 冷却水流路
8、8a プレート
9、9a 裏当て部
10 給水口
10a 排水口
11、11a 弁棒
12 入口
13 出口
14 弁本体
15 シートリング
15a 周壁
15b、15c 側壁
16、16a 弁板
17 裏当て板
18 裏当て部
21 熱風弁
22 熱風炉
23 高炉
24 熱風導管
25 熱風支管

Claims (3)

  1. 2枚の弁板(16,16a)間に、その中心から外周縁にわたって渦巻き状の冷却水流路(7)を形成する渦巻き状のプレート(8a,8)が配置され、前記両弁板(16,16a)に前記渦巻き状のプレート(8a,8)の両側縁をそれぞれ溶接することにより前記両弁板(16,16a)が連結固定された弁本体と、この弁本体の外周縁に前記冷却水流路(7)と連通するように取付けられたシートリング(5)とで弁体が形成され、前記シートリング(5)は前記弁本体の外周に沿う周壁(5a)とその周壁(5a)の両側全周に亘る環状の側壁(5b,5c)を有する断面コ字状である熱風弁の弁体補修方法であって、
    前記弁本体の外周に沿う周壁(15a)とその周壁(15a)の両側全周に亘り且つ内径がそれぞれ異なる環状の側壁(15b,15c)を有する断面コ字状の補修用のシートリング(15)を予め準備し、前記弁本体の2枚の弁板(16,16a)から、その両弁板(16,16a)の中心からそれぞれ異なる半径の円周上で損傷した前記シートリング(5)を切り離し、前記補修用のシートリング(15)の内径が大きい方の側壁(15c)側から、前記切り離し後の弁本体の小径側の弁板(16)を大径側の弁板(16a)よりも先に内側に差し入れて、その小径側の弁板(16)と前記補修用のシートリング(15)の内径が小さい方の側壁(15b)、及び前記大径側の弁板(16a)と前記内径が大きい方の側壁(15c)とをそれぞれ溶接により固定することを特徴とする熱風弁の弁体補修方法。
  2. 前記補修用シートリング(15)の内径が大きい方の側壁(15c)内面の端部に環状の裏当て部(18)を設け、前記切り離し後の弁本体の小径側の弁板(16)内面の外周縁に環状の裏当て板(17)を同芯状に固定し、前記裏当て部(18)の内径を、前記環状の裏当て板(17)を通過できる大きさで、かつ、前記切り離し後の弁本体の大径側の弁板(16a)の外径よりも小さくし、前記裏当て部(18)が大径側の弁板(16a)の内面に、前記補修用シートリング(15)の内径が小さい方の側壁(15b)が前記裏当て板(17)の外面に嵌め合わされた状態で、前記補修用のシートリング(15)と前記切り離し後の弁本体とを溶接により固定することを特徴とする請求項1に記載の熱風弁の弁体補修方法。
  3. 請求項2に記載の熱風弁の弁体補修方法に使用する熱風弁の弁体補修用のシートリングであって、前記弁本体の外周に沿う周壁(15a)と、その周壁(15a)の両側全周に環状の側壁(15b,15c)とを有する断面コ字状を成し、前記環状の側壁(15b,15c)のうち一方の側壁(15c)の内面端部に環状の溶接用裏当て部(18)を設け、この裏当て部(18)を設けた側壁(15c)の内径を、前記他方の側壁(15b)の内径よりも大きくした熱風弁の弁体補修用シートリング。
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