JP3793671B2 - ペースト練和装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、2種のペーストを練和して排出するペースト練和装置、更に詳しくはケーシングとこのケーシング内に配設された攪拌部材とを具備し、2種のペーストがケーシングを通して流動せしめられる際に、回転駆動せしめられる攪拌部材の作用によって2種のペーストが練和される形態のペースト練和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
当業者には周知の如く、歯科用アルギン酸系印象材は、アルギン酸を主成分とする基材ペーストと石膏を主成分とする硬化材ペーストとを練和して生成される。また、歯科用シリコーンラバー印象材は、Si−H基を有するシリコーン及びビニル基を有するシリコーンを主成分とする基材ペーストとビニル基を有するシリコーン及び白金触媒を主成分とする硬化材ペーストとを練和することによって生成される。更にまた、歯科用ポリエーテルラバー印象材、歯科用チオコールラバー印象材等も、2種のペーストを練和して生成される。かような2種のペーストを練和するのに好都合に使用され得るペースト練和装置としては、2種のペーストを流出せしめるためのペースト供給手段と共に、このペースト供給手段から流出せしめられる2種のペーストを練和するためにペースト供給手段に付設されるケーシング及び攪拌部材を具備する形態のものを挙げることができる。ペースト供給手段は第一のペースト流路と第二のペースト流路とを含んでいる。ペースト供給手段には円形状でよい先端面が配設されており、第一のペースト流路は先端面に開口する第一のペースト流出口まで延び、同様に第二のペースト流路も先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びている。ペースト供給手段に着脱自在に装着されるケーシングは、上記先端面よりも下流に配置された攪拌空洞部、及びこの攪拌空洞部に続いて延在する排出空洞部を含む。上記先端面から突出する被駆動回転軸が配設されており、攪拌部材はこの被駆動回転軸に着脱自在に装着されて、攪拌空洞部内を延在せしめられる。攪拌部材はケーシング内を同心状に延在する円筒状外周面を有する基部、及び周方向に間隔をおいて基部から放射状に突出する複数個(例えば4個)の攪拌羽根を有する。
【0003】
上述したとおりのペースト練和装置においては、吐出ポンプの如き適宜の送給手段によって第一のペースト流路を通して第一のペーストが第二のペースト流路を通して第二のペーストが夫々流動せしめられ、そして、第一のペースト流出口から第一のペーストが流出せしめられ、第二のペースト流出口から第二のペーストが流出せしめられる。そして、かかる第一のペースト及び第二のペーストがケーシングの攪拌空洞部を通って流動せしめられる間に、所定方向に回転駆動せしめられる攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられる。次いで、練和されたペーストがケーシングの排出空洞部を通して排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
而して、上述した形態の従来のペースト練和装置には、後に更に言及する如く、練和されたペーストの排出に対する抵抗が比較的大きく、練和されたペーストを充分円滑に排出することができない、という解決すべき問題が存在する。また、練和されたペーストの排出に対する抵抗を低減せしめんとすると、練和されたペーストの排出初期にペーストに気泡が混入され、或いは第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが発生する傾向がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、練和されたペーストの排出に対する抵抗が低減せしめられ、練和されたペーストを充分円滑に排出することができることに加えて、練和されたペーストの排出初期にペーストに気泡が混入されることが充分に回避され、そしてまた第一のペーストと第二のペーストとが充分均一に練和される、新規且つ改良されたペースト練和装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究及び実験の結果、従来のペースト練和装置においては、ケーシングの排出空洞部の断面形状を、攪拌部材の基部の直径D3と実質上同一或いはこれより小さい直径D2を有する円形断面形状にしていたが、これに代えて幅W1は上記直径D3よりも小さいが長さL1は上記直径D3よりも大きくてケーシングの攪拌空洞部の直径D1と略同一乃至これより若干小さい細長い断面形状にせしめれば、練和されたペーストの排出に対する抵抗を充分に低減せしめることができることを見出し、そしてまた該排出空洞部には、断面において該主部の両端部から該攪拌部材の回転方向又はその反対方向に張り出された張出部を形成すれば、練和されたペーストの排出初期にペーストに気泡が混入されることを充分に回避し、第一のペーストと第二のペーストとを充分均一に練和することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するペースト練和装置として、先端面に開口する第一のペースト流出口まで延びる第一のペースト流路、及び該先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びる第二のペースト流路が配設されているペースト供給手段と、該ペースト供給手段の該先端面よりも下流に配置された攪拌空洞部、及び該攪拌空洞部に続いて延在する排出空洞部を含むケーシングと、該ケーシングの中心軸線を中心として回転自在に該ケーシング内に配設された攪拌部材と、該攪拌部材を所定方向に回転せしめるための回転手段とを具備し、該第一のペースト流出口から流出せしめられた第一のペーストと該第二のペースト流出口から流出せしめられた第二のペーストとが該ケーシングの該攪拌空洞部を通って流動せしめられる間に、回転駆動せしめられる該攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられ、次いで該ケーシングの該排出空洞部を通して排出されるペースト練和装置において、
該ケーシングの該攪拌空洞部は直径がD1である円形断面形状を有し、該排出空洞部は長さがL1で幅がW1である細長い断面形状の主部を有し、L1=1.00乃至0.50×D1であり、W1=0.50乃至0.20×D1であり、該攪拌部材は直径がD3である円柱状基部と該基部から放射状に突出する攪拌羽根とを有し、D3=0.75乃至0.30×D1であり、該攪拌部材の該基部は該ケーシングの該攪拌空洞部内を同心状に延在せしめられており、
該排出空洞部には、断面において該主部の両端部から該攪拌部材の回転方向又はその反対方向に張り出された張出部が形成されている、
ことを特徴とするペースト練和装置が提供される。
【0009】
L1は該排出空洞部の上流端から下流端に向かって漸次減少せしめられており、該排出空洞部の上流端の長さULI=1.00乃至0.75×D1で該排出空洞部の下流端の長さDL1=0.90乃至0.60×D1であり、W1は該排出空洞部の上流端から下流端まで実質上同一であるのが好適である。また、W1=0.35乃至0.25×D1であり、D3=0.70乃至0.50×D1であるのが好ましい。
【0010】
該排出空洞部の該張出部の各々は該排出空洞部の上流端から下流端に向かって断面積が漸次低減せしめられているのが好適である。望ましくは、該排出空洞部の上流端において該主部の断面積をS1とし該張出部の各々の断面積をS2とすると、S2=0.20乃至0.05×S1である。該排出空洞部の該張出部の断面は該主部の両端部から該攪拌部材の回転方向に略半円形状に張り出した形状でよく、該排出空洞部の該主部の両端縁は該攪拌空洞部の外周縁に沿って延びる円弧形状でよい。該攪拌部材の下流端と該ケーシングの該排出空洞部の上流端との間には0.00乃至1.00mm、特に0.10乃至0.50mmの間隙Gが存在するのが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従って構成されたペースト練和装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1を参照して説明すると、図示のペースト練和装置はその一部のみを図示するハウジング2を備えており、かかるハウジング2にペースト供給手段4が装備されている。ペースト供給手段4はハウジング2から突出せしめられた略円盤形状の突出ブロック6を含んでいる。突出ブロック6の先端には円板部材7が固定されている。ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン等の合成樹脂から形成されているのが好都合である円板部材7の先端には円形先端面8が規定されている。この先端面8には、180度の角度間隔をおいて対称に位置する2個の円形流出口、即ち第一のペースト流出口10及び第二のペースト流出口12が形成されている。図1と共に図2を参照して説明を続けると、ペースト供給手段4には、第一のペースト流出口10まで延びる第一のペースト流路14(その下流端部は突出ブロック6内を延在している)と、第二のペースト流出口12まで延びる第二のペースト流路16(その下流端部は突出ブロック6内を延在している)とが配設されている。第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16の断面形状は円形でよい。第一のペースト流路14の下流端には開閉弁18が配設され、第二のペースト流路16の下流端には開閉弁20が配設されている。詳述すると、突出ブロック6と円板部材7との間には、合成ゴム製でよい全体として円板状の弁部材が配設されており、そしてかかる弁部材には、第一のペースト流路14の外径に対応して略180度程度でよい角度に渡って円弧状に延びるスリットと、同様に第二のペースト流路16の外径に対応して略180度程度でよい角度に渡って円弧状に延びるスリットとが形成されており、かようなスリットによって規定された2個の円形領域が上記開閉弁18及び20を構成している。開閉弁18及び20の各々は、その非スリット部を撓み支点として、上流側から送給されるペースト自体によって弾性的に撓まされて流路を開き、ペースト自体の送給が停止されると弾性的に復元して流路を閉じる。所望ならば、他の形態の適宜の弁手段から開閉弁18及び20を構成することもできる。第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16には吐出ポンプ又は押出器でよい送給手段(図示していない)が付設されており、かかる送給手段が作動せしめられると、第一のペースト供給源(図示していない)から第一のペースト流路14を通して第一のペーストが流動せしめられ、第一のペースト流出口10から流出され、そしてまた第二のペースト供給源(図示していない)から第二のペースト流路16を通して第二のペーストが流動せしめられ、第二のペースト流出口12から流出される。
【0013】
図1から理解されるとおり、突出ブロック6にはその円筒状外周面から半径方向に延出する2個の装着ピン22が180度の角度間隔をおいて固定されている。また、突出ブロック6と共に開閉弁18及び20を構成する弁部材並びに円板部材7の中心を貫通して延びる被駆動回転軸24が回転自在に装着されている。円板部材7の先端面を超えて突出する回転軸24の主部の断面形状は円形であるが、回転軸24の先端部には所謂Iカットが施されており、略長方形の断面形状を有する駆動連結部26が形成されている。回転軸24は電動モータでよい回転駆動源(図示していない)に接続されており、回転駆動源が付勢されると、回転軸24は所定方向(例えば図2において右から見て時計方向)に回転せしめられる。回転軸24及びこれに接続された回転駆動源は後述する攪拌部材の回転手段を構成する。
【0014】
ペースト供給手段4にはケーシング28と攪拌部材30とが付設されている。ケーシング28は突出ブロック6に装着され、攪拌部材30は回転軸24に装着される。
【0015】
図1及び図2と共に図3を参照して説明すると、ケーシング28は透明乃至半透明であるのが好都合であり、適宜の合成樹脂から一体に成形することができる。かようなケーシング28は、装着部32、上流部34、主部36及び先端排出部38を含んでいる。装着部32は円筒形状の本体部40とかかる本体部40の自由端に形成された環状フランジ42を有する。本体部40の内径は上述した突出ブロック6の外径に対応せしめられている。装着部32には180度の角度間隔をおいて2個の係止スロット44が形成されている。係止スロット44の各々は、環状フランジ42に形成された受入口46と、この受入口46から周方向片側(図2及び図3において右から見て反時計方向)に向かって幾分下流側(図2及び図3において右側)に傾斜して延びる係止部48とを有する。更に、環状フランジ42には半径方向外方に突出する2個の突出片50が180度の角度間隔をおいて形成され、そしてかかる突出片50の各々と本体部40の外周面との間を延在する板状把持片52が形成されている。上流部34は装着部32における本体部40の下流端から先細形状に延在する円錐台筒形状であり、円錐台形状の上流空洞部54を区画している。主部36は円錐台形状の上流部34の下流端から延在する円筒形状であり、断面形状が直径D1の円形である攪拌空洞部56を区画している。
【0016】
図1乃至図3と共に図4及び図5を参照して説明を続けると、図示の実施形態においては、ケーシング28の先端排出部38の外形は、横断面においては略長方形状であり且つ先端に向かって漸次先細にせしめられた所謂偏平錐台形状である。かような先端排出部38は排出空洞部58を区画している。図4を参照することによって明確に理解される如く、排出空洞部58は、横断面において、長さL1と幅W1とを有する略長方形の細長い形状である主部60と、かかる主部60の両端部から張り出す2個の張出部62とを含んでいる(図4においては、張出部62の領域を主部60の領域から区別するために、張出部62に交差線を付している)。主部60の長さL1は、攪拌空洞部56の直径D1の1.00乃至0.50倍である(L1=1.00乃至0.50×D1)であることが重要である。上記長さL1は排出空洞部58の上流端から下流端まで実質上同一でもよいが、上流端における長さUL1=1.00乃至0.75×D1から下流端における長さDL1=0.90乃至0.60×D1まで上流端から下流端に向かって漸次減少せしめられているのが好都合である。主部60の両端縁は、攪拌空洞部56の外周縁に沿って延びる円弧形状であるのが好都合である。主部60の幅W1は、攪拌空洞部56の直径D1の0.50乃至0.20倍である(W1=0.50乃至0.20×D1)、特に0.35乃至0.25倍である(W1=0.35乃至0.25×D1)であることが重要である。かかる幅W1も、排出空洞部58の上流端から下流端に向けて漸次減少せしめることができるが、図示の実施形態においては、幅W1は排出空洞部58の上流端から下流端まで実質上同一にせしめられている。本発明者の経験によれば、主部L1が過小及び/又は幅Wが過小になると、練和されたペーストの、攪拌空洞部56から排出空洞部58への流動に対する抵抗が過剰になり、練和されたペーストを充分円滑に排出することができなくなる。他方、幅W1が過大になると、攪拌空洞部56から排出空洞部58へのペーストの流動が過剰に促進され、攪拌空洞部56における第一のペーストと第二のペーストとの練和が不充分なものになってしまう傾向がある。排出空洞部58における2個の張出部62は、図示の実施形態においては主部60の両端部から攪拌部材30の回転方向に対して反対方向(図3において右から見て反時計方向、図4において時計方向)に張り出している。所望ならば、排出空洞部58における2個の張出部62を、主部60の両端部から攪拌部材30の回転方向に張り出さすこともできる。2個の張出部62の各々の形状は、攪拌部材30の回転方向に略半円形状に張り出した形状でよい。図5を参照することによって容易に理解される如く、2個の張出部62の断面積は、排出空洞部58の上流端から下流端に向かって漸次減少せしめられており、排出空洞部58の下流端では実質上零である。2個の張出部62が存在しない場合には、その理由は必ずしも明らかではないが、排出空洞部58を通して排出される練和されたペーストの排出初期に気泡が混入される傾向があり、そしてまた第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが発生する傾向がある。排出空洞部58の上流端における主部60の断面積をS1とし2個の張出部62の断面積をS2とすると、S2=0.20乃至0.05×S1程度であるのが好適である。
【0017】
上述したとおりのケーシング28は、図1及び図2を比較参照することによって明確に理解される如く、その装着部32を突出ブロック6に被嵌せしめ、そして係止スロット44の各々の受入口46から係止部48に突出ブロック6の装着ピン22を導入し、次いでケーシング28を図2において右から見て時計方向に回転せしめて装着ピン22を係止スロット44の係止部48の端部に位置せしめることによって、突出ブロック6に着脱自在に装着される。突出ブロック6からケーシング28を離脱する際には、ケーシング28を図2において反時計方向に回転せしめて突出ブロック6の装着ピン22を係止スロット44の受入口46に位置せしめ、次いでケーシング28を下流側に移動せしめればよい。ケーシング28の装着及び離脱の際には、装着部32に形成されている把持片52に指を掛けてケーシング28を所要方向に回転することができる。
【0018】
次に、図1及び図2と共に図6を参照して攪拌部材30について説明すると、適宜の合成樹脂から一体に成形することができる攪拌部材30は、円筒状外周面を有する基部64を含んでいる。この基部64の直径D3は上記攪拌空洞部56の直径D1の0.70乃至0.50倍である(D3=0.70乃至0.50×D1)であることが重要である。直径D3が過大になると、攪拌空洞部56を流動するペーストに対する抵抗が過剰になり、ペーストの円滑な排出が阻害される。逆に、直径D3が過小になると、ペーストが攪拌空洞部56を流動する際の攪拌作用が不充分になる傾向がある。攪拌部材30の基部64には、その上流端から下流方向に延びる盲孔66が形成されている。盲孔66の主部は上述した回転軸24の主部に対応して円形断面形状を有するが、盲穴66の底部68(図2及び図6において右端部)は回転軸24の駆動連結部26に対応して略長方形状の断面形状を有する。基部64の外周面上流端部には一対の突条70が形成されている。かかる突条70は180度の角度間隔をおいて形成されており、盲穴66の底部68の延在方向に対応せしめられている。従って、突条70を目視することによって盲穴66の底部68の延在方向を認識することができる。攪拌部材30は上流攪拌部72、中間非攪拌部74及び下流攪拌部76に区画されているのが好都合である。上流攪拌部72及び下流攪拌部76の各々においては、基部64から放射状に突出する複数個(図示の場合は4個)の攪拌羽根78及び80が周方向に等角度間隔をおいて形成されている。攪拌羽根78の各々の角度位置と攪拌羽根80の各々の角度位置は整合せしめられているのが好適である。一方、中間非攪拌部74において攪拌羽根が存在しない。上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78の各々には、その上流側部分から更に半径方向外方に突出する延長部82が付設されている。下流攪拌部76に形成されている攪拌羽根80の各々の突出端縁には、軸線方向に間隔をおいて複数個(図示の場合は2個)の切欠84が形成されている。切欠84の底縁は弧状でよい。上流攪拌部72の軸線方向長さX1、中間非攪拌部74の軸線方向長さX2及び下流攪拌部76の軸線方向長さX3の相対的比率は、X1=0.06乃至0.44×(X1+X2+X3)、X2=0.12乃至0.60×(X1+X2+X3)、X3=0.31乃至0.78×(X1+X2+X3)程度であるのが好適である。中間非攪拌部74の軸線方向長さ比が過小になると、ケーシング28の排出空洞部58を通して排出されるペーストの初期排出部分において第一のペーストに対する第二のペーストの混入が不充分になる傾向がある。逆に、中間非攪拌部74の軸線方向長さ比が過大になると、第一のペーストと第二のペーストとの練和が不充分になる傾向がある。
【0019】
図1、図2及び図6を参照して説明を続けると、攪拌部材30の下流端(図2及び図6において右端)において、基部64には攪拌羽根80間に位置する凹部86が形成されているのが好適である。かかる凹部86の各々の底縁は弧状でよい。
【0020】
上述したとおりの攪拌部材30は、ケーシング28を突出ブロック6に装着するのに先立って、上述した回転軸24に装着される。攪拌部材30の盲孔66内に回転軸24を挿入せしめることによって、回転軸24に攪拌部材30が装着される。回転軸24の駆動連結部26が盲孔66の底部68内に位置せしめられ、従って回転軸24の回転が攪拌部材30に伝動せしめられ、回転軸24の回転に応じて攪拌部材30が回転せしめられる。回転軸24の駆動連結部26を盲孔66の底部68内に位置せしめる際には、攪拌部材30の基部64の外周面上流端部に形成されている突条70を目視することによって盲孔66の底部68の延在方向を認識することができる。図2を参照することによって理解されるとおり、回転軸24に所要とおりに攪拌部材30を装着し、次いで突出ブロック6に所要とおりにケーシング28を装着すると、攪拌部材30はケーシング28内にケーシング28と同心状に位置せしめられる。そして、攪拌部材30の上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78の下流部(延長部82が存在しない部分)の先縁はケーシング28の主部36の内周面に近接して位置し、攪拌羽根78の延長部82はケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面に当接せしめられる。攪拌部材30の下流攪拌部76に形成されている攪拌羽根80の先縁はケーシング28の主部36の内周面に近接して位置する。また、攪拌部材30の下流端(図2において右端)は、ケーシング28の環状壁88の内面に近接乃至接触せしめられる。攪拌羽根78の延長部82がケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面に当接せしめられることによって、ケーシング28に対して攪拌部材30が下流側に移動することが阻止される。攪拌羽根78の延長部82がケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面に当接せしめられた状態において、攪拌部材30の下流端とケーシング28の排出空洞部58の上流端との間には0.00乃至1.00mm、特に0.10乃至0.50mm程度である間隙Gが存在するのが望ましい。間隙Gが過大になると、攪拌空洞部56から排出空洞部58へのペーストの流動が過剰に促進され、攪拌空洞部56における第一のペーストと第二のペーストとの練和が不充分なものになってしまう傾向がある。
【0021】
上述したとおりのペースト練和装置の作用を要約して説明すると、次のとおりである。作動スイッチ(図示していない)を閉成してペースト練和装置の作動を開始すると、回転軸24の回転駆動が開始されて攪拌部材30が所定方向に回転せしめられる。また、第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16に付設せしめられている送給手段(図示していない)の作動が開始されて、第一のペースト流路14を通して第一のペーストが流動せしめられて第一のペースト流出口10から流出せしめられ、そしてまた第二のペースト流路16を通して第二のペーストが流動せしめられて第二のペースト流出口12から流出せしめられる。第一のペースト流出口10から流出された第一のペーストは、回転せしめられている攪拌部材30の上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78の作用によって周方向に移動せしめられながら攪拌空洞部56内を下流に、攪拌部材30の中間非攪拌部74に流動せしめられる。同様に、第二のペースト流出口12から流出された第二のペーストも、攪拌部材30の上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78の作用によって周方向に移動せしめられながら攪拌空洞部56内を下流に、攪拌部材30の中間非攪拌部74に流動せしめられる。攪拌部材30の上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78は、特定角度位置に配置されている第一のペースト流出口10及び第二のペースト流出口12から流出せしめられた第一のペースト及び第二のペーストを周方向全体に渡って分散せしめ、かくして第一のペースト及び第二のペーストの流動を円滑なものにせしめる。
【0022】
既に言及した如く、基材ペーストを構成する第一のペーストの流出量に対して硬化材ペーストを構成する第二のペーストの流出量は相当小さいこと、第一のペーストと第二のペーストの流動性が幾分か異なること等に起因して、通常、第二のペーストの流出開始よりも若干早く第一のペーストの流出が開始される。然るに、図示のペースト練和装置においては、攪拌部材30には中間非攪拌部74が区画されており、かかる中間非攪拌部74には攪拌羽根が配設されておらず、それ故に中間非攪拌部74は所謂溜部としての機能を有する。即ち、先に流出開始され中間非攪拌部74に流入した第一のペーストはそこに一時的に滞留し、そして若干遅れて流出開始された第二のペーストが上流攪拌部72から中間非攪拌部74に流入せしめられて、そこに滞留している第一のペーストに混入せしめられる。従って、第一のペーストの流出開始と第二のペーストの流出開始とに若干の時差が存在するにもかかわらず、ペーストの初期排出部分においても第一のペーストに第二のペーストが充分良好に混入せしめられる。
【0023】
次いで、第一のペースト及びこれに混入された第二のペーストは、攪拌部材30の中間非攪拌部74から下流攪拌部76に流動せしめられる。そして、この下流攪拌部76においては、攪拌羽根80の作用によって周方向に移動せしめられながら下流方向に漸次流動せしめられ、第一のペーストと第二のペーストが充分良好に練和される。しかる後に、練和された第一のペースト及び第二のペーストはケーシング28の排出空洞部58に流入し、この排出空洞部58を流動してその先端から排出される。ケーシング28と攪拌部材30との間を通って流動する第一のペースト及び第二のペーストは、攪拌部材30を下流方向に強制する。しかしながら、ケーシング28に対する攪拌部材30の下流方向への移動は、攪拌羽根78の延長部82がケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面に当接することによって制限され、攪拌部材30の下流端とケーシング28の排出空洞部58の上流端との間には所要の間隙Gが維持される。本発明に従って構成された図示のペースト練和装置においては、ケーシング28の排出空洞部58が独特な形状にせしめられ、そしてまた攪拌空洞部56の寸法に対して所定範囲の寸法に設定されている故に、攪拌空洞部56において第一のペーストと第二のペーストとを充分に練和することができると共に、攪拌空洞部56から排出空洞部58に充分良好に練和されたペーストを流動せしめ、かくして練和されたペーストを充分円滑に排出することができる。更に、練和されたペーストに気泡が混入されるのを充分に回避することができる。
【0024】
練和された第一のペースト及び第二のペーストがケーシング28の先端排出部38から所要量排出されると、作動スイッチ(図示していない)を開放し、攪拌部材30の回転を停止すると共に、ペースト供給手段の第一のペースト流出口10からの第一のペーストの流出及び第二のペースト流出口12からの第二のペーストの流出を停止する。そして、相互に混合されたがケーシング28から排出されることなくケーシング28内に残留している第一のペースト及び第二のペーストが硬化するのに要する時間を経過した後に、ペースト供給手段4の突出ブロック6からケーシング28を離脱せしめると共に回転軸24から攪拌部材30を離脱せしめる。しかる後に、次回の使用のために、ケーシング28内に残留している硬化ペーストをケーシング28から除去する。図示のペースト練和装置においては、攪拌部材30の上流攪拌部72に形成されている攪拌羽根78に、ケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面近傍に延出する延長部82が形成されている。それ故に、攪拌部材30の回転停止直前において、第一のペースト流出口10から流出した直後の第一のペーストにも第二のペースト流出口12から流出せしめられた直後の第二のペーストが混入される。従って、ケーシング28内に残留せしめられる第一のペースト及び第二のペーストの実質上全てが硬化せしめられ、ケーシング28内に未硬化状態であり、それ故に除去が困難である第一のペースト及び第二のペーストが残留せしめられてしまうことがない。
【0025】
【実施例及び比較例】
実施例1
株式会社トクヤマから商品名「トクソーAPミキサー」として販売されている印象材料練和装置のペースト供給手段(図1に図示するとおりの形態である)に、図1乃至図5に図示するとおりの形態のケーシングと、図1、図2及び図6に図示するとおりの形態の攪拌部材を装着した。そして、株式会社トクヤマから歯科用アルギン酸印象材料のための基材及び硬化材として、夫々、商品名「トクソーAP−1基材」及び「トクソーAP−1硬化材」として販売されているペーストを、第一のペースト及び第二のペーストとして容量比で3.8:1の割合で、第一のペースト流出口及び第二のペースト流出口ら流出せしめた。攪拌部材を
2000rpmの回転速度で回転せしめて、攪拌空洞部を流動する第一のペーストと第二のペーストとを練和し、排出空洞部を通して排出した。
ケーシング内に区画されている上流空洞部の上流端の直径UD4は25.0mm、攪拌空洞部の直径D1は16.0mm、排出空洞部の主部の上流端での長さUL1は16.0mmで下流端での長さDL1は10.0mmで、排出空洞部の主部の幅W1は4.2mmで、排出空洞部の上流端での主部の断面積S1は67.2mm2 で張出部の各々の断面積S2は6.28mm2 であった。
攪拌部材の基部の直径D3は10.0mmで、上流攪拌部の軸線方向長さX1は8.0mmで、中間非攪拌部の軸線方向長さX2は12.0mmで、下流攪拌部の軸線方向長さX3は23.5mmで、下流攪拌部に形成されている攪拌羽根の各々の半径方向突出長さYは2.83mmであった。
攪拌部材の上流攪拌部に形成されている攪拌羽根の延長部がケーシングの上流部の内面に当接した状態において、攪拌部材の下流端とケーシングの排出空洞部の上流端との間の間隙Gは0.2mmであった。
ケーシング及び攪拌部材を装着しない時の、第一のペースト流出口からの第一のペーストの流出量と第二のペースト流出口からの第二のペーストの流出量との合計流出量、即ち無負荷流出量は64.4g/10秒であったが、かかる無負荷流出量に対して実際に第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出する時の練和ペーストの排出量の低減率を測定したところ、下記表1に示すとおりであった。また、練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。第一のペーストと第二のペーストとの練和におけるムラは、白色の第一のペーストと赤色の第二のペーストが混合されるとピンク色になるが、色ムラを生成せしめることなく均一なピンク色であるか否かによって判断した。
【0026】
実施例2
攪拌部材の下流端とケーシングの排出空洞部の上流端との間の間隙Gは0.5mmであったことを除けば、実施例1と同様な条件で、第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出し、無負荷流出量に対する練和ペーストの排出量の低減率を測定し、そしてまた練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。
【0028】
実施例3
攪拌部材の下流端とケーシングの排出空洞部の上流端との間の間隙Gは1.0mmであったことを除けば、実施例1と同様な条件で、第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出し、無負荷流出量に対する練和ペーストの排出量の低減率を測定し、そしてまた練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。
【0029】
実施例4
攪拌部材の長さが増大せしめられ、攪拌部材の下流端とケーシングの排出空洞部の上流端との間の間隙Gが実質上零であったことを除けば、実施例1と同様な条件で、第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出し、無負荷流出量に対する練和ペーストの排出量の低減率を測定し、そしてまた練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。
【0030】
比較例1
ケーシングに区画されている排出空洞部の断面形状は上流端から下流端まで実施上同一であって直径5.0mmの円形であったことを除けば、実施例3と同様な条件で、第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出し、無負荷流出量に対する練和ペーストの排出量の低減率を測定し、そしてまた練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。
【0031】
比較例2
攪拌部材の長さが増大せしめられ、攪拌部材の下流端とケーシングの排出空洞部の上流端との間の間隙Gが実質上零であったことを除けば、比較例1と同様な条件で、第一のペーストと第二のペーストとを練和して排出し、無負荷流出量に対する練和ペーストの排出量の低減率を測定し、そしてまた練和されて排出されるペーストの排出初期に気泡が混入したか否かについて、第一のペーストと第二のペーストとの練和にむらが存在するか否かについて検査したところ、下記表1に示すとおりであった。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明のペースト練和装置においては、練和されたペーストの排出に対する抵抗が低減せしめられ、練和されたペーストを充分円滑に排出することができ、そしてまた練和されたペーストの排出初期にペーストに気泡が混入されることが充分に回避され、第一のペーストと第二のペーストとが充分均一に練和される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って構成されたペースト練和装置の好適実施形態における主要構成要素を示す分解斜面図。
【図2】図1に図示するペースト練和装置の主要構成要素を示す断面図。
【図3】図1に図示するペースト練和装置におけるケーシングを、一部を側面図で一部を断面図で示す図。
【図4】図1に図示するペースト練和装置におけるケーシングの排出空洞部を示す部分横断面図。
【図5】図1に図示するペースト練和装置におけるケーシングの排出空洞部を示す部分縦断面図。
【図6】図1に図示するペースト練和装置における攪拌部材を、一部を側面図で一部を断面図で示す図。
【符号の説明】
4:ペースト供給手段
8:ペースト供給手段の先端面
10:第一のペースト流出口
12:第二のペースト流出口
14:第一のペースト流路
16:第二のペースト流路
24:回転軸(回転手段)
28:ケーシング
30:攪拌部材
32:ケーシングの装着部
34:ケーシングの上流部
36:ケーシングの主部
38:ケーシングの先端排出部
54:ケーシングの上流空洞部
56:ケーシングの攪拌空洞部
58:ケーシングの排出空洞部
60:排出空洞部の主部
62:排出空洞部の張出部
64:攪拌部材の基部
72:攪拌部材の上流攪拌部
74:攪拌部材の中間非攪拌部
76:攪拌部材の下流攪拌部
78:攪拌羽根
80:攪拌羽根
Claims (8)
- 先端面に開口する第一のペースト流出口まで延びる第一のペースト流路、及び該先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びる第二のペースト流路が配設されているペースト供給手段と、該ペースト供給手段の該先端面よりも下流に配置された攪拌空洞部、及び該攪拌空洞部に続いて延在する排出空洞部を含むケーシングと、該ケーシングの中心軸線を中心として回転自在に該ケーシング内に配設された攪拌部材と、該攪拌部材を所定方向に回転せしめるための回転手段とを具備し、該第一のペースト流出口から流出せしめられた第一のペーストと該第二のペースト流出口から流出せしめられた第二のペーストとが該ケーシングの該攪拌空洞部を通って流動せしめられる間に、回転駆動せしめられる該攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられ、次いで該ケーシングの該排出空洞部を通して排出されるペースト練和装置において、
該ケーシングの該攪拌空洞部は直径がD1である円形断面形状を有し、該排出空洞部は長さがL1で幅がW1である細長い断面形状の主部を有し、L1=1.00乃至0.50×D1であり、W1=0.50乃至0.20×D1であり、該攪拌部材は直径がD3である円柱状基部と該基部から放射状に突出する攪拌羽根とを有し、D3=0.75乃至0.30×D1であり、該攪拌部材の該基部は該ケーシングの該攪拌空洞部内を同心状に延在せしめられており、
該排出空洞部には、断面において該主部の両端部から該攪拌部材の回転方向又はその反対方向に張り出された張出部が形成されている、
ことを特徴とするペースト練和装置。 - L1は該排出空洞部の上流端から下流端に向かって漸次減少せしめられており、該排出空洞部の上流端の長さULI=1.00乃至0.75×D1で該排出空洞部の下流端の長さDL1=0.90乃至0.60×D1であり、W1は該排出空洞部の上流端から下流端まで実質上同一である、請求項1記載のペースト練和装置。
- W1=0.35乃至0.25×D1であり、D3=0.70乃至0.50×D1である、請求項1又は2記載のペースト練和装置。
- 該排出空洞部の該張出部の各々は該排出空洞部の上流端から下流端に向かって断面積が漸次低減せしめられている、請求項1から3までのいずれかに記載のペースト練和装置。
- 該排出空洞部の上流端において該主部の断面積をS1とし該張出部の各々の断面積をS2とすると、S2=0.20乃至0.05×S1である、請求項4記載のペースト練和装置。
- 該排出空洞部の該張出部の断面は該主部の両端部から該攪拌部材の回転方向に対して逆方向に略半円形状に張り出した形状である、請求項5記載のペースト練和装置。
- 該排出空洞部の該主部の両端縁は該攪拌空洞部の外周縁に沿って延びる円弧形状である、請求項1から6までのいずれかに記載のペースト練和装置。
- 該攪拌部材の下流端と該ケーシングの該排出空洞部の上流端との間には0.00乃至1.00mmの間隙Gが存在する、請求項1から7までのいずれかに記載のペースト練和装置。
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