JP3727183B2 - ペースト練和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2種のペーストを練和して排出するペースト練和装置、更に詳しくは筒状主部を有するケーシングとこのケーシングの中心軸線を中心として回転自在にケーシング内に配設された攪拌部材との間を通って2種のペーストが流動せしめられる間に、回転駆動せしめられる攪拌部材の作用によって2種のペーストが練和せしめられる型のペースト練和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
当業者には周知の如く、歯科用アルギン酸系印象材は、アルギン酸を主成分とする基材ペーストと石膏を主成分とする硬化剤ペーストとを練和して生成される。また、歯科用シリコーンラバー印象材は、Si−H基を有するシリコーン及びビニル基を有するシリコーンを主成分とする基材ペーストとビニル基を有するシリコーン及び白金触媒を主成分とする硬化剤ペーストとを練和することによって生成される。更にまた、歯科用ポリエーテルラバー印象材、歯科用チオコールラバー印象材等も、2種のペーストを練和して生成される。かような2種のペーストを練和するのに好都合に使用され得るペースト練和装置としては、2種のペーストを流出せしめるためのペースト供給手段と共に、このペースト供給手段から流出せしめられる2種のペーストを練和するためにペースト供給手段に付設されるケーシング及び攪拌部材を具備する形態のものを挙げることができる。ペースト供給手段は第一のペースト流路と第二のペースト流路とを含んでいる。ペースト供給手段には円形状でよい先端面が配設されており、第一のペースト流路は先端面に開口する第一のペースト流出口まで延び、同様に第二のペースト流路も先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びている。ペースト供給手段に着脱自在に装着されるケーシングは、上記先端面から先細形状に延びる円錐台筒状上流部、この円錐台筒状上流部に続いて延在する円筒形状の主部、及び主部の下流端から主部と同心状に延出す先端排出部を有する。主部の下流端と先端排出部の上流端とは、中心軸線に対して垂直に延在する環状壁によって接続されている。上記先端面から突出する被駆動回転軸が配設されており、攪拌部材はこの被駆動回転軸に着脱自在に装着される。攪拌部材はケーシング内を同心状に延在する円筒状外周面を有する基部を含んでいる。攪拌部材の基部には、周方向に間隔をおいて基部から放射状に突出する複数個(例えば4個)の攪拌羽根が形成されている。
【0003】
上述したとおりのペースト練和装置においては、吐出ポンプの如き適宜の送給手段によって第一のペースト流路を通して第一のペーストが第二のペースト流路を通して第二のペーストが夫々流動せしめられ、そして、第一のペースト流出口から第一のペーストが流出せしめられ、第二のペースト流出口から第二のペーストが流出せしめられる。そして、かかる第一のペースト及び第二のペーストがケーシングと攪拌部材との間を通って流動せしめられる。第一のペースト及び第二のペーストがケーシングと攪拌部材との間を通って流動せしめられる間には、回転駆動せしめられる攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられる。そして、練和されたペーストがケーシングの先端排出部を通して排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
而して、上述した型の従来のペースト練和装置には、次のとおりの解決すべき問題がある。
【0005】
第一に、基材ペーストを構成する第一のペーストの流出量に対して硬化剤ペーストを構成する第二のペーストの流出量は相当小さいこと(例えば、容積比で第一のペースト4に対して第二のペースト1)、第一のペーストと第二のペーストとの流動性に幾分かの差が存在すること等に起因して、第一のペースト流出口からの第一のペーストの流出開始と第二のペースト流出口からの第二のペーストの流出開始を充分精密に合致せしめることは、不可能ではないにしても著しく困難であり、本発明者等の経験によれば、通常、最初に第一のペーストの流出が開始され、次いで若干の遅れの後に第二のペーストの流出が開始される。第一のペーストの流出開始と第二のペーストの流出開始との間のかような誤差に起因して、ケーシングから排出されるペーストの初期排出部分においては第一のペーストに対して第二のペーストが充分に混入されていない傾向がある。第一のペーストが白色で第二のペーストが赤色である場合、ケーシングから排出されるペーストの初期排出部分以外は所要ピンク色を呈すが、初期排出部分は相当薄いピンク色を呈す。
【0006】
第二に、所要量の練和ペーストの排出が終了すると、次回の練和ペースト排出のためにペースト供給手段からケーシング及び攪拌部材を離脱せしめて、ケーシング内に残留しているペーストを除去することが必要である。第一のペーストに第二のペーストが混入されると、時間の経過に伴ってペーストは硬化され、硬化されたペーストは充分容易にケーシング内から除去することができる。然るに、攪拌部材に形成されている攪拌羽根の半径方向突出長さはケーシングの円筒形状の主部の内径に対応せしめられており、それ故にペースト供給手段の先端面から先細形状に延びる円錐台筒状上流部の半径方向周縁領域においては攪拌羽根が作用せず、第二のペーストが第一のペーストに混入されることがない。従って、所要時間が経過してもケーシングの円錐台筒状上流部の周縁領域においては未硬化状態の第一のペースト及び第二のペーストが残留することになり、かかる未硬化状態の第一のペースト及び第二のペーストを除去するためには煩雑な作業が必要である。
【0007】
第三に、ケーシングの主部と先端排出部との間に配設されている環状壁と攪拌部材の先端即ち下流端との間には若干の間隙が形成されており、ケーシングと攪拌部材との間を通して流動せしめられるペーストは、かかる間隙を通してケーシングの先端排出部内に流動せしめることが意図されている。しかしながら、ケーシングと攪拌部材との間を流動せしめられるペーストは攪拌部材にこれを下流方向に強制する力を加え、それ故に被駆動回転軸に装着されている攪拌部材の先端がケーシングの環状壁の内面に押し付けられて上記間隙が消失され、かくしてケーシングの先端排出部内へのペーストの流動が阻害されてしまう傾向がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、第一のペースト流出口からの第一のペーストの流出開始と第二のペースト流出口からの第二のペーストの流出開始との間に若干の差が存在しても、ケーシングから排出されるペーストの初期排出部分を含む全体に渡って、第一のペーストに第二のペーストを充分良好に混入して両者を練和することができる改良されたペースト練和装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の解決に加えて、ケーシングの円錐台筒状上流部の半径方向周縁領域においても第二のペーストが第一のペーストに混入され、それ故にケーシング内に除去が困難な未硬化状態の第一のペースト及び第二のペーストが残留することが充分に回避される、改良されたペースト練和装置を提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、上記主たる技術的課題の解決に加えて、被駆動回転軸に装着されている攪拌部材の先端がケーシングの環状壁の内面に押し付けられても、ケーシングの先端排出部に充分良好にペーストが流入することができる、改良されたペースト練和装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、攪拌部材を上流攪拌部、中間非攪拌部及び下流攪拌部に区画し、上流攪拌部及び下流攪拌部においては放射状に突出する攪拌羽根が形成されているが、中間非攪拌部においては攪拌羽根が存在しないように構成することによって、上記主たる技術的課題を解決することを見出した。
【0012】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するペースト練和装置として、先端面に開口する第一のペースト流出口まで延びる第一のペースト流路及び該先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びる第二のペースト流路が配設されているペースト供給手段と、該ペースト供給手段の該先端面よりも下流に配置された筒状主部を有するケーシングと、該ケーシングの中心軸線を中心として回転自在に該ケーシング内に配設された攪拌部材と、該攪拌部材を攪拌せしめるための回転手段とを具備し、該第一のペースト流出口から流出せしめられた第一のペーストと該第二のペースト流出路から流出せしめられた第二のペーストとが該ケーシングと該攪拌部材との間を通って流動せしめられる間に、回転駆動せしめられる該攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられるペースト練和装置において、
該攪拌部材は上流攪拌部、中間非攪拌部及び下流攪拌部を含み、該上流攪拌部及び該下流攪拌部においては放射状に突出する攪拌羽根が形成されているが、該中間非攪拌部においては攪拌羽根が存在しない、ことを特徴とするペースト混和装置が提供される。
【0013】
好適には、該ペースト供給手段の該先端面は円形状であり、該ケーシングの該筒状主部は円筒形状であり、該攪拌部材は該ケーシング内を同心状に延在する円筒状外周面を有する基部を含み、該攪拌羽根は該基部から放射状に突出している。また、該攪拌部材の該下流攪拌部に形成されている攪拌羽根の突出端縁には軸線方向に間隔をおいて複数個の切欠が形成されている。
【0014】
上記他の技術的課題は、該ケーシングは該ペースト供給手段の該先端面から先細形状に延びる円錐台筒状上流部を含み、該筒状主部は該円錐台筒状上流部に続いて延在し、該攪拌部材の該上流攪拌部は該ケーシングの該円錐台筒状上流部と該筒状主部の上流端部とに渡って延在する形態において、該攪拌部材の該上流攪拌部に形成されている該攪拌羽根には、該ケーシングの該円錐台筒状上流部の内面近傍まで延びる延長部が付設されているように構成することによって達成される。
【0015】
また、上記更に他の技術的課題は、該ケーシングは、該筒状主部の下流端から該筒状主部と同心状に延出する、該筒状主部よりも小径の円筒形状である先端排出部と、該筒状主部の下流端と該先端部の上流端との間を該ケーシングの中心軸線に対して実質上垂直に延在する環状壁とを含み、該攪拌部材の下流端は該ケーシングの該環状壁の内面に近接乃至接触せしめられ、該攪拌部材の該基部の外径は該ケーシングの該先端排出部の内径と略同一である形態において、該攪拌部材の該基部の下流端には凹部が形成されており、練和された第一のペーストと第二のペーストは該凹部を通って該ケーシングの該先端排出部内に流動することができるように構成することによって達成される。
【0016】
該上流攪拌部、該中間非攪拌部及び該下流攪拌部の軸線方向長さを夫々L1、L2及びL3とすると、L1=0.06乃至0.44×(L1+L2+L3)、L2=0.12乃至0.60×(L1+L2+L3)、L3=0.31乃至0.78×(L1+L2+L3)であるのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従って構成されたペースト練和装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0018】
図1を参照して説明すると、図示のペースト練和装置はその一部のみを図示するハウジング2を備えており、かかるハウジング2にペースト供給手段4が装備されている。ペースト供給手段4はハウジング2から突出せしめられた略円盤形状の突出ブロック6を含んでいる。突出ブロック6の先端には円板部材7が固定されており、この円板部材7の先端には円形先端面が規定されている。この先端面8には、180度の角度間隔をおいて対称に位置する2個の円形流出口、即ち第一のペースト流出口10及び第二のペースト流出口12が形成されている。図1と共に図2を参照して説明を続けると、ペースト供給手段4には、第一のペースト流出口10まで延びる第一のペースト流路14(その下流端部は突出ブロック6内を延在している)と、第二のペースト流出口12まで延びる第二のペースト流路16(その下流端部は突出ブロック6内を延在している)とが配設されている。第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16の断面形状は円形でよい。第一のペースト流路14の下流端には開閉弁18が配設され、第二のペースト流路16の下流端には開閉弁20が配設されている。詳述すると、突出ブロック6と円板部材7との間には、合成ゴム製でよい全体として円板状の弁部材が配設されており、そしてかかる弁部材には、第一のペースト流路14の外径に対応して略270度程度でよい角度に渡って円弧状の延びるスリット(図示していない)と、同様に第二のペースト流路16の外径に対応して略270度程度でよい角度ん渡って円弧状に延びるスリット(図示していない)とが形成されており、かようなスリットによって規定された2個の円形領域が上記開閉弁18及び20を構成している。開閉弁18及び20の各々は、その非スリット部を撓み支点として、上流側から送給されるペースト自体によって弾性的に撓まされて流路を開き、ペースト自体の送給が停止されると弾性的に復元して流路を閉じる。所望ならば、他の形態の適宜の弁手段から開閉弁18及び20を構成することもできる。第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16には吐出ポンプでよい送給手段(図示していない)が付設されており、かかる送給手段が作動せしめられると、第一のペースト供給源(図示していない)から第一のペースト流路14を通して第一のペーストが流動せしめられ、第一のペースト流出口10から流出され、そしてまた第二のペースト供給源(図示していない)から第二のペースト流路16を通して第二のペーストが流動せしめられ、第二のペースト流出口12から流出される。
【0019】
図1から理解されるとおり、突出ブロック6にはその円筒状外周面から半径方向に延出する2個の装着ピン22が180度の角度間隔をおいて固定されている。また、突出ブロック6と共に開閉弁18及び20を構成する弁部材並びに円板部材7の中心を貫通して延びる被駆動回転軸24が回転自在に装着されている。円板部材7の先端面を超えて突出する回転軸24の主部の断面形状は円形であるが、回転軸24の先端部には所謂Iカットが施されており、略長方形の断面形状を有する駆動連結部26が形成されている。回転軸24は電動モータでよい回転駆動源(図示していない)に接続されており、回転駆動源が付勢されると、回転軸24は所定方向(例えば図2において右から見て時計方向)に回転せしめられる。回転軸24及びこれに接続された回転駆動源は後述する攪拌部材の回転手段を構成する。
【0020】
ペースト供給手段4にはケーシング28と攪拌部材30とが付設されている。ケーシング28は突出ブロック6に装着され、攪拌部材30は回転軸24に装着される。
【0021】
図1及び図2と共に図3を参照して説明すると、ケーシング28は透明乃至半透明であるのが好都合であり、適宜の合成樹脂から一体に成形することができる。かようなケーシング28は、装着部32、上流部34、主部36及び先端排出部38を含んでいる。装着部32は円筒形状の本体部39とかかる本体部39の自由端に形成された環状フランジ40を有する。本体部39の内径は上述した突出ブロック6の外径に対応せしめられている。装着部32には180度の角度間隔をおいて2個の係止スロット42が形成されている。係止スロット42の各々は、環状フランジ40に形成された受入口43と、この受入口43から周方向片側(図2及び図3において右から見て反時計方向)に向かって幾分下流側(図2及び図3において右側)に傾斜して延びる係止部44とを有する。更に、環状フランジ40には半径方向外方に突出する2個の突出片46が180度の角度間隔をおいて形成され、そしてかかる突出片46の各々と本体部39の外周面との間を延在する板状把持片48が形成されている。上流部34は装着部32における本体部39の下流端から先細形状に延在する円錐台筒形状である。主部36は円錐台形状の上流部34の下流端から延在する円筒形状である。そして、先端排出部38は円筒形状の主部36の下流端から延出されている。この先端排出部38は主部36よりも小径であり、主部36と同心状に配置されている。先端排出部38の先端は開口されており、練和されたペーストの排出口を構成する。主部36の下流端と先端排出部38の上流端とは、ケーシング28の中心軸線に対して垂直に延在する環状壁50によって接続されている。
【0022】
上述したとおりのケーシング28は、図1及び図2を比較参照することによって明確に理解される如く、その装着部32を突出ブロック6に被嵌せしめ、そして係止スロット42の各々の受入口43から係止部44に突出ブロック6の装着ピン22を導入し、次いでケーシング28を図2において右から見て時計方向に回転せしめて装着ピン22を係止スロット42の係止部44の端部に位置せしめることによって、突出ブロック6に着脱自在に装着される。突出ブロック6からケーシング28を離脱する際には、ケーシング28を図2において反時計方向に回転せしめて突出ブロック6の装着ピン22を係止スロット42の受入口43に位置せしめ、次いでケーシング28を下流側に移動せしめればよい。ケーシング28の装着及び離脱の際には、装着部32に形成されている把持片48に指を掛けてケーシング28を所要方向に回転することができる。
【0023】
次に、図1及び図2と共に図4を参照して攪拌部材30について説明すると、適宜の合成樹脂から一体に成形することができる攪拌部材30は、円筒状外周面を有する基部52を含んでいる。この基部52にはその上流端から下流方向に延びる盲孔54が形成されている。盲孔54の主部は上述した回転軸24の主部に対応して円形断面形状を有するが、盲穴54の底部56(図2及び図4において右端部)は回転軸24の駆動連結部26に対応して略長方形状の断面形状を有する。攪拌部材30は上流攪拌部58、中間非攪拌部60及び下流攪拌部62に区画されていることが重要である。上流攪拌部58及び下流攪拌部62の各々においては、基部52から放射状に突出する複数個(図示の場合は4個)の攪拌羽根64及び66が周方向に等角度間隔をおいて形成されている。攪拌羽根64の各々の角度位置と攪拌羽根66の各々の角度位置は整合せしめられているのが好適である。一方、中間非攪拌部60において攪拌羽根が存在しない。上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64の各々には、その上流側部分から更に半径方向外方に突出する延長部68が付設されている。下流攪拌部62に形成されている攪拌羽根66の各々の突出端縁には、軸線方向に間隔をおいて複数個(図示の場合は2個)の切欠70が形成されている。切欠70の底縁は弧状でよい。上流攪拌部58の軸線方向長さL1、中間非攪拌部60の軸線方向長さL2及び下流攪拌部62の軸線方向長さL3の相対的比率は、L1=0.06乃至0.44×(L1+L2+L3)、L2=0.12乃至0.60×(L1+L2+L3)、L3=0.31乃至0.78×(L1+L2+L3)程度であるのが好適である。中間非攪拌部60の軸線方向長さ比が過小になると、ケーシング28の先端排出部38から排出されるペーストの初期排出部分において第一のペーストに対する第二のペーストの混入が不充分になる傾向がある。逆に、中間非攪拌部60の軸線方向長さ比が過大になると、第一のペーストと第二のペーストとの練和が不充分になる傾向がある。
【0024】
図1、図2及び図4を参照して説明を続けると、攪拌部材30の下流端(図2及び図4において右端)において、基部52には攪拌羽根66間に位置する凹部72が形成されている。かかる凹部72の各々の底縁は弧状でよい。
【0025】
上述したとおりの攪拌部材30は、上述したケーシング28を突出ブロック6に装着するのに先立って、上述した回転軸24に装着される。攪拌部材30の盲孔54内に回転軸24を挿入せしめることによって、回転軸24に攪拌部材30が装着される。回転軸24の駆動連結部26が盲孔54の底部56内に位置せしめられ、従って回転軸24の回転が攪拌部材30に伝動せしめられ、回転軸24の回転に応じて攪拌部材30が回転せしめられる。図2を参照することによって理解されるとおり、回転軸24に所要とおりに攪拌部材30を装着し、次いで突出ブロック6に所要とおりにケーシング28を装着すると、攪拌部材30はケーシング28内にケーシング28と同心状に位置せしめられる。そして、攪拌部材30の上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64の下流部(延長部68が存在しない部分)の先縁はケーシング28の主部36の内周面に近接して位置し、攪拌羽根64の延長部68はケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面近傍に延出する。攪拌部材30の下流攪拌部62に形成されている攪拌羽根66の先縁はケーシング28の主部36の内周面に近接して位置する。また、攪拌部材30の下流端(図2において右端)は、ケーシング28の環状壁50の内面に近接乃至接触せしめられる。
【0026】
上述したとおりのペースト練和装置の作用を要約して説明すると、次のとおりである。作動スイッチ(図示していない)を閉成してペースト練和装置の作動を開始すると、回転軸24の回転駆動が開始されて攪拌部材30が所定方向に回転せしめられる。また、第一のペースト流路14及び第二のペースト流路16に付設せしめられている送給手段(図示していない)の作動が開始されて、第一のペースト流路14を通して第一のペーストが流動せしめられて第一のペースト流出口10から流出せしめられ、そしてまた第二のペースト流路16を通して第二のペーストが流動せしめられて第二のペースト流出口12から流出せしめられる。第一のペースト流出口10から流出された第一のペーストは、回転せしめられている攪拌部材30の上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64の作用によって周方向に移動せしめられながら下流に、即ち攪拌部材30の中間非攪拌部60に流動せしめられる。同様に、第二のペースト流出口12から流出された第二のペーストも、攪拌部材30の上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64の作用によって周方向に移動せしめられながら下流に、即ち攪拌部材30の中間非攪拌部60に流動せしめられる。攪拌部材30の上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64は、特定角度位置に配置されている第一のペースト流出口10及び第二のペースト流出口12から流出せしめられた第一のペースト及び第二のペーストを周方向全体に渡って分散せしめ、かくして第一のペースト及び第二のペーストの流動を円滑なものにせしめる。
【0027】
既に言及した如く、基材ペーストを構成する第一のペーストの流出量に対して硬化剤ペーストを構成する第二のペーストの流出量は相当小さいこと、第一のペーストと第二のペーストの流動性が幾分か異なること等に起因して、通常、第二のペーストの流出開始よりも若干早く第一のペーストの流出が開始される。然るに、本発明に従って構成されたペースト練和装置においては、攪拌部材30には中間非攪拌部60が区画されており、かかる中間非攪拌部60には攪拌羽根が配設されておらず、それ故に中間非攪拌部60は所謂溜部としての機能を有する。即ち、先に流出開始され中間非攪拌部60に流入した第一のペーストはそこに一時的に滞留し、そして若干遅れて流出開始された第二のペーストが上流攪拌部58から中間非攪拌部60に流入せしめられて、そこに滞留している第一のペーストに混入せしめられる。従って、第一のペーストの流出開始と第二のペーストの流出開始とに若干の時差が存在するにもかかわらず、ペーストの初期排出部分においても第一のペーストに第二のペーストが充分良好に混入せしめられる。
【0028】
次いで、第一のペースト及びこれに混入された第二のペーストは、攪拌部材30の中間非攪拌部60から下流攪拌部62に流動せしめられる。そして、この下流攪拌部62においては、攪拌羽根66の作用によって周方向に移動せしめられながら下流方向に漸次流動せしめられ、第一のペーストと第二のペーストが充分良好に練和される。しかる後に、練和された第一のペースト及び第二のペーストはケーシング28の先端排出部38に流入し、この先端排出部38を流動してその先端から排出される。ケーシング28と攪拌部材30との間を通って流動する第一のペースト及び第二のペーストは、攪拌部材30を下流方向に強制する。従って、作動前においては攪拌部材30の下流端とケーシング28の環状壁50の内面との間に若干の隙間が存在していても、攪拌部材30が下流方向に強制されて環状壁50の内面に当接せしめられる傾向がある。然るに、本発明に従って構成されたペースト練和装置においては、攪拌部材30の下流端において攪拌羽根66間に位置する凹部72が攪拌部材30の基部52に形成されている。それ故に、攪拌部材30の下流端がケーシング28の環状壁50の内面に当接せしめられても、練和された第一のペースト及び第二のペーストは凹部72を通ってケーシング28の先端排出部38に進入することができ、第一のペースト及び第二のペーストの流動が阻害されることがない。
【0029】
練和された第一のペースト及び第二のペーストがケーシング28の先端排出部38から所要量排出されると、作動スイッチ(図示していない)を開放し、攪拌部材30の回転を停止すると共に、ペースト供給手段の第一のペースト流出口10からの第一のペーストの流出及び第二のペースト流出口12からの第二のペーストの流出を停止する。そして、相互に混合されたがケーシング28から排出されることなくケーシング28内に残留している第一のペースト及び第二のペーストが硬化するのに要する時間を経過した後に、ペースト供給手段4の突出ブロック6からケーシング28を離脱せしめると共に回転軸24から攪拌部材30を離脱せしめる。しかる後に、次回の使用のために、ケーシング28内に残留している硬化ペーストをケーシング28から除去する。本発明に従って構成されたペースト練和装置においては、攪拌部材30の上流攪拌部58に形成されている攪拌羽根64に、ケーシング28の円錐台形状の上流部34の内面近傍に延出する延長部68が形成されている。それ故に、攪拌部材30の回転停止直前において、第一のペースト流出口10から流出した直後の第一のペーストにも第二のペースト流出口12から流出せしめられた直後の第二のペーストが混入される。従って、ケーシング28内に残留せしめられる第一のペースト及び第二のペーストの実質上全てが硬化せしめられ、ケーシング28内に未硬化状態であり、それ故に除去が困難である第一のペースト及び第二のペーストが残留せしめられてしまうことがない。
【0030】
【発明の効果】
本発明のペースト練和装置においては、第一のペースト流出口からの第一のペーストの流出開始と第二のペースト流出口からの第二のペーストの流出開始との間に若干の差が存在しても、ケーシングから排出されるペーストの初期排出部分を含む全体に渡って、第一のペーストに第二のペーストを充分良好に混入され両者が所要とおりに練和される。
【0031】
また、本発明のペースト練和装置においては、ケーシングの円錐台筒状上流部の半径方向周縁領域においても第二のペーストが第一のペーストに混入され、それ故にケーシング内に除去が困難な未硬化状態の第一のペースト及び第二のペーストが残留することが充分に回避される。
【0032】
更に、本発明のペースト練和装置においては、被駆動回転軸に装着されている攪拌部材の先端がケーシングの環状壁の内面に押し付けられても、ケーシングの先端排出部に充分良好にペーストが流入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って構成されたペースト練和装置の好適実施形態における主要構成要素を示す分解斜面図。
【図2】図1に図示するペースト練和装置の主要構成要素を示す断面図。
【図3】図1に図示するペースト練和装置におけるケーシングを、一部を側面図で一部を断面図で示す図。
【図4】図1に図示するペースト練和装置における攪拌部材を、一部を側面図で一部を断面図で示す図。
【符号の説明】
4:ペースト供給手段
6:ペースト供給手段の突出ブロック
8:ペースト供給手段の先端面
10:第一のペースト流出口
12:第二のペースト流出口
14:第一のペースト流路
16:第二のペースト流路
24:回転軸(回転手段)
28:ケーシング
30:攪拌部材
32:ケーシングの装着部
34:ケーシングの上流部
36:ケーシングの主部
38:ケーシングの先端排出部
50:ケーシングの環状壁
52:攪拌部材の基部
58:攪拌部材の上流攪拌部
60:攪拌部材の中間非攪拌部
62:攪拌部材の下流攪拌部
64:攪拌羽根
66:攪拌羽根
68:攪拌羽根の延長部
70:攪拌羽根の切欠
72:攪拌羽根の凹部
Claims (6)
- 先端面に開口する第一のペースト流出口まで延びる第一のペースト流路及び該先端面に開口する第二のペースト流出口まで延びる第二のペースト流路が配設されているペースト供給手段と、該ペースト供給手段の該先端面よりも下流に配置された筒状主部を有するケーシングと、該ケーシングの中心軸線を中心として回転自在に該ケーシング内に配設された攪拌部材と、該攪拌部材を攪拌せしめるための回転手段とを具備し、該第一のペースト流出口から流出せしめられた第一のペーストと該第二のペースト流出路から流出せしめられた第二のペーストとが該ケーシングと該攪拌部材との間を通って流動せしめられる間に、回転駆動せしめられる該攪拌部材の作用によって第一のペーストと第二のペーストとが練和せしめられるペースト練和装置において、
該攪拌部材は上流攪拌部、中間非攪拌部及び下流攪拌部を含み、該上流攪拌部及び該下流攪拌部においては放射状に突出する攪拌羽根が形成されているが、該中間非攪拌部においては攪拌羽根が存在しない、ことを特徴とするペースト混和装置。 - 該ペースト供給手段の該先端面は円形状であり、該ケーシングの該筒状主部は円筒形状であり、該攪拌部材は該ケーシング内を同心状に延在する円筒状外周面を有する基部を含み、該攪拌羽根は該基部から放射状に突出している、請求項1記載のペースト練和装置。
- 該攪拌部材の該下流攪拌部に形成されている攪拌羽根の突出端縁には軸線方向に間隔をおいて複数個の切欠が形成されている、請求項2記載のペースト練和装置。
- 該ケーシングは該ペースト供給手段の該先端面から先細形状に延びる円錐台筒状上流部を含み、該筒状主部は該円錐台筒状上流部に続いて延在し、該攪拌部材の該上流攪拌部は該ケーシングの該円錐台筒状上流部と該筒状主部の上流端部とに渡って延在し、該攪拌部材の該上流攪拌部に形成されている該攪拌羽根には、該ケーシングの該円錐台筒状上流部の内面近傍まで延びる延長部が付設されている、請求項2又は3記載のペースト練和装置。
- 該ケーシングは、該筒状主部の下流端から該筒状主部と同心状に延出する、該筒状主部よりも小径の円筒形状である先端排出部と、該筒状主部の下流端と該先端部の上流端との間を該ケーシングの中心軸線に対して実質上垂直に延在する環状壁とを含み、該攪拌部材の下流端は該ケーシングの該環状壁の内面に近接乃至接触せしめられ、該攪拌部材の該基部の外径は該ケーシングの該先端排出部の内径と略同一であり、該攪拌部材の該基部の下流端には凹部が形成されており、練和された第一のペーストと第二のペーストは該凹部を通って該ケーシングの該先端排出部内に流動することができる、請求項2から4までのいずれかに記載のペースト練和装置。
- 該上流攪拌部、該中間非攪拌部及び該下流攪拌部の軸線方向長さを夫々L1、L2及びL3とすると、L1=0.06乃至0.44×(L1+L2+L3)、L2=0.12乃至0.60×(L1+L2+L3)、L3=0.31乃至0.78×(L1+L2+L3)である、請求項1から5までのいずれかに記載のペースト練和装置。
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