JP3793262B2

JP3793262B2 - 腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具

Info

Publication number: JP3793262B2
Application number: JP27806795A
Authority: JP
Inventors: 秀樹塚本; 正富佐々木
Original assignee: Terumo Corp
Current assignee: Terumo Corp
Priority date: 1995-10-25
Filing date: 1995-10-25
Publication date: 2006-07-05
Anticipated expiration: 2015-10-25
Also published as: JPH09117503A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として腹膜透析法において、腹腔内に留置して使用される、腹腔内留置カテーテルの体外出口部感染防止を目的としたカフ部材を導入装着するための装着治具およびこれを用いた前記カフ部材の装着方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
透析療法は、主として腎機能の一部を代行して、体内に蓄積された水や尿素、クレアチン等の尿毒物質の除去を目的として行われる。腹膜透析療法は、透析液（透析灌流液）を腹腔内に注入し、一定時間経過後に透析液の排液を腹腔外に排出するものであり、患者に対する時間的拘束を軽減させ、社会復帰を可能とした療法であるため患者数が増加している。この腹膜透析療法においては、透析液の注入、排出は、腹腔内に留置される腹腔内留置カテーテルと、このカテーテルに接続される透析液交換システムとにより行われる。
【０００３】
従来の腹腔内留置カテーテルには、可撓性のある管状体のカテーテルの外縁２ケ所にダクロン製不織布等からなる固定用カフ部材が設けられており、一方を腹膜に、他方を腹直筋筋膜に縫合し、該カテーテルを逆Ｕ字状に固定して留置し、腹腔内と腹壁外との間に皮下トンネルを形成するようにしたものがある。この腹腔内留置カテーテルでは、患者にカテーテルを移植した際に、生体組織がカテーテルを異物と認識し、生体組織とカテーテルが密着しないため表皮がカテーテルに沿って内側に入り込むいわゆるダウングロース（Down Growth）が生じ、これが深くなると、消毒が行き届かず細菌の感染経路を形成することとなり、皮膚の炎症やひいては腹膜炎まで引き起こすという問題があった。
【０００４】
そこで、上記カテーテルの外縁に、生体適合性に優れた素材からなる感染防止用カフ部材をさらに設け、該カフ部材を表皮下に位置させ、生体組織をカフ部材内に増殖させることによりカテーテルの経皮部付近の生体組織をカテーテル周辺に密集させ、ダウングロースの進行を抑制するようにしたものが提案されている（特願平７−１６８９１号等）。さらに、該感染防止用カフ部材をカテーテル外縁に沿って移動可能に設けることにより、患者の体型に合わせて該カフ部材の位置を調整したり、ダウングロースの深さ調整を可能ならしめたものが提案されている（同前）。この腹腔内留置カテーテルは、伸縮性を有するカテーテル本体を伸張し、その外径を該感染防止用カフ部材の内径より小さくして該カフ部材をカテーテル外縁に沿って所定の位置に移動し、ついでカテーテルの伸張を解き外径を復元させて該カフ部材を固定するものであるが、該カテーテルの留置術の手順上、術中に該カフ部材をカテーテルの体外延出部先端に導入装着する必要がある。
【０００５】
しかし、術中において、カテーテルの体外延出部先端にその外径よりも小さい内径を有する該カフ部材を導入装着するのは極めて困難な作業であり、カテーテル延出部を鉗子等で挟み無理矢理伸張等していたので、カテーテル表面や該カフ部材を傷つけたり亀裂を生じさせるといった問題があった。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カテーテル外縁に沿って移動可能な感染防止用カフ部材を有する上記腹腔内留置カテーテルの留置術において、該カテーテル等を損傷させることなく簡便かつ確実に、該カテーテルの体外延出部先端に該カフ部材を導入装着しうる腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具およびこれを用いた腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着方法により達成される。
【０００９】
すなわち、本発明の一は、伸縮性を有する管状体からなるカテーテルと該カテーテル外縁に沿って移動可能に設けられた感染防止用カフ部材とからなる腹腔内留置カテーテルへの前記カフ部材の装着に用いる治具であって、少なくとも一端が伸縮性を有する管状体からなり、長軸方向に伸張することにより前記伸縮性端部が前記カテーテルの外径より大なる内径から前記カフ部材の内径より小なる外径へ径収縮することを特徴とする腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具である。
【００１０】
また、本発明は、網目構造を有する前記腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具である。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具を、図をもって具体的に説明する。
【００１６】
図１は、カテーテル外縁に沿って移動可能な感染防止用カフ部材を有する腹腔内留置カテーテルの一例を示す概略側面図である。該カテーテルは、腹膜透析法において、透析液を腹腔内に注入し、一定時間経過後に透析液排液を腹腔外に排出するための透析液の交換流路として用いられる。すなわち、該カテーテルの一端を腹壁を貫通させて患者の腹腔内に挿入し、該端部を腹腔内に留置するとともに、該カテーテルの他端を腹壁外に延出させた状態を維持しながら患者は日常生活を営み、一定時間毎に該カテーテルを介して透析液を交換するものである。
【００１７】
１はカテーテル本体であり、例えばシリコーンゴム等の伸縮性を有する管状体からなる。２および３は固定用カフ部材である。当該カテーテルの留置術に際しては、カテーテル体外出口部からの汗等の侵入を防止するため、カテーテル体外出口部が下向きになるよう、カテーテル本体１を逆Ｕ字状に固定するが、この際、固定用カフ部材２を腹膜に、固定用カフ部材３を腹直筋筋膜に縫合固定することによりカテーテルを固定するものである。固定用カフ部材２および３は、いずれもダクロン製不織布等からなる円筒体であり、シリコーン系接着剤等を介してカテーテル本体１に固定されている。
【００１８】
４は感染防止用カフ部材であり、カテーテルの経皮部の表皮下に位置させることにより、生体組織をカフ部材内に増殖させ、カテーテルの経皮部付近の生体組織をカテーテル周辺に密集させて、ダウングロースの進行を抑制するものである。感染防止用カフ部材４は円筒体からなり、カテーテル本体１の外縁に沿って移動可能に設けられている。すなわち、感染防止用カフ部材４はカテーテル本体１の外径よりやや小さな内径を有し、カテーテル本体１を伸張しその外径をカフ部材４の内径より小さくしてカフ部材４をカテーテル本体４の外縁に沿って所定の位置に移動し、ついでカテーテルの伸張を解き外径を復元させてカフ部材４を固定するものである。このような感染防止用カフ部材４の内径は、カテーテル本体１の外径の８８〜９６％がよい。感染防止用カフ部材４の内径が８８％以下ではカテーテル本体１の変形をきたし透析液の交換時にカテーテル管の閉塞を招く恐れがあり、９６％以上ではカフ部材のカテーテル本体への固定が不十分となりカテーテルの延出部が動いたときに経皮部付近の生体組織がカテーテルから脱落しやすく感染防止効果が低下する。また、感染防止用カフ部材４の材質としては、コラーゲン多孔質体、ポリエステル、セルロース、キチン、キトサン等の繊維からなる織布や不織布、またはシリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性フッ素樹脂等により内腔面を形成し、外面にハイドロキシアパタイト、動物硬組織を熱処理により有機物を分解した焼成材料、炭酸カルシウム等の無機材料を複合配合したもの等が挙げられる。この中では、コラーゲンが好ましく、特に線維化コラーゲンと変性コラーゲンとからなるコラーゲン多孔質体が好適である。
【００１９】
図２は、本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具の一実施例を示す概略斜視図である。５は本発明の装着治具の本体である。当該カテーテルの留置術に際しては、固定用カフ部材２および３を縫合固定後、感染防止用カフ部材４をカテーテルの体外延出部先端１１に装着し所定位置に移動固定するという手順が採られるが、装着治具５は、該術中においてカテーテル体外延出部先端１１に感染防止用カフ部材４を導入装着するために用いられる。本発明の装着治具５は伸縮性を有する管状体からなり、通常状態でカテーテルの外径より大きな内径を有し、長軸方向に伸張することにより感染防止用カフ部材４の内径より小さな外径に径収縮するものが使用される。装着治具５のすべての部分が前記伸縮性を有する必要はなく、少なくともその一端が有すればよい。このような装着治具５の材質としては、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等からなる繊維が挙げられ、なかでも網目構造を有するものが径収縮率が大きく特に好ましい。６は装着治具５の内径を拡張し、カテーテルの外径より大きい内径に保持するための円筒状の内管である。このように、装着治具５は、使用前においてはカテーテルの外径より大きな外径を有する内管６が挿入された状態で保管されていてもよく、この場合、装着治具５の使用直前に内管６を取り外すことにより、装着治具５がカテーテルの外径より大きい内径に保持されているので、装着治具５のカテーテルへの装着が容易となり特に好ましい。このような内管６の材質としては、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）、ポリカーボネート、ステンレス等が挙げられる。
【００２０】
図３(a) 〜(g) は、本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材の装着方法を表した概念図である。まず、装着治具５から内管６を抜脱し、カテーテル１１の外径より大きな内径に拡張保持された側の装着治具５の端部を、カテーテル体外延出部１１の先端部に被せる（図３(a) ）。さらに装着治具５の他端を感染防止用カフ部材の内腔に挿通する（図３(b) ）。次に、装着治具５の両端を把持し、装着治具５のカテーテル側端部の内径が感染防止用カフ部材４の内径より小さくなるまで、装着治具５を長軸方向に伸張し、これによりカテーテルの体外延出部１１の先端の外径を感染防止用カフ部材４の内径未満に収縮させる（図３(c) ）。感染防止用カフ部材４をカテーテル体外延出部１１の先端まで移動する（図３(d) ）。装着治具５の伸張を解き、カテーテルの体外延出部１１の先端の外径を復元させ、同時に装着治具５をカテーテルから抜脱する（図３(e) ）。その後、カテーテル本体を伸張しその外径を感染防止用カフ部材５の内径より小さくして、感染防止用カフ部材５がカテーテルの経皮部の表皮下に位置するよう移動し、カテーテル本体の伸張を解いて外径を復元させ、感染防止用カフ部材５を固定する（図３(f) ）。
【００２１】
【実施例】
［実施例１］
繊維径１００μｍのポリエチレン製繊維を丸編機により内径５ｍｍの編目構造管状体を得た。この得られた管状体の長さ２００ｍｍを切り取り、長軸方向に伸張し、最小径４ｍｍの状態で片端にシリコーン系接着剤を付け端部のほつれを防止した。他端にもシリコーン系接着剤を付け端部のほつれを防止するとともにテーパー処理を行った。接着剤乾燥後、端部ほつれ防止処理のみを行った側の内径を拡張し内径５ｍｍ、外径６ｍｍ長さ５０ｍｍのＰＴＦＥ製チューブを端部より３０ｍｍの位置まで挿入した。
【００２２】
［実施例２］
腹腔内留置カテーテルの留置術において、本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具を使用した例を示す。腹腔内留置カテーテルは、シリコーンゴムよりなる管状体で、その全長は４３５ｍｍ、内径２．７ｍｍ、外径５．０ｍｍ、またその管状体の肉厚の長軸方向にＸ線不透過のラインが内包され、皮下トンネル部の留置部側よりダクロン不織布製の第１および第２のカフが、それそれシリコーン系接着剤により固定されたものを使用した。このカテーテルの留置部を腹膜小切開孔よりダグラスに挿入し、第１カフを腹膜と縫合固定した後、第１カフ切開創の上端からタンネラーにて第２カフ皮膚切開創に向け筋膜直上でカテーテル延出部を通した。次にタンネラーを外し、実施例１で作製した装着治具から、内径を拡張させた状態でテフロン製内管を取り外し、該端部をカテーテルの体外延出部に被せた。装着治具の伸張部より外径８．７ｍｍ、内径４．７ｍｍ、長さ１０ｍｍのコラーゲン多孔体からなる感染防止用カフ部材を通し、装着治具のカテーテル装着側片端を指で固定した状態で他端を伸張し、カテーテル径を収縮させた。感染防止用カフ部材の内径よりカテーテル外径を収縮させた状態で装着治具の外縁上をコラーゲン多孔体の管状体を通し、カテーテルに導入した。導入後、装着治具を外し、カテーテルを伸張させた状態で感染防止用カフ部材を表皮より７〜８ｍｍの皮下トンネル内に位置させるように移動し、カテーテルを復元させ装着固定した。再度タンネラーをカテーテルに装着し、第２カフの切開創から下方に向けて第２カフより４、５ｃｍの所でカテーテルを皮膚から出し、第２カフを筋膜に縫合固定した。２ケ所の切開創は皮下脂肪層、皮膚を２層縫合した。
【００２３】
［実施例３］
内径を変えたコラーゲン多孔体からなる感染防止用カフ部材を作製し、実施例１で作製した装着治具を用い、外径５．０ｍｍ、内径２．７ｍｍのシリコーン製カテーテルに感染防止用カフ部材を導入固定した。この感染防止用カフ部材の固定性についてカテーテルを豚腹部皮下組織にタンネラーにて挿入し調べた。その結果を表に示す。表中、感染防止用カフ部材の固定性の評価は、感染防止用カフ部材を導入固定したカテーテルを皮下組織に挿入したとき、感染防止用カフ部材がずれずに所定位置に設置できたものを○、皮下トンネル内には挿入できるが感染防止用カフ部材の位置がずれてしまったものを△、皮下トンネル手前でずれてしまって感染防止用カフ部材を皮下トンネル内に挿入できなかったものを×で示した。また、カテーテル本体の変形度の評価は、カテーテルに感染防止用カフ部材を導入固定したとき、カテーテル外周のみ変形したものを○、さらにカテーテル内腔が変形したものを△、さらに感染防止用カフ部材が大きく変形したものを×で示した。
【００２４】
【表１】

【００２５】
【発明の効果】
本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具およびこれを用いた腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着方法によれば、カテーテル外縁に沿って移動可能な感染防止用カフ部材を有する腹腔内留置カテーテルの留置術において、該カテーテルや該カフ部材を損傷させることなく簡便かつ確実に、該カテーテルの体外延出部先端に該カフ部材を導入装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】カテーテル外縁に沿って移動可能な感染防止用カフ部材を有する腹腔内留置カテーテルの一例を示す概略側面図である。
【図２】本発明の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具の一実施例を示す概略斜視図である。
【図３】腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材の装着方法を示す概念図である。
【符号の説明】
１…カテーテル本体
１１…体外延出部
２、３…固定用カフ部材
４…感染防止用カフ部材
５…装着治具
６…内管

Claims

伸縮性を有する管状体からなるカテーテルと該カテーテル外縁に沿って移動可能に設けられた感染防止用カフ部材とからなる腹腔内留置カテーテルへの前記カフ部材の装着に用いる治具であって、少なくとも一端が伸縮性を有する管状体からなり、長軸方向に伸張することにより前記伸縮性端部が前記カテーテルの外径より大なる内径から前記カフ部材の内径より小なる外径へ径収縮することを特徴とする腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具。
網目構造を有する請求項１記載の腹腔内留置カテーテル感染防止用カフ部材装着治具。