JP3791556B2 - 触媒再生方法 - Google Patents

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液相水素化反応における触媒の再生方法に関し、特にヒドロキシピバルアルデヒドを水素化してネオペンチルグリコールを製造する方法において、反応使用中に失活した触媒の再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ネオペンチルグリコールは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、その他可塑剤、合成潤滑油、繊維加工剤、界面活性剤などの産業上広範囲な用途を持つ、工業的に極めて重要な原料である。ネオペンチルグリコールの製造方法としては、次の二通りの方法がある。
一つの方法は、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを、強アルカリ性触媒例えば苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化カルシウム等の存在下に、アルドール縮合反応と交叉カニッツァロ反応からなる二段の反応を行って目的物のネオペンチルグリコールを得る方法である。しかし、この方法では例えば苛性ソーダを用いると目的物のネオペンチルグリコールと等モル量のギ酸ソーダが副生するため、このギ酸ソーダを有効に利用しない限り工業的なネオペンチルグリコール製造方法としては成り立たないという欠点を有している。
【0003】
他の方法は、次の反応式によって、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドの反応により得られるヒドロキシピバルアルデヒドを、触媒の存在下に水素化して目的物のネオペンチルグリコールを得るものであり、ギ酸ソーダの副生を伴わない方法である。
【化1】
Figure 0003791556
この水素化法に関しては、特公昭49−33169号、特公昭53−17568号、英国特許第1219162号、米国特許第3920760号、米国特許第4021496号、英国特許第1048530号、EP特許第44412号、EP特許第4444号及び米国特許第4855515号等が知られており、水素化反応用触媒としてラネーNi系、Ni−Cr系、Cu−Zn系、Cu−Al系、Cu−Cr系、Cu−Cr−Ba系およびCu−Cr−Mn系等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
工業的に触媒を使用する場合、通常少なくとも数年の寿命が必要とされる。触媒活性等の性能が低下する原因としては、多くの要因が複雑に関係し合っていると考えられる。ヒドロキシピバルアルデヒドの水素化によるネオペンチルグリコール製造等における銅含有触媒の場合も、使用中の活性低下は複数の原因が絡みあっていると推定されるが、その要因としては主に重合や縮合で生じた高沸点物炭素質あるいは炭素質に変化し得る有機物が触媒表面上に蓄積することが考えられる。このような変化が微少であっても長期間使用する間に活性が低下し、触媒は有限の寿命を持っている。勿論、この触媒寿命とは活性が全く無くなることではなく工業的な尺度で判断される寿命である。
本発明の目的は、このように液相水素化反応において活性が低下した触媒を再生賦活して、触媒の使用期間すなわち触媒寿命を長くする方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、反応使用中に失活した触媒を、溶媒および/または反応生成液で洗浄したのち、水素化処理を行なうことにより触媒活性が賦活されることを見い出し本発明に到達した。即ち本発明は、ヒドロキシピバルアルデヒドを液相水素化してネオペンチルグリコールを製造する反応において反応使用中に失活した銅含有触媒を、(1)溶媒および/または反応生成液で洗浄する工程と、(2)水素濃度0.5容量%以上の実質的に酸素を含有しないガスにより120〜190℃で処理する工程からなる各工程を経ることを特徴とする触媒再生方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において▲1▼の洗浄工程で用いられる溶媒としては、水やアルコール類、ブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、或いはn−ヘプタン等の飽和炭化水素等の溶媒およびこれら混合物が用いられ、ヒドロキシピバルアルデヒドを水素化してネオペンチルグリコールを製造する反応においては、さらに反応帯を通過した実質的に原料のヒドロキシピバルアルデヒドを含まない反応生成物であるネオペンチルグリコールを含む反応生成液および/またはこれらの混合物を使用することができる。
ヒドロキシピバルアルデヒドを水素化してネオペンチルグリコールを製造する反応では、一般には触媒を反応器に充填し上部からヒドロキシピバルアルデヒド溶液、および水素を供給するトリクルベッド方式が用いられる。触媒再生賦活時には原料溶液の供給を止め、反応中の反応温度を保持した状態で、原料液の代わりに溶媒および/または反応生成液を流す。この操作により触媒上に吸着し、あるいは近傍に存在するヒドロキシピバルアルデヒドをすべて反応させると共に、既に重合あるいは縮合反応等で高沸点物に変化しつつある有機物を触媒表面から脱離する洗浄効果が認められる。
【0007】
最初の▲1▼の洗浄工程では、溶媒および/または反応生成液を流すことにより触媒上の吸着した原料、反応生成物、重合、縮合物の一部を溶解し脱離させることであるが、加圧下、温度を通常の反応温度付近に保持した状態で実施することにより、触媒層への付着物の液への溶解速度、溶解量が多くなり効果的となる。本工程を実施する工程の圧力は、広範囲に選ぶことができる。通常の反応圧力が望ましいが、実施する温度の条件下で液相を保持できる圧力であれば自由に選択することができる。また本工程の実施温度は広範囲に選ぶことができる。その圧力下で液相を保持できる温度であれば高い温度ほど効果があるが、必要以上の温度は溶媒等が熱により変質する恐れもあるので通常の水素化反応温度付近が望ましく反応温度を中心に±50℃〜100℃が更に好ましい。
【0008】
次の▲2▼水素含有ガスによる処理工程では、溶媒および、または反応生成液供給を停止し、水素ガスを含むイナートガスあるいは水素ガスを流すことにより、触媒に吸着した有機物の一部が水素化分解を受け炭素−炭素結合が切れて低分子量の有機物となり、一部は脱離し或いは脱離し易い状態に変化する。
▲2▼の工程では水素または希釈水素ガスなどの水素含有ガスを用いる。水素含有ガスは実質的に酸素を含有しないことが必要で、水素濃度は0.5容量%以上であればよいが、水素処理の目的と効果を考えると水素濃度は高い方が望ましく、通常水素化反応に使用する水素が用いられる。
また▲2▼の工程の処理圧力は広い範囲で選ばれ、常圧から通常の水素化反応の圧力まで任意に選ぶことができる。触媒表面上に吸着した高沸点有機物等を水素化して脱離しやすくすることが目的であるので、加圧下で行うことは有効である。
水素化処理温度は任意に選ぶことができる。水素化処理工程の目的からみて、触媒表面上に吸着した高沸点有機物を水素化反応により脱離し易くするために、反応速度、効果等から考えるとある程度高い温度が望ましく、50〜700℃、好ましくは100〜500℃の範囲が選ばれる。
【0009】
本発明において失活とは、目的の反応に対して触媒としての機能を完全に失うということではなく、工業的に生産性、ユーティリティー、コスト等の実用面で眺めた基準によるものである。
前述のように、反応使用中の触媒活性低下原因としては、いくつかの要因が考えられる。例えば一時的にあるいは長期使用により触媒が熱的負担を受け、触媒構成成分の結晶が成長したり、新しい化合物を形成したりしたことによる活性低下、また触媒の活性成分や構成成分に対し触媒毒となり得る成分の混入等によるいわゆる触媒の被毒作用で失活や永久被毒を受けた場合などがある。
本発明による再生賦活法は上記のような熱負荷による結晶の成長や触媒の被毒作用による触媒活性低下には効果が低く、特に液相水素化反応等において重合や縮合で生じた高沸点物質の触媒表面への付着による活性失活時に有効である。
【0010】
すなわちヒドロキシピバルアルデヒドを水素化してネオペンチルグリコールを製造する反応では原料のヒドロキシピバルアルデヒドはアルデヒド基を有し反応性が高い。そのため熱だけでなく触媒表面に存在する酸点あるいは塩基点などで重合や縮合し易く、高沸点の脱離し難い有機物に変化する。このように触媒表面への高沸点有機物質の吸着によって活性点が減少しこれが失活原因の主たるものである場合には、吸着有機物を触媒から脱離させることができれば触媒活性が回復される。
触媒表面上に吸着した高沸点有機物等は、有機溶媒等で洗浄することにより、触媒表面上の有機物を洗浄、溶出させ触媒表面上から脱離することができる。水素化反応は液相下不均一触媒系で行われることが多く、反応に用いられる溶媒や反応生成液で洗浄することができる。なお反応生成液で洗浄する場合には原料物質のなるべく含まない液を用いることが好ましい。ヒドロキシピバルアルデヒドの水素化の場合には、水およびメタノールの混合物、ネオペンチルグリコール水溶液、反応帯を通過した溶媒を含む反応生成液等が用いられる。
【0011】
▲1▼の洗浄工程のみでも失活した触媒の活性はある程度回復する。しかし▲1▼の工程のみでは一般に回復率は低く、しかもその後短期間で活性が低下し易い。これに対して本発明では、失活した触媒の溶媒による洗浄と水素処理を組み合わせることにより、触媒活性を大きく回復させ、その活性を長期間維持することができるようにする。
すなわち本発明では吸着しているよりも低分子量にすることにより脱離を容易にするものであり、▲2▼の水素含有ガスによる処理工程では、水素化分解を起こさせて吸着有機物を低分子量化するものである。なお酸素で吸着有機物を酸化して二酸化炭素と水に変化させ脱離を容易にすることもでき、酸素による酸化は有機物除去に効果的であるが、吸着有機物の量が多い時の酸化熱による触媒への熱負担がかかり、必要以上に温度が上昇すると、触媒有効成分である銅を始め他の構成成分の結晶成長が促進され、好ましくない結果をもたらす恐れがある。本発明の水素含有ガスによる処理では、このような触媒への熱負担が小さく、温度上昇が殆ど無いことから、触媒再生を極めて効率的に行うことができる。
【0012】
なお本発明の触媒再生法はヒドロキシピバルアルデヒドの水素化反応によるネオペンチルグリコールの製造のみならず、エステルの水素化反応によるアルコールの製造や、クロトンアルデヒドの水素化反応など、種々の液相水素化反応の触媒再生に用いられる。また触媒としては銅含有触媒だけでなく一般的に用いられる各種触媒、例えば担体に金属や貴金属を含浸させた担持型触媒にも適用することができる。
また本発明による触媒の再生方法は、▲1▼工程、▲2▼工程とも温度、圧力、溶液量、ガス流量、水素濃度などは固定化されたものでなく、操作を通して変化させ、状況に応じて条件変更をすることができる。
【0013】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例によって本発明が制限されるものではない。
【0014】
実施例
[触媒の調製] 重炭酸アンモニウム920gをイオン交換水9Lに溶解し、溶液を40℃とした。この溶液に硝酸銅1250gをイオン交換水8Lに溶解し、40℃とした溶液を攪拌しながら加えた。
一方酸化亜鉛84gを3.3Lのイオン交換水に加え30分攪拌した。このスラリーを銅スラリーに加え、炭酸ガスを0.5L/分の割合で85分間吹き込んだ。
その後70℃に昇温し30分保持した。次いで30分で40℃まで冷却した。この銅−亜鉛スラリーへオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(ZrO2 として25%)1680gをイオン交換水4Lに溶解した40℃の溶液と重炭酸アンモニウム610gをイオン交換水7.5Lに溶解した40℃の溶液を同時に攪拌下に注加した。生成した沈澱を濾過した後イオン交換水で洗浄した。
80℃で一晩乾燥後、380℃で2時間焼成した。焼成品を32メッシュパスに粉砕し、重量の3%のグラファイトを加え、よく混合して3φ×3hに打錠成型した。この触媒150mlを内径25φの反応管に充填し、水素、窒素の混合ガス気流下140℃で還元した。
【0015】
[水素化反応] ヒドロキシピバルアルデヒドのネオペンチルグリコール−水溶液を用いて水素化反応を行った。その原料液組成は、ヒドロキシピバルアルデヒド15.1wt%、ネオペンチルグリコール44.7wt%、エステルグリコール1.2wt%、トリエチルアミン1.1wt%、アセタール0.1wt%、その他0.2wt%、水37.6wt%であった。
反応条件は、触媒層最高温度130℃、圧力 90kg/cm2 G、LSV2.0hr-1、水素/ヒドロキシピバルアルデヒドのモル比1.3で測定した。ただし、反応開始より250日目までは圧力20〜120Kg/cm2 G、触媒層最高温度120〜190℃、LSV0.7〜2.5hr-1に変え、種々の条件下での実験を行った。
【0016】
[触媒再生処理] 反応開始より実反応日数372日目に、原料液供給を停止し、系内の圧力を40Kg/cm2 Gに下げ、水−メタノール溶液(1:1Vol比)を330g/hrの割合で24時間供給し触媒を洗浄した。次いで圧力40Kg/cm2 GのままH2 を4.81L/hrの割合で48時間供給した。
[水素化反応] 再び触媒層最高温度130℃、圧力90Kg/cm2 G、LSV2.0hr-1、水素/ヒドロキシピバルアルデヒドのモル比1.3の条件で反応を継続した。
表1に触媒再生処理前後での触媒の活性をヒドロキシピバルアルデヒド反応率で示した。
【0017】
比較例
実施例で調製された触媒を用い同様の水素化反応を行った後、次の操作を行った。
[触媒再生処理] 実反応日数362日目に原料液の供給を停止し、系内の圧力を40Kg/cm2 Gに下げ、水−メタノール溶液(1:1vol比)を330g/hrの割合で24時間供給し触媒を洗浄した。
[水素化反応]再び触媒層最高温度130℃、圧力90Kg/cm2 G、LSV2.0hr-1、水素/ヒドロキシピバルアルデヒドのモル比1.3の条件で反応を継続した。触媒再生処理前後での触媒の活性を表1に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0003791556
【0019】
【発明の効果】
実施例、比較例の結果より、水−メタノール溶液による洗浄のみでは一時的に反応率は回復するが、その後また低下し始めるのに対して、本発明により洗浄後さらに水素処理を行なうことにより、触媒の活性を大きく回復し、さらにその後も活性を長期間維持することができることが分かる。
本発明の触媒再生方法は反応器に触媒を充填したまま容易に行うことができ、極めて有効に触媒再生が行われることから、本発明の工業的意義は大きい。

Claims (3)

  1. ヒドロキシピバルアルデヒドを液相水素化してネオペンチルグリコールを製造する反応において反応使用中に失活した銅含有触媒を、(1)溶媒および/または反応生成液で洗浄する工程と、(2)水素濃度0.5容量%以上の実質的に酸素を含有しないガスにより120〜190℃で処理する工程からなる各工程を経ることを特徴とする触媒再生方法。
  2. 触媒が銅酸化物の他、亜鉛、ジルコニウムの化合物を含む触媒である請求項に記載の触媒再生方法。
  3. 失活した触媒を溶媒および/または反応生成液で洗浄する工程が、水およびメタノールの混合物、ネオペンチルグリコール水溶液、または反応帯を通過した溶媒を含む反応生成液である請求項に記載の触媒再生方法。
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