JP3791086B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光走査記録装置や光通信装置に用いられる半導体レーザを駆動する駆動回路に関し、特に、半導体レーザの光出力をアナログ変調する際の応答性を向上させた半導体レーザ駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、光走査記録装置において、半導体レーザから発生する光ビームを感光性記録材料上で走査し該記録材料にデータの記録を行う装置等が実用化されており、また、光通信装置においても、半導体レーザの光出力を変調した光信号を光ファイバーを介して伝送する装置等が広く使用されている。
【0003】
これら光走査記録装置や光通信装置等で使用される半導体レーザは、駆動電流を変化させることによって、半導体レーザから発生する光出力を直接変調することが可能である。この駆動電流を制御する回路は、通常、光量指令信号によって設定される所望の光出力が半導体レーザから正確に発生するように、APC(Automatic Power Control)回路を設けて光出力を安定にするような制御を行うことが多い。従来のAPC回路は、半導体レーザの前方出射光、或いは後方出射光の一部を分岐させたモニタ光の光量を検出し、該光量と前記光量指令信号が示す設定光量との差を解消する方向に半導体レーザの駆動電流を制御するように構成されている。しかし、半導体レーザは、図2に示すように、駆動電流に対する光出力特性が自然発光領域(LED領域)とレーザ発光領域とで著しく変化する。広範囲に光出力を変化させて半導体レーザを用いるためには、駆動電流に対する光出力特性が線形であるレーザ発光領域だけでなく、自然発光領域でも半導体レーザを使用する必要があるが、自然発光領域では駆動電流の変化に対する光出力変化が小さく、そのため、変調応答性が悪化するという問題があった。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決するための手段が種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平2−211683号公報で公知の半導体レーザ駆動回路においては、所定値以上の信号を押さえる信号制限回路、及び信号の高周波成分を抽出するハイパスフィルタに光量指令信号を入力して補償信号を作成し、該補償信号を光量指令信号に加えることによって、低光量領域での変調応答性を向上させている。つまり、図10に示す自然発光領域における補償前のフィードバックループの一巡伝達特性61及びレーザ発光領域における補償前のフィードバックループの一巡伝達特性62に対して、上記の補償信号を光量指令信号に加えない場合の閉ループ特性は、図11(a)の実線71で示したように、自然発光領域の特性は高速応答性の低い特性となってしまう。そこで、光量指令信号を信号制限回路及びハイパスフィルタに入力して補償信号を作成し、該補償信号を光量指令信号に加えた、図11(b)の破線に示すような信号を用いて半導体レーザを駆動すると、自然発光領域における閉ループ特性は、図11(a)の破線で示す特性71′のように、図11(a)の実線で示すレーザ発光領域の特性72′と同等の特性に改善される。なお特性72′の曲線は仮想の特性曲線であり、自然発光領域で高周波特性をレーザー発光領域と同等に改善した状態の曲線である。
【0006】
また、例えば、特開昭63−204522号公報で公知のレーザ記録装置では、APC回路におけるフィードバック回路のループゲインを光量指令信号に基づき一定に制御することによって、低光量領域での変調応答性を向上させている。即ち、前述した図10に示す補償前のフィードバックの一巡伝達特性61,62に対して、図11に示すようなループゲインを一定に制御する補償を特性61に対して行い、図12に示すような補正後のフィードバックループの一巡伝達特性81,82とすることによって、自然発光領域からレーザ発光領域までの全光量で一定の伝達特性となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した特開平2−211683号公報で公知の半導体レーザ駆動回路では、半導体レーザの光量の変化に対応した信号が帰還される前の光量指令信号から補償信号を作成し、該補償信号を光量指令信号に重畳して付加するため、この補償信号は、半導体レーザの光量の変化には対応していない開ループでの補償となっている。従って、特開平2−211683号公報の半導体レーザ駆動回路では、光量指令信号に対して実際の光量が変動した場合に、精密な補償が行えないという問題がある。例えば、温度変化によって半導体レーザの駆動電流に対する光出力特性が変化した場合に、変調応答性が大きく変動してしまうという問題がある。
【0008】
また一般に、矩形波、鋸波などは波長の異なる正弦波の成分に分解できる。特開昭63−204522号公報で公知のレーザ記録装置では、例えば矩形波の様にステップ状に急変する光量指令信号が入力されると波長の異なる複数の正弦波が入力された状態となり、発振もしくは応答性劣化が生じることがあるという問題がある。即ち、ステップ状に急変する光量指令信号が自然発光領域の信号成分とレーザー発光領域の信号成分を含む場合は、特開昭63−204522号公報で公知のレーザ記録装置は自然発光領域に適したゲインとレーザー発光領域に適したゲインのいずれが選択されるのかが不定になってしまう。つまり、ループゲインを一定に制御しようとしても同時に異なる2つのループゲインを選択することは不可能だから、適正なループゲインが選択されるとは限らない。このために、ステップ状に急変する光量指令信号が入力された場合、該光量指令信号の立ち上がり時にループゲインが高すぎて発振し、または立ち下がり時にループゲインが低すぎて駆動電流がなかなか下がらないという現象が発生し、回路の動作が極めて不安定になるという問題がある。従って特開昭63−204522号公報で公知のレーザ記録装置は階調変化が極めてなだらかな光量指令信号でないと実用に耐えず、あらゆる光量指令信号に対応しようとする光記録装置や光通信装置には採用しがたいという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、半導体レーザを温度等による特性変化に対して安定で精密な補償が可能な閉ループでの補償が行え、且つ、光量0を含むあらゆる光量指令信号に対応しようとする光記録装置や光通信装置に採用できる半導体レーザ駆動回路を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、入力された光量指令信号に基づき半導体レーザを駆動し、該半導体レーザから発せられるレーザ光の光量を制御する半導体レーザ装置において、前記レーザ光の光量をモニタし、該光量に応じた帰還信号を出力する光量モニタ部と、前記光量指令信号と前記帰還信号との偏差に応じて半導体レーザ駆動信号を生成する駆動制御部と、前記半導体レーザ駆動信号に線形対応した駆動電流を出力する線形駆動部と、前記半導体レーザ駆動信号のレベルが漸増すると次第にゲインが低くなり、半導体レーザ素子の非線形なゲインを補償するような駆動電流を出力する非線形駆動部とを有し、前記線形駆動部と前記非線形駆動部の出力した駆動電流を合成した半導体レーザ駆動電流によって前記半導体レーザを駆動する事を特徴とする半導体レーザ装置によって解決する事ができた。
【0011】
この半導体レーザ装置は、閉ループ内に線形駆動部と非線形駆動部を有していて、非線形駆動部によって半導体レーザの光量による非線形なゲインの変化を補償して、半導体レーザ駆動回路のループゲインを半導体レーザの光量の影響を受けずに安定させる事ができる。従って、半導体レーザLDを自然発光領域からレーザ発光領域の広い範囲で適正に変調動作させることが可能となる。また、非線形駆動部が出力する駆動電流は閉ループ内の半導体レーザ駆動信号に基づいて制御されるので、矩形波状の光量指令信号のように階調変化の幅が大きい光量指令信号が入力されても適切な駆動電流が出力され、光量追従性が向上する。さらに、半導体レーザLDの光量の変化に対応した補償が、閉ループ内で行われるため、高速応答性が劣化したり温度変化等によって半導体レーザLDの駆動電流に対する光出力特性が変化した場合にも、非線形に変動する半導体レーザLDの特性変化に対して、適切な駆動電流に制御することが可能となり、広い範囲で適正に変調動作を行うことが可能となった。さらには、0光量からレーザ発光領域までの全ての光領域に渡り応答性が向上するので画像の鮮鋭性が向上した。
【0012】
また、本発明の半導体レーザ駆動装置は、半導体レーザの温度をモニタして該温度に応じた温度モニタ信号を常時出力する温度モニタ部と、前記温度モニタ信号に従って前記非線形駆動部の入出力特性を補償する温度補償部とを有してもよい。
【0013】
これにより、温度に影響を受けやすい半導体レーザのゲインの変動をも補償する事が可能となる。
【0014】
また、本発明の半導体レーザ駆動回路は、前記温度モニタ信号の大小に比例して前記非線形駆動部の入出力特性のバイアス分を補正してもよい。
【0017】
また、本発明の半導体レーザ駆動回路では、前記非線形駆動部は、前記半導体レーザ駆動信号を増幅して電圧信号を出力する増幅部と、前記電圧信号を抵抗とダイオードにより分圧する第一の非線形特性作成回路と、トランジスタにより前記第一の非線形特性作成回路の前記抵抗とダイオードの間から取り出した電圧信号をオン・オフして電圧信号を出力する第二の非線形特性作成回路と、前記第二の非線形特性作成回路の出力電圧信号に対応する電流を出力する電圧電流変換回路とを有してもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明は本項の記載によってなんら限定されない。
【0019】
図1は、本発明の半導体レーザ装置の主要部たる半導体レーザ駆動回路の実施の形態に係る回路図を示している。なお半導体レーザ駆動回路は、光走査記録装置、光通信装置等の半導体レーザ装置の主要部となる回路である。
【0020】
図1において入力端子11は、図示しない制御用コンピュータ等に接続される為の端子である。該制御用コンピュータ等は変調信号源であり、半導体レーザLDから所望の光出力が発せられるよう半導体レーザLDの駆動電流を制御する光量指令信号Sが制御用コンピュータ等から入力される。
【0021】
本発明の光量モニタ部の一例であるモニタ回路400は、半導体レーザLDから発せられる前方出射光の一部を受光し電流信号に変換するフォトダイオードPDと、該フォトダイオードPDから発生する電流信号を電圧信号に変換し且つ所望の電圧レベルまで増幅する演算増幅器A3と、抵抗R21、R22、R23とを含んで構成される。フォトダイオードPDは、前記前方出射光の一部が受光可能な位置に光軸調整された状態で配置されている。また、フォトダイオードPDはカソード電極が演算増幅器A3の反転入力端子に接続され、アノード電極が抵抗R21を介して負電源に接続され、該負電源によって−VPDの逆バイアス電圧が印加されている。演算増幅器A3は、反転入力端子にフォトダイオードPDで発生した電流信号が入力され、非反転入力端子は抵抗R22を介して接地され、また出力端子と反転入力端子は抵抗R23を介して接続されている。モニタ回路400はフォトダイオードPDで受光した光信号を電流電圧変換して電圧出力を光量モニタ信号Mとして出力する。該光量モニタ信号Mは本発明の光量に応じた帰還信号の一例である。
【0022】
信号入力部100は演算増幅器A1、抵抗R2、R3を含んで構成される。演算増幅器A1の非反転入力端子は接地され、反転入力端子は抵抗R2を介して入力端子11に接続されている。また演算増幅器A1の出力端子と反転入力端子は抵抗R3を介して接続されている。信号入力部100は光量指令信号Sが入力されると反転増幅して後段の各回路に適するように光量指令信号Sのインピーダンス、レベル等の調整をする。
【0023】
駆動制御回路200は、本発明の駆動制御部の一例であり、演算増幅器A2と抵抗R4、R5、R6、R14とを含んで構成される。抵抗R4は演算増幅器A1の出力端子と演算増幅器A2の反転入力端子の間に、抵抗R14は演算増幅器A3の出力端子と演算増幅器A2の反転入力端子の間に接続されている。演算増幅器A2は、抵抗R4、R14が接続する反転入力端子に負の光量指令信号Sと正の光量モニタ信号Mとの和、即ち、光量指令信号Sと光量モニタ信号Mの偏差を示す信号が入力され、非反転入力端子が抵抗R6を介して接地され、また出力端子と反転入力端子は抵抗R5を介して接続されている。演算増幅器A2は、入力された光量指令信号Sと光量モニタ信号Mの偏差を示す信号を反転増幅して半導体レーザ駆動信号を出力する。なお抵抗R5と並列なコンデンサによって周波数特性を調整しても良い。
【0024】
線形駆動電流出力回路300は本発明の線形駆動部の一例であり、トランジスタTr1と電圧電流変換を担うトランジスタTr2を含んで構成されている。トランジスタTr1は、ベースが互いに直列に接続された抵抗R7とR10を介して演算増幅器A2の出力端子に接続され、エミッタが抵抗R11を介して正電源に接続され、またコレクタが接地されている。トランジスタTr2は、ベースが抵抗R12を介してTr1のエミッタに接続され、コレクタが半導体レーザLDのカソード電極と接続され、またエミッタが抵抗R13を介して接地されている。半導体レーザLDは、アノード電極が図示されていない正電源に接続され、該正電源によって+VLDの電圧が供給されている。駆動制御回路200の出力した前記半導体レーザ駆動信号はトランジスタTr1に加わり、半導体レーザ駆動信号に対応したトランジスタTr2のコレクタ電流が流れる。トランジスタTr2のコレクタ電流は本発明の線形な駆動電流の例であり、つまり線形駆動電流出力回路300は光量指令信号Sの増減に対応して線形な駆動電流を出力する回路である。
【0025】
非線形駆動電流出力回路500は、本発明の非線形駆動部の一例であり、非反転増幅をする演算増幅器A4と、電圧電流変換を担うトランジスタTr4と、非線形の特性をつくるダイオードD1a、D1b、D2及びトランジスタTr3とを含んで構成される。演算増幅器A4は本発明の増幅部の一例であり、トランジスタTr3は本発明の第二の非線形特性作成回路のトランジスタの一例であり、ダイオードD2は本発明の第一の非線形特性作成回路のダイオードの一例である。
【0026】
演算増幅器A4の非反転入力端子は抵抗R7を介して演算増幅器A2の出力端子に接続されている。また演算増幅器A4の反転入力端子は抵抗R31を介して接地される。さらに、演算増幅器A4の反転入力端子と出力端子は抵抗R32を介して接続される。
【0027】
トランジスタTr3は、直列に接続された抵抗R33、R35を介してベースが演算増幅器A4の出力端子に接続され、エミッタが抵抗R36を介して正電源に接続され、またコレクタが接地されている。トランジスタTr4は、ベースが抵抗R37を介してTr3のエミッタに接続され、コレクタが半導体レーザLDのカソード電極と接続され、またエミッタが抵抗R38を介して接地されている。半導体レーザLDは、アノード電極に図示されていない正電源によって+VLDの電圧が供給されていることは線形駆動電流出力回路300で説明したとおりである。
【0028】
直列に接続された抵抗R33とR35の間には、ダイオードD2のアノード電極が接続されている。抵抗R33は本発明の第一の非線形特性作成回路の抵抗の一例である。ダイオードD2のカソード電極には抵抗R34を介して温度補償回路600が接続されている。またトランジスタTr3のエミッタと抵抗R37の間にはダイオードD1aのアノード電極が接続されている。ダイオードD1aのカソード電極にはさらに直列にダイオードD1bのアノード電極が接続され、ダイオードD1bのカソード電極は本発明の温度補償部の一例である温度補償回路600が接続されている。
【0029】
次に非線形駆動電流出力回路500の動作を説明する。ダイオードD2は演算増幅器A4の出力がR33で分圧されたうえで接続されているので、半導体レーザ駆動信号が第1の設定値に達すると非線形駆動電流出力回路500のゲインを比較的緩やかに減少させる特性に、抵抗R33とR34の抵抗値及びダイオードD2の特性により設定してある。一方のダイオードD1a、D1bの組は、トランジスタTr3のエミッタに直接接続してあり、半導体レーザ駆動信号が第2の設定値に達するとトランジスタTr3のスイッチングにより非線形駆動電流出力回路500のゲインを急峻にカットする。
【0030】
回路定数によって、第1の設定値は第2の設定値よりも絶対値を小さくしてあるので、半導体レーザLDが消灯状態から次第に輝度を増すに連れて先ず半導体レーザ駆動信号が第一の設定値に達して非線形駆動電流出力回路500のゲインが緩やかに減少し、しかるのちに半導体レーザ駆動信号が第二の設定値に達して非線形駆動電流出力回路500のゲインが急峻にカットされて、実質的に非線形駆動電流出力回路500はそれ以上の駆動電流を出力しない状態になる。半導体レーザLDは、線形駆動電流出力回路300のトランジスタTr2(ドライブトランジスタ)のコレクタ電流と、非線形駆動電流出力回路500のトランジスタTr4(ドライブトランジスタ)のコレクタ電流の和により駆動され発光する。
【0031】
既に説明したモニタ回路400は半導体レーザLDの光量の変化を、電気信号である光量モニタ信号Mとして出力する。駆動制御回路200と線形駆動電流出力回路300は光量モニタ信号Mによる負帰還をかけてある。従って、半導体レーザLDの発光する光量は光量指令信号Sに従って安定するように動作する。
【0032】
温度補償回路600のサーミスタRthは半導体レーザLDの近傍に配置してある。一般に半導体レーザダイオードは金属のパッケージに収納された電子部品として市場に供給されている。本実施の形態ではサーミスタRthは半導体レーザLDのパッケージを固定したアルミ材に取り付けてあり、アルミ材を介しての熱伝導を利用して半導体レーザLDの温度を常時検出する。サーミスタRthは一端が負電源に接続されていて、他端が抵抗R41を介して設置されている。演算増幅器A5の反転入力端子は抵抗R42を介してサーミスタRthと抵抗R41の間に接続されている。演算増幅器A5の非反転入力端子は接地されている。演算増幅器A5の出力端子と反転入力端子は抵抗R43を介して互いに接続されている。
【0033】
可変抵抗VRの一端にはツェナーダイオードZD1のカソード電極と抵抗R45が接続され、さらに該抵抗R45を介して正電源に接続されている。また可変抵抗VRの他端にはツェナーダイオードZD2のアノード電極と抵抗R46が接続され、さらに該抵抗R46を介して負電源に接続されている。またツェナーダイオードZD1のアノード電極とツェナーダイオードZD2のカソード電極とは、共に接地されている。可変抵抗VRはバイアス調整の基準点を調節する。
【0034】
演算増幅器A6の反転入力端子はR44を介して演算差増幅器A5の出力端子と接続した。演算増幅器A6の出力端子と非反転入力端子は互いに接続されている。温度補償回路600はサーミスタRthが検出した半導体レーザLDの温度状態をもとに非線形駆動電流出力回路500の動作条件を補償する回路である。
【0035】
既に説明したとおり演算増幅器A6の出力端子には、非線形駆動電流出力回路500のダイオートD1bとダイオードD2のカソード電極側が接続されていている。しかも演算増幅器A5の出力端子にはサーミスタRthの温度変化に応じたバイアス電圧が現れる。温度変化に応じたバイアス電圧はリアルタイムで現れるので、非線形駆動電流出力回路500からの入力特性は、常時光量指令信号Sの大小と半導体レーザLDの温度に応じて、コントロールが行われる。
【0036】
次に、実施の形態に示した半導体レーザ駆動回路の動作を図2から図8を利用して説明する。
【0037】
図2は半導体レーザの駆動電流として直流電流を流した時の電流レベルと光出力の関係を示す図である。駆動電流のレベルがIthよりも小さいと、駆動電流量の増加に対して光出力のパワーは非線形に緩やかに増加し、駆動電流のレベルがIthを越えると駆動電流量の増加に対して光出力のパワーは略線形に比例して増加する。半導体レーザの注入電流量と光出力はレーザー発光領域では略線形な関係で、自然発光領域では非線形な関係であり、電流値Ithが閾値となる。
【0038】
まず、半導体レーザLDがレーザ発光領域で動作するような光量指令信号Sが入力端子11に入力された場合について説明する。
【0039】
入力された正の光量指令信号Sは、駆動制御回路200に入力されると信号入力部100により反転増幅され、負の光量指令信号と正の光量モニタ信号Mとの偏差が演算増幅器A2に入力し、演算増幅器A2によって反転増幅されて正の半導体レーザ駆動信号が発生し、トランジスタTr1にてレベルシフトされた上でトランジスタTr2のベースに入力される。トランジスタTr2では、前記半導体レーザ駆動信号に応じてコレクタ電流が流れ、該コレクタ電流がトランジスタTr2のコレクタに接続された半導体レーザLDの駆動電流となる。この場合、光量指令信号Sは半導体レーザLDがレーザ発光領域で動作するような信号なので、半導体レーザLDの駆動電流は図2のIthを越える。この駆動電流と非線形駆動電流出力回路500から出力される一定量の駆動電流によって、半導体レーザLDはレーザ発光領域で動作してレーザ光が発生する。
【0040】
フォトダイオードPDは半導体レーザLDの光出力が光量指令信号Sで設定した光量と等しく発生しているか否かをモニタするため、レーザ光の全光量に比例する前方出射光の一部を受光して光出力を電流信号に変換する。フォトダイオードPDから出力される電流信号は、演算増幅器A3によって電圧信号に変換されて正の光量モニタ信号Mとなり演算増幅器A2に帰還される。以降、上記と同様に、帰還された正の光量モニタ信号Mと負の光量指令信号との偏差を増幅した半導体レーザ駆動信号によって、半導体レーザLDの光出力が光量指令信号Sで設定した光量に収束するように駆動電流が制御される。
【0041】
一方、半導体レーザ駆動信号は、同時に非線形駆動電流出力回路500にも入力される。非線形駆動電流出力回路500の動作は、半導体レーザLDの特性に対応させて予め設定されている。
【0042】
図3は半導体レーザの駆動電流と微分量子効率の関係を示す図である。半導体レーザLDの駆動電流と光出力の関係は図2のように駆動電流がIthを越えるとリニアな関係であり、つまり駆動電流がIthを越えると微分量子効率は半導体レーザLDの駆動電流のレベルにかかわらずに一定値をとる。また、駆動電流がIthを下回るときは、微分量子効率は駆動電流の増加に従って増加する。
【0043】
微分量子効率は半導体レーザの素子単体のゲインとみなせるので、半導体レーザ駆動回路は入力に対してゲインの変動する素子をクローズドループ内に備えている事が分かる。そこで非線形駆動電流出力回路500を備えることでゲインが変動する素子を含めた回路のループゲインを入力レベルに対して安定化させて、半導体レーザLDの駆動電流に対する自然発光領域の応答特性とレーザー発光領域の応答特性を一致させるように補正して、ダイナミックレンジを拡大した。
【0044】
非線形駆動電流出力回路500は光量指令信号Sによって半導体レーザLDが自然発光領域(駆動電流が閾値Ith以下)で動作する時に微分量子効率に応じた高いゲインで増幅をし、自然発光領域からレーザ発光領域に近づくに従ってゲインがなだらかに減少し、微分量子効率が一定値をとるようになるレーザ発光領域ではゲインが略−∞になるような非線形駆動電流を出力する入出力特性の回路である。
【0045】
図4は非線形駆動電流出力回路500の入力値(半導体レーザ駆動信号)に対するゲインの関係を示す図である。非線形駆動電流出力回路500の特性曲線は、図3に示した半導体レーザ素子で駆動電流がIth以下の時の微分量子効率を表す曲線に対して、略逆比例の関係を満たす曲線に設定するとよい。
【0046】
非線形駆動電流出力回路500の回路定数はこのような特性曲線を第一の非線形特性作成回路と第二の非線形特性作成回路をそれぞれ備える事で実現する。そして、半導体レーザ駆動信号のレベルが0に近く、光出力のパワーも弱く応答速度も遅い領域での非線形駆動電流出力回路500のゲインが高く、レベルが漸増すると次第に非線形駆動電流出力回路500のゲインが低くなり、半導体レーザ素子の特性を補償する。
【0047】
図5は第一の非線形駆動特性作成回路の入力(半導体レーザ駆動信号)に対する非線形駆動特性作成回路の減衰率を示す図で、この特性曲線は、図4の特性曲線と線対称な曲線である。なお線対称の軸は図4のX軸と平行な直線である。
【0048】
非線形駆動電流出力回路500は第一の非線形特性作成回路と第二の非線形特性作成回路を含む。第一の非線形特性作成回路の特性は図6の曲線によって示す事ができる。また第二の非線形特性作成回路は、あるレベルから急峻にゲインがカットされる特性を有し、この特性は図6に示す第二の非線形特性曲線によって示す事ができる。図5は図6の第一の非線形特性回路の特性曲線と、第二の非線形特性回路の特性曲線を合わせて示した図である。第二の非線形特性回路の特性曲線はトランジスタのスイッチングによって作っている。
【0049】
トランジスタTr3は本発明の第二の非線形特性作成回路のトランジスタの一例であり、ダイオードD1a、D1bによる電圧降下がVthを境に発生してコレクタ電圧が増加しなくなるので、半導体レーザ駆動信号がVthのレベルの時に、入力電圧信号のオン・オフ動作をする。半導体レーザLDをレーザ発光領域で動作させる場合には、半導体レーザ駆動信号のレベルはVthを越えていて、第二の非線形特性回路のゲインが急激に小さくなり、Tr3の出力がオフの状態となる。即ち、ダイオードD1a、D1bによってトランジスタTr3のエミッタ電圧は電圧降下し、後段のトランジスタTr4のベースにはVth以上の電圧がかからない。従ってトランジスタTr4のコレクタ電流はVthで規制された量以上は流れないので、レーザ発光領域の半導体レーザLDの駆動電流は線形駆動電流出力回路300のみによって制御される。
【0050】
次に、半導体レーザLDが自然発光領域で動作するような光量指令信号Sが入力端子11に入力された場合について説明する。最初に、非線形駆動電流出力回路が無い場合を仮定した動作について記述する。
【0051】
光量指令信号Sが線形駆動電流出力回路300に入力されると、上記半導体レーザLDをレーザ発光領域で動作させる場合の回路動作と同様に、演算増幅器A2及びトランジスタTr1、Tr2を介して、光量指令信号Sに応じた駆動電流が発生し該駆動電流によって半導体レーザLDは自然発光領域で動作する。また半導体レーザLDの前方出射光の一部はモニタ回路400によって電圧信号に変換されて光量モニタ信号Mを生成し、演算増幅器A2に帰還され光量指令信号Sとの偏差が増幅されて半導体レーザ駆動信号となり、半導体レーザLDの光出力が光量指令信号Sで設定した光量に収束するように駆動電流が制御される。
【0052】
一方、非線形駆動電流出力回路500の演算増幅器A4に半導体レーザ駆動信号が入力されると、演算増幅器A4は半導体レーザ駆動信号を増幅して出力する。増幅された半導体レーザ駆動信号のレベルは自然発光領域で半導体レーザを駆動するレベルなので、図3の特性曲線に従って入力レベルに応じた電圧降下がダイオードD2によって生じる。従って、演算増幅器A4の出力は自然発光領域での半導体レーザLDの特性を補償された信号としてTr3のベースに入力される。ダイオードD1a、D1bによって電圧降下が生じないので、トランジスターTr3はオン状態で、半導体レーザ駆動信号が通過し、Tr4のベースに入力され電圧電流変換される。Tr4の出力電流が線形駆動電流出力回路300のトランジスタTr2の出力電流に加算されて、半導体レーザLDを流れる電流量(注入電流の量)が制御される。抵抗R33とR34による分圧の比、ダイオードD2などの回路定数によって図6の第一の非線形特性の特性曲線を設定できるし、ダイオードD1a、D1b等の回路定数によって、図6の第二の非線形特性の特性曲線を設定できる。
【0053】
この非線形駆動電流出力回路500には第一の非線形特性作成回路500aと第二の非線形特性作成回路500bが備えられており、演算増幅器A4の駆動信号のレベルがVth以下であれば非線形特性作成回路500によって、図7のように、駆動電流の立ち上がり時点で半導体レーザLDの注入電流に対する発光量の関係に逆比例する駆動電流がながれて、線形駆動電流出力回路300の出力電流と重畳される。
【0054】
図8は温度変動が生じた場合の半導体レーザの駆動電流(注入電流)に対する微分量子効率を示す図である。特性曲線は任意に設定した基準温度での微分量子効率を示している。特性曲線Hiは基準温度よりも半導体レーザLDの温度が上昇した状態を示している。特性曲線Lowは基準温度よりも半導体レーザLDの温度が上昇した状態を示している。図8から明らかな様に温度条件を変更すると半導体レーザLDに等しい駆動電流を注入しても、温度が高いほど発光量は減少し、逆に周辺温度が低いほどに発光量は増加する事がわかる。
【0055】
一方、図6に示した第一及び第二の非線形特性作成回路の特性曲線のカーブは、半導体レーザ駆動信号と演算増幅器A6の出力端子に現れるバイアス電圧との電位差に依って図中横軸方向に移動する。温度補償回路600は、基準温度の状態で適切な特性曲線が得られる様に可変抵抗VRによってバイアス電圧を設定してある。そしてサーミスタRthが半導体レーザLDの温度をモニターしており、半導体レーザLDの温度が高い時は演算増幅器A6の出力端子に現れるバイアス電圧が高くなり、半導体レーザLDの温度が低いときは演算増幅器A6の出力端子に現れるバイアス電圧が低くなるように構成してある。すなわち、図8に示した半導体レーザLDの温度変化に伴う特性変化に対し、温度補償回路600により回路の特性を追従させることが可能となり、半導体レーザLDの温度変化の影響を受けずに応答させることが可能となっている。
【0056】
図7は線形駆動電流出力回路300と非線形駆動電流出力回路500の出力特性を示す図である。
【0057】
半導体レーザ駆動回路は線形駆動電流出力回路300と非線形駆動電流出力回路500をフィードバックループ内に並列に備えており、レーザー発光領域で半導体レーザを駆動する場合は第二の非線形特性形成回路によって非線形駆動電流出力回路500の出力をカットし線形駆動電流出力回路300の出力する駆動電流によって半導体レーザLDを駆動する。自然発光領域で半導体レーザが駆動する場合は非線形駆動電流出力回路500の出力は第二の非線形特性形成回路によってカットされないものの、第一の非線形特性形成回路によってゲインが補正されて、非線形駆動電流出力回路500の出力と線形駆動電流出力回路300の出力が加算された駆動電流によって半導体レーザLDを駆動する。
【0058】
半導体レーザ駆動回路のトータルのループゲインをGt、線形駆動電流出力回路300と、非線形駆動電流出力回路500のトータルのゲインをG、半導体レーザLDのゲインをGldとする。ゲインGの特性を前記半導体レーザの注入電流に対する発光量の関係に逆比例するようにしたので、
Gt=G×Gld=一定 (式1)
の式が成り立つ。
【0059】
即ち、半導体レーザ駆動回路は入力信号たる光量指令信号Sが自然発光領域のレベルからレーザ発光領域のレベルまで変動してもフィードバックループのゲインが一体となる。
【0060】
従って、本実施の形態に係る回路によれば、半導体レーザLDを自然発光領域からレーザ発光領域の広い範囲で一定の応答性で高速に変調動作させることが可能となる。また、非線形駆動回路500による補償が、線形駆動回路300における半導体レーザLDの光量の変化に対応した閉ループ内で行われるため、温度変化等によって半導体レーザLDの駆動電流に対する光出力特性が変化した場合にも、半導体レーザLDの特性変化に追従して高速応答性を安定に保つことが可能となる。
【0061】
従って、半導体レーザLDを自然発光領域からレーザ発光領域の広い範囲で適正に変調動作させることが可能となる。また非線形駆動回路500による補償が、線形駆動回路300における半導体レーザLDの光量の変化に対応した閉ループ内で行われるため、矩形波状の光量指令信号のように階調変化の幅が大きい光量指令信号が入力されても適切な駆動電流が出力され、光量追従性が向上する。さらに、高速応答性が劣化したり温度変化等によって半導体レーザLDの駆動電流に対する光出力特性が変化した場合にも、非線形に変動する半導体レーザLDの特性変化に対して、適切な駆動電流に制御することが可能となり、広い範囲で適正に変調動作を行うことが可能となった。
【0062】
図9は本発明の光走査記録装置の概略構成を説明する概念図である。
【0063】
レーザ光源1は図1に示した半導体レーザ駆動回路を収納してある。レーザ光源1から照射された光ビーム(レーザビーム)は、ポリゴンミラー2の回転により偏向され、fθレンズ3に入射される。fθレンズ3は、ポリゴン2により偏向されたレーザビームを収束し、走査面上で等速度となるようにして射出する。記録媒体Pはシート状の感光材で、レーザビームにより露光されて潜像が形成される。この潜像が形成された記録媒体Pを現像装置により現像して、出力画像を得る。フォトダイオードPDは記録媒体Pの近傍に設置されている。
【0064】
【発明の効果】
本発明の半導体レーザ駆動回路によれば、半導体レーザLDを自然発光領域からレーザ発光領域の広い範囲で適正に変調動作させることが可能となる。また矩形波状の光量指令信号のように階調変化の幅が大きい光量指令信号が入力されても適切な駆動電流が出力され、光量追従性が向上する。さらに、高速応答性が劣化したり温度変化等によって半導体レーザLDの駆動電流に対する光出力特性が変化した場合にも、非線形に変動する半導体レーザLDの特性変化に対して、適切な駆動電流に制御することが可能となり、広い範囲で適正に変調動作を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザ駆動回路の第一の実施の形態に係る回路図。
【図2】半導体レーザの駆動電流として直流電流を流した時の電流レベルと光出力の関係を示す図。
【図3】半導体レーザの駆動電流と微分量子効率の関係を示す図。
【図4】非線形駆動電流出力回路の入力値に対するゲインの関係を示す図。
【図5】第一の非線形駆動特性作成回路の入力に対する非線形駆動特性作成回路の減衰率を示す図。
【図6】第一の非線形特性回路の特性曲線と、第二の非線形特性回路の特性曲線を合わせて示した図。
【図7】線形駆動電流出力回路と非線形駆動電流出力回路の出力特性を示す図。
【図8】温度変動が生じた場合の半導体レーザの駆動電流に対する微分量子効率を示す図。
【図9】光走査記録装置の概略構成を示す概念図である。
【図10】従来の半導体レーザ駆動回路を説明する図。
【図11】従来の半導体レーザ駆動回路を説明する図。
【図12】従来の半導体レーザ駆動回路を説明する図。
【符号の説明】
100 信号入力部
200 駆動制御回路
300 線形駆動電流出力回路
400 モニタ回路
500 非線形駆動電流出力回路
600 温度補償回路
LD 半導体レーザ
PD フォトダイオード
Rth サーミスタ
Claims (4)
- 入力された光量指令信号に基づき半導体レーザを駆動し、該半導体レーザから発せられるレーザ光の光量を制御する半導体レーザ装置において、
前記レーザ光の光量をモニタし、該光量に応じた帰還信号を出力する光量モニタ部と、
前記光量指令信号と前記帰還信号との偏差に応じて半導体レーザ駆動信号を生成する駆動制御部と、
前記半導体レーザ駆動信号に線形対応した駆動電流を出力する線形駆動部と、
前記半導体レーザ駆動信号のレベルが漸増すると次第にゲインが低くなり、半導体レーザ素子の非線形なゲインを補償するような駆動電流を出力する非線形駆動部とを有し、
前記線形駆動部と前記非線形駆動部の出力した駆動電流を合成した半導体レーザ駆動電流によって前記半導体レーザを駆動する事を特徴とする半導体レーザ装置。 - 半導体レーザの温度をモニタして該温度に応じた温度モニタ信号を常時出力する温度モニタ部と、
前記温度モニタ信号に従って前記非線形駆動部の入出力特性を補償する温度補償部とを有する事を特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。 - 前記温度モニタ信号の大小に比例して前記非線形駆動部の入出力特性のバイアス分を補正する事を特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
- 前記非線形駆動部は、
前記半導体レーザ駆動信号を増幅して電圧信号を出力する増幅部と、
抵抗とダイオードからなり前記電圧信号を分圧する第一の非線形特性作成回路と、
前記第一の非線形特性作成回路の前記抵抗とダイオードの間から取り出した電圧信号から、トランジスタのスイッチング機能を用いて、電圧を一定値以下に制限した電圧信号を出力する第二の非線形特性作成回路と、
前記第二の非線形特性作成回路の出力電圧信号に対応する電流を出力する電圧電流変換回路とを有する事を特徴とする請求項1、2、または3に記載の半導体レーザ装置。
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