JP3789548B2 - さし木苗育成装置 - Google Patents

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  • Greenhouses (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、さし木苗育成に必要な高湿度(90〜100%)、適温(25〜30℃)、及び適照度(5000〜20000lux)の3つの環境条件を簡易に実現することができるさし木苗育成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、さし木等を育成させるためには、適切な温度、湿度、及び光が必要である。例えば、25〜30℃の温度、90〜100%の湿度、5000〜20000luxの照度の3つの環境条件を満足すれば、さし木の発根率が高まる。
【0003】
このため、例えば特開昭60−160822号公報に記載された苗、接木、挿木等の育成装置では、加温冷却装置及び給気排気装置により苗箱設置内の空気の温度及び湿度を調節し、蛍光灯による人工光を供与するシステムを構築することにより、上述した適切な温度、湿度、及び光量の3つの環境条件を作り出すようにしている。
【0004】
一方、簡易なさし木苗育成装置としては、複数のさし木が植えられるさし床を有するさし木増殖ボックスを密閉して該さし木増殖ボックス内を高湿度に保つようにしたものがある。
【0005】
また、このさし木増殖ボックスに入射する太陽光の光量を調節することにより、該さし木増殖ボックス内の温度を適切な温度に保つようにしたものもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭60−160822号公報に記載された苗、接木、挿木等の育成装置では、太陽光ではなく蛍光灯による人工光を用いるとともに、温度及び湿度の調節は、複雑かつ高度な加温冷却装置及び給気排気装置等を用いるため、さし木苗育成装置の大規模化及び維持、管理が困難であるとともに、コストもかかるという問題点があった。
【0007】
一方、密閉したさし木増殖ボックスにより、高湿度を保つようにした簡易なさし木苗育成装置では、上述した3つの環境条件のうちの照度を適切にするため、該さし木増殖ボックス内に十分な太陽光の光量(5000〜20000lux)を確保して、さし木のさし穂が十分な光合成を行えるようにすると、密閉されたさし木増殖ボックス内の温度が上昇し、特に夏期や熱帯地域では、高温(34〜40℃)になり、結果的にさし穂が枯死する場合があるという問題点があった。
【0008】
また、さし木増殖ボックスへの太陽光の光量を調節することができる簡易なさし木苗育成装置では、該さし木増殖ボックス内の温度上昇を防止することができるが、上述した3つの環境条件のうちの光量を十分に確保することができないことから、さし木のさし穂が十分な光合成を行うことができず、この結果さし木の発根率が低下するという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題点を除去し、さし木苗育成に必要な高湿度、適温、及び適照度の3つの環境条件を簡易に実現することができるさし木苗育成装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、
さし木苗育成に必要な高い湿度、適切な温度、及び適切な照度の3つの環境条件を満足させる調節を行って多数のさし木の発根率を高めるさし木苗育成装置において、所定数のさし木を育成するさし床と太陽光を透過させる材質で密閉することと潅水によってボックス内部を高い湿度に維持させる複数のさし木増殖ボックスと、前記複数のさし木増殖ボックス設置される空間を有し前記空間に太陽光を入射させる温室と、前記温室内に冷房用の細霧を噴射する細霧用ノズルと、前記温室内の温度を検知する温度センサと、前記温度センサで検知した温度が適切な温度に維持されるように前記細霧用ノズルからの細霧噴射をオン/オフ制御して前記温室内の温度を調整する調整手段と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記温度調節室の調整手段は、該温度調節室内に細霧を噴射して該温度調節室内の温度を前記適切な温度に調節することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態であるさし木苗育成装置の構成を示す図である。図1において、このさし木苗育成装置は、温室1内に複数のさし木増殖ボックス2が配置される。
【0014】
温室1内の上部には、太陽光Sの光量が5000〜20000luxにするための遮光ネット3が配置される。太陽光Sの光量が多いと判断される場合には、この遮光ネット3を手動で操作して太陽光Sの入射を制限する。なお、この遮光ネット3の操作は手動で行われるが、この遮光ネット3を用いる際、図示しない照度計を用いるようにしてもよいし、この照度計をもとに監視するようにしてもよい。
【0015】
温室1内の上部であって、遮光ネット3の下部には、所定の圧力を有した水を通す塩化ビニル管4aが配管される。そして、塩化ビニル管4aの途中には、均等に配置された複数の細霧用ノズル5を有し、この細霧用ノズル5から、温室1内の中央部に向かって細霧7を噴出する。
【0016】
塩化ビニル管4aは、細霧7を生成するための水を圧出する第1ポンプ6aに接続される。この第1ポンプ6aは、ポンプ駆動制御部9によって駆動制御される。ポンプ駆動制御部9は、温室1内の内部温度を最もよく検知することがでくる場所に設置された温度センサ8からの温度信号をもとに、温室1内の温度が28〜30℃に維持されるように第1ポンプ6aの駆動をオン/オフ制御する。すなわち、ポンプ駆動制御部9は、検知した温度が28℃以下になった場合、第1ポンプ6aの駆動をオフにして、太陽光Sの照射による温室1内の温度の上昇を許容させ、検知した温度が30℃を越える場合、第1ポンプ6aの駆動をオンにして、細霧用ノズル7から細霧7を噴射し、噴射された細霧7の気化熱によって温室1内の温度を降下させる制御を行う。これにより、温室1内の温度は、常に28〜30℃の範囲内に保たれることになる。
【0017】
一方、第2ポンプ6bからも、塩化ビニル管4bを介して各さし木増殖ボックス2内に水が圧出されている。
【0018】
ここで、図2を参照して、さし木増殖ボックス2の詳細構成について説明する。図2において、さし木増殖ボックス2は、太陽光を透過させる透明のプラスチックカバー11と、下部に敷き詰められた小石12とによって密閉されている。敷き詰められた小石12の上部には、さし床13が設置され、さし床13の凹部には、複数のさし穂14が挿される。
【0019】
さし木増殖ボックス2の中央部には、第2ポンプ6bから圧出された水が塩化ビニル管4bを介して供給され、この塩化ビニル管4bに接続された潅水用ノズル15から潅水用の水をさし木増殖ボックス2内に散布する。従って、さし木増殖ボックス2内は、さらに密閉されているので、高湿度(90〜100%)に保たれる。
【0020】
このようにして、複数のさし木のさし穂14を有するさし木増殖ボックス2内は、常に所望の高湿度(90〜100%)に保たれ、太陽光Sも遮光ネット3及びプラスチックカバー11を介して所望の光量(5000〜20000lux)が供給されるとともに、温室1内の温度も細霧7の噴射制御によって28〜30℃の範囲に維持することができる。この結果、さし木の育成に必要な所望の3つの環境条件、すなわち高湿度、適切な光量、適切な温度の全てを常に維持することができる。
【0021】
しかも、高湿度及び適切な温度の維持には、全て水を用い、適切な光量の光源としては、太陽光を用いており、しかも構造が簡単であるため、大規模化が可能となる。
【0022】
逆に、人工光、複雑かつ整備が困難な空調器、加湿器等を用いないため、さし木苗育成装置の維持、管理が容易となる。
【0023】
ここで、本さし木苗育成装置による細霧冷房を用いた場合と用いない場合とにおけるさし木増殖ボックス内の温度変化について、図3を参照して説明する。
【0024】
図3は、光量5000luxで、細霧冷房を用いた場合と用いない場合とにおけるさし木増殖ボックス内の日変化の一部を示しており、細霧冷房を用いない場合に、さし木増殖ボックス内の温度が最高34℃まで上昇しているのに対し、細霧冷房を用いると、同じさし木増殖ボックス内の温度は、27.5℃〜30℃の範囲内に収まっている。さし穂は、34℃以上になると枯死する可能性があるため、細霧冷房を用いることにより、さし穂の枯死を未然に防止することができる。
【0025】
なお、図4及び図5を参照して、2種類の木本植物のさし木、すなわち第1の樹種(shorea leprosula)と第2の樹種(shorea selanica)とに対する光量及び温度が発根率に及ぼす影響について示すと、図4は、第1の樹種と第2の樹種とに対して約5000luxの光量を供給した場合と、約1000luxの光量を供給した場合におけるそれぞれの発根率の結果を示しており、光量が約5000luxの場合は発根率が約90%となり、光量が約1000luxの場合は発根率が約30%となっている。この結果、光量が5000lux供給されるとほとんど発根することがわかり、少なくとも光量5000lux供給されることが、さし木の育成に必要な環境条件であることがわかる。
【0026】
また、図5は、第1の樹種と第2の樹種とに対してそれぞれ日中平均温度が29℃の場合と日中平均温度が34℃の場合とにおける発根率の結果を示しており、日中平均温度が29℃である場合は、約90%が発根する結果となり、日中平均温度が34℃である場合は、0%が発根する結果となっており、日中平均温度が34℃となるとさし木は枯死し、日中平均温度が29℃であることが発根に対する最適温度であることがわかる。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、第1ポンプ6aと第2ポンプ6bとの2つのポンプを用いるようにしているが、この2つのポンプを1つのポンプとしてもよい。但し、この場合ポンプ駆動制御部9は、第1ポンプ6aの駆動制御を行うのではなく、塩化ビニル管4aのポンプ側に開閉弁を設け、この開閉弁の開閉制御を行うようにする。これにより、上述した実施の形態と同様な作用、効果を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明では、複数のさし木増殖ボックスが、所定数のさし木を育成するさし床と高い湿度に維持させる潅水手段とを有して、太陽光を透過させる材質で密閉され、温度調節室は、この複数のさし木増殖ボックスを設置する空間を持ち、該空間を前記適切な温度に調整する調整手段、特に該温度調節室内に細霧を噴射して該温度調節室内の温度を前記適切な温度に調節する調整手段を有するようにし、これにより、太陽光による温度調節室内への入射光量の調整とは独立して、該温度調節室内の温度、すなわちさし木増殖ボックス内の温度を調節するとともに、該さし木増殖ボックス内の湿度を高湿度に維持することができる。
【0029】
この結果、簡易な装置構成により、さし木苗育成に必要な高湿度、適切な温度、及び適切な照度の3つの環境条件を常に維持することができるという利点を有する。
【0030】
特に、複雑かつ高価な冷暖房装置等の装置構成を必要とせず、装置構成が簡単かつ容易なため、大規模なさし木増殖システムを実現することができるとともに、その維持管理も容易となるという利点を有する。
【0031】
また、細霧冷房による温度調節が独自に行われるため、さし穂が十分な光合成を行うに必要な光量を確保することができるため、高い発根率を得ることができる。特に発根までに時間を要する木本植物、例えばフタバガキ科等で効果がある。
【0032】
特に、熱帯地域あるいは夏期においても、さし木増殖ボックス内で光合成をするに十分な光量(5000〜20000lux)を確保しても、本さし木苗育成装置によりさし木増殖ボックス内は30℃以下に保たれ、さし穂の発根率を容易に高めることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるさし木苗育成装置の構成を示す図。
【図2】さし木増殖ボックス2の詳細構成を示す図。
【図3】本発明による細霧冷房を用いた場合と用いない場合とにおけるさし木増殖ボックス内の温度変化を示す図。
【図4】2つの樹種に対して約5000luxの光量を供給した場合と約1000luxの光量を供給した場合とにおける発根率の結果を示す図。
【図5】2つの樹種に対して日中平均温度が29℃の場合と日中平均温度が34℃の場合とにおける発根率の結果を示す図。
【符号の説明】
1…温室 2…さし木増殖ボックス 3…遮光ネット
4a,4b…塩化ビニル管 5…細霧用ノズル 6a…第1ポンプ
6b…第2ポンプ 7…細霧 8…温度センサ 9…ポンプ駆動制御部
S…太陽光 11…プラスチックカバー 12…小石 13…さし床
14…さし穂 15…潅水用ノズル

Claims (1)

  1. さし木苗育成に必要な高い湿度、適切な温度、及び適切な照度の3つの環境条件を満足させる調節を行って多数のさし木の発根率を高めるさし木苗育成装置において、
    所定数のさし木を育成するさし床と太陽光を透過させる材質で密閉することと潅水によってボックス内部を高い湿度に維持させる複数のさし木増殖ボックスと、
    前記複数のさし木増殖ボックスが設置される空間を有し前記空間に太陽光を入射させる温室と、
    前記温室内に冷房用の細霧を噴射する細霧用ノズルと、
    前記温室内の温度を検知する温度センサと、
    前記温度センサで検知した温度が適切な温度に維持されるように前記細霧用ノズルからの細霧噴射をオン/オフ制御して前記温室内の温度を調整する調整手段と、
    を具備したことを特徴とするさし木苗育成装置。
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