JP3788161B2 - シュレッダーダストの処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシュレッダーダストの処理方法に係り、特に、廃自動車や廃家電品等の廃棄物の湿式シュレッダーダストに含まれる重金属の溶出を確実に防止することにより、埋め立てられたシュレッダーダスト周辺の土壌や地下水などの重金属汚染を防止するシュレッダーダストの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、資源の有効再利用、廃棄物の減量化の目的から、廃自動車や廃家電品等の廃棄物は、シュレッダーで破砕処理し、この破砕処理物を選別して鉄等の有価金属類を回収することが行われている。この破砕処理物の選別方法には、風力を用いる乾式選別方法と、水を用いる(水に対する浮力を利用する)湿式選別方法とがあり、このうち、湿式選別方法では、粉塵の問題がなく、作業環境面で優れるという利点がある。
【0003】
このような選別工程では、プラスチック類等を含む残渣(シュレッダーダスト)が大量に発生する。一般に、乾式選別方法で選別したシュレッダーダストは「乾式シュレッダーダスト」、湿式選別方法で選別したシュレッダーダストは「湿式シュレッダーダスト」と呼称されている。
【0004】
このようなシュレッダーダストは、通常、埋立処分されるが、シュレッダーダストには重金属類が含まれていることから、その廃棄に当っては含有される重金属類の溶出を防止する処理を施す必要がある。
【0005】
従来、シュレッダーダストからの重金属の溶出を防止する方法として、シュレッダーダストに、炭酸化合物や水酸化化合物等の重金属の溶出を防止する薬剤を添加する方法が提案されている(特開平9−314095号公報)。このように薬剤の添加によりシュレッダーダストからの重金属の溶出を防止する場合、当該薬剤の添加による良好な重金属の溶出防止効果を得るためには、シュレッダーダストに対して薬剤を高度に均一に分散混合することが必要とされ、特開平9−314095号公報に記載される方法では、廃棄物のシュレッダー設備に別途薬剤混合装置を設け、この薬剤混合装置でシュレッダーダストに重金属の固定化のための薬剤を添加混合している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、特開平9−314095号公報記載の方法では、シュレッダーダスト設備とは別に薬剤混合装置を設け、この薬剤混合装置でシュレッダーダストに薬剤を均一に混合する必要があった。また、このように薬剤混合装置を設けてシュレッダーダストに薬剤を混合しても、薬剤の混合が不十分であったり、均一に薬剤を混合するためには過剰量の薬剤の添加が必要である等の問題点があった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、別途薬剤混合装置を設けることなく、湿式選別方法で得られる湿式シュレッダーダストに重金属固定剤を均一に添加混合して、少ない重金属固定剤添加量で優れた重金属の溶出防止効果を安定かつ確実に得ることができるシュレッダーダストの処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のシュレッダーダストの処理方法は、シュレッダーダストを湿式比重選別室で選別する工程を備えるシュレッダーダストの処理方法において、該湿式比重選別室に重金属固定剤を添加することを特徴とする。
【0009】
本発明の方法では、湿式比重選別室に重金属固定剤を添加することで、シュレッダーダストの選別と、シュレッダーダストへの重金属固定剤の添加及び攪拌混合の3つの工程を1工程で行うことができる。
【0010】
即ち、湿式シュレッダーの場合、金属類とプラスチック類を選別するためにシュレッダーで破砕された廃自動車や廃家電品等の産業廃棄物の破砕物は、一般に、図1に示す如く、磁力選別機1で鉄類が回収された後、湿式比重選別室の水ピット(水槽)2内に投入され、水に浮くプラスチック類と、水に沈むもの(非鉄金属類、土砂、ガラス等)に選別される。水に沈んだものと水に浮いたものは、それぞれコンベア3,4で引き揚げられ、水に沈んだものはさらに非鉄金属類が回収され、その残渣や水に浮いたプラスチック類はそれぞれヤード5に貯留される。通常、水ピット2内の水は、シュレッダーダストに吸収された水分が補給されるのみで循環利用されるため、湿式シュレッダーダストは乾式シュレッダーダストに比べ鉛などの重金属が高濃度に濃縮されている。
【0011】
本発明者らは、この重金属を高濃度に含有するピット水中にシュレッダーダストが浸漬されているため、スポンジ類や布類のような吸水性のシュレッダーダストが鉛等の重金属を高濃度で含有すること、そして、このためシュレッダーダストから鉛等の重金属が高濃度に溶出するという問題が発生していると考えた。
【0012】
そこで、本発明者らはこの問題を解決するために鋭意検討した結果、水ピット2に重金属固定剤を添加することにより、ピット水中の重金属を固定化すると共に、新たに投入されるシュレッダーダストから溶出する重金属をもピット水中の重金属固定剤と反応させて固定化することにより、効率よく簡易にシュレッダーダストを無害化することができること、また、このように水ピットに添加された重金属固定剤はピット水中に均一に拡散し、このため重金属と重金属固定剤とが効率的に反応することから、別途薬剤混合装置を設ける必要はなく、少ない重金属固定剤添加量で優れた重金属の固定化効果を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明では、図1に示す如く、湿式シュレッダーダストの選別工程の水ピット2の保有水(ピット水)に重金属固定剤を添加することにより、ピット水及びシュレッダーダスト中の重金属が、不溶性の化合物となったり、重金属を含有する微粒子が凝集したり、共沈したりすることにより不溶化される。これにより、埋め立てられたシュレッダーダスト周辺の土壌や地下水などの重金属による汚染を安定かつ確実に防止することができる。
【0014】
即ち、本発明において、重金属固定剤としてリン酸系化合物を用いた場合、重金属、例えばPb2+は次の反応式(1)に従って、リン酸又はリン酸塩等のリン酸系重金属固定剤と反応して不溶性の沈殿を生成する。
【0015】
5Pb2++OH−+3PO4 3−→Pb5(PO4)3OH↓(logK=−76.8) …(1)
また、シュレッダーダスト中のCa2+とリン酸又はリン酸塩等のリン酸系重金属固定剤とが下記反応式(2)に従って反応することにより生成したヒドロキシアパタイト中のCa2+とPb2+とが、下記反応式(3)に従って置換反応することによってもPb2+が不溶化される。
【0016】
5Ca2++OH−+3PO4 3−→Ca5(PO4)3OH↓(logK=−44.2) …(2)
Ca5(PO4)3OH+5Pb2+→Pb5(PO4)3OH↓+5Ca2+ …(3)
また、重金属固定剤としてアルミニウム塩、鉄塩、セメント、カルシウム化合物、炭酸化合物、ケイ酸化合物を用いた場合には、マイナスに帯電しているコロイド表面がこれらアルミニウム塩や鉄塩等の重金属固定剤のプラスイオンに中和され、コロイド同士の反発が解けてコロイドが凝集したり、共沈したりすることにより、重金属を取り込んで、これを不溶化する。
【0017】
従って、本発明において、重金属固定剤としては、リン酸系化合物、アルミニウム塩、鉄塩、セメント、カルシウム化合物、炭酸化合物及びケイ酸化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、特に、これらの2種以上を一液化したものであれば、湿式比重選別室への添加が容易で取り扱い作業性に優れた一液製剤により、2種以上の薬剤を併用することによる相乗効果でより一層良好な重金属固定化効果を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明のシュレッダーダストの処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明の方法では、図1に示すような湿式選別工程の湿式比重選別室の水ピット2に重金属固定剤を添加する。
【0020】
本発明で用いる重金属固定剤としては、リン酸系化合物(リン酸系重金属固定剤)、アルミニウム塩、鉄塩、セメント、カルシウム化合物、炭酸化合物、ケイ酸化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
なお、2種以上の重金属固定剤を併用する場合には、一液化又はスラリー化するのが、薬注作業の面で好ましく、また、一液化又はスラリー化した方が、反応性についても良好な結果が得られ、好ましい。ただし、一液化又はスラリー化が困難な場合には、2種以上を別々に添加しても良い。
【0022】
特に、本発明においては、リン酸系重金属固定剤と硫酸アルミニウムとの一液品を用いることが重金属固定化効果、反応性、取り扱い性の面で望ましい。
【0023】
リン酸系重金属固定剤としては、リン酸又はその塩が用いられ、このうち、リン酸としては正リン酸や次亜リン酸、メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸、正亜リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、縮合リン酸が挙げられ、リン酸塩としては、これらのリン酸の塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩が挙げられる。リン酸塩としては、特にカチオンが1価の塩が好ましい。
【0024】
本発明においては、特に水溶性の高いリン化合物が好ましく、特に正リン酸(H3PO4)、リン酸二水素一ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸一水素二ナトリウム(Na2HPO4)が好適である。
【0025】
一方、硫酸アルミニウムとしては、硫酸バンドと称される市販品を用いることができ、液体硫酸バンド、粉末硫酸バンドのいずれを用いても良く、鉄塩等を含むものであっても良い。
【0026】
本発明において、リン酸系重金属固定剤と硫酸アルミニウムとの添加割合は、1:1〜10(重量比)とするのが好ましい。この割合であれば、前述のリン酸系重金属固定剤による重金属の不溶化作用と、硫酸アルミニウムによる凝集作用の相乗効果が十分に発揮され、シュレッダーダストからの重金属の溶出を確実に防止することができる。
【0027】
リン酸系重金属固定剤と硫酸アルミニウムとが好ましくは上記割合で一液化された一液製剤は、具体的には次のような方法で製造することができる。
【0028】
液体のリン酸系重金属固定剤と液体の硫酸アルミニウムとを溶解した溶液。この場合、攪拌することにより両者は容易に溶解するが、リン酸系重金属固定剤に硫酸アルミニウムを添加すると析出が発生する場合があるので、硫酸アルミニウムにリン酸系重金属固定剤を添加する方が好ましい。この場合のリン酸系重金属固定剤と硫酸アルミニウムの混合割合は、リン酸系重金属固定剤がH3PO4として5〜30重量%、硫酸アルミニウムがAl2O3として1〜10重量%とするのが好ましい。更に好ましくはH3PO4として10〜15重量%、Al2O3として5〜7重量%とする。また、純度の高いリン酸系重金属固定剤、硫酸アルミニウムを用いる場合は、水を加えて溶解させると良い。
【0029】
なお、他の重金属固定剤、例えば、アルミニウム塩としては塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ等を用いることができ、鉄塩としてはポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄等を用いることができる。
【0030】
また、セメントとしては普通ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、シリカセメント、アルミナセメント等を用いることができ、カルシウム化合物としては水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等を用いることができ、炭酸化合物としては炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等を、ケイ酸化合物としてはケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム等を用いることができる。
【0031】
重金属固定剤の添加量は水ピットの保有水のpHや懸濁物質の凝集性、重金属固定剤の重金属固定化効果等に基いて総合的に判断することが望ましいが、通常、最終的に排出される湿式シュレッダーダストに対して重金属固定剤(2種以上を併用する場合はその合計)0.1〜5重量%、特に0.3〜1重量%とするのが好ましい。これは、添加量が少な過ぎると十分な添加効果が得られず、また、酸性系の重金属固定剤では添加量が多くなり過ぎると水ピットの保有水のpHが低下して重金属固定化効果の低減や設備の腐食などの懸念があり、アルカリ中和剤を必要とすること、更には添加量が多くなり過ぎると処理コストが高騰するためである。
【0032】
本発明において、湿式比重選別室の水ピットへの重金属固定剤の添加方法としては、ポンプなどを用いて定量的に水ピットに重金属固定剤を注入する方法が望ましいが、ポンプや重金属固定剤のタンクの設備が困難な場合には、間欠的に手作業で水ピットに投入しても良い。
【0033】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0034】
以下の実施例及び比較例においては、図1に示すような廃自動車の湿式シュレッダー工程において発生する湿式シュレッダーダストを試料として重金属固定化処理を実施した。
【0035】
なお、重金属固定剤としては、リン酸(H3PO4)と硫酸アルミニウムとをH3PO4:13重量%、硫酸アルミニウム(Al2O3換算):6重量%となるように水に溶解した一液製剤(以下「重金属固定剤A」と称す。)を用い、重金属固定化効果は、シュレッダーダストについて環境庁告示13号試験に準じてPbの溶出試験を行い、その結果で判定した。
【0036】
実施例1〜3
図1の湿式比重選別室の水ピット2に、重金属固定剤Aを、最終的に排出される湿式シュレッダーダストに対する添加量が表1に示す割合となるように添加し、コンベア3で引き揚げた後のシュレッダーダストについて行った溶出試験結果を表1に示した。
【0037】
比較例1
実施例1において、水ピット2に重金属固定剤Aを添加せずに、コンベア3で引き揚げた後のシュレッダーダストについて行った溶出試験結果を表1に示した。
【0038】
比較例2〜4
実施例1において、重金属固定剤Aを水ピットではなく、コンベア3で引き揚げた後のシュレッダーダストに対して、その添加量が表1に示す割合となるように散布したこと以外は同様に行って、コンベア3で引き揚げた後のシュレッダーダストに重金属固定剤Aを表1に示す割合となるように添加し、シャベルなどでよく混合したものについて行った溶出試験結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、水ピットに重金属固定剤を添加することにより、少ない重金属固定剤添加量で優れた重金属固定化効果を得ることができることがわかる。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のシュレッダーダストの処理方法によれば、
▲1▼ シュレッダーダストと重金属固定剤との混合のための混合装置を設置する必要がなく、また、混合のための煩雑な作業も必要ないことから、設置場所やイニシャルコストや新たな人員を低減できる。
▲2▼ 湿式比重選別室の保有水中に重金属固定剤が均一に拡散するため、シュレッダーダスト中の重金属と重金属固定剤とが効率良く反応することから、少ない重金属固定剤添加量で著しく良好な重金属固定化効果を得ることができる。
等の効果が奏され、シュレッダーダストからの重金属の溶出を確実に防止して、埋立地周辺の土壌や地下水の重金属汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシュレッダーダストの処理方法の実施の形態を示す模式的な系統図である。
【符号の説明】
1 磁力選別機
2 水ピット
3,4 コンベア
5 ヤード
Claims (3)
- シュレッダーダストを湿式比重選別室で選別する工程を備えるシュレッダーダストの処理方法において、該湿式比重選別室に重金属固定剤を添加することを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。
- 請求項1において、該重金属固定剤が、リン酸系化合物、アルミニウム塩、鉄塩、セメント、カルシウム化合物、炭酸化合物及びケイ酸化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。
- 請求項2において、該重金属固定剤がリン酸系化合物、アルミニウム塩、鉄塩、セメント、カルシウム化合物、炭酸化合物及びケイ酸化合物よりなる群から選ばれる2種以上を一液化したものであることを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。
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