JP3787904B2 - アンテナスイッチ共用器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてPHS等の移動体通信用基地局に用いられるアンテナスイッチ共用器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の移動体通信用のアンテナスイッチは、特開平7−79173号公報に開示されている。その回路構成は図5に示すように、入力端子15、アンテナ端子16および出力端子17を有し、入力端子15からアンテナ端子16までの経路とアンテナ端子16から出力端子17までの経路とをスイッチ回路18により切り替える構成としていた。そして、入力端子15を送信経路に、アンテナ端子16をアンテナに、出力端子17を受信経路に接続し、制御端子19a,19bに印加する電圧によってスイッチ回路18を切り替えて、送信時には送信経路とアンテナとを、受信時にはアンテナと受信経路とを接続するしくみとなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年移動体通信の使用者の増大につれて、1つの基地局に2つの送信経路を設けて許容チャンネル数を2倍に増やす試みが実施されつつある。この場合、従来のアンテナスイッチでは、2つの送信信号を合成した後に入力端子15に入力する必要があった。さらに、システム的にそれぞれの送信経路の接続/非接続を切り替える機能が必要となるため、そのためのスイッチを別途外部に設けなければならず、基地局全体としてのスイッチ回路が複雑となるとともに制御も煩雑となるといった課題があった。
【0004】
本発明は、各送信経路の接続/非接続スイッチをアンテナスイッチ共用器の送受信切り替えスイッチと一体化することにより、簡単な回路構成と簡便な制御動作を実現することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、第1の入力端子と、第2の入力端子と、前記第1、第2の入力端子から入力された信号を合成する合成器と、アンテナ端子と、出力端子と、前記合成器から前記アンテナ端子への経路と前記アンテナ端子から前記出力端子への経路とを切り替えるスイッチ回路とを備え、前記スイッチ回路が、前記第1の入力端子と前記合成器との間に設けられた第1のスイッチと、前記第2の入力端子と前記合成器との間に設けられた第2のスイッチと、経路の分岐点と前記出力端子との間に設けられた第3のスイッチとから構成されたアンテナスイッチ共用器である。この構成によって、各送信経路の接続/非接続を制御する第1、第2のスイッチと合成器とをアンテナスイッチ共用器に取り込み、送受信切り替えスイッチ回路と一体化することができるため、簡単な回路構成と簡便な制御動作で2つの送信経路を有するアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1の入力端子と、第2の入力端子と、前記第1、第2の入力端子から入力された信号を合成する合成器と、アンテナ端子と、出力端子と、前記合成器から前記アンテナ端子への経路と前記アンテナ端子から前記出力端子への経路とを切り替えるスイッチ回路とを備え、前記スイッチ回路が、前記第1の入力端子と前記合成器との間に設けられた第1のスイッチと、前記第2の入力端子と前記合成器との間に設けられた第2のスイッチと、経路の分岐点と前記出力端子との間に設けられた第3のスイッチとから構成されたアンテナスイッチ共用器である。この構成によって、各送信経路の接続/非接続を制御する第1、第2のスイッチと合成器とをアンテナスイッチ共用器に取り込み、送受信切り替えスイッチ回路と一体化することができるため、簡単な回路構成と簡便な制御動作で2つの送信経路を有するアンテナスイッチ共用器を実現することができる。
【0007】
さらに請求項2に記載の発明は、第1、第2のスイッチをそれぞれ信号経路に直列に接続したダイオードにより構成し、第3のスイッチを第1の90度移相器と前記第1の90度移相器の出力端子側とグランドとの間に接続したダイオードとにより構成した請求項1に記載のアンテナスイッチ共用器である。上記構成によって、各ダイオードスイッチのオン時の直流電流経路を同一方向とすることができるため、各送信経路の接続/非接続と送受信切り替えとの3つの動作を2つの制御端子で行うことが可能となり、簡単な回路構成と簡便な制御動作のアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、合成器と経路の分岐点との間に第2の90度移相器を設けた請求項1または請求項2に記載のアンテナスイッチ共用器である。上記構成によって、受信時に経路の分岐点から送信経路側を見たインピーダンスを開放状態とすることができ、アンテナから受信経路への信号の損失を最小にすることができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、合成器を抵抗、キャパシタおよびインダクタにより構成したウイルキンソン型回路とし、第2の90度移相器をキャパシタおよびインダクタにより構成したπ型回路とした請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のアンテナスイッチ共用器である。上記構成によって、合成器および第2の90度移相器が5素子の低域通過フィルタとしても機能することとなるため、特別な回路を付加することなく、簡単な回路で、送信経路から発せられる2倍、3倍の高調波信号を減衰させたアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、第3のスイッチと出力端子との間に帯域通過フィルタを設けた請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のアンテナスイッチ共用器である。上記構成により、受信信号から不要な周波数成分を減衰させたアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は本発明のアンテナスイッチ共用器を示した回路図である。図1において、1は第1の入力端子、2は第2の入力端子、3は第1のスイッチ、4は第2のスイッチ、5は合成器、6は第2の90度移相器、7はアンテナ端子、8は第3のスイッチ、9は帯域通過フィルタ、10は出力端子、11は第1の制御端子、12は第2の制御端子、13は経路の分岐点、14は第1の90度移相器である。合成器5は、第1および第2の入力端子からの信号経路をそれぞれキャパシタC3,C5、インダクタL1およびキャパシタC4,C5、インダクタL2(C5は両者で共用)で構成されたπ型回路を介して接続するとともに、インダクタL1とインダクタL2の入力側同士を抵抗R1で接続していわゆるウイルキンソン型の回路を構成している。また第1の90度移相器14は、キャパシタC7,C8、インダクタL4によりπ型回路を構成している。さらに第2の90度移相器6はキャパシタC5,C7、インダクタL3によりπ型回路を構成しているが、キャパシタC5は合成器5と共用しキャパシタC7は第1の90度移相器と共用することができるため、回路的にはインダクタL3を経路に直列に接続するのみとなる。
【0012】
第1のスイッチ3は、第1の入力端子1と合成器5との間に合成器5側を順方向として直列に接続されたPINダイオードによって構成され、第2のスイッチ4は、第2の入力端子2と合成器5との間に合成器5側を順方向として直列に接続されたPINダイオードによって構成されている。また、第3のスイッチ8は、経路の分岐点13と出力端子10との間に設けられ、第1の90度移相器14とその出力端子10側とグランドとの間にグランド側を順方向に接続されたPINダイオードD1とにより構成されている。
【0013】
上記の構成により、例えば第1の制御端子11に電圧を印加すると第1のスイッチ3および第3のスイッチ8としてのPINダイオードに直流電流が流れて両者が導通状態となる。前述のごとく第1のスイッチ3としてのPINダイオードは信号経路に直列に接続されているため、このとき第1のスイッチ3は高周波的にオン状態となり、一方第3のスイッチ8としてのPINダイオードは第1の90度移相器14を介してグランドに接続されているため、このとき第3のスイッチ8は高周波的にオフ状態となる。以上の動作により第1の入力端子1からアンテナ端子7までの経路(以下第1の送信経路)が接続状態となる。逆に、第1の制御端子11に電圧を印加しないかまたは負電圧を印加した場合は、第1のスイッチ3が高周波的にオフとなるため第1の送信経路は非接続状態となる。同様に第2の制御端子12に印加する電圧によって第2の入力端子2からアンテナ端子7までの経路(以下第2の送信経路)の接続/非接続状態を制御することができる。さらに、第1の制御端子11と第2の制御端子12の双方に電圧を印加した場合には、第1、第2の送信経路が同時に接続状態となるが、合成器5により両方の経路はアイソレーションされており相互に影響をおよぼすことはない。そして、第1の制御端子11と第2の制御端子12の双方に電圧を印加しないかまたは負電圧を印加した場合には、全てのPINダイオードが非導通となり、高周波的に第1、第2のスイッチ3,4がオフとなり第3のスイッチ8がオンとなる。このために、第1、第2の送信経路が非接続となるとともにアンテナ端子7から出力端子10までの経路(以下受信経路)が接続状態となる。
【0014】
以上のように、この構成によって2つの制御端子11および12に印加する電圧により、第1、第2の送信経路の接続/非接続の制御を独立に行うとともに、送受信の切り替えも同時に行うことができるため、簡単な回路と簡便な制御で2送信経路を有したアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【0015】
図2は合成器5、第2の90度移相器6および第1の90度移相器14の回路構成を示した部分回路図である。合成器5は抵抗、キャパシタおよびインダクタによって構成されたいわゆるウイルキンソン型の回路であり、第1および第2の90度移相器14および6はそれぞれキャパシタおよびインダクタにより構成されたπ型の回路である。この構成により、それぞれの回路の接続点に信号経路とグランドとの間に接続されたキャパシタが形成されるため、それぞれを図中の点線で囲むように一つのキャパシタで形成することができ、回路を簡略化することができるものである。なお、第2の90度移相器6の機能は、第1、第2のスイッチ3,4がオフ(すなわち受信経路接続)状態となった時に分岐点13から合成器5側を見たインピーダンスを開放状態とするためのものであるが、それと同時に合成器5と第2の90度移相器6とで5素子の低域通過フィルタが形成されるため、特別な回路を付加することなしに送信信号の2倍、3倍の高調波成分を抑圧することも可能となる。
【0016】
帯域通過フィルタ9は、2素子の誘電体共振器を用いたフィルタであり、第3のスイッチ8と出力端子10との間に設けられている。この帯域通過フィルタ9により、受信信号からイメージ周波数等の不要成分を減衰させることができる。
【0017】
以下に、上記構成によって実現した1.9GHz帯のPHS基地局用アンテナスイッチ共用器の特性について説明する。図3は第1の送信経路の通過特性を示した特性図である。図3において、太線は第1の送信経路と第2の送信経路を同時に接続状態にした場合、点線は第1の送信経路のみを接続状態にした場合、細線は両方の送信経路を非接続(すなわち受信経路を接続)とした場合である。合成器5の機能により第1の送信経路が接続の場合は第2の送信経路の接続/非接続にかかわらず通過帯域(Tx)の特性が確保されており、逆に非接続(受信経路接続)の場合には通過帯域(Tx)で30dB以上のアイソレーションが得られることがわかる。また、ウイルキンソン型の合成器5とπ型の第2の90度移相器6との低域通過フィルタ機能により2倍、3倍の高調波成分(2Tx,3Tx)が30dB以上減衰していることもわかる。
【0018】
図4は受信経路の通過特性を示した特性図である。図4において、太線は第1の送信経路と第2の送信経路を同時に接続状態にした場合、点線は第1の送信経路のみを接続状態にした場合、細線は両方の送信経路を非接続(すなわち受信経路を接続)とした場合である。第1、第2の送信経路が両方とも非接続の場合に受信経路が接続状態となって通過帯域(Rx)の特性が確保され、逆に第1、第2の送信経路が一つでも接続状態となると受信経路は非接続となり、通過帯域(Rx)で25dB以上のアイソレーションが得られていることがわかる。また、帯域通過フィルタ9の機能により、受信経路接続時のイメージ帯域の減衰量が40dB以上確保されていることがわかる。
【0019】
以上の結果により、本発明のアンテナスイッチ共用器が簡単な回路構成と簡便な制御動作によりPHS基地局用として適切な機能と特性を実現していることがわかる。
【0020】
なお、上記の実施形態では述べなかったが、基地局用のアンテナスイッチ共用器の場合、比較的大きな送信電力が印加されるため、2つの送信信号が合成されてスイッチに入力された場合にスイッチ回路の歪みにより相互変調を起こして他のチャンネルに妨害を与えることがある。しかしながら本例の構成では、第1、第2のスイッチ3,4は合成器5の手前に設けられており、合成器5からアンテナ端子7までの送信経路にはスイッチが存在しないため、上記の相互変調も発生し得ないといった利点もある。
【0021】
なお、上記の実施の形態において説明した数値や構成は一例であり、本発明はこれらの数値や構成の細部に限定されるものではない。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明は、第1の入力端子と、第2の入力端子と、前記第1、第2の入力端子から入力された信号を合成する合成器と、アンテナ端子と、出力端子と、前記合成器から前記アンテナ端子への経路と前記アンテナ端子から前記出力端子への経路とを切り替えるスイッチ回路とを備え、前記スイッチ回路が、前記第1の入力端子と前記合成器との間に設けられた第1のスイッチと、前記第2の入力端子と前記合成器との間に設けられた第2のスイッチと、経路の分岐点と前記出力端子との間に設けられた第3のスイッチとから構成されたアンテナスイッチ共用器であり、各送信経路の接続/非接続を制御する第1、第2のスイッチと合成器とをアンテナスイッチ共用器に取り込み、送受信切り替えスイッチ回路と一体化することができるため、簡単な回路構成と簡便な制御動作で2つの送信経路を有するアンテナスイッチ共用器を実現することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンテナスイッチ共用器を示した回路図
【図2】同共用器の要部の部分回路図
【図3】第1の送信経路の通過特性を示した特性図
【図4】受信経路の通過特性を示した特性図
【図5】従来のアンテナスイッチ共用器を示した回路図
【符号の説明】
1 第1の入力端子
2 第2の入力端子
3 第1のスイッチ
4 第2のスイッチ
5 合成器
6 第2の90度移相器
7 アンテナ端子
8 第3のスイッチ
9 帯域通過フィルタ
10 出力端子
11 第1の制御端子
12 第2の制御端子
13 分岐点
14 第1の90度移相器

Claims (2)

  1. 第1の入力端子から入力された信号と第2の入力端子から入力された信号とを合成する合成器と、この合成器からアンテナ端子への経路とこのアンテナ端子から出力端子への経路とを切り替えるスイッチ回路とを備え、
    前記スイッチ回路は、前記第1の入力端子と前記合成器との間に直列に接続された第1のスイッチと、前記第2の入力端子と前記合成器との間に直列に接続された第2のスイッチと、経路の分岐点と前記出力端子との間にシャントに接地接続された第3のスイッチとから構成され、
    前記合成器は、前記第1の入力端子からの信号経路として、シャントに接地接続されたキャパシタC3及びシャントに接地接続されたキャパシタC5及び前記キャパシタC3と前記キャパシタC5との間に接続されたインダクタL1からなると共に前記第1の入力端子からの信号を略90度移相するΠ型回路と、前記第2の入力端子からの信号経路として、シャントに接地接続されたキャパシタC4及び前記キャパシタC5及び前記キャパシタC4と前記キャパシタC5との間に接続されたインダクタL2からなると共に前記第2の入力端子からの信号を略90度移相するΠ型回路と、前記インダクタL1と前記インダクタL2の入力側同士を接続した抵抗R1とで構成され、
    前記第3のスイッチと前記経路の分岐点との間には、シャントに接地接続されたキャパシタC7及びシャントに接地接続されたキャパシタC8及び前記キャパシタC7と前記キャパシタC8との間に接続されたインダクタL4からなると共に前記第1の入力端子からの信号と前記第2の入力端子からの信号とを略90度移相する第1の90度移相器が接続され、
    前記経路の分岐点と前記合成器との間にインダクタL3が接続され、
    このインダクタL3と前記キャパシタC7と前記合成器とによって、前記第1のスイッチと前記経路の分岐点との間もしくは前記第2のスイッチと前記経路の分岐点との間において前記アンテナ端子からの信号を略180度移相するアンテナスイッチ共用器。
  2. 前記第1、第2、第3のスイッチはダイオードで構成された請求項1に記載のアンテナスイッチ共用器。
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