JP3787829B2 - 発光分光分析装置及び発光分光分析の補正方法 - Google Patents

発光分光分析装置及び発光分光分析の補正方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波グロー放電発光分光分析等の発光分光分析に関し、測定発光強度データから雑音成分や光干渉による成分を除去する信号処理によって元素分析を行う分析装置、及び信号処理における補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
組成分析を行う装置として、試料原子からの発光を測定しその発光強度から元素分析を行う発光分光分析装置があり、グロー放電による発光を用いた高周波グロー放電発光分光分析装置が知られている。
低圧力のアルゴン雰囲気中で、電極間に高周波の高電圧を印加すると、グロー放電が発生する。このグロー放電によって生成されたArイオンは、高電界で加速されて陰極側に衝突して陰極側から物質をたたき出す。このスパッタリングによって放出された粒子(原子,分子,イオン)は、プラズマ中で励起状態から基底状態に戻る際に、その元素特有の波長の光を放出する。高周波グロー放電発光分光分析は、この発光を分光器で分光して元素分析等を行う。この高周波グロー放電発光分光分析では、スパッタリングによって試料表面が除去され、各元素の発光強度の時間的変化を測定することによって、深さ方向の元素分析を行うことができる。
【0003】
発光分光分析装置では、試料自体の構造により発光した光が試料で干渉を受け、測定光強度が変化することが知られている。例えば、光非透過基板の上に光透過性薄膜を有する試料について高周波グロー放電発光分光分析を行うと、試料表面と基板表面とで反射した光が干渉し、検出光強度に波打ち現象と呼ばれる周期的な変動が生じる。この検出光強度の周期的変動は試料中の元素濃度とは無関係であり、元素の濃度変動に対して誤差の要因となる。
【0004】
従来、上記波打ち現象を試料の元素の濃度変動に基づく強度変化に戻すために、移動平均によるスムージングや、短時間高速フーリエ変換によるバンドバスフィルタや、スパッタリング時間に対する測定光の光強度の周期的変動と測定光の波長に基づく方法(特開平6−43100号)等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、試料中に層界面等が存在する場合には、該層界面において急激な波形変化が発生する。従来の処理方法では、該層界面に対応する干渉波形の端部において発生する急激な波形変化に対して良好に対応することができず、この近傍の波形処理を省いたり、急激な強度変化をなまらせて処理を行っている。
また、短時間高速フーリエ変換法では、固定した処理区間で処理を行うため、低周波数の波形に合わせて区間設定を行うと高周波数領域の時間分解能が悪化し、逆に時間分解能を下げないように処理を行う場合には、処理が長時間化することになる。また、区間の区切りで不連続が生じるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、発光分光分析において、発光分光分析データに含まれる雑音成分や光干渉による波打ち成分を、精度良く短時間で除去あるいは低減することを目的とし、また、該データ処理を自動で行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、測定発光強度データの処理に時間−周波数解析処理を適用することによって、雑音成分や光干渉による波打ち成分を低減あるいは除去して、試料中の元素の濃度情報成分を抽出して検出するものである。また、時間−周波数解析をウェーヴレット変換を用いる場合、処理対象である測定発光強度データを補正することによって、干渉波形の両端部等の急激な強度変化についても正確に干渉波形を除去し、処理時間を短縮することができる。
【0008】
本発明の発光分光分析装置は、発光分光分析測定によって元素分析を行う発光分光分析装置において、測定発光強度データを時間−周波数解析によって多重解像度成分にデータ変換し、特定の多重解像度成分のデータに関して信号処理を行う信号処理手段を備え構成とする。
【0009】
本発明の発光分光分析装置によれば、信号処理手段は、雑音成分や光干渉による波打ち成分を含む測定発光強度データに対して時間−周波数解析を適用して測定発光強度データを多重解像度成分に分解し、分解したデータから雑音成分や光干渉による波打ち成分を取り出す。分解したデータから雑音成分や光干渉による波打ち成分を除去あるいは削減する処理を行い、得た処理データの合成を行う。雑音成分や光干渉による波打ち成分を除去あるいは削減することによって、合成した波形から雑音成分や光干渉で生じる波形変動や波打ち効果を除去することができる。
【0010】
時間−周波数解析としてウェーヴレット変換を用いることができる。この場合には、発光分光分析装置は、測定発光強度データをウェーヴレット変換によって周波数帯域データにデータ変換し、特定の周波数帯域にデータに関して信号処理を行う。
繰り返し性のある成分を除去する手段として短時間フーリエ変換が知られている。この短時間フーリエ変換は時間幅を固定して解析を行う解析法であるため、除去成分の周波数が既知である場合には有効であるが、除去成分が緩やかに変化した場合や境界面上で急激に変化する場合には有効に成分を除去できない。
【0011】
これに対して、本発明の発光分光分析装置は、干渉効果等による繰り返し性のある成分の除去において有効である。特に、時間−周波数解析としてウェーヴレット変換を用いた場合、特定成分の周波数を厳密に求めることはできないが、周波数の低い成分から高い成分まで対応することができるため、実際の発光分析で得られる時間変動に対して対応が容易となる。特に、高周波グロー放電発光では、スパッタリングレートの時間変動によって干渉変動が時間的変動し、かつ、層間での材質の急激な変化によって信号強度が急激に変化する場合に、干渉光等による成分を適切に除去する処理に適している。
【0012】
また、ウェーヴレット変換は、分解した波形を合成して再構成した場合に、元波形の再現性が数学的に保証されているため、特定成分を除去した後に、ひずむことなく波形を再構成することができる。また、ウェーヴレット変換は短時間フーリエ変換に対して演算量を少なくすることができ、信号処理手段の処理時間を短縮することができる。
【0013】
また、雑音成分や波打ち成分の周波数特性や、信号の立ち上がり,立ち下がり時刻等が測定発光強度データ毎に変化した場合にも、手入力等でデータ信号内容を調整する必要が無く、雑音成分や波打ち成分の低減あるいは除去を自動で行うことができる。
【0014】
信号処理手段は、測定発光強度データを時間−周波数解析によって多重解像度成分にデータ変換し、特定の多重解像度成分のデータに関して信号処理を行う。信号処理手段は、測定発光強度データから多重解像度成分に分解する分解処理と、多重解像度成分の強度変換を行う強度変換処理と、データ合成を行う再構成処理を行う演算処理機構により構成することができ、該処理を行うソフトウエアにより構成することができる。時間−周波数解析としてウェーヴレット変換を用いる場合には、信号処理手段は、測定発光強度データから特定周波数帯域のデータを抽出し、抽出データ及び残余データに分解する分解処理と、抽出データの除去を含む強度変換を行う強度変換処理と、前記強度変換データ及び残余データを合成する再構成処理を行う演算処理機構により構成することができる。
【0015】
なお、分解処理は、測定時間中で波打ちが存在する波打ち存在時間の検出や、波打ちが含まれる多重解像度成分の検出や、雑音が含まれる多重解像度成分の検出によって、雑音成分や波打ち成分の抽出処理を行うことができる。
本発明の発光分光分析装置の第1の態様は、測定装置として試料成分を抽出し該試料成分の発光を誘起する発光手段と、試料成分からの発光を測定し発光強度信号を得る検出手段とを備え、信号処理手段は該検出手段で得た発光強度信号を処理する。
【0016】
本発明の発光分光分析装置の第2の態様は表示手段を備え、測定発光強度データ,抽出データ,残余データ,合成後の再構成データを表示する。これによって、光干渉により生じた信号成分に含まれる、試料の層構造に関する情報や、試料の抽出・発光励起過程中の発光状態に関する情報を表示することができる。また、表示手段は、信号処理前の測定発光強度データ、信号処理後のデータ、強度変換データ、残余データを単独あるいは組み合わせて波形表示する。
【0017】
また、本発明の補正方法は、ウェーヴレット変換によるデータ変換において、前処理を施したデータに対してウェーヴレット変換を行うことによって補正を行い、干渉波形の両端部等の急激な強度変化についても正確に干渉波形を検出し、除去を行う。
本発明の発光分光分析の補正方法は、発光分光分析測定によって元素分析を行う発光分光分析において、測定発光強度データをウェーヴレット変換によるデータ変換を行って、測定発光データ中の特定周波数帯域のデータに関して信号処理を行うものであり、ウェーヴレット変換の前処理として、測定発光強度データのデータ点数の変更(第1の補正処理)、及び又は測定データに対する追加データの追加位置の変更(第2の補正処理)を行うことによって、データ変換の補正を行う。
【0018】
第1の補正処理は測定データのデータ点数を変更する処理であり、これによってウェーヴレット変換により抽出する特定周波数帯域を変更する。抽出する特定周波数帯域を変更することによって、除去成分が含まれる特定周波数帯域あるいはその近傍を検出し、最適な特定周波数帯域を求める。この処理によって、除去成分を的確に抽出し、該除去成分を取り除いたデータを求めることができる。
【0019】
データ点数を変更する処理の一態様は、隣接する測定データ間を整数等分した位置について、隣接する測定データを用いて補間データを求めるものであり、測定データ及び補間データをウェーヴレット変換の処理データとする。
データ点数を変更する処理の他の態様は、全測定データ範囲を整数等分した位置について、該位置の近傍の測定データから補間データを求めるものであり、補間データをウェーヴレット変換の処理データとする。
【0020】
第2の補正処理は、測定データを2のべき乗の個数とするデータ処理において、測定データに対する追加データの追加位置を変更する処理であり、これによって測定データの端部補正を行い、正確な干渉波形の除去を行う。ウェーヴレット変換において、処理データのデータ数は2のべき乗個であることを要するため、測定データのデータ数が2のべき乗個に一致しない場合には、ダミーデータを追加データとして追加し全体のデータ数を2のべき乗個とし、該2のべき乗個のデータに対してウェーヴレット変換を行う。
【0021】
ダミーデータの一態様は、測定データの端部のデータを用いる。測定データの前方にダミーデータを追加する場合には測定データの前端データを用い、測定データの後方にダミーデータを追加する場合には測定データの後端データを用いる。
また、ダミーデータとしてミラーデータを用いることもできる。ミラーデータを用いる場合には、測定データの端部からの並び順を逆にして端部に追加する。この場合には、ダミーデータにも干渉波形を含むことになる。
【0022】
追加データは、2のべき乗個とするために必要とする追加データ数を分配し、測定データの前方及び後方に追加する。このデータ追加において、前方及び後方に追加するデータ数を変更することによって、最適な測定データの端部補正を行う。
また、第1の補正処理の測定データのデータ点数の変更と、第2の補正処理の追加データの追加位置の変更の2つの補正処理の組み合わせの中から、干渉による波打ち成分を最適に除去する組み合わせを選択することができる。
【0023】
なお、本発明のウェーヴレット変換では抽出した信号の周波数を定めることはできないが、抽出データをフーリエ変換することによって該抽出データに含まれる周波数成分を求めることができる。
本発明によれば、高周波グロー放電発光分光分析装置にウェーヴレット変換を行う信号処理手段を具備させることによって、実際の発光分析で得られる時間変動に対して対応が容易となり、特に、高周波グロー放電発光において、スパッタリングレートの時間変動によって干渉変動が時間的変動し、かつ、層間での材質の急激な変化によって信号強度が急激に変化する場合に、干渉光等による成分を適切に除去する処理に適している。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の発光分光分析装置の一構成例を説明するための概略図である。図1において、測定装置2は発光分光分析測定によって元素に特有の波長の光を検出する。測定装置2で検出した検出光の発光強度は演算処理装置1に送られる。演算処理装置1は時間−周波数解析による分解や再構成等の信号処理を行い、処理データを出力する。
【0025】
時間−周波数解析によるデータ変換は、測定発光強度データ中の特定周波数帯域のデータに関して信号処理を行う。信号処理として、特定周波数帯域毎の信号分解、分解信号の抽出や除去、分解信号の合成による再構成等を行うことができる。信号処理において、抽出した特定周波数帯域のデータを強度値に変換し、該強度値に変換したデータを用いて再構成し、特定周波数帯域を強調した波形を形成することができる。また、抽出した特定周波数帯域のデータについて、設定した所定レベルのしきい値によって強度判別を行い、波形からある強度範囲に含まれる部位を特定して抽出したり、該特定部位の強度レベルに変換したデータを用いて再構成し、特定部位を強調あるいは抑制した波形を形成することができる。
【0026】
なお、ウェーヴレット変換による時間−周波数解析では再構成によって波形形成を行うことができるが、短時間フーリエ変換による時間−周波数解析では再構成を行うことができないため、解析結果を用いたデータの改善演算によって波形を形成する。
【0027】
演算処理装置1は、記憶手段11及び信号処理手段12を備える。記憶手段11は、測定発光強度データ(元データ)及び信号処理後の処理データを記憶する。信号処理手段12は、時間−周波数解析機能12a,前処理機能12b,強度変換処理機能12c,再構成処理機能12dの各機能を備え、該各機能によって測定発光強度データをデータ処理し、処理データを記憶手段11に送る。各機能は、ソフトウエアで構成することができる。
【0028】
時間−周波数解析機能12aは、測定発光強度データに含まれる周波数成分を複数の周波数レベルに分解して多重解像度成分を求める。多重解像度成分は時系列信号であり、周波数成分の時間変化を表す。なお、ウェーヴレット変換による時間−周波数解析で得られる多重解像度成分は、複数の離散的な周波数レベルに分割される。
【0029】
前処理機能12b及び強度変換処理機能12cは、所定の周波数レベルの多重解像度成分について強度のデータ処理を行い、測定発光強度データに含まれる雑音成分や波打ち成分を低減あるいは除去を行うことができる。雑音成分や波打ち成分の低減あるいは除去の場合には、前処理機能12bは信号立ち上がり時間検出処理、波打ち周波数レベル範囲算出処理、雑音周波数レベル算出処理を行い、雑音成分や波打ち成分が含まれる周波数レベルの多重解像度成分を求める。強度変換処理機能12cは求めた多重解像度成分に対して強度変換を行い、低減あるいは除去を行う。再構成処理機能12dは分解した多重解像度成分を再構成する。
【0030】
ウェーヴレット変換による時間−周波数解析では、多重解像度成分への分解及び多重解像度成分からの再構成は、QMF(Quadrature Mirror Filter)と呼ばれる4種1組のフィルタを使用するサブバンド分解・再構成によって、演算の実行を高速化することができる。なお、QMFの構成はウェーヴレット変換に用いる基底関数によって定まり、HaarやSymlet等の直交基底を用いる場合には完全再構成が保証される。したがって、直交基底関数によるQMFのフィルタを用いることによって、演算量を減少させると共に演算精度を上げることができる。
【0031】
記憶手段11は、測定装置2からの測定発光強度データを元データとして記憶すると共に、前処理12b,強度変換処理12c,再構成処理12dの処理データを記憶し、出力/表示手段3に出力することができる。
次に、本発明の発光分光分析装置の信号処理手段が行う雑音成分,波打ち成分の低減,除去について、図2〜図17を用いて説明する。以下の説明では、ウェーヴレット変換による時間−周波数解析について説明する。
【0032】
はじめにウェーヴレット変換について説明する。なお、以下では離散ウェーヴレット変換について概略的に説明する。
信号fj(x) はウェーヴレット変換によって、ウェーヴレット成分gj-1(x),gj-2(x),・・・に分解することができ、以下の式(1)で表される。
fj(x)=gj-1(x)+fj-1(x) …(1)
なお、fj(x),gj(x)は以下の式(2),(3)で表される。
【0033】
【数1】
Figure 0003787829
なお、整数jはレベルであり、ck (j-1)は近似成分係数であり、Φ(x)はスケーリング関数であり、dk (j)はウェーヴレット変換(WΨf)(2-jk,2-j)であり、Ψ(x)は関数f(x)のマザー・ウェーヴレットである。
上記式(1)より、信号fj(x) は各jのレベル毎にウェーヴレット成分gj-1(x)と1レベル下のfj-1(x) の和で表される。
また、式(2),(3)により、fj-1(x) 及びウェーヴレット成分gj-1(x)は、レベルに関連した2のべき乗により表される。従って、ウェーヴレット変換で抽出されるウェーヴレット成分gj-1(x) は周波数領域では離散的となり、特定周波数ではなく特定周波数帯域として抽出される。
【0034】
ウェーヴレット変換による信号のデータ変換の状態について、図2のウェーヴレット処理を説明するための信号図を用いて説明する。なお、図2では離散データを連続した曲線で示している。図2(a)に示す信号をf0 とする。信号f0 に対してレベル0でウェーヴレット変換を適用すると、
f0=f-1+g-1 …(4)
となり、レベルが1つ下がったレベル−1のウェーヴレット成分g-1及び残余のデータf-1を得ることができる。図2(b)はウェーヴレット成分g-1を除去した残余のデータf-1を表している。
【0035】
図2(b)のf-1に対して同様の処理を行うことにより、レベルがさらに1つ下がったレベル−2のf-2及びg-2を得ることができる。図2(c)はf-2を示している。さらに、図2(c)のf-2に対して同様の処理を行うことにより、レベルがさらに1つ下がったレベル−3のf-3及びg-3を得ることができる。図2(d)はf-3を示している。
【0036】
図2(b)のf-1と図2(c)のf-2及び図2(d)のf-3とを比較すると、f-2では干渉波形に対応する周期波形部分が除去され、f-3では平坦な信号となっている。これにより、レベル−2のウェーヴレット成分g-2に対応する周波数帯域に干渉波形が存在すると推定することができる。
【0037】
図3は測定発光強度データの時間−周波数解析のフローチャートであり、図4,5は時間−周波数解析による処理信号例である。信号処理手段12は、以下のステップS1の時間−周波数解析で分解した多重解像度成分をステップS2,3の前処理をした後、ステップS4で雑音成分及び波打ち成分を除去低減し、ステップS5で再構成する。また、ステップS6で雑音成分及び波打ち成分を求めることができる。
【0038】
ステップS1において、時間−周波数解析処理機能12aは測定発光強度データを時間−周波数解析する。発光分光分析において、試料の表面原子がプラズマによって励起されて原子固有の波長の光が発生し、発光の開始で信号が立ち上がり、試料の切削終了で信号が立ち下がる。このとき、試料表面からの光と基板表面で反射された光が光干渉する。試料を切削しながら分光分析を行うと、光干渉の光路差変化に伴って測定データに波打ちが生じる。また、全時間に渡って不規則に雑音が発生する。時間−周波数解析によって図4,5に示すような多重解像度成分が得られる。
【0039】
図4,5では一例として高周波数から低周波数に向かって6個の周波数レベルの多重解像度成分(ウェーヴレット成分g-1からg-6)に分解した例を示している。測定データは信号の立ち上がり,立ち下がり時刻や勾配や波打ちの周波数は測定データ毎に異なるが、多重解像度成分において、雑音成分は高周波側の周波数レベルの全時間に不規則に存在し、波打ち成分は雑音成分より低周波数側の周波数レベルの信号立ち上がり時刻から信号立ち下がり時刻の時間内に連続的に存在する、という共通した時間−周波数特性がある
次に、波打ち成分の除去,低減処理の前処理の一つとして、ステップS2で時間−周波数特性を用いて立ち上がり時刻edge1 と立ち下がり時刻edge2 と求めて波打ち存在時間を検出する。
以下、図6のフローチャートを用いて波打ち存在時間の検出の手順を説明する。図4,5に示すように、多重解像度成分の値は全周波数レベルに渡って、信号の立ち上がり時刻では極小値をとり、信号の立ち下がり時刻では極大値をとる。極小値及び極大値の振幅は、信号勾配が急な場合には高周波数レベルの成分値の振幅が大きくなり、信号勾配が緩い場合には低周波数レベルの成分値の振幅が大きくなる。そこで、ステップS11で、全時刻において周波数レベル方向に多重解像度成分Dj(k) (ウェーヴレット成分gj(k)) 値を加算し、ステップS12で、最小及び最大となる時刻を検出することによって、信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する。なお、kは時刻を表す添字である。加算値の最小を示す時刻によって立ち上がり時刻edge1 を検出し、加算値の最小を示す時刻によって立ち下がり時刻edge2 を検出する。波打ち成分はedge1 とedge2 との間の区間に存在する。
【0040】
ステップS2の処理の後、ステップS3によって時間−周波数特性から波打ち成分の周波数帯及び雑音成分の周波数帯を算出する。以下、図7のフローチャートを用いて波打ち成分の周波数レベル範囲wlevを算出する手順を説明する。ステップS21で、各周波数レベルj (=-1,-2,・・・)において、edge1 とedge2 との間の区間に存在する多重解像度成分Dj(k) に対して下記の評価関数EW(j)を算出する。
EW(j)=ΣDj(k−1)×Dj(k)/normW(j) …(5)
なお、normW(j)は波打ち区間内の多重解像度成分Dj(k) の二乗平均値である。
【0041】
多重解像度成分Dj(k) (ウェーヴレット変換ではgj(k))の内で波打ち成分は、edge1 とedge2 との間に存在し正負に振動する振幅が比較的そろった波形となる。そのため、評価関数EW(j)は、多重解像度成分中に波打ち成分が含まれていると−1に近づき、波打ち成分が含まれていないと0に近づく。
【0042】
そこで、ステップS22で、周波数レベルjの中から評価関数EW(j)の値が−1に最も近い周波数レベルjを求め、波打ちの中心周波数レベルwmidlev とする。図4では、(d)が中心周波数レベルg-4の場合を示している。
次に、ステップS23で、中心周波数レベルwmidlev の前後の周波数レベル(図4(c),(e)の周波数レベルg-3,g-5)をwmidlev-1 及びwmidlev+1 とし、周波数レベル範囲を表す周波数レベルwlev1及びwlev2として算出する。図4(f)は波打ち成分を含まない多重解像度成分となる。
【0043】
次に、図8のフローチャートを用いて雑音成分の周波数レベル範囲nlevを算出する手順を説明する。ステップS31で、各周波数レベルj (=-1,-2,・・・)において、全区間に存在する多重解像度成分Dj(k) (ウェーヴレット変換ではgj(k))に対して下記の評価関数SN(j)を算出する。
SN(j)=normS(j)/normN(j) …(6)
なお、normS(j)はedge1 とedge2 を含む信号区間内の多重解像度成分 Dj(k)(ウェーヴレット変換ではgj(k)) の二乗平均値であり、normN(j)はedge1 とedge2 を含まない信号区間外の多重解像度成分Dj(k) の二乗平均値である。
【0044】
雑音成分は、全時間に渡って分布している。これに対して、波打ち成分は波打ち区間内に分布し、信号の立ち上がり及び立ち下がりの成分は時刻edge1 とedge2 に分布し、振幅は雑音成分より大きい。そのため、評価関数SN(j)の値は、周波数レベルjに含まれる情報が全て雑音である場合には1に近くなり、波打ち成分や信号が含まれるほど大きな値となる。また、雑音成分の信号は波打ち成分の信号より高い。
【0045】
そこで、ステップS32において、算出した波打ち成分の周波数レベルwlev1 より高い周波数レベル(wlev1-1 ,・・・g-2,g-1)に対して評価関数SN(j)を求め、SN(j)の値が一定値以下となる最低周波数レベル(周波数が高い周波数レベル)を算出しnlevとする。雑音周波数レベルは、図5ではnlevの周波数レベル(図5(b)のg-2)及びnlevより高周波数側の周波数レベルnlev-1(図5(a)のg-1)となる。
【0046】
なお、ステップS3の雑音成分及び波打ち成分の周波数レベルの検出は、上記ウェーヴレット変換に限らず他の時間−周波数解析によって雑音成分や波打ち成分を時間的及び周波数的に多重解像度成分に分離することによって行うことができる。
【0047】
次に、ステップS3で雑音成分及び波打ち成分の周波数レベルを算出した後、ステップS4において雑音成分及び波打ち成分の除去,低減を行う。以下、図9のフローチャートを用いて雑音成分の除去,低減する手順を説明する。雑音周波数レベルg-1 〜nlevの多重解像度成分に対して、ステップS41で時刻edge1,edge2 の成分を保存し、ステップS42でその他の全時間に渡って除去あるいは低減する。
【0048】
多重解像度成分Dj(k)の除去,低減は、Dampを低減率(0≦Damp ≦1)として以下の演算式により行うことができる。
Dresj(k)=Dj(k)×Damp …(7)
低減率Damp を0.0とすると対象成分の除去が行われ、1に近づけることによって元データへの忠実度を高めた低減を行うことができる。
【0049】
また、低減率Damp を多重解像度成分の大きさの低減率関数f(x)とする以下の演算式を用いることができる。
Dresj(k)=Dj(k)×f(|Dj(k)|) …(8)
例えば、対象成分に振幅が小さいものほど雑音である確率が高い性質がある場合、f(0)=0.0,f(Dmax )=1.0とする単調増加関数の低減率関数f(x)を用いることによって、振幅に応じた低減率を適用し、測定データの性質を反映した結果を得ることができる。なお、Dmax は低減を免れるための最小振幅である。
【0050】
図10は波打ち成分の除去,低減する手順を説明するフローチャートである。波打ち周波数レベルwlev1 〜wlev2 の多重解像度成分に対して、ステップS51で時刻edge1 ,edge2 以外の成分を保存し、ステップS52で時刻edge1 からedge2 の間の波打ち成分(時刻edge1 ,edge2 の成分を含まない)を除去あるいは低減する。
【0051】
多重解像度成分Dj(k) の除去,低減は、雑音成分の場合と同様に、式(7),(8)を用いて行うことができる。
ステップS5では、ステップS4で雑音成分及び波打ち成分の除去,低減して得られた多重解像度成分を用いてデータ再構成を行うと、元の測定データに含まれる信号成分を保持したまま、雑音成分及び波打ち成分を除去,低減し波形を求めることができる。
【0052】
また、ステップS6において、除去,低減される雑音成分及び波打ち成分を求めることができる。ウェーヴレット変換による時間−周波数解析を行う場合には、除去,低減される多重解像度成分を再構成することによって、雑音成分及び波打ち成分を求めることができる。
図11,12は雑音成分及び波打ち成分の算出を説明するためのフローチャートである。
【0053】
雑音周波数レベルg-1〜nlevの多重解像度成分の内、時刻edge1 ,edge2 の成分の内で除去,低減された成分が雑音成分である。したがって、雑音成分の算出は、ステップS61において、低減された値Dresj(k)が前記式(7)で表される場合には、低減処理で除かれる雑音成分は、
Dsubj(k)=Dj(k)×(1.0−Damp) …(9)
で表される。また、低減された値Dresj(k)が前記式(8)で表される場合には、低減処理で除かれる雑音成分は、
Dsubj(k)=Dj(k)×(1.0−f(|Dj(k)|)) …(10)
で表される。
【0054】
また、波打ち周波数レベルwlev1 〜wlev2 の多重解像度成分の内、時刻edge1 〜edge2 の間にある波打ち成分(時刻edge1 〜edge2 を含まない)の内で除去,低減された成分が波打ち成分である。したがって、波打ち成分の算出は、ステップS71において、低減された値Dresj(k)が式(7)で表される場合には、低減処理で除かれる波打ち成分は前記式(9)で表され、低減された値Dresj(k)が式(8)で表される場合には、低減処理で除かれる波打ち成分は式(9)で表される。
【0055】
算出した雑音成分及び波打ち成分Dsubj(k)を用いてデータの再構成を行うと、除去,低減された雑音波形及び波打ち波形を求めることができる。
【0056】
図13〜図17は本発明の発光分光分析装置によるデータ例である。図13、14は発光分光測定波形と雑音及び波打ちを除去した後の波形を示している。また、図15は除去低減された波打ち成分例であり、図16は除去低減された雑音成分例である。
【0057】
本発明の発光分光分析装置は、図13〜図16の波形を単独で表示することができる。また、図17に示すように、元データの波形と雑音,波打ち除去した波形と同時に重ねて表示する他、複数の波形を同時に重ねて表示することができる。
【0058】
次に、本発明の高周波グロー放電を用いた場合の発光分光分析装置の他の構成及び発光分光分析の補正処理を図18〜図37を用いて説明する。
図18は本発明の高周波グロー放電発光分光分析装置の他の構成を説明するための概略図である。この構成例では、ウェーヴレット変換の前処理として、測定発光強度データのデータ点数の変更(第1の補正処理)、及び又は測定データに対する追加データの追加位置の変更(第2の補正処理)を行うことによって、データ変換の補正を行う。図18において、測定装置2は高周波グロー放電によるプラズマによって、試料成分を抽出して試料原子を励起させて、元素に特有の波長の光を検出する。測定装置2で検出した検出光の発光強度は演算処理装置1に送られ、ウェーヴレット変換による分解や再構成等の信号処理を行った後、出力/表示装置3に出力される。
【0059】
演算処理装置1は記憶手段11及び信号処理手段12を備える。記憶手段11は測定装置2から送られる検出光の発光強度(測定発光強度データ)及びウェーヴレット処理後の処理データ等を記憶する。信号処理手段12はウェーヴレット変換を含む処理手段であって、図1で示した構成例と同様に、測定発光強度データを補間処理手段13及びデータ追加手段14によって前処理を施した後、データ変換を行う。
【0060】
補間処理手段13は測定発光強度データ間のデータを補間してデータ点数を変更する手段であり、ウェーヴレット変換の特定周波数帯域を実質的に変更する。また、データ追加手段14は測定発光強度データあるいは補間したデータにダミーデータを追加する手段であり、ウェーヴレット変換に適用するデータ数を2のべき乗数とする。信号処理手段14で信号処理した信号は、処理データとして記憶手段11に記憶することができ、出力/表示装置4で表示することができる。また、補間の程度や追加データの追加位置等の演算処理装置1に要する設定値は、入力装置4から入力することができる。
【0061】
本発明の演算処理装置1が行う処理手順について図19のフローチャート及び図20の信号概略図を用いて説明する。
演算処理装置1は、測定装置2で測定した測定発光強度データを記憶手段11に取り込む(ステップS81)。図20(a)は測定装置1で検出される発光強度を示し、図20(b)は発光強度を所定周期でサンプリングして得られる測定発光強度データを示している。記憶手段11は図20(b)に示すような離散データを記憶する。
【0062】
補間処理手段13は、取り込んだ測定発光強度データを用いて補間処理を行い、ウェーヴレット変換の特定周波数帯域を実質的な変更を行う。補間の程度を変更することによってデータ点数を変更し、特定周波数帯域の変更を調節することができる。図20(c)は補間後のデータを示している。補間処理については後述する(ステップS82)。
【0063】
離散的なウェーヴレット変換では、2のべき乗個のデータに対して変換処理を行う。通常、測定発光強度データあるいは補間処理後のデータの個数は必ずしも2のべき乗個とならないため、データ追加手段14によってダミーデータを追加して全体のデータ数が2のべき乗個となるよう調整する。図20(d)は補間処理後のデータのダミーデータ(追加データ)を追加し、全体のデータ数を2のべき乗個とした状態を示している(ステップS83)。
【0064】
ステップS82,83の補正処理によりデータに対してウェーヴレット変換によるデータ変換を行い、特定周波数帯域の信号分解を行い、分解信号の抽出や除去、分解信号の合成等を行う。
高周波グロー放電発光分光分析で検出される測定発光強度データについては、波打ち成分に対応する特定周波数帯域で分解した後、波打ち成分の除去、波打ち成分を除去した信号による元素濃度にかかわる信号の抽出、波打ち成分を除いた信号合成による波打ち成分を含まない信号の生成等の種々の信号処理を行うことができる。
【0065】
さらに、前記した、抽出した特定周波数帯域のデータの強度変更、及び該データあるいは除去後のデータによる特定周波数帯域を強調した波形の形成を行うことができる。また、抽出した特定周波数帯域のデータについて、しきい値を用いいた特定部位の抽出、特定部位を強調あるいは抑制した波形の形成等の信号処理を行う。
【0066】
信号処理の後、信号処理の結果を評価し、さらに良好な結果を望む場合には(ステップS85)、補正処理を行う。
補正処理は、補間処理においてデータ点数を変更したり、データ追加処理において追加データの追加位置を変更することにより行う。データ点数の変更及び追加データの追加位置の変更は、いずれか一方を行うこともあるいは両方を行うこともできる。なお、補間によるデータ点数の変更及び追加データの追加位置の変更の両変更を行うことにより、より最適な補正を行うことができる。
【0067】
信号処理手段12は、図20(d)に示すデータに対してウェーヴレット変換によるデータ変換を行う。図20(e)はウェーヴレット変換で抽出される特定周波数帯域の信号であり、図20(f)はウェーヴレット変換で抽出した特定周波数帯域の信号を発光強度測定データから除去した残余データを示している。図20(e)の信号が波打ち成分に対応する場合には、図20(f)の残余データは波打ち成分を含まない信号であって、元素濃度にかかわるデータとなる。ウェーヴレット変換は図2で説明したように行うことができる。なお、図2(a)は追加データを施した状態を示している。
【0068】
次に、第1の補正処理である補間処理について、図21〜図26を用いて説明する。補間処理は、測定データ間を補間したデータを求めるデータ点数を変更する処理であり、これによってウェーヴレット変換の特定周波数帯域の実質的な変更を行う。
図21は補間処理の一例であり、隣接するデータ値間を等間隔で分割し、分割位置の値を隣接する2つのデータから演算するものである。図20(a)は元データ(図中の黒点)であり、所定の間隔L中にデータ数Nが含まれる場合を示している。このとき、隣接するデータ間の距離はL/Nとなる。
【0069】
図21(b)は元データに対して1点補間を行う場合である。1点補間では、隣接するデータ値の中間位置に、隣接するデータ値の中間の値を補間する。この補間により、データ数は2倍の2Nとなり、全データの間隔を同一のLとすると、隣接するデータ間の距離はL/2Nとなる。図21(c)は元データに対して2点補間を行う場合である。2点補間では、隣接するデータ値の三等分の位置に、隣接するデータ値を三等分した値を補間する。この補間により、データ数は3倍の3Nとなり、全データの間隔を同一のLとすると、隣接するデータ間の距離はL/3Nとなる。同様に、図21(d)は3点補間の場合を示しており、この補間により、データ数は4倍の4Nとなり、全データの間隔を同一のLとすると、隣接するデータ間の距離はL/4Nとなる。
【0070】
図22〜図25により、ウェーヴレット変換で抽出される特定周波数帯域が、補間処理によって変化する状態を説明する。なお、図22〜図25において、破線は測定発光強度データの周波数特性を示し、実線は各ウェーヴレット変換で抽出される周波数成分を示している。ウェーヴレット成分g,及び残余データfは、式(2),(3)に示されるように2-1のべき乗毎に示されるため、各図22〜図25では、各周波数成分をある周波数fを基準周波数として示している。
【0071】
図22は補正処理を行わない元データに対してウェーヴレット変換を行い、各レベルで抽出されるウェーヴレット成分g,及び残余データfの周波数成分を示している。図22(a)において、元データf0 のレベル0での周波数成分はf,f/2,f/4,f/8,f/16,・・・である。この元データf0 に対してウェーヴレット変換を行うと、図22(b),(c)に示すようなレベルを−1とするウェーヴレット成分g-1,残余データf-1が得られ、周波数fの抽出を行うことができる。次に、同様にして、残余データf-1に対してウェーヴレット変換を行うと、図22(d),(e)に示すようなレベルを−2とするウェーヴレット成分g-2,残余データf-2が得られ、周波数f/2の抽出を行うことができる。さらに、残余データf-2に対してウェーヴレット変換を行うと、図22(f),(g)に示すようなレベルを−3とするウェーヴレット成分g-3,残余データf-3が得られ、周波数f/4の抽出を行うことができる。
図22に示す例では、抽出される周波数の位置が、破線で示される周波数特性のピークからずれているため、該ピークを抽出することができない。補間処理は、この抽出を行う周波数帯域を実質的にずらし、これによってピークが存在する付近の周波数成分を抽出する。
【0072】
図23,24は、2点補間を行ったデータに対してウェーヴレット変換を行い、各レベルで抽出されるウェーヴレット成分g,及び残余データfの周波数成分を示している。図23(a)の元データf0 に対して2点補間を行うと、得られるデータf2 (図23(b))の周波数は3倍となり、レベル2での周波数成分は3f,3f/2,3f/4,・・・となる。このデータf2 に対してウェーヴレット変換を行うと、図23(c),(d)に示すようなレベルを1とするウェーヴレット成分g1 ,残余データf1 が得られ、周波数3fを抽出することができる。同様にして、残余データf1 に対してウェーヴレット変換を行うと、図23(e),(f)に示すようなレベルを0とするウェーヴレット成分g0 ,残余データf0 が得られ、周波数1.5fの抽出を行うことができる。
【0073】
同様にして、残余データf0 に対してウェーヴレット変換を行うと、図24(g),(h)に示すようなレベルを−1とするウェーヴレット成分g-1,残余データf-1が得られ、周波数3f/4の抽出を行うことができる。さらに、残余データf-1に対してウェーヴレット変換を行うと、図24(i),(j)に示すようなレベルを−2とするウェーヴレット成分g-2,残余データf-2が得られ、周波数3f/8の抽出を行うことができ、残余データf-2に対してウェーヴレット変換を行うと、図24(k),(l)に示すようなレベルを−3とするウェーヴレット成分g-3,残余データf-3が得られ、周波数3f/16の抽出を行うことができる。
【0074】
周波数3f/16の周波数にピークが存在する場合には、補間したデータに対してウェーヴレット変換を行うことによって周波数帯域を実質的にずらし、特定周波数帯域の抽出を行うことができる。補間によるデータ点数の変更を行うことによって、抽出する周波数帯域を目的とする特定周波数帯域に合わせることができる。
【0075】
なお、補間処理による周波数帯域の変更は補間の程度により異なり、場合によっては他の補間と同じ特定周波数帯域となる。例えば、1点補間ではデータ長が2倍となり、ウェーヴレット変換のレベルが1上がるだけで同一の処理となる。図25は1点補間を行ったデータに対してウェーヴレット変換を行う場合を示している。図25(a)の元データf0 に対して1点補間を行うと、得られるデータf1 (図25(b))の周波数は2倍となり、レベル1での周波数成分は2f,f,f/2,f/4,f/8,f/16・・・となる。このデータf1 に対してウェーヴレット変換を行うと、図25(c),(d)に示すようなレベルを0とするウェーヴレット成分g0 ,残余データf0 が得られ、周波数2fの抽出を行うことができる。この1点補間によるレベル0での残余データf0 は、補間を行わない場合の元データ(図25(a))と同じとなる。以後の処理は、単にレベルが異なるだけで図22と同様の結果となる。
ここで、補間の程度毎に、データ長と各レベルにおける周波数の倍率について示すと表1となる。
【0076】
【表1】
Figure 0003787829
表1において、例えば、1点補間,3点補間,7点補間,15点補間,・・・ではデータ長はそれぞれ2倍,4倍,8倍,16倍,・・・となるが、ウェーヴレット変換のレベルがそれぞれ1,2,3,4,・・・上のレベルにおいて同一となり、レベルが異なるだけで、処理結果は同一となる。また、2点補間ではデータ長は3倍となり、周波数は1つ上のレベルで1.5倍となり、4点補間ではデータ長は5倍となり、周波数は2つ上のレベルで1.25倍となり、5点補間ではデータ長は6倍となり、周波数は1つ上のレベルの2点補間と同一となり、6点補間ではデータ長は7倍となり、周波数は2つ上のレベルで1.75倍となり、8点補間ではデータ長は9倍となり、周波数は2つ上のレベルで1.125倍となり、9点補間ではデータ長は10倍となり、周波数は1つ上のレベルの4点補間と同一となり、10点補間ではデータ長は11倍となり、周波数は3つ上のレベルで1.375倍となり、11点補間ではデータ長は12倍となり、周波数は2つ上のレベルの2点補間と同一となり、12点補間ではデータ長は13倍となり、周波数は3つ上のレベルで1.625倍となり、13点補間ではデータ長は14倍となり、周波数は1つ上のレベルの6点補間と同一となり、14点補間ではデータ長は15倍となり、周波数は3つ上のレベルで1.875倍となる。
【0077】
上記補間関係を周波数の倍率でまとめると図26に示す関係となり、1倍から2倍の間において、0.125倍毎の周波数倍率を得ることができる。図26において、1倍の周波数は元データから求め、1.125倍の周波数は8点補間のデータから求め、1.25倍の周波数は4点補間のデータから求め、1.375倍の周波数は10点補間のデータから求め、1.5倍の周波数は2点補間のデータから求め、1.625倍の周波数は12点補間のデータから求め、1.75倍の周波数は6点補間のデータから求め、1.875倍の周波数は14点補間のデータから求めることができる。なお、補間数は、上記した1点補間から14点補間に限られるものではなく任意数の補間点数とすることができるが、1点補間から14点補間によれば、ほぼ所定の周波数倍率を得ることができる。
また、各補間データによれば、各周波数倍率毎に異なる周波数成分を得ることができる。表2は、補間が1から8までの周波数成分について示している。
【0078】
【表2】
Figure 0003787829
例えば、1点補間(3点補間,7点補間)では1,1/2,1/4,1/8,1/16,・・・の周波数成分を求めることができ、2点補間(5点補間)では3/2,3/4,3/8,3/16・・・の周波数成分を求めることができ、4点補間では5/4,5/8,5/16,5/32・・・の周波数成分を求めることができ、6点補間では7/8,7/16,7/32,7/64・・・の周波数成分を求めることができ、8点補間では9/8,9/16,9/32,9/64・・・の周波数成分を求めることができる。
【0079】
したがって、これら補間点数の中から選択することによって、測定発光強度データ中に含まれる周波数に近い周波数成分を抽出するウェーヴレット変換を行うことができる。なお、前記補間処理では、隣接するデータ間を等間隔に分割する場合について示しているが、元データの全データ区間について等間隔に任意の分割数で分割する補間処理とすることができる。
【0080】
図27は補間処理の他の例を説明するための図である。図27(a)はデータ区間L内にデータ数Nが存在する場合である。同一のデータ区間L内において、データ数(N+p)を等間隔で求めることによって、任意の分割数の補間処理を行うことができる。該補間処理は、例えば、データ間隔L/(N+p)の位置の近傍にある元データ(データ間隔L/N)を求め、該近傍のデータを用いてデータ間隔L/(N+p)の位置のデータ値を推定することにより求めることができる。
【0081】
次に、第2の補正処理である追加データの追加位置の変更処理について、図28〜図30を用いて説明する。データ追加処理は、ウェーヴレット変換を行うためにデータ数を2のべき乗個とするために要する処理であり、この処理において、元データに対する追加データの追加位置を変更することによって、端部の補正を行うことができる。
【0082】
図28は元データのデータ数と追加データのデータ数との関係を説明する図である。図28において、元データのデータ数Nが2m と2m+1 の間であるとき、ウェーヴレット変換を行うために追加データqを追加して、全体のデータ数を2m+1 (=N+q)とする。
追加するデータは、元データの先端、後端、あるいは両端に分配して付加することができる。追加するデータ値は、元データの先端に追加する場合には元データの先端のデータ値を用い、元データの後端に追加する場合には元データの後端のデータ値を用いることができる。
図29は追加データの付加を説明するための図である。図29に示す例では、元データのデータ数を400とする。このデータ数400が以上で400に近い2のべき乗の値は、29 (=512)であるため、追加データのデータ数は112個となる。
【0083】
図29(a),(e)は追加データの全データを元データの後端又は先端に付加する場合を示しており、この場合の追加データは元データの後端のデータ値又は先端のデータ値を用いる。また、図29(b)〜(d)は追加データを分配し一部を元データの後端に付加し、残りの追加データを元データの先端に付加する場合を示しており、順に分配数をずらして追加する状態を示している。なお、後端に付加する追加データは元データの後端のデータ値を用い、先端に付加する追加データは元データの先端のデータ値を用いる。
【0084】
また、元データを{n1,n2,・・・n400 }と表すと、先端への追加データを{・・・,n3,n2,n1 }としたり、後端への追加データを{n400,n399,n398,・・・}とすることもできる。この追加データの追加位置によって、ウェーヴレット変換後に得られる信号の端部部分の形状は変化する。本発明では、該端部部分の形状に発生するひずみが最小となるように追加データの追加位置を選択し、これによって周波数処理を最適とする補正を行う。
【0085】
層状の薄膜分析では、層間での材質の急激な変化によって信号強度が急激に変化する場合があり、測定波形の端部に急激な変化が生じる。本発明によれば、追加データの追加位置を変更することによって、マザー・ウェーヴレットとの照合性を変更することができ、このような端部の急激な変化を抽出することができ、干渉波形を的確に除去することができる。
【0086】
データの追加、及び追加データの追加位置の変更は、元データに限らず補間処理を施したデータに対して行うことができる。図30は補間データに対するデータ追加を説明する図である。図30において、図30(a)は元データにデータを追加する場合を示し、図30(b),(c)は補間データにデータを追加する場合を示している。
図30(a)は、前記図13と同様に、データ数が400の元データにデータ数112を追加して29 (=512)とし、全データ数を2のべき乗個とする。図14(b)では、この元データに2点補間を行ってデータ数を3倍の1200とし、このデータ数1200の補間データにデータ数848を追加して211(=2048)とし、全データ数を2のべき乗個とする。
一般に、データ数Nの元データを補間してデータ数が(N+p)となった補間データに対し、2のべき乗の値で(N+p)以上でかつ最も小さな値2m を選択し、その差q(2m −(N+p))を追加データとする。
【0087】
第1の補正処理の補間処理と、第2の補正処理の追加データの追加位置の変更処理は、それぞれ単独の補正処理とすることも、両補正を組み合わせた補正処理とすることもできる。
図31は、第1の補正処理との第2の補正処理を組み合わせた補正処理の例を示している。図31において、横方向は第1の補正処理による補間の程度を示し、縦方向は第2の補正処理による追加データの位置を示し、これによって第1の補正処理との第2の補正処理とを2次元的に表示する。第1の補正処理との第2の補正処理の2次元的表示の中から、最も正確に処理されている補正データを選択する。
【0088】
選択した処理データは、補正処理により元データ以外の追加データが含まれているため、第2の補正処理で追加したダミーデータを削除し、第1の補正処理で補間した補間データを削除して、データ点数を元データと同一とする。なお、補間処理において、元データのデータ位置に値が無い場合には、補正により元データのデータ位置に値を求める。
上記処理によって、補正データのデータ点数及びデータ位置を元データと同一とすることができ、他の測定発光強度データとの比較を行うことができる。なお、図15の2次元的表示において、データ数が異なる場合にはスケールを圧縮して、見かけ上元データと同一の長さとして表示し、また、追加データの位置によって位置ずれが生じる場合には、表示位置をずらして元データと同一の位置に表示することによって、比較を容易とすることができる。
【0089】
図32〜図37は高周波グロー放電発光分光分析の測定発光強度データのウェーヴレット処理結果例である。なお、この例では、データ点数を512点とし、マザー・ウェーヴレットとしてSymlet,基底N=5を用いた解析例である。図32は測定発光強度データの波形であり、図33はレベル1〜4のウェーヴレット成分を除去した後のレベル4の残余データであり、図34はレベル5のウェーヴレット成分、図35はレベル5の残余データ、図36はレベル6のウェーヴレット成分、図37はレベル6の残余データである。
【0090】
図32,図33,図35,図37を図2のウェーヴレット処理の信号図と対応させると、図32は図2(a)に対応し、図33は図2(b)に対応し、図35は図2(c)に対応し、図37は図2(d)に対応する。図33の波形は干渉による波打ち成分による周期的な変動を含み、図35は周期的な変動を含んでいない。従って、図34は波打ち成分に対応する波形であると推定される。
【0091】
図38は本発明を適用することができる高周波グロー放電発光分光分析装置の一構成例を示すブロック図である。図38に示す高周波グロー放電発光分光分析装置2は、中空状に形成した放電電極22と試料Sとを対向配置し、アルゴンガスを流しながら真空排気を行って低真空雰囲気に保ち、試料Sに高周波電力を供給して、試料Sと放電電極22との間に安定したアルゴンのグロー放電プラズマを形成する。なお、高周波電力の供給は、高周波電源23及び整合器24によって行うことができる。
【0092】
プラズマの正イオンは、試料Sの表面を均一にスパッタリングし、たとえば10nm/secのオーダーの速度で切削する。スパッタリングされた試料Sの原子は、プラズマ中で励起されて元素特有の光を発光する。高周波グロー放電発光分光分析装置2は、この発光を分光器21で分光して光検出器21cで検出する。なお、符号21aはスリットであり、符号21bは回折格子等の分光器である。通常、上記構成の高周波グロー放電発光分光分析装置2は、発光の経時変化を測定することによって、試料S中の元素の深さ方向の分布の測定を行う。
【0093】
本発明による高周波グロー放電発光分光分析では、上記した高周波グロー放電発光分光分析装置2によって、波長毎に光強度を検出し、この測定光強度に対して上記補正処理を行うことによって含有元素の組成を求める。
【0094】
立ち上がり時刻や立ち下がり時刻の検出は、一般にエッジ検出フィルタを使用する方法ではフィルタサイズによって検出可能な信号勾配が限定されてしまい、発光分光測定のように勾配が測定データによって異なる場合には実現が困難となる。時間−周波数解析を用いると、信号勾配が急な場合には高周波の時間分布情報(ウェーヴレット変換では高周波数レベルの多重解像度成分)として検出することができ、信号勾配が緩やかな場合には低周波の時間分布情報(ウェーヴレット変換では低周波数レベルの多重解像度成分)として検出することができるため、いずれの場合でも立ち上がり時刻や立ち下がり時刻を検出することができる。
【0095】
雑音成分や波打ち成分の各周波数の特定は、フーリエ変換等の周波数解析ではデータ量が不十分であるため困難であるが、時間−周波数解析を用いれば、データの時間−周波数特性を用いて行うことができる。したがって、雑音成分や波打ち成分の時間−周波数分布情報を得ることができるため、雑音成分及び波打ち成分の低減,除去を高精度で自動的に行うことができる。
【0096】
また、ウェーヴレット変換を用いた時間−周波数解析では、短時間フーリエ変換などの手法と比較して分解能が原理的に高く、データの時間−周波数特性を性格に解析でき、高精度の結果を得ることができる。
【0097】
また、短時間フーリエ変換などの時間−周波数解析手法では、データの解析はできるが再構成はできないため、解析結果を使用して新たにデータ改善演算を行う必要がある。これに対して、ウェーヴレット変換では分解,元来再構成に要する演算量が少ない上、分解結果の多重解像度成分から元データを直接に再構成できるため、演算量を非常に少なくすることができる。
また、データ表示機能によって、データ処理の前後のデータ表示と共に、低減除去された雑音成分及び波打ち成分の波形を表示することによって、処理視覚的のも明示し確認することができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、発光分光分析において、発光分光分析データに含まれる雑音成分や光干渉による波打ち成分を、精度良く短時間で除去あるいは低減することができ、また、データ処理を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光分光分析装置の一構成例を説明するための概略図である。
【図2】ウェーヴレット処理を説明するための信号図である。
【図3】本発明の測定発光強度データの時間−周波数解析のフローチャートである。
【図4】本発明の時間−周波数解析による処理信号例である。
【図5】本発明の時間−周波数解析による処理信号例である。
【図6】本発明の波打ち存在時間の検出の手順を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の波打ち成分の周波数レベル範囲wlevを算出する手順を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の雑音成分の周波数レベル範囲nlevを算出する手順を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の雑音成分の除去,低減する手順を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の波打ち成分の除去,低減する手順を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の雑音成分の算出を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の波打ち成分の算出を説明するためのフローチャートである。
【図13】発光分光測定の波形を示す図である。
【図14】発光分光測定データから雑音成分及び波打ち成分を除去した後の波形を示す図である。
【図15】除去低減された波打ち成分例の波形を示す図である。
【図16】除去低減された雑音成分例の波形を示す図である。
【図17】元データの波形と除去した波形とを同時に重ねて表示した波形図である。
【図18】本発明の高周波グロー放電を用いた発光分光分析装置の構成を説明するための概略図である。
【図19】本発明の演算処理装置が行う処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図20】本発明の演算処理装置が行う処理手順を説明するための信号概略図である。
【図21】補間処理の一例を説明するための図である。
【図22】元データをウェーヴレット変換したときに抽出される特定周波数帯域を説明するための図である。
【図23】2点補間したデータをウェーヴレット変換したときに抽出される特定周波数帯域を説明するための図である。
【図24】2点補間したデータをウェーヴレット変換したときに抽出される特定周波数帯域を説明するための図である。
【図25】1点補間したデータをウェーヴレット変換したときに抽出される特定周波数帯域を説明するための図である。
【図26】補間と周波数倍率との関係を説明するための図である。
【図27】補間処理の他の例を説明するための図である。
【図28】元データのデータ数と追加データのデータ数との関係を説明する図である。
【図29】追加データの付加を説明するための図である。
【図30】補間データに対するデータ追加を説明する図である。
【図31】第1の補正処理との第2の補正処理を組み合わせた補正処理の例を示す図である。
【図32】本発明の測定発光強度データの波形例である。
【図33】本発明の残余データの波形例である。
【図34】本発明のウェーヴレット成分例である。
【図35】本発明の残余データの波形例である。
【図36】本発明のウェーヴレット成分例である。
【図37】本発明の残余データの波形例である。
【図38】高周波グロー放電発光分光分析装置の一構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…演算処理装置、2…測定装置、3…出力/表示手段、4…入力手段、11…記憶手段、13…補間処理手段、14…データ追加手段、12…信号処理手段、21…分光器、22…放電電極、23…高周波電源、24…整合器、25…高周波プラズマ、S…試料。

Claims (5)

  1. 発光分光分析測定によって元素分析を行う発光分光分析装置において、
    測定発光強度データを時間−周波数解析によって多重解像度成分にデータ変換し、特定の多重解像度成分のデータに関して信号処理を行う信号処理手段を備える、発光分光分析装置。
  2. 前記信号処理手段は、多重解像度成分から特定の多重解像度成分のデータを抽出し、抽出データ及び残余データに分解する分解処理と、
    抽出データの除去を含む強度変換を行う強度変換処理と、
    前記強度変換により得られる強度変換データ及び残余データを合成する再構成処理を行う、請求項1記載の発光分光分析装置。
  3. 前記時間−周波数解析はウェーヴレット変換によるデータ変換である、請求項1,又は2記載の発光分光分析装置。
  4. 信号処理前の測定発光強度データ、信号処理後のデータ、強度変換データ、残余データを単独あるいは任意の組み合わせで波形表示を行う表示手段を備える、請求項1,2,又は3記載の発光分光分析装置。
  5. 発光分光分析測定によって元素分析を行う発光分光分析において、
    測定発光強度データをウェーヴレット変換によるデータ変換を行って、測定発光データ中の特定周波数帯域のデータに関して信号処理を行い、
    前記ウェーヴレット変換におけるデータ点数の変更、及び又は測定発光データに対する追加データの追加位置の変更によって、データ変換の補正を行う、発光分光分析の補正方法。
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