JP3787021B2 - 硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硝酸ソーダ含有廃液のセメント固化処理方法に関し、特に使用済み核燃料再処理工場等から発生する硝酸ソーダ含有放射性廃棄物のセメント固化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
使用済み核燃料再処理工場から低レベル放射性廃棄物として、硝酸ソーダ,リン酸カルシウム等が乾燥粉体の形態で発生する。そのうち硝酸ソーダの乾燥粉体は、同工場内のNOxの製造再利用技術を導入して処理を行っても、年間230ton発生する。現状では乾燥粉体の形態で貯蔵しており、さらに固化体として貯蔵するための固化処理等については未定である。
【0003】
硝酸ソーダ乾燥粉体を固化対象廃棄物としてスラグセメント(SC)固化試験を実施した結果、圧縮強度,耐水性等において良好な物性を持ち、かつ、固化対象廃棄物を50〜60wt%充填可能な均質固化体が得られている。しかしながら、今後実施される再処理廃棄物の処分に対する安全評価として、廃棄物の埋設場で硝酸ソーダ固化体が浸水し、可溶性の硝酸イオンが溶け出すことを想定した安全評価の結果によっては、放射能とは別に硝酸塩に関して埋設量規制が生じる可能性がある。硝酸ソーダを直接固化した固化体においては硝酸イオンの溶出は避けることができず、上記のような状況を鑑みると、直接固化以外の処理プロセスが求められる。また、すでに一般産業においては、環境に放出される廃水に対し窒素含有量の濃度規制(排出基準を定める総理府制令)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような硝酸イオン溶出に関する課題に対し、硝酸ソーダ廃棄物を環境上特に問題にならない炭酸ソーダ等の塩に変換して安定固化するプロセスを構築することが考えられる。
上述した硝酸ソーダを炭酸ソーダに変換する技術は、ガラス固化の前処理として確立している技術である。しかしながら、炭酸ソーダをスラグセメントにて高充填固化すると、得られた固化体の耐水性が不充分となり、固化体が膨潤して、ひび割れや崩壊が生じる。このような現象を抑制し、耐水性の高い固化体が得られるプロセスを確立できれば、硝酸ソーダの脱硝プロセスと組み合わせることによって、上述した硝酸イオン溶出の課題を解決することができる。
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、再処理工場で発生する硝酸ソーダ含有廃棄物を脱硝して炭酸ソーダに変換後、炭酸ソーダの安定化処理を施してセメント固化することにより、環境上問題とならない廃棄物処理プロセスを確立できる硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、硝酸ソーダ含有廃棄物に脱硝処理を施して廃棄物に含まれる硝酸ソーダを炭酸ソーダに変換し、該脱硝処理を施した廃棄物をスラグセメントを用いて固化処理を行うことを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記固化処理に際し、前記脱硝処理を施すことにより硝酸ソーダから変換された炭酸ソーダ重量に対し、アルカリ土類金属塩を1〜100mol%添加することを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記アルカリ土類金属塩として、塩化カルシウム,塩化ストロンチウム,塩化バリウムより選ばれる1種または2種以上を用いることを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3いずれか1の発明において、前記スラグセメントとして、少なくとも高炉水砕スラグ,及び硬化刺激剤を含み、さらに必要に応じ、超微粉,分散剤,硬化調節剤のうち1または複数を含む組成物を用いることを特徴としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
前述したごとくに、炭酸ソーダのセメント固化体は湿空養生中あるいは水中養生中に膨潤現象を起こし、ひび割れる現象が生じる場合がある。湿空養生中に膨潤し、ひび割れて固化体表面に生じた結晶をX線回折による分析測定を行った結果、この結晶がNa2CO3・10H2Oであることが確認された。すなわち、固化体中の無水炭酸ソーダ(Na2CO3)が、空気中あるいは水中の水と反応して含水塩化し、容積が増して膨潤し、固化体にひび割れや崩壊を生じさせるものと考えられた。
このような炭酸ソーダ固化体の耐水性不良によるひび割れ現象は、以下に示す式によって無水塩が含水塩化することで生じると考えられる。
【0011】
【数1】
Figure 0003787021
【0012】
表1には、各種炭酸塩における1mol当たりの結晶容積等の特性値を示した。炭酸ソーダが含水塩化することで、容積が4倍以上になることがわかる。
【0013】
【表1】
Figure 0003787021
【0014】
上記のような膨潤・ひび割れ現象を抑制するためには、炭酸イオンと反応して不溶性でかつモル容積が小さい安定な物質を生成させることにより、上記(2)式の反応による炭酸ソーダの含水塩化を生じさせないようにする処理を行うことが考えられる。溶解度が低くモル容積が小さな物質として、CaCO3に注目し、可溶性のCaCl2の添加を試みた。CaCO3の特性値は表1にて示される。
【0015】
(評価方法)
本発明に係る処理方法によって得られたセメントスラリーおよびセメント固化物は、以下に示す評価法にて評価を行った。
▲1▼フロー値
混練後のスラリーをJIS R-5201に準拠して測定した。
▲2▼圧縮強度
混練後のスラリーを4cm×4cm×16cmの圧縮強度用型枠に流し込み、60℃で24時間養生して得られた固化体を、アムスラー型万能試験機を用いて栽荷速度80kgf/秒の割合で栽荷し、測定された最大荷重値を固化体の断面積で除して算出した。
▲3▼耐水性
混練後のスラリーを直径4.5cm,高さ4.4cmの耐水性試験用型枠に流し込み、60℃で24時間養生して得られた固化体を、固形物容積の10倍量の脱イオン水中に浸漬して、重量変化,及び体積変化を測定し、さらに目視観察にて表面のひび割れを観察した。なお、耐水性の評価は、その形状を保っているものを“良好”とした。
【0016】
本実施例で使用したスラグセメント,分散液,及び硬化液の組成を以下に示す。
スラグセメントは、高炉水砕スラグ(新日鐵化学社製エスメントスーパー100P)/シリカヒューム(日本重化学工業社製)/ウオラストナイト(ナイコ社製)=8/1/1(重量比)のものを使用した。
また、分散液は、アクリル酸マレイン酸共重合(9:1)のナトリウム塩を使用し、硬化液は、25%NaOH溶液を使用した。
【0017】
ここで、硝酸ソーダを脱硝し、炭酸ソーダに変化させるプロセスを検証するために、次の実験を行った。
硝酸ソーダ28g、亜硝酸ソーダ13g、及びしょ糖17gをよく混合してルツボに入れ、マッフル炉で除々に500℃まで加熱したところ、得られた粉体は全て炭酸ソーダに変換していることが確認された。
そこで次の各セメント固化処理の実施例においては硝酸ソーダの脱硝,炭酸ソーダ変換工程を省略し、試薬の炭酸ソーダ粉末を用いて評価を行った。
【0018】
(実施例1)
丸菱機械社製モルタルミキサーに、水,塩化カルシウム,炭酸ソーダ粉末を投入して140rpmで2分間混合した後、さらに分散液,スラグセメント,25%NaOH硬化液を投入して混練した。
配合仕様を表2に、評価結果を表3に示す。この時の炭酸ソーダ粉末の充填率は35.8wt%、塩化カルシウムの添加率は炭酸ソーダ粉末に対して16.9mol%であった。
【0019】
【表2】
Figure 0003787021
【0020】
【表3】
Figure 0003787021
【0021】
得られた固化体の圧縮強度は143kg/cm2で、基準値(100kg/cm2以上)を満たし、また耐水性能においては、4週間の水への浸漬後も外観に変化はなく、良好な結果が得られた。
【0022】
(実施例2)
丸菱機械社製モルタルミキサーに、水,塩化カルシウム,炭酸ソーダ粉末を投入し、140rpmで2分間混合した後、さらに分散液,スラグセメント,25%NaOH硬化液を投入して混練した。
配合仕様を表4に、評価結果を表5に示す。この時の炭酸ソーダ充填率は34wt%、塩化カルシウムの添加率は炭酸ソーダ粉末に対して23.9molt%であった。
【0023】
【表4】
Figure 0003787021
【0024】
【表5】
Figure 0003787021
【0025】
得られた固化体の圧縮強度は180kg/cm2で、基準値(100kg/cm2以上)を満たし、また耐水性能においては、4週間の水への漬浸後も外観に変化はなく、良好な結果が得られた。
【0026】
(比較例1)
丸菱機械社製モルタルミキサーに、塩化カルシウムを添加せずに、水と炭酸ソーダ粉末を投入し、140rpmで2分間混合した後、さらに分散液,スラグセメント,25%NaOH硬化液を投入して混練した。配合仕様を表6に、評価結果を表7に示す。
【0027】
【表6】
Figure 0003787021
【0028】
【表7】
Figure 0003787021
【0029】
得られた固化体の圧縮強度は257kg/cm2であり、基準値(100kg/cm2以上)を満たした。しかしながら、耐水性能においては、水に浸漬後1日で崩壊して粉状になり、試験前の形状を全く維持できなかった。
【0030】
(比較例2)
丸菱機械社製モルタルミキサーに、水,塩化カルシウム,炭酸ソーダ粉末を投入し、140rpmで2分間混合した後、普通ポルトランドセメントを投入し、混練固化した。
配合仕様を表8に、評価結果を表9に示す。この時の炭酸ソーダ充填率は、34.7wt%、塩化カルシウムの添加率は炭酸ソーダ粉末に対して16.9mol%であった。
【0031】
【表8】
Figure 0003787021
【0032】
【表9】
Figure 0003787021
【0033】
得られた固化体の圧縮強度は257kg/cm2であり、基準値(100kg/cm2以上)を満たした。しかしながら、耐水性能においては、水に漬浸後1日でひび割れが発生した。
【0034】
【発明の効果】
硝酸ソーダ含有廃棄物における硝酸ソーダを環境上特に問題とならない炭酸ソーダに変換することにより、廃棄物としての安全を確保することができる。
また耐水性向上剤としてアルカリ土類金属塩を添加し、該アルカリ土類金属塩と炭酸ソーダを反応させて不溶性で安定な物質を生成させることにより、炭酸ソーダの含水塩化による膨潤・ひび割れを防ぐことができ、良好な物性を有する固化体を得ることができる。
さらにアルカリ金属がカルシウムであるアルカリ土類金属塩を用いることにより、反応生成物の炭酸ソーダに対する容積比を小さく抑えることができ、より安定な固化体を得ることができる。これにより、安全性が高く環境上問題のない硝酸ソーダ含有廃棄物の固化処理が可能となる。

Claims (4)

  1. 硝酸ソーダ含有廃棄物に脱硝処理を施して廃棄物に含まれる硝酸ソーダを炭酸ソーダに変換し、該脱硝処理を施した廃棄物をスラグセメントを用いて固化処理を行うことを特徴とする硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法。
  2. 前記固化処理に際し、前記脱硝処理を施すことにより硝酸ソーダから変換された炭酸ソーダ重量に対し、アルカリ土類金属塩を1〜100mol%添加することを特徴とする請求項1記載の硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法。
  3. 前記アルカリ土類金属塩として、塩化カルシウム,塩化ストロンチウム,塩化バリウムより選ばれる1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項2記載の硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法。
  4. 前記スラグセメントとして、少なくとも高炉水砕スラグ,及び硬化刺激剤を含み、さらに必要に応じ、超微粉,分散剤,硬化調節剤のうち1または複数を含む組成物を用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1記載の硝酸ソーダ含有廃棄物のセメント固化処理方法。
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