JP3786499B2 - 自己放電型スパークギャップスイッチ及びパルス電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己放電型スパークギャップスイッチに関し、更に、高電圧パルス荷電によりプラズマを発生させてガス中のダスト、有害ガス等の除去を行う排ガス処理に使用可能なパルス電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパークギャップスイッチは構造が簡単で安価なため、上記のパルス電源装置の高電圧スイッチとして広く実用化されている。
スパークギャップスイッチは大気中に一対の電極を対向させた簡単な構造のものや、遮音、電極の浸食、電極の絶縁等を考慮して、密閉容器内に電極を対向させ、その容器内に空気、窒素、SF6 等のガスを封入したものがある。この場合、封入ガス圧を高くしたものや、真空にしたものもある。また、気体放電を利用したものの他、液体中放電、固体と液体間または固体と気体間の沿面放電を利用したものもある。
更に、スイッチング動作のトリガ機構に関して区別すれば、電極間電圧が絶縁破壊電圧に達したときに電極間が短絡する自己放電型と、何らかの方法でトリガが与えられて電極間が短絡するトリガ型に分類される。
自己放電型スパークギャップスイッチは、電極形状、電極間隔等の構造上の属性によって電極間の破壊電圧が決まるため、パルス電源装置の高電圧スイッチとして使用するに際して、設計仕様に合った自己放電型スパークギャップスイッチを適宜選択するか、電極間隔等の調節を行って適切な短絡開始電圧を調整していたが、一旦設定された短絡開始電圧は、実使用状態において再調整することはできなかった。また、電極の浸食、放電生成物等の原因で短絡開始電圧が変動し、スイッチングの信頼性を高度に維持することが困難であり、メンテナンスを短期間に繰り返す必要が生じる等の問題点があり、更に、短絡開始電圧の変動に起因するスイッチング動作のタイミングが変動し、結果として、パルス電源装置の電気的特性に影響を与える虞があった。
トリガ型スパークギャップスイッチは、トリガ機構によって、トリガトロン型、電界ひずみ型、レーザトリガ型、電子ビームトリガ型等が代表として挙げられるが、何れも、自己放電型スパークギャップスイッチと比べ、外部トリガによってスイッチング動作のタイミングを調整できるという特長を有するものの、夫々、トリガ機構として、トリガパルス電源や大出力レーザや電子ビーム装置が必要となり、構造が複雑で大型化し、結果として、パルス電源装置の大型化、高価格化を招く虞があった。
【0003】
一方、パルス電源装置に関しては、従来より、コンデンサを高電圧に充電し、その静電エネルギを急激に反応負荷へ放電することによってプラズマを発生させるものがあった。例えば、図6に示すように、コンデンサCP を直流電源E0 で所定電圧V0 まで充電しておき、スイッチSWを閉じて負荷に、負荷容量CL とインダクタLF の共振電圧を印加する回路構成のものがある。前記スイッチSWには、上述のスパークギャップスイッチの他、サイリスタ、サイラトロン等が使用される。
更に、プラズマ生成のために負荷で使用されるエネルギは前記静電エネルギの一部でしかなく、大半を抵抗等で消費しているためエネルギ効率が良くないという問題があり、エネルギ効率を改善するために、図6に示す回路構成に対して、図7に示すような改良を施したものがある。
図7において、スイッチSWを閉じた後、負荷容量CL とインダクタLF の共振による共振電流がダイオードDを介してコンデンサCP 側に流れる半周期の間に前記スイッチSWを開き、共振を終了させると、負荷で使用されなかったエネルギの一部をコンデンサCP に回収できる構成となっている。この場合、印加電圧側を共振させてエネルギ回収を行うため、前記インダクタLF を大きく設定する必要がある。
【0004】
高電圧スイッチ素子として、サイラトロンやサイリスタが使用される場合は下記の問題点が指摘されていた。
上記した従来のパルス電源装置を排ガス処理装置に使用する場合、特に、窒素酸化物やダイオキシン等を効率良く除去する必要がある場合には、出力パルスをプラズマ発生に必要な所定の高電圧まで約200ns以下の短時間で高速に立ち上げる必要があり、図6及び図7に示すスイッチSWとしては、高電圧仕様で応答速度の早いものが要求される。この要求を満たす高電圧スイッチ素子として、従来よりサイラトロンが一般に使用されるが、スイッチング制御用電圧も同様に高電圧を要するため、スイッチング制御が困難であるばかりか、スイッチング制御系回路も高耐圧の絶縁が要求され大型化し、サイラトロン自体が大型で非常に高価であることと合わせて、製造コストが高騰するという問題点や、サイラトロンの最大スイッチング回数が1億回〜10億回であることから通常の使用条件で寿命が約1年と短いという問題がある。
また、サイラトロン以外の高電圧スイッチ素子としてサイリスタを使用した場合は、半導体の特性上、高電圧を高速にスイッチングできず、パルス電圧の立ち上がり時間が数マイクロ秒以上になり、上記の高速高電圧パルスを発生するパルス電源装置に適用できないという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
高電圧パルスを発生するパルス電源装置に使用される高電圧スイッチとしては、上記した如く、各種のものがあり、夫々に一長一短があるものの、基本的に設計仕様が合致すれば、安価で構造の簡単な自己放電型スパークギャップスイッチを使用することが好ましく、高速応答性が要求される場合にも、回路構成の工夫等で自己放電型スパークギャップスイッチが使用できれば、パルス電源装置の小型化、低価格化に貢献できるという効果が期待される。
【0006】
本発明の目的は、上述の自己放電型スパークギャップスイッチの有する問題点を解消し、電極の浸食、放電生成物等の影響を受けずに安定したスイッチング特性を有する自己放電型スパークギャップスイッチを提供し、更に、その自己放電型スパークギャップスイッチを使用することで、低価格で、信頼性が高く、然も、メンテナンス間隔の長い、高い実用性を有するパルス電源装置を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明による自己放電型スパークギャップスイッチの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した通りであり、電極間隔を調節自在な一対の電極と、前記一対の電極の短絡時と所定の基準時との時間差を所定範囲内に維持するように前記電極間隔を自動的に調節可能な電極間隔調節部とを備えてなる点にある。
【0008】
同第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載した通りであり、上述の第一の特徴構成に加えて、前記電極間隔調節部が、前記基準時に発生する基準信号と前記一対の電極の短絡時に発生する短絡信号を入力信号として受信し、前記短絡信号が前記基準信号より所定時間以上遅れて入力した場合は、前記電極間隔を所定距離だけ短くし、前記短絡信号が前記基準信号より所定時間以上早く入力した場合は、前記電極間隔を所定距離だけ長くする点にある。
【0009】
この目的を達成するための本発明によるパルス電源装置の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載した通りであり、高電圧スイッチと充電用コンデンサとインダクタまたはインダクタンス成分と出力端子を備えてなる第2回路部と、前記充電用コンデンサを高電圧に所定周期で充電可能な第1回路部とから構成され、前記充電用コンデンサが所定電圧以上に充電された時点で前記高電圧スイッチが短絡して前記第2回路部と前記出力端子間に接続された出力負荷との間でLC共振回路を形成して前記出力端子間に高電圧パルスを発生させるパルス電源装置であって、
前記高電圧スイッチが、特許請求の範囲の欄の請求項2記載の自己放電型スパークギャップスイッチであって、前記所定周期と同期する前記第1回路部の第1タイミング信号と前記第2回路部の出力電圧または出力電流を検出して得られる第2タイミング信号が、各々、前記自己放電型スパークギャップスイッチに前記基準信号及び前記短絡信号として入力可能に構成されている点にある。
【0010】
以下に、作用並びに効果について説明する。
本発明による自己放電型スパークギャップスイッチの第一の特徴構成によれば、電極の浸食、放電生成物等の原因で短絡開始電圧が変動しても、その変動をその変動によって生じる前記一対の電極の短絡時の変動と前記所定の基準時との時間差によって認識し、前記電極間隔調節部が前記時間差を所定範囲内に維持するように前記電極間隔を自動的に調節することで短絡開始電圧を所定範囲内に維持することができる。結果として、本発明による自己放電型スパークギャップスイッチを使用した高電圧回路の動作特性が、短絡開始電圧が所定範囲内に維持されることによって、所定の仕様範囲内に維持でき同回路の安定動作が図れるのである。特に、短絡開始電圧を参照電圧として使用する場合、特定ノードの所定のスルーレートの電圧変化を短絡開始電圧でサンプリングして所定のタイミングを得る場合等、静特性及び過渡特性の両面において有効に作用する。
【0011】
同第二の特徴構成によれば、電極の浸食、放電生成物等の原因で前記電極間隔の実効長が長くなり、短絡開始電圧が上昇し短絡時が所定時間以上遅れた場合、前記電極間隔調節部に前記短絡信号が前記基準信号より所定時間以上遅れて入力し、前記電極間隔が所定距離だけ短くなり、前記電極間隔の実効長が短くなり適正範囲内に戻る。この場合、前記所定距離は前記短絡信号と前記基準信号の時間差と一定の相関関係を持つ可変値であってもよく、前記電極間隔の一回の調節によって、前記電極間隔の実効長が適正範囲の反対側へ変化し過ぎない程度の固定値であっても構わない。前記所定距離が固定値の場合は、一回の調節によって、前記電極間隔の実効長が適正範囲内に戻らない場合は、次のスイッチング動作時に同じ調節を繰り返せば最終的に前記電極間隔の実効長が適正範囲内に入ることになる。また、何らかの原因で前記電極間隔の実効長が短くなり、短絡開始電圧が低下し短絡時が所定時間以上早まった場合、上記と逆の動作によって前記電極間隔の実効長が長くなり適正範囲内に戻る。従って、前記電極間隔の実効長が長くなっても短くなっても最終的に自動的に適正範囲内に収まり、結果として短絡開始電圧が所定範囲内に維持することができるのである。
【0012】
本発明によるパルス電源装置の特徴構成によれば、前記充電用コンデンサを所定の過渡特性で高電圧に充電中に、所定範囲に維持された短絡開始電圧で前記高電圧スイッチが所定のタイミングで短絡することができるため、前記第1回路部で発生する共振動作を常に一定の条件下で同様に繰り返し発生することができ、前記出力端子間に発生する高電圧パルスの出力電圧及びパルス波形を各パルス間で一定範囲内に維持することができ、パルス電源装置の安定動作が維持できるのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係わる自己放電型スパークギャップスイッチ60(以下、本発明スイッチという)の一実施形態は、一対の電極61、62、基台63、可動台64、電動アクチュエータ65、電動アクチュエータ制御回路部66、及び、起動パルス発生回路部67で構成され、前記可動台64、前記電動アクチュエータ65、前記電動アクチュエータ制御回路部66、及び、前記起動パルス発生回路部67が電極間隔調節部68を形成している。
前記一対の電極61、62の一方の電極61が碍子61aを介して前記基台63上に固定され、他方の電極62が前記電動アクチュエータ65によって往復動可能な前記可動台64上に碍子62bを介して固定されている。前記可動台64は、前記一対の電極61、62を結ぶ直線方向に往復動可能に前記基台63上取り付けられている。
前記電動アクチュエータ65は、前記電動アクチュエータ制御回路部66によって駆動制御され、前記電動アクチュエータ制御回路部66に正方向起動パルス66aが一回入力されると前記可動台64が所定単位距離だけ正方向に移動し、前記電動アクチュエータ制御回路部66に負方向起動パルス66bが一回入力すると前記可動台64が所定単位距離だけ負方向に移動し、前記正方向起動パルス66aも前記負方向起動パルス66bも入力しない場合は前記可動台64を現停止位置に固定するように、前記可動台64に作用する。
また、前記正方向起動パルス66aと前記負方向起動パルス66bは、所定の出力電圧及びパルス幅の単一パルスからなるディジタル信号で、前記起動パルス発生回路部67が発生する。前記起動パルス発生回路部67は、基準タイミング入力端子67aとタイミング入力端子67bを備え、各入力端子67a、67bに外部から2種類の入力パルス信号が各別に入力可能である。
【0014】
図2に示すように、前記起動パルス発生回路部67は、基準時刻t0 で「低レベル」から「高レベル」に立ち上がり、前記基準時刻t0 から所定時間後の本発明スイッチが短絡する時刻t1 とそれ以降の時刻t2 の間で「高レベル」から「低レベル」に戻る基準信号69aが、外部から前記基準タイミング入力端子67aに入力され、更に、本発明スイッチが短絡すると同時に発生する短絡信号69bが、外部から前記タイミング入力端子67bに入力される。
前記基準信号69aが「高レベル」へ遷移すると同時に内蔵のタイマカウンタ67cがカウンタ値「0」から作動開始し、前記基準信号69aの「低レベル」遷移時か前記短絡信号69bの「高レベル」遷移時の何れか早い方の信号レベル遷移と同時に作動停止し、停止時のカウンタ値が保持される。予め設定されてある基準時刻t0 と時刻t1 の時間差の許容範囲の上限値と下限値に夫々相当する下限カウンタ値及び上限カウンタ値と、前記タイマカウンタ67cの停止時のカウンタ値とを比較し、前記停止時のカウンタ値が前記下限カウンタ値より小さい場合は前記負方向起動パルス66bが出力され、前記停止時のカウンタ値が前記上限カウンタ値より大きい場合は前記正方向起動パルス66aが出力され、前記停止時のカウンタ値が前記下限カウンタ値以上で前記上限カウンタ値以下の場合は何も出力されない。尚、前記下限カウンタ値及び前記上限カウンタ値は外部入力69cによってプログラム可能であり、前記タイマカウンタ67cの分解能は外部クロック69dのクロック周波数によって決定される。
【0015】
図3は本発明に係わるパルス電源装置(以下、本発明装置という)の第1実施形態を示すブロック回路図である。
図3に示すように、本発明装置は低電圧の1次側回路1と高電圧の2次側回路2をトランス3を介して結合した構成となっている。
前記1次側回路1は、前記トランス3の1次側端子30、31間に、直流電源10と、前記直流電源10からの電力の供給を断続するスイッチ機能と前記トランス3の2次側で消費されなかった電力を前記直流電源10側に回収する機能を併せ持ったエネルギ回収型スイッチ回路11とを直列接続して構成される。
また、前記2次側回路2は、前記トランス3の2次側端子32、33間に第1インダクタ21と充電用コンデンサ22を直列接続し、前記第1インダクタ21と前記充電用コンデンサ22の接続点N1 に本発明スイッチ60の一方の端子を接続して構成される。
前記本発明スイッチ60の他方の端子と、前記充電用コンデンサ22と前記トランスの2次側端子33との接続点を、夫々出力端子24、25とする。
前記充電用コンデンサ22を高電圧に所定周期で充電可能な第1回路部5が、前記1次側回路1、前記トランス3、及び、前記第1インダクタ21で形成される。第2回路部6は前記充電用コンデンサ22と前記本発明スイッチ60とに寄生する浮遊インダクタンスとで形成される。
前記エネルギ回収型スイッチ回路11のスイッチング制御信号11aが前記本発明スイッチ60の前記基準タイミング入力端子67aに前記基準信号69aとして入力される。一方、前記出力端子24の出力電流を検出することで前記本発明スイッチ60の短絡時点を検知して前記短絡信号69bを出力する出力電流検知器23が前記出力端子24に設けられ、その短絡信号69bが前記本発明スイッチ60の前記タイミング入力端子67bに入力される。
【0016】
図4は、図3に示すブロック回路図を基に、より具体化した本発明装置の第2実施形態の回路構成を示す等価回路図で、前記出力端子24、25に負荷4を接続した状態を示す。尚、各部の符号は、共通するものについては、図3と図4で共通して使用している。
【0017】
図4に示すように、前記1次側回路1の前記エネルギ回収型スイッチ回路11は前記直流電源10からの電力の供給を断続するスイッチ機能を果たすバイポーラトランジスタ12と前記トランス3の2次側で消費されなかった電力を前記直流電源10側に回収する機能を果たすダイオード13が、電流の流れる方向を相互に逆にして並列接続して構成されている。尚、前記バイポーラトランジスタ12はサイリスタ等の他の半導体スイッチ素子であっても構わない。
更に、前記1次側端子30、31間に抵抗14とバイポーラトランジスタ15が直列接続した残留電圧除去回路16が設けられている。前記1次側端子30、31間の残留電圧を前記残留電圧除去回路16を介して放電することで、前記2次側端子32、33間の残留電圧、つまりは、前記充電用コンデンサ22の両端の残留電圧を除去することができる。
尚、各バイポーラトランジスタ12、15のベース端子は、夫々のスイッチング制御用端子である。前記バイポーラトランジスタ12のベース端子には前記スイッチング制御信号11aが入力される。
【0018】
前記2次側回路2内で、第2インダクタ26が前記本発明スイッチ60と前記出力端子24の間に設けられている。
尚、この第2インダクタ26は前記出力端子24、25と前記負荷4の間の浮遊インダクタンス成分を含んで等価的に表示されており、更に、前記第1インダクタ21も前記トランス3の漏れインダクタンスを含んで表示されている。
【0019】
前記負荷4は負荷容量40と負荷抵抗41で等価的に表している。前記負荷4が排ガス処理装置の場合、この負荷抵抗41は、プラズマ発生前後で、高抵抗値から低抵抗値に変化する可変抵抗である。
【0020】
図4に示すように、前記トランス3に3次巻線34が設けられ、その3次側端子35、36間に第2直流電源50と第3インダクタ51、52を直列接続して設けてある。この回路構成により、前記1次側回路1と前記2次側回路2の動作に伴う前記トランス3の偏励磁を打ち消すための直流バイアス電流を前記3次巻線34に供給することができる。尚、前記第3インダクタ51、52は前記負荷4で発生するサージから前記第2直流電源50を保護するために設けられている。
【0021】
次に、第2実施形態の回路動作について、図5に示す電圧波形図に基づいて説明する。尚、図5において、電圧波形Aは前記接続点N1 の電位変化を、電圧波形Bは前記出力端子24の電位変化を示す。
【0022】
前記1次側端子30、31間、前記2次側端子32、33間、及び、前記出力端子24、25間に電位差が無く、前記バイポーラトランジスタ12がオフで、前記本発明スイッチ60が開放状態であるのを初期状態として、時刻t0 において、前記バイポーラトランジスタ12のベース端子を外部から電流制御して、前記バイポーラトランジスタ12をオンさせると、前記トランス3の1次側で電流が流れ、2次側にその誘導電流が流れ、前記第1インダクタ21と前記充電用コンデンサ22からなるLC共振回路で共振が発生し、前記接続点N1 の電位が周期T0 の正弦波形で上昇し、時刻t1 (=t0 +T0 /2)で最大値に達する。
【0023】
自己放電型スパークギャップスイッチである前記本発明スイッチ60が自己放電を開始してオンする短絡開始電圧を前記最大値に設定することで、時刻t1 で前記本発明スイッチ60が閉成する。尚、一旦オンした前記本発明スイッチ60は電極間のイオンが消滅するまでは導通状態が維持され、この時間はマイクロ秒〜ミリ秒のオーダーである。
【0024】
時刻t1 で前記本発明スイッチ60が閉成すると、前記充電用コンデンサ22、前記負荷容量40と前記第2インダクタ26からなるLC共振回路で周期T1 の共振が開始し、前記出力端子24に電圧波形Bに示す電圧が現れ、前記負荷4に印加される。
電圧波形Bは電圧波形Aに周期T1 の共振が重畳されたものであるが、その共振の振幅は前記第2インダクタ26の両端電圧と共に減衰していく。
ここで、時刻t1 から前記出力端子24の出力電圧がピーク値に達するまでの時間が200ns以下になるように周期T1 を設定すべく、前記負荷容量40と前記出力端子24、25と前記負荷4の間の浮遊インダクタンスの値から、前記充電用コンデンサ22と前記第2インダクタ26の定数を決定されている。
【0025】
一方、前記トランス3の1次側及び2次側で流れる電流は、前記電圧波形Aと同周期で四分の一周期位相が進んで発振しており、時刻t0 から時刻t1 の間、前記1次側端子30から前記1次側端子31へ、また、前記2次側端子33から前記2次側端子32へ電流が流れ、時刻t1 でその極性が反転する。
よって、時刻t1 以降は前記1次側回路1では、前記負荷4で消費されない電力に相当する電流が前記ダイオード13を通して前記直流電源10側に流れ、前記負荷4で消費されないエネルギの回収がなされる。時刻t2 (=t1 +T0 /2)で共振の1周期が終了して、電流の極性が再度反転するため、回収したエネルギが逆戻りするのを防止するために、時刻t1 から時刻t2 までの間に前記バイポーラトランジスタ12をオフすることで時刻t2 からの次周期の共振の開始を阻止する。
【0026】
尚、時刻t1 で前記出力端子24に現れた電圧波形Bが前記負荷4に印加されると同時に、前記出力電流検知器23が前記出力端子24の出力電流を検出し前記短絡信号69bが出力される。
また、前記短絡開始電圧が前記所定の設定値から変動すると、前記短絡信号69bが時刻t1 より早くまたは遅れて発生し、その時間差が前記本発明スイッチ60に入力される前記基準信号69aと前記短絡信号69bで検出され、前記本発明スイッチ60自体が前記短絡開始電圧を自動的に適正値に調節する。この調節は次の出力パルス(電圧波形B)が発生するまでの間に前記可動台64が所定単位距離だけ負または正の適正方向に一回移動して行われる。
【0027】
以上のように、時刻t2 で一連のパルス発生にかかる動作が終了し、前記本発明スイッチ60が絶縁回復した後、次のパルス発生サイクルを上記と同じ手順で繰り返す。
ところで、実際には前記負荷4で消費されなかったエネルギの回収が完全に行われることはなく、時刻t2 において、前記接続点N1 に残留電圧が生じるため、この残留電圧を放置したまま、次のパルス発生サイクルを繰り返していくと、徐々に電圧波形Aの振幅が減衰して最終的に共振しなくなる不都合がある。かかる不都合を取り除くために、図3に示すように、前記残留電圧除去回路16のバイポーラトランジスタ15を時刻t2 以降の時刻t3 でオンさせて前記1次側端子30、31間を短絡して、前記接続点N1 の残留電圧を除去する。
【0028】
以上の如く、エネルギ回収のためのスイッチング動作は低電圧の前記1次側回路1において行うため、前記スイッチ機能を実現するための回路素子としてバイポーラトランジスタ等の低電圧用の半導体素子が使用でき、スイッチング制御も低電圧で行え、そのため高速スイッチング動作も可能となり、スイッチング素子選択の自由度が大幅に広がるのである。一方、前記2次側回路2の高電圧用スイッチ素子はエネルギ回収のためのスイッチング動作に関与しないため、本発明スイッチ60のように小型で安価な自己放電型スパークギャップスイッチが使用でき、且つ、従来より問題となっていたスパークギャップスイッチの信頼性、メンテナンス期間の長期化の問題が解決され、高性能且つ高信頼度な電気的特性を維持しながらも、装置全体の小型化、低コスト化が図れるのである。
【0029】
以下に、別実施形態を説明する。
(1)本発明に係る自己放電型スパークギャップスイッチは必ずしも上記及び図1に示す実施の形態に限定されない。例えば、前記一対の電極61、62の一方の電極1は前記基台63上に固定されずに別の可動台に設置されて、前記一対の電極61、62が両方とも移動可能であっても構わない。この時、一方の移動が他方に比べ細かく移動可能に構成しても構わない。また、前記電極61、62は直線状に移動せずに円弧状に移動しても構わない。この場合、前記電動アクチュエータ65の運動は回転運動であるのが好ましい。
更に、前記電動アクチュエータ制御回路部66及び前記起動パルス発生回路部67の構成も、前記電極61、62間の短絡時と所定の基準時との時間差が認識可能でその時間差によって、前記電極61、62間の間隔を狭めるか広げるかを適宜制御可能な構成であれば、本実施形態に限定されるものではない。
【0030】
(2)本発明に係るパルス電源装置は必ずしも上記及び図3または図4に示す実施の形態に限定されない。例えば、図6または図7に示す周知な回路構成に本発明スイッチを使用するのも好ましい実施の形態である。本発明スイッチを使用することで、安定した回路動作を確保できるとともに、前記スイッチSWのオンオフ制御のための高電圧の制御信号が不要となるのである。
【0031】
(3)尚、本発明スイッチ及び本発明装置は、排ガス処理装置への応用を前提として説明したが、夫々の特徴構成は、その電気的仕様に関わらず、種々の回路への応用が可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電極の浸食、放電生成物等の影響を受けずに安定したスイッチング特性を有する自己放電型スパークギャップスイッチを提供し、更に、その自己放電型スパークギャップスイッチを使用することで、低価格で、信頼性が高く、然も、メンテナンス間隔の長い、高い実用性を有するパルス電源装置を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自己放電型スパークギャップスイッチの一実施形態の構成概略図
【図2】本発明に係る自己放電型スパークギャップスイッの回路動作を示す信号波形図
【図3】本発明に係るパルス電源装置の第1実施形態のブロック回路図
【図4】本発明に係るパルス電源装置の第2実施形態の等価回路図
【図5】本発明に係るパルス電源装置の第2実施形態の回路動作を示す電圧波形図
【図6】従来のパルス電源装置の回路構成図
【図7】従来のパルス電源装置の回路構成図
【符号の説明】
1 1次側回路
2 2次側回路
3 トランス
4 負荷
5 第1回路部
6 第2回路部
10 直流電源
11 エネルギ回収型スイッチ回路
11a スイッチング制御信号
21 第1インダクタ
22 充電用コンデンサ
23 出力電流検知器
24、25 出力端子
26 第2インダクタ
30、31 1次側端子
32、33 2次側端子
61、62 電極
68 電極間隔調節部
69a 基準信号
69b 短絡信号
Claims (3)
- 電極間隔を調節自在な一対の電極と、前記一対の電極の短絡時と所定の基準時との時間差を所定範囲内に維持するように前記電極間隔を自動的に調節可能な電極間隔調節部とを備えてなる自己放電型スパークギャップスイッチ。
- 前記電極間隔調節部は、前記基準時に発生する基準信号と前記一対の電極の短絡時に発生する短絡信号を入力信号として受信し、前記短絡信号が前記基準信号より所定時間以上遅れて入力した場合は、前記電極間隔を所定距離だけ短くし、前記短絡信号が前記基準信号より所定時間以上早く入力した場合は、前記電極間隔を所定距離だけ長くする請求項1記載の自己放電型スパークギャップスイッチ。
- 高電圧スイッチと充電用コンデンサとインダクタまたはインダクタンス成分と出力端子を備えてなる第2回路部と、前記充電用コンデンサを高電圧に所定周期で充電可能な第1回路部とから構成され、前記充電用コンデンサが所定電圧以上に充電された時点で前記高電圧スイッチが短絡して前記第2回路部と前記出力端子間に接続された出力負荷との間でLC共振回路を形成して前記出力端子間に高電圧パルスを発生させるパルス電源装置であって、
前記高電圧スイッチが請求項2記載の自己放電型スパークギャップスイッチであって、前記所定周期と同期する前記第1回路部の第1タイミング信号と前記第2回路部の出力電圧または出力電流を検出して得られる第2タイミング信号が、各々、前記自己放電型スパークギャップスイッチに前記基準信号及び前記短絡信号として入力可能に構成されているパルス電源装置。
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