JP3784947B2 - タービン速度制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タービンバイパス弁を有する発電プラントで、負荷遮断時におけるタービン速度を制御する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タービンバイパス弁を有する発電プラントの典型的な形態を図2に示す。
【0003】
この発電プラントの概要について説明すると、まずボイラ01で発生させた高温、高圧の蒸気をガバナ弁06を経て高圧タービン02に供給して同高圧タービン02を回転させる。
【0004】
高圧タービン02の排気は再熱器08で昇温し、インターセプト弁07を経て中/低圧タービン03に供給してこれを回転させ、前記高圧タービン02の回転と併せて発電機05を回転し、所定の電力を発電させる。
【0005】
中/低圧タービン03の排気は復水器04に送って復水し、図示省略の経路でボイラ01に帰還させて再び蒸気化することになるが、この基本的な配列中において、ガバナ弁06の上流から高圧タービン02の後流へ同高圧タービン02をバイパスして高圧バイパス弁09を含むバイパス回路を設け、同様にインターセプト弁07の上流から中/低圧タービン03をバイパスして復水器04に至る低圧バイパス弁010を含むバイパス回路を設けて、負荷変動時の蒸気流を調整する様になっている。
【0006】
前記の様な発電プラントのに於いては、タービンの速度制御装置(EHC:Electric Hydraulic Contorol)を備え、同タービンの速度制御装置の速度調定率(ドループ)に従い、ガバナ弁06やインターセプト弁07等を制御することになる。
【0007】
このタービンの速度制御装置における従来のドループ回路の一例を図3に基づいて説明する。
【0008】
1はタービン負荷要求ディマンドDを入力とする比例演算器、2は加算器、3、4は関数演算器、5は予め記録した定格速度を出力する定数発生器6の出力と実際のタービン回転数Rとの差を計算する減算器、7は減算器5の出力で作動するドループ用の関数演算器である。
【0009】
通常タービンのガバナ弁およびインターセプト弁は、必要な負荷に応じたタービン負荷要求ディマンドを比例演算器1で比例演算し、その演算結果の信号を弁開度指令のベース値とし、関数演算器3、4で実際の弁特性を補正して、前記ベース値に対して同ガバナ弁およびインターセプト弁を流れる流量がリニヤな関係となる様に制御される。
【0010】
すなわち、通常時においては系統周波数は安定しており、系統に併入されたタービン発電機の回転数は系統周波数と同調し、定格回転数とほぼ同じに安定しているが、系統事故あるいは系統単独運転を余儀なくされてタービン回転数が定格速度を外れた場合等には、周波数(タービン回転数R)と定数発生器6で設定された定格値を減算器5で差し引いた結果がプラス側(回転数高)となれば関数演算器7の結果はマイナスの値となり加算器2の出力はその分減少し、ガバナ弁およびインターセプト弁の開度は下がり、タービンの回転数は抑えられることとなる。
【0011】
なお減算器5の出力が前記と反対にマイナス側(回転数低)となる場合には、前記と逆に関数演算器7の結果はプラス値となり、ガバナ弁およびインターセプト弁の開度は大きくなり、タービンの回転数は上がる方向に制御される。
【0012】
例えば、関数演算器7の出力の割合(調定率)が3%の場合には、タービン回転数が定格速度の103%に相当するので、関数演算器7の出力はタービン出力が定格の100%の時の比例演算器1の出力と同じになる様に制御される。
【0013】
従って、タービンが100%負荷運転の時において、回転数の偏差が調定率の範囲であれば、ガバナ弁およびインターセプト弁の開度制御により、タービンの回転数調整が可能となるものである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように従来のものでは、タービンの速度制御装置(EHC)の速度調定率(ドループ)は通常±3〜±5%に設定されているが、タービンバイパス弁を有するプラントにおいて負荷遮断が発生した場合には、高圧タービンのバイパス弁(高圧バイパス弁)より排出される蒸気の圧力(再熱蒸気圧)を中/低圧タービンのインターセプト弁が調速制御可能な圧力まで落とすことが出来る中/低圧タービンのバイパス弁(低圧バイパス弁)の容量を持っていないと、再熱蒸気〜中/低圧タービンに至るプロセスゲインが高くなり、通常のドループ設定ではタービンの速度制御が安定せず、再併入出来なくなるという問題がある。
【0015】
従って、この問題点をクリヤーするためには、低圧バイパス弁として大容量のものを設置することが必要となる。
【0016】
また、負荷遮断時の制御動作についてみると、プラントの負荷遮断時にはタービンのガバナ弁、インターセプト弁を急速に所内負荷相当の開度まで絞り、プラントを停止することなく、所内単独運転状態にて再併入に備えることになる。
【0017】
この時ボイラの燃料も同時に絞るが、タービンのガバナ弁やインターセプト弁の応答速度と、ボイラの応答速度が大きく異なるため、ボイラの発生蒸気圧が上昇してしまう。
【0018】
従って、負荷遮断時にはタービンバイパス弁を急速開とし、ボイラ出力蒸気とタービン必要蒸気との差分をタービンバイパス弁で排出してタービン入口の蒸気圧の上昇を防止することにより、プラントとしてのバランスを保つようにしている。
【0019】
しかしながら特に石炭焚きボイラ等では、燃焼の安定上、低燃料量での運転が出来ず、この様な負荷遮断時ではボイラ発生蒸気とタービンの必要蒸気の差がかなり大きくなり、大容量のタービンバイパス弁の設置が必要となってくるという問題に帰着する。
【0020】
更に数値的に一例を挙げれば、高圧バイパス弁を通った蒸気は低圧バイパス弁にて復水器へ回収されるが、低圧バイパス弁にて高圧バイパス弁の排出蒸気を定格圧力の約1/3の圧力である9〜13Kの再熱蒸気圧を保ちながら復水器へ排出するには、定格条件の容量に対して3倍の容量の弁が必要となってくる。
【0021】
この様に従来のものにおいては、低圧バイパス弁の大容量化という不具合を伴うものであるが、本発明においては、この様な不具合を解消し、小容量の低圧バイパス弁により負荷遮断時のタービン速度制御の安定化を達成する様にしたものを提供することを課題とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記した課題を解決すべくなされたもので、タービン負荷要求ディマンドを、定常運転時にはタービン回転数と定格速度の偏差で演算した定常時ドループ信号で補正し、負荷遮断時には前記定常時ドループ信号に換えて再熱蒸気圧で補正した負荷遮断時ドループ信号により補正して、ガバナ弁及びインターセプト弁の開度を調整するようにしたタービン速度制御方法を提供するものである。
【0023】
すなわち、本発明によれば、タービン負荷要求ディマンドを補正する信号として定常時と負荷遮断時にそれぞれ専用のドループ信号を用い、定常時にはタービン回転数と定格速度の偏差で演算した定常時専用のドループ信号で、また、負荷遮断時には再熱蒸気圧で補正した負荷遮断時専用のドループ信号によりこの補正を行うことにより、定常時と同様に負荷遮断時においてもその時のバランスした再熱蒸気圧に応じたドループ設定が可能となり、低圧バイパス弁の容量を大きくすることなく運転中の状況変化に即応した制御を行うことが出来るものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図1に基づいて説明する。
なお、前記した従来のものと同一の部分については、図中に同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
【0025】
8は関数演算器で、負荷遮断時専用の調定率(ドループ)を演算して乗算器10に伝え、この負荷遮断時専用のドループ信号は、その時の再熱蒸気圧Pに応じて関数演算器11で設定した補正値と乗算器10で掛け算される。
【0026】
9は信号切換器で、端子a、端子bおよび端子cを備え、定常時の関数演算器7に連なる端子aから端子cへの経路、および乗算器10から負荷遮断時の関数演算器8に連なる端子bから端子cへの経路を選択的に切り換える様にしたものである。
【0027】
このような構成による本実施の形態においては、定常時における動作は、信号切換器9が端子aから端子cへ連通する経路が選択されており、関数設定器7が加算器2に連絡することとなるので、図3により説明した従来のものと同一であるが、負荷遮断時には信号切替器9が端子bから端子cへ連通する経路に切り換えられる。
【0028】
すなわち負荷遮断時には、負荷遮断時専用の調定率(ドループ)演算用の関数演算器8の信号と、関数演算器11で設定したその時の再熱蒸気圧Pによる補正値を乗算器10で掛け合わせた結果をドループ信号として加算器2に加え、関数演算器3、4を経てガバナ弁及びインターセプト弁の開度を調整し、負荷遮断時のタービン回転数調整を行うものである。
【0029】
このとき関数演算器11で設定した再熱蒸気圧Pに基づく補正値は、再熱蒸気圧Pが高い場合は小さくなって乗算器10の出力が低くなる様にし、回転数の変動を抑えるためのドループ信号値を通常時より小さくする事でガバナ弁及びインターセプト弁の弁開度の動きを抑え、安定した回転数調整ができる様にしている。
【0030】
そして本実施の形態によれば、通常時におけるタービン速度制御装置のドループ設定は±3〜±5%とし、また、負荷遮断時におけるタービン速度制御装置のドループ設定を通常時の±3〜±5%の2倍に当たる±6〜±10%に変更し、更に再併入では再度通常時の±3〜±5%へ戻す様に切り換え制御を行う。
【0031】
この様にドループ設定を2倍にすると制御ゲインは半分となるが、前述の低圧バイパス弁の容量が小さく再熱蒸気圧が9〜13kの倍程度となった場合は、適正な制御ゲインとなる。
【0032】
なお、所内負荷への負荷遮断時以外では、前記の負荷遮断時におけるドループ設定を、関数演算器11で設定した再熱蒸気圧の関数で決定してやる事により前記の制御を行う。
【0033】
このようにして本実施の形態によれば、負荷遮断時の機能を要求された場合においても大容量の低圧バイパス弁を使用する必要がなく、小容量の低圧バイパス弁を使用して安定したタービン速度制御が可能となる。
【0034】
また、負荷遮断時のタービン速度制御装置のドループ設定を再熱蒸気圧の関数にて決定することにより、種々のバリエーションを選択することができ、様々な負荷遮断状態に対応することが可能となる。
【0035】
以上、本発明を図示の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、タービン負荷要求ディマンドを、定常運転時にはタービン回転数と定格速度の偏差で演算した定常時ドループ信号で補正し、負荷遮断時には前記定常時ドループ信号に換えて再熱蒸気圧で補正した負荷遮断時ドループ信号により補正して、ガバナ弁及びインターセプト弁の開度を調整するようにしてタービン速度制御方法を構成しているので、タービン負荷要求ディマンドを補正する信号として定常時と負荷遮断時にそれぞれ専用のドループ信号を用い、定常時にはタービン回転数と定格速度の偏差で演算した定常時専用のドループ信号で、また、負荷遮断時には再熱蒸気圧で補正した負荷遮断時専用のドループ信号によりこの補正を行うことにより、定常時と同様に負荷遮断時においてもその時のバランスした再熱蒸気圧に応じたドループ設定が可能となり、大容量の低圧バイパス弁を使用する必要がなく、小容量の低圧バイパス弁を使用して運転中の状況変化に即応して安定したタービン速度制御を可能とし、以て有益な発電プラントを得ることが出来たものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係るタービン速度の制御方法を実施するドループ回路を示す説明図である。
【図2】タービンバイパス弁を備えた発電プラントの説明図である。
【図3】従来のタービン速度の制御方法を実施するドループ回路を示す説明図である。
【符号の説明】
1 比例演算器
2 加算器
3 関数演算器
4 関数演算器
5 減算器
6 定数発生器
7 関数演算器
8 関数演算器
9 信号切換器
10 乗算器
11 関数演算器
R タービン回転数
D タービン負荷要求ディマンド
P 再熱蒸気圧

Claims (1)

  1. タービン負荷要求ディマンドを、定常運転時にはタービン回転数と定格速度の偏差で演算した定常時ドループ信号で補正し、負荷遮断時には前記定常時ドループ信号に換えて再熱蒸気圧で補正した負荷遮断時ドループ信号により補正して、ガバナ弁及びインターセプト弁の開度を調整するようにしたことを特徴とするタービン速度制御方法。
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