JP3784749B2 - 蒸発燃料処理系のリーク判定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を、キャニスタに一時的に吸着し、内燃機関の吸気系に供給する蒸発燃料処理系のリークの有無を判定する蒸発燃料処理系のリーク判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のリーク判定装置として、特許第2686875号公報に開示されたものが知られている。この蒸発燃料処理系は、キャニスタ、ベーパ管およびパージ管を備えている。このキャニスタは、ベーパ管を介して燃料タンクに接続され、パージ管を介して内燃機関の吸気管に接続されている。また、キャニスタには、大気側に開口するドレン管が接続され、このドレン管には、これを開閉するベントシャット弁が設けられている。ベーパ管にはこれを開閉する電磁弁が、燃料タンクには圧力センサが、それぞれ設けられており、この圧力センサは、燃料タンク内の圧力(以下「タンク内圧」という)を検出する。また、パージ管の途中には、これを開閉するパージ制御弁が設けられている。
【0003】
このリーク判定装置では、蒸発燃料処理系のリーク判定は、内燃機関の回転数および車速が所定範囲にあることなどを実行条件として、以下のように実行される。まず、タンク内圧を大気圧に等しい状態にするために、ベントシャット弁、電磁弁およびパージ制御弁をそれぞれ一定の所定時間、開く(大気開放モード)。この所定時間は、タンク内圧が大気に開放されることによって安定した大気圧状態になるのに十分な時間に設定されている。次に、大気開放モードの実行後に、ベントシャット弁のみを閉じる(減圧モード)。それにより、大気圧に等しい状態のタンク内圧を所定圧まで減圧する。その後、ベントシャット弁を閉じたまま、さらにパージ制御弁を閉じ、その後のタンク内圧の推移によってリークの有無を判定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のリーク判定装置によれば、大気開放モードの実行時間は、タンク内圧が大気圧に等しくなるのに十分なように比較的長い一定の時間に設定されている。また、蒸発燃料処理系のリーク判定は、上述したような実行条件が成立しているときに行われており、そのような実行条件は、内燃機関の運転中に、例えばアクセルが戻されたときなどに成立しなくなってしまう。このため、従来のリーク判定装置のように大気開放モードの実行時間が長いと、リーク判定が終了する前に、実行条件が不成立になる可能性が高くなり、その場合には、リーク判定が行えなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、蒸発燃料処理系のリーク判定に必要な蒸発燃料処理系の大気開放を適切に行うことができるとともに、リーク判定の実行頻度を高めることができる蒸発燃料処理系のリーク判定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、請求項1による発明は、燃料タンク20内で発生した蒸発燃料を、キャニスタ22に一時的に吸着し、内燃機関3の吸気系(実施形態において(以下、本項において同じ)吸気管5)に供給する蒸発燃料処理系2のリークの有無を判定する蒸発燃料処理系2のリーク判定装置1であって、蒸発燃料処理系2内の圧力(タンク内圧PTANK)を検出する圧力検出手段(圧力センサ14)と、蒸発燃料処理系2内の圧力を、大気圧と等しくするために所定の開放時間TMATMMST、大気に開放する大気開放手段(ベントシャット弁31、ECU4、図5のステップ28、29、30)と、大気開放手段によって大気に開放される直前に圧力検出手段により検出された蒸発燃料処理系2内の圧力に応じて、開放時間TMATMMSTを設定する開放時間設定手段(ECU4、図5のステップ23、図6)と、大気開放手段により圧力を開放した後に検出された蒸発燃料処理系2内の圧力に応じて、蒸発燃料処理系2のリークの有無を判定するリーク判定手段(ECU4、図4のステップ14)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この蒸発燃料処理系のリーク判定装置によれば、蒸発燃料処理系内の圧力を、大気圧と等しくするために所定の開放時間、大気に開放した後に検出された蒸発燃料処理系内の圧力に応じて、蒸発燃料処理系のリークの有無が判定される。また、この開放時間は、大気に開放される直前に検出された蒸発燃料処理系内の圧力に応じて設定される。したがって、例えば蒸発燃料処理系内の圧力と大気圧との差が大きい場合に、開放時間をより長い時間に設定することによって、蒸発燃料処理系内の圧力を、十分に大気に開放でき、大気圧と等しくすることができる。また、蒸発燃料処理系内の圧力と大気圧との差が小さい場合に、開放時間をより短い時間に設定することによって、この開放時間を最小限に抑制しながら、蒸発燃料処理系内の圧力を大気圧と等しくすることができる。以上のように、開放時間を過不足なく適切に設定できるので、蒸発燃料処理系の大気開放を適切に行うことができるとともに、リーク判定の実行頻度を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明のリーク判定装置1を適用した蒸発燃料処理系2、およびこれを備えた内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示している。このリーク判定装置1は、蒸発燃料処理系2のリークの有無を判定するものである。
【0009】
エンジン3は、ガソリンエンジンであり、図示しない車両に搭載されている。このエンジン3の本体には、エンジン水温センサ10およびクランク角センサ11が取り付けられている。エンジン水温センサ10は、エンジン3の冷却水の温度であるエンジン水温TWを検出し、その検出信号を後述するECU4に送る。一方、クランク角センサ11は、エンジン3のクランクシャフト(図示せず)の回転に伴い、所定のクランク角ごとに、パルス信号であるCRK信号をECU4に出力する。ECU4は、このCRK信号に基づき、エンジン回転数NEを求める。
【0010】
エンジン3の吸気管5(吸気系)には、スロットル弁6が設けられ、その下流側には、吸気管内絶対圧センサ12が取り付けられている。スロットル弁6の開度THは、スロットル弁開度センサ13によって検出され、その検出信号はECU4に出力される。吸気管内絶対圧センサ12は、吸気管5内の吸気管内絶対圧PBAを検出し、その検出信号をECU4に送る。
【0011】
さらに、吸気管5の吸気管内絶対圧センサ12よりも下流側には、インジェクタ7が吸気ポート(図示せず)に臨むように取り付けられている。このインジェクタ7の開弁時間である燃料噴射時間TOUTは、ECU4によって制御される。また、インジェクタ7は、燃料供給管8を介して燃料タンク20に接続されており、この燃料供給管8の途中には、インジェクタ7に燃料を圧送する燃料ポンプ9が設けられている。
【0012】
蒸発燃料処理系2は、燃料タンク20、チャージ通路21、キャニスタ22およびパージ通路23を備えており、燃料タンク20内で発生した蒸発燃料を、キャニスタ22に一時的に貯留し、吸気管5内に適宜、放出するものである。
【0013】
燃料タンク20は、チャージ通路21を介して、キャニスタ22に接続されており、燃料タンク20内で発生した蒸発燃料がチャージ通路21を介して、キャニスタ22に送られる。燃料タンク20には、フロート弁20aが設けられている。このフロート弁20aは、チャージ通路21の燃料タンク20側のポートを開閉するものであり、通常はポートを開放しており、燃料タンク20が満タン状態のときや燃料タンク20内の燃料が揺れたときなどには、ポートを閉鎖することにより、燃料がチャージ通路21側に流れ込むのを阻止する。
【0014】
チャージ通路21の燃料タンク20側には、圧力センサ14(圧力検出手段)が配置されている。この圧力センサ14は、例えば圧電素子で構成され、チャージ通路21内の圧力を検出し、その検出信号をECU4に出力する。このチャージ通路21内の圧力は、通常は燃料タンク20内の圧力にほぼ等しいので、以下、タンク内圧PTANKという。
【0015】
また、チャージ通路21の圧力センサ14とキャニスタ22の間には、2方向弁25が設けられている。この2方向弁25は、いずれもダイアフラム式の正圧弁および負圧弁を組み合わせた機械式弁で構成されている。この正圧弁は、タンク内圧PTANKが上限圧、すなわち大気圧よりも所定圧分高い所定圧力に達したときに開弁するように構成されており、その開弁により、燃料タンク20内の蒸発燃料がキャニスタ22に送られる。また、負圧弁は、タンク内圧PTANKが下限圧、すなわちキャニスタ22側の圧力よりも所定圧分低い所定圧力に達したときに開弁するように構成されており、その開弁により、キャニスタ22に貯えられていた蒸発燃料が燃料タンク20に戻される。
【0016】
さらに、チャージ通路21には、2方向弁25をバイパスするようにバイパス通路26が設けられている。このバイパス通路26には、バイパス弁30が設けられている。このバイパス弁30は、常閉タイプの電磁弁で構成されており、通常はバイパス通路26を閉鎖し、ECU4の制御によって励磁されたときに開弁することにより、バイパス通路26を開放する。
【0017】
キャニスタ22は、活性炭を内蔵しており、この活性炭によって蒸発燃料が吸着される。このキャニスタ22には、大気側に開口する大気通路27が接続されており、大気通路27には、これを開閉するベントシャット弁31(大気開放手段)が設けられている。このベントシャット弁31は、常開タイプの電磁弁で構成されており、通常は大気通路27を開放し、ECU4の制御により励磁されたときに大気通路27を閉鎖する。
【0018】
パージ通路23は、キャニスタ22と吸気管5を連結しており、パージ通路23の途中には、これを開閉するパージ制御弁32が設けられている。このパージ制御弁32は、電磁弁で構成されており、その開度は、ECU4からの駆動信号のデューティ比に応じて連続的に変化するように制御される。上記ベントシャット弁31が開弁状態のときに、パージ制御弁32が開弁することによって、キャニスタ22に貯えられた蒸発燃料が、吸気管5内の負圧により吸気管5内に送り込まれる(パージされる)。ECU4は、パージ制御弁32の開度をデューティ制御することにより、キャニスタ22から吸気管5に送り込まれる蒸発燃料の流量、すなわちパージ流量を制御する。
【0019】
ECU4(大気開放手段、開放時間設定手段およびリーク判定手段)は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。前述した各種センサ10〜14からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。
【0020】
CPUは、これらの入力信号に応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じ、ROMに記憶された制御プログラムおよびデータや、RAMに記憶されたデータなどに従って、上述した各種の弁30〜32の動作を制御することによって蒸発燃料処理系2の動作を制御するとともに、リーク判定や故障判定などの判定処理を実行する。
【0021】
以下、この判定処理について図2〜図6を参照しながら説明する。図2は、そのメインルーチンを、図3は、それにより得られる蒸発燃料処理系2の動作例を、それぞれ示している。この処理は、エンジン3の始動後に実行される。
【0022】
まず、ステップ1(「S1」と図示、以下同じ)では、大気開放処理を実行する。この大気開放処理は、圧力センサ14、ベントシャット弁(「VSV」と図示。以下同じ)31およびパージ制御弁(「PCS」と図示。以下同じ)32が、それら全体として正常に動作しているか否かを暫定的に判定するために行われるものである。具体的には、バイパス弁(「BSV」と図示。以下同じ)30およびベントシャット弁31を開放するとともに、パージ制御弁32を閉鎖する(図3参照)ことにより、蒸発燃料処理系2を大気に開放し、その状態で圧力センサ14によって検出されたタンク内圧PTANKが、大気圧付近の所定範囲内にあるか否かに基づいて上記判定を行う。
【0023】
次に、PCS故障判定処理を実行する(ステップ2)。この処理では、大気開放処理の終了後、所定の待機時間が経過するまで、バイパス弁30、ベントシャット弁31およびパージ制御弁32を大気開放処理と同じ状態に保持する。その後、待機時間が経過したときに、バイパス弁30を開放状態に、パージ制御弁32を閉鎖状態にそれぞれ保持するとともに、ベントシャット弁31を閉鎖状態に切り替える(図3参照)。すなわち、パージ制御弁32を閉鎖したままでベントシャット弁31を閉鎖することによって、蒸発燃料処理系2内を大気圧および吸気管5内の負圧の影響を受けない状態にする。その状態で所定の判定時間が経過するまでの間に、タンク内圧PTANKの低下度合の大きい状態が所定時間、継続した場合には、パージ制御弁32が実際には完全に閉鎖していないために、蒸発燃料処理系2内の圧力が吸気管5側に漏れているとして、パージ制御弁32が故障していると判定する。
【0024】
次に、ステップ2においてパージ制御弁32が故障していると判定されたか否かを判別する(ステップ3)。この答がYESのときには、後述するステップ6のリーク判定処理やステップ8のVSV故障判定処理などを実行することなく、そのまま本プログラムを終了する。これは、パージ制御弁32が故障していると判定されたことによって、リーク判定処理については、その判定が適切に行えない可能性があり、VSV故障判定処理については、その故障を判定する必要がないためである。
【0025】
ステップ3の答がNOで、パージ制御弁32が故障していないときには、前記ステップ1において暫定的に故障していると判定されたか否かを判別する(ステップ4)。この答がYESのときには、圧力センサ14またはベントシャット弁31が正常に動作していないために、やはり、リーク判定を適切に行えないおそれがあるとして、ステップ5〜7をスキップし、ステップ8に進み、VSV故障判定処理を実行する。
【0026】
ステップ4の答がNOのとき、すなわちステップ1で暫定的に正常であると判定され、かつステップ2でパージ制御弁32が故障していないときには、リーク判定を実行するために、ステップ5において、パージ制御弁32を閉鎖状態に保持するとともに、バイパス弁30を閉鎖状態に、ベントシャット弁31を開放状態にそれぞれ切り替える(図3参照)。そして、その状態でリーク判定の実行条件が成立するまで待機する。
【0027】
次に、ステップ6において、リーク判定処理を実行する。図4は、このリーク判定処理のサブルーチンを示している。まず、ステップ11では、大気開放モードを図5のサブルーチンに従って実行する。この処理は、ベントシャット弁31を開放状態に、パージ制御弁32を閉鎖状態にそれぞれ保持するとともに、バイパス弁30を開放状態に切り替えることによって、タンク内圧PTANKを大気圧に等しい状態になるように制御するものである(図3参照)。まず、図5のステップ21では、リーク判定実行条件成立フラグF_EVPLKMが「1」であるか否かを判別する。このリーク判定実行条件成立フラグF_EVPLKMは、例えばアイドル運転状態が終了しているなど、パージを行ってもエンジン3の燃焼状態や混合気の空燃比への影響が少ないようなエンジン3の運転状態のときに、リーク判定処理の実行条件が成立しているとして、「1」にセットされるものである。
【0028】
この答がNOで、リーク判定処理の実行条件が成立していないときには、大気開放終了フラグF_PATMを「0」にセットし(ステップ22)、開放時間TMATMMSTを算出し(ステップ23)、アップカウント式のタイマTPATMを値0にセットする(ステップ24)とともに、大気開放実行フラグF_PATMBPSを「0」にセットし(ステップ25)、本プログラムを終了する。この状態では、バイパス弁30およびベントシャット弁31が、ステップ5の待機状態と同じ開閉状態、すなわち閉鎖および開放状態にそれぞれ保持される。
【0029】
また、ステップ23の開放時間TMATMMSTの算出は、差圧DPMAXDLYに応じて、図6に示すTMATMMSTテーブルを検索することによって行われる。この差圧DPMAXDLYは、その時点から5秒前までの期間におけるタンク内圧PTANKと大気圧との差圧の絶対値として設定されており、このTMATMMSTテーブルでは、開放時間TMATMMSTは、差圧DPMAXDLYが大きいほど、大きな値にリニアに設定されている。
【0030】
前記ステップ21の答がYESで、F_EVPLKM=1、すなわちリーク判定処理の実行条件が成立しているときには、大気開放終了フラグF_PATMが「1」であるか否かを判別する(ステップ26)。
【0031】
この答がNOで、大気開放が終了していないときには、タイマTPATMの値が、所定時間TMPATM以上であるか否か、および前記ステップ23で算出した開放時間TMATMMST以上であるか否かをそれぞれ判別する(ステップ27、28)。この所定時間TMPATMは、開放時間TMATMMSTよりも大きな一定時間(例えば60sec)に設定されている。
【0032】
リーク判定処理の実行条件が成立した初期においては、ステップ27、28の答がいずれもNOになるので、その場合には、大気開放実行フラグF_PATMBPSを「1」にセットし(ステップ29)、ベントシャット弁31を開放状態に、パージ制御弁32を閉鎖状態にそれぞれ保持するとともに、バイパス弁30を開放状態に切り替えることによって、蒸発燃料処理系2を大気に開放する。
【0033】
前記ステップ28の答がYESで、TPATM≧TMATMMST、すなわち大気開放の開始後、開放時間TMATMMSTが経過したときには、タンク内圧PTANKが、第1および第2の所定圧力ATMLO(例えば大気圧−2,5mmHg)、ATMHI(例えば大気圧+2,5mmHg)で規定される所定範囲内にあるか否かを判別する(ステップ30)。この答がNOで、大気開放の開始後、開放時間TMATMMSTが経過しても、実際のタンク内圧PTANKが、その所定範囲内から外れており、大気圧とほぼ等しい状態になっていないときには、前記ステップ29を実行し、大気開放を継続する。
【0034】
ステップ30の答がYESで、タンク内圧PTANKが上述した所定範囲内にあり、タンク内圧PTANKが大気圧とほぼ等しくなったときには、その際のタンク内圧PTANKを基準圧PATMTKMとして設定し(ステップ31)、大気開放終了フラグF_PATMを「1」にセットする(ステップ32)とともに、大気開放実行フラグF_PATMBPSを「0」にセットし(ステップ33)、本プログラムを終了する。
【0035】
一方、前記ステップ27の答がYES、すなわちTPATM≧TMPATMが成立し、大気開放の開始後、比較的長い所定時間TMPATMが経過したにもかかわらず、タンク内圧PTANKが大気圧とほぼ等しくならないときには、大気開放を強制的に終了させるために、前記ステップ31以降を実行し、本プログラムを終了する。
【0036】
一方、前記ステップ32の実行により、大気開放終了フラグF_PATMが「1」にセットされた後には、前記ステップ26の答がYESになり、その場合には、前記ステップ24以降を実行し、本プログラムを終了する。
【0037】
図4に戻り、前記ステップ11を実行した後には、オープン減圧モードに移行する(ステップ12)。このオープン減圧モードでは、バイパス弁30を開放状態に保持するとともに、ベントシャット弁31を閉鎖状態に切り替え、パージ制御弁32をデューティ制御することによって開弁する(図3参照)。これにより、吸気管5内の負圧が蒸発燃料処理系2内に導入されることによって、タンク内圧PTANKが、大気圧とほぼ等しい基準圧PATMTKMから減圧される。そして、タンク内圧PTANKが所定の下限圧DPTOBJLOを下回ったときに、フィードバック(「F/B」と図示。以下同じ)減圧モードに移行する(ステップ13)。
【0038】
このフィードバック減圧モードでは、タンク内圧PTANKが減圧目標値PTGROSLKに収束するように、パージ制御弁32の開度をフィードバック制御する(図3参照)。この減圧目標値PTGROSLKは、前記下限圧DPTOBJLOと所定の上限圧DPTOBJHIの間の値として設定されている。
【0039】
次に、タンク内圧PTANKが減圧目標値PTGROSLKに収束したときに、リークチェックモードに移行する(ステップ14)。このリークチェックモードでは、バイパス弁30を開放状態に、ベントシャット弁31を閉鎖状態にそれぞれ保持するとともに、パージ制御弁32を閉鎖状態に切り替える(図3参照)。そして、その後のタンク内圧PTANKの推移によって、蒸発燃料処理系2のリークの有無を判定し、本プログラムを終了する。具体的には、リークチェックモードへの移行後、所定時間内におけるタンク内圧PTANKの変化量をその所定値と比較することによって、リークの有無を判定する。
【0040】
図2に戻り、前記ステップ6のリーク判定処理を実行した後には、安定待ち処理を実行する(ステップ7)。この処理では、バイパス弁30を閉鎖状態に、ベントシャット弁31を開放状態にそれぞれ切り替えるとともに、パージ制御弁32の開度を段階的に増加させる(図3参照)。それにより、リーク判定処理のために大気圧よりも低い状態に制御されたタンク内圧PTANKを、大気圧とほぼ等しい状態に制御する。
【0041】
前記ステップ4またはステップ7に続くステップ8では、VSV故障判定処理を実行する。この処理では、バイパス弁30、ベントシャット弁31およびパージ制御弁32をいずれも開弁状態に制御する(図3参照)。そして、その状態で、タンク内圧PTANKの低下度合の大きい状態が所定時間、継続した場合には、ベントシャット弁31が実際には完全に開放していないために、パージ制御弁32の開弁による吸気管5内の負圧が、ベントシャット弁31を介して大気側に十分に逃げずに、その影響が燃料タンク20側に大きく及んでいる状態にあるとして、ベントシャット弁31が故障していると判定し、本プログラムを終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態のリーク判定装置1によれば、蒸発燃料処理系2を大気に開放する開放時間TMATMMSTは、大気開放の開始直前におけるタンク内圧PTANKに応じて設定され、大気圧との差圧DPMAXDLY(絶対圧)が大きいほど、より長い時間に設定される。したがって、タンク内圧PTANKと大気圧の差が大きい場合には、開放時間TMATMMSTがより長い時間に設定されることによって、蒸発燃料処理系2を十分に大気に開放でき、タンク内圧PTANKを大気圧と等しい状態に確実に制御することができる。また、特に本実施形態の蒸発燃料処理系2では、前述した構成の2方向弁25が設けられているとともに、大気開放の実行直前では、バイパス弁30が閉弁状態に保持されるので、タンク内圧PTANKが、2方向弁25の上限圧まで上昇し、大気圧よりもかなり高くなっている可能性がある。本実施形態では、そのような場合には、開放時間TMATMMSTが上述したように設定されることで、タンク内圧PTANKを確実に大気圧と等しくすることができる。
【0043】
また、差圧DPMAXDLYが比較的小さい場合に、開放時間TMATMMSTがより短い時間に設定されるので、開放時間TMATMMSTを最小限に抑制しながら、タンク内圧PTANKを大気圧と等しくすることができる。以上のように、開放時間TMATMMSTを過不足なく適切に設定できるので、蒸発燃料処理系2の大気開放を適切に行うことができるとともに、リーク判定の実行頻度を高めることができる。
【0044】
また、このように開放時間TMATMMSTが適切に設定されるのに伴い、それに応じたタイミングでリーク判定が終了するので、パージ制御を、適切なタイミングで開始でき、特に差圧DPMAXDLYが小さいときには、早期に開始することができる。
【0045】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、チャージ通路21に2方向弁25、バイパス通路26およびバイパス弁30が設けられているが、これらを省略した蒸発燃料処理系に本発明を適用してもよい。この場合には、吸気管内の負圧が導入されることによって、タンク内圧が負圧になっている可能性がある。これに対し、本実施形態では、前述したように開放時間TMATMMSTを算出するための差圧DPMAXDLYを大気圧との差圧の絶対値として設定するので、2方向弁などが省略されている場合でも同様に、開放時間TMATMMSTを、タンク内圧PTANKに応じて過不足なく適切に設定することができる。また、チャージ通路21などの径に応じた複数の開放時間TMATMMSTを、あらかじめ別個に設定し、実際の径に応じて選択するようにしてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明の蒸発燃料処理系のリーク判定装置によれば、蒸発燃料処理系のリーク判定に必要な蒸発燃料処理系の大気開放を適切に行うことができるとともに、リーク判定の実行頻度を高めることができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリーク判定装置を適用した蒸発燃料処理系および内燃機関を、概略的に示す図である。
【図2】ECUで実行される判定処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2の判定処理により得られる蒸発燃料処理系の動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】図2のリーク判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図4の大気開放モードのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図5の処理で用いられるTMATMMSTテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 リーク判定装置
2 蒸発燃料処理系
3 内燃機関
4 ECU(大気開放手段、開放時間設定手段、リーク判定手段

5 吸気管(吸気系)
14 圧力センサ(圧力検出手段)
20 燃料タンク
22 キャニスタ
31 ベントシャット弁(大気開放手段)
PTANK タンク内圧(蒸発燃料処理系内の圧力)
TMATMMST 開放時間

Claims (1)

  1. 燃料タンク内で発生した蒸発燃料を、キャニスタに一時的に吸着し、内燃機関の吸気系に供給する蒸発燃料処理系のリークの有無を判定する蒸発燃料処理系のリーク判定装置であって、
    前記蒸発燃料処理系内の圧力を検出する圧力検出手段と、
    前記蒸発燃料処理系内の圧力を、大気圧と等しくするために所定の開放時間、大気に開放する大気開放手段と、
    当該大気開放手段によって大気に開放される直前に前記圧力検出手段により検出された前記蒸発燃料処理系内の圧力に応じて、前記開放時間を設定する開放時間設定手段と、
    前記大気開放手段により圧力を開放した後に検出された前記蒸発燃料処理系内の圧力に応じて、前記蒸発燃料処理系のリークの有無を判定するリーク判定手段と、
    を備えることを特徴とする蒸発燃料処理系のリーク判定装置。
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