JP3784689B2 - 光磁気記録媒体再生方法及び光磁気記録媒体再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気的超解像(MSR:Magnetically induced Super Resolution)を利用し、レーザ光を用いて情報の再生を行う光磁気記録媒体の再生方法および再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光磁気記録の高密度化技術として、磁気的超解像(MSR)再生がある。
【0003】
MSR再生とは、磁性多層膜からなる記録媒体中に存在する磁気的結合状態が、集光照射されたレーザビームにより生じる記録媒体の温度変化に応じて変化する現象を利用し、レーザビームスポット内の一部分のみの情報の再生を行うものである。
【0004】
そして、室温において面内磁化状態であり、温度上昇に伴い、垂直磁化状態となる再生層を用いたCAD(Center Aperture Detection)方式が、光磁気記録の高密度化に有効なMSR再生技術として広く検討されている。
【0005】
図17は、MSR媒体(以下、MSR媒体を媒体と称す)の記録情報の再生時における、媒体175の温度分布、及び媒体175を上から見たときのビームスポット174とアパーチャ171との関係を示す図である。半導体レーザからのレーザビーム173を、媒体175の再生層に照射したときの、媒体175の温度分布を172に示す。
【0006】
温度T1は、再生層のレーザビーム173の高エネルギー部分が照射された領域における、面内磁化状態が垂直磁化状態に変化し始める温度である。この時、媒体175上では、ビームスポット174での温度が、温度T1以上になる領域が形成され、すなわち、アパーチャ171が開いた状態となる。アパーチャ171が開いた領域では、アパーチャ171内で、記録層から発生する漏洩磁界と、再生層の垂直磁化とが結合し、記録層の磁化状態が再生層に検出(転写)され、記録層に記録された情報が再生可能となる。なお、記録層は全温度範囲で垂直磁化膜の性質を有している。
【0007】
このように、MSR再生では、ビームスポット174より小さい径のアパーチャ171が再生に寄与するため、光磁気記録の高密度化が図れる。
【0008】
図18(a)は、半導体レーザ照射時における、媒体175の再生層と記録層との磁化の温度依存性を示したものである。181は再生層の磁化の温度依存性を示し、182は記録層の磁化の温度依存性を示す。上述したように、再生層は、温度T1より温度の低い領域では面内磁化状態であり、温度T1より温度が高くなると垂直磁化状態へ変化する。
【0009】
一方、記録層の磁化は、温度を上昇させると、しばらくは磁化が増大するが、ある温度で磁化がピークに到達した後は減少を始める。そして、温度T2において、記録層の磁化が温度T1での磁化と等しくなるものとする。そして、温度T1から温度T2にかけての範囲は、記録層の磁化が強く、再生層において記録層の磁化状態が好適に転写できる温度範囲183となる。
【0010】
ここで、温度T2より温度が高くなると、記録層の磁化が弱まり、記録層の情報が再生層に十分に転写されなくなり媒体ノイズが大きくなる。さらに、温度がT3以上になると、記録層の磁化がなくなり、該記録層の情報は消去される。
【0011】
一般に、半導体レーザを用いた光記録媒体の再生では、記録媒体からの戻り光により、半導体レーザにノイズが生じ、再生が好適に行えないという問題があるため、高周波電流駆動回路からの高周波の交流電流を直流電流に重畳して、半導体レーザに流すという高周波重畳方式を用いている(例えば、特開平3−25732号公報,特開平5−48184号公報)。
【0012】
そして、MSR再生においても、一般的な光記録媒体の再生と同様に高周波重畳方式を用いて半導体レーザへの戻り光によるノイズを低減している。
【0013】
図19は、高周波重畳方式を用いた場合の、半導体レーザの駆動電流と光出力強度との関係を示したものである。191に示すように、上記駆動電流が閾値電流(Ith)に至るまでは光出力強度は略ゼロであり、該閾値電流(Ith)を超えると電流の増加に比例して光出力強度が増大する。
【0014】
そして、192で示すような正弦波の駆動電流が半導体レーザに流れると、閾値電流(Ith)以上の電流が流れる場合に半導体レ−ザが点灯し、その光出力強度は193で示すようなパルス状になる。ここで、正弦波である駆動電流192は、従来から用いられているものである。
【0015】
パルス状に発光する半導体レーザは、シングルモードレーザでありながら、あたかもマルチモードレーザのように複数の波長スペクトクルを伴って発光することになり、戻り光によるノイズが軽減される。ここで、半導体レーザのノイズは、相対雑音強度(RIN:Relative Intensity Noise)により規定され、一般的には RIN≦−120dB/Hzが望ましい。
【0016】
なお、t1は半導体レーザの点滅周期、t2は半導体レーザの発光周期であり、半導体レーザの点滅周期に占める発光時間を示す発光デューティは、t2/t1で表される。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MSR再生では次の問題がある。
【0018】
MSR媒体の特性として、前記のとおり、図18(a)の温度T2を超えると、記録層の磁化が弱くなって、記録層の情報が好適に再生層に転写されなくなり、その結果、媒体ノイズが増加し始める。また、記録層の温度が温度T3以上になると、記録層の情報が消去される。
【0019】
このような媒体を、従来から高周波重畳に用いられているパルス波形で再生する場合、再生パワーの大きさによっては、媒体ノイズの増加、及び記録マーク(記録情報)の劣化が生じ、再生信号品質の向上が図れない。
【0020】
図18(b)の184,185は、それぞれ、パルス駆動時において、アパーチャ171内のピーク温度の変化をプロットした図である。184は、所定の再生パワーでレーザ照射を行なった場合の温度変化を示し、185は、上記184の場合に対してさらに再生パワーを上げた状態(高再生パワー)でレーザ照射を行なった場合の温度変化を示している。
【0021】
ここで、パルス駆動時において、記録媒体のアパーチャ171内での温度が最も高くなる温度をピーク温度(図中、186で示す)とし、アパ−チャ171内での温度が最も低くなる温度をボトム温度(図中、187で示す)とする。媒体の温度変化184に示すように、この媒体のピーク温度、ボトム温度が、共に温度範囲183内に存在すれば、記録層の情報が再生層に好適に転写される。
【0022】
しかし、高再生パワーでの駆動時では、媒体の温度変化185に示すように、媒体の温度がピーク温度,ボトム温度共に上昇し、媒体の温度が温度T2より高くなると、記録層の磁化が低下することによって記録層の情報が再生層に対して好適に転写されず、媒体ノイズが増加する。更に、媒体のピーク温度が温度T3より高くなると、記録マークの劣化が生じる。
【0023】
一方、図示していないが、温度変化184と185との中間帯の温度変化においては、媒体のピーク温度が、温度T2より高くても温度T3より低く、かつ、媒体のボトム温度が温度範囲183内に存在すれば、記録層から再生層への情報の転写は好適に行われる。これは、媒体のピーク温度が温度T2より高くなったとしても、温度変化過程において、温度範囲183に入っている時間内に記録層から再生層に転写された情報は、媒体温度が温度T2より高くなった後でも再生層にてホールドされるためである。
【0024】
もちろん、媒体のボトム温度が温度範囲183に入っていても(温度T2より低くても)、ピーク温度がT3以上になると、記録層における記録マークを劣化させる恐れがあるので、媒体のピーク温度の抑制も考慮する必要がある。
【0025】
図20は、従来から用いられている正弦波を駆動電流波形としてパルス駆動した場合に形成されるパルス波形201(図20(a))と、該パルス波形201に対応する媒体の温度変化202(図20(b))とを示す。図20は、パルスの発光デューティが50%の場合の具体例を示している。図20(b)においても、203をパルス駆動時における媒体のピーク温度、204をパルス駆動時における媒体のボトム温度とする。
【0026】
従来のパルス波形では、特に高再生パワーでのレーザ照射時において、媒体の温度変化におけるピーク温度及びボトム温度が共に高くなるため、高再生パワーでのレーザ照射時には媒体ノイズが増加してしまい、再生パワーが高く設定できないという問題が生じていた。
【0027】
これに対し、高再生パワーでのレーザ照射による記録マークの劣化を防ぐため、発光デューティを変更し、高再生パワー時の媒体のピーク温度を下げることが検討されている。
【0028】
図21(a)の211〜213は、再生パワーは同じであるが発光デューティの異なるパルス波形を示している(211,212,213の順に発光デューティは大きくなる)。図21(b)の214〜216は、上記発光デューティに対応した媒体の温度変化を示している(パルス波形211,212,213はそれぞれ温度変化214,215,216に対応する)。図21より、発光デューティを大きくすることにより、媒体のピーク温度を下げることが可能であることが分かる。しかしながら、一方で、ピーク温度を下げた場合には同時にボトム温度が高くなっていることが分かる。
【0029】
すなわち、発光デューティを大きくすることで媒体のピーク温度を下げたとしても、ボトム温度が高くなれば、ボトム温度が好適な温度範囲183を越えてしまう恐れが有り、このことより、発光デューティの変更だけでは、媒体の温度抑制に限界があるといえる。
【0030】
前記の点に鑑み、本発明は、特に高再生パワーのレーザ照射時において、媒体(再生層)の温度上昇を抑制することができ、ピーク温度を低下させることで記録マ−クの劣化を防ぐだけでなく、ボトム温度の上昇を回避することで媒体ノイズの発生も防ぐことができる光磁気記録媒体再生方法および再生装置を提供するものである。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光磁気記録媒体再生方法は、上記の問題を解決するために、第1の温度<第2の温度<第3の温度の関係にあるとき、第1の温度未満で面内磁化膜であり、上記第1の温度以上で垂直磁化膜となる再生層と、上記第1の温度から第3の温度までの温度範囲で垂直磁化膜であり、上記第1の温度と上記第2の温度での磁化が等しくなる記録層を有する光磁気記録媒体に、パルス駆動された半導体レーザからのレーザ光を照射して情報の再生を行う光磁気記録媒体再生方法において、光磁気記録媒体に照射されるレーザ光を、半導体レーザを駆動するパルス波形の立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて短くなるように設定されたパルス波形を用いてパルス駆動することを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、半導体レーザのパルス波形は、その立ち上がり時間が短いため、パルス波形の立ち上がり時間と立ち下がり時間とが同じである従来の正弦波形状のパルス波形と比べて記録媒体の温度上昇が発生する時間が短くなり、記録媒体のピーク温度を低下させることができる。
【0033】
さらに、パルス波形の立ち下がり時間は立ち上がり時間に比べて長くなるため、記録媒体の温度がピーク温度に達した後、温度減少に移行する時間が長くなり、よって、記録媒体のボトム温度が上昇することを回避できる。
【0034】
すなわち、記録媒体の温度上昇を抑制することができ、ピーク温度を低下させることで記録マ−クの劣化を防ぐだけではなく、ボトム温度の上昇を回避することで媒体ノイズの発生も防ぐことができる。
【0035】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の再生パワーのピーク値に至るまでの立ち上がりの勾配が一定であることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、パルス波形の立ち上がりの勾配を一定とすることで、パルス波形の再生パワーのピーク値に至るまでの、立ち上がりに掛かる時間を短くすることができる。これにより、特に記録媒体温度のピーク値に対して温度上昇抑制効果を高めることができる。
【0037】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の再生パワーのピーク値においては、該ピーク値の前後の立ち上がりおよび立ち下がりの勾配が何れも直線的であることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、上記パルス波形におけるピーク値の前後の立ち上がりおよび立ち下がりの勾配が何れも直線的であることから、再生パワーが急峻に上昇してピーク値に到達した後、急峻に再生パワーが低下する。このため、パルス波形の再生パワーがピーク値となる付近において、該ピーク値に近い値の再生パワーを有する時間が極めて短くなり、記録媒体の温度が上昇する時間を短くすることができる。これにより、特に記録媒体温度のピーク値に対して温度上昇抑制効果を高めることができる。
【0039】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の立ち下がりにおいて、最初に再生パワーを大きく低下させる勾配を有し、立ち下がりの途中から、再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有すると共に、立ち下がりの最後では、再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有することが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、パルス波形の立ち下がりの最初に、再生パワーを大きく低下させる勾配を有しているが、立ち下がりの勾配が急なため、つまり、立ち下がってから直ちに立ち下げるので、前記と同様に媒体のピーク温度上昇を抑制することができる。また、立ち下がりの途中からは、再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有し、さらに、立ち下がりの最後では再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有することで、立ち下がり時間を短くすることができ、記録媒体のボトム温度が上昇することを抑制することができる。これにより、記録媒体温度のピーク値およびボトム値の両方に対して温度上昇抑制効果を高めることができる。
【0041】
また、本発明に係る光磁気記録媒体再生装置は、室温で面内磁化膜であり、ある所定の温度以上で垂直磁化膜となる再生層、及び全温度範囲で垂直磁化膜である記録層を有する光磁気記録媒体に、パルス駆動された半導体レーザからのレーザ光を照射して情報の再生を行う光磁気記録媒体再生装置において、光磁気記録媒体に照射されるレーザ光が、半導体レーザを駆動するパルス波形の立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて短くなるように設定されたパルス波形を用いてパルス駆動されるようになっている。
【0042】
上記の構成によれば、上述の光磁気記録媒体再生方法と同様に、記録媒体の温度上昇を抑制することができ、ピーク温度を低下させることで記録マ−クの劣化を防ぐだけではなく、ボトム温度の上昇を回避することで媒体ノイズの発生も防ぐことができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明について図1ないし図16を用いて詳細に説明する。図1に、本発明に用いる光磁気記録媒体再生装置について示す。
【0044】
上記光磁気記録媒体再生装置は、半導体レーザ1と、コリメータレンズ2と、ビームスプリッタ3と、対物レンズ4と、光磁気記録媒体5と、ビームスプリッタ6と、集光レンズ7と、サーボ用受光素子8と、二分の一波長板9と、偏光ビームスプリッタ10と、集光レンズ11と、RF用受光素子12と、集光レンズ13と、RF用受光素子14と、レーザ駆動部15と、高周波電流発生部16とを備えている。
【0045】
半導体レーザ1は、読出光であるレーザ光を出射するものであり、該半導体レーザ1には駆動電流としてレーザ駆動部15から印加される直流電流と共に、高周波電流発生部16により数100MHzの高周波電流が重畳される。
【0046】
コリメータレンズ2は、半導体レーザ1から出射したレ−ザ光を平行光にする。コリメータレンズ2によって平行光とされたレーザ光は、ビームスプリッタ3を透過後、対物レンズ4によって光磁気記録媒体5の情報記録面上に集光・照射される。
【0047】
光磁気記録媒体5の情報記録面に照射されたレーザ光は、該情報記録面にて反射される。ビームスプリッタ3は、光磁気記録媒体5から反射してきたレーザ光の一部を分割・反射し、検出系ビームスプリッタ6へと導く。ビームスプリッタ6は、ビームスプリッタ3側より入射されたレーザ光の一部を透過し、一部を反射する。
【0048】
集光レンズ7は上記ビームスプリッタ6を透過してきたレーザ光を集光し、サーボ用受光素子8へ入射させる。サーボ用受光素子8は集光レンズ7で集光されたレーザ光を受光し、ラジアルサーボとフォーカスサーボとを行うためのサーボ信号を出力する。
【0049】
ビームスプリッタ6により反射されたレーザ光は、二分の一波長板9を通過し、さらに偏光ビームスプリッタ10に入射される。二分の一波長板9は入射された上記レーザ光の半分に対して偏光面を回転調整し、偏光ビームスプリッタ10は所定の偏光状態を有する偏光のみを透過し、他の光を反射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ10は二分の一波長板9によって回転調整された分の光と回転調整されなかった光とのうち、一方を反射し他方を透過する。
【0050】
偏光ビームスプリッタ10により反射されたレーザ光は、集光レンズ11によって集光されRF用受光素子12にて受光される。RF用受光素子12は、受光したレーザ光を読出信号(RF信号)として出力する。また、偏光ビームスプリッタ10を透過したレーザ光は、集光レンズ13によって集光されRF用受光素子14にて受光される。RF用受光素子14は、受光したレーザ光を読出信号として出力する。ここで、RF信号はRF用受光素子12とRF用受光素子14との差動をとることで出力される。
【0051】
上述したように、レーザ駆動部15は上記半導体レーザ1に直流電流を印加し、高周波電流発生部16は上記レーザ駆動部15に高周波の交流電流を重畳するかつ、高周波電流発生部16は、交流電流の波形の設定をする。すなわち、本発明では、媒体の温度を抑制する効果が大きくなるように駆動電流波形を設定し、高周波電流発生部16で駆動電流波形を制御してパルス波形を形成するものとする。
【0052】
上記光磁気記録媒体再生装置を使用し、光磁気記録媒体としてMSR媒体を用い、光源の波長を405nm、対物レンズの開口数(NA)を0.5、パルス周波数を400MHz、発光デューティを50%、平均再生パワーを対物レンズ出射で2.0mW(光利用効率25%とすると、レーザダイオード(LD)出射では8.0mW)として、媒体の温度制御効果が大きい波形の検討を行った。
【0053】
まず、参考のために、図2(a)に示す従来のパルス波形W2a(重畳される高周波電流の波形を正弦波とした場合のパルス波形)でパルス駆動した時の、媒体の温度変化を図3の32に示す。この時の再生パワーのピーク値は、6.28mWである。尚、以下の説明における再生パワーは、対物レンズ出射でのパワーを示すものとする。
【0054】
一方、図2(b)に示すような、パルスの立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて早い、三角波のパルス波形W2bによる媒体の温度変化を調べた。この結果を図3の31に示す。この時、パルス波形W2bの再生パワーのピーク値は、8.0mWである。
【0055】
尚、上記パルス波形W2aおよびパルス波形W2bにおいては、その平均再生パワーは等しいものとして設定されている。すなわち、各パルス波形において再生パワーの時間積分値(パルス波形の面積)は全て等しい(例えば、高再生パワーとは、パルス波形の面積が大きいことを表す)。また、以後に例示する他のパルス波形においても、パルス波形の面積全て等価に設定されており、同じ平均再生パワーでの比較検討を行なっている。さらに、パルス波形W2aおよびパルス波形W2bを含み、以後に例示する他のパルス波形において、パルス波形の立ち上がり開始から立ち下がり終了までの時間の長さも全パルス波形において等しく設定している。すなわち、本実施の形態では、パルス周波数,発光デューティ,平均再生パワーを一定とし、立ち上がりから立ち下がりまでのパルス波形の違いのみによって、媒体の温度抑制効果の検討を行っている。
【0056】
上記図3より、従来のパルス波形W2aを与えた場合の媒体の温度変化32は、三角波のパルス波形W2bを与えた場合の温度変化31に比べて、緩やかに温度が上昇しているものの、ピーク温度,ボトム温度共に高くなっていることが分かる。
【0057】
すなわち、パルス波形W2bの立ち上がりはほぼ垂直であるため、温度変化31においてもその温度は急激に上昇している。しかしながら、パルス波形W2bを立ち上げた後、直ちに立ち下げるので、従来のパルス波形W2aの場合よりも再生ピークパワーが高いにもかかわらず、媒体のピーク温度は低くなる。また、パルス波形W2bでの駆動時には媒体のボトム温度も低くなっていることが分かる。
【0058】
このように、パルス波形W2aとパルス波形W2bとの比較により、パルス周波数,発光デューティ,および平均再生パワーが同じであっても、パルス波形の形状を変化させることによって、ピーク温度,ボトム温度を下げることができる。具体的には、半導体レーザ光のパルスの立ち上がり時間が、立ち下がり時間に比べて早いパルス波形とすることで、ピーク温度,ボトム温度を同時に下げることが可能となり、媒体の温度制御効果を得ることができる。
【0059】
前記の結果を参考に、より高い媒体の温度制御効果を得ることができるパルス波形について考察する。具体的には、パルス波形の立ち下がりにおいて、パルス波形W2bのようにその勾配を一定とするのではなく、立ち下がりの勾配を変化させることによって媒体の温度制御効果を向上させることを目的とする。
【0060】
先ず、パルス波形W2bを変形させたパルス波形W4を図4に示す。このパルス波形W4は、波形の立ち上がり後、波形の立ち下がりにおいて第1変曲点40(勾配41から勾配42に変わる点)を有している。ここでの変曲点とは、波形の立ち下がり部分においてパルス波形の勾配が切り換わる点のことをいう。具体的には、上記第1変曲点40では、そのより前の部分での勾配が大きく(鋭く),それ以降の部分での勾配が小さく(緩やかに)なっている。
【0061】
ここで、パルス波形の違いによる媒体の温度抑制効果を比較するため、次の図7を用いて説明する。図7は、横軸に媒体のピーク温度、縦軸に媒体のボトム温度を示している。図7では、各パルス波形における媒体の温度抑制効果が大きいほど、媒体温度(ピーク温度、ボトム温度)を示す指標がグラフの左下に表示される。ここでは、パルス波形W4を用いた場合の媒体温度を示す指標はT4である。また、図7には、パルス波形W2a,W2bを用いた場合の媒体温度を示す指標T2a,T2bも示す。
【0062】
図7より、まず、指標T2bが指標T2aの左下にあることから、パルス波形W2bの方が、従来から用いられているパルス波形W2aよりも、媒体の温度抑制効果が大きいことが分かる。次に、指標T4も指標T2aの左下にあることから、パルス波形W4が、パルス波形W2aより温度抑制効果が大きいことがわかる。
【0063】
一方、指標T4が指標T2bの右下になることから、パルス波形W4は、パルス波形W2bより媒体のボトム温度の抑制効果は大きいが、ピーク温度の抑制効果は小さいことが分かる。この場合のパルス波形W4は、前記のとおり、パルス波形W2bと波形の面積が等しく、かつ立ち上がり開始から立ち下がり終了までの時間が等しいため、2つの変化量を持たせた形状に変形することによって、第1変曲点40以降の立ち下がり勾配はパルス波形W2bの立ち下がり勾配よりも緩やかになっており、これによって媒体のボトム温度の抑制効果は大きくなっていると考えられる。しかしながら一方で、パルス波形W4では、再生ピークパワーが10.0mWになってしまい、再生ピークパワーがパルス波形W2bに比べて高くなったことが、媒体のピーク温度抑制効果を小さくしたと考えられる。
【0064】
次に、媒体のピーク温度の抑制効果を更に大きくするために、再生ピークパワーを高くしないでパルス波形を設定する検討をした。
【0065】
図5に示すパルス波形W5は、パルス波形W2bと同じ再生ピークパワー(8.0mW)で波形を変形させ、波形の立ち上がり後、第1変曲点50(勾配52から勾配53に変わる点)と第2変曲点51(勾配53から勾配54に変わる点)を有した波形となっている。具体的には、パルス波形W5では、波形の再生ピークパワーから第1変曲点50までの勾配52はパルス波形W2bの立ち下がり勾配よりも鋭くなっており、第1変曲点50から第2変曲点51までの勾配53はゼロとなっており、第2変曲点51以降の勾配54はほぼ垂直となっている。
【0066】
この場合の媒体の温度抑制効果も図7に示すと、パルス波形W5を用いた場合の媒体温度の指標T5は、パルス波形W2aを用いた場合の媒体温度の指標T2aよりグラフの左下にあることから、パルス波形W5は、パルス波形W2aより温度抑制効果が大きいことが分かる。
【0067】
一方、パルス波形W5を用いた場合の媒体温度指標T5と、パルス波形W2bの場合の媒体温度指標T2bとを比較すると、パルス波形W5の場合の媒体温度は、パルス波形W2bの場合と比べて、ピーク温度は低くなるが、ボトム温度は高くなっている。
【0068】
これは、パルス波形W5の再生ピークパワーが、パルス波形W2bと同じで、更に、該パルス波形W5の勾配52が、該パルス波形W2bよりも大きいことから(パルス波形W5の方が、立ち上がり直後の立ち下がりが急であるため)、媒体のピーク温度の抑制効果は大きくなり、ピーク温度の抑制効果が高くなったもとの考えられる。一方で、再生パワーが一定である勾配53があるために(該勾配53の間は再生パワーが下がらないために)、ボトム温度の抑制効果を小さくしたものと考えられる。
【0069】
これらの問題を解決すべく、更に媒体の温度抑制効果が大きいパルス波形を検討し、図6に示すパルス波形6を考えた。
【0070】
パルス波形W6は、波形の立ち上がり後の第1変曲点60(勾配62から勾配63に変わる点)と、第2変曲点61(勾配63から勾配64に変わる点)とを有している。具体的には、パルス波形W6では、波形の再生ピークパワーから第1変曲点60までの勾配62はパルス波形W2bの立ち下がり勾配よりも鋭くなっており、第1変曲点60から第2変曲点61までの勾配63はパルス波形W2bの立ち下がり勾配よりも緩やかになっており、第2変曲点61以降の勾配64はほぼ垂直となっている。
【0071】
この場合の媒体の温度抑制効果も図7(a)に示すと、パルス波形W2a、パルス波形W2bをそれぞれ用いた場合の媒体温度を示す指標T2a,T2bよりも、パルス波形W6を用いた場合の媒体温度を示す指標T6の方がグラフの左下にあることから、パルス波形W6は、パルス波形W2a,W2bよりも温度抑制効果が大きいことが分かる。
【0072】
すなわち、パルス波形W6では、その再生ピークパワーが、パルス波形W2bと同じで、さらに、該パルス波形W6の勾配62が、該パルス波形W2bよりも大きいことから(パルス波形W6の方が、立ち上がり直後の立ち下がりが急であるため)、媒体のピーク温度の抑制効果は大きくなり、ピーク温度の抑制効果が高くなったもとの考えられる。一方で、勾配63においては、パルス波形W5の勾配53とは異なり、再生パワーが低下する勾配を付けたことで、ボトム温度の上昇を抑えることができたものと考えられる。
【0073】
ここで、パルス波形W4,W5、及びW6を用いた場合の媒体温度(ピーク温度、ボトム温度)の抑制効果の評価結果を、以下の表1にまとめる。
【0074】
【表1】
【0075】
次に、パルス波形W6の場合と、パルス波形W4,W5の場合との媒体温度(ピーク温度、ボトム温度)の抑制効果を比較する。媒体温度のピーク温度、ボトム温度の好適な範囲としては、記録媒体の膜構造(膜の組成)によって異なるが、次のことが言える。
【0076】
ピーク温度は、温度上昇により膜(記録層)の磁化が無くなる温度である上記図18(a)の温度T3より小さく、アパーチャが開く(転写が可能となる)上記図18(a)の温度T1以上の範囲であることが好ましい。また、ボトム温度は、記録層の磁化が急激に小さくなる上記図18(a)の温度T2以下の範囲であること好ましい。更に、最も好ましくは、ピーク・ボトム温度共に記録層の磁化が大きい、上記図18(a)の温度T1以上でT2以下の温度範囲に含まれていることが好ましい(図7(b)参照)。
【0077】
したがって、図7(b)に示すように、パルス波形W4の場合、W6の場合よりもピーク温度が高いので、再生平均パワーが高くなった時に、記録媒体の温度が上昇し、ピーク温度が上記温度T3に到達しやすく、記録マークの劣化が生じる恐れがある。すなわち、記録マークの劣化を回避しようとすると高再生パワー時のピーク温度のマージンが小さくなる。
【0078】
一方、パルス波形W5の場合、W6の場合よりもボトム温度が高いので、再生平均パワーが高くなると記録媒体の温度が上昇し、ボトム温度が記録層の磁化が急激に小さくなる温度T2に到達しやすい。すなわち、高再生パワー時のボトム温度のマージンが小さくなる。
【0079】
したがって、記録媒体における温度特性と、各パルス波形W4〜W6におけるピーク・ボトム温度とが図7(b)に示すような関係にある時は、高再生パワー時のピーク・ボトム温度のマージンがある程度確保できる波形は波形W6であり、波形W6が、波形W4,W5よりも好適な波形であることが言える。
【0080】
以上、図7(a),(b)、及び表1より、波形の立ち下がりにおいて、最初に再生パワーを大きく低下させる勾配を有し、立ち下がりの途中から再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有すると共に、再生ピークパワーの上昇を回避するために、立ち下がり部分の最後では再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有するパルス波形が、媒体のピーク・ボトム温度を共に低下させ得る温度抑制効果の大きなパルス波形であるといえる。
【0081】
次に、図6に示すパルス波形W6に対して、波形の立ち上がり直後から第1変曲点までの時間を変化させた波形を、図8(a)のW81〜W83に示す。これらのパルス波形の再生ピークパワーは、パルス波形W6と同じ値であり、第2変曲点(811,821,831)での再生パワーも波形W6と同じ値(2.0mW)であるとする。
【0082】
ここで、パルス波形W81の第1変曲点までの期間812は、半導体レーザ照射期間の照射開始から20%の時点までであり、パルス波形W82の第1変曲点までの期間822は、半導体レーザ照射期間の照射開始から40%の時点までであり、パルス波形83の第1変曲点までの期間832は、半導体レーザ照射期間の照射開始から60%の時点までである。
【0083】
W81〜W83に示す波形を用いた場合における媒体温度の指標を示したものを図9に示す(パルス波形W81,W82,W83はそれぞれ媒体温度を示す指標T81,T82,T83に、また、波形W6は指標T6に、波形W2aは指標T2aに、波形W2bは指標T2bに対応する)。また図9は、図7と同様、横軸は媒体のピーク温度、縦軸はボトム温度を示す。また、表2には、前記のパルス波形W81〜W83を用いた場合における媒体温度(ピーク温度,ボトム温度)の抑制効果を評価した結果を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
図9、及び表2より、パルス波形W81〜W83は、従来のパルス波形W2aよりも媒体の温度抑制効果が効果が大きいことが分かる。特に、パルス波形W82,W83は、パルス波形W2bの場合と比較してボトム温度が同等であるが、ピーク温度は顕著に低いことから、パルス波形W82,W83は、パルス波形W2bの場合よりも温度抑制効果が大きいと言える。また、パルス波形W81については、ボトム温度の温度抑制効果はパルス波形W2bの場合より低いが、ピーク温度の温度抑制効果は最も高い。
【0086】
また、図8(b)のパルス波形W84,W85は、パルス波形の再生ピークパワーがパルス波形W6、又はW81等と同じであるが、第2変曲点(841,851)での再生パワーは、パルス波形W6、又はW81等の1/2の値(1.0mW)となっている。また、パルス波形W84,W85の第1変曲点までの期間(それぞれ、842,852)は、半導体レーザ照射期間の照射開始からそれぞれ40%、60%の時点である。パルス波形W84,W85を用いた場合の媒体温度を示す指標を、図9のT84,T85に示す。
【0087】
図9より、パルス波形W84,W85においても、パルス波形W2a、及びパルス波形W2bの場合より媒体の温度抑制効果が大きいことが分かる。
【0088】
一方、図示しないが、パルス波形W6、及びW81〜W85と同様に、波形の立ち下がりを3段階に分け、再生ピークパワーもパルス波形W6、及びW81〜W85と同じとし、第2変曲点での再生パワ−の値を、再生ピークパワーの37.5%(3.0mW)に設定したパルス波形では、従来から使用されているパルス波形W2aの場合よりも媒体の温度抑制効果は大きいが、パルス波形W2bの場合よりは小さくなるという結果が得られた。
【0089】
以上より、媒体の温度抑制効果が大きい、波形W6のような、波形の立ち下がりに3つの勾配を有するパルス波形としては、第1変曲点までの期間が、半導体レーザ照射期間の照射開始から40%〜60%、第2変曲点での再生パワーの値を再生ピークパワーの12.5%〜25%に設定することが望ましい。
【0090】
次に、第2変曲点での再生パワーの値を、パルス波形W6、及びW81〜W83、W84〜W85と同様に、それぞれ再生ピークパワーの25%,12.5%に設定したパルス波形W101,W102を図10に示す。この場合における、媒体の温度抑制効果を調べた。図11に、上記パルス波形W101,W102を用いた場合の媒体温度を示す指標を表す(パルス波形W101,W102は、それぞれ媒体温度を示す指標T101,T102に対応する)。
【0091】
図11より、パルス波形W101,W102の場合は、ボトム温度の抑制効果という点で、パルス波形W5、及びW2bの場合よりも、媒体の温度抑制効果があることが分かった。ここで、前記のとおり、ボトム温度の抑制効果という点では、パルス波形W5を用いた場合、パルス波形W2bを用いた場合よりも媒体の温度抑制効果が小さかったが、この時の、パルス波形W5の第2変曲点での再生パワーの値は、再生ピークパワーの37.5%であった。
【0092】
このことより、波形W6のような、波形の立ち下がりに3つの勾配を有するパルス波形としては、第1変曲点から第2変曲点までの勾配がゼロであっても、第2変曲点での再生パワ−の値を、再生ピークパワーの12.5%〜25%に設定すれば、媒体の温度抑制効果があることが分かった。
【0093】
次に、他の例として、波形の立ち上がりから第1変曲点までの勾配が、パルス波形W2bの勾配より小さく、波形立ち上がり後、変曲点を一つだけ有し、立ち下がり部分の勾配が2つの場合のパルス波形による媒体の温度変化を調べた。
【0094】
図12に示すパルス波形W121〜W124は、再生ピークパワーが6.0mWである。図13にパルス波形W121〜W124を用いた場合の媒体温度を示す指標を表す(パルス波形W121,W122,W123,W124は、それぞれ媒体温度を示す指標T121,T122,T123,T124に対応する)。また、表3には、上記のパルス波形W121〜W124を用いた場合の、媒体温度(ピーク温度、ボトム温度)の抑制効果を評価した結果を示す。
【0095】
【表3】
【0096】
図13、及び表3より、パルス波形W121〜W124は、従来のパルス波形W2aよりも媒体の温度抑制効果が大きいことが分かる。
【0097】
また、図示しないが、再生ピークパワーが7.0mWで、波形の立ち上がりから第1変曲点までの勾配がパルス波形W2bの勾配より小さく、波形立ち上がり後、変曲点を一つだけ有し、立ち下がりにおける勾配が2つの場合も、従来のパルス波形W2aの場合よりも媒体の温度抑制効果が大きいという結果が得られた。一方、再生ピークパワーを5.0mWにした場合では、従来のパルス波形W2aの場合よりも媒体の温度抑制効果が小さいという結果が得られた。
【0098】
以上より、波形の立ち下がりの勾配を2つ有する波形において、波形の立ち上がりから第1変曲点までの勾配が、パルス波形W2bの勾配よりも小さい場合のパルス波形は、再生ピークパワーをパルス波形W2bの75%以上に設定すれば、従来のパルス波形W2aを用いた場合よりも、媒体の温度抑制効果が大きくなることが分かった。
【0099】
次に、他の例として、波形の立ち上がりから第1変曲点までの勾配をゼロとした場合のパルス波形(変化量は2つ)による媒体の温度変化を調べた。
【0100】
図14に示すパルス波形W141〜W145は、第1変曲点までの期間(再生パワー一定期間)を、それぞれ、パルス波の立ち上がり開始から立ち下がり終了までの期間の80%,60%,50%,40%,20%とした場合である。図15に、パルス波形W141〜W145を用いた場合の媒体温度を示す指標を表す(パルス波形W141,W142,W143,W144は、それぞれ媒体温度を示す指標T141,T142,T143,T144に対応する)。また、表4には、上記のパルス波形W141〜W145を用いた場合の、媒体温度(ピーク温度、ボトム温度)の抑制効果を評価した結果を示す。
【0101】
【表4】
【0102】
図15、及び表4より、波形の立ち下がりの勾配を2つ有する波形において、波形の立ち上がりから第1変曲点までの勾配がゼロである場合は、第1変曲点での期間が、半導体レーザ照射期間の照射開始から60%以下であれば、従来のパルス波形W2aの場合よりも、媒体の温度抑制効果があることが分かった。特に変曲点までの期間が、半導体レーザ照射期間の照射開始から20%の場合は、パルス波形W2bの場合よりも媒体の温度抑制効果が大きいことが分かった。
【0103】
以上、表1〜表4に示す総合評価が、○、又は△であるパルス波形でパルス駆動すれば、従来から用いられているパルス波形W2aの場合よりも媒体の温度抑制効果大きくなる。
【0104】
特に、表1〜表4に示す総合評価が○であるパルス波形でパルス駆動すれば、媒体の温度抑制効果は大きくなる。
【0105】
尚、上記実施の形態では、発光デューティは50%としてパルス波形の形状を変更して媒体の温度抑制効果を図ることについて記載したが、発光デューティを50%以下とする場合においても、パルス波形の形状を適切に設定することによって媒体の温度抑制効果を向上させることが可能である。
【0106】
図16には、パルス波形W6(発光デューティ50%)と同様のパルス波形形状での発光デューティを40%にした場合の媒体温度を示す指標T6Aと、パルス波形W2aの発光デューティを40%にした場合の媒体温度の指標T2aAとを示す。これらT6AとT2aとを比較して、発光デューティを小さくする場合、パルス波形W6と同様に、波形の立ち上がり後において立ち下がりの勾配を2つ有する波形に設定した方が、媒体の温度抑制効果が大きいことが分かる。
【0107】
【発明の効果】
本発明に係る光磁気記録媒体再生方法は、以上のように、光磁気記録媒体に照射されるレーザ光を、半導体レーザを駆動するパルス波形の立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて短くなるように設定されたパルス波形を用いてパルス駆動することを特徴としている。
【0108】
それゆえ、半導体レーザのパルス波形は、その立ち上がり時間が短いため、記録媒体の温度上昇が発生する時間が短くなり、記録媒体のピーク温度を低下させることができる。さらに、パルス波形の立ち下がり時間が長くなるため、温度減少に移行する時間が長くなり、記録媒体のボトム温度が上昇することをも回避できる。
【0109】
これにより、記録媒体の温度上昇を抑制することができ、ピーク温度を低下させることで記録マ−クの劣化を防ぐだけではなく、ボトム温度の上昇を回避することで媒体ノイズの発生も防ぐことができるという効果を奏する。
【0110】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の再生パワーのピーク値に至るまでの立ち上がりの勾配が一定であることが好ましい。
【0111】
それゆえ、パルス波形の再生パワーのピーク値に至るまでの、立ち上がりに掛かる時間を短くすることができ、特に記録媒体温度のピーク値に対して温度上昇抑制効果を高めることができるという効果を奏する。
【0112】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の再生パワーのピーク値においては、該ピーク値の前後の立ち上がりおよび立ち下がりの勾配が何れも直線的であることが好ましい。
【0113】
それゆえ、再生パワーが急峻に上昇してピーク値に到達した後、急峻に再生パワーが低下するため、パルス波形の再生パワーがピーク値となる付近において、該ピーク値に近い値の再生パワーを有する時間が極めて短くなり、記録媒体の温度が上昇する時間を短くすることができる。これにより、特に記録媒体温度のピーク値に対して温度上昇抑制効果を高めることができるという効果を奏する。
【0114】
また、上記光磁気記録媒体再生方法では、上記パルス波形の立ち下がりにおいて、最初に再生パワーを大きく低下させる勾配を有し、立ち下がりの途中から、再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有すると共に、立ち下がりの最後では、再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有することが好ましい。
【0115】
それゆえ、パルス波形の立ち下がりの最初に、再生パワーを大きく低下させる勾配を有することで、前記と同様に媒体のピーク温度上昇を抑制することができる。また、立ち下がりの途中からは、再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有し、さらに、立ち下がりの最後では再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有することで、立ち下がり時間を短くすることができ、記録媒体のボトム温度が上昇することを抑制することができる。これにより、記録媒体温度のピーク値およびボトム値の両方に対して温度上昇抑制効果を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示すものであり、光磁気記録媒体再生装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】 上記光磁気記録媒体再生装置において半導体レーザのパルス駆動に用いられるパルス波形を示す波形図であり、図2(a)は従来のパルス波形を示し、図2(b)は本発明におけるパルス波形の一例を示す。
【図3】 上記光磁気記録媒体再生装置においてレーザ光を照射される記録媒体の温度変化を示す説明図である。
【図4】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図5】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図6】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図7】 図7(a)は、上記図2(a),(b),図4〜6に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度のピーク値およびボトム値を示す説明図であり、図7(b)は図4〜6に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度変化を再生平均パワーが低い場合と高い場合とで比較した説明図である。
【図8】 図8(a),(b)は、本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図9】 上記図8(a),(b)に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度のピーク値およびボトム値を示す説明図である。
【図10】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図11】 上記図10に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度のピーク値およびボトム値を示す説明図である。
【図12】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図13】 上記図12に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度のピーク値およびボトム値を示す説明図である。
【図14】 本発明におけるパルス波形の一例を示す波形図である。
【図15】 上記図14に示すパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射した場合の記録媒体の温度のピーク値およびボトム値を示す説明図である。
【図16】
異なるパルス波形での記録媒体の温度抑制効果を、異なる発光デューティにおいて比較した結果を示す説明図である。
【図17】 MSR媒体におけるレーザ光照射部分における温度勾配と、記録媒体表面に発生するアパーチャとの関係を示す説明図である。
【図18】 図18(a)は、MSR媒体における温度と磁化との関係を示す説明図であり、図18(b)は、パルス駆動されたレーザ光を照射される記録媒体の温度変化を示す説明図である。
【図19】 レーザ駆動電流と光出力強度の関係を示す説明図である。
【図20】 図20(a)は従来におけるパルス波形を示し、図20(b)は従来のパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射された記録媒体の温度変化を示す説明図である。
【図21】 図21(a)は従来におけるパルス波形において発光デューティの違う複数のパルス波形を示し、図21(b)はこれらのパルス波形によって駆動されるレーザ光を照射された記録媒体の温度変化を示す説明図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザ
5 光磁気記録媒体
16 高周波電流発生部
192 駆動電流(高周波電流)
Claims (5)
- 第1の温度<第2の温度<第3の温度の関係にあるとき、第1の温度未満で面内磁化膜であり、上記第1の温度以上で垂直磁化膜となる再生層と、上記第1の温度から第3の温度までの温度範囲で垂直磁化膜であり、上記第1の温度と上記第2の温度での磁化が等しくなる記録層とを有する光磁気記録媒体に、パルス駆動された半導体レーザからのレーザ光を照射して情報の再生を行う光磁気記録媒体再生方法において、
光磁気記録媒体に照射されるレーザ光を、半導体レーザを駆動するパルス波形の立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて短くなるように設定されたパルス波形を用いてパルス駆動することを特徴とする光磁気記録媒体再生方法。 - 上記パルス波形の再生パワーのピーク値に至るまでの立ち上がりの勾配が一定であることを特徴とする請求項1記載の光磁気記録媒体再生方法。
- 上記パルス波形の再生パワーのピーク値においては、該ピーク値の前後の立ち上がりおよび立ち下がりの勾配が何れも直線的であることを特徴とする請求項1または2に記載の光磁気記録媒体再生方法。
- 上記パルス波形の立ち下がりにおいて、最初に再生パワーを大きく低下させる勾配を有し、立ち下がりの途中から、再生パワーの低下を緩やかにする勾配を有すると共に、立ち下がりの最後では、再生パワーをほぼ垂直に立ち下げる勾配を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の光磁気記録媒体再生方法。
- 第1の温度<第2の温度<第3の温度の関係にあるとき、第1の温度未満で面内磁化膜であり、上記第1の温度以上で垂直磁化膜となる再生層と、上記第1の温度から第3の温度までの温度範囲で垂直磁化膜であり、上記第1の温度と上記第2の温度での磁化が等しくなる記録層とを有する光磁気記録媒体に、パルス駆動された半導体レーザからのレーザ光を照射して情報の再生を行う光磁気記録媒体再生装置において、
光磁気記録媒体に照射されるレーザ光が、半導体レーザを駆動するパルス波形の立ち上がり時間が立ち下がり時間に比べて短くなるように設定されたパルス波形を用いてパルス駆動されるようになっていることを特徴とする光磁気記録媒体再生装置。
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