JP3784556B2 - インサートカッタ付きケーシングビット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アウタカッタ及びインナカッタのほかインサートカッタをケーシングパイプに取り付けて構成され、オールケーシング工法に使用されるインサートカッタ付きケーシングビットに関する。
【0002】
【従来の技術】
土木、建築工事で場所打ち杭や連続地中壁等の地中構造物を施工するのに使用する建設機械として、大口径鋼管杭や鋼管類等の管状ケーシングを回転させながら地中に押し込んで縦穴を掘削する縦穴掘削用の地中掘削装置が従来から一般的に知られている。管状ケーシングは、互いに連結可能な単位長さの複数のケーシングパイプで構成され、特に先端のケーシングパイプには、その底部に地山掘削用の種々のカッタを取り付けている。このようにケーシングパイプにカッタを取り付けて構成されるカッタビットをケーシングビットと称する。このケーシングビットは、通常の地山だけでなく、岩石等を含む岩盤や鉄筋コンクリート構造物等の地中障害物がある硬質の地山も掘削する。
【0003】
従来から一般的に知られている縦穴掘削用の地中掘削装置は、こうしたケーシングビットを含む複数のケーシングパイプと、このケーシングパイプを回転させながら地中に押し込むことができる回転押し込み装置とを備え、ケーシングパイプを回転押し込み装置により把持して回転させながら地中に押し込んでケーシングビットで円形の縦穴を掘削する。この地中掘削装置では、最初に、管状ケーシングの先端部をなすケーシングビットで縦穴を掘削してこれを地中に建て込む。次いで、このケーシングビットに、カッタを取り付けていないケーシングパイプを適宜継ぎ足して穴壁の崩壊を防止しながら縦穴の掘削を続行し、これらの各ケーシングパイプを順次地中に建て込んで行く。また、縦穴の掘削過程でケーシングビット内に溜った土砂は、ハンマーグラブで地上に搬出する。こうした方法で縦穴を掘削する工法をオールケーシング工法と称する。このオールケーシング工法で縦穴を掘削した後は、通常、ケーシング内に鉄筋かごを入れ、コンクリートミルクを注入するとともに、ケーシングビットを含むケーシングパイプを地上に引き上げて回収し、鉄筋コンクリートの地中構造物を構築する。
【0004】
オールケーシング工法に使用されるケーシングビットの一つとして、従来、インサートカッタ付きケーシングビットが知られている。このインサートカッタ付きケーシングビットは、通常取り付けられるアウタカッタ及びインナカッタのほか、ケーシングパイプ内周面の内側に溝を掘削するためのインサートカッタと称するカッタをケーシングパイプに着脱可能又は固定的に付設して構成されたもので、その例として、特開平3ー66892号公報及び特開平4ー319195号公報に記載のケーシングビットを挙げることができる。このインサートカッタ付きケーシングビットを実際に使用する場合、インサートカッタを複数個取り付けて近接させるように配置していた。本発明は、こうしたインサートカッタ付きケーシングビットにおいてインサートカッタの耐久性を向上させるように改良しようとするものである。
【0005】
そこで、後述する本発明の技術内容や技術課題の理解を容易にするため、この実際に使用しているインサートカッタ付きケーシングビットを従来の技術として想定し、その技術内容を図3乃至図5を用いて説明する。図3は、一部を破断してして示す従来例のインサートカッタ付きケーシングビットの正面図、図4は、図3のインサートカッタ付きケーシングビットの矢印A−A方向の矢視図、図5は、岩盤掘削時の状態を示す図3のインサートカッタ付きケーシングビットの垂直断面図である。
【0006】
これらの図において、1はオールケーシング工法に使用される従来例のインサートカッタ付きケーシングビット、1aは地山掘削用の種々のカッタが取り付けられる先端のケーシングパイプ、2ー1,2−2はケーシングパイプ1aの下端部内周面に溶接により取り付けられたインサートカッタ、3はケーシングパイプ1aの下端部に外周寄りにケーシングパイプ1aの外周面よりも若干外方に突出するように溶接により取り付けられたアウタカッタ、4はケーシングパイプ1aの下端部に内周寄りにケーシングパイプ1aの内周面よりも若干内方に突出するように溶接により取り付けられたインナカッタである。
【0007】
アウタカッタ3は、インナカッタ4に対して相対的にケーシングパイプ1aの外周部位の地山を掘削するとともに、ケーシングパイプ1aの外周面より外側も若干掘削してケーシングパイプ1aを地中に押し込む際のケーシングパイプ1aの外周面と地山との摩擦を軽減する。インナカッタ4は、アウタカッタ3に対して相対的にケーシングパイプ1aの内周部位の地山を掘削するとともに、ケーシングパイプ1aの内周面より内側も若干掘削してケーシングパイプ1aを地中に押し込む際のケーシングパイプ1aの内周面と地山との摩擦を軽減する。これらのアウタカッタ3及びインナカッタ4は、それぞれ、ケーシングパイプ1aの周方向に間隔を置いて多数設けられて多条配置され、カッタ先端部(刃先)が同じ高さになるように配置されている。
【0008】
インサートカッタ2−1,2−2は、ケーシングパイプ1aの周方向に若干の間隔を置いて互いに近接するように配置され、インナカッタ4よりも更にケーシングパイプ1aの内周面の内側を掘削する。ケーシングパイプ1aにインサートカッタを取り付ける場合、本従来例では、2個のインサートカッタ2−1,2−2を取り付けているが、3個以上取り付ける場合もある。インサートカッタは、従来の技術について説明する場合、こうした複数個のインサートカッタを特に区別しないときや総称するときには、以下、符号2を付けて表わす。オールケーシング工法に使用される本従来例のインサートカッタ付きケーシングビット1は、メインのカッタとなる多数のアウタカッタ3及び多数のインナカッタ4と、複数のインサートカッタ2とをケーシングパイプ1aに取り付けて構成される。
【0009】
複数のインサートカッタ2は、従来の技術ではカッタ先端部が何れも同じ高さになるように配置されているとともに、そのカッタ先端部は、アウタカッタ3やインナカッタ4のカッタ先端部よりも若干上方に位置するように段差l1 を付けて配置されている。インサートカッタ2は、ケーシングパイプ1aの内周面に沿うように溝5を掘削する。この溝5は、アウタカッタ3及びインナカッタ4で掘削した掘り屑をケーシングパイプ1aの内周面に沿って上方に円滑に排出するように導く働きをする。また、ケーシングビット1で地山を掘削すると、図5に示すようにケーシングパイプ1aの内側に円筒状の地盤Eaが掘り残されるため、この地盤Eaをハンマーグラブで掴んで地上に搬出する作業を行うが、溝5は、こうした排土作業を行う際にハンマーグラブのシェルを挿入できるようにてシェルの食い込み性を良好にし、排土作業の効率を向上させる働きもする。
【0010】
インサートカッタ2は、こうした溝5を掘削するための補助的なカッタであるから、3個以上設ける場合でも、アウタカッタ3やインナカッタ4の半分以下とこれらの数より少ない数しか設けられない。そのため、インサートカッタ2は、前述したようにカッタ3,4に対し段差l1 を付けてこれらの上方に配置することにより、アウタカッタ3やインナカッタ4で地山を先行掘削するようにして、溝5を掘削する周辺の地盤を事前に緩め、溝5の掘削時のインサートカッタ2の負担を軽減するようにしている。
【0011】
インサートカッタ2を複数個設ける場合、インサートカッタ2−1,2−2を対向する位置に配置する等、複数個の各インサートカッタ2の間隔をカッタ3,4と同様に等間隔に配置すると、ケーシングパイプ1a内の有効作業空間が大きく狭まって、ハンマーグラブを降下させて溝5に挿入する際には、インサートカッタ2がハンマーグラブのシェルの先端部と干渉し、また、掘削した縦穴に鉄筋コンクリートを打設しながらケーシングパイプ1aを引き上げる際には、インサートカッタ2が鉄筋かごに引き掛かってケーシングパイプ1aと鉄筋かごが共上がりするというような危惧が大きい。特に、鉄筋かごがインサートカッタ2と共に一旦引き上げられると、コンクリートが固化しつつあるため、元位置に降下する可能性は低く、地中構造物を構築する上で致命的な問題をもたらす。こうしたことから、従来使用したインサートカッタ付きケーシングビットでは、インサートカッタ2を複数個配置する場合に各インサートカッタ2を互いに近接させてケーシングパイプ1aの周方向の一部の領域に片寄せて配置するようにすることにより、ケーシングパイプ1a内の有効作業空間が大きく狭まらないようにして、前記のような問題が発生するのを防ぐようにしていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
オールケーシング工法に使用されるインサートカッタ付きケーシングビットでは、こうのようにインサートカッタをケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置することが作業を円滑に進める上で不可欠である。従来例のインサートカッタ付きケーシングビットでは、こうしたインサートカッタの配置を前提にして、前述したとおり、複数のインサートカッタをカッタ先端部が何れも同じ高さになるように配置するようにしている。こうした複数のインサートカッタで地山を掘削する場合、掘削の第1段階では、ケーシングパイプの回転方向に向かって先行する側のインサートカッタで主として掘削し、次いで、この先行側のインサートカッタが摩耗又は破損した段階において、先行側のインサートカッタに後続する後続側のインサートカッタにより、先行側のインサートカッタを支援するようにして掘削し、以下同様にして、順次、後続するインサートカッタで支援して掘削するようにしている。
【0013】
従来の技術では、このように、先行側のインサートカッタが損傷する都度後続側のインサートカッタで支援して掘削するようにするという設計思想のもとに、複数のインサートカッタをカッタ先端部が同じ高さになるように配置するようにしていた。しかるに、こうした設計思想で構成されたインサートカッタ付きケーシングビットでは、先行する側のインサートカッタが損傷するするまでは、先行側のインサートカッタで専ら地山の掘削を行い、後続側のインサートカッタは、ほとんど掘削に関与しないため、先行側のインサートカッタの超硬チップによる切削量が極端に多くなって、アウタカッタやインナカッタのようには各超硬チップが均一に摩耗しない。そのため、特に、岩盤や鉄筋コンクリート構造物等の地中障害物がある硬質の地山を掘削する場合には、超硬チップの摩耗が急速に進行して、超硬チップが偏摩耗したり欠けたりする事態が多発することとなる。
【0014】
このように、従来の技術では、インサートカッタを複数設けているにもかかわらず、アウタカッタやインナカッタとは異なり一つのカッタに過大な負担をかけているため、特に、硬質の地山を掘削する場合、先行側のインサートカッタが短時間に損傷し、しかる後、後続側のインサートカッタも同様にして短時間で損傷するというように、複数のインサートカッタが短時間で次々に損傷することとなって、アウタカッタやインナカッタが未だ切削可能な能力を十分保持しているにもかかわらず、インサートカッタだけが切削能力を喪失することとなる。その結果、従来の技術に係るインサートカッタ付きケーシングビットは、その寿命がインサートカッタの寿命で定まることとなって、結局、耐久性が著しく低下したものとなり、インサートカッタの交換を頻繁に行わなければならなくなる。
【0015】
この出願の発明は、こうした従来の技術にみられる問題を解消しようとするものであって、その技術課題は、複数のインサートカッタをケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置していても、従来の技術のようには耐久性が低下しないインサートカッタ付きケーシングビットを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のこうした技術課題は、
ケーシングパイプの外周部位の地山を掘削しケーシングパイプ外周面より外側も掘削する多数のアウタカッタと、ケーシングパイプの内周部位の地山を掘削しケーシングパイプ内周面より内側も掘削する多数のインナカッタと、ケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置されインナカッタよりも更にケーシングパイプ内周面の内側を掘削する複数のインサートカッタとをケーシングパイプに取り付けて構成され、オールケーシング工法に使用されるインサートカッタ付きケーシングビットにおいて、
掘削時のケーシングパイプの回転方向に向かって先行する側のインサートカッタが後続する側のインサートカッタよりもカッタ先端部が上方に位置するように複数のインサートカッタを配置して、複数のインサートカッタの各掘削量が同等になるようにしたこと、
により達成される。
【0017】
本発明のインサートカッタ付きケーシングビットは、従来の技術と同様、複数のインサートカッタをケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置してケーシングパイプ内の有効作業空間が大きく狭まらないようにしており、これにより、インサートカッタでケーシングパイプ内周面の内側に掘削された溝にハンマーグラブを挿入する際にそのシェルがインサートカッタと干渉したり、鉄筋コンクリートの打設時にケーシングパイプを引き上げる際にインサートカッタが鉄筋かごに引き掛かったりする事態を防止できるようにしている。このように、本発明のインサートカッタ付きケーシングビットは、従来の技術の利点を保持できるように複数のインサートカッタをケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置するようにした従来の技術と同様の手段を採用していても、前記のように先行する側のインサートカッタが後続する側のインサートカッタよりもカッタ先端部が上方に位置するように複数のインサートカッタを配置して、複数のインサートカッタの各掘削量が同等になるようにした本発明独自の手段を採用しているので、従来の技術のように一つのインサートカッタに過大な負担がかかって耐久性が低下するようなことはない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が実際上どのように具体化されるのかを示す具体化例を図1及び図2に基づいて説明することにより、本発明の実施の形態を明らかにする。図1は、一部を破断してして示すの本発明の具体化例のインサートカッタ付きケーシングビットの正面図、図2は、図1のインサートカッタ付きケーシングビットの矢印B−B方向の矢視図である。
【0019】
これらの図において、11は、オールケーシング工法に使用される本発明の具体化例のインサートカッタ付きケーシングビット、11aはケーシングパイプ1aと同様の先端のケーシングパイプ、13はこのケーシングパイプ11aの外周部位の地山を掘削しケーシングパイプ11aの外周面より外側も掘削する、アウタカッタ3と同様のアウタカッタ、14はケーシングパイプ11aの内周部位の地山を掘削しケーシングパイプ11aの内周面より内側も掘削する、インナカッタ4と同様のインナカッタである。アウタカッタ13及びインナカッタ14は、それぞれ、アウタカッタ3及びインナカッタ4と同様の構造及び機能を有し、アウタカッタ3及びインナカッタ4と同様の態様で、溶接によりケーシングパイプ11aに多数取り付けられて多条配置されており、従来例と特に変わるところはない。アウタカッタ13は、インナカッタ14に比べて掘削外径が大きいため、インナカッタ14よりも多数設けられ、アウタカッタ13とインナカッタ14の数量比は、図1及び図2に示す例では2:1になっているが、地盤の条件によっては、1:1に変えることができる。これらアウタカッタ13とインナカッタ14とをケーシングパイプ1aの下端部に取り付ける場合、この例では等間隔で配置するようにしている。
【0020】
12−1,12−2は、インナカッタ14よりも更にケーシングパイプ11aの内周面の内側を掘削するインサートカッタであり、従来例のインサートカッタ2と同様、ケーシングパイプ11aの内周面に沿うように溝5を掘削して従来例のインサートカッタ2と同様の働きをする。インサートカッタ12−1は、掘削時のケーシングパイプ11aの回転方向に向かって先行する先行側のインサートカッタであって従来例のインサートカッタ2−1に対応し、インサートカッタ12−2は、インサートカッタ12−1に後続する後続側のインサートカッタであってインサートカッタ2−2に対応する。図1及び図2に示す例では、従来例と同様、2個のインサートカッタ12−1,12−2を取り付けているが、3個以上取り付けてもよい。こうした複数個のインサートカッタを特に区別しないときや総称するときには、これに符号12を付けて表わす。
【0021】
インサートカッタ12をこのように複数個配置する場合、従来例と同様、ハンマーグラブを溝5に挿入する際にそのシェルがインサートカッタ12と干渉したり、鉄筋コンクリートの打設時にケーシングパイプ1aを引き上げる際にインサートカッタ12が鉄筋かごに引き掛かったりする事態を防止するため、各インサートカッタ12を互いに近接させてケーシングパイプ11aの周方向の一部の領域に片寄せて配置して、ケーシングパイプ11a内の有効作業空間が大きく狭まらないようにしている。図に示す例では、インサートカッタ12−1及びインサートカッタ12−2の中心が30° の中心角の円弧の両端に位置するようにこれらを接近させて配置しているが、インサートカッタ12を3個以上取り付ける場合も、このように各インサートカッタ12を互いに近接させてケーシングパイプ11aの周方向の一部の領域に片寄せて配置する。すなわち、前記の事態を防止するため、各インサートカッタ12を、その中心が最大でも90° の中心角の円弧状の領域内に位置するように配置するが、望ましくは、60° の中心角の円弧状の領域内に位置するように配置する。
【0022】
図1において、l1 はメインのカッタであるアウタカッタ13及びインナカッタ14と後続側のインサートカッタ12−2との段差を示し、l2 は先行側のインサートカッタ12−1と後続側のインサートカッタ12−2との段差を示すものである。図1に示すように、後続側のインサートカッタ12−2は、カッタ先端部がメインのカッタ13,14よりも若干の段差l1 分だけ上方に位置するように配置され、先行側のインサートカッタ12−1は、カッタ先端部が更に後続側のインサートカッタ12−2よりも若干の段差l2 分だけ上方に位置するように配置されている。メインのカッタ13,14の岩盤への食い込みを良好にするためは、カッタ先端部が低い方の後続側のインサートカッタ12−2は、そのカッタ先端部がメインのカッタ13,14のカッタ先端部よりも上方に位置するように配置するのが好ましいが、その場合でも、最大で10mm程度上方に位置するように配置するのが好ましく、ここに示す例では、段差l1 の値を選定する場合、10mm以下の適当な値の中から、メインのカッタ13,14の岩盤への食い込み性が悪化しない限度で適宜の値を選定するようにしている。
【0023】
この10mm以下の数値の意義について以下に述べる。前記のようにカッタ先端部が上方に位置するようにインサートカッタ12を配置したインサートカッタ付きケーシングビットにより地山を掘削した場合、ケーシングパイプ1aの内側に掘り残される円筒状の地盤Eaは、インナカッタ14で径が定まる大径の円筒状下方部分と、インサートカッタ12で径が定まるその円筒状下方部分より若干小径の円筒状上方部分とを繋げた形状になる。こうした形状の円筒状の地盤Eaは、掘削時に小径の円筒状上方部分の下端部に亀裂ができて切断されることが多いが、ときには、大径の円筒状下方部分の下端部に亀裂ができて切断されることもある。こうした場合、切断された円筒状の地盤Eaの下部には、大径の円筒状下方部分で鍔部が形成されるため、円筒状の地盤Eaの切断片をハンマーグラブで掴んで引き上げしようとしても、その鍔部がインサートカッタ12に引掛ってそのまま引き上げることはできない。そのため、ここに示す例では、ハンマーグラブで掴んだ地盤Eaの切断片を傾けてインサートカッタ12に強く押し当てることにより、鍔部を破壊して除去するようにしているが、こうしたことを可能にするには、鍔部の厚みがある程度薄くなければならない。段差l1 の値を10mm以下にしたのは、地盤Eaが岩盤であっても前記のハンマーグラブの傾動操作で容易に破壊できる厚みの薄い鍔部を形成し得るようにするためである。
【0024】
先行側のインサートカッタ12−1は、前述したように、カッタ先端部を後続側のインサートカッタ12−2よりも段差l2 分だけ上方に位置させるように配置するが、段差l2 の値は、岩盤掘削する際の1回転当たりケーシングビット11の掘削量(掘削深さ)の半分程度に設定する。例えば、岩盤掘削する際の1回転当たりケーシングビット11の掘削量が20mmであるとした場合、段差l2 は10mmに設定する。その結果、ケーシングビット11での掘削時における溝5の掘削は、先行側のインサートカッタ12−1と後続側のインサートカッタ12−2とで掘削量20mmの半分ずつを分担して受け持つことができる。
【0025】
インサートカッタ12を3個設ける場合には、相対的に先行する各インサートカッタ12を、隣接する後続のインサートカッタ12に対してそれぞれl2 分だけ上方に位置させるようにする。前記のようにケーシングビット11の掘削量が20mmであるとした場合においてこのようにインサートカッタ12を3個設けるときには、段差l2 は、20mm×1/3すなわち7mmに設定する。その結果、溝5の掘削は、3個のインサートカッタ12で掘削量20mmの1/3ずつを均等に分担して受け持つことができる。こうした段差l2 の設定量は、掘削する岩盤の性状によって多少の差はあるので、±10%程度変動させることができる(例えば、インサートカッタ12が3個のときには、インサートカッタ12の掘削量を正確に1/3ずつとしないで、30%、33%、36%と差を付けて設定することができる。)。
【0026】
以上のように、相対的に先行する側のインサートカッタ12が後続する側のインサートカッタ12よりもカッタ先端部が上方に位置するように複数のインサートカッタ12を配置して、複数のインサートカッタ12の各掘削量が同等になるようにしたため、掘削当初から複数のインサートカッタ12で掘削量を均等に分担して同時掘削を行うことができて、従来の技術のように一つのカッタに過大な負担がかかるようなことはない。そのため、複数のインサートカッタ12をケーシングパイプ11aの周方向の一部の領域に片寄せて配置していても、硬質の地山を掘削する場合に、従来の技術のようにインサートカッタ12が短時間に損傷する弊害は生じず、アウタカッタ13やインナカッタ14が未だ切削可能な能力を十分保持しているにもかかわらず、インサートカッタ12だけが切削能力を喪失するというような事態も起こらない。したがって、従来の技術のようには耐久性が低下しないインサートカッタ付きケーシングビットが得られる。その結果、インサートカッタ12の交換を従来の技術のように頻繁に行う必要はなくなってオールケーシング工法の施工能率を格段に向上させることができる。
【0027】
以上述べた例では、インサートカッタ12をケーシングパイプ11aに溶接で取り付けるようにしているが、本発明は、例えば前記特開平4ー319195号公報に記載されているような、インサートカッタ12をケーシングパイプ11aにボルト等で着脱可能に取り付けるようにしたインサートカッタ付きケーシングビットにも適用することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、多数のアウタカッタと多数のインナカッタと、ケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置されインナカッタよりも更にケーシングパイプ内周面の内側を掘削する複数のインサートカッタとをケーシングパイプに取り付けて構成され、オールケーシング工法に使用されるインサートカッタ付きケーシングビットにおいて、「掘削時のケーシングパイプの回転方向に向かって先行する側のインサートカッタが後続する側のインサートカッタよりもカッタ先端部が上方に位置するように複数のインサートカッタを配置して、複数のインサートカッタの各掘削量が同等になるようにした」ので、本発明によれば、複数のインサートカッタをケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置していても、インサートカッタが短時間に損傷する弊害は生じず、従来の技術のようには耐久性が低下しないインサートカッタ付きケーシングビットが得られる。その結果、インサートカッタの交換を従来の技術のように頻繁に行う必要はなくなってオールケーシング工法の施工能率を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一部を破断してして示すの本発明の具体化例のインサートカッタ付きケーシングビットの正面図である。
【図2】図1のインサートカッタ付きケーシングビットの矢印B−B方向の矢視図である。
【図3】一部を破断してして示す従来例のインサートカッタ付きケーシングビットの正面図である。
【図4】図3のインサートカッタ付きケーシングビットの矢印A−A方向の矢視図である。
【図5】岩盤掘削時の状態を示す図3のインサートカッタ付きケーシングビットの垂直断面図である。
【符号の説明】
11 ケーシングビット
11a ケーシングパイプ
12−1 先行側のインサートカッタ
12−2 後続側のインサートカッタ
13 アウタカッタ
14 インナカッタ
l1 メインのカッタと後続側のインサートカッタとの段差
l2 先行側のインサートカッタと後続側のインサートカッタとの段差
Claims (1)
- ケーシングパイプの外周部位の地山を掘削しケーシングパイプ外周面より外側も掘削する多数のアウタカッタと、ケーシングパイプの内周部位の地山を掘削しケーシングパイプ内周面より内側も掘削する多数のインナカッタと、ケーシングパイプの周方向の一部の領域に片寄せて配置されインナカッタよりも更にケーシングパイプ内周面の内側を掘削する複数のインサートカッタとをケーシングパイプに取り付けて構成され、オールケーシング工法に使用されるインサートカッタ付きケーシングビットにおいて、掘削時のケーシングパイプの回転方向に向かって先行する側のインサートカッタが後続する側のインサートカッタよりもカッタ先端部が上方に位置するように複数のインサートカッタを配置して、複数のインサートカッタの各掘削量が同等になるようにしたことを特徴とするインサートカッタ付きケーシングビット。
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