JP3784534B2 - 新規な癌転移マーカー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌転移の検出方法およびそれに用いるキットならびに転移癌細胞の除去剤などに関する。
【0002】
【従来の技術】
癌細胞の増殖には、種々のホルモンを含む増殖因子が影響しており、癌細胞自身が種々のホルモンを含む増殖因子のレセプターを有していることによって、癌細胞は、無限の増殖能を獲得している。従来から、様々なホルモンを含む増殖因子およびそのレセプターが種々の癌細胞で検出されており、癌細胞の増殖機構における前記増殖因子およびそのレセプターの役割が研究されている。また、診断および治療に有用な方法が提供され実用化されている。
【0003】
なかでもエストロゲンおよびそのレセプター〔Estrogen receptor (以下、ERという)〕は、臨床応用のすすんでいる例であり、特に、ERの検出、およびER結合薬剤の投与〔例えば、抗ホルモン療法としてタモキシフェン(Tamoxifen) の投与など〕は、乳癌の診断治療において、今日さかんに行なわれている〔癌と化学療法、第23巻、第678 頁(1996)〕。
【0004】
癌の治療においては、いかに早期に癌の転移を検出し、適切な治療を行うか、あるいは高感度な検査によって、癌の転移の疑いのある患者の症例に対して正確な判断を下すこと、および実際には癌の転移のない患者(誤診断をうけた患者あるいは実際には転移はないが、現在の診断法では転移の可能性が否定できない患者)に対する毒性の強い抗癌剤の投与をいかに抑制するかという点が、最も重要な課題である。
【0005】
従って、従来の細胞学的および組織学的な病理検査方法などでは検出できない微小な転移癌細胞を検出するための高感度かつ癌細胞特異的なマーカーおよび検出方法が求められている。
【0006】
前記のような課題を解決するために、現在まで、従来の細胞学的および組織学的な病理検査方法などでは検出できないような微小な転移癌細胞を検出するための種々のマーカーおよび検出方法が検討されている。例えば、前立腺癌の微小転移に対しては、前立腺特異抗原のmRNAをマーカーとして使用することが検討され、リンパ節、末梢血、尿を検体としてRT-PCR法などにより検出する方法が検討されている〔キャンサー リサーチ(Cancer Research )、第55巻、第5350〜5354頁(1993)〕。また、乳がんに対しては、EGF レセプターやサイトケラチン19または20のmRNAをマーカーとして使用することが同様に検討されている〔ジャーナル オブ クリニカル オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)、第12巻、第475 〜482 頁(1994)〕。さらに、大腸癌に対しては、腫瘍胎児抗原のmRNAをマーカーとして使用することが検討されている〔キャンサー リサーチ(Cancer Research )、第55巻、第3417〜3420頁(1995)〕。
【0007】
しかしながら、前記種々のマーカーを使用することによって、ある程度の感度で転移癌細胞を検出することはできるが、多種の癌に共通して使用できるマーカーではなく、さらに最大の欠点として、健常者の末梢血等の循環体液や排泄体液中でも検出されてしまうことが大きな問題点であり、前記マーカーの臨床応用を不可能にさせる大きな原因であった〔ジャーナル オブ クリニカル オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)、第13巻、第2769〜2775頁(1995)〕。
【0008】
その他、前記癌増殖機構の研究から現在注目されているパラチロイドホルモン(以下、PTHrP という)、ガストリン放出ペプチド(以下、GRP という)、ニューロメジンなどの異所産生ホルモンおよびそのレセプターに関しても、癌組織および培養細胞だけの検討に終わり、癌転移のマーカーに成りうるかどうかは全く検討されていない〔ブリティッシュ ジャーナル オブ キャンサー(British Journal of Cancer )、第76巻、第1095〜1098頁(1997)、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry )、第269 巻、第8596〜8603頁(1994)、肺癌、第15巻、第341 〜354 頁(1996)〕。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の目的は、癌転移を特異的に検出することができる方法およびそれに用いるキットを提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、転移癌細胞を体内から除去し、癌の転移を予防、阻止する転移癌細胞の除去剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
従来、ボンベシン様ペプチドホルモンのレセプター遺伝子の発現は種々の肺癌細胞のみで調べられており、他の癌細胞ならびに人体の排泄物および循環体液中での該遺伝子の発現の有無については何ら報告はない。しかしながら、本発明者らは、癌細胞、健常者および癌患者由来の試料での該ボンベシン様ペプチドホルモンレセプター遺伝子の発現について鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、該ボンベシン様ペプチドホルモンレセプターの1種であるニューロメジンBレセプター遺伝子が、健常者の血中では全く発現しておらず、転移の診断をされた癌患者の末梢血中で顕著に発現していること、さらに、該遺伝子の発現の特異性は、膜貫通ドメインの2および/または3を含む領域の発現を測定したときに最も高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕生体試料におけるニューロメジンBレセプター遺伝子のmRNAの発現を検出する癌転移の検出方法であって、該ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAの発現を検出することを特徴とする癌転移の検出方法、
〔2〕生体試料が、原発癌の部位以外の生体試料である前記〔1〕記載の癌転移の検出方法、
〔3〕配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選択された塩基配列を有するプライマーおよび/またはプローブを用いる、前記〔1〕又は〔2〕記載の癌転移の検出方法、
〔4〕プライマーが、配列番号:7,8,9,11および12からなる群より選択される塩基配列からなるプライマーである、前記〔3〕記載の癌転移の検出方法、
〔5〕プローブが、配列番号:10または13の塩基配列からなるプローブである、前記〔3〕記載の癌転移の検出方法、
〔6〕 ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3の発現を検出するための核酸を含んでなる癌転移の検出キットであって、前記核酸が、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対および/または該mRNAを検出するためのプローブである、癌転移の検出キット、
〔7〕 ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対および/または該mRNAを検出するためのプローブが、配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選ばれた塩基配列を有する前記〔6〕記載の癌転移の検出キット、
〔8〕 ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対が、一方が配列番号:7および11から、他方が配列番号:8、9および12からそれぞれ選択された配列からなるプライマーの組み合わせである、前記〔6〕または〔7〕記載の癌転移の検出キット、並びに
〔9〕 ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを検出するためのプローブが、配列番号:10または13で示される配列を有する、前記〔6〕〜〔8〕いずれか記載の癌転移の検出キット、
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。
【0014】
本発明の癌転移の検出方法は、検体におけるニューロメジンBレセプターの発現を検出することによって行なうことができる。
【0015】
本明細書において「癌」とは、悪性腫瘍を意味し、癌腫および肉腫の両方を含む。本明細書において、「癌の転移」とは、原発癌の位置から離れた身体の部位に癌が出現することを意味する。例えば、胃癌の場合、原発癌から離れた胃の部位に新たに癌が出現すること、および胃に原発癌が存在し、胃以外の臓器または組織に癌が出現することをいう。
【0016】
本発明の癌転移の検出方法は、前記したように、検体中のニューロメジンBレセプターの発現を測定することに1つの大きな特徴がある。検体中のニューロメジンBレセプターの発現を測定することによって、従来の診断方法では検出することが困難であった微小転移であっても検出することができるという優れた効果を発揮する。
【0017】
前記検体としては、特に制限はないが、原発癌の部位以外の生体試料などがあげられ、例えば、原発癌近傍の組織やリンパ節などの転移が疑われる組織や血液、リンパ液、尿、糞尿、喀痰、唾液のような生体循環物試料または排泄物試料があげられる。前記検体はそのまま用いてもよく、かかる検体から公知の方法で処理することで得られる全RNA、もしくはmRNAなどの特定のRNA分子に代表される核酸試料、または全タンパク質、もしくは特定の分子量のタンパク質を富化した試料などに代表されるタンパク質試料を検出用試料として用いてもよい。なかでも、全RNAまたは特定のRNA分子等の核酸試料を用いることが、優れた検出感度を得る観点から優れている。
【0018】
前記検出用試料は、水溶液の状態で用いてもよく、適切な固相に吸着または固定化した状態で用いてもよい。
【0019】
前記検出用試料を水溶液の状態で用いる場合、例えば、血液や尿といった液体試料はそのままの状態または適切な処置を施した状態で使用することができ、また組織のような固体試料は浸出液や懸濁液を調製して使用することができる。また、これらの試料の上清またはこれらの試料について界面活性剤処理のような細胞溶解処理が施された試料やその上清も使用することができる。さらに、検出対象である核酸またはタンパク質を損なわない範囲で試料中の他の成分を除去する操作が施されていてもよい。
【0020】
前記検出用試料を適切な固相に吸着または固定化した状態で用いる場合、例えばスライドグラス上に固定された組織切片や細胞を検出用試料として使用できる。また、試料中の核酸またはタンパク質が適当な膜上にブロッティングされたものであってもよく、例えばゲル電気泳動により分離された核酸またはタンパク質がゲルから膜にブロッティングされたもの等が使用できる。さらに、核酸あるいはタンパク質が粒子状の担体に固定化されたもの、例えば、mRNAをトラップしたオリゴdT固定化ビーズも本発明の検出方法に使用することができる。
【0021】
前記ニューロメジンBレセプターの発現は、例えば、前記核酸試料を検出用試料として用い、ニューロメジンBレセプターをコードするmRNAの発現またはその発現量を測定することにより検出してもよく、また、前記タンパク質試料を検出用試料として用い、ニューロメジンBレセプターを構成するポリペプチドの発現またはその発現量を測定することにより検出してもよい。
【0022】
(1)核酸試料を用いた癌転移の検出方法
本発明で使用されるニューロメジンBレセプターは、ボンベシン様ホルモンレセプターの1つであり、7 個の膜貫通ドメインを有し、Gタンパク質と共役して作用する受容体のスーパーファミリーに属している〔ジャーナル オブ モレキュラー ニューロサイエンス(Journal of Molecular Neuroscience )、第4 巻、第41頁(1993)〕。前記ニューロメジンBレセプターをコードする遺伝子はすでにクローニングされており、そのアミノ酸配列も明らかにされている(特表平6-509940号公報)。該レセプターのアミノ酸配列および該アミノ酸配列をコードする塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:1および2に示す。
【0023】
前記ニューロメジンBレセプターは、脳においては、各部位でのmRNAの分布がボンベシン様ホルモンレセプターの1つであるガストリン放出ペプチドホルモンレセプター(以下、GRP-R という)と異なり、これらの受容体がそれぞれ独立して脳におけるホルモンの作用の伝達を担っていると考えられる〔ニューロン(Neuron)、第6 巻、第421 頁(1991)〕。消化管では大腸平滑筋で発現機能が検討され、ニューロメジンBレセプターは一過性の収縮に、GRP-R は持続性の収縮に関与していることが知られている〔ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、第105 巻、第1672頁(1993)〕。
【0024】
一方、正常組織以外では、肺癌組織および細胞株においてGRP-R およびニューロメジンBレセプターが発現していること、ならびにマウス大腸癌細胞株にGRP と特異的に結合する部位が存在していることが知られているのみである〔ジャーナル オブ バイオケミストリー(Journal of Biochemistry )、第266 巻、第18771 頁(1991)、キャンサー リサーチ(Cancer Research)、第50巻、第6772〜6778頁(1990)〕。このように、ニューロメジンBレセプターをコードする遺伝子は既に公知の遺伝子であるが、その発現について特に転移の発見、予測を目的として原発癌の部位以外の生体試料(原発癌近傍の組織、リンパ節、生体循環物試料、排泄物試料等)での発現が検討された例はない。
【0025】
現在まで、ニューロメジンBレセプターの発現検出に用いられたRT−PCR 用プライマーとしては、ニューロメジンBレセプターmRNAのうちドメイン1〜3を含む領域のポリペプチド(以下、ドメイン1−3のように表わす)をコードする部分を増幅するプライマーである配列表の配列番号:3で示される配列を有するプライマーおよび配列番号:4で示される配列を有するプライマーからなるプライマー対〔ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry )、第269 巻、第8596〜8603頁(1994)、およびアメリカン ジャーナル オブ レスピラトリー セル アンド モレキュラー バイオロジー(American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology)、第11巻、第66〜74頁(1994)〕、ドメイン5−6のポリペプチドをコードする部分を増幅するプライマーである配列表の配列番号:5で示される配列を有するプライマーおよび配列番号:6で示される配列を有するプライマーからなるプライマー対〔肺癌、第15巻、第341 〜354 頁(1996)および、セル グロース アンドディファレンシエイション(Cell Growth & Differentiation )、第7 巻、第563 〜572 頁(1996)〕があった。しかしながら、前記したプライマー対を用いて測定してみると、ドメイン5−6の発現を測定した場合は、健常者の末梢血中にも検出される例が多数見られ、またドメイン1−3の発現を測定した場合は、健常者における検出の頻度は低下するものの、転移のない癌患者の血液でも検出される例があり、高い信頼性で微小な転移でさえも検出するという本発明の目的には使用できなかった。
【0026】
本発明は、ニューロメジンBレセプターmRNAのうち、該ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードする部分を癌転移マーカーとして用いるものであり、RT-PCR法による検出の対象とすることにより、微小な転移であっても高い信頼性で検出することが可能となった。
【0027】
また、ニューロメジンBレセプター膜貫通ドメインの2および/または3を実質的に含む領域の発現の有無を測定することによって、従来有効なマーカーが見出されていなかった肺癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌などの癌患者においても、癌転移を検出することができる。
【0028】
ここで、「ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域」は、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含んでいればよく、癌転移マーカーとしての特性を保持できる範囲でその末端にドメイン1または4の一部が含まれていてもよく、またドメイン2の上流側の一部あるいはドメイン3の下流側の一部が欠失していてもよい。
【0029】
ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2をコードする塩基配列は、本明細書の配列表の配列番号:2に示される塩基配列の塩基番号:238〜297に相当し、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン3をコードする塩基配列は、本明細書の配列表の配列番号:2に示される塩基配列の塩基番号:352〜417に相当する。
【0030】
本発明の癌転移の検出方法において、全RNA試料を検出用試料として用いる場合、特に限定はされないが、試料中のRNA含量が、例えば、0.01μg/μl以上20μg/μl以下であり、より好ましくは0.1μg/μl以上2μg/μl以下であることが望ましい。また、RT-PCR反応液中のRNA含量としては、例えば、0.1ng/μl以上2μg/μl以下であり、より好ましくは1ng/μl以上0.2μg/μl以下であることが望ましい。
【0031】
本発明においては、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAを増幅することができるプライマー対および/または該mRNAおよび該mRNA由来の増幅産物を検出するためのプローブを用いることによって、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAの発現の特異的な検出またはその発現量の特異的な測定を行うことができる。
【0032】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAの発現の特異的な検出またはその発現量の特異的な測定を行う方法としては、特に限定されないが、遺伝子解析の分野で公知の方法が利用できる。前記mRNAの発現の検出法またはその発現の測定法としては、例えば、RT-PCR法またはそれを基盤とした競合PCR 法、TaqMan法(ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第21巻、第3761〜3766頁(1993))、ハイブリダイゼーション法、GeneChip法(ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第16巻、第27〜31頁(1998))などがあげられる。前記の方法のなかでは、その定量性、感度、簡便さから、RT-PCR法ならびにそれを基盤とした競合PCR 法、TaqMan法が適している。
【0033】
前記プライマー対としては、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAを増幅することができるプライマー対であれば、特に限定されないが、配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選ばれた塩基配列を有することが好ましい。
【0034】
前記プライマー対としては、例えば、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および3の両方を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAを増幅することのできるものや、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2、または3のどちらか一方を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAを増幅することのできるものなどを使用することができる。
【0035】
プライマーの長さとしては、増幅しようとするmRNAの増幅が可能であれば特に限定はないが、例えば、15〜40塩基のものが使用でき、特に18〜30塩基のものが好適に使用できる。
【0036】
また、前記プライマー対は、非特異的な増幅を生じさせない観点から、Tm値が、50度以上であり、好ましくは60度以上であることが望ましい。
【0037】
前記プライマー対の具体例としては、特に限定されないが、配列番号:7および11からなる群より選ばれた配列を有するプライマーをフォワードプライマーとし、配列番号:8、9および12からなる群より選ばれた配列を有するプライマーをリバースプライマーとしてそれぞれ選択されたプライマーの組み合わせであることが望ましい。
【0038】
前記プローブとしては、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であれば特に限定されないが、配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選ばれた塩基配列を有するプローブであることが好ましい。プローブの長さとしては特に限定はないが、例えば15塩基以上のものが使用することができる。
【0039】
前記ストリンジェントな条件としては、例えば、モレキュラークローニング ア ラボラトリーマニュアル 第2版〔Sambrook et al., Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL SECOND EDITION, (1989) 〕に記載の条件などを適用できる。
【0040】
前記プローブとしては、特に限定されないが、配列番号:10または13で示される塩基配列を有するプローブなどがあげられる。
【0041】
本発明の癌転移の検出方法を行なうに際し、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2−3をコードするmRNAの発現を検出するためのプライマーとして配列表の配列番号:7で示される配列を有するNMBR-2F プライマーおよび配列番号:8で示される配列を有するNMBR-2R プライマーからなるプライマー対を設定し、該プライマー対を用いてニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2−3をコードするmRNAの発現の測定を行った場合、転移を有する癌患者では末梢血等の生体試料中にニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2−3をコードするmRNAの発現が検出されるのに対し、健常者においては、実質的に検出されない。
【0042】
また、NMBR-2F プライマーおよびNMBR-2R プライマーからなるプライマー対を用いたPCR を行なう前に、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を含む、より大きい領域(例えば、ドメイン1−4を含む領域など)をコードするmRNAを増幅するプライマー対を設定してPCR を行い、ついで、その増幅産物の一部を鋳型にNMBR-2F プライマーおよびNMBR-2R プライマーからなるプライマー対を用いたPCR を行って、さらに検出感度を上げることもできる。
【0043】
増幅の有無の確認法には特に限定はないが、例えば核酸増幅反応液をアガロースゲル電気泳動に供した後、ゲルを適当な核酸染色試薬、例えばエチジウムブロマイド、SYBER Green I 等で染色し、紫外線を照射して生じるバンドの有無を検出することにより確認できる。バンドの検出は肉眼で観察してもよいが、例えば蛍光イメージアナライザー等を用いて検出することもできる。
【0044】
本発明の癌転移の検出方法においては、さらに、定量的なRT-PCR法を利用して、より再現性の高い測定系により検出することができる。前記定量的なRT-PCR法としては、特に限定されないが、例えば、TaqMan法、競合RT-PCR法などを使用することができる。
【0045】
前記TaqMan法を行なうに際し、例えば、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2をコードするmRNAの発現の測定系においては、配列表の配列番号:7で示されるNMBR-2F プライマーおよび配列番号:9で示される配列を有するNMBR-5R プライマーからなるプライマー対ならびに配列番号:10で示される配列を有するNMBR2 TaqManプローブの組み合わせを用いることができ、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン3をコードするmRNAの発現の測定系においては、配列表の配列番号:11で示される配列を有するNMBR-7F プライマーおよび配列番号:12で示される配列を有するNMBR-7R プライマーおよび配列表の配列番号:13で示される配列を有するNMBR3 TaqManプローブの組み合わせなどを用いることができる。前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2およびニューロメジンBレセプターのドメイン3をそれぞれコードするmRNAの発現のTaqMan法による測定系は何れも良好な検量線を示し、従来の診断方法では検出することができなかった微小な癌転移を、高い信頼性で、検出することができる。
【0046】
前記競合RT-PCRを行うに際しては、内部標準核酸が使用される。「内部標準核酸」とはRT-PCR反応に添加された場合に、検出しようとするmRNA由来の増幅産物と区別可能なサイズの増幅産物を与えるものである。すなわち、該内部標準核酸として使用される核酸は、検出しようとするmRNAの増幅に用いられる2種のプライマーの塩基配列を有しており、かつ前記2種のプライマーによって増幅される増幅産物のサイズは、検出しようとするmRNA由来の増幅産物のサイズとは異なっている。従って、前記内部標準核酸由来の増幅産物量と検出しようとするmRNA由来の増幅産物量とを比較することにより定量を行うことができる。
【0047】
本発明の癌転移の検出方法においては、前記したプライマー対などを用いたRT-PCR法に代表される遺伝子増幅法の他、例えば、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/またはドメイン3からなる領域を実質的に含む領域のポリペプチドをコードするmRNAにハイブリダイズするプローブを利用するハイブリダイゼーション法(ノザンハイブリダイゼーション法)などを利用することができる。
【0048】
また、ニューロメジンBレセプターと同様に、7つの膜貫通ドメインを持つケモカインレセプターにおいては、mRNAのスプライシング異常や点変異、欠損、挿入、重複などが起こっていることが知られている〔ネイチャー ジェネティクス(Nature Genetics )、第16巻、第221 〜222 頁(1997)〕。ニューロメジンBレセプターについても同様の遺伝子変異が予測されるが、本発明の癌転移の検出方法においては、かかるニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードする核酸であれば、種々の遺伝子変異をもった配列であっても、これらを検出することにより癌転移を検出することもできる。このように、mRNAのスプライシング異常や点変異、欠損、挿入、重複などの遺伝子変異を有するニューロメジンBレセプター遺伝子を検出対象とする方法も本発明の範囲に含まれる。
【0049】
(2)タンパク質試料を用いた癌転移の検出方法
ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および3のアミノ酸配列は、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry )、第266 巻、第18771 〜18779 頁(1991)に記載されている。ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2は、本明細書の配列表の配列番号:1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号:80〜99に相当し、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン3は、本明細書の配列表の配列番号:1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号:118 〜139 に相当する。
【0050】
本発明においては、検出用試料としてタンパク質試料を用いる場合、前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質を用いることにより、検体における該ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を構成するポリペプチドの発現またはその発現量を特異的に測定することができる。
【0051】
前記領域に特異的に結合する物質としては、該領域に対する抗体、単鎖抗体、アンタゴニスト等が挙げられる。前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を構成するポリペプチドの発現の検出法またはその発現量の特異的な測定法としては、当業者に公知の方法が利用できるが、抗体を用いた免疫測定法が好ましく、なかでも、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法がその安全性、簡便性および迅速性の点で優れている。
【0052】
本発明の癌転移の検出方法は、健常者および転移のない患者では検出されず、転移の可能性のある癌患者においては、微小な転移ですら高い信頼性で検出できるという優れた効果を発揮する。さらに、従来有効なマーカーが見出されていなかった肺癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌などの癌患者においても、癌転移を検出することができるという優れた効果を発揮する。
【0053】
本発明の癌転移の検出キットは、本発明の癌転移の検出方法に用いられるプライマー、プローブ、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質に代表される試薬などから構築されており、該キットを使用することによって、さらに簡便に癌転移を検出することができる。
【0054】
前記癌転移の検出キットにおいて核酸試料を検出用試料として用いる場合には、前記癌転移の検出方法においてあげられたプライマー、プローブが含まれ、さらに、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードするmRNAまたは該領域をコードする核酸であって、種々の遺伝子変異をもった配列を増幅するために必要な試薬、陽性対照として、T84細胞全RNA、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードする合成核酸、該核酸を組み込んだプラスミドベクターおよび/またはファージベクター等が含まれる。
【0055】
前記試薬としては、Taq DNA ポリメラーゼ、該Taq DNA ポリメラーゼ反応用緩衝液、MgCl2 溶液、dNTP混合物、陽性対照などがあげられる。さらに、本発明の目的を妨げない試薬であれば、増幅時において、非特異的増幅を減らすことを目的とする試薬なども適宜含有させることができる。
【0056】
前記癌転移の検出キットにおいて、タンパク質試料を検出用試料として用いる場合には、前記癌転移の検出方法においてあげられたニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質が含まれ、さらに該物質を結合させるために必要な試薬、陽性対照として、T84細胞可溶化物、ニューロメジンBレセプタータンパク質、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチド断片等が含まれる。ニューロメジンBレセプタータンパク質、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のポリペプチド断片は細胞、組織から調製したものでもよく、該タンパク質、該ポリペプチド断片をコードする遺伝子より組換えDNA技術によって得られた組換え体でもよく、化学合成したものでもよい。
【0057】
このような構成を有していることにより、本発明の癌転移の検出キットを前記検出方法において用いることによって、微小な転移ですら高い信頼性で、しかも簡便に検出できるという優れた効果を発揮する。
【0058】
本発明の転移癌細胞の除去剤は、その使用によりニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域の発現を抑制、あるいは該領域が有する機能を抑制することによって、転移癌細胞を除去する効果が期待されるものである。
【0059】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域の発現を抑制、あるいは該領域が有する機能を抑制する転移癌細胞の除去剤としては、該領域のmRNAの発現を抑制、該領域をコードするmRNAからのタンパク質の翻訳を抑制、あるいは該領域を構成するポリペプチドが有する機能を抑制するもの等が挙げられ、例えば、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードする二本鎖DNAと三重鎖核酸を形成する核酸、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードするmRNAにハイブリダイズする核酸や該領域をコードするRNAを切断するリボザイム、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質などがあげられる。ハイブリダイズする核酸、リボザイム、特異的に結合する物質などはこれらをコードする塩基配列を適当な発現ベクターに組み込んだDNAを投与し、生体内で該除去剤を発現させてもよい。
【0060】
上記のニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域のmRNAの発現を抑制する該領域をコードする二本鎖DNAと三重鎖核酸を形成する核酸は、例えば、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第19巻、第3435〜3441頁(1991)を参考に作製することができる。
【0061】
上記のニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードするmRNAからのタンパク質の翻訳を抑制する、該mRNAにハイブリダイズする核酸としては、該mRNAに相補的な配列を有するアンチセンス核酸がある。本明細書において、「アンチセンス核酸」とは、特定の遺伝子又はその一部と相補的な塩基配列を有し、該遺伝子と二本鎖を形成することなどによって、該遺伝子からの遺伝子情報の発現(転写、翻訳)を抑制又は制御するものをいう。アンチセンス核酸を用いた技術は、例えば、rev遺伝子(プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ ザ サイエンシーズ オブ ザ USA(Proceeding of the National Academy of the Sciences of USA)、第86巻、 第4244-4248 頁 (1989) )のHIVに関するもの等、数多く知られている。アンチセンス核酸の長さは、塩基配列の特異性や投与する方法に応じて変えることが可能である。アンチセンス核酸は、合成機を用いて人工的に合成したり、通常と逆の向き(アンチセンスの向き)に遺伝子を発現させること等により、作製することが可能である。
【0062】
本明細書でいう「リボザイム」とは、特定のタンパク質をコードするmRNAを切断する活性を有し、これら特定のタンパク質の発現を阻害するRNA分子をいう。リボザイムは特定のタンパク質をコードする塩基配列をもとにして設計することが可能であり、例えば、ハンマーヘッド型リボザイムについては、フェブス レター(FEBS Letter)、第228 巻、第228 〜230 頁(1988)に記載の方法を用いることができる。また、ハンマーヘッド型リボザイムだけでなく、ヘアピン型リボザイム、デルタ型リボザイムなどのリボザイムの種類に関わらず、特定のタンパク質のmRNAを切断するもので、これら特定のタンパク質の発現を阻害するものであれば本明細書でいうリボザイムに含まれる。
【0063】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードするmRNAにハイブリダイズする核酸や該領域をコードするRNAを切断するリボザイムを使用した除去剤においては、該核酸を、例えば、経口、静脈内、皮下、筋肉内、直腸内、経皮、経鼻、舌下、腹腔内に投与することができる。さらに、本除去剤を投与する際には、例えば、リポソーム形成物質に封入し、リポソームとして上記の方法で投与することもできる。
【0064】
前記核酸は、細胞内への移行性または細胞内での安定性を高めることができる化学的修飾を含んだものを用いてもよい。前記化学修飾としては、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの誘導体があげられる。
【0065】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質としては、該ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に対する抗体、単鎖抗体、アンタゴニストなどがあげられる。
【0066】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質を使用した転移癌細胞の除去剤の投与方法としては、該除去剤を、例えば、経口、静脈内、皮下、筋肉内、直腸内、経皮、経鼻、舌下、腹腔内に投与する方法があげられる。さらに、本除去剤を投与する際には、例えば、リポソーム形成物質に封入し、リポソームとして上記の方法で投与することもできる。
【0067】
前記ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域をコードするmRNAにハイブリダイズする核酸を使用した転移癌細胞の除去剤の投与によって、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域の発現の抑制は、前記した遺伝子検出方法によって測定することができる。
【0068】
また、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3を実質的に含む領域に特異的に結合する物質を使用した転移癌細胞の除去剤の効果は、腫瘍マーカーの値の減少の免疫学的方法、RT-PCR法等による測定によって評価することができる。
【0069】
このような構成を有していることにより、本発明の転移癌細胞の除去剤は、前記マーカーを有する微小な癌細胞を体内から除去し、癌の転移を予防、阻止することができるという優れた性質を発現する。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
実施例1 RT-PCR 法によるニューロメジンBレセプターmRNAの検出
(1)ヒト末梢血よりの全RNAの抽出とRT-PCR反応
健常者または癌患者由来の末梢血7ml をEDTA−2Na 入り真空採血管(テルモ社製)で採血し、TriZol試薬〔ライフテック(LifeTech)社製〕により全RNAを抽出した。また、陽性コントロールとしてはヒト癌細胞T84 からTriZol試薬により同様に全RNAを抽出した。得られた全RNA はTaKaRa社製human βactin competetitive PCR Kit を用いて定量し、RNA量を補正することによって、検体間の誤差をなくした。RT-PCR法は、RNA PCR Kit(AMV)ver2.1(TaKaRa社製)を用いて以下のように行った。全RNA 1μgに、1μlの10×RNA PCR Buffer(100mM Tris-HCl 、500mM KCl、pH8.3 )、1μlの10mM dNTP Mixture 、2μlの25mM MgCl2、0.5μlの50pmol/μlRandom 9mer 、0.25μlの40U/μl RNase Inhibitor、0.5μl の5U/μl AMV Reverse Transcriptase XL を混合し、RNase-free dH2O を加えることによって10μlの逆転写反応液を調製した。この反応液をサーマルサイクラー(TaKaRa社製) を用いて、30℃:10分間、45℃:20分間、99℃:5分間、4℃:5分間の逆転写反応を行った。
【0072】
次に4μlの10×RNA PCR Buffer、3μlの25mM MgCl2、0.5μlの20pmol/μlの配列表の配列番号:7で示されるNMBR-2F プライマー、0.5μlの20pmol/μlの配列表の配列番号:8で示されるNMBR-2R プライマー、0.25μlの5U/μl TaKaRa Taq 、31.75μlの滅菌蒸留水を混合した反応液40μlを上記の逆転写反応液に加え、サーマルサイクラーを用いて94℃:0.5分間、55℃:0.5分間、72℃:0.5分間の温度サイクルを25サイクル繰り返しPCR を行った。PCR 反応産物の5μlを分取し、3%Nusieve Agarose(FMC社製) でアガロースゲル電気泳動を行った。増幅DNAは泳動後ゲルを0.5μg/mlエチジウムブロマイド液で染色し、トランスイルミネータで紫外線を照射することにより検出した。
(2) 培養されたがん細胞株におけるニューロメジンBレセプターの発現
種々のがん細胞株をシャーレ中でウシ胎児血清存在下、培養し、細胞を集めTriZol試薬を用いて全RNAを抽出した。これを検体としてニューロメジンBレセプターをはじめ種々の遺伝子の発現をmRNAの発現を指標として、(1)と同様にしてRT-PCR法で検討した。検出用のプライマーとしてはニューロメジンBレセプタードメイン2−3〔表中、NMB-R(2-3)で示す〕検出用にはNMBR-2F プライマーおよびNMBR-2R プライマー、ニューロメジンBレセプタードメイン5−6〔表中、NMB-R(5-6)で示す〕検出用には配列表の配列番号:5で示されるNMBR-3F プライマーおよび配列表の配列番号:6で示されるNMBR-3R プライマー、ニューロメジンBレセプタードメイン1−3〔表中、NMB-R(1-3)で示す〕検出用には配列表の配列番号:3で示されるプライマーおよび配列表の配列番号:4で示されるプライマー、ガストリン放出ペプチドレセプター(表中、GRP-R で示す)検出用には配列表の配列番号:14で示されるGRPR -1Fプライマーおよび配列表の配列番号:15で示されるGRPR-1R プライマー、パラチロイドホルモン関連タンパク質レセプター(表中、PTHrP-R で示す)検出用には配列表の配列番号:16で示されるPTHPR -1F プライマーおよび配列表の配列番号:17で示されるPTHPR-1Rプライマー、を使用した。RNAの抽出、逆転写反応、PCR 反応、電気泳動などは前記(1)と同様に行った。その結果を表1に示す。なお、表1中、 T84は大腸癌の肺転移部位由来(ATCC CCL-248)を示し、Colo25は大腸癌の転移腹水由来を示し、 HT29 は大腸癌原発部位由来(ATCC HTB-38 )を示し、K562は骨髄性白血病細胞由来(ATCC CCL-243)を示し、 SW480は大腸癌原発部位由来(ATCC CCL-228)を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
その結果、表1に示すように様々な発現パターンが認められたが、転移との関連から詳細に検討すると、ニューロメジンBレセプター遺伝子の膜貫通ドメイン2−3を検出した場合にのみ、転移癌由来の細胞のみで検出され、原発癌由来の細胞株では検出されなかった。尚、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン5−6を含むその他のマーカーを検出した場合には原発癌でも検出され、転移との関連は認められなかった。
【0075】
(3)健常者ならびに癌患者における末梢血中のニューロメジンBレセプターの発現
健常者22例ならびに癌患者51例(胃癌13例、大腸癌13例、乳癌14例、肺癌11例)の末梢血中の種々のマーカー遺伝子の発現を転移の有無からRT-PCR法により検討した。なお、癌患者の転移の有無は、外科手術時などの肉眼による診断、X線検査、超音波検査、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法、内視鏡検査などの画像診断、ならびに採取された組織および組織切片標本の顕微鏡観察などの病理診断によって診断された。
【0076】
RNAの抽出、逆転写反応、PCR反応、電気泳動などは、前記(1)、(2)と同様に行った。その結果を表2に示すが、驚くべきことにはドメイン2および/または3をターゲットとした場合において、健常者ならびに従来の診断方法では転移を認められなかった癌患者では発現が殆んど検出されず、転移のある症例でのみ高頻度に発現が見られた。この結果より、ニューロメジンBが癌転移のマーカーとして種々の癌で有用であることが示された。
【0077】
【表2】
【0078】
一方、ニューロメジンBレセプター膜貫通ドメイン2−3以外では健常者でも発現が認められ、また転移との相関性も認められなかった。ニューロメジンBレセプター膜貫通ドメイン2−3は、転移した癌に対して高い特異性を示したため、癌転移の検出に最も適しており、微小癌転移細胞の検出に極めて有効なマーカーであることが示された。
【0079】
実施例2 TaqMan 法による転移癌細胞の定量とそのためのキット
前記実施例1により、ニューロメジンBレセプタードメイン2−3遺伝子の発現が確認されたT84 細胞より抽出された全RNAを用いてTaqMan法による測定系を確立した。まず、cDNA合成キット(TaKaRa社製)により全RNAからcDNAを合成した。次に、それぞれ、TaqMan法に最適化されたPCR プライマーとTaqManプローブ〔5'末端にTET (6-carboxy-tetrachrolofluorescein、emission:538nm )を、3'末端にTAMRA (6-carboxytetramethyl-rodamine 、emission:582nm )を修飾した〕の存在下でPCR 反応を行った。尚、反応条件ならびに検出方法はPerkin-Elmer社製のTaqManシステムの説明書に順じて行った。NMBR-2F プライマーおよびNMBR-5R プライマーおよびNMBR2 TaqManプローブを用いてニューロメジンBレセプタードメイン2遺伝子の発現を測定した結果、T84 細胞とK562細胞とを1:106 の比で混合した試料においてもニューロメジンBレセプタードメイン2遺伝子の発現が、テンプレートcDNAを添加しないブランク値に比較して有意に検出でき、従来の診断方法では発見できないような微小な転移がん細胞の検出、定量が可能であることが示された。尚、ニューロメジンBレセプタードメイン3についてもNMBR-7F プライマーおよびNMBR-7R プライマーおよびNMBR3 TaqManプローブを用いて測定を行ったところ同様な結果が得られた。
【0080】
これらの結果から、ニューロメジンBレセプタードメイン2をコードする遺伝子の発現を定量するキットを作製した。200アッセイ分のキットの内容を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
【発明の効果】
【0083】
本発明の癌転移の検出方法によれば、健常者および転移のない患者由来の試料では検出されず、転移のある癌患者において、微小な転移ですら高い信頼性で検出できるという優れた効果を奏する。さらに従来有効なマーカーが見出されていなかった肺癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌などの癌患者においても、癌転移を検出することができるという優れた効果を奏する。
【0084】
また、本発明の癌転移の検出キットを前記検出方法において用いることによって、微小な転移ですら高い信頼性で、しかも簡便に検出できるという優れた効果を奏する。
【0085】
さらに、本発明の転移癌細胞の除去剤は、前記マーカーを有する微小な癌細胞を体内から除去し、癌の転移を予防、阻止することができるという優れた性質を発現する。
【0086】
【配列表】
Claims (9)
- 生体試料におけるニューロメジンBレセプター遺伝子のmRNAの発現を検出する癌転移の検出方法であって、該ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAの発現を検出することを特徴とする癌転移の検出方法。
- 生体試料が、原発癌の部位以外の生体試料である請求項1記載の癌転移の検出方法。
- 配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選択された塩基配列を有するプライマーおよび/またはプローブを用いる、請求項1又は2記載の癌転移の検出方法。
- プライマーが、配列番号:7,8,9,11および12からなる群より選択される塩基配列からなるプライマーである、請求項3記載の癌転移の検出方法。
- プローブが、配列番号:10または13の塩基配列からなるプローブである、請求項3記載の癌転移の検出方法。
- ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3の発現を検出するための核酸を含んでなる癌転移の検出キットであって、前記核酸が、ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対および/または該mRNAを検出するためのプローブである、癌転移の検出キット。
- ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対および/または該mRNAを検出するためのプローブが、配列番号:2中の塩基番号:198〜481で示される配列中から選ばれた塩基配列を有する請求項6記載の癌転移の検出キット。
- ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを増幅可能なプライマー対が、一方が配列番号:7および11から、他方が配列番号:8、9および12からそれぞれ選択された配列からなるプライマーの組み合わせである、請求項6または7記載の癌転移の検出キット。
- ニューロメジンBレセプターの膜貫通ドメイン2および/または3のポリペプチドをコードするmRNAを検出するためのプローブが、配列番号:10または13で示される配列を有する、請求項6〜8いずれか記載の癌転移の検出キット。
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