JP3783879B2 - 安全弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ポンプの吐出圧油を油圧モータに供給する油圧回路等に用いる安全弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧ポンプの吐出圧油を操作弁で第1主回路と第2主回路の一方に供給し、その第1主回路を油圧モータの第1ポートに接続し、第2主回路を油圧モータの第2ポートに接続して油圧ポンプの吐出圧油を油圧モータに供給する油圧回路が知られている。
【0003】
このような油圧回路においては第1主回路と第2主回路の高圧油をリリーフ作動するモジュレーション安全弁を設けて油圧モータの起動時、停止時に第1主回路、第2主回路の圧力がゆっくりと上昇するようにして起動時、停止時のショックを低減している。
【0004】
前述のモジュレーション安全弁はモジュレーション開始圧力までは短時間で圧力上昇し、それ以後はゆっくりと圧力上昇して設定圧となる安全弁である。このモジュレーション安全弁としては例えば図1に示すものが知られている。
【0005】
すなわち、スリーブ1にバルブシート2を摺動自在に嵌合し、このスリーブ1内にポペット3を摺動自在に嵌挿してスプリング4で円錐面5をバルブシート2のシート面6に押しつけ、このポペット3内にピストン7を嵌挿して室8を構成し、その室8を小孔9でバルブシート2の透孔10より高圧ポート11に連通し、スリーブ1に低圧ポート12を形成する。
【0006】
前記スリーブ1の先端部に大径部20を形成し、この大径部20の開口端部に筒状のプラグ21を嵌合固定し、バルブシート2を一端小径部22と中間大径部23と他端中間径部24を有する外周面段付き形状とし、バルブシート2の一端小径部22をプラグ21の内周面21aに嵌合してシール材25でシールし、中間大径部23をスリーブ1の大径部20に嵌合してシール材26でシールし他端中間径部24をスリーブ1の内周面1aに嵌合してバルブシート2を軸方向にストロークLだけ摺動自在とし、かつ中間大径部23とスリーブ1の段部1bとの間に環状空間27を構成し、この環状空間27をスリーブ1の内周面1aと他端中間径部24との間の隙間28を経て低圧ポート12に開口して環状空間25をダンパ室Aとしてある。
【0007】
次に作動を説明する。
高圧ポート11の圧力P1 がP1 0の時にはスプリング4の力でポペット3を介してバルブシート2をストロークL1 だけ左方に押してプラグ21に当接し、スプリング4のバネ荷重F1 はストロークL1 ×バネ定数Kだけ従来より低い状態にセットされる。
【0008】
この状態で高圧ポート11の圧力P1 が急激に上昇するとポペット3の受圧面積A1 =π/4(4(d1 2 −d2 2 )に作用する圧力P1 と前記バネ荷重F0とつり合った時点でポペット3が図1で右方に摺動して円錐面5とシート面6、つまりシート部が開口して高圧油が低圧ポート12にリリーフ開始する。この時の圧力がモジューレーション開始圧力である。
【0009】
この時、バルブシート2の端面2aに高圧油が作用して受圧面積A2 =π/4(d3 2 −d1 2 )×圧力P1 の推力を受けて同時に右方に移動しようとするが、ダンパ室Aの作用、つまり環状室27内の圧油が隙間28で絞られて徐々に低圧ポート12に流出するのでバルブシート2はポペット3より遅く右方に移動し、圧力上昇こう配がゆるくなり、バルブシート2のシート面6が円錐面5に圧接すると設定圧力となる。
これにより、リリーフ圧力波形は図2の実線で示すように2階段に圧力上昇しかつ設定圧力まで上昇する時間が長くなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
かかる安全弁であると、前述のリリーフ作動している状態から高圧ポート11の圧力が低下するとポペット3、バルブシート2がスプリング4で左方に押されて初期状態に戻る。この時バルブシート2の左方の移動にともなってダンパ室Aには隙間28を経て低圧ポート12の油が吸い込みされる。
【0011】
しかしながら、前述の隙間28はバルブシート2の右方への移動を遅くするために小さく、油がダンパ室A内に吸い込み難いのでバルブシート2がスプリング4によってポペット3を介して左方に移動される速度に応じた分だけダンパ室A内に油が吸い込みされないから、そのダンパ室A内に負圧が発生するためにダンパ室A内に気泡が発生する。
【0012】
このように、ダンパ室A内に気泡が発生した状態で再度高圧ポート11の圧力が上昇してバルブシート2が右方に押されると、ダンパ室A内の気泡がつぶれてバルブシート2は隙間28により規制される速度よりも早く右方に移動するので、所定のモジュレーション時間(モジュレーション開始圧力から設定圧力まで上昇時間)が得られないことがある。
【0013】
また、前述のダンパ室Aはスリーブ1の内周面1aと他端中間径部24との間の隙間28を経て低圧ポート12に連通しているので、温度変化によりスリーブ1、バルブシート2の径が変化することで隙間28の大きさが異なるし、スリーブ1、バルブシート2の偏心によって隙間28の大きさがばらつき、安定したジモジューレーション時間が得られない。
【0014】
このようなことから、隙間28を小さくしてモジューレション時間を長くすることが困難であり、油圧モータの起動時、停止時のショックを大幅に低減できない。
【0015】
そこで、本発明は前述の課題を解決できるようにした安全弁を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段及び作用、効果】
第1の発明は、スリーブ1にバルブシート2とポペット3を設け、ポペット3をスプリング4でバルブシート2に押しつけ、ポペット3内にピストン7を嵌挿して室8を構成し、この室8を細孔9及びバルブシート2の透孔10を経て高圧ポート11に連通し、シート部の径とピストン径による受圧面積差とスプリング4のバネ力とで高圧ポート11の高圧油によってポペット3を押して低圧ポート12にリリーフするようにし、
前記バルブシート2をスリーブ1内に所定ストローク摺動自在に嵌合して、バルブシート2がスプリング4に抗して摺動することで容積が減少するダンパ室Aを形成し、このダンパ室Aを絞り部35を経て低圧側に連通し、
前記絞り部35を、バルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時には流通面積が小さく、かつバルブシート2がスプリング4により摺動する時には流通面積が大となるものとした安全弁である。
【0017】
第1の発明によれば、高圧ポート11の圧力でバルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時にはダンパ室A内の油を低圧側に流出する絞り部35の流通面積が小さいので、バルブシート2はゆっくりと摺動し、リリーフ開始圧力から設定圧力まで上昇する時間が長くなってモジュレーション時間が長くなる。
また、高圧ポート11の圧力が低下してバルブシート2がスプリング4で摺動する時には低圧側の油が絞り部35を通してダンパ室A内に吸い込みされるし、この時の絞り部35の流通面積が大であるから、ダンパ室A内に低圧側の油がスムーズに流入してダンパ室A内が負圧となって気泡が発生することがない。
【0018】
これによって、安全弁が繰り返してリリーフ作動しても所定のモジュレーション時間を得ることができるから、油圧モータに圧油を供給する油圧回路に用いることで起動時、停止時のショックを低減できる。
【0019】
しかも、バルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時の絞り部35の流通面積を著しく小さくしてバルブ2の摺動を一層ゆっくりとしてモジュレーション時間をより一層長くしても、その時の流通面積に関係なくバルブシート2がスプリング4で摺動する時の絞り部35の流通面積を大きくできる。
【0020】
これによって、モジュレーション時間をより一層長くしてもダンパ室Aに気泡が発生することがないから、安全弁が繰り返してリリーフ作動しても長いモジュレーション時間を確実に得ることができ、この安全弁を油圧モータに圧油を供給する油圧回路に用いることで油圧モータの起動時、停止時のショックを大幅に低減することができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、バルブシート2に、小径部43と大径部44を有する段付穴45を、その小径部43を低圧側に連通すると共に、大径部44をダンパ室Aに連通して形成し、
前記段付穴45にボール46を、その小径部43と大径部44に亘って移動自在に設け、前記バルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時には当該ボール46が小径部43に移動して小径部43とボール46との間の小さな隙間を油が流通して流通面積が小さく、かつ前記バルブシート2がスプリング4で摺動する時には当該ボール46が大径部44に移動して大径部44とボール46との間の大きな隙間を油が流通して流通面積が大きくなるようにして絞り部35とした安全弁である。
【0022】
第2の発明によれば、段付穴45の径とボール46の径とによって流通面積を設定するので、流通面積、つまり絞り部は薄刃オリフィスに近似の形態となり、油度変化しても絞り特性(流通面積)の変化がなく、安定したモジュレーション時間が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図3に基づいて本発明の実施例を説明する。なお、従来と同一部は符号を同一とする。
プラグ21は小径穴30と大径穴31を有し、その大径穴31がスリーブ1の先端部外周面1cに嵌合している。前記バルブシート2の一端小径部22はプラグ21の小径穴30に嵌合してシール材32でしてあり、このバルブシート2の中間大径部23がプラグ21の大径部31に嵌合してシール材33でシールしてあり、バルブシート2の他端中間径部24がスリーブ1の内周面1aに嵌合してシール材34でシールしてある。
【0024】
プラグ21の大径部31とスリーブ1の先端面1dとバルブシート2の他端中間径部24とで環状室27、つまりダンパ室Aを形成し、このダンパ室Aは絞り部35を経てプラグ21の小径穴部分に形成した補助低圧ポート36に連通している。
【0025】
前記絞り部35の詳細を図4に基づいて説明する。
バルブシート2の中間大径部23には環状溝40が形成してある。この中間大径部23における環状溝40よりもダンパ室A寄り部41はプラグ21の大径穴31よりも小径としてあり、その両者間に環状隙間42が形成されており、その環状隙間42によってダンパ室Aと環状溝40を連通している。この環状隙間42はモジュレーション時間には影響を及ぼさない程度に大きくしてある。
【0026】
前記環状溝40には小径部43と大径部44を有する段付穴45が形成してある。この段付穴45の小径部43の径はd1 、大径部44の径はd2 としてある。前記段付穴45にはボール46が嵌め込んであり、このボール46の径d3 は小径部43の径d1 より若干小さい。前記小径部43の深さL2 はボール46の径d3 の1/2よりも若干大きくしてある。
【0027】
前記ボール46は環状溝40に巻きつけるように取付けたリング状のスプリング47で段付穴45の底部に押しつけてある。この段付穴45の小径部43は油孔48でバルブシート2の中間大径部23の一端面とプラグ21の大径穴31との間の空間部49に連通し、その空間部49は中間大径部23の斜面23aで補助低圧ポート36に常時連通している。
【0028】
次に作動を説明する。
高圧ポート11の圧力がモジューレーション開始圧力まで上昇した時には従来と同様にポペット3がスプリング4に抗して右方に移動して高圧ポート11の圧油が低圧ポート12にリリーフする。この後にバルブシート2が高圧ポート11の圧力で右方に移動してダンパー室A内の油が環状隙間42、環状溝40、大径部44とボール46との隙間、小径部43との隙間を通って油孔48に流れ、空間部49より補助低圧ポート38に流出する。
【0029】
このために、ダンパ室Aから補助低圧ポート36に流出する圧油は小径部43とボール46との僅かな隙間(絞り)を通る時に絞られて通過流量が僅かとなる。つまり、小径部43とボール46との径の差が小さく流通面積が小さいので通過流量が僅かとなる。これによりダンパ室Aから補助低圧ポート36に流出する流量は僅かとなってバルブシート2が右方にゆっくりと移動するので、設定圧力までゆっくりと上昇してモジュレーション時間が長くなる。
【0030】
前記絞りはボール46の直径位置の円周縁と小径穴43との隙間となるので、その絞りは薄刃オリフィスと同等の絞りとなり、温度変化による絞り特性の変化が小さい。また、ボール46が回転しながら油が通過するので、その隙間に喰み込んだ異物を排出することができる。
【0031】
また、高圧ポート11の圧力が高圧の状態から低圧となるとバルブシート2はスプリング4の力で左方に移動する。この時低圧ポート36、空間部49、油孔48を経て段付穴45の小径部43に油が流入し、ボール46を押し上げて大径部44とボール46との間の大きな隙間を通って環状溝40に流れて環状隙間42よりダンパ室Aに流れ込む。
【0032】
前記大径部44とボール46との隙間は大きいので流通面積が大きく、通過流量が多い。これによりダンパ室A内にスムーズに油が流入するからバルブシート2はすばやく初期状態に戻るし、ダンパ室A内が負圧とならないから気泡が発生しない。
【0033】
このようであるから、本発明に係る安全弁を油圧モータに圧油を供給する油圧回路に用いることで、起動時、停止時のショックを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の安全弁の断面図である。
【図2】モジューレーション安全弁のリリーフ特性を示す図表である。
【図3】本発明の実施例を示す断面図である。
【図4】絞り部の拡大断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【符号の説明】
1…スリーブ
2…バルブシート
3…ポペット
4…スプリング
7…ピストン
8…室
9…細孔
10…透孔
11…高圧ポート
12…低圧ポート
35…絞り部
36…補助低圧ポート
43…小径部
44…大径部
45…段付孔
46…ボール
A…ダンパ室。

Claims (2)

  1. スリーブ1にバルブシート2とポペット3を設け、ポペット3をスプリング4でバルブシート2に押しつけ、ポペット3内にピストン7を嵌挿して室8を構成し、この室8を細孔9及びバルブシート2の透孔10を経て高圧ポート11に連通し、シート部の径とピストン径による受圧面積差とスプリング4のバネ力とで高圧ポート11の高圧油によってポペット3を押して低圧ポート12にリリーフするようにし、
    前記バルブシート2をスリーブ1内に所定ストローク摺動自在に嵌合して、バルブシート2がスプリング4に抗して摺動することで容積が減少するダンパ室Aを形成し、このダンパ室Aを絞り部35を経て低圧側に連通し、
    前記絞り部35を、バルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時には流通面積が小さく、かつバルブシート2がスプリング4により摺動する時には流通面積が大となるものとした安全弁。
  2. バルブシート2に、小径部43と大径部44を有する段付穴45を、その小径部43を低圧側に連通すると共に、大径部44をダンパ室Aに連通して形成し、
    前記段付穴45にボール46を、その小径部43と大径部44に亘って移動自在に設け、前記バルブシート2がスプリング4に抗して摺動する時には当該ボール46が小径部43に移動して小径部43とボール46との間の小さな隙間を油が流通して流通面積が小さく、かつ前記バルブシート2がスプリング4で摺動する時には当該ボール46が大径部44に移動して大径部44とボール46との間の大きな隙間を油が流通して流通面積が大きくなるようにして絞り部35とした請求項1記載の安全弁。
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