JP3783640B2 - 冷却方法および設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属ストリップを連続熱処理した後の冷却を行う冷却帯での冷却方法および設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱処理後の金属ストリップを冷却する方式として、従来から、ガスジェット冷却方式と、ミスト冷却方式が知られている。
ガスジェット冷却方式は、空気や、必要に応じて不活性ガス等のガスをジェット噴射して金属ストリップ表面に吹き付けて冷却を行うものである。本方式は、幅広い温度の金属ストリップの冷却に適用されるが、冷却効率が低く、冷却帯の長さが長くなるという問題がある。
【0003】
一方、ミスト冷却方式は、金属ストリップ表面に霧状にした水を吹き付けて冷却するものであり、フォグ冷却方式とも呼ばれる。なお、ミストの吹き付け方式としては、スプレーノズルの形状を工夫してミスト化する方式と、空気等のガスと混合してミスト化する方式等があり、後者の方がミスト径を小さくすることができる。
【0004】
ところで、水をミスト化して冷却する際には、金属ストリップ温度が200 ℃〜350 ℃の遷移沸騰域となる領域を避ける必要があることが知られている(特開昭63-227726 号公報、特開平4-304323号公報等参照)。
上記の遷移沸騰域では、金属ストリップ表面に水滴が入り混じった不安定な水蒸気層が形成され、図2に示すように、極めて不均一な冷却となる。図2は、所定幅の鋼板をミスト冷却した時に、鋼板の幅方向に生じる温度差を示すものであり、鋼板温度が 200〜350 ℃の領域でミスト冷却を行うと幅方向で温度差が大きくなることがわかる。この不均一は、ミスト冷却時の水分密度を小さくすることで改善されるが、完全には抑えることはできなかった。特に、金属ストリップの板厚が薄い場合には、その板形状品質を良好に保つことが困難であった。
【0005】
そのため、従来の熱処理後の金属ストリップの冷却では、図3に示す以下の各方式がとられてきた。
(1) 冷却帯10として、金属ストリップ1を冷却する所要数のガスジェット冷却装置2を連設して用いる(図3(a))。ただし、ガスジェット冷却装置は冷却効率が低いため、必然的に冷却帯長が長くなる。
(2) 冷却帯10として、遷移沸騰域上限温度(350 ℃)以上の領域に所要数のミスト冷却装置3を連設して用いる(図3(b))。なお、遷移沸騰域下限温度(200 ℃)以下の領域では、必要に応じて水槽への浸漬を行って冷却する浸漬装置4を適用することもある。遷移沸騰域の温度範囲では自然放冷によるため、所定の冷却温度までのライン長を長くとる必要がある。
(3) 冷却帯10として、遷移沸騰域上限温度(350 ℃)以上の領域にミスト冷却装置3を適用し、以降では、ガスジェット冷却装置2を適用する。遷移沸騰域上限温度(350 ℃)以下ではガスジェット冷却によるため、冷却帯が長くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記(1) 〜(3) の各方式を始めとする従来の冷却方法の有する問題を解決し、不均一な冷却を起こさず、かつ、冷却に要するライン長を短くして金属ストリップの冷却を行う冷却帯に適用する冷却制御方法および装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガスジェット冷却とミスト冷却を自在に切替可能な冷却装置が多段構成とされた兼用型の冷却帯に対して適用するものであり、ガスジェット冷却とミスト冷却の切替位置を制御しつつ冷却を行う際、ミスト冷却を行うと幅方向温度差が大きくなって不均一冷却となる遷移沸騰域の温度域では、ガスジェット冷却とし、遷移沸騰域の下限温度以下の冷却はミスト冷却とし、更に金属ストリップ温度が 100 ℃以下の領域で、ミスト冷却とされた冷却をガスジェット冷却に切替えることを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の各項記載の冷却制御方法および装置によって上記課題を解決した。
1.ガスジェット冷却とミスト冷却を自在に切替え可能な冷却装置を多段構成としてなる冷却帯で、熱処理後の金属ストリップの冷却を行う冷却方法において、前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの領域をガスジェット冷却とし、以降の冷却をミスト冷却とし、更に前記金属ストリップ温度が 100 ℃以下の領域で、ミスト冷却とされた冷却をガスジェット冷却に切替えることを特徴とする冷却方法。
2.前記冷却帯の入側で金属ストリップの温度を測定し、冷却帯入側の金属ストリップの温度の測定値に基いて、ガスジェット冷却により前記金属ストリップが前記遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの冷却長、および該冷却長内の冷却をガスジェット冷却とし、以降の冷却をミスト冷却としたときの金属ストリップ温度が前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却帯の冷却長を算出し、
前記金属ストリップが前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)に至るまでの冷却長内の冷却をガスジェット冷却とし、前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長内の冷却をミスト冷却とし、前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長以降の冷却を再度ガスジェット冷却とすることを特徴とする上記1.に記載の冷却方法。
3.前記冷却装置を、水とガスを混合して噴射することで冷却を行うミスト冷却装置として構成し、冷却時に更に、前記水を遮断することで、各段のミスト冷却とされた冷却をガスジェット冷却に切替えることを特徴とする上記1.または2.に記載の冷却方法。
4.熱処理後の金属ストリップを冷却する冷却設備であって、ガス供給路と、水の供給を自在に遮断する遮断弁を有する水供給路とを有し、該遮断弁のオンオフでミスト冷却とガスジェット冷却を自在に切替え可能な冷却装置が多段構成とされた冷却帯と、冷却帯入側の金属ストリップの温度を測定する温度測定手段と、冷却帯入側の金属ストリップの温度測定値に基づき、ガスジェット冷却により前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの冷却帯の冷却長、および該冷却長内の冷却装置をガスジェット冷却とし、以降の冷却装置をミスト冷却としたときの遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却帯の冷却長を算出し、
前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)に至るまでの冷却長内の冷却装置をガスジェット冷却とし、遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長内の冷却装置をミスト冷却とし、遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長以降の冷却装置を再度ガスジェット冷却とする制御機能を有してなる制御装置と、を有することを特徴とする冷却設備
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態を図1に基づいて説明する。
本発明では、冷却帯10を、ミスト冷却とガスジェット冷却が自在に切替え可能となるようにする。図1においては、遮断弁13を設けて遮断自在とした水供給路6からの水と、空気等のガスを供給するガス供給路7からのガスとを混合してミストを噴射する個別の冷却装置10a が多段に構成されて冷却帯10として構成されている。ここで、遮断弁で水を遮断した冷却装置は、ガスジェット冷却方式の冷却装置となる。
【0010】
なお、本発明に適用する冷却帯10の構成は、これに限定するものではなく、例えば、ミスト冷却装置とガスジェット冷却装置を並列させて選択的に切替えるようにしてもよく、また、ガスジェット冷却装置のガスジェットを噴射するノズルの前に、オンオフ可能としたミスト噴射口を設け、噴射するガスジェットに選択的にミストを重畳させるようにしてもよい。すなわち、本発明においては、ミスト冷却とガスジェット冷却の切替えを特に限定するものでないことは明らかである。
【0011】
次に、冷却帯10において、ミスト冷却とガスジェット冷却の切替位置、すなわち、ミスト冷却長とガスジェット冷却長を算出し、その切替位置を制御する具体的方式について説明する。
冷却帯10における金属ストリップ1の冷却パターンは、ライン搬送スピード、金属ストリップ板厚等の操業条件と、冷却帯10入側に設けた温度測定手段12で測定した温度測定値、つまり、冷却帯入側温度(T1 )に基づき、例えば下記の計算モデル式を適用することで容易に算出できる。
【0012】
すなわち、ガスジェット冷却で金属ストリップが、温度T1 から遷移沸騰域下限温度(200 ℃)となるまでの冷却長L1 は、下記(1)式で計算できる。
【0013】
【数1】
Figure 0003783640
【0014】
ここで、LS:ラインスピード、D:板厚、ρ:密度、Cp :比熱、α:ガスジェット熱伝達係数、Ta :ガスジェット温度、である。
また、遷移沸騰域下限温度(200 ℃)から、冷却帯出側の目標温度(T2 )までのミスト冷却による冷却長L2 は、下記(2)式で計算できる。
【0015】
【数2】
Figure 0003783640
【0016】
ここで、q:ミスト冷却による熱流束、である。
図1に示す本発明の冷却設備では、上記の計算モデルを採用し、温度測定手段12で、冷却帯入側温度(T1 )を測定し、その測定値を入力として、冷却長算出装置11a で所要の計算を行い、算出した冷却長に基づいて各遮断弁13のオンオフを制御装置11で制御する。なお、水のオンオフを行う遮断弁13の個数を多くし、冷却装置10a を細分化して設けるほど制御性は良くなる。
【0017】
なお、金属ストリップの温度が100 ℃以下の領域でミスト冷却を行うと、金属ストリップの表面に付着した水滴が蒸発しにくく、金属ストリップの巻取等の次工程を行うまでに、ドライヤ等により金属ストリップを乾燥する工程が必要となる場合がある。100 ℃以下の領域をガスジェット冷却とすることにより、冷却帯出側での乾燥工程を省略できるので、100 ℃以下の領域は、ガスジェット冷却とすることが好ましい。
【0018】
【実施例】
本発明の冷却制御方法を、熱処理後の冷延鋼帯を冷却する冷却帯の制御に適用し、従来例との比較を行った。
なお、冷却を行う冷延鋼帯の板厚は0.8mm 、板幅は1500mmであり、そのラインスピードは200mpmである。また、その冷却帯入側温度は300 ℃である。
【0019】
以上の条件で、下記の2つの評価指標に基づく評価を実施した。
(1) 冷延鋼帯が100 ℃となるまでに必要とする冷却長
本発明の冷却制御方法を適用した場合、ガスジェット冷却で200 ℃となるまでの冷却長は15mであり、その後のミスト冷却による冷却長は4mであった。なお、冷却帯の残長は、再びガスジェット冷却とした。
【0020】
一方、従来例では、全長をガスジェット冷却とすると40mの冷却長が必要となる。また、全長をミスト冷却とすると9mであった。ただし、全長をミスト冷却とする場合は、冷却長は短くなるものの次項の温度偏差が問題となる。
(2) 冷却処理中の幅方向最大温度偏差
本発明の冷却方法を適用した場合の最大温度偏差( maxΔT)は、20℃であった。
【0021】
一方、従来例では、全長をガスジェット冷却とした場合、本発明適用の場合と同様、最大温度偏差( maxΔT)は20℃であった。一方、全長をミスト冷却とした場合、最大温度偏差( maxΔT)は100 ℃と非常に大きくなった。
以上の結果を、表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003783640
【0023】
【発明の効果】
本発明の適用によって、熱処理後の金属ストリップの冷却において、不均一な冷却を起こさず、かつ、冷却に要するライン長を短くすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属ストリップの冷却設備の模式図である。
【図2】水冷における遷移沸騰域について説明するグラフである。
【図3】従来の金属ストリップの冷却について説明する模式図である。
【符号の説明】
1 金属ストリップ
2 ガスジェット冷却装置
3 ミスト冷却装置
4 浸漬冷却装置
6 水供給路
7 ガス供給路
10 冷却帯
10a (個別の)冷却装置
11 冷却制御装置
11a 冷却長算出装置
12 温度測定手段
13 遮断弁

Claims (4)

  1. ガスジェット冷却とミスト冷却を自在に切替え可能な冷却装置を多段構成としてなる冷却帯で、熱処理後の金属ストリップの冷却を行う冷却方法において、前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの領域をガスジェット冷却とし、以降の冷却をミスト冷却とし、更に前記金属ストリップ温度が 100 ℃以下の領域で、ミスト冷却とされた冷却をガスジェット冷却に切替えることを特徴とする冷却方法。
  2. 前記冷却帯の入側で金属ストリップの温度を測定し、冷却帯入側の金属ストリップの温度の測定値に基いて、ガスジェット冷却により前記金属ストリップが前記遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの冷却長、および該冷却長内の冷却をガスジェット冷却とし、以降の冷却をミスト冷却としたときの金属ストリップ温度が前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却帯の冷却長を算出し、
    前記金属ストリップが前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)に至るまでの冷却長内の冷却をガスジェット冷却とし、前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長内の冷却をミスト冷却とし、前記遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長以降の冷却を再度ガスジェット冷却とすることを特徴とする請求項1に記載の冷却方法。
  3. 前記冷却装置を、水とガスを混合して噴射することで冷却を行うミスト冷却装置として構成し、冷却時に、前記水を遮断することで、各段のミスト冷却とされた冷却をガスジェット冷却に切替えることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却方法。
  4. 熱処理後の金属ストリップを冷却する冷却設備であって、ガス供給路と、水の供給を自在に遮断する遮断弁を有する水供給路とを有し、該遮断弁のオンオフでミスト冷却とガスジェット冷却を自在に切替え可能な冷却装置が多段構成とされた冷却帯と、冷却帯入側の金属ストリップの温度を測定する温度測定手段と、冷却帯入側の金属ストリップの温度測定値に基づき、ガスジェット冷却により前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度(200 ℃)に至るまでの冷却帯の冷却長、および該冷却長内の冷却装置をガスジェット冷却とし、以降の冷却装置をミスト冷却としたときの遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却帯の冷却長を算出し、
    前記金属ストリップの温度が遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)に至るまでの冷却長内の冷却装置をガスジェット冷却とし、遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長内の冷却装置をミスト冷却とし、遷移沸騰域下限温度( 200 ℃)から100℃に至るまでの冷却長以降の冷却装置を再度ガスジェット冷却とする制御機能を有してなる制御装置と、を有することを特徴とする冷却設備。
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