JP3783191B2 - モータ電力異常検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、工作機械の刃具や搬送装置の搬送機構などの作動部をサイクリックに駆動するモータに供給される電力を計測することにより刃具の欠損異常や搬送機構の異常などを検知するモータ電力異常検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、工作機械の刃具などの作動部をサイクリックに駆動するモータの供給電力を計測することにより、刃具の欠損異常を検知するモータ電力異常検知装置がある。従来のモータ電力異常検知装置の場合、図9に示すようにモータに対する起動電力供給後、ワークを切削加工した状態でモータに供給される電力の実測波形RFが電力の上限判定波形UFと下限判定波形LFとの範囲を超えた場合、モータに供給される電力が異常であり、工作機械の刃具に欠損等の異常が起きたものと判定し、外部に異常信号を出力するようになっている。
尚、図10は上記工作機械のモータに供給される電力の推移を示した実測波形であり、モータに供給される電力は、起動時電力と刃物がワークに接触する前の無負荷時電力と刃物がワークを加工しているときの加工時電力と加工終了後の無負荷時電力というように推移する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のモータ電力異常検知装置の場合、上記工作機械の例では、一般に刃具の摩耗に比例してモータに供給される電力が増えるため、上限判定波形UFは刃具の摩耗が進行した状態を想定して大きな電力の値に設定されている。反面、下限判定波形LFは刃具が新品のときに対応した小さな電力の値に設定されている。そのため、刃具が比較的新しいときに欠損した場合、モータに供給される電力が上限判定波形UFを超えないことがあるため、刃具の異常を検知することができないという問題がある。
【0004】
そこで本発明では、作動部をサイクリックに駆動するモータに供給される電力の変化率に基づいて作動部の異常を検知するモータ電力異常検知装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1のモータ電力異常検知装置は、作動部をサイクリックに駆動するモータに供給される電力を計測する電力計測手段と、前記作動部の駆動サイクル毎に前記電力計測手段が計測した前記電力のデータを記憶するデータ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶された今回の駆動サイクルの計測電力データと前回の駆動サイクルの計測電力データとの変化率に基づいて前記作動部の異常を検知する異常検知手段とを備えることである。
【0006】
請求項2のモータ電力異常検知装置は、請求項1のモータ電力異常検知装置において、前記データ記憶手段に記憶された前記計測電力データを表示するとともに前記作動部の異常が検知された場合にそれを表示する表示部を備えることである。
【0007】
請求項3のモータ電力異常検知装置は、請求項1又は2のモータ電力異常検知装置において、前記計測電力データを外部の情報処理装置に伝送可能な入出力手段を設けることである。
【0008】
請求項1、請求項2のモータ電力異常検知装置によれば、例えば、工作機械の刃具(作動部)をサイクリックに駆動するモータに供給される電力は図1に示すように推移するため、電力計測手段によりモータの供給電力が計測されると、その計測電力データがデータ記憶手段に記憶されるため、今回の駆動サイクルの計測電力データと例えば直前回の駆動サイクルの計測電力データとの変化率に基づいて前記作動部の異常が検知される。
【0009】
請求項3のモータ電力異常検知装置によれば、前記計測電力データを外部の情報処理装置に伝送することができるため、多サイクルの計測電力データを外部の情報処理装置に記憶することができるとともに、前記作動部の異常解析を外部の情報処理装置でも行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図3は、モータ電力異常検知装置1の全体的な構成を示したブロック図である。
図3に示すように、モータ電力異常検知装置1は、図示していないワークをサイクリックに切削加工する工作機械MCのモータMに供給される電力をモータ電力センサ2により計測し、その電力が異常であればモータMにより駆動される刃具Kに欠損等の異常が発生したことを検知するものである。
尚、工作機械MCは、モータ制御回路Cによる制御に基づいてモータ駆動回路DからモータMに電力が供給される。
モータ電力センサ2は、モータ駆動回路DからモータMに供給される電圧とモータMに通電される電流とを検出することにより、電圧と電流の積に基づいてモータMに供給される電力を計測する。また、モータ電力センサ2は、マイクロコンピュータを中枢とするデータ処理部3に接続されている。データ処理部3には上記モータ電力センサ2からの計測電力データを、刃具寿命サイクルの例えば32000サイクル分のデータを記憶するデータ記憶部4が接続されている。
【0011】
また、データ処理部3に接続された異常検知部5は、後述するようにデータ記憶部4に記憶された各サイクルの切削加工時の計測電力データの変化率に基づいてモータMに供給される電力の異常を検知するものである。表示部6は、異常検知部5によりモータMの供給電力の異常が検知されたとき、その異常を例えばグラフィックに表示するとともに、前記データ記憶部4に記憶された計測電力データを表示する。
【0012】
設定操作部7は、異常検知部5によりモータMの供給電力の異常を検知する場合の判定基準となる切削加工時の計測電力データの変化率の上限値を設定する場合や、データ記憶部4に記憶された計測電力データを表示器6に表示させるときの操作などをするものである。尚、工作機械MCが複数の刃具Kを備えたNC工作機械のような場合、それぞれの刃具Kについて上記変化率の上限値を設定することができる。
また、入出力部8は、外部のパーソナルコンピュータPCと接続され、前記切削加工サイクル毎の計測電力データをパーソナルコンピュータPCに伝送するために設けられている。一般に、パーソナルコンピュータPCのデータ記憶容量が大きいため、パーソナルコンピュータPCには複数台のモータ電力異常検知装置1のデータが記憶可能であり、パーソナルコンピュータPCにおいてモータMの供給電力の異常を解析することもできる。
【0013】
次に、モータ電力異常検知装置1の作用について説明する。
図4に示すように、工作機械MCのモータMに供給される電力は、起動時電力P1と、刃具Kがワークに接触する前の無負荷時電力P2と、刃具Kがワークを加工しているときの切削時電力P3と、加工終了後の無負荷時電力P4というように推移する。
図5は、前記モータ電力センサ2により計測され、データ記憶部4に記憶された各サイクルの切削加工時の計測電力データの推移を示したグラフである。また、図6はデータ記憶部4に記憶された各サイクルの切削加工時の計測電力データの今回サイクルと前回サイクルの変化率の推移を示したグラフである。
上記計測電力データの変化率はデータ処理部3で演算される。即ち、今回サイクルの切削加工時の計測電力データと前回サイクルの切削加工時の計測電力データとの変化率がデータ処理部3で演算され、その変化率が図6に示すように上限値、例えば3%を超えると前述の異常検知部5がモータMの供給電力の異常を検知する。異常検知部5がモータMの供給電力の異常を検知すると、その異常は表示部6に表示されるため、作業者は刃具Kを点検し、刃具Kの異常を確認したうえ交換する。
【0014】
前述のように、データ記憶部4には刃具Kの寿命サイクル分の計測電力データを記憶することができるため、各サイクルの切削加工時の計測電力データの推移グラフと各サイクルの切削加工時の計測電力データの変化率の推移グラフとを分析すれば、刃具Kの異常を判定するための変化率上限値を精度良く決定することができる。
【0015】
尚、図7は表示部6に表示される異常表示例であり、ナンバー67の場合は、サイクル数が12345のとき、切削電力が異常に高くなり、前回サイクルの切削電力に対する変化率が設定操作部7で設定された上限値を超えたため、刃具Kの欠損等が発生したことを示している。この異常発生日時は1998年8月17日の9時50分32秒であることを示している。
同様に、ナンバー66の場合は、サイクル数が9876のとき、切削電力が異常に高くなり、前回サイクルの切削電力に対する変化率が設定操作部7で設定された上限値を超えたため、刃具Kの欠損等が発生したことを示しており、この異常発生日時は1998年7月25日の15時23分45秒である。
同様に、ナンバー65の場合は、サイクル数が5432のとき、切削電力が異常に低下したため、即ち、例えば刃具Kが折れて無負荷状態になりモータMの供給電力が異常に低下し、前回サイクルの切削電力に対する変化率が設定操作部7で設定された上限値を超えたことを示している。この異常発生日時は1998年5月23日の11時23分45秒である。
尚、図8はナンバー66の場合、9876のサイクルのときに刃具Kの欠損異常等が発生したため切削電力が異常に高くなったことを示したものである。
【0016】
以上のように、モータ電力異常検知装置1によれば、工作機械MCのモータMに供給される切削電力を計測し、計測された電力データをデータ記憶部4に記憶することができるため、前回サイクルの切削電力と今回サイクルの切削電力との変化率が上限値を超えた場合、刃具Kに欠損異常等が発生したことを検知することができる。
【0017】
尚、上記実施の形態では工作機械のモータの例について説明したが、作動部をサイクリックに駆動する工作機械以外の装置のモータでも、供給電力の異常を検知し、作動部の異常を検知することができる。
【0018】
【発明の効果】
請求項1〜3の発明によれば、作動部をサイクリックに駆動するモータに供給される電力の変化率に基づいて作動部の異常を検知するため、作動部の異常を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用説明例としての工作機械のモータに供給される電力の推移を示したグラフである。
【図2】本発明の作用説明例としての工作機械のモータに供給される切削電力の前回サイクルと今回サイクルとの変化率の推移を示したグラフである。
【図3】モータ電力異常検知装置の構成を示したブロック図である。
【図4】実施の形態の作用説明例としての工作機械のモータに供給される電力の推移を示したグラフである。
【図5】実施の形態の作用説明例としての工作機械のモータに供給される電力の推移を示したグラフである。
【図6】実施の形態の作用説明例としての工作機械のモータに供給される切削電力の前回サイクルと今回サイクルとの変化率の推移を示したグラフである。
【図7】実施の形態の異常表示説明図である。
【図8】実施の形態の作用説明例としての工作機械のモータに供給される切削電力が異常に高くなったことを示したグラフである。
【図9】従来のモータ電力異常検知装置の異常判定説明図である。
【図10】従来技術説明用の工作機械のモータに供給される電力の推移を示したグラフである。
【符号の説明】
1 モータ電力異常検知装置
2 モータ電力センサ
3 データ処理部
4 データ記憶部
5 異常検知部
6 表示部
7 設定操作部
8 入出力部
MC 工作機械
M モータ
K 刃具
PC パーソナルコンピュータ
Claims (3)
- 作動部をサイクリックに駆動するモータに供給される電力を計測する電力計測手段と、前記作動部の駆動サイクル毎に前記電力計測手段が計測した前記電力のデータを記憶するデータ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶された今回の駆動サイクルの計測電力データと前回の駆動サイクルの計測電力データとの変化率に基づいて前記作動部の異常を検知する異常検知手段とを備えたモータ電力異常検知装置。
- 前記データ記憶手段に記憶された前記計測電力データを表示するとともに前記作動部の異常が検知された場合にそれを表示する表示部を備えた請求項1に記載のモータ電力異常検知装置。
- 前記計測電力データを外部の情報処理装置に伝送可能な入出力手段を設けた請求項1又は2に記載のモータ電力異常検知装置。
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