JP3782295B2 - 骨組織再生のための代替物構造設計支援方法とその装置 - Google Patents

骨組織再生のための代替物構造設計支援方法とその装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、骨組織再生のための代替物構造設計支援方法とその装置に関するものである。さらに詳しくは、欠損した骨の再生または修復の際に代替物として使用されるスカフォールド(scaffold)の最適な構造設計を支援する代替物構造設計支援方法とそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、人工的な骨代替物を利用することで、事故などにより欠損した骨の再生または修復を行う新たな治療法が実用化されつつある。この治療法によれば、損傷を受けた組織を除去し、損傷部に骨代替物を埋め込む。この骨代替物は、スカフォールド(足場)と呼ばれており、生分解性高分子やコラーゲンを原料とし、ポーラスな構造を有する。スカフォールドは、時間の経過とともに、加水分解などにより劣化し、体内に吸収される。一方で、スカフォールド周辺の細胞活動により、骨の形成が行われ、形成される骨組織とスカフォールドとが入れ替わることで、骨の再生または修復がなされる。すなわち、スカフォールドは、細胞の運搬体および足場としての機能と骨細胞組織形成のための空間としての機能とを併せ持ち、骨細胞組織が形成するためのガイド役として作用する。
【0003】
以上で示した手法は、新たな欠損骨の治療法として注目されている。損傷部へスカフォールドを埋め込む際には、損傷部の位置、大きさ、損傷の度合いなど様々な条件に応じて、最適なスカフォールドの外形形状および内部構造を選択する必要があることは言うまでもない。しかしながら、スカフォールドを構成する高分子の吸収劣化と骨組織の形成過程との相互作用など、明らかになっていない点も多く、長時間に渡る試行錯誤的な実験を経て、スカフォールドの設計がなされているのが現状である。このため、スカフォールドの効率的な設計支援方法が望まれていた。
【0004】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、欠損骨を再生または修復するために損傷部に埋め込まれる骨代替物の構造を最適に設計することを支援する方法と、そのための装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、欠損した骨の再生または修復に使用される骨代替物の構造を最適に設計することを支援する骨組織再生のための代替物構造設計支援方法であって、2次元または3次元の解析領域において、骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の変化をシミュレーションし、次いで、骨または骨代替物表面における骨の形成過程をシミュレーションすることで、最終的に再生または修復される骨の力学的特性および形状を算出することを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を第1の態様として提供する。
【0006】
また、この出願の発明は、第2の態様として、上記第1の態様において、欠損した骨の再生または修復に使用される骨代替物の構造を最適に設計することを支援する骨組織再生のための代替物構造設計支援方法であって、2次元または3次元の解析領域において、生体内に骨代替物を埋め込んだ時点での生体内における力学的特性および形状を初期値として設定する第1のステップ、骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の時間変化をシミュレーションして解析領域の各要素について算出する第2のステップ、解析領域における応力分布より骨または骨代替物表面における骨の形成過程をシミュレーションすることで、最終的に再生または修復される骨の力学的特性および形状を算出し、骨または骨代替物の再構築を行う第3のステップ、第3のステップにて骨または骨代替物の再構築により骨の形状の変化の有無を判断する第4のステップ、第4のステップにて骨の形状の変化がないと判断された場合には、第3のステップにて算出された再生または修復される骨の力学的特性より力学的特性評価量を、また、形状より形状評価量を算出し、第4のステップにて骨の形状の変化があると判断された場合には第2のステップに戻って計算を繰り返すように指示する第5のステップ、第5のステップで算出された力学的評価量および形状評価量が予め決定されていた目標の範囲内にあるか否かを判断する第6のステップ、第6のステップにて算出された再生または修復される骨の力学的特性評価量および形状評価量が予め決定されていた目標の範囲内である場合には、処理を終了させ、あらかじめ決定されていた目標の範囲内にない場合には生体内に骨代替物を埋め込んだ時点での力学的特性および形状を新たな初期値として再設定し前記の第2から第6のステップを繰り返して実行する第7のステップ、を備えることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供する。
【0007】
また、この出願の発明は、第3の態様として、上記第2の様態において、前記の第2のステップが、2次元または3次元の解析領域において、解析領域を構成する複数の要素のそれぞれについて含水率を算出するステップa、ステップaで算出された含水率より求められる分子量変化率からそれぞれの要素について分子量を算出するステップb、ステップbで算出された分子量から力学的特性を算出することで、骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の変化をシミュレーションするステップc、よりなることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供し、さらに、第4の態様として、上記第2または第3の態様において、前記の第3のステップが、2次元または3次元の解析領域において、解析領域を構成する複数の要素のそれぞれに骨または骨代替物の力学的特性を初期値として設定することで応力解析により各要素の応力を算出するステップd、ステップdで算出された応力から骨または骨代替物の表面に対応する表面要素について骨形成駆動力を算出するステップe、ステップeで算出された表面要素について骨形成速度を算出するステップf、ステップfで算出された骨形成速度から表面要素における骨の状態を形成、吸収、または、休止の3状態に判別するステップg、ステップgで表面要素における骨の状態に応じて表面要素の付加または除去を行うことにより骨または骨代替物の形状を変更することで、骨または骨代替物表面の骨形成過程をシミュレーションするステップh、よりなることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供する。
【0008】
そして、この出願の発明は、第5の態様として、上記第2から第4のいずれかの態様に おいて、評価に用いられる力学的特性評価量が、解析領域全体の見掛けの応力解析領域全体の見掛けの歪み、または解析領域全体の見掛けの剛性であることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供し、第6の態様として、上記第2から第5のいずれかの態様において、評価に用いられる骨の形状評価量が、解析領域全体に対する骨の平均体積分率骨の平均厚さ、または単位体積あたりの骨梁数であることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供し、さらに、第7の態様として、上記第1から第5のいずれかの態様において、2次元または3次元の解析領域を構成する要素モデルを、MRIX線CT、または超音波CTにより取得される医療用計測画像から作成することを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法を提供する。
【0009】
さらに、この出願の発明は、上記第1から第7のいずれかの態様の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法をコンピュータによるシミュレーションで可能とすることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援装置を提供する。そして、この出願の発明は、上記第1から第7のいずれかの態様の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法により最適設計された骨代替物の構造を構成する要素モデルデータを光造形装置に入力し骨代替物を作成することを特徴とする骨代替物作成方法をも提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、この出願の発明に係る骨組織再生のための代替物構造設計支援方法についての流れ図である。
【0012】
この出願の発明に係る骨組織再生のための代替物構造設計支援方法においては、まず、2次元または3次元の解析領域を、複数の要素に分割し、それぞれの要素について初期値を設定し、また、解析領域内において境界値を設定する(ステップ(A))。解析領域は、図2(A)に示すような骨または骨代替物(21)を、図2(B)のように、骨または骨代替物(21)の持つ曲線的な形状を再現できるような寸法となるように、複数の要素(22)へ分割される。
【0013】
以上の解析領域の要素分割は、MRIX線CT、または超音波CTにより取得される医療用計測画像から直接実施することも可能である。
【0014】
次に、骨代替物が吸収されることにより力学的特性が劣化する時間変化を、シミュレーションにより解析領域の各要素について算出する(ステップ(B))。
【0015】
ステップ(B)においては、解析領域において、解析領域を構成する複数の要素のそれぞれについて含水率を算出する(ステップ(B1))。含水率は次式の方程式
【0016】
【数1】
Figure 0003782295
【0017】
を解くことにより求められる。
【0018】
次いで、ステップ(B1)で算出された含水率hから、解析領域のそれぞれの要素について分子量Wを算出する。分子量の時間変化は次式
【0019】
【数2】
Figure 0003782295
【0020】
のように含水率hの単調減少関数として表されることから、分子量Wは、上記式( II を積分することで求められる(ステップ(B2))。
【0021】
さらに、ステップ(B2)で算出された分子量Wより、各要素における力学的特性が求められる。各要素の力学的特性Mは次式
【0022】
【数3】
Figure 0003782295
【0023】
により算出される(ステップ(B3))。
【0024】
以上のステップ(B1)〜(B3)により、骨代替物が吸収されることによる力学的特性の変化がシミュレーションされる。
【0025】
次に、骨または骨代替物表面における骨の形成過程のシミュレーションを実行し、最終的に再生または修復される骨の力学的特性および形状を算出する(ステップ(C))。
【0026】
ステップ(C)においては、まず、解析領域において、骨または骨代替物の力学的特性を、解析領域を構成する各要素の初期値として設定して応力解析を行うことにより各要素の応力を算出する(ステップ(C1))。
【0027】
次いで、ステップ(C1)で算出された応力から、骨または骨代替物の表面に対応する表面要素について骨形成駆動力を求める(ステップ(C2))。表面要素数をNとすると、表面要素cに対する骨形成駆動力Γcは、次式
【0028】
【数4】
Figure 0003782295
【0029】
で算出される。
【0030】
さらに、ステップ(C2)で算出された骨形成駆動力から、各表面要素について骨形成速度を求める(ステップ(C3))。表面要素cにおける骨形成速度Mは、駆動力Γcの正負に応じて決定する。すなわち、駆動力Γcが正の値を取る場合には、骨形成速度Mcも正の値をとり、駆動力Γcが負の値を取る場合には、骨形成速度Mcも負の値をとる。また、駆動力Γcが0である場合には、骨形成速度Mcは0となる。このとき、骨形成速度Mcの値が正であれば、表面要素cにおいて新たに骨が形成されていることを意味する。一方、骨形成速度Mの値が負であれば、表面要素cにおいて骨が吸収されることを意味する。また、骨形成速度Mcが0のときには、表面要素cにおける骨の状態変化は休止状態にあることを意味する。
【0031】
この出願の発明においては、解析領域を離散的に分割することから、現実的には連続的な値を取る表面移動速度は離散的となり、その決定に際しては確率的なランダム性を導入することで離散性が補われる。例えば、図3に示すような確率関数PMcを導入し、表面要素cにおける骨形成速度Mcの値を−1、0、1の3通りとなるように限定する。すなわち、表面移動速度は、確率PMcと要素辺長との積となる。図3において、ΓuとΓlは閾値を表しており、Γl≦Γc≦0および0≦Γc≦Γuの領域はそれぞれ確率関数PMcを正弦曲線で補間している。骨または骨代替物の形状の変化が進み、表面応力が一様化されてくると、駆動力Γcの値は0に近づき、骨または骨代替物表面での骨の形成が起きる確率であるPMcは小さくなる。
【0032】
以上により、骨形成速度Mcを求め、図4に示すように、Mc=1の場合には、骨または骨代替物の要素(41)の内、表面要素(42)に新たな骨または骨代替物の要素を付加し、逆に、Mc=−1の場合には、表面要素を削除することで、骨または骨代替物の表面の再構築を行う(ステップ(C4))。
【0033】
骨または骨代替物の表面の再構築により骨の形状の変化が生じた場合には、ステップ(B)に戻り、計算を繰り返す(ステップ(D))。ここで、骨または骨代替物の表面の再構築により骨の形状の変化が得られない場合には、平衡状態に達したものと判断され、次のステップ(E)へと進む。
【0034】
ステップ(E)において、平衡状態に達した骨の力学的特性評価量および形態評価量が算出される。骨の力学的特性評価量として、例えば、解析領域全体の見掛けの応力、見掛けの歪み、または、見掛けの剛性が算出される。また、骨の形態評価量として、例えば、解析領域全体に対する骨の平均体積分率、骨の平均厚さ、単位体積あたりの骨梁数が算出される。
【0035】
次いで、ステップ(F)において、平衡状態に達した骨の力学的特性評価量および形態評価量が、予め決定されていた目標の範囲内にあるか否かが判断され、目標の範囲内にない場合には生体内に骨代替物を埋め込んだ時点での生体内における力学的特性および形状を新たな初期値として再設定し、前記のステップ(B)以降を実行する。
【0036】
そして、この出願の発明においては、上記のシミュレーションがコンピュータ(電子計算機)等によりなされることが特徴でもある。
【0037】
さらに、この出願の発明においては、以上で詳細に説明した骨組織再生のための代替物構造設計支援方法により最適設計された骨代替物の構造について、要素モデルデータを用意し、この要素モデルデータを光造形装置に入力し、骨代替物を簡便に作成することも可能である。
【0038】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0039】
【実施例】
この出願の発明に基づき、骨代替物による骨組織再生についてシミュレーションを行った結果を示す。
【0040】
実施例1
図5に示すような、骨代替物を縦横それぞれ15個のPixel要素に分割したモデルについてシミュレーションを行った。Pixel要素の一辺は、100μmに設定した。モデルの上端および下端に仮想的な剛体板を配置し、上端の剛体板には上面より2MPaの一様圧縮応力を加えた。新たに形成される骨および骨代替物は、等方線形弾性体と仮定した。骨および骨代替物の力学的特性(ヤング率、ポアソン比)は、表1で示した値に設定した。
【0041】
【表1】
Figure 0003782295
【0042】
反復計算回数10回、15回、20回、30回、50回における骨組織の再生過程における、骨および骨代替物の形状変化について、それぞれ図6(A)〜(E)に示す。再生初期(図6(A))における新たな骨の形成が行われているのは、主に、骨代替物中央部および上下の境界近傍の3箇所である。これらの3箇所は、いずれも高い応力を示す箇所である。これらの3箇所において骨が成長し太くなり、同時に代替物は骨表面から吸収劣化される(図6(B)〜(D))。このような過程を経て、反復計算回数50回においては、骨代替物のほとんどが、新しい骨に置き換わっている(図6(E))。
【0043】
再生過程における骨代替物のひずみエネルギの変化について、図7に示す。骨代替物が吸収または劣化するにつれて、反復計算回数が増加する程、荷重支持構造としての剛性が増し、ひずみエネルギが減少する。
【0044】
図8は、骨代替物の全分子量の変化および骨部の全体積の変化について示したグラフである。図8により、骨代替物が時間とともに吸収(分解)され、一方、骨が形成され体積が増加することが示された。
【0045】
実施例2
図9に示すような、骨代替物を縦横それぞれ30個のPixel要素に分割したモデルについてシミュレーションを行った。Pixel要素の一辺は、100μmに設定した。モデルの上端および下端に仮想的な剛体板を配置し、上端の剛体板には上面より2MPaの一様圧縮応力を加えた。新たに形成される骨および骨代替物は、等方線形弾性体と仮定した。骨および骨代替物の力学的特性(ヤング率、ポアソン比)は、表2に示した値に設定した。
【0046】
【表2】
Figure 0003782295
【0047】
反復計算回数70回および150回における骨組織の再生過程における、骨および骨代替物の形状変化について、それぞれ図10(A)、(B)に示す。反復計算回数150回においては、骨代替物の全てが、新しい骨に置き換わっている。
【0048】
式(II)における定数αの値による、再生過程の変化について検討した。式(II)においてαが大きい値をとるほど、分子量の時間変化は大きくなる。すなわち、αは分子量の変化の加速度に対応し、αの値が大きいほど骨代替物が吸収劣化しやすいことを意味する。
【0049】
定数αをα=1000,2000,3000と設定したときの再生過程における骨部および骨代替物を合わせた全ひずみエネルギの変化について、図11に示す。図11により、定数αの値が大きいときには、早い反復回数で、全ひずみエネルギの変化があらわれた。また、定数αをα=1000,2000,3000と設定したときの骨部の全体積の変化について図12に示す。図12により、定数αの値が大きいときには、早い反復回数において、骨部の全体積の変化が現われた。
【0050】
以上のように、αの値を調整することで骨代替物が吸収劣化のしやすさに対する再生過程の差異を算出することができる。
【0051】
実施例3
図13に示すような、骨代替物を縦横それぞれ30個のPixel要素に分割したモデルについてシミュレーションを行った。Pixel要素の一辺は、100μmに設定した。モデルの上端および下端に仮想的な剛体板を配置し、上端の剛体板には上面より2MPaの一様圧縮応力を加えた。新たに形成される骨および骨代替物は、等方線形弾性体と仮定した。骨および骨代替物の力学的特性(ヤング率、ポアソン比)は、表2に示した値に設定した。
【0052】
反復計算回数70回および150回における骨組織の再生過程における、骨および骨代替物の形状変化について、それぞれ図14(A)、(B)に示す。反復計算回数150回においては、骨代替物の全てが、新しい骨に置き換わっている。
【0053】
再生過程における骨部と骨代替物それぞれについてのひずみエネルギ、および、骨部および骨代替物を合わせた全ひずみエネルギの変化について、図15に示す。図15より、反復計算回数の増加とともに、骨代替物のひずみエネルギが低下し、代わりに骨のひずみエネルギが増加する様子が見られ、以上で示した骨再生過程において、剛性(ひずみエネルギ)を保持しつつ、骨代替物の吸収および劣化とあたらしい骨の形成がなされていることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳しく説明した通り、この出願の発明により、欠損骨を再生または修復するために損傷部に埋め込まれる骨代替物の構造を最適に設計することを支援する方法と、そのための装置が提供される。生体組織は、部位により形態や機能も異なり、骨代替物の構造を決定することは非常に困難であるが、この出願の発明により、個々の症例に応じた個別モデリングやシミュレーションが可能となり、骨代替物の構造設計の実用化が実現することが強く期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この出願の発明である骨組織再生のための代替物構造設計支援方法の処理手順を示した流れ図である。
【図2】 この出願の発明である骨組織再生のための代替物構造設計支援方法における解析領域の要素分割について示した概要図である。
【図3】 この出願の発明である骨組織再生のための代替物構造設計支援方法において、表面要素cにおける骨形成速度Mの値の出現確率関数PMcについて示したグラフである。
【図4】 この出願の発明である骨組織再生のための代替物構造設計支援方法において、骨または骨代替物の表面の再構築について示した概要図である。
【図5】 この出願の発明の実施例で与えられたモデルの要素分割について示した概要図である。
【図6】 この出願の発明での実施例において、反復計算回数に対する骨および骨代替物の形状変化について示した概要図である。
【図7】 この出願の発明での実施例において、再生過程における骨代替物のひずみエネルギの変化について示したグラフである。
【図8】 この出願の発明での実施例において、骨代替物の全分子量の変化および骨部の全体積の変化について示したグラフである。
【図9】 この出願の発明の実施例で与えられたモデルの要素分割について示した概要図である。
【図10】 この出願の発明での実施例において、反復計算回数に対する骨および骨代替物の形状変化について示した概要図である。
【図11】 この出願の発明での実施例において、定数αの値に対する骨部および骨代替物を合わせた全ひずみエネルギの変化について示したグラフである。
【図12】 この出願の発明での実施例において、定数αの値に対する骨部の全体積の変化について示したグラフである。
【図13】 この出願の発明の実施例で与えられたモデルの要素分割について示した概要図である。
【図14】 この出願の発明での実施例において、反復計算回数に対する骨および骨代替物の形状変化について示した概要図である。
【図15】 この出願の発明での実施例において、再生過程における骨部と骨代替物それぞれについてのひずみエネルギ、および、骨部および骨代替物を合わせた全ひずみエネルギの変化について示したグラフである。
【符号の説明】
21 骨または骨代替物
22 要素
41 骨または骨代替物の要素
42 表面要素

Claims (9)

  1. 欠損した骨の再生または修復に使用される骨代替物の構造を最適に設計することを支援する骨組織再生のための代替物構造設計支援方法であって、2次元または3次元の解析領域において、骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の変化をシミュレーションし、次いで、骨または骨代替物表面における骨の形成過程をシミュレーションすることで、最終的に再生または修復される骨の力学的特性および形状を算出することを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  2. 欠損した骨の再生または修復に使用される骨代替物の構造を最適に設計することを支援する骨組織再生のための代替物構造設計支援方法であって、
    2次元または3次元の解析領域において、生体内に骨代替物を埋め込んだ時点での生体内における力学的特性および形状を初期値として設定する第1のステップ、
    骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の時間変化をシミュレーションして解析領域の各要素について算出する第2のステップ、
    解析領域における応力分布より骨または骨代替物表面における骨の形成過程をシミュレーションすることで、最終的に再生または修復される骨の力学的特性および形状を算出し、骨または骨代替物の再構築を行う第3のステップ、
    第3のステップにて骨または骨代替物の再構築により骨の形状の変化の有無を判断する第4のステップ、
    第4のステップにて骨の形状の変化がないと判断された場合には、第3のステップにて算出された再生または修復される骨の力学的特性より力学的特性評価量を、また、形状より形状評価量を算出し、第4のステップにて骨の形状の変化があると判断された場合には第2のステップに戻って計算を繰り返すように指示する第5のステップ、
    第5のステップで算出された力学的評価量および形状評価量が予め決定されていた目標の範囲内にあるか否かを判断する第6のステップ、
    第6のステップにて算出された再生または修復される骨の力学的特性評価量および形状評価量が予め決定されていた目標の範囲内である場合には、処理を終了させ、あらかじめ決定されていた目標の範囲内にない場合には生体内に骨代替物を埋め込んだ時点での力学的特性および形状を新たな初期値として再設定し前記の第2から第6のステップを繰り返して実行する第7のステップ
    を備えることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  3. 前記の第2のステップが、
    2次元または3次元の解析領域において、解析領域を構成する複数の要素のそれぞれについて含水率を算出するステップa、
    ステップaで算出された含水率より求められる分子量変化率からそれぞれの要素について分子量を算出するステップb、
    ステップbで算出された分子量から力学的特性を算出することで、骨代替物の吸収および劣化による力学的特性の変化をシミュレーションするステップc、
    よりなることを特徴とする請求項2の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  4. 前記の第3のステップが、
    2次元または3次元の解析領域において、解析領域を構成する複数の要素のそれぞれに骨または骨代替物の力学的特性を初期値として設定することで応力解析により各要素の応力を算出するステップd、
    ステップdで算出された応力から骨または骨代替物の表面に対応する表面要素について骨形成駆動力を算出するステップe、
    ステップeで算出された表面要素について骨形成速度を算出するステップf、
    ステップfで算出された骨形成速度から表面要素における骨の状態を形成、吸収、または、休止の3状態に判別するステップg、
    ステップgで表面要素における骨の状態に応じて表面要素の付加または除去を行うことにより骨または骨代替物の形状を変更することで、骨または骨代替物表面の骨形成過程をシミュレーションするステップh、
    よりなることを特徴とする請求項2または3の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  5. 評価に用いられる力学的特性評価量が、解析領域全体の見掛けの応力解析領域全体の見掛けの歪み、または解析領域全体の見掛けの剛性であることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  6. 評価に用いられる骨の形状評価量が、解析領域全体に対する骨の平均体積分率骨の平均厚さ、または単位体積あたりの骨梁数であることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  7. 2次元または3次元の解析領域を構成する要素モデルを、MRIX線CT、または超音波CTにより取得される医療用計測画像から作成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法。
  8. 請求項1から7のいずれかの骨組織再生のための代替物構造設計支援方法をコンピュータによるシミュレーションで可能とすることを特徴とする骨組織再生のための代替物構造設計支援装置。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載の骨組織再生のための代替物構造設計支援方法により最適設計された骨代替物の構造を構成する要素モデルデータを光造形装置に入力し骨代替物を作成することを特徴とする骨代替物作成方法。
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