JP3781733B2 - キトサンを含む植物の耐病性及び成長を向上する組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キトサンを主成分とし、有機酸を含有する組成物を利用することによる、植物の病害防除及び植物の成長の分野に関する。
【0002】
本発明は、現在使用されている農薬(殺菌剤)に比較して、環境安全面で遥かに優れており、更に病原体に対する効果は農薬(殺菌剤)に劣らない。
【0003】
【従来の技術】
キトサンと有機酸の組成物を植物成長調節剤、病害防除剤として、農業用に利用する技術は既に知られている(米国特許第4,812,159号、特開平10−309129号、特表2001−507361号、及びロシア国特許第2158510号、それぞれ、特許文献1〜4を参照のこと)。これらに示された組成物は、キトサンにグルタミン酸、乳酸、コハク酸等の有機酸を1種又は2種以上使用したものである。キトサンのアミノ基に対しカルボキシル基が1.02倍量以上の量から質量でキトサンと同量までの量を使用して、組成物を製造し、植物成長調製剤として使用している。しかしながら、分子量の異なるキトサンを2種類以上使用している例は、報告されていない。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4,812,159号
【特許文献2】
特開平10−309129号
【特許文献3】
特表平2001−507361号
【特許文献4】
ロシア国特許第2158510号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記文献は、キトサンと有機酸を含む組成物として、植物成長調整剤、病害防除剤等として、使用しているが、適用範囲が狭い、効果が安定しない等の問題点を有していた。本発明は、この様な状況の中、キトサンを成分とし、効果の増強された、植物の耐病性及び成長を向上する組成物及び当該組成物の使用方法を提供することを課題の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、植物の耐病性及び成長を向上する組成物の適用範囲を広げるため、検討した結果、キトサンの分子量の異なるものを少なくとも2種用いることにより、植物種や処理方法による効果の差を少なくすることができ、植物耐病性及び成長を向上する効果を増強できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は例えば、下記の項目よりなる。
【0008】
[1](A)分子量3000〜60000のキトサン、(B)分子量35000〜90000のキトサン(但し、(A)のキトサンの分子量と(B)のキトサンは分子量が異なるように選択するものとする。)並びに(C)乳酸及び/又はコハク酸を含有することを特徴とする、植物の耐病性及び成長を向上する組成物。
【0009】
[2](A)及び(B)のキトサンの脱アセチル化度が60%〜90%(但し、(A)、(B)で脱アセチル化度は同一でも異なっていてもよい。)であることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
【0010】
[3](A)及び(B)のキトサンの含有量の比率が、1:0.9〜1.1であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の組成物。
【0011】
[4](A)及び(B)のキトサンの含有量が合計で組成物の5質量%〜15質量%であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
【0012】
[5](C)乳酸及び/又はコハク酸を2質量%以上15質量%未満含有することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
【0013】
[6]コハク酸を組成物の0.5〜5質量%、乳酸を組成物の1〜10質量%含有し、その合計量がキトサンの0.4質量倍以上1.0質量倍未満であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
【0014】
[7]乳酸及びコハク酸以外の(D)有機カルボン酸を含有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[8](D)有機カルボン酸が、グルタミン酸、サリチル酸、アラキドン酸及びインドール酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[7]に記載の組成物。
【0016】
[9](D)有機カルボン酸の含有量が組成物の0.0001質量%〜5質量%であることを特徴とする、[7]又は[8]に記載の組成物。
【0017】
[10](E)無機塩を含有することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
【0018】
[11](E)がケイ酸塩、亜リン酸塩及びリン酸塩から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、[10]に記載の組成物。
【0019】
[12](E)の含有量が組成物の1質量%〜5質量%であることを特徴とする、[10]又は[11]に記載の組成物。
【0020】
[13](F)ジメチルスルフォキシドを組成物の3〜15質量%含有することを特徴とする、[1]〜[12]のいずれかに記載の組成物。
【0021】
[14](G)炭素数1〜8の枝分かれしていてもよいアルキル基を有するアルコールを含有することを特徴とする、[1]〜[13]のいずれかに記載の組成物。
【0022】
[15](G)アルコールがイソアミルアルコールであることを特徴とする、[14]に記載の組成物。
【0023】
[16](G)アルコールの含有量が組成物の0.5質量%〜5質量%であることを特徴とする、[14]又は[15]に記載の組成物。
【0024】
[17](H)界面活性剤を含むことを特徴とする、[1]〜[16]のいずれかに記載の組成物。
【0025】
[18](H)界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群の少なくとも1種であることを特徴とする、[17]に記載の組成物。
【0026】
[19](H)界面活性剤の含有量が組成物の0.5質量%〜3質量%であることを特徴とする、[17]又は[18]に記載の組成物。
【0027】
[20](I)水を含有することを特徴とする、[1]〜[19]のいずれかに記載の組成物。
【0028】
[21](I)水含有量が40質量%〜93質量%であることを特徴とする、[20]に記載の組成物。
【0029】
[22]水で希釈して使用することを特徴とする、[1]〜[21]のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【0030】
[23]水による希釈倍率が30質量倍〜700質量倍であることを特徴とする、[22]に記載の使用方法。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるキトサンは、天然多糖類である下記式(1)で表されるキチンのアセトアミド基を加水分解し、脱アセチル化し、アミノ基としたものである。
【0032】
【化1】
【0033】
加水分解の程度により、アセトアミド基とアミノ基の比率が異なり、
【0034】
アミノ基の数/(アセトアミド基の数+アミノ基の数)×100
【0035】
を脱アセチル化度(%で表す。測定方法は後述する。)という。
【0036】
本発明で用いるキトサンは、脱アセチル化度が60%〜90%であるものを使用する。より好ましくは、脱アセチル化度65%〜80%である。脱アセチル化度が低すぎるとキトサンの水への溶解度が低下するため、使用し難くなり、効力も低下する。また、脱アセチル化度が高すぎる場合にも安定した効力は得られない。
【0037】
本発明のキトサンは、天然のキチンから得られたキトサンを加水分解し、濾過し、乾燥して得られる。加水分解条件により所望の分子量のキトサンを得ることができる。また、キトサンは、大日精化工業株式会社、焼津水産化学工業株式会社等の市販のものを使用することもできる。この様にして得られたキトサンの分子量とは質量平均分子量を指し、そのキトサンの分子量は、オストワルド粘度測定法により求めた粘度から換算して求める(測定方法は後述する。)。
【0038】
本発明では、上記の様に定義した分子量で、少なくとも(A)分子量3000〜60000のキトサン、(B)分子量35000〜90000のキトサンの2種類以上を使用する。但し、(A)として選択したキトサンと(B)として選択したキトサンの分子量が同じにならないように選択する。この時、(A)及び(B)のキトサンの分子量の差は、10000以上であることが好ましく、より好ましくは20000以上である。また、分子量の範囲としては、(A)の分子量が3000〜30000、(B)の分子量が35000〜80000が好ましく、より好ましくは(A)の分子量が5000〜20000であり、(B)の分子量が40000〜70000である。分子量が2種以上のキトサンを使用することにより、1種類の分子量のキトサンを使用した場合よりも植物を病害から守る効果が増強される。また、植物病原体の抗菌スペクトラムが広くなり、充分な耐病性及び成長を向上する効果が得られる。
【0039】
本発明では、キトサンに対して、(C)乳酸及び/又はコハク酸を併用する必要がある。乳酸及び/又はコハク酸の使用量は、キトサンを溶解する必要があるため、キトサンのアミノ基に対し、カルボキシル基が等モル以上使用する必要がある。また、多すぎると酸性度が上がるため、植物に悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
【0040】
好ましい使用量は、組成物に対し、2質量%以上15質量%未満であり、特に、コハク酸、乳酸成分として好ましい使用範囲は、コハク酸を組成物の0.5〜5質量%、乳酸を組成物の1〜10質量%使用するのが望ましい。さらに、乳酸及びコハク酸の合計量として、キトサン使用量に対し、0.4質量倍以上1質量倍未満であることが望ましい。ここでの使用量は、カルボキシル基が遊離の状態の酸の量であり、アルカリで中和した場合にはその分の量は除いた量である。
【0041】
本発明では、植物に悪影響を及ぼさないものであれば、耐病性及び成長を向上する効果を増強するために、乳酸、コハク酸以外の(D)有機カルボン酸を単独又は併用して使用してもよい。有機カルボン酸としては、生物に生理活性作用を有するものが、より有効であり好ましい。この様な有機カルボン酸としては、グルタミン酸、サリチル酸、アラキドン酸、インドール酢酸が例示され、これらは1種又は2種以上を使用してもよい。
【0042】
(D)有機カルボン酸は、植物に悪影響を与える程の量を使用しなければ、使用量に特に制限はないが、その作用性により、使用量は自ずと制限される。例えば、植物ホルモン作用を有する化合物では、多くを使用することは、逆効果となる。一般的には、組成物の0.0001質量%〜5質量%使用することが好ましい。
【0043】
本発明は、(E)無機塩を使用することができる。無機塩として、特に植物に対して、有効なケイ酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩が好ましく、これらは単独で使用しても又は併用してもよい。ケイ酸塩は特にイネ科植物には、有用であり、収量増加等の作用が期待できる。無機塩は、組成物の1質量%〜5質量%使用することが好ましい。
【0044】
本発明では、(F)ジメチルスルフォキシド(DMSO)を使用することができる。DMSOは本発明のキトサン等の組成物成分を植物に吸収し易くし、作用を発現しやすくするために有用である。DMSOは、植物に影響が出ず、上記の無機塩の溶解性が保たれる量を使用することができる。好ましくは、組成物の3質量%〜15質量%であり、より好ましくは5質量%〜10質量%である。
【0045】
本発明では、(G)炭素数1〜8の枝分かれしていてもよいアルキル基を有するアルコールを使用することができる。このアルコールは、組成物の泡立ちを抑制し、組成物の安定性を保つために有効である。特に炭素数4〜6のアルキルアルコールが好ましく、イソアミルアルコールが特に好ましい。アルコールの含有量は、組成物の0.5質量%〜5質量%が好ましい。
【0046】
本発明では、(H)界面活性剤を使用することができる。界面活性剤はキトサン等の薬剤の植物表面への定着性を良くするという効果がある。界面活性剤としては、植物に影響のないものであれば、特に制限なく使用できるが、農薬の展着剤用に使用可能なものが好ましい。より好ましくはノニオン系の界面活性剤であり、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが例示される。
【0047】
(H)界面活性剤は、組成物の0.5質量%〜3質量%使用するのが好ましい。
【0048】
本発明の組成物には、植物に影響がなければ、その他の溶媒を使用し、組成物の安定性を増すことも可能であるが、残りの成分は実質的には、(I)水であり、水の含有量は、上記成分と合計で100質量%になるように使用される。具体的には、使用する成分により異なるが、40質量%〜93質量%使用するのが好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、キトサンの水への溶解状態の安定性と植物への安全性の面から組成物のpHが重要である。市販のpHメーターを使用し、pHとして通常4.0〜5.5であることが好ましいが、上記の成分を用い、上記の使用量の範囲内であれば、特段pHを調整する必要はない。但し、使用する水のpHがかなり酸性又はアルカリ性にずれている場合、酸性度の強い有機カルボン酸を使用した場合、キトサンを溶解しやすくするため大量の酸(乳酸、コハク酸等)を使用した場合の様に組成物のpHが上記範囲を大きく外れる場合には、アルカリ性の場合には、乳酸、コハク酸により、酸性の場合には炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリによりpHを調整する。
【0050】
本発明の組成物は、上記の必要成分を均一の水溶液にすることができれば、混合の順番等は問わず、どの様に混合してもかまわない。但し、通常はキトサンが中性の水に溶解し難いため、乳酸及び/又はコハク酸を水(蒸留水、精製水を使用することが好ましい。)に溶解しておき、撹拌しながらキトサンを添加、溶解し、その後にその他の必要成分を、必要により水等に溶解して添加し、製造するのが好ましい。
【0051】
本発明の組成物を実際に植物体に使用、処理する場合は、必要量の水に希釈して使用する。この時の希釈倍率は、植物の種類によっても異なるが、通常30質量倍〜700質量倍であり、より好ましくは50質量倍から350質量倍である。
【0052】
<脱アセチル化度の測定方法>
財団法人日本健康・栄養食品協会「健康食品規格基準の公示」(平成7年6月1日発行)の方法に準じた下記方法を用いる。
ポリビニール硫酸カリウム(PVSK)を使用したコロイド滴定によって遊離アミノ基を測定し、キトサンの脱アセチル化度を求める。
200mlメスフラスコ中に乾燥減量試験法にしたがった乾燥後、キトサン試料1.0gを精密採取し、0.5%酢酸溶液を加えて溶解し、正確に200mlとする。キトサン試料溶液1.0gを正確に滴定容器に採取し、水50mlとトルイジンブルー(指示薬)試料溶液0.2mlを加えて充分混合後、ポリビニール硫酸カリウム溶液で滴定する。終点は青色が赤紫色に変わる点とする。滴定量をVmlとする。
【0053】
同様にキトサン試料を加えない溶液を滴定する。滴定量をBmlとする。
ポリビニール硫酸カリウム溶液は、約1/400Nで精密に求めておく。その濃度を[PVSK]とする。
【0054】
キトサン中の遊離アミノ基質量(X)(グルコサミン残基の質量に相当)と結合アミノ基質量(Y)(N−アセチルグルコサミン残基の質量に相当)は、
【0055】
X=キトサン中の遊離アミノ基質量=[PVSK]×161/1000×(V−B)
【0056】
Y=キトサン中の結合アミノ基質量=0.5×1/100―X
【0057】
となり、脱アセチル化度は下記式:
【0058】
脱アセチル化度(%)
=(X/161)/(X/161+Y/203)×100
【0059】
に従って計算される。
【0060】
尚、161はグルコサミン残基の当量分子量であり、203はN−アセチルグルコサミン残基の当量分子量である。
【0061】
<キトサン分子量の測定方法>
オストワルド粘度計を用い、比粘度を測定し、以下の表1の換算表を用いて、求める。
測定溶液は、キトサン試料50mgに4%酢酸水溶液50ml、0.6M/Lの食塩水50mlを加え、溶解して調製する。シバタ製オストワルド粘度計の内径0.5mmの毛細管を使用し、刻線aから刻線bの通過時間を測定し、この時間をtとする。
【0062】
キトサンを溶解しない溶液を調製し、同様に刻線aから刻線bの通過時間を測定し、この時間をt0とする。
【0063】
t、t0ともに3回測定し、平均値を使用する。
【0064】
比粘度は、下記式:
比粘度=t/t0−1
【0065】
で計算される。
【0066】
【表1】
【0067】
【実施例】
【0068】
【0069】
【0070】
<比較組成物例7>
成分名 成分含有量
(質量%)
(A)キトサン(分子量10,000 脱アセチル化度70%) 3.5%
(B)キトサン(分子量40,000 脱アセチル化度70%) 3.5%
(C)乳酸 6.2%
コハク酸 1.5%
(D)アラキドン酸 2.0%
(E)リン酸二水素ナトリウム 2.1%
(F)ジメチルスルフォキシド 7%
(G)イソアミルアルコール 0.7%
(H)界面活性剤(*) 0.7%
(*)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート
(I)水 72.8%
【0071】
<比較組成物例8>
成分名 成分含有量
(質量%)
(A)キトサン(分子量10,000 脱アセチル化度85.1%) 3.5%
(B)キトサン(分子量80,000 脱アセチル化度78.8%) 3.5%
(C)乳酸 0.7%
コハク酸 2.8%
(D)サリチル酸 2.0%
(E)リン酸二水素ナトリウム 2.1%
(F)ジメチルスルフォキシド 7%
(G)イソアミルアルコール 0.7%
(H)界面活性剤(*) 0.7%
(*)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート
(I)水 77.0%
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
<実施例1>
ポット植えの2、3葉期のキュウリ(品種:ときわ光3号P型)に組成物例1、比較組成物例1、比較組成物例2をそれぞれ水で200倍に希釈し、供試作物の第1葉と第2葉の表裏面ともに、45ミリリットル/3ポット散布処理した。
翌日、第1葉、第2葉表裏面に灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)胞子懸濁液(最終濃度3×105個/ミリリットル、DIFCO Potato Dextrose Broth 1.2%)を噴霧接種した。
5日後、本葉2、3、4葉について、各発病面積率を調査し、発病度を求めた。更に無処理区との比較により防除価を算出した。
3ポットの平均の結果を下記に示す。
【0080】
使用薬剤 希釈倍率 発病面積率 防除価
組成物例1 200倍 13.3% 86.7%
比較組成物例1 200倍 33.3% 66.7%
比較組成物例2 200倍 80.0% 20.0%
無処理区 100% 0%
【0081】
<実施例2>
ポット植えの2、3葉期のキュウリ(品種:ときわ光3号P型)に組成物例1、比較組成物例3それぞれ水道水で50倍に希釈し、供試作物へ50ミリリットル/2ポット散布処理した。
翌日、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液(2×106/ミリリットル )を噴霧接種した。直ちに20℃、100RH条件の湿室に入れ、3日間保持した。
第1、2本葉について、各発病面積率を調査し、発病度を求めた。更に無処理区との比較により防除価を算出した。
6ポットの平均の結果を下記に示す。
【0082】
使用薬剤 希釈倍率 発病面積率 防除価
組成物例1 50倍 23.5% 74.1%
比較組成物例3 50倍 61.7% 32.1%
無処理区 90.8% 0%
【0083】
<実施例3>
実圃場で春キャベツの灰色カビ病に対する予防効果試験を実施した。組成物例1を育苗中は水で50倍に希釈して1回散布し、定植後は水で200倍に希釈して2回散布した。比較として、慣行の農薬(育苗中はジマンダイセン(商標)、ベンレート(商標)を使用し、定植後はロブラール(商標)、ベンレート(商標))を用い、また、組成物例1と農薬を併用して、効果を調べた。それぞれ3区画について、100株に対する発病株数を求めた。3区画ずつ調査した平均値を下記に示す。
【0084】
使用薬剤 希釈倍率 発病株数
組成物例1 200倍 5.3
慣行農薬 10.3
組成物例1+慣行農薬 200倍 2.7
【0085】
<実施例4>
イネのイモチ病に対する予防効果を調べた。
イネ種子(品種:コシヒカリ)をベンレートT水和剤20(商標)により湿粉衣処理(乾籾重1%)を行い風乾後、15℃、浴比1:2の条件で6日間浸種し、30℃で1日間催芽を行い、9cm径プラスチックポットに4gずつ播種した。播種後覆土前の時点でダコニール1000(商標)の500倍液を通常育苗箱あたり500ミリリットル相当の割合で灌注した。出芽は30℃を3日間保つことで行い、出芽後は過度の潅水を避け、試験終了時までガラス温室内で管理した。
試験液は、組成物例3を35倍と70倍に希釈したものを用い、イネの生育ステージで2葉期と3葉期の2回、小型霧吹きを用いて、1ポット当たり6ミリリットルずつ株全体に散布した。
試験液最終散布日から2日後に、2×105個/ミリリットルに調整したイモチ病胞子懸濁液を葉裏面を中心にポット当たり5.6ミリリットルの割合で噴霧した。接種後3日間加湿状態に置き、発病を促した。
試験液最終散布日から9日後に、各ポットの各100茎について第2葉及び第3葉上の病斑の有無と病斑数を調査し、発病株率並びに総病斑数、防除価を算出した。結果を下記に示す。
【0086】
使用薬剤 希釈倍率 発病株率 総病斑数 防除価
組成物例3 35倍 25.0% 50.0 41.0
組成物例3 70倍 23.3% 41.7 50.8
無処理区 37.0% 84.7 −
尚、薬害は特に見られなかった。
【0087】
<実施例5>
実圃場で組成物例2を用いて、馬鈴薯(農林1号)の収穫量への影響を調べた。
組成物例2の200ミリリットルを35倍に薄め、3アール当たりに、慣行の殺菌剤処理に合わせて、表2の様に処理した。
収穫時に1.65m2(9株)の堀取り調査を行い、総重量(3カ所の平均)を求めた。結果を下記に示す。
【0088】
使用薬剤 希釈倍率 総重量 10アール当たり換算収量
組成物例2 35倍 8.5kg 5,100kg
無処理区 7.2kg 4,320kg
また、生育中の茎葉には特に明確な病害の症状は無かった。
【0089】
【表2】
【0090】
<参考実施例>
実圃場で比較組成物例7を用いて、馬鈴薯(メークイン)の収穫量への影響を調べた。
比較組成物例7を300倍に希釈し、6アール当たりに、開花前に1回、開花後10日間隔で、2回散布した。
収穫時に1.65m2(9株)の堀取り調査を行い、総重量(3カ所の平均)を求めた。結果を下記に示す。
【0091】
使用薬剤 希釈倍率 総重量 10アール当たり換算収量
比較組成物例7 300倍 10.4kg 6,240kg
無処理区 8.9kg 5,340kg
【0092】
<実施例7>
本葉3葉期キュウリ幼苗(品種:光3号P型、プラストカップ植え)に比較組成物例8、組成物例6、比較組成物例4〜6をそれぞれ水で70倍に希釈調整したサンプル45ml/3ポットを、ハンドスプレイヤーを用いて、第1葉、第2葉表裏面に散布処理した。室内にて48時間風乾放置の後、PDA培地上で形成されたキュウリ灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)分生胞子懸濁液(最終濃度1×105個/ミリリットル、DIFCO Potato Dextrose Broth 1.2%)を噴霧し、20℃湿度100%条件下に3日間保持した。室内に移して風乾後、第1葉、第2葉について、発病(病斑)面積率を調査して発病度を求め、防除価を算出した。
【0093】
3ポットの平均の結果を下記に示す。
【0094】
使用薬剤 希釈倍率 防除価
比較組成物例8 70倍 58.7%
組成物例6 70倍 57.8%
比較組成物例4 70倍 25.1%
比較組成物例5 70倍 26.1%
比較組成物例6 70倍 14.3%
【0095】
【発明の効果】
2種類の分子量のキトサンを用いることにより、植物に対して、安定した、高い耐病性及び成長を向上させる効果を発現できる。
Claims (22)
- (A)分子量16000〜60000のキトサン、(B)分子量35000〜90000のキトサン(但し、(A)のキトサンと(B)のキトサンは分子量が互いに異なるように選択し、その分子量の差を20000以上とする。)並びに(C)乳酸及び/又はコハク酸を含有し、かつ、上記(A)のキトサンと(B)のキトサンの含有量の比率が、1:0.9〜1.1であることを特徴とする、植物の耐病性及び成長を向上するための組成物。
- (A)及び(B)のキトサンの脱アセチル化度が60%〜90%(但し、(A)、(B)で脱アセチル化度は同一でも異なっていてもよい。)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
- (A)及び(B)のキトサンの含有量が合計で組成物の5質量%〜15質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
- (C)乳酸及び/又はコハク酸を2質量%以上15質量%未満含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- コハク酸を組成物の0.5〜5質量%、乳酸を組成物の1〜10質量%含有し、その合計量がキトサンの0.4質量倍以上1.0質量倍未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 乳酸及びコハク酸以外の(D)有機カルボン酸を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- (D)有機カルボン酸が、グルタミン酸、サリチル酸、アラキドン酸及びインドール酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
- (D)有機カルボン酸の含有量が組成物の0.0001質量%〜5質量%であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。
- (E)無機塩を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
- (E)がケイ酸塩、亜リン酸塩及びリン酸塩から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
- (E)の含有量が組成物の1質量%〜5質量%であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の組成物。
- (F)ジメチルスルフォキシドを組成物の3〜15質量%含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
- (G)炭素数1〜8の枝分かれしていてもよいアルキル基を有するアルコールを含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
- (G)アルコールがイソアミルアルコールであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
- (G)アルコールの含有量が組成物の0.5質量%〜5質量%であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の組成物。
- (H)界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
- (H)界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群の少なくとも1種であることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
- (H)界面活性剤の含有量が組成物の0.5質量%〜3質量%であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の組成物。
- (I)水を含有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
- (I)水含有量が40質量%〜93質量%であることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
- 水で希釈して使用することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物の、植物の耐病性及び成長を向上するための使用方法。
- 水による希釈倍率が30質量倍〜700質量倍であることを特徴とする、請求項21に記載の使用方法。
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