JP3776585B2 - アキシャルピストンポンプまたはモータ - Google Patents

アキシャルピストンポンプまたはモータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アキシャルピストンポンプまたはモータに関し、特にピストン付勢用のスプリングの座屈およびこれにより引き起こされる摩耗を防止し得る改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
アキシャルピストンポンプまたはモータとしては、例えば本出願人による実開平5−61463号公報に、図12に示すようなものが提案されている。
【0003】
図示されるように、このアキシャルピストンポンプまたはモータのケーシング10内には、駆動軸1と同期的に回転するシリンダブロック2が備えられる。このシリンダブロック2には、駆動軸1を中心とする略円周上に、駆動軸1と略平行な複数のシリンダ2aが形成される。
【0004】
これらのシリンダ2a内には、ピストン3が往復動自在に、先端側から収容される。これらのピストン3の基端部3aは、ケーシング10にスラストベアリングを介して傾転可能に支持された斜板4に当接している。
【0005】
シリンダブロック2の斜板4と反対側の底面は、弁板7に摺動可能に当接している。各シリンダ2aは、シリンダブロック2の回転位置に応じて(吸込側にあるか吐出側にあるかに応じて)、弁板側7に形成されたポート2cおよび弁板7に形成されたキドニーポートを介して、吸込ポート6または図示されない吐出ポートに選択的に連通する。
【0006】
図13にも拡大して示すように、ピストン3には中空穴3bが形成される。この中空穴3bはピストン先端側から開口するとともに、ピストン基端部3a側には閉鎖された底部を備え、この底部には嵌合凹部3cが形成されている。また、シリンダ2aの弁板7側底部(ポート2cの手前)には、嵌合凹部2bが形成される。この嵌合凹部3cから嵌合凹部2bにかけて、スプリング5が備えられる。このスプリング5は、ピストン3をシリンダ2aから伸び出す方向に付勢し、ピストン基端部3aを斜板4に、またシリンダブロック2を弁板7に、それぞれ離間しないように当接させる。
【0007】
このような構成により、アキシャルピストンポンプでは、シリンダブロック2(駆動軸1)の回転とともに各ピストン3がシリンダ2a内を往復動し、ピストン3が伸長行程にあるシリンダ2a(吸込側にあるシリンダ2a)には吸込ポート6から作動流体が吸い込まれ、ピストン3が収縮行程にあるシリンダ2a(吐出側にあるシリンダ2a)からは吐出ポートに作動流体が吐出されるようになっている。
【0008】
また、アキシャルピストンモータにおいては、作動流体が吸込ポート6から吸い込まれ、吐出ポートから吐き出されることにより、各ピストン3がシリンダ2a内を往復動し、この往復動により駆動軸1(シリンダブロック2)が回転駆動されるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなアキシャルピストンポンプまたはモータにおいては、スプリング5は、ピストン3の往復ストロークを許容する一方で、種々の力(例えばピストン3の往復動に起因する慣性力、ピストン3とシリンダ2a間の摩擦力、シリンダ2a内が負圧になった場合にピストン3がシリンダ2a内に引き込まれる力など)に打ち勝つバネ力を有することが求められる。
【0010】
このため、スプリング5は、コイル平均径Dに対する自由長Loの比(Lo/D)を大きくする必要があり、座屈しやすい。特に、シリンダブロック2は高速回転するため、スプリング5には遠心力が作用し、座屈を引き起こしやすい。
【0011】
そして、スプリング5が座屈すると、ピストン中空穴3bとスプリング5が擦れ合ってしまい、中空穴3b内壁とスプリング5の双方に摩耗が生じてしまう。さらに、この摩耗によりスプリング5が破損すれば、ピストン基端部3aと斜板4が離間して、アキシャルピストンポンプまたはモータが作動不良を起こしかねない。
【0012】
また、作動流体として潤滑性の乏しい液体を使用した場合には、摺動部に摩耗が生じやすいので、このようなスプリング5の摩耗による耐久性能の悪化は、特に問題となる。
【0013】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ピストン付勢用のスプリングの座屈およびこれにより引き起こされる摩耗を防止し、耐久性を向上させ得るアキシャルピストンポンプまたはモータを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、最圧縮状態にあるときの前記スプリングの長手方向の略中央付近を支持するようにした。
【0015】
第2の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、このピストン基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、 前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、最圧縮状態にあるときの前記スプリングの長手方向の略中央付近を支持するようにした。
【0016】
第3の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、前記中空穴の開口端付近の内周に固定された筒状部材である。
【0017】
第4の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、このピストンの基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、前記中空穴の開口端付近の内周に固定された筒状部材である。
【0018】
第5の発明では、前記中空穴の底部から開口端側に向かって前記ピストンの中心軸と同軸上に配置されるロッドを備え、前記ガイド部材はこのロッドの先端に固定される。
【0019】
第6の発明では、前記ロッドの基端部は前記中空穴底部に形成された嵌合穴に隙間ばめで嵌合されるとともに、このロッド基端部に前記スプリングのピストン側端部が固定される。
【0020】
第7の発明では、前記シリンダから突出した前記ピストンの基端とピストンシューの間に静圧軸受を構成するとともに、前記ロッドを貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を通じてシリンダ内の作動流体を前記静圧軸受に供給する。
【0021】
第8の発明では、前記ガイド部材を、前記スプリングとの摩擦係数が小さな材料から構成した。
【0022】
第9の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、前記スプリングとして直列に並べられた複数のスプリングと、これらのスプリングの間に介装されたガイド部材とを備え、このガイド部材は、両側のスプリング端部が取り付けられる取り付け部と、前記中空穴内周面に沿って摺動する摺接部を備え、前記スプリングを前記ピストン中空穴と同軸上に保つようにし、且つ前記ガイド部材に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して前記ガイド部材の前後の作動流体を流通させるようにした。
【0023】
第10の発明では、シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、このピストン基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、 前記スプリングとして直列に並べられた複数のスプリングと、
これらのスプリングの間に介装されたガイド部材とを備え、
このガイド部材は、両側のスプリング端部が取り付けられる取り付け部と、前記中空穴内周面に沿って摺動する摺接部を備え、前記スプリングを前記ピストン中空穴と同軸上に保つようにし、且つ前記ガイド部材に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して前記ガイド部材の前後の作動流体を流通させるようにした。
【0024】
第11の発明では、前記ガイド部材を、前記中空穴内周面との摩擦係数が小さな材料から構成した。
【0025】
第12の発明では、前記取り付け部はガイド部材の両側に設けられた嵌合凸部であり、この嵌合凸部を前記スプリング端部に嵌合するとともに、この嵌合凸部の外周径を前記スプリング内周径よりもわずかに小さくした。
【0026】
第13の発明では、前記ガイド部材と前記スプリング端部の間に中間部材を介装することにより、前記ガイド部材に対して前記スプリングの軸回りの回転を可能とした。
【0027】
第14の発明では、前記摺接部に凸状の湾曲を持たせた。
【0028】
第15の発明では、前記摺接部を前記中空穴内周径よりもわずかに小さな径の円柱外周面とするとともに、この円柱外周面の両端にテーパ部を形成した。
【0030】
【発明の作用および効果】
第1、第2の発明では、ポンプまたはモータの作動中に、スプリングはガイド部材により中空穴内周に接触しないように支持されるので、座屈することなく、また中空穴内周面との摺動により摩耗することはなく、スプリングが摩耗により破損してポンプまたはモータが作動不良に陥ることはない。したがって、高速回転のポンプまたはモータ、あるいは潤滑性に乏しい作動流体を用いたポンプまたはモータにおいても、高い耐久性能と信頼性を保つことができる。また、特に第2の発明では、ピストンにピストン横力が作用しない構成となっているので、潤滑性に乏しい作動流体を用いた場合でも、ポンプまたはモータの作動およびスプリングの摩耗の両方で問題が生じることなく、ポンプまたはモータの耐久性能と信頼性が保たれる。さらに、ガイド部材は、スプリングが最も座屈しやすい最圧縮時に、最も座屈が起こりやすい場所であるスプリングの長手方向の略中央付近を支持するので、スプリングの座屈を有効に防止できる。
【0031】
第3、第4の発明では、スプリングは、外周側から、筒状のガイド部材の内周面により支持される。
【0032】
第5の発明では、スプリングは、内周側から、ロッド先端のガイド部材により支持される。
【0033】
第6の発明では、ロッド基端部は中空穴底面の嵌合穴に隙間ばめされている一方、このロッド基端部にスプリングのピストン側端部が固定されているので、ピストンとスプリングは相対回転可能となり、ポンプまたはモータの作動中にピストンとシリンダに相対回転があったとしても、スプリングに大きな捩り力が作用することはない。
【0034】
第7の発明では、ロッドに形成された貫通孔を通じて、シリンダ内の高圧がピストン基端の静圧軸受に供給される。
【0035】
第8の発明では、ガイド部材は、スプリングとの摩擦係数が小さく、摺動性の優れた材料から構成されるので、スプリングがガイド部材に支持されるときにガイド部材と摺接したとしても、スプリングが摩耗してしまうことがない。
【0037】
第9、第10の発明では、ピストン付勢用のスプリングは直列な複数のスプリングから構成されるので、各スプリングは径に比較して長さが短くなり、座屈が生じにくくできる。また、各スプリングの端部が取り付けられるガイド部材は、スプリングをピストン中空穴と同軸上に保つように中空穴内を摺動するので、スプリングが中空穴内周に接触してしまうことはなく、スプリングの摩耗が防止できる。したがって、スプリングが摩耗により破損してポンプまたはモータが作動不良に陥ることはなく、高速回転のポンプまたはモータ、あるいは潤滑性に乏しい作動流体を用いたポンプまたはモータにおいても、高い耐久性能と信頼性を保つことができる。また、特に第10の発明では、ピストンにピストン横力が作用しない構成となっているので、潤滑性に乏しい作動流体を用いた場合でも、ポンプまたはモータの作動およびスプリングの摩耗の両方で問題が生じることなく、ポンプまたはモータの耐久性能と信頼性が保たれる。さらに、ガイド部材には貫通孔が形成されるので、この貫通孔を通じてガイド部材の内側の中空穴にも作動流体が自由に流通できる。また、貫通孔の分だけガイド部材の軽量化がはかれ、ポンプまたはモータの作動中にガイド部材に作用する遠心力が小さくなるので、摺動部と中空穴内周面の摺動面圧が下がり、ガイド部材の摺動動作をスムーズにすることができる。
【0038】
第11の発明では、ガイド部材は、ピストン中空穴内周面との摩擦係数が小さく、摺動性に優れた材料から構成されるので、ガイド部材は中空穴内周面に沿ってスムーズに摺動し、ピストン往復動およびスプリングの作用を阻害することはない。
【0039】
第12の発明では、ガイド部材の嵌合凸部外径とスプリング端部内径との間にはわずかに隙間があるので、スプリングはガイド部材に対して相対回転することができる。したがって、ポンプまたはモータの作動中にピストンとシリンダの間に相対回転が生じたとしても、この相対回転はスプリングとガイド部材間の相対回転により吸収でき、スプリングに大きな捩り力が作用することはない。
【0040】
第13の発明では、ガイド部材とスプリングは相対回転可能であるので、
ポンプまたはモータの作動中にピストンとシリンダの間に相対回転が生じたとしても、この相対回転はスプリングとガイド部材間の相対回転により吸収でき、スプリングに大きな捩り力が作用することはない。
【0042】
14の発明では、摺動部は凸状に湾曲しているので、ガイド部材がピストン中空穴の軸に対して傾いたとしても、摺動部とピストン中空穴内周との接触が保たれ、ガイド部材はスムーズに摺動する。
【0043】
15の発明では、中空穴内径よりわずかに小径の円柱外周面形状の両端にテーパ部を形成しているので、ガイド部材が中空穴の中心軸に対して傾いたときにも、ガイド部材は中空穴内をスムーズに摺動することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0045】
なお、以下の各実施の形態においては、アキシャルピストンポンプまたはモータの全体構成は、例えば図12に示すものと同様である。したがって、以下の説明においては、本発明の特徴となるピストン3およびスプリング5周辺の構成を中心に説明する。
【0046】
図1には、本発明の実施の形態を示す。
【0047】
図示されるように、ピストン中空穴3b底部の嵌合凹部3cと、シリンダ2a底部の嵌合凹部2bには、それぞれ、スプリング5の両端が配置され、このスプリング5が、ピストン3を斜板4側に、またシリンダブロック2を弁板7側に、それぞれ付勢している。
【0048】
本実施の形態では、このピストン中空穴3bの開口部内側に、開口径を大きくした段差部11が形成される。そして、この段差部11に、筒状のブッシュ12が嵌め込まれて固定される。このブッシュ12の内径部12aがスプリング5の外周に摺接して支持することにより、スプリング5の座屈が防止される。
【0049】
また、ブッシュ12を、ピストン3がシリンダ2aに最も収縮したとき(スプリング5が最も圧縮されたとき)に、スプリング5の長手寸法の略中央付近外周に位置するように配置し、スプリング5が最も圧縮され最も座屈を起こしやすいときに、最も座屈を起こしやすい場所であるスプリング5中央付近外周が、ブッシュ内径部12aに摺接して支持することもできる。
【0050】
また、ブッシュ12は、摺接によってもスプリング5を摩耗させないような材料から構成される。
【0051】
例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール樹脂、PTFEなどのフッ素樹脂など、摺動性に優れ、摩擦係数の小さな高分子材料を用いるとよい。
【0052】
また、これらの高分子材料にグラファイト、二硫化モリブデン、PTFEなどを添加すれば、さらに摩擦係数を減少させることができ、スプリング5外周部の摩耗が一層低減される。
【0053】
また、前記の高分子材料に、ガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維などの強化剤を添加すれば、ブッシュ12自体の摩耗を抑制することができる。
【0054】
なお、スプリング5の両端部と、嵌合凹部3c、2bの底面との間には、それぞれワッシャ13、14が介装されている。これにより、ピストン3とシリンダ2aが相対的に回転したときに、スプリング5に作用する捩り力が低減されるようになっている。
【0055】
つぎに作用を説明する。
【0056】
アキシャルピストンポンプまたはモータを作動すると、ポンプまたはモータの各ピストン3は、シリンダ2a内を往復運動する。この場合、ピストン3はピストン中空穴3bからシリンダ2aにかけて収容されたスプリング5により、シリンダ2aから伸び出す方向に付勢され、ピストン基端部3aは斜板4に、またシリンダブロック2は弁板7に、それぞれ離間することなく当接し続ける。
【0057】
本発明では、このようなポンプまたはモータの作動において、スプリング5は、中空穴3bの開口に設けたブッシュ12により、外周側から支持される。特に、このブッシュ12は、最も座屈しやすいスプリング5の最圧縮時には、最も座屈しやすいスプリング5略中央部外周を支持すると効果的である。したがって、スプリング5は座屈を起こすことなく、ポンプまたはモータの正常な作動が保たれる。
【0058】
また、ブッシュ12に支持されたスプリング5は、ピストン中空穴3bの内周面に摺接してしまうことはなく、スプリング5およびピストン中空穴3bの双方の摩耗が防止でき、ポンプまたはモータの耐久性能を向上させることができる。なお、この場合、ブッシュ12は摩擦係数が小さく摺動性に優れた材料で構成されているので、スプリング5と摺接してもスプリング5を摩耗させることはない。
【0059】
したがって、本発明によれば、ピストン3を付勢するスプリング5の座屈およびこれによって引き起こされる摩耗を有効に防止でき、高速回転のポンプまたはモータ、あるいは潤滑性に乏しい作動流体を用いたポンプまたはモータにおいても、高い耐久性能と信頼性を保つことができる。
【0060】
図2には、本発明の他の実施の形態を示す。
【0061】
この実施形態では、ピストン中空穴3bの底部(基端部3a側の端部)には、嵌合穴21が形成され、この嵌合穴21には、センタリングロッド22の大径の基端部22aが嵌合する。このセンタリングロッド22は、ピストン中空穴3bの中心軸と同軸上で、スプリング5の内側へと延び出している。
【0062】
スプリング5のピストン側端部は、センタリングロッド基端部22aの上端に当接するとともに、基端部22aに隣接する中径の固定部22bに嵌まり込んで、センタリングロッド22に固定されている。また、センタリングロッド22は、この固定部22bより先の部分は小径となっており、スプリング5と接触しないように延び、小径の先端部22cは、最圧縮状態にあるときのスプリング5の長手寸法の略中央部付近に達している。
【0063】
この先端部22c外周に、筒状のブッシュ23が固定される。本実施の形態では、このブッシュ23によりスプリング5が内側から支持される。この場合、スプリング5が最圧縮され最も座屈しやすいときには、スプリング5の最も座屈しやすい長手寸法の略中央部付近がブッシュ23により支持されることになり、座屈防止に高い効果が得られる。
【0064】
なお、ブッシュ23はピストン中空穴3b内の開口端付近に配置されることになるが、この場合、中空穴3bの開口端にはテーパ加工部3dが形成され、ブッシュ23よる支持部分より先のスプリング5外周が、中空穴3b開口端と接触しないようになっている。
【0065】
ブッシュ23は、図1の実施の形態のブッシュ12と同様に、摩擦係数が小さく摺動性に優れた材料から構成される。したがって、具体的な材料としても、図1の実施の形態のブッシュ12の材料として前述したものと同様のものを用いればよい。
【0066】
なお、センタリングロッド基端部22aの嵌合穴21への嵌合は、例えば隙間ばめ、または基端部22aを嵌合穴21に圧入する締まりばめ、またはネジ結合などによりなされ、これにより、センタリングロッド22はピストン中空穴3bの中心軸と同軸上に正しく配置される。この場合、隙間ばめを用いるようにすれば、ピストン3とシリンダ2aが相対回転したときに、センタリングロッド22はピストン3に対して相対回転することができるので、スプリング5に作用する捩り力を低減することができる。
【0067】
図3には、本発明のさらに他の実施の形態を示す。
【0068】
図示されるように、この実施の形態では、ピストン付勢用のスプリングは直列に並べられた長さの等しい2本のスプリング5A、5Bに分割されている。そして、スプリング5Aの一端を嵌合凹部3cに嵌合し、スプリング5Bの一端を嵌合凹部2bに嵌合するとともに、これらのスプリング5A、5Bの対向する他端の間には、センタリングガイド31が介装される。
【0069】
円盤状のセンタリングガイド31は、その円盤外周の摺接部31aにおいて中空穴3bの内周面に摺動可能に当接する。また、円盤の両面から延び出す嵌合凸部31b、31cには、それぞれスプリング5A、5Bの端部が嵌まり込む。これにより、スプリング5A、5Bは、ピストン中空穴3bと同軸上に保持されようになっている。
【0070】
この場合、嵌合凸部31b、31c外径を、スプリング5A、5Bの端部内径よりもわずかに小さくして、センタリングガイド31およびスプリング5A、5Bを相対回転可能としておくとよい。これにより、ピストン3とシリンダ2a間に相対回転が生じたとしても、この回転はセンタリングガイド31およびスプリング5A、5Bの相対回転により吸収され、スプリング5A、5Bに作用する捩り力は低減される。
【0071】
また、センタリングガイド31には、中心軸上を貫通する貫通孔31dが形成される。これにより、この貫通孔31dを通って、ピストン中空穴3b内の流体室32に作動流体が自由に流通できる。また、貫通孔31dの分だけセンタリングガイド31の重量は小さくなり、センタリングガイド31に働く遠心力も小さくできるので、ピストン中空穴3bとセンタリングガイド摺接部31aの摺動面圧が下がり、センタリングガイド31の摺動がスムーズになるという効果も得られる。
【0072】
また、センタリングガイド31は、摩擦係数が小さく摺動性に優れた材料から構成される。したがって、具体的な材料としては、図1の実施の形態のブッシュ12の材料として前述したものと同様のものを用いればよい。
【0073】
このように本実施の形態によれば、ピストン付勢用のスプリングは、スプリング5A、5Bに分割されるので、その分、各スプリングのコイル平均径Dに対する自由長Loの比(Lo/D)が小さくでき、座屈に対する耐性を向上させることができる。また、スプリング5A、5Bは、センタリングガイド31によりピストン中空穴3bの中心軸と同軸上に保持されるので、ピストン中空穴3bの内周面とスプリング5A、5Bの摺接することはなく、スプリング5A、5Bの摩耗は防止される。
【0074】
なお、この実施の形態では、スプリングを2本のスプリング5A、5Bに分割したが、本発明はこのような実施形態に限られるものではなく、スプリングを3本以上の任意のN本に分割し、直列に配置されたこれらのスプリングの間にN−1個のセンタリングガイドを配置するようにしてもよい。
【0075】
図4には、本発明のさらに他の実施の形態を示す。
【0076】
この実施の形態では、図3の実施の形態の基本構成に加えて、センタリングガイド31とスプリング5Aの端部および5Bの端部との間に、それぞれ、嵌合凸部31bおよび31cの回りに配置されたワッシャ33および34を介装している。これにより、ピストン3とシリンダ2aが相対回転した場合でも、スプリング5A、5Bがセンタリングガイド31に対して相対回転することにより、スプリング5A、5Bに作用する捩れ力を低減することができる。
【0077】
図5には、本発明のさらに他の実施の形態を示す。
【0078】
この実施の形態では、センタリングガイド31を、摺接部31aに凸状の湾曲を持たせた樽型のものとしている。これにより、センタリングガイド31が中空穴3bの中心軸に対して傾いたときにも、摺接部31aはピストン中空穴3b内周に接触を保ちながらスムーズに摺動することができる。
【0079】
図6には、本発明のさらに他の実施の形態を示す。
【0080】
この実施の形態では、円柱形状のセンタリングガイド31の外径をピストン中空穴3bよりもわずかに小さくして、摺接部31aとピストン中空穴3bの間にわずかに隙間を持たせるとともに、摺接部31aの両端部にテーパ部31e、31fを形成している。これによっても、センタリングガイド31は、中空穴3bの中心軸に対して傾いたときでも、中空穴3b内をスムーズに摺動することができる。
【0081】
図7には、本発明のさらの他の実施の形態を示す。
【0082】
この実施の形態では、センタリングガイド摺接部31aの幅を長くとることにより、センタリングガイド31がピストン3の中心軸に対して傾かないようにして、スプリング5の座屈に対する耐性を向上させている。
【0083】
図8〜図11には、本発明のさらに他の実施の形態を示す。これらの実施の形態では、図12と異なる構成のアキシャルピストンポンプまたはモータに、本発明を適用している。
【0084】
このアキシャルピストンポンプまたはモータについて、図8、図9に基づいて説明すると、このポンプまたはモータでは、ピストン3の基端部40をピストン軸と直角な平面とし、この基端部40を、半球状のピストンシュー41の平滑面41aに対して、摩擦材料からなるとともに静圧軸受を備えたパット42を介して支持している。このピストンシュー41は、平滑面41aの裏側の球面部41bにおいて、摩擦材料からなるソケット43の凹球面43aに嵌合し、このソケット43を介してトルクプレート44に支持されている。このトルクプレート44は、シリンダブロック2と同一回転させられる。なお、このポンプまたはモータでは、パッド42を使用せずにピストン基端部40をシュー平滑面41aに直接当接させて支持する構成や、ソケット43を使用せずにトルクプレート44に形成した凹球面にシュー球面部41bを支持する構成をとってもよい。
【0085】
このような構成により、図8、図9のアキシャルピストンポンプまたはモータは、アキシャルピストンポンプまたはモータにおいて問題となるピストン横力を大幅に減少させることができ、潤滑性の乏しい作動流体を用いた場合でも、ポンプまたはモータが円滑に作動するようにしている。
【0086】
図8、図9に示す実施の形態では、このような構成のアキシャルピストンポンプまたはモータに対して、図3の実施の形態と同様に、スプリング5Aと5Bの間にセンタリングガイド31を備えている。
【0087】
また、図10に示す実施の形態では、図1の実施の形態と同様に、ピストン中空穴3bの開口部の段差部11に、ブッシュ12を備えている。
【0088】
また、図11に示す実施の形態では、図2の実施の形態と同様に、ピストン3の中心軸上にセンタリングロッド22を設け、このセンタリングロッド22の先端部にブッシュ23を備えている。なお、この実施の形態では、パッド42に形成した静圧軸受にシリンダ2a内の作動流体を導入するために、センタリングロッド22の中心軸上には貫通孔45が形成されている。
【0089】
このように、図8に示すようなアキシャルピストンポンプまたはモータに本発明を適用することにより、ポンプまたはモータは潤滑性の乏しい作動流体を用いた場合でも、円滑な作動が確保できるとともに、スプリング5の座屈およびこれによって引き起こされる摩耗も有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図である。
【図2】同じく他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図7】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図8】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図9】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図10】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図11】同じくさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図12】アキシャルピストンポンプまたはモータの全体構成を示す断面図である。
【図13】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 駆動軸
2 シリンダブロック
2a シリンダ
2b 嵌合凹部
3 ピストン
3c 嵌合凹部
3b ピストン中空穴
4 斜板
5 スプリング
5A スプリング
5B スプリング
6 吸込ポート
7 弁板
11 段差部
12 パッド
13 ワッシャ
14 ワッシャ
21 嵌合穴
22 センタリングロッド
23 ブッシュ
31 センタリングガイド
31a 摺接部
31b 嵌合凸部
31c 嵌合凸部
31d 貫通孔
31e テーパ部
31f テーパ部
40 ピストン基端部
41 ピストンシュー
42 パッド
43 ソケット
44 トルクプレート
45 貫通孔

Claims (15)

  1. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、最圧縮状態にあるときの前記スプリングの長手方向の略中央付近を支持することを特徴とするアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  2. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、
    前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、
    このピストン基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、最圧縮状態にあるときの前記スプリングの長手方向の略中央付近を支持することを特徴とするアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  3. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、前記中空穴の開口端付近の内周に固定された筒状部材であることを特徴とするアキシャルピストンプンプまたはモータ。
  4. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、
    前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、
    このピストンの基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングを前記中空穴内周に接触しないように支持するガイド部材を備え、このガイド部材は、前記中空穴の開口端付近の内周に固定された筒状部材であることを特徴とするアキシャルピストンプンプまたはモータ。
  5. 前記中空穴の底部から開口端側に向かって前記ピストンの中心軸と同軸上に配置されるロッドを備え、前記ガイド部材はこのロッドの先端に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  6. 前記ロッドの基端部は前記中空穴底部に形成された嵌合穴に隙間ばめで嵌合されるとともに、このロッド基端部に前記スプリングのピストン側端部が固定されることを特徴とする請求項5に記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  7. 前記シリンダから突出した前記ピストンの基端とピストンシューの間に静圧軸受を構成するとともに、前記ロッドを貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を通じてシリンダ内の作動流体を前記静圧軸受に供給することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  8. 前記ガイド部材を、前記スプリングとの摩擦係数が小さな材料から構成したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかひとつに記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  9. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備えたアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングとして直列に並べられた複数のスプリングと、
    これらのスプリングの間に介装されたガイド部材とを備え、
    このガイド部材は、両側のスプリング端部が取り付けられる取り付け部と、前記中空穴内周面に沿って摺動する摺接部を備え、前記スプリングを前記ピストン中空穴と同軸上に保つようにし、且つ前記ガイド部材に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して前記ガイド部材の前後の作動流体を流通させるようにしたことを特徴とするアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  10. シリンダに往復動自在に収容されたピストンと、
    このピストンの前記シリンダへの挿入端に開口して形成された中空穴と、
    この中空穴から前記シリンダにかけて設けられ前記ピストンを前記シリンダから伸び出す方向に付勢するスプリングとを備え、
    前記シリンダからの突出した前記ピストンの基端を前記ピストンの軸と直角な平面とし、
    このピストン基端面をピストンシューの平滑面に支持したアキシャルピストンポンプまたはモータにおいて、
    前記スプリングとして直列に並べられた複数のスプリングと、
    これらのスプリングの間に介装されたガイド部材とを備え、
    このガイド部材は、両側のスプリング端部が取り付けられる取り付け部と、前記中空穴内周面に沿って摺動する摺接部を備え、前記スプリングを前記ピストン中空穴と同軸上に保つようにし、且つ前記ガイド部材に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して前記ガイド部材の前後の作動流体を流通させるようにしたことを特徴とするアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  11. 前記ガイド部材を、前記中空穴内周面との摩擦係数が小さな材料から構成したことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  12. 前記取り付け部はガイド部材の両側に設けられた嵌合凸部であり、この嵌合凸部を前記スプリング端部に嵌合するとともに、この嵌合凸部の外周径を前記スプリング内周径よりもわずかに小さくしたことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかひとつに記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  13. 前記ガイド部材と前記スプリング端部の間に中間部材を介装することにより、前記ガイド部材に対して前記スプリングの軸回りの回転を可能としたことを特徴とする請求項9から請求項12のいずれかひとつに記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  14. 前記摺接部に凸状の湾曲を持たせたことを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかひとつに記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
  15. 前記摺接部を前記中空穴内周径よりもわずかに小さな径の円柱外周面とするとともに、この円柱外周面の両端にテーパ部を形成したことを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかひとつに記載のアキシャルピストンポンプまたはモータ。
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