JP3775986B2 - トラクションドライブ用流体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクションドライブ用流体に関し、特には、トラクション特性、粘度温度特性、および低温流動性に優れ、さらに境界潤滑性にも優れたトラクションドライブ用流体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ころがりすべり摩擦を利用した動力伝達機構には、フリクションドライブとトラクションドライブがある。フリクションドライブは、接触する固体間の摩擦力により動力を伝達するが、トラクションドライブは、動力を伝達する転動面間に油膜を形成させ、その油膜を介して力を伝える機構である。動力伝達を効率良く行うためには、高い接触圧力下で流動性を失い硬化する性質を有する液体(トラクションドライブ用流体)を用いる必要がある。この硬化する性質が、剪断に対する抵抗力となり、動力伝達の効率を向上させる。転動体間の摩擦係数を、直接接触によるものと区別してトラクション係数と呼ぶが、このトラクション係数が高いことが、トラクションドライブ用流体に必要な性能の1つである。
【0003】
近年は、トラクションドライブ装置の高性能化や小型軽量化の研究が進み、トラクションドライブ用流体も高性能のものが要求されている。これに伴い、自動車の変速機としての利用が注目されている。自動車用トラクションドライブ装置には、トラクションドライブ本体の他に、トルクコンバータ、油圧機構、湿式クラッチ、歯車機構などが含まれる。このため、トラクションドライブ用流体には、動力伝達容量に直接関係するトラクション特性に加えて、粘度温度特性、湿式クラッチ摩擦特性、歯車機構などの耐摩耗性などといった、様々な性質が求められている。つまり、自動車は様々な環境で使用されるため、気温の変化などがあった場合でも一定の油圧を供給できること、極寒地条件であっても十分な始動性を有すること(低温流動性に優れること)、装置のころがり疲労損傷を防ぐために高い温度であっても粘度が低くなり過ぎないこと等である。
【0004】
トラクションドライブ用流体は、これまでも種々提案されており、モンサント社のサントトラックなどに代表される、合成ナフテンと呼ばれる脂環式化合物が有名である。しかし、これらの化合物はトラクション係数は高く優れているが、粘度指数が低く、広い温度範囲で使用される自動車向けとしては、粘度温度特性の面から適切ではない。特に、低温粘度が非常に高くなるため、低温時の始動性の面で課題があった。
【0005】
一方、工業用として実用化されているものの中には、ハード型(分岐型)アルキルベンゼンやポリブテン等、低温流動性に優れたものもある。しかし、これらはトラクション係数が合成ナフテンより低く、自動車に用いられるような小型のトラクションドライブ装置では、充分な動力伝達は難しい。
【0006】
これらの課題を解決すべく、低温流動性に優れたトラクションドライブ用流体は、これまでにも様々なものが報告されている。例えば、米国特許4190546号公報は、高温での粘度を必要以上に低下させずに低温粘度を下げるために、ポリオルガノシロキサン(通称シリコーン油)の混合が有効であることを開示している。しかし、シリコーン油を混合すると、境界潤滑性が著しく低下する、という問題が起こる。
また、特開昭58−67793号公報には、フェニル基或いはシクロヘキシル基を含んだポリオルガノシロキサン30〜100重量%と合成ナフテンとの混合物が開示されている。このような組成とすることにより、粘度温度特性、低温流動性に優れたトラクション液が得られるとしている。また、特開昭60−135490号公報には、特殊なシロキサン分子単位を有するポリオルガノシロキサンを用いたトラクション液が開示されている。このものは、トラクション特性、粘度温度特性に優れているとしている。しかしながら、これらのものはいずれもシリコーン油の含有量が高すぎるため、自動車用トラクションドライブ流体として必要となる添加剤の溶解性が劣る。更に特殊なシロキサン分子単位を持つものは一般に入手し難く、高価である。
特開平5−255681号公報には、α−アルキルスチレンの二量体水添物とジメチルシリコーンとを混合させたトラクションドライブ用流体が開示されている。このものは、低温流動性には優れるが、トラクション係数が不充分であり、また基材同士の相溶性の点で、混合できるジメチルシリコーンの粘度が低粘度のものに限られていた。
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決するため、特願2000−166901号明細書において、分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物を主成分とし、置換基がメチル基およびアリール基からなりメチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30であるポリオルガノシロキサンを組成物全量基準で1〜30質量%含有するトラクションドライブ用流体を提案した。分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物は、高いトラクション係数を有するが、粘度指数が低く、低温における粘度が高い。一方、置換基がメチル基およびアリール基からなり、このメチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30であるポリオルガノシロキサン成分はトラクション係数が比較的低いが、低温流動性に優れる。この両者を混合すると、トラクション係数に相乗作用が見られ、しかも低温流動性を向上させることができることを見出した。これにより、トラクション係数、粘度温度特性、および低温流動性に優れたトラクションドライブ用流体を提供することが可能となったものである。
【0008】
ポリオルガノシロキサンのようなシリコーン油を基油とした場合に、十分な境界潤滑性が必ずしも得られず、これを解決するために基油に添加剤を加えることが検討されたが、通常の添加剤の場合、多量に添加しなければ十分な境界潤滑性を得ることができず、多量に加えた場合には酸化安定性が悪化することがわかった。
その後の研究において、チアジアゾール化合物を配合すると境界潤滑性が向上し、さらにある種の清浄分散剤を併用すると、自動車用の変速機油として必要な「湿式クラッチ摩擦特性」、特にその安定性の確保に有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものである。つまり、本発明は、トラクション係数が高く、低温流動性に優れ、粘度指数が高く、さらに境界潤滑性、安定性にも優れた自動車用トラクションドライブ用流体を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高いトラクション係数を有し、さらに優れた粘度温度特性、低温流動性を有すると同時に境界潤滑性、酸化安定性にも優れるトラクションドライブ用流体を開発すべく鋭意研究を行った結果、分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物を主成分とし、置換基がメチル基およびアリール基からなりメチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30であるポリオルガノシロキサンを基油として用い、これに分子内に少なくとも一つのチアジアゾール環構造を含む化合物、および金属サリシレートを添加することによってオイルの境界潤滑性、安定性を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物を主成分とし、
(A)置換基がメチル基およびアリール基からなり、メチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30であるポリオルガノシロキサンを組成物全量基準で1〜30質量%、
(B)分子内に少なくとも一つのチアジアゾール環構造を含む化合物を、窒素量として組成物全量基準で300質量ppm以上、および
(C)金属サリシレートを組成物全量基準で0.01〜1.0質量%
を含むトラクションドライブ用流体である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[脂環式化合物]
本発明のトラクションドライブ用流体に主成分として用いる脂環式化合物は、分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基、好ましくはシクロヘキシル基を有する化合物である。該脂環式化合物は、例えばα−アルキルスチレン二量体の水素化物などを挙げることができる。その好ましい例としては、1,2−ジシクロへキシルプロパン、1,2−ジシクロへキシル−2−メチルプロパン、2,3−ジシクロヘキシルブタン、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルブタン、2,3−ジシクロヘキシル−2,3−ジメチルブタン、1,3−ジシクロへキシルブタン、1,3−ジシクロへキシル−2−メチルブタン、1,3−ジシクロへキシル−3−メチルブタン、2,4−ジシクロへキシル−2,3−ジメチルブタン、2,4−ジシクロへキシルペンタン、2,4一ジシクロへキシル−2−メチルペンタン、2,4−ジシクロヘキシル−2,4−ジメチルペンタン、2,4−ジシクロへキシル−2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジシクロへキシル−2−メチルへキサン、2,4−ジシクロへキシル−4−メチルへキサン、3,5−ジシクロへキシル−3−メチルへプタン、2,4−ジシクロへキシル−2−メチルへプタン、4,6−ジシクロへキシルー4−メチルへプタンなどが挙げられる。中でも、トラクション性能や原料の入手性などの面から特に2,4−ジシクロへキシル−2−メチルペンタンが好ましい。
【0013】
これらは、α−アルキルスチレンを二量化させ、さらに水素化することなどで得られることができる。二量化の条件および水素化の条件は、特に限定するものでない。例えば、米国特許第3925217号公報などに開示されている方法を用いて得ることができる。
【0014】
本発明においては、分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する上記の脂環式化合物を主成分とする。ここで、主成分とは、明確に濃度で規定できるものではないが、潤滑油に通常用いられる潤滑油基油がこれに該当する。例えば、通常、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上含有する場合がこれに相当する。
【0015】
[(A)成分のポリオルガノシロキサン]
本発明で用いる(A)成分のポリオルガノシロキサンは、下記の一般式で表されるシロキサンの重合体である。
【0016】
【化1】
Figure 0003775986
【0017】
ここで、R1とR2はメチル基またはアリール基であり、互いに同じでも異なっていても良い。また隣り合うシロキサン単位ごとにR1とR2はそれぞれ異なっていても良い。nは、重合度を表す整数であり、特に限定されないが、1〜100の間にあることが望ましい。重合度が大きすぎると低温粘度が高くなりすぎるなど、目的の性能が得られない場合がある。
【0018】
また、このポリシロキサン分子の末端は、Si原子に最大3つの置換基が付くことになるが、これらの置換基もメチル基、アリール基のいずれでも良い。しかし、シロキサン分子の安定性の点で、メチル基が3個結合しているものが好適に使用できる。
【0019】
そして本発明においては、R1、R2がそれぞれメチル基(−CH3)もしくはアリール基からなり、メチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30のものを用いる。ここでアリール基とはベンゼン環を少なくとも一つ含む置換基を表す。中でもフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましく、特にはフェニル基が好ましい。
【0020】
「メチル基のアリール基に対するモル比」とは、ポリオルガノシロキサン構造中に含まれる、Si原子と結合している置換基の数の比(メチル基の数/アリール基の数)である。つまりこの数字が小さくなればなるほど、アリール基の比率が高くなる。
(A)成分において、メチル基のアリール基に対するモル比が小さいほど、トラクション係数が高くなり、添加剤溶解性にも優れるが、反面、低温粘度が高くなったり、粘度指数が低くなったりし、目的とする性能が得られないことがある。そこで、トラクション係数が高く、低温流動性に優れ、粘度指数が高く、かつ、潤滑油として要求される様々な性能を満足するために必要な添加剤の溶解性も満足するためには、メチル基のアリール基に対するモル比を0.2〜30の範囲にすることが必要である。
【0021】
ポリジメチルシロキサンは、シリコーン油としてより一般的であるが、脂環式化合物に対する相溶性が劣り、より低粘度のものしか溶解しない。その結果、高温での動粘度を高くできない。場合によっては、添加剤が溶けないことがあるため好ましくない。
【0022】
(A)成分の濃度は、組成物全量基準で1〜30質量%、好ましくは10〜30質量%となるようにする。(A)成分の濃度が1質量%未満では低温流動性、粘度温度特性が自動車用トラクションドライブ流体として要求される性能を満足しなくなることがあるため好ましくない。一方、30質量%を超えると、低温粘度は低下するものの、トラクション係数が低くなりすぎ、また変速機油としての性能を発揮するために必要な添加剤の溶解性が悪化するなどの問題が起こることがある。
【0023】
また、置換基がメチル基およびアリール基からなる(A)成分としては、メチル基のアリール基に対するモル比が10〜30であるポリオルガノシロキサン((A1)成分)と、メチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜10であるポリオルガノシロキサン((A2)成分)との混合物を用いることがさらに好ましい。すなわち、トラクション係数はやや低いが低温流動性に優れた(A1)成分と、低温流動性はやや劣るがトラクション係数が(A1)成分よりも高く、添加剤溶解性にも優れた(A2)成分を混合することで、特に変速機用として用いるために好ましい組成物を作ることができる。
【0024】
この場合、(A1)成分と(A2)成分との比率(質量比)は、1:30〜30:1が好ましく、1:5〜5:1がより好ましい。この範囲を外れると、(A1)成分と(A2)成分それぞれの優れた点を生かすことができなくなる。
【0025】
(A1)成分としては、メチル基のアリール基に対するモル比が15〜25、25℃における動粘度が20〜200mm2/sであるポリオルガノシロキサンがより好ましく、また、(A2)成分としては、メチル基のアリール基に対するモル比が0.6〜9、25℃における動粘度が20〜500mm2/sであるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
(A1)成分および(A2)成分は、それぞれ2種以上のものを混合して用いても良いし、シリコーン油の合成の際にあらかじめ同様の混合物が得られるように合成されたものであってもかまわない。
【0026】
[(B)成分のチアジアゾール環構造を含む化合物]
本発明に(B)成分として用いる分子内に少なくとも一つのチアジアゾール環構造を含む化合物は、チアジアゾール環、すなわち次の一般式(2)で表される構造を分子中に少なくとも一つ含む化合物を意味する。
【0027】
【化2】
Figure 0003775986
【0028】
なかでも、次の一般式(3)で表されるポリサルファニルチアジアゾール類などが好ましい。
【0029】
【化3】
Figure 0003775986
【0030】
ここで、C22Sは、チアジアゾール環であり、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールのいずれかであり、x、yはそれぞれ1〜8の整数である。また、R3およびR4は、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、それぞれ同一であっても異なっていても良い。R3、R4としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、へキシル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基などを例示できる。
【0031】
[(C)成分の金属サリシレート]
本発明のトラクションドライブ用流体は、(C)成分として金属サリシレートがトラクションドライブ用流体全量基準で0.01〜1.0質量%含有するよう配合される。金属サリシレートは、代表的には次の一般式(4)で示される化合物である。
【0032】
【化4】
Figure 0003775986
【0033】
上式中、R5およびR6は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、炭化水素基として、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基などが挙げられる。R5およびR6は同一であっても、互いに異なっていてもよく、特に炭素数8〜20の直鎖および/または分枝のアルキル基が好ましい。また、X1およびX2はともに−OH基または−O−M2−OH基を表し、X1およびX2は同一であっても、互いに異なっていてもよい。M1およびM2は、アルカリ土類金属を示す。M1およびM2は異なる金属であってもよいが、同じ金属が経済的であり好ましい。
潤滑油の添加剤として金属サリシレートと類似の目的で金属フェネート、金属スルホネートなどがよく使用されるが、サリシレートは湿式クラッチの摩擦特性および摩擦材の耐剥離性能がこれらよりも優れている。上記一般式(4)においてM1またはM2で示すアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどが好ましく、なかでもカルシウムが好ましい。また、本発明で用いる金属サリシレートは、構成する金属の水酸化物、炭酸塩などで塩基価30〜400mgKOH/g程度に過塩基価化されていてもよい。
本発明において、金属サリシレートは、トラクションドライブ用流体組成物全量を基準として0.01〜1.0質量%含有されるよう配合される。配合量が0.01質量%未満では、所期する摩擦特性や耐剥離性能が得られず、逆に、1.0質量%を超えても配合量の増加に見合う効果がみられないので不経済である。
【0034】
なお、さらに本発明のトラクションドライブ用流体は、その効果を損なわない範囲で、イソパラフィン系炭化水素油やアルキルベンゼンなどの炭化水素化合物を適宜配合することを妨げるものではない。
イソパラフィン系炭化水素油としては、α−オレフインなどの重合体、あるいはその水素化物を用いることができる。重合の原料としては、炭素数が3以上のオレフインが好ましく、特にブテン、ブチレンなどの2〜7量体が好ましい。また、これらのオレフインは単独で重合させた重合体でも、数種のオレフィンを重合させた共重合体の形でも良い。数平均分子量100〜1000であれば好適に使用できる。数平均分子量が100を切った場合、あるいは1000を超えた場合は、所定の動粘度もしくは低温粘度が得られなくなることがある。
【0035】
アルキルベンゼンについても、公知の方法で製造したものが利用できる。アルキルベンゼンの製造方法を特に限定するものでないが、例えば、プロピレンの2〜6量体を、ベンゼン、トルエン、キシレン等と、塩化アルミニウム(あるいは、フッ化水素、硫酸)等の触媒を用いて、反応温度20〜150℃、反応圧力2×105〜1.1×106Paの範囲で反応させて合成し、最終的に、蒸留等により分離、精製して得ることができる。アルキル基の炭素数が5〜20のアルキルベンゼンが本発明の潤滑油の成分として好適である。アルキル基の炭素数がこの範囲を外れると、所定の動粘度、トラクション係数が得られなくなることがあるため好ましくない。
【0036】
上記のような構成成分を混合して得られるトラクションドライブ用流体は、40℃における動粘度が15〜30mm2/s、100℃における動粘度が3.5〜7.0mm2/s、粘度指数が100〜250、−40℃におけるブルックフィールド(BF)粘度が、25,000〜200,000mPa・s程度であることが好ましい。
これらの粘度特性は、変速機に含まれるポンプなどの油圧機構を正常に作動させたり、シール材からの漏れ、軸受けなどの損傷を防ぐために必要となる。これが、上記の範囲を外れるようになると、自動車用のトラクションドライブ用流体として使用することが難しくなる。
本発明のトラクションドライブ用流体は、前記のような構成成分とすることで、自動車用に適する物理性状を得ることができたものである。これにより、低温流動性とトラクション係数を両立させたトラクションドライブ用流体とすることができる。
【0037】
本発明のトラクションドライブ用流体には、上記の成分の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来から潤滑油に用いられている摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧剤、清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、消泡剤などを適宜添加することができる。
【0038】
摩擦調整剤としては脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族イミド、アルコール、エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等が、摩耗防止剤としてはリン酸エステル、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が、極圧剤としては硫化オレフイン、硫化油脂等が、分散剤としてはポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸エステルおよびそれぞれのホウ酸変性物等が、酸化防止剤としてはアミン系、フェノール系の酸化防止剤等が、金属不活性剤としてはベンゾトリアゾール等が、防錆剤としてはアルケニルコハク酸エステルまたは部分エステルなどが、消泡剤としてはシリコン化合物、エステル系消泡剤等が、それぞれ挙げられる。これらはそれぞれコンポーネントで添加しても良いし、また、これらの混合物として販売されているパッケージを用いても良い。
【0039】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用したトラクションドライブ用流体を、以下に示す各成分を用いて調製した。
【0040】
〔分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物〕
2,4−ジシクロへキシル−2−メチルペンタン
【0041】
〔A成分〕
(A1−50):置換基としてメチル基とフェニル基とを有し、メチル基/フェニル基(モル比)が約19であり、25℃における動粘度が50mm2/sであるポリオルガノシロキサン
(A2−400):置換基としてメチル基とフェニル基とを有し、メチル基/フェニル基(モル比)が約3であり、25℃における動粘度が400mm2/sであるポリオルガノシロキサン
【0042】
〔B成分〕
(B1):2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのポリサルファニルアルキル置換体
(B2):5,5−ジチオビス[1,3,4−チアジアゾール−2(3H)−チオン]
【0043】
〔C成分〕
(C1):全塩基価(TBN)230mgKOH/g、カルシウム(Ca)含有量約8重量%のCaサリシレート
(C2):TBN240mgKOH/g、Ca含有量約9重量%、硫黄含有量約3重量%のCaフェネート
(C3):TBN300mgKOH/g、Ca含有量約11重量%、硫黄含有量約1重量%のCaスルホネート
【0044】
〔その他の添加剤〕
コハク酸イミド型分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属不活性化剤、消泡剤など
【0045】
上記の成分基材を表1上部に示す配合割合(質量%)で混合し、なお、その他の添加剤としては、全く同じ種類および配合量の組合せで混合して、実施例1〜2および比較例3〜7のトラクションドライブ用流体を調製した。また、添加剤を含まない例として、比較例1と2を示した。いずれも、粘度などの物性を測定するとともに、トラクションドライブ用流体としての性能を評価した。
【0046】
トラクションドライブ用流体の粘度測定、性能評価は、下記の方法で行なった。
(動粘度および粘度指数)
JIS K2282に準拠して、40℃と100℃における動粘度を測定するとともに、粘度指数を算出した。
【0047】
(BF(ブルックフィールド)粘度試験)
ASTM D 2983に準拠して、−40℃のBF粘度を測定した。
【0048】
(トラクション係数)
曽田式四円筒試験機を用いて測定した、法線荷重に対する伝達された接線力の比をトラクション係数とした。測定条件は、ローラ幅1cm、油温40℃、法線荷重360kgf、回転数2400rpm(平均転がり速度5.0m/s)、すべり率2.2%で行った。
【0049】
(シェル四球摩耗)
ASTM D 4172に準拠し、1800rpm、80℃、30kgfで試験を30分行い、試験後、固定球の摩耗痕径の平均値を測定した。
【0050】
(湿式クラッチ摩擦特性)
JASO M348−95に準拠し、SAE No.2試験を行った。試験は5000サイクル行い、500サイクル時のμ0/μdと、5000サイクル時のμ0/μdを比較した。
【0051】
(実施例1〜2および比較例1〜7)
上記方法により実施例1〜2および比較例1〜7のトラクションドライブ用流体の動粘度、粘度指数、BF粘度、トラクション係数、シェル四球摩耗および湿式クラッチ摩擦特性を求めた。その結果を表1下部に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003775986
【0053】
表1から分かるように、比較例1〜7のトラクションドライブ用流体は、いずれも致命的な欠陥を有している。(B)成分を配合しない比較例1、2および7の流体は、焼付きを起こし、また、カルシウムサリシレートの代わりにカルシウムフェネートまたはカルシウムスルホネートを配合した比較例3〜5の流体は、湿式クラッチ摩耗特性試験で、μ0/μdの値が1以上と高く、500サイクル時の値と比べても差も大きく安定性に欠けている。清浄分散剤を含まない比較例6の流体も同様である。また、いずれも摩擦剤に剥離を生じており、実用性能が懸念される。
これらに比して本発明の実施例1および2のトラクションドライブ用流体は、粘度特性、トラクション係数、耐摩耗性および摩耗特性の全てにおいて良好な性能を示していることが分かる。実施例に示すものは、いずれも特に湿式クラッチ摩擦特性として、μ0/μdが500サイクル時および5000サイクル時ともに1以下であり、しかも安定している。
【0054】
【発明の効果】
本発明のトラクションドライブ用流体は、脂環式化合物を主成分として、特定の(A)ポリオルガノシロキサン、(B)チアジアゾール化合物および(C)金属サリシレートをそれぞれ特定量含有するものであることから、トラクション係数が高く、低温流動性に優れ、粘度指数が高く、さらに境界潤滑性、安定性にも優れる。このため、特に自動車用トラクションドライブ用流体として優れた性能を発揮できる。

Claims (1)

  1. 分子中に少なくとも一つのシクロアルキル基を有する脂環式化合物を主成分とし、
    (A)置換基がメチル基およびアリール基からなり、メチル基のアリール基に対するモル比が0.2〜30であるポリオルガノシロキサンを組成物全量基準で1〜30質量%、
    (B)分子内に少なくとも一つのチアジアゾール環構造を含む化合物を、窒素量として組成物全量基準で300質量ppm以上、および
    (C)金属サリシレートを組成物全量基準で0.01〜1.0質量%
    を含むことを特徴とするトラクションドライブ用流体。
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