JP3775340B2 - 加工性に優れた高張力熱延鋼板および加工方法 - Google Patents

加工性に優れた高張力熱延鋼板および加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の輸送機に使用される部材に適した、690MPa以上の引張強度を有する加工性に優れた高張力熱延鋼板および加工方法に関する。
【0002】
【従来技術】
室温で鋼板中に残留しているオーステナイトが、成形時にマルテンサイトに変態することによって高い延性を示す変態誘起塑性を利用した複合組織鋼板に関する技術が種々提案されている。しかしながら、この種の鋼は高い延性を示すものの伸びフランジ性が低いという欠点があり、それを改善することが望まれている。
【0003】
軟質なフェライトと硬質相とを含む複合組織鋼の伸びフランジ性を向上させる技術として、フェライトと硬質相との硬度差を小さくする方法が有効であることはよく知られている。そのためにフェライトを固溶強化または析出強化するという手法があり、これらのうち析出強化はTi、NbまたはVの炭化物あるいは単窒化物により行われてきた。例えば、特開平5−179396号公報には、Tiまたは/およびNbの炭化物がフェライトに析出した鋼板に関する技術が開示されている。しかしながら、TiやNbの炭化物は粗大化の進行が速く、炭化物の寸法が大きくなると強化能が低下するため、必要な程度にフェライトを強化しようとすると、これらを多量に添加する必要がある。その結果、フェライトの延性が低下し、鋼板としての加工性を低減させてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来技術として開示されているフェライトと硬質相とを含む複合組織鋼板では厳しい加工条件に対応することができないという問題点を有している。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、従来から知られている延性の高い残留オーステナイトを含む複合組織鋼板を前提とし、伸びおよび伸びフランジ性に代表される加工性に優れ、自動車用部材に適した高張力鋼板および加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、優れた伸びおよび伸びフランジ性を兼備した高張力熱延鋼板を得るために研究を重ねた結果、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織とし、フェライト相を特定の元素比率を満たす微細析出物により強化することで、高張力でありながら優れた伸びおよび伸びフランジ性を示すことを見出した。すなわち、このように微細析出物を用いることにより、極力少ない析出物量でフェライトを強化するため、延性低下を極力避けることができるのである。
【0007】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(9)を提供する。
【0008】
(1)質量%で、C:0.1〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.7%、P≦0.06%、S≦0.01%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織を有し、フェライト中に以下の(1)式を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、690MPa以上の引張強度を有する加工性に優れた高張力熱延鋼板。
(Mo/96)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≧0.25‥‥(1)
ただし、上記(1)式中、Ti、Moは炭化物中の各成分の質量%を示す。
【0009】
(2)質量%で、C:0.1〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.7%、P≦0.06%、S≦0.01%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%、W:0.01〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織を有し、フェライト中に以下の(2)式を満たす範囲でTi、MoおよびWを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が690MPa以上の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
{(Mo/96)+(W/184)}/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≧0.25‥‥(2)
ただし、上記(2)式中、Ti、Mo、Wは炭化物中の各成分の質量%を示す。
【0010】
(3)上記(1)において、C、Ti、Moを以下の(3)式を満足するように含有することを特徴とする加工性に優れた高張力熱延鋼板。
1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦6.5 …(3)
ただし、上記(3)式中、C、Ti、Moは鋼中の各成分の質量%を表す。
【0011】
(4)上記(2)において、C、Ti、Mo、Wを以下の(4)式を満足するように含有することを特徴とする加工性に優れた高張力熱延鋼板。
1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≦6.5 …(4)
ただし、上記(4)式中、C、Ti、Mo、Wは各成分の質量%を表す。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.1%のうち1種以上を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力熱延鋼板。
【0013】
(6)上記(5)において、前記フェライト中の炭化物が、さらに、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力熱延鋼板。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のいずれかの高張力熱延鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材にプレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工する第2の工程とを有する高張力熱延鋼板の加工方法。
【0015】
(8)上記(7)において、プレス成形品は、自動車用部品、特に自動車用足廻り部材である高張力熱延鋼板の加工方法。
【0016】
(9)上記(1)から(6)のいずれかに記載の高張力熱延鋼板により製造された自動車用部品。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、化学成分組成、金属組織、および製造方法に分けて具体的に説明する。
【0018】
[化学成分組成]
本発明の高張力鋼板は、質量%で、C:0.1〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.7%、P≦0.06%、S≦0.01%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる。また、これらの他にW:0.01〜0.5%を含んでいてもよい。また、これらいずれの場合にも、さらに、Nb:0.005〜0.05%およびV:0.01〜0.1%のうち1種以上を含んでいることが好ましい。
以下、これら各成分について説明する。
【0019】
C:
CはTiおよびMoを含む炭化物、または、Ti、MoおよびWを含む炭化物、または、これらのいずれかとNbおよびVの1種以上とを含む炭化物としてフェライト相中に固定されるとともに、残留オーステナイトやマルテンサイト中にも濃化し、強度上昇に寄与する。しかし、0.1%未満では、良好な延性を得るための残留オーステナイトが確保できず、一方、0.2%を超えると残留オーステナイトやマルテンサイトへの濃化が過大となり、フェライトとそれら硬質相との硬度差が大きくなって伸びフランジ性の低下を招く。このため、C含有量を0.1〜0.2%がとした。
【0020】
Si:
Siはフェライトの生成と残留オーステナイトへのC濃化を促進する。しかし、0.5%未満ではこれらの促進効果が不十分であり、一方、2.0%を超えると鋼を脆化させる。このため、Si含有量を0.5〜2.0%とした。
【0021】
Mn:
Mnはセメンタイトの生成を抑制し、結果的に残留オーステナイトへのC濃化を促進させる。しかし、0.5%未満ではセメンタイト生成抑制効果が低く、1.7%を超えると鋼の鋳造時の偏析が顕著となり、伸びフランジ性を低下させる。このため、Mnの含有量を0.5〜1.7%とした。
【0022】
P:
Pは固溶強化元素であるが、0.06%を超えて添加すると粒界への著しい偏析を招き延性が低下するので、0.06%以下が好ましい。
【0023】
S:
SはMnS、TiSとして固定されるため強度に有効に作用するMn、Ti量を低減させ、また、延性も低下させることから、少ないほど好ましく、このため、S含有量を0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
【0024】
Al:
Alは脱酸剤として添加される。しかし、その含有量が0.06%を超えると鋼の延性低下を招くことから0.06%以下とする。
【0025】
N:
Nは鋼中の不純物であり、その含有量が0.006%を超えると延性を低下させる粗大な窒化物形成の原因となることから、0.006%以下が好ましい。
【0026】
Mo:
Moは本発明において重要な元素であり、Ti、または、TiおよびW、または、これらいずれかとNbおよびVの1種とともに微細炭化物を形成し、炭化物の粗大化を抑制する。また、残留オーステナイトへのC濃化を促進してパーライトの生成を抑制する。しかし、0.1%未満ではその効果が小さく、0.5%を超えるとフェライトの生成を阻害する。このため、Mo含有量を0.1〜0.5%とした。
【0027】
Ti:
Tiは、Mo、または、MoおよびW、または、これらいずれかとNbおよびVの1種以上とともに微細炭化物を形成し、フェライトを強化する。しかし、0.05%未満では、必要なフェライト強化の効果が得られず、0.2%を超えると変態点の著しい上昇を招き、仕上圧延をオーステナイト域で終了させることが困難となり加工性が低下する。このため、Ti含有量を0.05〜0.2%とした。
【0028】
W:
WはMoと同様に微細炭化物の粗大化を抑制する効果があり、Moの一部を置き換えることが可能である。Wが0.01%未満ではその効果が小さく、0.5%を超えると熱間強度が高くなって熱間圧延が困難となるため、Wを添加する場合には、その含有量を0.01〜0.5%とする。
【0029】
Nb、V:
Nb、Vはともに炭化物を形成し、フェライトの強化に有効であり、必要に応じて1種以上を添加することができる。Nbが0.005%未満ではNb析出の効果が小さく、0.05%を超えると熱間強度が高くなり、熱間圧延が困難となるため、Nbを添加する場合には、その含有量を0.005〜0.05%とする。また、Vが0.01%未満ではV析出の効果が得られず、0.1%を超えてもその効果が飽和するため、Vを添加する場合には、その含有量を0.01〜0.1%とする。
【0030】
なお、上記以外の元素を微量に添加してもよく、例えばCr、Ni,Cuを添加することもできるが、これらの元素は鋼板の表面性状を劣化させ、0.15%以上になるとその傾向が顕著となるため、これらを添加する場合には0.15%以下とする。
【0031】
本発明では、上記成分組成を満たす他、C、Ti、Moを以下の(3)式を満足するように含有することが望ましい。
1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦6.5 …(3)
(ただし、上記(3)式中、C、Ti、Moは鋼中の各成分の質量%を表す。)
【0032】
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}は、鋼中のCと(Ti+Mo)との原子数比を表すものであり、この値が1.5超〜6.5となるようにC、Ti、Moの含有量を調整することにより、フェライト中に効果的にTi、Moを含む炭化物が均質微細に分散析出しやすくなる。その値が1.5以下ではフェライト中に炭化物を析出させた後に残るCが不足し、十分な残留オーステナイトが得られなくなり、6.5を超えるとフェライトと残留オーステナイトおよびマルテンサイトとの硬度差が大きくなりすぎて伸びフランジ性を低下させる。
【0033】
また、Wを添加した場合には、C、Ti、Mo、Wを以下の(4)式を満足するように含有することが望ましい。
1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≦6.5 …(4)
(ただし、上記(4)式中、C、Ti、Mo、Wは鋼中の各成分の質量%を表す。)
【0034】
上述したようにWはMoと同様な作用を有するため、Wを添加する場合には、上記(3)式に対応する(4)式を満たすことにより、フェライト中に効果的にTiとMoとWとを含む炭化物が均質微細に分散析出しやすくなる。(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}の値が1.5以下ではフェライト中に炭化物を析出させた後に残るCが不足し、十分な残留オーステナイトが得られなくなり、6.5を超えるとフェライトと残留オーステナイトおよびマルテンサイトとの硬度差が大きくなりすぎて伸びフランジ性を低下させる。
【0035】
[金属組織]
本発明に係る高張力熱延鋼板は、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織を有し、フェライト中に以下の(1)式を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している。また、Wを含む場合には、フェライト中に以下の(2)式を満たす範囲でTi、MoおよびWを含む炭化物が分散析出している。さらに、これらの析出物には、NbおよびVの1種以上を含んでいてもよい。
(Mo/96)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≧0.25‥‥(1)
{(Mo/96)+(W/184)}/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≧0.25‥‥(2)
(ただし、上記(1)、(2)式中、Ti、Mo、Wは各成分の質量%を示す。)
以下、これらについて説明する。
【0036】
・フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相:
延性を確保するために、フェライトと残留オーステナイトが必要であり、ベイナイトおよびマルテンサイトは強度確保に重要であるため、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相の複合組織とした。延性を良好にするためには、残留オーステナイトの体積率を3〜10%とすることが望ましい。
【0037】
・フェライト中に上記(1)式を満たす範囲のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出:
TiおよびMoを含む炭化物は微細となるため必要最小限の炭化物量でフェライトを強化することができる。従来は、炭化物としてTiの炭化物を用いることが主流であったが、Tiは炭化物形成傾向が強いため粗大化しやすく、フェライトを目的のレベルまで強化するのに多量の炭化物を必要とし、その結果、フェライトの延性を損なっていた。これに対し、TiおよびMoを含む炭化物は微細に安定して析出させることができる。析出物が安定的に微細に存在することができるためには、炭化物の組成が重要であり、炭化物の組成が、(Mo/96)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≧0.25となるとMoの炭化物粗大化抑制効果が高くなり、所望の微細析出物を得ることができる。
【0038】
・フェライト中に上記(2)式を満たす範囲のTi、MoおよびWを含む炭化物が分散析出:
Wは、Moと同様に炭化物の微細化に効果を発揮し、Moの一部を置き換えることが可能である。そして、析出物が安定的に微細に存在することができるためには、炭化物の組成が重要であり、炭化物の組成が、{(Mo/96)+(W/184)}/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≧0.25となるとMoおよびWの炭化物粗大化抑制効果が高くなり、所望の微細析出物を得ることができる。
【0039】
・炭化物にNbおよびVの1種以上を含む:
TiおよびMoを含む炭化物、あるいはTi、MoおよびWを含む炭化物には、NbおよびVの1種以上が含まれていてもよい。その理由は、NbおよびVはTiと同様に、Mo、Wより炭化物を形成する傾向が強い元素であるが、炭化物の粗大化を抑制することができるMo、Wが含まれていれば微細化の効果が得られるからである。
【0040】
なお、本発明の高張力熱延鋼板は、製造方法は特に限定されるものではなく、通常行われる方法で製造することができる。しかし、前述の3相または4相からなる組織とし、フェライト中にTiとMoとを含む微細な炭化物を析出させ、良好な伸びおよび伸びフランジ性を得るためには、前記成分組成の鋼をスラブとした後、直ちに、あるいは1200℃に加熱し、熱間圧延を行うに当たり、仕上げ圧延を800℃以上で終了し、その後20℃/秒以上の冷却速度で400〜500℃まで冷却し、その温度で巻取るといった条件で製造することが好ましい。さらに望ましくは、仕上圧延後、600〜700℃まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、3秒間以上の空冷を経て、400〜500℃まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却して巻取る。この際の冷却速度は30℃/秒以上とすることがさらに望ましい。
【0041】
なお、本発明の熱延鋼板は、黒皮ままでも酸洗材でもその特性に差違はない。調質圧延についても通常行われているものであれば特に規定はない。亜鉛めっきについては電気めっきが可能である。化成処理についても特に問題はない。鋳造後直ちにもしくは補熱を目的とした加熱を施した後にそのまま熱間圧延を行う直送圧延を行っても本発明の効果に影響はない。さらに、粗圧延後に仕上圧延前で、圧延材を加熱しても、粗圧延後、圧延材を接合して行う連続圧延を行っても、さらには圧延材の加熱と連続圧延を同時に行っても本発明の効果は損なわれない。
【0042】
本発明の高張力鋼板は、加工性に優れているのでこれをプレス成形した場合、その特質が活かされ、自動車用部材、特にサスペンションアーム等の足廻り部材のようなプレス成形部材を良好な品質で製造することができる。以下に具体的に、本発明に係る高張力鋼板の加工方法、換言すればプレス成形品の製造方法について説明する。
【0043】
図1は、本発明に係る高張力鋼板の加工方法の作業フローの一例を示すフローチャートである。この作業フローは、通常、本発明に係る鋼板を製造することまたはその製造された鋼板を例えばコイルにして目的場所に搬送することを前工程としており、まず、本発明に係る高張力鋼板を準備することから始まる(S0、S1)。この鋼板に対してプレス加工を施す前に、鋼板に対して前処理的な加工を施すこともあれば(S2)、裁断機により所定の寸法や形状に加工することもある(S3)。前者のS2の工程では、例えば鋼板の幅方向の所定箇所に切り込みや穿孔を行い、引き続くプレス加工を終えた段階またはそのプレス加工の過程で、所定の寸法および形状のプレス成形品または被プレス加工部材として切り離すことができるようにしておく。後者のS3の工程では、最終的なプレス成形品の寸法、形状等を予め考慮して、所定の寸法および形状の鋼板部材に加工(したがって裁断)するようにしておく。その後、S2およびS3の工程を経由した部材には、プレス加工が施され、最終的に目的とする寸法・形状の所望のプレス成形品が製造される(S4)。このプレス加工は、通常は多段階で行われ、3段階以上7段階以下であることが多い。
【0044】
S4の工程は、S2およびS3の工程を経由した部材に対してさらに所定の寸法や形状に裁断する工程を含む場合もある。この場合の「裁断」という作業は、例えば、少なくともプレス加工の過程で、S2およびS3の工程を経由した部材の端部のような最終的なプレス成形品には不要部分を切り離す作業であっても構わないし、また、S2の工程で設けられた鋼板の幅方向の切り込みや穿孔に沿って被プレス加工部材を切り離す作業であっても構わない。
【0045】
なお、図1中、N1ないしN3は、鋼板、部材、プレス成形品を、機械的にあるいは作業員による搬送作業である場合がある。
【0046】
こうして製造されるプレス成形品は、必要に応じて次工程に送られる。次工程としては、例えば、プレス成形品にさらに機械加工を施し、寸法や形状を調整する工程、プレス成形品を所定場所に搬送し、格納する工程、プレス成形品に表面処理を施す工程、プレス成形品を用いて自動車のような目的物を組み立てる組立工程がある。
【0047】
図2は、図1に示した作業を実際に行う装置と鋼板、部材、プレス成形品の流れとの関係を示すブロック図である。この図においては、本発明に係る高張力鋼板はコイル状で準備されており、プレス加工機によりプレス成形品が製造される。プレス加工機は多段プレスを行う機種のものであるが、本件発明はこれに限定されない。
【0048】
プレス加工機の前段に、裁断機その他の前処理機械を設置する場合(図2の(a))もあれば、設置しない場合(図2の(b))もある。裁断機が設置される場合には、コイルから供給される長尺の本発明に係る鋼板から、必要な寸法または形状の部材を裁断し、この部材がプレス加工機においてプレス加工され、所定のプレス成形品となる。鋼板の幅方向に切り欠きや穿孔を施す前処理機械が設置される場合には、プレス加工機においてその切り欠きや穿孔に沿って裁断が行われても構わない。前処理機械を設置しない場合には、プレス加工機において鋼板がプレス加工される過程で、裁断が行われ、最終的に所定の寸法、形状を有するプレス成形品が製造される。なお、図2における「裁断」の意味は、図1における裁断と同じである。
【0049】
こうして製造されるプレス成形品は、その原材料として加工性に優れ、特に伸びフランジ性に優れている本発明に係る高張力鋼板を使用しているので、プレス時の断面形状が複雑であっても、良好な品質で製造することができ、軽量なものとなる。このような特長は、プレス成形品が自動車用部材、特にサスペンションアーム等の足廻り部材である場合に特に有用である。
【0050】
【実施例】
表1に示す化学成分組成を有する鋼スラブを、同表に示す条件により、熱延圧延、冷却および巻き取りが行われ、板厚3.2mmの熱延鋼板を得た。得られた鋼板を酸洗後、鋼板から作製した薄膜について透過型電子顕微鏡(TEM)によって析出物を観察した。Ti、Mo等の組成をTEMに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(EDX)による分析から把握した。また、マトリックスの組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)により行った。表1に、析出物に関する上記(2)式の値、および鋼成分に関する上記式(4)式の値、組織、残留オーステナイト体積分率を併記する。なお、Wを含まない場合には、(2)式は(1)式に一致し、(4)式は(3)式に一致する。
【0051】
また、得られた熱延鋼板について引張特性、伸びフランジ性を調査した。なお、引張試験はJIS5号引張試験片を用いてL方向(圧延方向)について実施した。また、伸びフランジ性を表す穴広げ率は、日本鉄鋼連盟規格に従って測定した。表1に試験結果をまとめて示す。
【0052】
表1に示すように、本発明例であるNo.1〜4は、いずれも引張強度が690MPa以上であり、良好な伸びと伸びフランジ性を示した。一方、比較例であるNo.5,6,7は、伸びおよび伸びフランジ性がともに低い値となった。具体的には、No.5はTiが含まれていないためにTiとMoとを含む炭化物が析出しておらず、フェライトの強化がなされていないことから伸びフランジ性が低くなっている。No.6はフェライト中の炭化物組成が(2)式(Wが含まれていないから実際には(1)式)を満たしておらず、また、(4)式(Wが含まれていないから実際には(3)式)も満たしておらず、Crを多量に含むことからフェライトの強化が不十分で、フェライトとその他の相との硬度差が大きいため伸びフランジ性が低い。また、No.7は、Moを含まないためTiとMoとを含む炭化物が析出しておらず、フェライトの強化が不十分であるため、伸びフランジ性が低い。
【0053】
【表1】
Figure 0003775340
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、引張強度が690MPa以上の高強度でありながら、優れた伸びおよび伸びフランジ性を有する熱延鋼板を得ることができ、自動車等の輸送機に使用される加工の厳しい部材に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高張力鋼板の加工方法の作業フローの一例を示すフローチャート。
【図2】図1に示した作業を実際に行う装置と鋼板、部材、プレス成形品の流れとの関係を示すブロック図。

Claims (9)

  1. 質量%で、C:0.1〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.7%、P≦0.06%、S≦0.01%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織を有し、フェライト中に以下の(1)式を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、690MPa以上の引張強度を有する加工性に優れた高張力熱延鋼板。
    (Mo/96)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≧0.25‥‥(1)
    ただし、上記(1)式中、Ti、Moは炭化物中の各成分の質量%を示す。
  2. 質量%で、C:0.1〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.7%、P≦0.06%、S≦0.01%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%、W:0.01〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相、またはこれらに加えて一部マルテンサイトを含む4相からなる複合組織を有し、フェライト中に以下の(2)式を満たす範囲でTi、MoおよびWを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が690MPa以上の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
    {(Mo/96)+(W/184)}/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≧0.25‥‥(2)
    ただし、上記(2)式中、Ti、Mo、Wは炭化物中の各成分の質量%を示す。
  3. C、Ti、Moを以下の(3)式を満足するように含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
    1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦6.5 …(3)
    ただし、上記(3)式中、C、Ti、Moは鋼中の各成分の質量%を表す。
  4. C、Ti、Mo、Wを以下の(4)式を満足するように含有することを特徴とする請求項2に記載の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
    1.5<(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(W/184)}≦6.5 …(4)
    ただし、上記(4)式中、C、Ti、Mo、Wは鋼中の各成分の質量%を表す。
  5. さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.1%のうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
  6. 前記フェライト中の炭化物が、さらに、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の加工性に優れた高張力熱延鋼板。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の高張力熱延鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材にプレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工する第2の工程とを有する高張力熱延鋼板の加工方法。
  8. 前記プレス成形品は、自動車用部品である請求項7に記載の高張力熱延鋼板の加工方法。
  9. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の高張力熱延鋼板により製造された自動車用部品。
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