JP3774649B2 - 液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の液体を吐出して記録媒体に記録を行う方式による液体吐出記録装置の液体吐出記録ヘッドからの飛翔液滴の量を測定する液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置、液体吐出記録ヘッドの検査システム、液体吐出記録装置、液体吐出記録ヘッドの製造システム、及び液体吐出記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液体吐出記録ヘッド(以下ヘッドと略称)の吐出口からインク液滴(以下液滴と略称)を吐出し、紙やOHPシート等の記録媒体に着弾させることで、画像を形成する液体吐出記録装置が知られている。液体吐出記録装置においては、高精細かつ高画質化が求められている。吐出された液滴量にばらつきがあると、濃度むらやカラー画像における色調ずれ等の影響を及ぼし、高精細かつ高画質化の妨げとなる。こうした問題を解決するためには、ヘッドの液滴吐出特性の解析を行う必要があり、液滴量に関しては吐出液滴1滴1滴の量のばらつきを測定することが求められてきた。またより高品質のヘッドを出荷するために、製造されたヘッドの液滴吐出特性の検査項目の1つとして、吐出液滴1滴1滴の量を測定することが求められてきた。
【0003】
しかし、ヘッドの代表的なものであると、液滴径が20μm、体積で4plと、液滴サイズが微小であることから、液滴1滴の量を測定するのは困難を極める。従来から、ヘッドの液滴吐出量を測定する各種の方法が提案されている。
【0004】
従来の第一の方法は、予め液体吐出記録装置のインクタンクの質量を測定しておき、その後、規定のヘッド駆動を行わせ、その後、更にそのインクタンクの質量を測定することにより、ヘッドの駆動動作前後の液滴質量差から平均的な液滴吐出量を算出するものである。
【0005】
従来の第二の方法は、染料が含まれる液滴をガラス基板上に形成した透明受容層上に着弾させ、その着弾液滴部分に光を照射し、透過した光量の計測値から着弾液滴内に含まれる染料の量を見積もる。そして、液適量とそれに含まれる染料の量との比が既知であるとすることにより液滴吐出量を算出するものである。
【0006】
従来の第三の方法は、例えば特開平5−149769号公報に記載されているように、液滴の飛翔像をカメラ等で撮影し、撮影画像を画像処理し、その画像の大きさから液滴体積を算出するものである。
【0007】
従来の第四の方法は、例えば特開2000−153603号公報に記載されているように、所定の深さと幅とを持つシャーレ形態の媒体に吐出液滴を受け、天板で覆う。天板に押しつぶされ変形した液滴のサイズを測定し、その測定値に基づいて、液滴の体積を算出するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来例においては次のような問題点があった。
【0009】
従来例の第一の方法では、算出するのは多数液滴の平均値であり、1滴1滴の液滴量ではないため、液滴間のばらつきや過渡的な液滴量の変化を測定することはできない。そのため、十分な情報が得られない問題点がある。
【0010】
また、従来例の第二の方法は、液滴を受ける受容層のばらつきが、液滴の受容層内での広がり方に影響を与え、ひいては透過光量にも影響する。現状では、特に、受容層の表面エネルギむら等のばらつきが液滴量測定の精度を落としている。また、この方法では、光を吸収しない透明液滴や光の透過量が極端に落ちる顔料インク等には適用できない。また、高速で連続的に吐出される液滴量を測定しようとすると、図15に示すように基板に着弾した液と液とが分離されず、つながってしまうため、1滴ごとの液滴量を測定することができない。
【0011】
また、従来例の第三の方法では、照明の方法、つまり照明光の強さや向き等により撮像される液滴の大きさが変ってしまう。また、この方法では、液滴径から液滴量と液滴体積を算出するが、液滴体積は液滴径の3乗に比例するので、体積の絶対誤差も径の測定絶対誤差のおよそ3乗に比例することになり、液滴径の測定誤差を小さく抑えないと、液滴体積の絶対誤差が大きくなる欠点がある。
【0012】
更に、従来例の第四の方法では、基板のたわみや表面むらのため、液滴を挟む受容基板と天板面との間隔をばらつきなく一定にするのは難しい。更に、受容基板と天板面の両面のぬれの状態もばらつきなく一定にすることは難しいため、測定に誤差が生じてしまう。更に、高速で連続的に吐出される液滴量を測定しようとすると、第二の方法と同様に、基板に着弾した液と液とが分離されずつながってしまうため、1滴ごとの液滴量を測定することができない。
【0013】
本発明の目的は、液体吐出記録ヘッドの更なる高画質化を実現するため、吐出液滴の1滴1滴の量を精度良く計測することができる液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置、液体吐出記録ヘッドの検査システム、液体吐出記録装置、液体吐出記録ヘッドの製造システム、及び液体吐出記録ヘッドを提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、移動する液滴の速度ではなく液滴の位置を複数回計測し、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は、移動する液滴の速度か位置どちらかだけではなく、液滴の位置と気流の流れ方向の移動速度成分を各々複数回計測し、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0017】
ここで、一定気流中の球状の液滴に働く抗力Fは、レイノルズ数が小さいとき、Stokesの式に従い、液滴の質量をm、液滴の半径をa、液滴に働く相対速度をv、雰囲気気体の粘性係数をηとすると、
F=6πηav
と表される。これにより、液滴に働く運動方程式が決定される。気流を一定等速速度の定常気流とし、それを解くと、液滴のy方向の速度vと位置yは以下の式で表される。
【0018】
v=(ve−vo)(1−exp(−t/τ))+vo ・・(1)
y=(ve−vo)(t−τ+τ・exp(−t/τ))+vot+yo・・・(2)
ここで、気流の流れ方向yを、気流の流速veを、時刻t=0での液滴のy方向の位置をy0、速度をv0、時定数τ=m/6πηaとしている。
【0019】
Δtを既知とし、時刻t=0、Δtにおける液滴の方向速度vを測定すれば、気流の流速式veは既知であるので、式(1)より未知数と共にτが算出できる。或いは、Δtを既知とし、t=0、Δt、2Δtにおける液滴のy方向位置yを測定すれば、気流の流速式veは既知であるので、式(2)より未知数v0、y0と共にτが算出できる。液滴の密度をρとすると、
τ=m/6πηa=2a2ρ/9η
であるので、液滴の密度ρと雰囲気気体の粘性係数ηが既知であれば、液滴の半径aが求められ、液滴の量を算出できることになる。
【0020】
ここでt=0とは、液滴の位置あるいは速度の計測を開始する時点である。本発明は計測をおこなう領域での気流が既知の層流になっていることが計測の必要条件である。つまり、計測開始前あるいは後の領域の気流が未知であったり、乱流であっても計測は可能である。
【0021】
また、速度と位置の計測を組み合わせることで測定系をより容易に構成できる可能性がでる。速度計測で1データをとれば、その分、位置計測で取得しなければならないデータ数を1つ減らすことができる。この測定では、時刻tが充分大きいと、式(1)と式(2)でτの成分がなくなることから自明なように、量に関わるτ成分を算出するには、液滴の気流流れ方向の速度が気流の速度と一致する前に、液滴の位置や速度の測定をしなければならない。しかも、液滴が微小で時定数τが小さいため、気流速度と一致するまでの時間は短い。よって、位置か速度どちらか一方のみの計測よりは、液滴位置と速度を別々の計測系で測定し、両者のデータとも利用するほうが、計測を行う上での困難が低くなる可能性がある。
【0022】
液滴が移動すると液滴周りの気流の状態を乱すことになるので、ヘッドの吐出周波数が大きく、飛翔する液滴と液滴との間隔が狭いと、液滴が移動することで生じた雰囲気内の気体による乱れが、次に吐出された液滴の移動に影響を与える可能性がある。そうすると、雰囲気気体の粘性係数ηは雰囲気気体固有の値と考えることができなくなる。
【0023】
しかし、本発明では、一定気流の流れ方向と非平行に液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測する。そのため、計測領域では、図2に示すように、液滴が移動することによる気流の乱れは気流の流れ方向に飛散し、液滴の軌道上には残らないため、液滴が移動することで生じた雰囲気内の気体乱れが、次に吐出される液滴の移動に影響を与えることはないと考えられる。よって、雰囲気気体の粘性係数ηは、その気体固有の一定値と考えることができる。
【0024】
更に、本発明は、粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0025】
更に、本発明は、移動する液滴の速度ではなく液滴の位置を複数回計測し、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0026】
更に、本発明は、移動する液滴の速度か位置どちらかだけではなく、液滴の位置と気流の流れ方向の移動速度成分を各々複数回計測し、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする。
【0027】
これにより、一方向で等速速度の層流気流場を作るよりも、より容易に、またより安定した雰囲気気流場を作りだせる可能性がある。もちろん、一定等速気流場の場合より液滴軌道を示す式は複雑になるが、気流の安定度が高ければ測定精度をより向上させることができる。更に、雰囲気気流場を容易に作り出すことができれば、液滴量測定装置のコストの低減や液滴量測定装置のサイズの縮小が可能になる。
【0028】
更に、本発明は、液滴の吐出方向を気流流れ方向と直交することを特徴とする。
【0029】
ヘッドの吐出周波数が大きく飛翔する液滴と液滴との間隔が狭い場合でも、前述したように、本発明では、液滴が移動することによる気流の乱れは気流の流れ方向に飛散し、液滴の軌道上には残らないため、液滴が移動することで生じた雰囲気内の気体乱れが、次に吐出される液滴の移動に影響を与えることはない。特に液滴の吐出方向を気流の流れ方向と直交させれば、気流域突入時の液滴の初期軌道と気流の流れ方向とが直交するので、上記の効果が大きいと考えられる。従って、本手法により、より高精度な計測が可能である。また、液滴吐出の周波数が上がるほど飛翔液滴間の距離が短くなるため、精度の良い測定は困難になっていくが、本手法を用いれば、より高い吐出周波数まで測定可能である。
【0030】
更に、本発明は、液滴飛翔エリアの空気の相対湿度が50〜90%になるように制御している。
【0031】
このように環境を比較的高めの湿度に保つことで、液滴が飛翔中に蒸発することにより、その量が減少することを防ぐことができる。
【0032】
更に、本発明は、前記記載の気流の気体成分が不活性気体であることを特徴とする。
【0033】
不活性気体の粘性係数は温度25度で、アルゴン22.48×10-5P、ヘリウム19.68×10-5P、ネオン31.42×10-5Pであり、空気18.2×10-5Pより大きいため、レイノルズ数は空気よりも小さくなり、雰囲気気体の気流を層流の状態にしやすい。本発明では、雰囲気気流は層流を仮定したものであるで、レイノルズ数の低下により測定精度の向上を図ることができる。
【0034】
更に、本発明は、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法を用いて、液体吐出記録ヘッドの各ノズルの特性を測定し、その測定値に基づいて、各ノズルで常に所定の液滴量での吐出が行われるようにヘッドの駆動制御を行う。
【0035】
これにより、液滴量が常に一定で、高品質な描画を可能とする液体吐出装置ができる。
【0036】
更に、本発明は、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法を用いて、製造済みの液体吐出記録ヘッドの各ノズルの諸特性を測定し、そのデータを製造装置にフィードバックし、目標性能を得るべく製造パラメータの調整を行う。
【0037】
これにより、液滴量が一定で高品質な液体吐出記録ヘッドを効率良く生産することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
(1)構成の説明
図1は本発明の第1実施形態の液体吐出記録ヘッド1の液滴量測定装置の一例を示す概略構成図である。液滴量測定装置は、平行に配置された2枚の平面ガラス板2、平面ガラス板2を搭載したステージ3、イメージ・インテンシファイア4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6、照明装置7を備えている。
【0040】
本第1実施形態で用いた液体吐出記録ヘッド1(以下ヘッドと略称)は、電気熱変換体により液滴に熱を加え、インクの一部を発泡させ、その発泡の作用力により、オリフィスプレートに開いたノズルからインクを吐出させるタイプのものである。ヘッド1のノズルの数は64個から1408個まで様々なタイプが生産されているが、本第1実施形態では128個のものを用いた。
【0041】
水平に並べた2枚の平面ガラス板2を水平方向に規定の一定速度で移動させることで、速度が既知である一定の定速気流をつくる。本第1実施形態では、2枚の平面強化ガラスを水平面度の良い角型ブロックを挟み込むように組付け、それを一軸の高速ロングストロークのステージ3に水平に据える。平面ガラス板2は一辺100mmの正方形の形状とし、2枚の平面ガラス板2の間のガラス面間距離は5mmとした。ステージ3は、移動ストロークが2.5m、加減速度2m/s2で最高速度が2m/sの性能を持つ。
【0042】
なお、ステージ3が2m/sで移動しているときの2枚の平面ガラス板2の中間域の気流速度は、熱線流速計や粒子像速度法(PIV法)により計測されており、1.88m/sであった。また熱線流速計により観察領域の乱流強度の評価もおこなわれ、観察領域に関しては十分層流になっていることが確かめられた。
【0043】
ステージ3の稼動範囲の中間付近にヘッド1と観察系拡大レンズ6が設置される。ヘッド1は、液滴が吐出されるオリフィスプレート面が垂直で、液滴が吐出されるノズル部の高さが、2枚の平面ガラス板2間の中央付近になるように設置される。ヘッド1の位置出しは、ヘッド1を固定しているステージ類(不図示)によりなされる。撮像部としては、1MHzのゲート周波数を持つ高精細のイメージ・インテンシファイア4(以下I.I.と略称)に1/2倍のリレーレンズを装着し、それに1024×1024画素を持つCCDカメラ5を接続して使用する。I.I.4に接続される観察系拡大レンズ6としては、倍率10倍、視写界深度が50μm以上あるレンズを使用した。照明装置7としては、発光半値幅が最長350μs、1パルスあたりのフラッシュ光量が200Jのストロボフラッシュ照明源に、リング型のファイバーライトガイドを接続し、照射リングを観察系拡大レンズ6の先端に設置した。これにより、液滴の反射光を観察系で捉える構成になっている。
【0044】
図1に示す実験系全体は、気流の乱れ等の外乱を防ぐため、アクリル板で覆った。また、アクリル板内に湿度計測機能が付属している加湿器を設置し、アクリル板内の雰囲気を常時相対湿度70%に制御した。
【0045】
なお相対湿度が50%より低いと、吐出された液滴の一部が飛翔中に蒸発することが観察されている。また相対湿度が90%より高いと、ヘッド2の吐出口に水蒸気が凝結し、吐出する液滴量に誤差を及ぼしたり、吐出方向を変動させる悪影響を及ぼす。
【0046】
また、アクリル板内には温度計を設置し、温度が例えば25℃になるように制御する。
【0047】
図2は本発明の第1実施形態の液滴の飛翔と雰囲気気体の乱れを示す説明図である。ヘッド1の吐出液滴の測定領域では、図2のように、液滴が移動することによる気流の乱れは、気流の流れ方向に飛散し、液滴の軌道上には残らないため、液滴が移動することで生じた雰囲気内の気体乱れが、次にヘッド1から吐出される液滴の移動に影響を与えることはないと考えられる。よって、雰囲気気体の粘性係数ηは、その気体固有の一定値と考えることができる。
【0048】
ヘッド1の吐出液滴の測定では、カメラ露光、ストロボ点灯、I.I.4のゲートのタイミングを図3に示すように制御した。ヘッド1は周波数1kHzで吐出駆動した。1回のカメラ露光時間を1msにし、カメラ露光時間内に1回のストロボ点灯を行った。ストロボ発光時間は300μsに設定した。このストロボ発光時間内にI.I.4のゲートを4回駆動する。ゲート幅50ns、周波数1MHzで2ゲート分の駆動を1組として2組分の駆動を、各組の2ゲート駆動する時間の中間の時刻と次の組の2ゲート間の中間時刻との差が100μsになるように、4回のゲート駆動を行った。尚、ゲートを開いたときには必ず液滴画像が撮像されるように、この時間差は、測定エリアと液滴のスピードに応じて適宜調整されねばならない。
【0049】
これらCCDカメラ5、照明装置7によるストロボ照明、I.I.4のゲートの駆動は、平面ガラス板2を移動するステージ3の制御とタイミングがとられる。平面ガラス板2を搭載したステージ3は、ストロークの中央付近では最高速2m/sで等速に移動し、軸上を往復移動するように制御される。ステージ3のストロークが充分長いため、最高速度で等速移動する距離も充分得ることができる。
【0050】
平面ガラス板2の中央が観察領域内に入っている間に、以上説明してきたCCDカメラ5等の駆動がなされる。ヘッド1は連続1kHzで駆動させても、CCDカメラ5のシャッタに同期させて撮影時前後のみ駆動を行っても、どちらでも構わない。
【0051】
本測定前に、これら機器の同期がとれるようタイミングの調整を行った。また、ヘッド1の吐出液滴が測定領域を横切り液滴画像が取得できるように、観察光学系、照明系、ヘッド1の位置調整を行った。尚、液滴の大きさが異なれば、時定数τが異なるため、液滴の通る飛翔軌道も変る。よって、事前の調整で極力すべての液滴を画像に捉えられるように、これら機器の位置調整がなされなければならない。
【0052】
図4は本発明の第1実施形態の液滴量測定装置の制御系を示すブロック図である。液滴量測定装置の制御系は、パーソナルコンピュータ(以下パソコン)100、制御部101、ヘッドコントローラ102、I.I.ドライバ103、ガラス板ステージコントローラ104を備えている。
【0053】
即ち、ヘッド1、CCDカメラ5、照明装置7(ストロボ照明光源)、I.I.4のゲート、ステージ3の制御は、図4に示すように、パソコン100と接続された制御部101により一括して制御する。タイミング信号等の制御データは実験前にパソコンから制御部に送信した。ヘッドコントローラ102は、ヘッド1を駆動制御する。I.I.ドライバ103は、I.I.4を駆動制御する。ガラス板ステージコントローラ104は、ステージ3を駆動制御する。
【0054】
CCDカメラ5で撮像された画像データは、パソコン100に送られ、パソコン100内部のメモリに記憶される。画像データは、実験後、メモリから読み出され、画像処理ソフトにより液滴の重心位置座標が算出される。尚、実験前に、規定の間隔の格子パターンを描いたガラス基板を測定領域に設置し、上記構成でCCDカメラ5により撮像され画像が取得される。その画像上の画素単位での格子間隔と、ガラス基板上での実格子間隔とから、画像データの1画素が実空間でどれだけの長さに相当するかというキャリブレーションが行われる。このキャリブレーションデータは、パソコン100のメモリに記憶され、画像処理により液滴重心位置が算出される際に用いられる。
【0055】
(2)動作の説明
次に、本発明の第1実施形態の動作について図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0056】
本第1実施形態では、I.I.4のゲートを開くごとに液滴を反射した光が観察系拡大レンズ6に入射するので、図5に示すように1画像データには同一液滴が、ゲートが開く回数と同じ4点表示される。液滴重心位置を算出し、近接した2液滴間の気流流れ方向の距離を、撮影された時刻の差である1μsで割ることで、気流流れ方向の速度を求める。これを別の近接液滴間でも行う。
【0057】
時刻t=0、Δtでのそれぞれ速度値を式(1)に代入し、
v=(ve−vo)(1−exp(−t/τ))+vo ・・・(1)
2つの方程式(t=0の場合の式(1)、t=Δtの場合の式(1))を解くと、時定数τが他の未知数Voと共に求まる。ここでは、I.I.4の4回のゲート駆動のうち、最初の2回の駆動により速度値を計測する時刻をt=0としている。また、本第1実施形態においては、Δt=100μsで、気流の流速ve=1.88m/sである。時定数τより算出された液滴径は約φ20μmになり、従来法によるインクタンクの液滴の減り量と吐出回数から求めた平均液滴体積とほぼ等しい値になった。
【0058】
尚、本第1実施形態では、定速気流の雰囲気環境を、平行に配置した2枚の平板ガラス板2を移動させることで作り出したが、例えば風洞装置を使用するなど別方法も考えられる。更に、液滴の位置や速度を計測するにも、本第1実施形態の方法のみならす、ハイスピードカメラの使用等、多種多様な手段を採用することができる。
【0059】
本第1実施形態では、更に、本発明の液滴量測定方法及び液滴量測定装置を利用することで、高精度なヘッドをより効率良く生産する方法を説明する。
【0060】
工場で生産されたヘッドは、上記説明してきた液滴量測定方法及び液滴量測定装置により全ノズルの液滴量測定がなされる。そのデータはLAN等によりリアルタイムで工場の各製造工程部に送信される。
【0061】
規格外の液滴量が計測された場合は、各工程内の検査結果と併せて解析され、不良原因の早期探索がなされる。例えば、あるヘッドの一部のノズルで液滴吐出量が規格以上に大きいという計測結果が得られると、そのヘッドノズルの径や、そのヘッドノズルに対応する熱変換素子の抵抗値が調べられる。そこで、例えば、液滴吐出量が規格以上に大きいノズルに対応するノズル径が、設計値よりも大きかった場合は、ノズル形成工程において製造パラメータの再チェックがなされ、設計値のノズル径が製造できるようにノズル形成工程の調整がなされる。こうした最終製品から各製造工程へ計測データのフィードバックをかけることで、高精度なヘッドがより効率良く生産される。また、製品立ち上げ時の歩留まり向上を早めることができる。
【0062】
(3)ヘッドの位置合わせ方法
(3―1)構成の説明
図6はヘッド位置合わせをする際の液滴量測定装置の構成を示す側面図である。液滴量測定装置は、平行に配置した2枚の平面ガラス板2、ステージ3、拡大レンズ付きのヘッド位置調整時観察用カメラ11、5軸可変ステージ12、高精度zステージ15を備えている。
【0063】
(3−2)動作の説明
次に、ヘッドの位置合わせの方法について図6〜図7を参照して詳細に説明する。
【0064】
液滴の吐出方向と計測領域の気流の流れ方向とを直交させる。測定時の構成は、上述のものと同じである。測定前に、液滴の吐出方向と気流の流れ方向とが直交するようにヘッド1の位置合わせを行う。その手順を次に説明する。
【0065】
平面ガラス板2をヘッド吐出部に面するように移動し静止させる。拡大レンズ付きのヘッド位置調整時観察用カメラ11を、ヘッド1から吐出された液滴が2枚の平面ガラス板2の間に入るのが観察できるように、平面ガラス板2の上部に設置する。ヘッド1は、5軸可変ステージ12の上面に設置されており、ヘッド1から吐出された液滴が平面ガラス板2間の中央に水平に飛翔するように、Z方向、煽り角の調整がなされる。
【0066】
カメラ11で撮像された液滴の軌道が、図7に示すように平面ガラス板2の端面と直交するように、ヘッド1を固定してある5軸可変ステージ12のθ方向を調節する。尚、ヘッドの位置合わせで用いるレンズの倍率は5倍で、視写界深度が0.1mmもないため、液滴軌道と平面ガラス板2の端面とは同時に観察することはできない。そこで、観察系を固定している高精度zステージ15を上下させ、まず、平面ガラス板2の端面を観察し、その撮像画像をメモリに記憶させる。そして、その撮像画像から平面ガラス板2の端面線を抽出し、その抽出された線を画像画面上に重ね合わせた状態で、飛翔する液滴軌道面に焦点をあわせる。この手法により、平面ガラス板2の端面と共に液滴飛翔軌道も画面に表示させることができる。
【0067】
調整終了後、調整に用いた観察系は待避され、代わりに本測定用の観察系が設置される。その後は、上述の方法で液適量測定が行われ、時定数τ、ついで液滴径が算出される。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0069】
(1)構成の説明
本発明の第2実施形態の液滴量測定装置の構成(図1)は第1実施形態と同様である。詳細は上述したので省略する。
【0070】
(2)動作の説明
次に、本発明の第2実施形態の動作について図8を参照して詳細に説明する。
【0071】
本第2実施形態では、雰囲気気体は空気のかわりにアルゴンガスを充填して用いた。I.I.4のゲートタイミングを図8に示すように、CCDカメラ5の1露光時間内に20kHzで3回駆動する。尚、I.I.4のゲートを開いたときには必ず液滴画像が撮像されるように、この時間差は、測定エリアと液滴のスピードに応じて適宜調整されねばならない。
【0072】
本第2実施形態では、同一液滴がI.I.4のゲートの開く回数と同じ3点表示される。液滴重心位置を画像データから画像処理により算出する。時刻t=0、Δt、2Δtでのそれぞれの位置座標値を式(2)に代入し、
y=(ve−vo)(t−τ+τ・exp(−t/τ))+vot+yo・・・(2)
3つの方程式(t=0の場合の式(2)、t=Δtの場合の式(2)、t=2Δtの場合の式(2))を解くと、時定数τが他の未知数と共に求まる。
【0073】
尚、本第2実施形態においては、Δt=50μsで、気流の流速ve=1.88m/sである。更に、時定数τより液滴半径aが算出される。また、本第2実施形態では、第1実施形態と異なり雰囲気気体としてアルゴンを用いているので、気体の粘性定数を22.3×10-6Pa・sと置いて液滴半径を算出した。
【0074】
(3)ヘッドの位置合わせ方法
第1実施形態と同様にヘッドの位置合わせを行う。
【0075】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
(1)構成の説明
図9は本発明の第3実施形態の液体吐出記録ヘッド1の液滴量測定装置の一例を示す概略構成図である。液滴量測定装置は、平行に配置された2枚の平面ガラス板2、平面ガラス板2を搭載したステージ3、イメージ・インテンシファイア4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6、照明装置7、フォトセンサ系拡大レンズ8、フォトセンサ9、側視鏡筒部10を備えている。
【0077】
本第3実施形態は、第1実施形態の場合と異なり、観察光軸上に2枚の平面ガラス板2に対して、カメラ観察光学系(イメージ・インテンシファイア4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6)とは反対側に、20倍の観察系拡大レンズ8と2分割型のフォトセンサ9を設置している。本第3実施形態で使用したフォトセンサ9は、受光面サイズが10×10mm、素子間ギャップが0.1mmのものである。フォトセンサ系拡大レンズ8とフォトセンサ9は、側視鏡筒部10の両端に設置される。側視鏡筒部10からの観察により、その系の光軸と対向する側に位置するカメラ観察光学系の光軸とが一致するように系の位置調整を行った。また、フォトセンサ9の位置は、ヘッド1からの飛翔液滴が2分割型のフォトセンサ9のギャップに直交して飛翔するように位置合わせを行った。
【0078】
(2)動作の説明
次に、本発明の第3実施形態の動作について図9〜図10を参照して詳細に説明する。
【0079】
図9に示す系により液滴の飛翔速度を計測する方法を、図10を参照しながら説明する。照明装置7のストロボ照明光が点灯し、フォトセンサ9のセンサ部全面に光が照射されると、フォトセンサ9からの出力が一定量得られる。その状態で液滴像がフォトセンサ9を横切ると、液滴が陰になりフォトセンサ9の受光量が落ち出力も落ちる。2分割型のフォトセンサ9の2素子のうち、初めに液滴が横切る素子を素子A、後に横切る素子を素子Bとすると、素子Aの出力が上昇を始める時点と、素子Bの出力が低下を始める時点の時間間隔は、液滴が素子間のギャップを通過する時間に対応する。そこで、ギャップ通過時間を測定すれば、既知であるギャップ間距離とからギャップ通過時の液滴速度を算出することができる。
【0080】
カメラ観察光学系(イメージ・インテンシファイア4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6)側では、第2実施形態の場合と同様に液滴画像を得る。但し、本第3実施形態では、3時刻分の液滴位置を計測する必要はなく、2時刻分の位置データが得られればいいので、第2実施形態とは異なりI.I.4のゲートを2回駆動すればいい。また、2回のうち最初のゲート駆動時刻をトリガにし、前述の速度測定システムの出力データ保存を開始することで、液滴がフォトセンサ9のギャップを通過する時刻をカメラ観察系側と同時刻系列で計測する。
【0081】
CCDカメラ5で撮像された画像から、第2実施形態と同様に、液滴重心位置を画像処理により算出する。時刻t=0、Δtでのそれぞれの位置座標値を、第2実施形態で示した式(2)に代入し、2つの式が得られる。また、フォトセンサ9側から得られたt=Δt′時点での液滴速度を、第1実施形態で示した式(1)に代入し、1つの式が得られる。尚、t=Δt′は液滴像がフォトセンサ9のギャップを通過する中心時刻である。これら3式を解いて、時定数τを他の未知数と共に求める。更に、第1実施形態、第2実施形態と同様に、時定数τから液滴半径或いは液滴質量を算出する。
【0082】
(3)ヘッドの位置合わせ方法
第1実施形態と同様にヘッドの位置合わせを行う。
【0083】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0084】
(1)構成の説明
本発明の第4実施形態の液滴量測定装置の構成(図9)は、ステージ3に格子ピッチ20μmのリニアエンコーダを取付けた以外は第3実施形態と同様である。詳細は上述したので省略する。
【0085】
(2)動作の説明
次に、本発明の第4実施形態の動作について図9、図11を参照して詳細に説明する。
【0086】
本第4実施形態では、雰囲気の気流が等速状態ではなく、一方向の速度分布が既知である気流である場合を説明する。特に、本第4実施形態では、雰囲気気流の速度が等加速度に変化する場合を説明する。
【0087】
雰囲気気流の速度veが一定ではなく、ve=C1t+C2と表されるとすると、液滴のy方向の速度vと位置yは、上記式(1)、(2)に代わって以下の式で表される。
【0088】
本第4実施形態では、第1〜第3実施形態の平面ガラス板2を搭載した一軸のステージ3に、格子ピッチ20μmのリニアエンコーダを取付け、測定時に同時に平面ガラス板2を搭載したステージ3の位置の測定ができるようになっている。また、第1〜第3実施形態では、測定域をステージストロークのほぼ中央に設定したが、本第4実施形態では、測定域をステージストロークの端から0.8m付近に設定する。平面ガラス板2を搭載したステージ3は、ストローク2.5m、加減速度2m/s2で、最高速度が2m/sの性能で、図11に示すような加減速をする。ストロークの端から0.8m付近では、まだ等速度にはなっておらず等加速度状態である。ステージ基準が計測領域に達する時刻に、液滴の速度や位置の計測を行うように制御器よりタイミング制御がなされる。
【0089】
また、ステージ3の各位置における2枚の平面ガラス板2の中間域の気流速度を、熱線流速計や粒子像速度法(PIV法)により事前に計測しておく。ステージ3が等加速度で移動する時は、平面ガラス板2の中央域の気流速度もほぼ等加速的に変化することがわかっている。また熱線流速計により観察領域の乱流強度の評価もおこなわれ、観察領域に関しては十分層流になっていることが確かめられている。
【0090】
第1実施形態と同様に、2時刻t=0、Δtでの液滴速度を求める場合は、t=0からt=Δtまでのステージ位置を計測し、その計測位置座標から、計測域の気流が等加速度で変化していると仮定して、最小二乗法により雰囲気気流Veの係数C1、C2を算出する。定数C1、C2、時刻t=0、Δtでのそれぞれの気流流れ方向の速度値を式(3)に代入し、2つの方程式を解き、時定数τを他の未知数Voと共に求める。時定数τより液滴量が算出される。
【0091】
また、第2実施形態と同様に、3時刻t=0、Δt、2Δtでの液滴位置を求める場合は、t=0からt=2Δtまでのステージ位置を計測し、その計測位置座標から、計測域の気流が等加速度で変化していると仮定して、最小二乗法により雰囲気気流Veの係数C1、C2を算出する。定数C1、C2、時刻t=0、Δt、2Δtでのそれぞれの液滴位置座標値を式(4)に代入し、3つの方程式を解き、時定数τを他の未知数Vo、yoと共に求める。時定数τより液滴量が算出される。
【0092】
また、第3実施形態のように液滴位置と液滴の速度を計測し時定数τを求める場合は、2時刻t=0、Δtでの液滴位置を求めると共に、液滴像がフォトセンサ9のギャップを通過する時刻t=Δt′での液滴速度を求める。更に、t=0からt=Δtまでのステージ位置を計測し、その計測位置座標から、計測域の気流が等加速度で変化していると仮定して、最小二乗法により雰囲気気流Veの係数C1、C2を算出する。定数C1、C2、時刻t=0、Δtでのそれぞれの液滴位置座標を式(3)に代入し、t=Δt′での液滴速度を式(4)に代入し、3つの方程式を解き、時定数τを他の未知数Vo、yoと共に求める。時定数τより液滴量が算出される。
【0093】
(3)ヘッドの位置合わせ方法
第1実施形態と同様にヘッドの位置合わせを行う。
【0094】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0095】
(1)構成の説明
図12は本発明の第5実施形態の液滴量測定装置の構成を示す概略図である。液滴量測定装置は、平行に配置した2枚の円形状の平面ガラス板2、ステージ、I.I.4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6を備えている。2枚の円形状の平面ガラス板2の中心軸は同一で、水平に設置されている。この中心軸がモーターにより回転することで、同回転速度で2枚の平面ガラス板2は回転する。円形状の平面ガラス板2の外径は5インチ、平面ガラス板2の間隔は5mmである。観察系(I.I.4、CCDカメラ5、観察系拡大レンズ6)は、その視野中心が回転軸から30mmの地点に、観察系光軸が鉛直になるように設置される。またヘッド1から吐出された液滴が観察視野を通過するように、観察系の回転方向位置が決定される。
【0096】
(2)動作の説明
次に、本発明の第5実施形態の動作について図12を参照して詳細に説明する。
【0097】
本第5実施形態では、2枚の平面ガラス板2を同速度で回転させ、平面ガラス板2の間にヘッド1より水平に液滴を吐出させる。回転速度は600rpmである。
【0098】
気流の回転角速度をωとすると、液滴に動きを示す方程式は、
τx''=ωy−x' ・・・(1)
τy''=−ωx−y' ・・・(2)
である。τは時定数である。
【0099】
上記方程式(1)(2)を解くと
x=f(A1〜A4、Xo、τ、t) ・・・(3)
y=f(A1〜A4、Yo、τ、t) ・・・(4)
未知数が7つなので、t=0、Δt、2Δt、3Δtでの液滴位置(x、y)を計測し、時定数τを算出する。
【0100】
液滴位置の計測法は第2実施例と同様におこなうが、本実施例では4時刻での位置を計測するため、I.I.4のゲートをCCDカメラの1露光内に4回駆動する。
【0101】
また、平面ガラス板2を定常的に回転させている時の、2枚の平面ガラス板2の中間域の気流速度を、熱線流速計や粒子像速度法(PIV法)により事前に計測しておく。気流速度Vは回転軸からの距離をRとするとV=Rωで表されると仮定し、ωを平均的に算出する。平面ガラス板2の回転速度が600rpmのときの気流の角速度は61.1 /sであった。
【0102】
また熱線流速計により観察領域の乱流強度の評価もおこなわれ、観察領域に関しては十分層流になっていることが確かめられた。
【0103】
本実施例は、測定装置をコンパクトにすることができ、また非常に安定した気流域を作製できる非常に有効な手法である。また一軸ステージの場合はステージ移動と計測とを同期をとって制御する必要があるが、本測定装置は定常的に等速で回転させられるのでその必要もない。
【0104】
(3)ヘッドの位置合わせ方法
第1実施形態と同様にヘッドの位置合わせを行う。但し、平面ガラス板2の端面線の代わりに、円形状の平面ガラス2の円形端面に対する接線を用いる。
【0105】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0106】
(1)構成の説明
図13は本発明の第6実施形態の液滴量測定機能を備えた液体吐出記録装置の構成を示す概略斜視図である。液体吐出記録装置は、液滴量測定機能を備えたヘッド計測領域部16、材料搬入口17、搬送機構18、パソコン19、シャッタ20を備えている。
【0107】
(2)動作の説明
次に、本発明の第6実施形態の動作について図13、図14を参照して詳細に説明する。
【0108】
本第6実施形態では、液滴量測定機能を備えた液体吐出記録装置について説明する。
【0109】
液体吐出記録装置の記録媒体には、紙やOHPシートなどの民生用品、例えばカラーフィルタ基板などの産業用品など多数種の媒体があげられるが、本第6実施形態ではカラーフィルタ向けガラス基板を対象とする。液体吐出記録装置には、印字領域部15とヘッド計測領域部16が別々に存在する。記録媒体であるガラス基板は、材料搬入口17より出し入れされる。
【0110】
液体吐出記録装置の電源投入直後や一定時間ヘッド駆動がなされた後、或いはユーザがヘッド計測の指示を液体吐出記録装置に入力した場合、ヘッドが搬送機構18によりヘッド計測領域部16に運ばれる。尚、すべての制御はパソコン19と接続している制御部(図示略)で行われる。ヘッドが移動する際には、シャッタ20が開閉される。
【0111】
図14のフローチャートにおいて、液滴量の計測処理が開始され(ステップS1)、ヘッドをヘッド計測領域部16の液滴量測定位置に移動した後(ステップS2)、ヘッドの駆動対象となるノズルを選択し(ステップS3)、その選択されたノズルから吐出される液滴量を計測する(ステップS4)。そして、液滴量が規格値内か規格値外を判定する(ステップS5)。液滴量が規格値外の場合は、駆動パラメータの調節を行った後(ステップS6)、再度、液滴量を計測する(ステップS4)。この場合、駆動パラメータの調整とは、例えば、計測された液滴量が規格値より小さければ駆動電圧をより大きくし、逆に計測された液滴量が規格値より大きければ駆動電圧を大きくする、というものである。駆動パラメータの調整と液滴量計測は、液滴量が規格値内になるまで繰り返し行われる。
【0112】
こうして決定された駆動パラメータは、制御器内のメモリに書き込まれる(ステップS7)。この動作をすべてのノズルに対して行った後(ステップS8)、ヘッドを印字位置に移動させる(ステップS9)。ヘッドによる印字を行う時には、上記方法で決定された駆動パラメータによりヘッド駆動がなされる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下のような効果が得られる。
【0114】
素性が既知の雰囲気気流に流される液滴の速度や位置を計測し、液滴量を算出することで、液滴1滴1滴の液滴量測定が可能となる。
【0115】
また、液滴が移動することによって生じる気体の乱れが、雰囲気の強制気流により気流の下流方向に拡散されるので、次に続く液滴に影響を与えることはない。従って、液体吐出記録ヘッドの液滴吐出周波数が高周波数の液滴吐出時でも、液体吐出記録ヘッドの液滴吐出周波数が低周波数の液滴吐出時と同様に液滴量測定を行うことができる。
【0116】
そして、本発明の液滴量測定方法により得られるデータをヘッドの開発過程で利用することで、より高品位な液体吐出記録ヘッドの開発を迅速に行うことが可能となる。
【0117】
また、本発明の液滴量測定方法により得られたデータから、吐出特性を補正するよう駆動パラメータを調整し、吐出を行うことで、より高品位な液体吐出記録装置(インクジェットプリンタ)を提供することができる。それにより、従来の民生向けのインクジェットプリンタとしての用途だけではなく、より高精度、高信頼性を必要とするカラーフィルタ製造など産業用途向けとしての製造装置を提供することができる。
【0118】
更に、製造した液体吐出記録ヘッドを本発明の液滴量測定方法で測定し、そのデータを製造装置にフィードバックすることで、液体吐出記録ヘッドの生産時における良品率を効率良く上げることができ、製造コストを低減することもできる。
【0119】
更に、本発明の液滴量測定方法を使えば、液体吐出記録ヘッドの吐出液滴に限らず、微小液体、微小固体の大きさを計測することが可能である。例えば球状粉体や噴霧滴の量測定が可能と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量を計測するための液滴量測定装置の構成例を示す概略構成図である。
【図2】液滴の飛翔と雰囲気気体の乱れを示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態のヘッド駆動、照明点灯、カメラ露光、I.I.ゲートのON/OFFタイミングを示すタイミング図である。
【図4】本発明の第1〜第4実施形態の液滴量測定装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態の撮像した液滴画像の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態のヘッド設置調整時の液滴量測定装置のカメラ観察光学系の概略構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態の液滴軌道が平面ガラス板の端面と直交している状態の撮像例を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態のヘッド駆動、照明点灯、カメラ露光、I.I.ゲートのON/OFFタイミングを示すタイミング図である。
【図9】本発明の第3実施形態の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量を計測するための液滴量測定装置の構成例を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第3実施形態の液滴速度の測定原理を説明するための、フォトセンサと液滴の位置関係とフォトセンサの出力例を示す説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態の平面ガラス板を搭載したステージの移動速度制御の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の第5実施形態の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量を計測するための液滴量測定装置の構成例を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第6実施形態の液滴量計測機能を備えた液体吐出記録装置の構成例を示す斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態の液滴量測定時の動作手順を示すフローチャートである。
【図15】従来例の液滴の着弾状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ヘッド
2 平面ガラス板
3 ステージ
4 イメージ・インテンシファイア
5 CCDカメラ
100 パソコン
Claims (17)
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置を複数回計測し、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置と前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置を複数回計測し、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出し、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置と前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測し、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出することを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 前記液滴の吐出方向を前記気流の流れ方向と直交させることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 液滴飛翔エリアの空気の相対湿度が50〜90%であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 前記気流の気体成分が不活性気体であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定方法。
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測する計測手段と、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置を複数回計測する計測手段と、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 粘性係数が既知の気体が既知の一定等速度で流れる定常気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置と前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測する計測手段と、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度値を用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測する計測手段と、その計測された速度値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記速度計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置を複数回計測する計測手段と、その計測された位置座標値と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記位置計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 粘性係数が既知の気体が一方向に既知の速度分布で流れる気流域に、前記気流の流れ方向と非平行に密度が既知の液滴を吐出する吐出手段と、前記液滴の移動方向が前記気流の流れ方向と一致する前に、前記液滴の位置と前記気流の流れ方向の移動速度成分を複数回計測する計測手段と、その計測された位置座標値と速度と計測時の時間間隔及び前記気流の速度分布データを用いて、前記計測した液滴の液滴量を算出する算出手段とを具備したことを特徴とする液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 前記液滴の吐出方向を前記気流の流れ方向と直交させることを特徴とする請求項10〜15の何れかに記載の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
- 液滴飛翔エリアの空気の相対湿度が50〜90%であることを特徴とする請求項10〜15の何れかに記載の液体吐出記録ヘッドの吐出液滴量測定装置。
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