JP3773281B2 - 割断面層を有する油中水型乳化油脂食品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水の薄膜層からなる割断面層を内部に形成している油中水型乳化油脂食品とその製造方法に関するものである。この油中水型乳化油脂食品は、冷蔵庫から取り出した直後の低温状態にある場合でも容易に分割できるため、家庭用の食卓油脂や調理用油脂としてあるいは業務用の原料油脂として利用性に優れたものである。
【0002】
【従来の技術】
油中水型乳化油脂食品の代表的なものとして、バター、マーガリン及びスプレッドがある。その使用態様も各種あって、例えば家庭では料理の材料としての調理用油脂、あるいはパン等に塗布する食卓用油脂として使用されている。また業務用としては製菓・製パン時に生地(ドウ)に練り込む原料油脂として使用されている。
バターは、クリームを7 〜13℃の温度で8 時間程度エージングした後チャーニングにより大豆程度の大きさのバター粒を形成させ、次いでワーキングにより混練し、均一な組織にするという方法で製造されている。
またマーガリンやスプレッドは、パーム油、サフラワー油、大豆油、ナタネ油、ヤシ油、ラード、魚油等の動植物油脂をそのままあるいは水素添加して硬化したものを用いて乳化剤と共に油相を調製し、この油相と水に乳化剤や安定剤あるいは脱脂乳や香料等の風味成分からなる水相とを混合乳化した後ピンマシンやボテーター等により急冷・混練する方法により製造される。そしてこれらの油中水型乳化油脂食品は、配合する油脂の固体脂含有指数(SFI)によりハード型とソフト型に分類され、また含有する水分量も15重量%前後から50重量%と幅広いものである。
【0003】
上記のようにして製造された油中水型乳化油脂食品は、使用目的に応じて種々の形態に包装される。例えば、家庭で使用されるハード型バターやマーガリンでは、112.5 g 、225 g あるいは450 g 程度の重量に包装され、またソフト型のものではカップ型容器に250 g あるいは450g程度に充填される。一方製菓・製パン等の原料として使用されるいわゆる業務用油中水型乳化油脂食品では、20Kg、30Kg単位でフィルムを介して段ボール箱等の容器に充填される。油中水型乳化油脂食品は、保存中あるいは流通段階では、冷蔵温度(5 ℃前後)に冷却するのが一般的である。製造直後の油中水型乳化油脂食品は柔らかく流動状を呈しているが、冷却されると、ハード型であれソフト型であれ油中水型乳化油脂食品を構成する油脂のグリセリドが固化してその硬度は飛躍的に高くなる。このため冷蔵庫から取り出した直後はブロック状を呈し、これを分割したり、一部を切断して使用するのは困難を伴うものである。特にハード型の場合には、多くの家庭ではあらかじめ冷蔵庫から取り出して常温下に放置し、柔らかくしてから分割使用している。一方業務用の油中水型乳化油脂食品においてもある程度揚温後切断装置を用いて細断して使用しているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
油中水型乳化油脂食品を使用前に冷蔵庫から取り出し、常温下に放置して一旦柔らかくしてから分割使用した場合には、未使用の部分を再度冷蔵庫に入れても表面が溶融しているため品質や風味の劣化が避けられず、また面倒であるといった問題もある。また業務用の油中水型乳化油脂食品においては、揚温後細断する場合に、揚温に相当の時間が要求され、切断にも多くの時間と労力を要するといった問題があって、生産性の低下は避けられない。
従って本発明は、使用直前に冷蔵庫から取り出しても容易に分割できる油中水型乳化油脂食品を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために油中水型乳化油脂食品に割断面層を設けることにより容易に分割できることを見出し本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、油中水型乳化油脂食品の内部に水の薄膜層が成形され、該水の薄膜層から容易に分割することができる割断面層を有する油中水型乳化油脂食品を提供するものである。また割断面層を介して隣り合う油中水型乳化油脂間に空洞を形成した油中水型乳化油脂食品であり、割断面層を介して隣り合う油中水型乳化油脂間の外面に溝孔を形成した油中水型乳化油脂食品である。更にこの割断面層を有する油中水型乳化油脂食品を製造するに当たり、流動状の油中水型乳化油脂食品を、剪断速度4.0 s-1 以上でノズルから押し出し、含有する水をさせて内部に水の膜層を形成させるものであり、そしてノズルから押し出された割断面層を有する油中水型乳化油脂食品を凍結処理することからなる製造方法でもある。
しかして以上のような製造方法において、ノズルが内部に整流板を備えた角形ノズルを用いるものであり、円形ノズルが多重管ノズル又は内部に整流板を備えたノズルであり、その整流板が断面形状において中間か又は上下において凸状を形成させて段差のある板状形態のものを用いるものである。
本発明でいう割断面層とは、油中水型乳化油脂食品の内部に縦横または任意の方向に水の薄膜層を形成していて、その水の薄膜層部分から容易に分割することができる層をいう。
【0006】
バターやマーガリンあるいはスプレッド等の油中水型乳化油脂食品は、連続相の油相と分散相の水相からなり、その油相中に水相である水が平均径1〜15μm 程度の大きさの粒子状でほぼ均一に分散している。本発明では、この油相中に分散している水を遊離して集中させ、内部に水の薄膜層を形成し、この水の薄膜層を割断面層とするものである。その製造方法は、流動状にある油中水型乳化油脂食品を、ノズルに供給して油相中から水の一部を絞り出す状態で遊離させると共に集中させて水の薄膜層を形成するものである。
流動状の油中水型乳化油脂食品とは、例えばバターであればクリームを原料としてエージング後チャーニング及びワーキングによって製造された直後の冷却されていないバターか、もしくは一旦冷却保存したブロック状のバターであっても、バターホモゲナイザーで処理して流動性を付与したものである。このようにして製造されたバターはほぼ15〜17重量%の水分を含有している。またマーガリンであれば、油相と水相を乳化してピンマシンやボテーター等により急冷・混練して製造した直後の流動状のものであって、配合される油脂の固体脂含有指数(SFI)によりハード型とソフト型に分類されるが、水分は18〜50重量%含有しているものである。
【0007】
本発明で使用するノズルの形状は、製品の形態によって任意に設定でき、剪断力を与える構造であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば図1、図3に示す角形または図6に示す円形のものでもよい。角形ノズルの場合は、胴体が角形からなる長方形あるいは正方形等の多角形で、出口部が胴体の断面積よりやや小さい形状をしており、この胴体部に図1、図3に示す板状、あるいは図8に示す断面形状が中間に凸状を形成させて段差のある板状形態、図10に示す断面形状が上下に凸状を形成させて段差のある板状形態、又は図示しない角柱状、円柱状、半円柱状、三角柱状、菱形柱状等からなる整流板(4)を流れの方向に沿って単数枚、又は複数枚備えたものである。図8に示す断面形状が段差のある板状形態のものは、板体(4a)の両側面中央に幅狭の板体(4b)を添設して段差を形成している。図10に示す断面形状が段差のある板状形態のものは、板体(4a)の上下に幅狭の板体(4b)を添設して上下に厚く中間に段差を形成している。図10の整流板は上下を厚くした場合であるが、その他半円形に厚くし、半円形の溝孔にすることも可能である。また円形ノズルは、パイプそのものを用いることもできるが、図6に示す同心多重管(12)であってもよいし、その内部に上記した整流板を設けてもよく、図7に示す如くスタテックミキサーのような螺旋状の整流板(13)を備えたものでもよい。そしてノズル内に整流板を設けた場合には、胴体の断面積より出口の断面積をやや小さくする。しかし包装形態、あるいは剪断速度によっては出口部の断面積は胴体の断面積と同じであってもよい。
図8及び図10に示す如く断面形状が凸状を形成させて段差のある板状形態のものは整流板の前後の厚みが同じであって、中間部が段差を形成するように構成されているので、この段差によって空間又は溝孔が形成されるのである。
なお、幅狭の板体(4a)は図8、図10に示す位置及び形状の他、製品の形態によって任意に設定でき、段差を設ける構造であれば特に限定されない。
【0008】
次に本発明の割断面層を有する油中水型乳化油脂食品の具体的製造方法について説明する。
流動状にある油中水型乳化油脂食品を、バターポンプやプランジャーポンプ等の押し出し装置によって、上記したノズルに供給し、剪断速度を4.0s-1以上で押し出す。4.0s-1未満では油相中に含まれている水分がしぼり出され、壁面に集中せず水の薄膜層が形成されない。その実験結果を表1に示す。
剪断速度の上限は、特に限定されるものではないが、脂肪の結晶構造が変化したり、ノズルから押し出されて大気中に放出した時に膨化現象などが起き、水の薄膜層が乱されて破壊されない剪断速度を採用することが重要であって、大体 1500s-1程度である。
上記のように整流板を複数個備えているノズルを用いた場合には、この押し出しにより、連続相である油相を整流板の数に応じて分割し、油相中に分散している水の一部が絞り出され、油相と摩擦が生じているノズルの壁面あるいはそれぞれの整流板の壁面に集中し、水の薄膜層を形成する。特に整流板の断面形状が段差のある板状形態である時は、割断面層を介して隣り合う油脂間に空洞又は外面に溝孔を形成するので、使用時にその空洞又は溝孔にナイフ等を差し込むことにより容易に分割できる。
そしてノズルの出口の断面積は胴体の断面積と同じであってもよく、またやや小さくなっている場合には、整流板で分割されその断面に水の薄膜層を形成した油中水型乳化油脂食品は、割断面がノズルの出口部で見掛け上固着される。しかし、ノズル出口の断面積と胴体の断面積が同じであれば固着されないので包装形態によって強制的に成形固着してもよい。
また整流板を備えていないパイプをノズルとして用いる場合あるいは多重管をノズルとして用いる場合にも、上記の剪断速度4.0s-1以上を維持しなければならない。この剪断速度を維持することにより油中水型乳化油脂食品は、パイプ壁面との摩擦によって同心円状の剪断速度分布が生じ、油中水型乳化油脂食品の内部に複数の水の薄膜層が形成される。即ち円形に排出された油中水型乳化油脂食品は、バームクーヘン状に油相と水の薄膜層が交互に形成される。
【0009】
上記のようにして製造した油中水型乳化油脂食品を、ハード型であれば、成形後パーチで包んでカルトン詰めされ、またソフト型であればカップ型容器に充填する。特にソフト型油中水型乳化油脂食品をカップ型容器に充填した場合には、水の薄膜層はランダムな状態になり、分割して使用するのには効果的である。そして5℃前後まで冷却するが、この冷却により薄膜層を形成する水が一箇所に集中したり外部に浸みだすことなく薄膜層を維持する。更に、油中水型乳化油脂食品を−10℃以下で凍結処理すると、より水の薄膜層は安定化し、解凍後も安定的に保持させることができる。これは薄膜層を形成している水が固化して氷となり、体積が膨張する。一方油脂は結晶化して体積が収縮するためと考えられる。
尚、凍結は、使用直前まで維持されていても容易に分割できるので、障害となるものではない。
【0010】
また、上記の剪断速度において、4.0s-1未満では油相中に分散している水が絞り出されて集中しないため薄膜層を形成しなくなり、一方 1500s-1を超えると脂肪の結晶構造の変化やノズルから放出された際に膨化現象が発生することが考えられる。
尚、本発明における剪断速度は、次の式により求めることができる。
▲1▼角形ノズルが整流板で区画され、断面形状が四角形の場合には、D=6×Q/(w×h2)である。
上記式中、D:剪断速度(s-1) 、Q:油中水型乳化油脂食品の流量(cm3/sec)W:長辺cm) 、h:短辺(cm)をそれぞれ表し、整流板を備えていても形状に関係なく、油中水型乳化油脂食品が通過する区画された最狭部で求めることができる。
▲2▼円形パイプの場合には、D=4×Q/(πr3)である。
上記式中、D:剪断速度(s-1) 、Q:油中水型乳化油脂食品の流量(cm3/sec)r:パイの半径(cm) をそれぞれ表し、多重管の場合は個々のパイプから、又同心多重管の場合は最内側のパイプより求めることができる。また、整流板で区画された断面の形状が五角形以上の多角形の場合には、最狭部の相当直径を求め、円形パイプの場合の算出式から近似的に求めることができる。
【0011】
上記のようにして製造された油中水型乳化油脂食品は、ブロック状で冷蔵庫から取り出した直後の低温(5 ℃前後)状態にあっても、内部に形成されている水の薄膜層を割断面層としてこの部分から容易に分割できるものである。
従って、従来は、ブロック状のバターやマーガリンあるいはスプレッドを、一旦冷蔵庫から取り出して揚温後、使用形態に合わせて分割していたが、本発明の油中水型乳化油脂食品は、揚温が必要ないので、冷蔵庫から取り出した直後であっても容易に分割でき、品質低下の防止や生産性の向上を図ることができる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
実施例1
常法に従って製造し、流動状にある有塩バター(品温15℃)を図2に示すスクリューフィーダー(1)のホッパー(7)に投入しながらポンプ(2)でノズル(3)からバター(5)を押し出した。この時のバターの流量は150 Kg/h(44.8cm3/sec) であった。この置の先端部には処理用ノズル(3)を設置した。ノル(3)中には図1に示すように、バター(5)に剪断力が加えられるようにバターの流れの方向に沿って二列等間隔で設置した整流板(4)を備えている。ノズル側壁と整流板との間および整流板間の間隔は10mmとし、これらの区画の最狭部の断面は四角形で、長辺25mm、短辺10mmとした。ノズルを通過するバターは、3分割されるため1区画の流量は14.93cm3/secであった。この処理におるノル側と整流板間との間よび整流板間で生じる剪断速度Dは、次のように求められた。
D=6 ×14.93 /(2.5 ×12)≒35.8s -1であった。
このノズルから押し出されたバター(5)を長さ約100 mmの大きさに切断し、包装紙(6)で包装した。これを -20℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このバターを2 日間 5℃の冷蔵庫で保管し解凍した。このバターを製造した時のバターの流れ方向に対して直角に約20mmの厚さに切断し、目視観察したが、上記整流板(4)によって成形した割断面(2ヶ所)は明確に判別できない状態であった。しかし、このバター(5)を両手で曲げたところ2ヶ所の割断面からシャープにしかも容易に割ることができた。
また、このバターを5 ℃で1ケ月保存後、上記と同じテストを行ったが、同じく容易に割ることができた。
【0013】
実施例2
常法に従って製造し、-10 ℃に保存していた無塩バターを凍結したまま図4に示す粉砕機(8)で親指程度の大きさに粉砕しながら、図4に示す二軸エクストルーダー(10)に供給した。二軸エクストルーダー(10)で練圧しながら押し出した。この時のバター(5)の流量は300 Kg/h(90cm3/sec)であった。二エクストルーダー(10)の先端に処理用ノズル(11)を設置した。ノズル中には図3に示すバターに剪断力が加えられるようにバターの流れの方向に沿って4列等間隔で設置した整流板(4)を備えている。ノズル側壁と整流板との間および整流板間の間隔は6mmとし、これらの区画の最狭部の断面形状は四角形で長辺25mm、短辺6mmとした。ノズルを通過するバターは、5 分割されるため1区画の流量は18cm3/sec あった。この処理におけるノズル側壁と整流板の間および板で生じる剪断速度Dは、次のように求められた。
D=6 ×18/(2.5 ×0.62) ≒120s-1であった。
このノズルから押し出されたバター(5)を長さ約100 mmの大きさに切断し、包装紙(6)で包装して5 ℃で1日保存した。その後 -20℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このバターを2 日間 5℃の冷蔵庫で保管し解凍した。このバターを製造した時のバターの流れ方向に対して直角に約20mmの厚さに切断し、目視観察したが、上記整流板によって成形した割断面(4ヶ所)は明確に判別できない状態であった。しかし、このバターを両手で曲げたところ4ヶ所の割断面からシャープにしかも容易に割ることができた。
また、このバターを10℃で1週間保存後、上記と同じテストを行ったが、同じく容易に割ることができた。
【0014】
実施例3
常法に従って製造し、流動状にある有塩バター(品温14℃)を図5に示すスクリューフィーダー(1)のホッパー(7)に投入しながらポンプ(2)でバター(5)を押し出した。この時のバターの流量は1000Kg/h(300cm3/sec)であったポンプの出口先端に3イン(内径72mm) のパイプ(3a)を設置した。パイプを通過する時に生じる剪断速度Dは、次のように求められた。
D=4 ×300 /(π×3.63) ≒8.2s-1であった。
このパイプから押し出されたバター(5)を長さ約300 mmの大きさに切断し、包装紙(6)で包装した後、 -20℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このバターを2 日間 5℃の冷蔵庫で保管し解凍した。このバターを製造した時のバターの流れ方向に対して直角に約15mmの厚さに切断し、両手で曲げたところ同心円状でフレーク様のバターに容易に割ることができた。
また、このバターを5 ℃で1ケ月保存後、上記と同じテストを行ったが、同じく容易に割ることができた。
【0015】
実施例4
大豆硬化油を主原料として常法に従って製造し、5 ℃で保存したハードタイプのマーガリンを用いて実施例1で用いた装置と実施例2で用いたノズルを使用して押し出し処理した。
品温を8 ℃に調整したマーガリンを図2に示すスクリューフィーダー(1)のホッパー(7)に投入しながらポンプ(2)で押し出した。この時のマーガリンの流量は500 Kg/h(150cm3/sec) であった。ノズル側壁と整流板との間および流板間を通過するマーガリの1区画の流量は30cm3/sec であった。この処理におけるノズル側壁と整流板間との間よび整流板間で生じる剪断速度Dは、次のように求められた。
D=6 ×30/(2.5 ×0.62) ≒200s-1であった。
このノズルから押し出されたマーガリンを長さ約150 mmの大きさに切断し、包装紙(6)で包装した。これを -20℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このマーガリンを2日間5℃の冷蔵庫で保管し解凍した。このマーガリンを製造した時のマーガリンの流れ方向に対して直角に約15mmの厚さに切断し、目視観察したが、上記整流板によって成形した割断面(4ヶ所)は明確に判別できない状態であった。しかし、このマーガリンを両手で曲げたところ4ヶ所の割断面からシャープにしかも容易に割ることができた。
【0016】
実施例5
常法に従って製造し、流動状にある有塩バター(品温14℃)を図2に示すスクリューフィダー(1)のホッパー(7)に投入しながらポンプ(2)でノズル(3)からバター(5)を押し出した。この時のバターの流量は360Kg/h(108cm3/sec) であった。この装の先端部には処理用ノズル(3)を設置した。ノズル(3)には図8に示すようなバター(5)に剪断力が加えられるようにバターの流れの方向に沿って9列等間隔で設置した断面形状が中間に凸状を形成する段差のある板状形態の整流板(4)を用いた。ノズルを通過するバターは10分割されるため、1区画の流量は10.8cm3/sec であった。
ノズル側壁と整流板との間の最広部および整流板間の最広部の間隔は12mmとし、ノズル側壁の内面の高さは25mmとした。これらの区画の断面は四角形ではないため、整流板の段差が無いと仮定し、断面が広い場合には長辺25mm、短辺12mmの四角形と見なした。この処理におけるノズル側壁と整流板間との間の最広部および整流板間の最広部で生じる剪断速度Dは、次のように近似的に求められた。
D=6 ×10.8/(2.5 ×1.22) ≒18s-1 であった。
このノズルから押し出されたバターは図9に示す如く、割断面層(15)を介して隣り合う油脂間に空洞(16)が形成されていた。これを長さ30mmに切断し、包装紙(14)で包装し、−10℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このバターを2日間5℃の冷蔵庫で保管し、解凍した。そして上部の空洞(16)にナイフを入れたところ、割断面層(15)から容易に分割することができた。
このように割断面層を介して隣り合う油脂間に空洞が形成されるのは整流板の中間に前後一貫して凸状を形成する段差があるためである。
【0017】
実施例6
常法に従って製造し、流動状にある有塩バター(品温14℃)を図2に示すスクリューフィダー(1)のホッパー(7)に投入しながら、ポンプ(2)でノズル(3)からバター(5)を押し出した。この時のバターの流量は360Kg/h(108cm3/sec) であった。この置の先端部には処理用ノズル(3)を設置した。ノズル(3)には図10に示すようなバター(5)に剪断力が加えられるようにバターの流れの方向に沿って4列等間隔で設置した断面形状が上下に凸状を形成する段差のある板状形態の整流板(4)を用いた。ノズルを通過するバターは、5分割されるため、1区画の流量は21.6cm3/sec であった。
ノズル側壁と整流板との間の最広部および整流板間の最広部の間隔は15mmとし、ノズル側壁の内面の高さは25mmとした。これらの区画の断面は四角形ではないため、整流板の段差が無いと仮定し、断面が広い場合には長辺25mm、短辺15mmの四角形と見なした。この処理におけるノズル側壁と整流板間との間の最広部および整流板間の最広部で生じる剪断速度Dは、次のように近似的に求められた。
D=6×21.6/(2.5 ×1.52) ≒23s-1 であった。
このノズルから押し出されたバターは図11に示す如く、割断面層(15)を介して隣り合う油脂間の両外面に溝孔(17)が形成されていた。これを長さ30mmに切断し、包装紙(14)で包装し、−15℃の冷凍庫で完全に凍結するまで保存した。このバターを2日間5℃の冷蔵庫で保管し、解凍した。そして一方の溝孔(17)を図12の如く上にしてナイフを入れたところ、割断面層(15)から容易に分割することができた。
このように割断面層を介して隣り合う油脂間の外面に溝孔が形成されるのは整流板の上下に前後一貫して凸状を形成する段差があるためである。また、溝孔がこのように両側に設けられているため、いずれの側を包装紙の上にしても溝孔が存在しナイフなどを入れやすくなっている。また、側面に溝孔があるようにした場合では、菜箸などで挟み込むことによって容易に分割できた。
【0018】
【発明の効果】
従来の油中水型乳化油脂食品は、冷蔵庫から取り出した直後は、硬度が高く、ブロック状を呈していたため、これを分割したり、一部を切断して使用するのは、困難を伴うものであった。このため、使用に際しあらかじめ冷蔵庫から取り出して常温下に放置し、柔らかくしてから使用していたが、利用性や作業性の低下あるいは品質の劣化という問題があった。
しかし、本発明の割断面層を有する油中水型乳化油脂食品は、冷蔵庫から取り出した直後の低温状態にある場合であっても、内部に形成している水の薄膜層から容易に分割できるものである。このため、利用性や作業性に優れているだけでなく、常温下に放置する必要が全くないため、品質の劣化をきたすということもない。
また、この割断面層を有する油中水型乳化油脂食品の製造方法においても、特定の剪断速度以上でノズルから押し出すだけで、内部に水の薄膜層からなる割断面層を容易に形成できるので、実用上その効果は大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】処理用ノズルの斜面図と整流板の斜面図
【図2】分割処理用装置の説明図
【図3】図1と異なる処理用ノズルの斜面図と整流板の斜面図
【図4】図2と異なる分割処理装置の説明図
【図5】図2と異なる分割処理装置の説明図
【図6】パイプを組み合わせた処理用パイプの斜面図
【図7】スタティックミキサーを設置した分割処理用装置の説明図
【図8】整流板の変形例図
【図9】同上の整流板を用いて形成された食品の説明図
【図10】図8とは異なる整流板の変形例図
【図11】同上の整流板を用いて形成された溝が両側面にあるように置いた場合の食品の説明図
【図12】同上の溝が上下にあるように置いた場合の食品の説明図
【符号の説明】
1 スクリューフィーダー
2 ポンプ
3 処理用ノズル
4 整流板
5 バター
6 包装紙
7 ホッパー
8 粉砕機
9 ホッパー
10 二軸エクストルーダー
11 処理用ノズル
12 処理用ノズル
13 スタティックミキサー
14 包装紙
15 割断面層
16 空洞
17 溝孔
Claims (10)
- 油中水型乳化油脂食品の内部に水の薄膜層が成形され、該水の薄膜層から容易に分割することができることを特徴とする割断面層を有する油中水型乳化油脂食品。
- 割断面層を介して隣り合う油中水型乳化油脂間に空洞を形成したことを特徴とする請求項1記載の割断面層を有する油中水型乳化油脂食品。
- 割断面層を介して隣り合う油中水型乳化油脂間の外面に溝孔を形成したことを特徴とする請求項1記載の割断面層を有する油中水型乳化油脂食品。
- 油中水型乳化油脂食品がバター又はマーガリンもしくはスプレッドである請求項1ないし3の何れかに記載の油中水型乳化油脂食品。
- 流動状の油中水型乳化油脂食品をノズルから押し出し、含有する水を遊離させて内部に水の薄膜層を形成させることを特徴とする割断面層を有する油中水型乳化油脂食品の製造方法。
- 流動状の油中水型乳化油脂食品を剪断速度4.0 s-1 以上でノズルから押し出す請求項5記載の油中水型乳化油脂食品の製造方法。
- ノズルから押し出された油中水型乳化油脂食品を凍結処理する請求項5又は6記載の油中水型乳化油脂食品の製造方法。
- ノズルが内部に整流板を備えた角形ノズルである請求項5ないし7の何れかに記載の油中水型乳化油脂食品の製造方法。
- 円形ノズルが多重管ノズル又は内部に整流板を備えたノズルである請求項5ないし7の何れかに記載の油中水型乳化油脂食品の製造方法。
- 整流板が断面形状において中間に段差のある板状形態である請求項5ないし7の何れかに記載の油中水型乳化油脂食品の製造方法。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05743395A JP3773281B2 (ja) | 1994-03-24 | 1995-03-16 | 割断面層を有する油中水型乳化油脂食品及びその製造方法 |
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