JP3773184B2 - 調湿壁構造およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、調湿壁構造およびその施工方法に関し、詳しくは、住宅の壁面などに利用され、施工環境の湿度変化に対応して、湿度が上昇し過ぎると湿気を吸収し、湿度が下降し過ぎると水分を放出する調湿機能を果たす壁構造と、このような調湿壁構造を施工する方法とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
住宅の室内壁面に、調湿タイルを貼り付け施工して、室内空間の調湿機能を果たす技術は、既に広く知られており、施工実績も数多くある。
調湿タイルを用いた壁面の施工としては、合板や石膏ボードからなる内装下地材の表面に、接着剤を塗工し、塗工された接着剤層の上に調湿タイルを並べて貼り付けていく。
隣接して貼り付ける調湿タイル同士は、隙間なく並べたり、少し隙間をあけて並べたりする。この隙間は、通常のタイル施工において目地と呼ばれる構造であり、タイルの不陸や形状誤差を目立たなくしたり、施工後の変形や移動を許容したりする機能がある。目地にはモルタルや接着剤を埋め込んで塞いでおくのが普通である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の調湿タイル施工では、調湿タイルが有する調湿機能を十分に発揮できていないという問題がある。
調湿タイルの調湿機能は、室内空間に露出していて空気と接触している面で果たされる。ところが、調湿タイルの施工状態では、調湿タイルのうち室内空間に露出しているのは、主に表面だけである。したがって、例えば、調湿タイルの表面が湿気を吸収して飽和してしまうと、それ以上の吸湿は困難になる。勿論、調湿タイルの表面で吸収された水分は徐々に内部のほうにも拡散していくが、それには時間がかかるので、急激な湿度変化には対応し難い。同様に、室内環境が乾燥したときに、調湿タイルが保持する水分を放出する際にも、表面だけからの水分放出では、迅速で十分なす水分補給が果たせない。
【0004】
前記した目地を設けた場合、調湿タイルの側面を露出させることもでき、側面でも調湿機能が発揮できるが、狭く行き止まりになった目地の奥までは、空気の流通が十分にいかないため、目地による調湿機能の向上は、十分ではない。
さらに、調湿タイルは、室内壁面の外観や意匠性に影響を与えることや、生産性、施工の取扱い易さを考慮して、比較的に薄く小さな板片状をなしているため、調湿タイル全体の吸湿量は、それほど多くはない。そのため、梅雨期などの高湿環境では、調湿タイルだけでの調湿機能では、室内空間を快適な湿度範囲に維持することが困難であった。
【0005】
本発明の課題は、上記したような従来における調湿タイル壁の問題点を解消して、調湿機能をより向上させることである。また、そのような調湿機能に優れた壁構造を容易に施工できるようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる調湿壁構造は、建築物の壁面を構成し、調湿機能を有する壁構造であって、調湿材を含有する調湿ボードと、前記調湿ボードの表面に塗工され、透湿性を有し、厚みの大きい厚膜部と厚みの小さい薄膜部とが交互に配置された櫛目状接着層と、調湿材を含有する板片状のタイルであって、裏面側に突出し面方向に間隔をあけて配置された複数の突起部を有し、互いの間に間隔をあけて前記調湿ボードの表面に並べて配置され、前記突起部が前記櫛目状接着層に当接して前記調湿ボードに接合された調湿タイルとを備える。
【0007】
〔建築物の壁面〕
一般住宅や集合住宅など各種建築物の壁面で、調湿機能を必要とする壁面の構造に適用できる。なお、壁面とは、通常の側壁面のほか、天井壁面や床壁面、柱壁面などをも含めた、建築物の表面構造を意味している。建築物の壁面としては、室内壁面のほか、屋外壁面にも適用できる。
〔調湿材〕
調湿ボートおよび調湿タイルに調湿機能を与える。
建築分野で通常に使用されている調湿材料が使用できる。具体的には、珪質頁岩、ゼオライト、セピオライト、シリカゲルなどが挙げられる。
【0008】
調湿材の形状は、天然の岩石などの場合は採掘された状態のままや粉砕した状態などである。合成された材料の場合は、粉粒体や繊維状、ペレット状などがある。
〔調湿ボード〕
調湿材を含有していて、少なくとも表面が調湿機能を有する。調湿タイルの支持構造としても機能する。
比較的に面積のあるボード状すなわち板状をなす。一般的には平坦な矩形板であるが、施工場所によっては、矩形以外の多角形板や曲線形板も用いられる。壁や柱の角部や隅部などでは、屈曲板や曲面板も使用される。
【0009】
調湿ボードの材料は、基本的には、通常の建築板材と同様の材料を使用し、そこに調湿機能を有する材料すなわち調湿材を含有しておく。基本材料として、石膏やセメント、漆喰、セラミック、木質材、繊維材などが挙げられる。これらの基本材料に調湿材を配合し、通常の建築ボードと同様の製造工程を経て、調湿ボードが製造できる。
〔櫛目状接着層〕
調湿ボードの表面に塗工される。透湿性を有している。厚みの大きい厚膜部と厚みの小さい薄膜部とが交互に配置される。
【0010】
櫛目状接着層を形成する接着剤としては、調湿タイルを調湿ボードに接合できれば、通常のタイル施工や建築施工に利用されている各種接着剤の中から、透湿性を有する材料が使用できる。具体的には、アクリル系接着剤や酢酸ビニル系接着剤などが使用できる。
櫛目状接着層の透湿性として、透湿度500g/m2・24Hr(0.2mm厚)以上のものが好ましい。透湿度の測定は常法による。特に、透湿度900−1500g/m2・24Hr(0.2mm厚)が好ましい。
接着剤は、調湿ボードの全面にわたって塗工しておき、その上に、一定間隔をあけて調湿タイルを並べて配置することで、櫛目状接着層による調湿タイルの調湿ボードへの接合が果たされる。
【0011】
厚膜部は、調湿タイルの突起部を調湿ボードに強固に接合しておけるだけの接着力を発揮するのに必要な厚さに設定できる。また、調湿タイルの不陸や傾きを調整するために、突起部の位置が調湿ボードの表面から離れても確実に接合できる程度に設定しておく。但し、突起部を完全に埋めてしまって、調湿タイルの裏面に付着するほど厚くはないようにしておく。具体的には、厚み1−4mmに設定できる。
厚膜部の幅も、調湿タイルの突起部を調湿ボードに強固に接合できる程度に設定しておく。厚膜部の幅が厚すぎると、調湿ボードの調湿機能が阻害される。具体的には、幅1−4mmに設定できる。
【0012】
薄膜部は、出来るだけ薄いほうが、調湿ボードの調湿機能を有効に発揮できる。但し、厚みの小さな薄膜部も、調湿タイルの突起部を調湿ボードに接合する機能を有する。具体的には、厚み0.1−2mmに設定できる。
厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔は、広い方が、相対的に薄膜部の割合が増え、調湿ボードの調湿機能を発揮させるのに有効である。但し、厚膜部のピッチ間隔が広くなり過ぎると、調湿タイルの突起部が厚膜部に当接する割合が減り、調湿タイルの接合が不充分になる。厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔は、調湿タイルの突起部のピッチ間隔に合わせて設定することが望ましい。具体的には、厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔1−4mmに設定できる。
【0013】
厚膜部と薄膜部との面方向における配置パターンは、直線状であってもよいし、波形などの曲線状であってもよい。同心円状や放射線状なども考えられる。異なる配置パターンを組み合わせることもできる。
〔調湿タイル〕
調湿材を含有する板片状のタイルである。
基本的な材料および構造、製造方法は、通常の建築施工に利用されている調湿タイルと同様でよい。
調湿タイルには、タイル原料を成形したあと、乾燥硬化させたもの、水和硬化させたもの、焼成したものが含まれる。
【0014】
タイル原料は、陶磁器原料やセラミック材料、ガラス材料などが含まれる。セメント系材料や石膏、漆喰なども含まれる。着色材なども添加される。
調湿タイルの形状は、一般的には矩形板状をなすが、矩形以外の多角形状、円形や長円形などの曲線形状のものもある。調湿タイルの表面は平坦であってもよいし、凹凸模様や意匠図形が設けられていてもよい。
調湿タイルは、全体が同じ材料からなるものであってもよいし、厚み方向に、色や特性の違う層を積層配置しておくこともできる。例えば、表面側に色彩や質感に優れた化粧層を配置することができる。
【0015】
調湿タイルの裏面には、裏面側に突出し面方向に間隔をあけて配置された複数の突起部を有する。突起部は、櫛目状接着層による調湿ボードへの接合を確実にするとともに、調湿タイルと櫛目状接着層との間に空気が流通する空間を構成する。
突起部の形状や寸法、配置間隔などは、上記のような機能を果たすのに適切な範囲で設定できる。突起部の形状は、円柱状、角柱状、テーパ柱状などのスポット状のものが、前後左右に空気の流通を妨げにくく好ましいが、面方向に延びる凸壁状であってもよい。突起部の先端に丸みを付けておけば、櫛目状接着層にスムーズに押し込め、突起部の外周面を接着剤で覆い易くなる。先端面などの表面に細かな凹凸を付けて、櫛目状接着層との接合力を増やすこともできる。
【0016】
調湿タイルの裏面における突起部の配置パターンは、縦横に等間隔で格子状に配置するほか、千鳥状や同心円状、放射線状、さらには不等間隔に配置することもできる。調湿タイルの外周近くのみに配置したり、場所によって密度を変えたりすることもできる。
突起部の具体的寸法として、高さ0.5−3mm、外径5−15mm、ピッチ間隔10−30mmに設定できる。
〔調湿壁施工〕
基本的には、通常の建築物における壁面の仕上げ施工と同様の技術が適用される。
【0017】
壁面施工には、コンクリートや鉄骨、木質柱などからなる壁躯体に内装材および外装材を施工して仕上げるものがある。予め壁面の構成部材が一体化された建築パネルを建て付けて、壁面の構築と同時に内外装の施工をも果たすパネル工法もある。
何れの場合でも、壁面の仕上げ施工を行なう面には、下地材が施工されていることが多い。下地材は、合板やパーティクルボードなどが使用される。壁の内部に湿気が浸透することを防止するには、防湿性のある下地材を使用したり、調湿ボードを施工する前に防湿シートを施工したりできる。
【0018】
調湿ボードは、上記のような下地材の表面に、釘やねじ釘で固定取り付けされる。柱や間柱、桟などに調湿ボードを固定してもよい。調湿ボードは、壁面全体に隙間なく貼り付けて施工する。
つぎに、調湿ボードの表面に、櫛目状接着層となる接着剤を櫛目状に塗工する。
基本的には通常の調湿タイル施工における接着剤の塗工作業と同様に行なえる。櫛目状接着層を形成するには、先端に櫛目状の凹凸を有する櫛目状ヘラを使用して接着剤を塗工すれば、能率的に均一な櫛目状パターンが形成できる。
【0019】
櫛目状接着層が硬化する前に、櫛目状接着層の表面に、調湿タイルを互いの間に間隔をあけて配置する。
調湿タイル同士の間には隙間をあける。隙間の大きさは、外観意匠性や隙間への空気流通などを考慮して決定する。具体的には、隙間を0.5−3mmの範囲で設定する。
調湿タイルの突起部を櫛目状接着層に押し付けることで、突起部が櫛目状接着層を介して調湿ボードに接合される。このとき、突起部で櫛目状接着層の厚膜部を押し除けて、突起部が厚膜部に埋め込まれるようにすると、強力な接合が果たせる。突起部は、櫛目状接着層を貫通して調湿ボードの表面に接触するまで押し付けてもよいし、突起部の先端が櫛目状接着層の途中に留まるようでもよい。
【0020】
櫛目状接着層が硬化して、調湿タイルが調湿ボードに強固に接合されれば、調湿壁の施工は完了する。さらに、表面に透湿性塗料を塗工して保護しておくこともできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1,2に示す調湿壁構造は、一般住宅の室内壁面を対象にしている。
図1に示すように、合板などからなる壁面下地材40の表面に、調湿ボード30、櫛目状接着層20および調湿タイル10が施工されている。
〔調湿ボード〕
調湿ボード30は、比較的に面積の広い矩形板であり、珪質頁岩などの調湿材が配合された石膏材料を成形硬化させた調湿石膏ボードである。例えば、縦260cm×横90cm×厚み1.2cmの寸法である。
【0022】
調湿ボード30は、下地材40の表面に、釘打ちなどで固定されている。
櫛目状接着層20には、透湿度600g/m2・24hr(0.2mm厚)のアクリル系接着剤(ファースト化工社製、F124)が使用される。
〔櫛目状接着層〕
櫛目状接着層20は、比較的に分厚い厚膜部22と、比較的に薄い薄膜部24とが交互に並んで配置されている。図2に示すように、厚膜部22および薄膜部24が平行な帯状で並んでいる。
櫛目状接着層20の施工は、前記接着剤を櫛目ヘラを用いて調湿ボード30の表面に塗工する。櫛目ヘラは、先端に一定間隔の凹凸を設けたものである。櫛目ヘラを直線移動させることで、厚膜部22と薄膜部24とが交互に平行に並んだ櫛目模様が形成される。したがって、厚膜部22および薄膜部22の形状や寸法は、接着剤の塗工の仕方によって変わる。例えば、厚膜部22の厚さは約2mm、幅約2mm、薄膜部24の厚さは約0.2mm、ピッチ間隔約2mmで施工される。
【0023】
〔調湿タイル〕
調湿タイル10は、全体が矩形板状をなし、裏面に縦横に間隔をあけて多数の突起12を有している。突起12は概略円柱状をなし、先端は丸められている。調湿タイル10の寸法として、例えば、縦300mm×横300mm×厚み8mmに設定する。突起部12として、外径10mm、高さ2mmのものを、ピッチ間隔20mmで、合計435個配置しておくことができる。
調湿タイル10の製造は、調湿ボード30と同様の調湿材を配合したタイル材料を成形し焼成して製造される。
【0024】
調湿タイル10の施工は、櫛目状接着層20が塗工されたあと、接着剤が硬化するまえに、調湿タイル10を互いの間に隙間Gをあけて、縦横に並べていく。間隔Gの具体的寸法としては、例えば、2mmに設定できる。
調湿タイル10の突起12が、櫛目状接着層20の厚膜部22または薄膜部24の上に当接する。突起12は、厚膜部22を押し潰すようになる。突起12の先端が、櫛目状接着層20を貫通して調湿ボード30に接触してもよいし、櫛目状接着層20の途中に留まっていてもよい。調湿タイル10を櫛目状接着層20に押し付ける強さを加減することで、隣接する調湿タイル10の高さや面の傾きを調整することができる。
【0025】
調湿タイル10の施工状態では、櫛目状接着層20が硬化し、調湿タイル10の突起部12が櫛目状接着層20を介して調湿ボード30に接合される。特に、突起部12が厚膜部22を押し潰すように変形させているところでは、突起部12の外周面で広い範囲が櫛目状接着層20に接合される。このような、厚膜部22が突起部12に配置される個所が、調湿タイル10の全体に配置されるので、調湿タイル10の接合は十分な強度を発揮できる。
図1に示すように、櫛目状接着層20の厚膜部22の上端は、調湿タイル10の裏面よりも下方に配置されている。したがって、調湿タイル10の裏面は全体が露出している。
【0026】
調湿タイル10同士の間には隙間Gがあいているので、調湿タイル10の表面側に存在する室内空間の空気は、隙間Gから、調湿タイル10の裏面側へと流通できる。調湿タイル10の裏面側では、調湿タイル10の裏面と櫛目状接着層20の表面との間に隙間があいているので、空気は調湿タイル10の裏面全体を、一方の側辺から他方の側辺まで、突起部12の間を通って、自由に流通することができる。
〔調湿機能〕
上記した調湿壁構造の調湿機能について説明する。
【0027】
室内空気が調湿タイル10の表面に接触して調湿作用を受けるのは、従来の調湿タイル壁と同様である。
室内空気は、調湿タイル10同士の隙間Gから調湿タイル10の側面を通過して裏側にまで入り込む。調湿タイル10の一方の側辺に隣接する隙間Gから、調湿タイル10の裏面を通過して、反対側の側辺に隣接する隙間Gまで、室内空気がスムーズに流通することができる。その結果、室内空気は調湿タイル10の側面および裏面とも接触して調湿作用を受けることになる。調湿タイル10の全周面が調湿機能を良好に発揮するのである。
【0028】
さらに、調湿タイル10の隙間Gに入り込んだ室内空気は、透湿性のある櫛目状接着層20を介して調湿ボード30による調湿作用をも受けることができる。特に、櫛目状接着層20のうち、厚膜部22は空気や湿気が通過することが困難であったとしても、薄膜部24については空気や湿気が容易に通過して、調湿ボード30と接触することができるので、調湿ボード30による調湿機能が十分に発揮される。
その結果、調湿タイル10の表面のみで調湿機能を果たす調湿壁構造に比べて、格段に優れた調湿機能を発揮することになる。室内空気に大量の湿気が発生する梅雨期における除湿効果や、暖房などで過剰な乾燥状態になり易い寒季における保湿効果などを、極めて効果的に発揮して、室内環境を快適に維持することができる。
【0029】
〔吸湿性能〕
前記実施形態の調湿壁構造について、吸湿性能を評価した。なお、実施例と、以下の比較例について吸湿量を測定した。
実施例 :図1、2に示す構造(寸法や材料は前項までで説明したとおり)。
比較例1:実施例1で、櫛目状接着層20の代わりに、一様な厚みの接着層を形成した。
比較例2:実施例1で、調湿タイル10として、突起部12を有さないものを用い、櫛目状接着層20の代わりに、一様な厚みの接着層を形成した。
【0030】
吸湿量の測定は常法により実施した。
<試験結果>
実施例 =410g/m2
比較例1=315g/m2
比較例2=385g/m2
したがって、突起部12と櫛目状接着層20とを組み合わせた実施例では、比較例1,2に比べて、吸湿量が明らかに増大していることが判る。吸湿能力が優れていることは、放出能力についても同様に優れた性能を有することが推定できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明にかかる調湿壁構造は、裏面に突起を有する調湿タイルを、互いの間に間隔をあけた状態で、櫛目状接着層を介して調湿ボードに接合していることで、施工環境の空気が、調湿タイルの表面だけでなく、調湿タイルの側面から裏面にわたって自由に流通することになり、調湿タイルの全周面で良好な調湿機能を発揮することができる。しかも、櫛目状接着層は、厚膜部によって調湿タイルの突起部を強力に接合しておくことができるとともに、薄膜部によって調湿ボードの表面へと空気あるいは湿気の出入りを良好にすることができ、調湿ボードが有する調湿機能をも良好に発揮させることができる。
【0032】
その結果、従来の調湿壁構造に比べて格段に調湿機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を表す調湿壁構造の断面図
【図2】 平面図
【符号の説明】
10 調湿タイル
12 突起部
20 櫛目状接着層
22 厚膜部
24 薄膜部
30 調湿ボード
40 下地材
G 隙間
【発明の属する技術分野】
本発明は、調湿壁構造およびその施工方法に関し、詳しくは、住宅の壁面などに利用され、施工環境の湿度変化に対応して、湿度が上昇し過ぎると湿気を吸収し、湿度が下降し過ぎると水分を放出する調湿機能を果たす壁構造と、このような調湿壁構造を施工する方法とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
住宅の室内壁面に、調湿タイルを貼り付け施工して、室内空間の調湿機能を果たす技術は、既に広く知られており、施工実績も数多くある。
調湿タイルを用いた壁面の施工としては、合板や石膏ボードからなる内装下地材の表面に、接着剤を塗工し、塗工された接着剤層の上に調湿タイルを並べて貼り付けていく。
隣接して貼り付ける調湿タイル同士は、隙間なく並べたり、少し隙間をあけて並べたりする。この隙間は、通常のタイル施工において目地と呼ばれる構造であり、タイルの不陸や形状誤差を目立たなくしたり、施工後の変形や移動を許容したりする機能がある。目地にはモルタルや接着剤を埋め込んで塞いでおくのが普通である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の調湿タイル施工では、調湿タイルが有する調湿機能を十分に発揮できていないという問題がある。
調湿タイルの調湿機能は、室内空間に露出していて空気と接触している面で果たされる。ところが、調湿タイルの施工状態では、調湿タイルのうち室内空間に露出しているのは、主に表面だけである。したがって、例えば、調湿タイルの表面が湿気を吸収して飽和してしまうと、それ以上の吸湿は困難になる。勿論、調湿タイルの表面で吸収された水分は徐々に内部のほうにも拡散していくが、それには時間がかかるので、急激な湿度変化には対応し難い。同様に、室内環境が乾燥したときに、調湿タイルが保持する水分を放出する際にも、表面だけからの水分放出では、迅速で十分なす水分補給が果たせない。
【0004】
前記した目地を設けた場合、調湿タイルの側面を露出させることもでき、側面でも調湿機能が発揮できるが、狭く行き止まりになった目地の奥までは、空気の流通が十分にいかないため、目地による調湿機能の向上は、十分ではない。
さらに、調湿タイルは、室内壁面の外観や意匠性に影響を与えることや、生産性、施工の取扱い易さを考慮して、比較的に薄く小さな板片状をなしているため、調湿タイル全体の吸湿量は、それほど多くはない。そのため、梅雨期などの高湿環境では、調湿タイルだけでの調湿機能では、室内空間を快適な湿度範囲に維持することが困難であった。
【0005】
本発明の課題は、上記したような従来における調湿タイル壁の問題点を解消して、調湿機能をより向上させることである。また、そのような調湿機能に優れた壁構造を容易に施工できるようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる調湿壁構造は、建築物の壁面を構成し、調湿機能を有する壁構造であって、調湿材を含有する調湿ボードと、前記調湿ボードの表面に塗工され、透湿性を有し、厚みの大きい厚膜部と厚みの小さい薄膜部とが交互に配置された櫛目状接着層と、調湿材を含有する板片状のタイルであって、裏面側に突出し面方向に間隔をあけて配置された複数の突起部を有し、互いの間に間隔をあけて前記調湿ボードの表面に並べて配置され、前記突起部が前記櫛目状接着層に当接して前記調湿ボードに接合された調湿タイルとを備える。
【0007】
〔建築物の壁面〕
一般住宅や集合住宅など各種建築物の壁面で、調湿機能を必要とする壁面の構造に適用できる。なお、壁面とは、通常の側壁面のほか、天井壁面や床壁面、柱壁面などをも含めた、建築物の表面構造を意味している。建築物の壁面としては、室内壁面のほか、屋外壁面にも適用できる。
〔調湿材〕
調湿ボートおよび調湿タイルに調湿機能を与える。
建築分野で通常に使用されている調湿材料が使用できる。具体的には、珪質頁岩、ゼオライト、セピオライト、シリカゲルなどが挙げられる。
【0008】
調湿材の形状は、天然の岩石などの場合は採掘された状態のままや粉砕した状態などである。合成された材料の場合は、粉粒体や繊維状、ペレット状などがある。
〔調湿ボード〕
調湿材を含有していて、少なくとも表面が調湿機能を有する。調湿タイルの支持構造としても機能する。
比較的に面積のあるボード状すなわち板状をなす。一般的には平坦な矩形板であるが、施工場所によっては、矩形以外の多角形板や曲線形板も用いられる。壁や柱の角部や隅部などでは、屈曲板や曲面板も使用される。
【0009】
調湿ボードの材料は、基本的には、通常の建築板材と同様の材料を使用し、そこに調湿機能を有する材料すなわち調湿材を含有しておく。基本材料として、石膏やセメント、漆喰、セラミック、木質材、繊維材などが挙げられる。これらの基本材料に調湿材を配合し、通常の建築ボードと同様の製造工程を経て、調湿ボードが製造できる。
〔櫛目状接着層〕
調湿ボードの表面に塗工される。透湿性を有している。厚みの大きい厚膜部と厚みの小さい薄膜部とが交互に配置される。
【0010】
櫛目状接着層を形成する接着剤としては、調湿タイルを調湿ボードに接合できれば、通常のタイル施工や建築施工に利用されている各種接着剤の中から、透湿性を有する材料が使用できる。具体的には、アクリル系接着剤や酢酸ビニル系接着剤などが使用できる。
櫛目状接着層の透湿性として、透湿度500g/m2・24Hr(0.2mm厚)以上のものが好ましい。透湿度の測定は常法による。特に、透湿度900−1500g/m2・24Hr(0.2mm厚)が好ましい。
接着剤は、調湿ボードの全面にわたって塗工しておき、その上に、一定間隔をあけて調湿タイルを並べて配置することで、櫛目状接着層による調湿タイルの調湿ボードへの接合が果たされる。
【0011】
厚膜部は、調湿タイルの突起部を調湿ボードに強固に接合しておけるだけの接着力を発揮するのに必要な厚さに設定できる。また、調湿タイルの不陸や傾きを調整するために、突起部の位置が調湿ボードの表面から離れても確実に接合できる程度に設定しておく。但し、突起部を完全に埋めてしまって、調湿タイルの裏面に付着するほど厚くはないようにしておく。具体的には、厚み1−4mmに設定できる。
厚膜部の幅も、調湿タイルの突起部を調湿ボードに強固に接合できる程度に設定しておく。厚膜部の幅が厚すぎると、調湿ボードの調湿機能が阻害される。具体的には、幅1−4mmに設定できる。
【0012】
薄膜部は、出来るだけ薄いほうが、調湿ボードの調湿機能を有効に発揮できる。但し、厚みの小さな薄膜部も、調湿タイルの突起部を調湿ボードに接合する機能を有する。具体的には、厚み0.1−2mmに設定できる。
厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔は、広い方が、相対的に薄膜部の割合が増え、調湿ボードの調湿機能を発揮させるのに有効である。但し、厚膜部のピッチ間隔が広くなり過ぎると、調湿タイルの突起部が厚膜部に当接する割合が減り、調湿タイルの接合が不充分になる。厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔は、調湿タイルの突起部のピッチ間隔に合わせて設定することが望ましい。具体的には、厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔1−4mmに設定できる。
【0013】
厚膜部と薄膜部との面方向における配置パターンは、直線状であってもよいし、波形などの曲線状であってもよい。同心円状や放射線状なども考えられる。異なる配置パターンを組み合わせることもできる。
〔調湿タイル〕
調湿材を含有する板片状のタイルである。
基本的な材料および構造、製造方法は、通常の建築施工に利用されている調湿タイルと同様でよい。
調湿タイルには、タイル原料を成形したあと、乾燥硬化させたもの、水和硬化させたもの、焼成したものが含まれる。
【0014】
タイル原料は、陶磁器原料やセラミック材料、ガラス材料などが含まれる。セメント系材料や石膏、漆喰なども含まれる。着色材なども添加される。
調湿タイルの形状は、一般的には矩形板状をなすが、矩形以外の多角形状、円形や長円形などの曲線形状のものもある。調湿タイルの表面は平坦であってもよいし、凹凸模様や意匠図形が設けられていてもよい。
調湿タイルは、全体が同じ材料からなるものであってもよいし、厚み方向に、色や特性の違う層を積層配置しておくこともできる。例えば、表面側に色彩や質感に優れた化粧層を配置することができる。
【0015】
調湿タイルの裏面には、裏面側に突出し面方向に間隔をあけて配置された複数の突起部を有する。突起部は、櫛目状接着層による調湿ボードへの接合を確実にするとともに、調湿タイルと櫛目状接着層との間に空気が流通する空間を構成する。
突起部の形状や寸法、配置間隔などは、上記のような機能を果たすのに適切な範囲で設定できる。突起部の形状は、円柱状、角柱状、テーパ柱状などのスポット状のものが、前後左右に空気の流通を妨げにくく好ましいが、面方向に延びる凸壁状であってもよい。突起部の先端に丸みを付けておけば、櫛目状接着層にスムーズに押し込め、突起部の外周面を接着剤で覆い易くなる。先端面などの表面に細かな凹凸を付けて、櫛目状接着層との接合力を増やすこともできる。
【0016】
調湿タイルの裏面における突起部の配置パターンは、縦横に等間隔で格子状に配置するほか、千鳥状や同心円状、放射線状、さらには不等間隔に配置することもできる。調湿タイルの外周近くのみに配置したり、場所によって密度を変えたりすることもできる。
突起部の具体的寸法として、高さ0.5−3mm、外径5−15mm、ピッチ間隔10−30mmに設定できる。
〔調湿壁施工〕
基本的には、通常の建築物における壁面の仕上げ施工と同様の技術が適用される。
【0017】
壁面施工には、コンクリートや鉄骨、木質柱などからなる壁躯体に内装材および外装材を施工して仕上げるものがある。予め壁面の構成部材が一体化された建築パネルを建て付けて、壁面の構築と同時に内外装の施工をも果たすパネル工法もある。
何れの場合でも、壁面の仕上げ施工を行なう面には、下地材が施工されていることが多い。下地材は、合板やパーティクルボードなどが使用される。壁の内部に湿気が浸透することを防止するには、防湿性のある下地材を使用したり、調湿ボードを施工する前に防湿シートを施工したりできる。
【0018】
調湿ボードは、上記のような下地材の表面に、釘やねじ釘で固定取り付けされる。柱や間柱、桟などに調湿ボードを固定してもよい。調湿ボードは、壁面全体に隙間なく貼り付けて施工する。
つぎに、調湿ボードの表面に、櫛目状接着層となる接着剤を櫛目状に塗工する。
基本的には通常の調湿タイル施工における接着剤の塗工作業と同様に行なえる。櫛目状接着層を形成するには、先端に櫛目状の凹凸を有する櫛目状ヘラを使用して接着剤を塗工すれば、能率的に均一な櫛目状パターンが形成できる。
【0019】
櫛目状接着層が硬化する前に、櫛目状接着層の表面に、調湿タイルを互いの間に間隔をあけて配置する。
調湿タイル同士の間には隙間をあける。隙間の大きさは、外観意匠性や隙間への空気流通などを考慮して決定する。具体的には、隙間を0.5−3mmの範囲で設定する。
調湿タイルの突起部を櫛目状接着層に押し付けることで、突起部が櫛目状接着層を介して調湿ボードに接合される。このとき、突起部で櫛目状接着層の厚膜部を押し除けて、突起部が厚膜部に埋め込まれるようにすると、強力な接合が果たせる。突起部は、櫛目状接着層を貫通して調湿ボードの表面に接触するまで押し付けてもよいし、突起部の先端が櫛目状接着層の途中に留まるようでもよい。
【0020】
櫛目状接着層が硬化して、調湿タイルが調湿ボードに強固に接合されれば、調湿壁の施工は完了する。さらに、表面に透湿性塗料を塗工して保護しておくこともできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1,2に示す調湿壁構造は、一般住宅の室内壁面を対象にしている。
図1に示すように、合板などからなる壁面下地材40の表面に、調湿ボード30、櫛目状接着層20および調湿タイル10が施工されている。
〔調湿ボード〕
調湿ボード30は、比較的に面積の広い矩形板であり、珪質頁岩などの調湿材が配合された石膏材料を成形硬化させた調湿石膏ボードである。例えば、縦260cm×横90cm×厚み1.2cmの寸法である。
【0022】
調湿ボード30は、下地材40の表面に、釘打ちなどで固定されている。
櫛目状接着層20には、透湿度600g/m2・24hr(0.2mm厚)のアクリル系接着剤(ファースト化工社製、F124)が使用される。
〔櫛目状接着層〕
櫛目状接着層20は、比較的に分厚い厚膜部22と、比較的に薄い薄膜部24とが交互に並んで配置されている。図2に示すように、厚膜部22および薄膜部24が平行な帯状で並んでいる。
櫛目状接着層20の施工は、前記接着剤を櫛目ヘラを用いて調湿ボード30の表面に塗工する。櫛目ヘラは、先端に一定間隔の凹凸を設けたものである。櫛目ヘラを直線移動させることで、厚膜部22と薄膜部24とが交互に平行に並んだ櫛目模様が形成される。したがって、厚膜部22および薄膜部22の形状や寸法は、接着剤の塗工の仕方によって変わる。例えば、厚膜部22の厚さは約2mm、幅約2mm、薄膜部24の厚さは約0.2mm、ピッチ間隔約2mmで施工される。
【0023】
〔調湿タイル〕
調湿タイル10は、全体が矩形板状をなし、裏面に縦横に間隔をあけて多数の突起12を有している。突起12は概略円柱状をなし、先端は丸められている。調湿タイル10の寸法として、例えば、縦300mm×横300mm×厚み8mmに設定する。突起部12として、外径10mm、高さ2mmのものを、ピッチ間隔20mmで、合計435個配置しておくことができる。
調湿タイル10の製造は、調湿ボード30と同様の調湿材を配合したタイル材料を成形し焼成して製造される。
【0024】
調湿タイル10の施工は、櫛目状接着層20が塗工されたあと、接着剤が硬化するまえに、調湿タイル10を互いの間に隙間Gをあけて、縦横に並べていく。間隔Gの具体的寸法としては、例えば、2mmに設定できる。
調湿タイル10の突起12が、櫛目状接着層20の厚膜部22または薄膜部24の上に当接する。突起12は、厚膜部22を押し潰すようになる。突起12の先端が、櫛目状接着層20を貫通して調湿ボード30に接触してもよいし、櫛目状接着層20の途中に留まっていてもよい。調湿タイル10を櫛目状接着層20に押し付ける強さを加減することで、隣接する調湿タイル10の高さや面の傾きを調整することができる。
【0025】
調湿タイル10の施工状態では、櫛目状接着層20が硬化し、調湿タイル10の突起部12が櫛目状接着層20を介して調湿ボード30に接合される。特に、突起部12が厚膜部22を押し潰すように変形させているところでは、突起部12の外周面で広い範囲が櫛目状接着層20に接合される。このような、厚膜部22が突起部12に配置される個所が、調湿タイル10の全体に配置されるので、調湿タイル10の接合は十分な強度を発揮できる。
図1に示すように、櫛目状接着層20の厚膜部22の上端は、調湿タイル10の裏面よりも下方に配置されている。したがって、調湿タイル10の裏面は全体が露出している。
【0026】
調湿タイル10同士の間には隙間Gがあいているので、調湿タイル10の表面側に存在する室内空間の空気は、隙間Gから、調湿タイル10の裏面側へと流通できる。調湿タイル10の裏面側では、調湿タイル10の裏面と櫛目状接着層20の表面との間に隙間があいているので、空気は調湿タイル10の裏面全体を、一方の側辺から他方の側辺まで、突起部12の間を通って、自由に流通することができる。
〔調湿機能〕
上記した調湿壁構造の調湿機能について説明する。
【0027】
室内空気が調湿タイル10の表面に接触して調湿作用を受けるのは、従来の調湿タイル壁と同様である。
室内空気は、調湿タイル10同士の隙間Gから調湿タイル10の側面を通過して裏側にまで入り込む。調湿タイル10の一方の側辺に隣接する隙間Gから、調湿タイル10の裏面を通過して、反対側の側辺に隣接する隙間Gまで、室内空気がスムーズに流通することができる。その結果、室内空気は調湿タイル10の側面および裏面とも接触して調湿作用を受けることになる。調湿タイル10の全周面が調湿機能を良好に発揮するのである。
【0028】
さらに、調湿タイル10の隙間Gに入り込んだ室内空気は、透湿性のある櫛目状接着層20を介して調湿ボード30による調湿作用をも受けることができる。特に、櫛目状接着層20のうち、厚膜部22は空気や湿気が通過することが困難であったとしても、薄膜部24については空気や湿気が容易に通過して、調湿ボード30と接触することができるので、調湿ボード30による調湿機能が十分に発揮される。
その結果、調湿タイル10の表面のみで調湿機能を果たす調湿壁構造に比べて、格段に優れた調湿機能を発揮することになる。室内空気に大量の湿気が発生する梅雨期における除湿効果や、暖房などで過剰な乾燥状態になり易い寒季における保湿効果などを、極めて効果的に発揮して、室内環境を快適に維持することができる。
【0029】
〔吸湿性能〕
前記実施形態の調湿壁構造について、吸湿性能を評価した。なお、実施例と、以下の比較例について吸湿量を測定した。
実施例 :図1、2に示す構造(寸法や材料は前項までで説明したとおり)。
比較例1:実施例1で、櫛目状接着層20の代わりに、一様な厚みの接着層を形成した。
比較例2:実施例1で、調湿タイル10として、突起部12を有さないものを用い、櫛目状接着層20の代わりに、一様な厚みの接着層を形成した。
【0030】
吸湿量の測定は常法により実施した。
<試験結果>
実施例 =410g/m2
比較例1=315g/m2
比較例2=385g/m2
したがって、突起部12と櫛目状接着層20とを組み合わせた実施例では、比較例1,2に比べて、吸湿量が明らかに増大していることが判る。吸湿能力が優れていることは、放出能力についても同様に優れた性能を有することが推定できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明にかかる調湿壁構造は、裏面に突起を有する調湿タイルを、互いの間に間隔をあけた状態で、櫛目状接着層を介して調湿ボードに接合していることで、施工環境の空気が、調湿タイルの表面だけでなく、調湿タイルの側面から裏面にわたって自由に流通することになり、調湿タイルの全周面で良好な調湿機能を発揮することができる。しかも、櫛目状接着層は、厚膜部によって調湿タイルの突起部を強力に接合しておくことができるとともに、薄膜部によって調湿ボードの表面へと空気あるいは湿気の出入りを良好にすることができ、調湿ボードが有する調湿機能をも良好に発揮させることができる。
【0032】
その結果、従来の調湿壁構造に比べて格段に調湿機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を表す調湿壁構造の断面図
【図2】 平面図
【符号の説明】
10 調湿タイル
12 突起部
20 櫛目状接着層
22 厚膜部
24 薄膜部
30 調湿ボード
40 下地材
G 隙間
Claims (4)
- 建築物の壁面を構成し、調湿機能を有する壁構造であって、
調湿材を含有する調湿ボードと、
前記調湿ボードの表面に塗工され、透湿性を有し、厚みの大きい厚膜部と厚みの小さい薄膜部とが交互に配置された櫛目状接着層と、
調湿材を含有する板片状のタイルであって、裏面側に突出し面方向に間隔をあけて配置された複数の突起部を有し、互いの間に間隔をあけて前記調湿ボードの表面に並べて配置され、前記突起部が前記櫛目状接着層に当接して前記調湿ボードに接合された調湿タイルと
を備える調湿壁構造。 - 前記櫛目状接着層が、透湿度500g/m2・24Hr(0.2mm厚)以上であり、前記厚膜部は、厚み1−4mm、幅1−4mmであり、前記薄膜部は、厚み0.1−2mmであり、厚膜部と薄膜部とのピッチ間隔1−4mmである
請求項1に記載の調湿壁構造。 - 前記突起部が、高さ0.5−3mm、外径5−15mm、ピッチ間隔10−30mmである
請求項1または2に記載の調湿壁構造。 - 請求項1−3の何れかに記載の調湿壁構造を施工する方法であって、
前記調湿ボードを施工する工程(a)と、
前記調湿ボードの表面に、前記櫛目状接着層となる接着剤を櫛目状に塗工する工程(b)と、
前記櫛目状接着層の表面に、前記調湿タイルを互いの間に間隔をあけて配置し、調湿タイルの突起部を櫛目状接着層に押し付ける工程(c)と
を含む調湿壁構造の施工方法。
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