JP3773081B2 - マルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法に関するものであり、特に従来のシアリング干渉法にマルティプルビームを導入することにより干渉縞をシャープにできる微分干渉コントラスト法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の干渉現象を微分干渉コントラスト法に応用した種々の干渉法のうち、シアリング干渉法が良く知られている。シアリング干渉法は、位相物体を透過した光を平行平面板の表面と裏面とで反射させ、二つの波面の間にπ/2の位相変化を与えて、反射光を干渉させ、透明物体の位相変化を光の強度変化に変換して見えるようにし、観測するようにしたものである。
【0003】
しかしながら、上述のようなシアリング干渉法は、位相物体の位相変化が小さくなると、低コントラストの物体となり、鮮明度が必ずしも充分でなく、さらに位相変化が小さくなると、物体を観測することが出来なくなる等の問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、このような従来のシアリング干渉法が有していた問題点を解決するために、レーザーを光源とし、顕微鏡対物レンズ、コリメータレンズ、ファブリペロエタン、結像レンズ、スクリーンなどからなる透過形または反射形の光学系を構成し、これにより位相物体の位相を光の強度に変換する時の勾配を大きくしてコントラストを向上させ、スクリーン上に鮮明に結像できるようにした微分干渉コントラスト法を提供せんとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
光源から発射されたレーザー光を、コリメーターレンズで平行光とし、この平行光により位相物体を照明し、位相物体の後方に配置したファブリペロエタロンにより干渉光を形成し、スクリーン上に位相物体の前記干渉光を結像することにより位相コントラスト像を観測できるようにしたマルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法であって、前記ファブリペロエタロンを傾けてシアを与えるとともに、コリメーターレンズを光軸に垂直方向に移動させ、マルティプルビーム間にε0 /2の位相差を与え、このシアとマルティプルビームの干渉によって、結像レンズを介してスクリーン上に位相物体を結像して透明物体を観測できるようにしたことを特徴とするマルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法である。
【0006】
削除
【0007】
【実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる透過型の光学系の図であり、図2は、対象物が反射物体の場合の本形態に係わる光学系の図である。
【0008】
各図において、1はレーザーを発射する光源、2は顕微鏡対物レンズ、3はコリメータレンズ、4は位相物体、5はファブリペロエタロン、6は結像レンズ、7はスクリーンである。ファブリペロエタロンは高反射率を実現するために、平行平面ガラス板の両側に金属反射膜コーティング(本例ではAg膜)してある。
なお、金属反射膜コーティングの代わりに多層膜コーティングを利用してもよく、その他既存の種々の方法を採用することができ、また光源としてのレーザーはヘリウム、ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー等のレーザーを使用することができる。
【0009】
上記光学系において、光源から発射されたレーザー光は、顕微鏡対物レンズで拡げられ、コリメーターレンズで平行光にされ、位相物体を照明する。位相物体の直ぐ後ろにはファブリペロエタロンが配置されており、このファブリペロエタロンを傾けてシアを与えるとともに、コリメーターレンズを僅かに横方向(光軸に垂直方向)に移動させ、マルティプルビーム間にε0 /2の位相差を与え(ε0 /2は光の強度が半分になる時の位相で、2光束の干渉ではπ/2、マルティプルビームの時はフリンジシャープネスにより値が異なる)、このシアとマルティプルビームの干渉が行われ、位相変化が光の強度変化となり、結像レンズを介してスクリーン上に位相物体を結像して透明物体を観測する。
【0010】
このようにしてマルティプルビームシアリング干渉を導入することで、位相物体の位相が光強度に変換され、スクリーン上に位相コントラスト像を観測することができ、従来のシアリング干渉法によって得た像に比較して、数倍から数十倍の極めて感度の高い干渉縞の検出が可能となる。
以下、マルティプルビームを使用することで位相物体の位相変化がどうして光強度の変化に変えられるかについて説明する。
図3はマルティプルビームの干渉光強度と位相との関係を示す図である。
干渉光強度と位相の関係は、
【0011】
【数1】
Figure 0003773081
となる。ところで、
【0012】
【数2】
Figure 0003773081
であり、(2)式の第1項は通常のマルティプルビームによって得られる項、第2項は通常のシアリング干渉による干渉縞の項、第3項は金属面の反射による位相のとびの項である。したがって、(1)式のδを変化させて光強度分布を示した図が図3である。
【0013】
今、(1)式において光強度が1/2になる位置に於ける位相ε0 /2を求める。
(1)式においてI=1/2、δ=ε0 /2とおいて、計算すると、
【0014】
【数3】
Figure 0003773081
δ=2mπ=ε0 /2の位置における勾配を計算すると
【0015】
【数4】
Figure 0003773081
で与えられる。例えば、
【0016】
【数5】
Figure 0003773081
通常のノルマルスキー等の干渉コントラスト法は、
【0017】
【数6】
Figure 0003773081
となり、マルティプルビームを用いると図3の光強度が0.5になる位置の勾配は非常に大きくなる。
次に(1)式において、
【0018】
【数7】
Figure 0003773081
に調整する。
【0019】
例えば、図1のコリメータレンズを横方向(光軸に垂直方向)へ少し動かして調整する。
今、矩形の位相物体を観測する場合を考える。
位相物体はシアによってΣ1 とΣ2 に二つの波面を作りだす。その時の二つの波面の位相関係が図4(イ)に示されている。
今、A点〜B点の位相遅れはε0 /2、
したがって、図3よりI=0.5
今、B点〜C点の位相遅れは(ε0 /2)+Δ
したがって、図3よりI=0.5−ΔI
C点〜D点の位相遅れはε0 /2、
したがって、I=0.5
D点〜E点の位相遅れは(ε0 /2)−Δ
したがって、I=0.5+ΔI
E点〜F点の位相遅れはε0 /2、
したがって、I=0.5
となる。この結果が図4(ロ)に示されている。
【0020】
(4)式に勾配を計算したように、通常のシアリング干渉コントラスト法に比較して勾配が大きくなるので、僅かな位相変化でも検出でき、この方法によれば、位相の検出感度が飛躍的に向上する。
なお、上記例では、半値幅(光強度)が1/2になる時の勾配を求めて、それで代表させたが、微分して勾配が最も急になる値を用いることでも同様に僅かな位相変化を検出できる。
即ち、
【0021】
【数8】
Figure 0003773081
【0022】
【数9】
Figure 0003773081
【0023】
【数10】
Figure 0003773081
が得られる。したがって、
【0024】
【数11】
Figure 0003773081
【0025】
【数12】
Figure 0003773081
となる。
この位置の位相遅れは2mπ+ε1 /2
【0026】
【数13】
Figure 0003773081
で与えられる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を実施することが可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の微分干渉コントラスト法(シアリングコントラスト法)では得ることができない僅かな位相変化でも検出することができ、検出感度を飛躍的に向上することができる。
干渉縞がシャープになるため位相物体の僅かな高さでも高いコントラスト像が得られるため、透明物体の高さの分解能が飛躍的に向上する。
エタロンへの入射角を調節することで特定の位相差のみを精度良く観測できる、等の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係わる光学系の構成図である。
【図2】 本発明の実施形態に係わる対象物が反射物体である場合の光学系の構成図である。
【図3】 マルティプルビームの干渉光強度と位相との関係を示す図である。
【図4】 (イ)は二つの波面の位相関係を示す図、(ロ)は位相遅れを示す図である。
【符号の説明】
1 レーザー光源
2 顕微鏡対物レンズ
3 コリメータレンズ
4 位相物体
5 ファブリペロエタロン
6 結像レンズ
7 スクリーン

Claims (1)

  1. 光源から発射されたレーザー光を、コリメーターレンズで平行光とし、この平行光により位相物体を照明し、位相物体の後方に配置したファブリペロエタロンにより干渉光を形成し、スクリーン上に位相物体の前記干渉光を結像することにより位相コントラスト像を観測できるようにしたマルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法であって、前記ファブリペロエタロンを傾けてシアを与えるとともに、コリメーターレンズを光軸に垂直方向に移動させ、マルティプルビーム間にε0 /2の位相差を与え、このシアとマルティプルビームの干渉によって、結像レンズを介してスクリーン上に位相物体を結像して透明物体を観測できるようにしたことを特徴とするマルティプルビームシアリング干渉を用いた微分干渉コントラスト法。
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