JP3772547B2 - 石英ガラス封着用材料およびランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば石英ガラス製のバルブを有するランプなどの石英ガラス製品の気密封着に使用される石英ガラス封着用材料、およびこの石英ガラス封着用材料によって封着されたバルブを有するランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,石英ガラス製品、例えば石英ガラス製のバルブを有する放電ランプや白熱ランプなどの製造においては、水素−酸素炎などによって、石英ガラス製のバルブの封止管部を2000℃以上に加熱して溶融状態とし、この状態で加熱変形することにより、当該封止管部を気密封着することが行われている。
【0003】
然るに、このような方法により石英ガラスの気密封着を行う場合には、以下のような問題がある。
(1)石英ガラスを溶融させて気密封着するためには相当に長い加熱時間を要するため、バルブに変形が生じやすく、その結果、高い寸法精度を有するランプを確実に製造することが困難である。
(2)石英ガラスを溶融させるために水素−酸素バーナー炎などが使用される結果、石英ガラス中に水分子などの不純物が混入されてしまい、これが当該ランプのバルブ内に放出される現象が生じ、その結果、放電電極やフィラメントコイルに水分子などが付着して反応するため、当該放電電極やフィラメントコイルなどが磨耗してランプの使用寿命が短くなる。
【0004】
このような問題を解決するための手段の一つとして、線膨張率の低い結晶性フィラーを混合することにより、石英ガラスの線膨張率に近似した線膨張率を有する封着用材料を得る試みがなされている。しかしながら、このような材料では、結晶性フィラーと石英ガラスとの線膨張率の差に起因する内部残留応力などによって、高い機械的強度および十分な気密性が得られない。
更に、封着用材料中に低線膨張結晶を析出させることにより、線膨張率を石英ガラスの線膨張率に近づける手段が提案されている。しかしながら、このような結晶化材料を用いる場合には、気密封着を行う際に、当該材料における結晶の析出を制御することが必要となり、しかも、結晶の析出を制御するために厳密な温度管理が必要となるため、封着作業が煩雑となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、石英ガラスを変形させることなしに当該石英ガラスの気密封着を確実に達成することができ、しかも、石英ガラスの封着作業において高い時間的効率が得られる石英ガラス封着用材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、寸法精度が高くて所期の形状が得られると共に、高い気密性を有する封止構造が得られ、しかも、長い使用寿命を有するランプを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の石英ガラス封着用材料は、二酸化珪素を77〜98.4モル%、酸化亜鉛を0〜15モル%および三酸化二硼素を1.6〜15モル%の割合で含有してなり、封着される石英ガラスの線膨張係数をA(1/K)とするとき、A〜A+6×10-7(1/K)の範囲の線膨張係数を有し、かつ、石英ガラスの融点より低い温度で軟化する性質を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の石英ガラス封着用材料は、波長0.9〜3μmの光を吸収するものであることが好ましい。
また、遷移金属元素および/または希土類金属元素の中から選択された少なくとも1種以上の元素を含有してなるものであることが好ましい。
【0008】
本発明のランプは、発光管部およびこの発光管部に連設された封止管部を有する石英ガラス製のバルブと、このバルブの封止管部に設けられた封止部材とを具えてなるランプであって、
上記の石英ガラス封着用材料によって、前記バルブの封止管部と前記封止部材とが封着されていることを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記の構成の石英ガラス封着用材料によれば、その線膨張係数が石英ガラスの線膨張係数に近似しているため、封着する際にクラックなどが生じることがなく、その結果、石英ガラスの気密封着を確実に達成することができる。
また、石英ガラスの融点よりも低い温度で軟化するため、石英ガラスを変形することなしに、当該石英ガラスを封着することができる。
また、結晶化材料ではないため、封着時に高い精度の温度管理が不要で、しかも、短い時間で封着作業を行うことができ、その結果、石英ガラスの封着作業において高い時間的効率が得られると共に、水素−酸素炎による水分子などの不純物が石英ガラス中に混入されることを防止または抑制することができる。
【0010】
波長0.9〜3μmの光を吸収する石英ガラス封着用材料によれば、加熱時に生ずる輻射エネルギーを有効に利用することができ、従って、当該封着用材料のみを高い効率で加熱することができるため、封着作業時間の短縮を図ることができる。特に、光加熱法によって封着作業を行う場合に極めて有効である。
また、遷移金属元素および/または希土類元素を含有させることにより、高い効率で光を吸収し、しかも、光の吸収により着色した封着用材料が得られるため、封着作業時に目視により封着用材料を確認することができ、その結果、封着用材料のみを一層高い効率で加熱することができる。
【0011】
本発明のランプによれば、バルブの封止管部と封止部材とが上記の石英ガラス封着用材料によって封着されているため、寸法精度が高くて所期の形状が得られると共に、クラックなどが生じることがなくて高い気密性を有する封止構造が得られ、しかも、石英ガラス中に水分子などの不純物が混入されることが防止または抑制されて長い使用寿命が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〈石英ガラス封着用材料〉
本発明の石英ガラス封着用材料は、少なくとも二酸化珪素を77モル%以上の割合で含有してなるものである。二酸化珪素の含有割合が77モル%未満である場合には、クラックなどが生じて気密に封着することが困難となる。
また、本発明の石英ガラス封着用材料は、封着される石英ガラスの線膨張係数をA(1/K)とするとき、A〜A+6×10 -7 (1/K)の範囲の線膨張係数を有するものである。線膨張係数が上記の範囲外にある場合には、石英ガラスの線膨張係数との差が過大であるため、クラックなどが生じて気密に封着することが困難となる。
更に、本発明の石英ガラス封着用材料は、封着される石英ガラスの融点より低い温度で軟化する性質を有するものである。石英ガラスの融点以上の温度で軟化するものである場合には、石英ガラスを封着する際に、当該石英ガラスも溶融してしまうため、封着用材料を用いる効果が得られない。
【0013】
このような石英ガラス封着用材料は、二酸化珪素を77〜98.4モル%、酸化亜鉛を0〜15モル%および三酸化二硼素を1.6〜15モル%の割合で含有してなるものとされる。ここで、酸化亜鉛は、材料の線膨張係数を低下させる作用を有するものであり、三酸化二硼素は、材料の軟化温度を低下させる作用を有するものである。
また、酸化亜鉛の含有割合が15モル%を超える場合には、当該材料の結晶化が進行するため、好ましくない。
また、三酸化二硼素の割合が15モル%を超える場合には、三酸化二硼素が材料の線膨張係数を上昇させる作用を有するため、上記の線膨張係数の範囲を満足する材料を得ることが困難となる。
【0014】
本発明の石英ガラス封着用材料においては、1700℃における石英ガラスとの接触角が90度以下であることが好ましい。この接触角が90度を超える場合には、石英ガラスを封着する際に、当該石英ガラスと当該封着用材料との間にくさび状の切れ込みが生じ、この切れ込みに圧力が集中する結果、クラックが発生しやすくなる。
【0015】
また、石英ガラス封着用材料は、波長0.9〜3μmの光を吸収するものであることが好ましい。
また、遷移金属元素および/または希土類金属元素の中から選択された少なくとも1種以上の金属元素(以下、「特定の金属元素」という。)を含有してなるものであることが好ましい。かかる特定の金属元素の具体例としては、Fe、Ti、Cr、Mn、Cu、Zn、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dyなどが挙げられる。
特定の金属元素の含有割合は、10重量%以下であることが好ましい。この割合が過大である場合には、得られる封着用材料は、線膨張係数がA〜A+6×10 -7 (1/K)の範囲外のものとなって、接合時にクラックが生じてしまうだけでなく、顕著な着色が生じてしまうため、外観上も好ましくない。
【0016】
上記の石英ガラス封着用材料においては、以下のようにして石英ガラス同士が気密に封着される。
例えば石英ガラス封着用材料を粉砕して粉末状とし、この粉末をエタノールなどの溶媒中に分散させることにより、石英ガラス封着用材料が含有されてなるペーストを調製する。そして、このペーストを封着すべき石英ガラスの間に塗布し、当該石英ガラスの融点以下の温度、例えば1700℃に加熱することによって、石英ガラス封着用材料を溶融して冷却することにより、石英ガラス同士が気密に封着される。
石英ガラス封着用材料を加熱する方法としては、水素−酸素炎による方法、例えば波長1〜3μmの光を照射することより加熱する光加熱法などを利用することができる。これらの中では、石英ガラス中に水分子などの不純物が混入されることがない点で、光加熱法を好ましく利用することができる。
【0017】
上記のような石英ガラス封着用材料によれば、その線膨張係数が石英ガラスの線膨張係数に近似しているため、封着する際にクラックなどが生じることがなく、その結果、石英ガラスの気密封着を確実に達成することができる。
また、石英ガラスの融点よりも低い温度で軟化するため、石英ガラスを変形することなしに、当該石英ガラスを封着することができ、その結果、寸法精度が高くて所要の形状を有する石英ガラス製品が得られる。
また、結晶化材料ではないため、封着時に厳密な温度管理が不要であり、しかも、短い時間で封着作業を行うことができ、その結果、石英ガラスの封着作業において高い時間的効率が得られると共に、封着作業を容易に行うことができ、しかも、水素−酸素炎による水分子などの不純物が石英ガラス中に混入されることを防止または抑制することができる。
【0018】
また、波長0.9〜3μmの光を吸収するものである場合には、封着作業における加熱時に生ずる輻射エネルギーを有効に利用することでき、従って、当該封着用材料のみを高い効率で加熱することができるため、封着作業時間の短縮を図ることができる。特に、光加熱法によって封着作業を行う場合に極めて有効である。
【0019】
また、特定の金属元素が含有されることにより、高い効率で光を吸収し、しかも、光の吸収により着色した封着用材料が得られるため、封着作業時に目視により封着用材料を確認することができ、その結果、封着用材料のみを極めて高い効率で加熱することができる。
【0020】
〈ランプ〉
図1は、本発明のランプを例えばキセノン放電ランプとして構成した場合の第1の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。この放電ランプ10において、バルブ11は、放電空間を囲繞する大略楕円球状の発光管部12と、この発光管部12の両端から外方に伸びるよう一体に連接された直管状の封止管部13とを有してなり、このバルブ11は石英ガラスにより構成されている。
バルブ11の封止管部13の各々には、当該封止管部13の内径より小さい外径を有する円柱状の封止部材15が挿入されており、封止部材15の外端部分は、バルブ11の封止管部13から外部に露出した状態とされている。
そして、バルブ11の封止管部13の内面と封止部材15の外面とが、前述の石英ガラス封着用材料よりなるフリット20によって気密に封着され、更に、封止管部13の外端にビード部21が形成され、これにより、封止構造が形成されている。
【0021】
封止部材15の各々には、電極棒25が当該封止部材15をその軸方向に貫通して伸びるよう設けられており、電極棒25の各々の先端は、バルブ11の発光管部12内に位置され、当該電極棒25の各々の先端には、陽極26および陰極27が互いに対向するよう配置されている。
また、バルブ11内には、キセノンガスが封入されている。
【0022】
この例における封止部材15は、傾斜機能材料により構成されている。具体的には、シリカよりなる絶縁性無機物質成分と、導電性無機物質成分との焼結体とよりなり、一端部から他端部に向かうに従って導電性無機物質成分の濃度が傾斜的に増大し、それによって導電性無機物質成分の濃度が低くて絶縁性材料としての性質を有する絶縁性部分と、導電性無機物質材料の濃度が高くて導電体としての性質を有する導電性部分とを共に有する一体の材料により、封止部材15が構成されている。ここで、導電性無機物質成分としては、モリブデン、ニッケル、タングステン、タンタル、クロム、白金、亜鉛等の金属、ケイ化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタルなどを用いることができる。
【0023】
上記の放電ランプ10の仕様の一例を挙げると、以下のとおりである。
〔バルブ11〕
発光管部12:軸方向の長さ71mm,最大外径52mm(肉厚3mm),
封止管部13:軸方向の長さ22mm,外径17mm(肉厚2.8mm)
〔封止部材15〕
軸方向の長さ50mm,外径16mm
〔電極棒25〕
軸方向の長さ100mm,外径4mm
〔陽極26〕
外径15mm
〔陰極27〕
外径6mm
〔ランプ特性〕
定格ランプ電流:70A,定格ランプ電圧:24V,ランプ電力:1.5kW
【0024】
以上のような放電ランプ10においては、例えば以下のようにしてバルブ11の封止管部13と封止部材15とが気密に封着されて封止構造が形成される。
先ず、排気管部(図示省略)を有するバルブ11を用意すると共に、封止部材15と、この封止部材15を軸方向に貫通して伸びる電極棒25と、この電極棒25の先端に設けられた電極(陽極26および陰極27)とよりなる一対の組立体を作製する。
次いで、この組立体の各々をバルブ11の封止管部13の端部から挿入して封止部材15の絶縁性部分が封止管部13内に位置するよう配置すると共に、当該バルブ11の封止管部13の外端に、前述の石英ガラス封着用材料の粉末が分散されてなるペーストを塗布する。
そして、例えばバルブ11内に不活性ガスを流しながら、水素−酸素ガスバーナーなどの加熱手段によって石英ガラス封着用材料を溶融させて封止管部13の内面と封止部材15の外面との間に進入させることにより、当該封止管部13と封止部材15と気密に封着し、以て封止構造が形成される。
その後、バルブ11の排気管から内部のガスを排気すると共にキセノンガスを封入し、当該排気管を加熱溶融して密閉することにより、図1に示すような放電ランプ10が製造される。
【0025】
このような構成の放電ランプ10によれば、バルブ11の封止管部13の内面と封止部材15の外面とが、上記の石英ガラス封着用材料よりなるフリット20によって封着されているため、以下のような効果が得られる。
(1)フリット20を構成する封着用材料が、バルブ11を構成する石英ガラスの融点よりも低い温度で軟化するため、バルブ11を変形することなしに、バルブ11の封止管部13と封止部材15とを封着することができ、その結果、寸法精度が高くて所期の形状を有する放電ランプが得られる。
(2)フリット20を構成する封着用材料の線膨張係数が、バルブ11を構成する石英ガラスの線膨張係数に近似しているため、バルブ11の封止管部13と封止部材15とを封着する際に、フリット20にクラックなどが生じることがなく、その結果、高い気密性を有する封止構造が得られる。
(3)フリット20を構成する封着用材料は、結晶化材料ではないため、バルブ11の封止管部13と封止部材15とを封着する際には厳密な温度管理が不要であり、しかも、短い時間で封着作業を行うことができ、その結果、石英ガラスの封着作業において高い時間的効率が得られると共に、封着作業を容易に行うことができる。しかも、短い加熱時間でバルブ11の封止管部13と封止部材15とを封着することができるため、水素−酸素炎による水分子などの不純物が石英ガラス中に混入されることを防止または抑制することができる。
【0026】
図2は、本発明のランプを高圧水銀放電ランプとして構成した場合の第2の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。放電ランプ30において、バルブ31は、放電空間を囲繞する大略楕円球状の発光管部32と、この発光管部32の両端から外方に伸びるよう一体に連接された直管状の封止管部33とを有してなり、このバルブ31は石英ガラスにより構成されている。
バルブ31の封止管部33の各々の外端には、傾斜機能材料よりなる円柱状の封止部材35が設けられている。具体的に説明すると、封止部材35は、一端側に絶縁性部分を有すると共に、他端側に導電性部分を有してなり、その一端面には、バルブ31の封止管部33の外径より大きい外径を有する凹所36が形成されており、この凹所36内にバルブ31の封止管部33の各々の外端部が受容され、この状態で、封止管部33と封止部材35とが前述の石英ガラス封着用材料よりなるフリット40によって封着され、これにより、封止構造が形成されている。
また、バルブ31内には、バッファーガスとしての希ガスおよび水銀が封入されている。
【0027】
封止部材35の各々には、内部リード棒45が、バルブ31の封止管部33内において当該封止部材35の一端から軸方向に伸びるよう保持されている。具体的に説明すると、封止部材35には、その一端側の凹所36の底面から軸方向に有底孔37が形成されており、この有底孔37内に、内部リード棒45の基端部が挿入されて固定されている。
この内部リード棒45の各々には、電極46が設けられている。具体的に説明すると、電極46は、電極棒47およびその先端に巻き付けられたコイル48よりなり、その基端が内部リード棒45に保持され、その先端がバルブ31の発光管部32内に位置されて互いに対向するよう配置されている。
また、封止部材35の他端部には、その端面から軸方向に有底孔38が形成されており、この有底孔38内に、外方に伸びる外部リード棒49が挿入されて固定されている。
【0028】
上記の放電ランプ30の仕様の一例を挙げると、以下のとおりである。
〔バルブ31〕
発光管部32:軸方向の長さ10mm,最大外径10mm(肉厚2.4mm),
封止管部33:軸方向の長さ15mm,外径7.5mm(肉厚3.5mm)〔封止部材35〕
軸方向の長さ15mm,外径3mm
〔電極46〕
電極棒47の長さ5mm,外径0.6mm
〔ランプ特性〕
定格ランプ電流:2A,定格ランプ電圧:50V,ランプ電力:100W
【0029】
以上のような放電ランプ30においては、例えば以下のようにしてバルブ31の封止管部33と封止部材35とが気密に封着されて封止構造が形成される。
先ず、バルブ31を用意すると共に、封止部材35と、封止部材35の一端側の有底孔37に挿入されて固定された内部リード棒45と、この内部リード棒45の先端に設けられた電極46と、封止部材35の他端側の有底孔38に挿入されて固定された外部リード棒49とよりなる組立体を作製する。
次いで、この組立体の各々を、バルブ31の封止管部33に対してその端部が封止部材35の凹所36に受容された状態に配置すると共に、当該バルブ31の封止管部13の端部に、前述の石英ガラス封着用材料の粉末が分散されてなるペーストを塗布する。
そして、波長1〜3μmの光を照射する光加熱装置によって石英ガラス封着用材料を溶融させることにより、バルブ31の封止管部33と封止部材35とを固着させ、その後、封止管部33と封止部材35との間隙から水銀を導入すると共に、バルブ31内のガスを排気し、更に石英ガラス封着用材料を溶融させることにより、封止管部33と封止部材35とを気密に封着し、以て封止構造が形成される。
【0030】
このような構成の放電ランプ30によれば、バルブ31の封止管部33の端部と封止部材35とが、上記の石英ガラス封着用材料よりなるフリット40によって封着されているため、図1に示す放電ランプ10と同様の効果が得られる。
特に、加熱手段として光加熱装置を利用することにより、バルブ31を構成する石英ガラス中に水分子などの不純物が混入されることを確実に防止することができる。
【0031】
図3は、本発明のランプを白熱ランプとして実施した場合の第3の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。この白熱ランプ50において、バルブ51は、直管状の発光管部52と、この発光管部52の両端から外方に伸びるよう一体に連接された直管状の封止管部53とを有してなり、このバルブ51は石英ガラスにより構成されている。
バルブ51の封止管部53の各々には、当該封止管部53の内径より小さい外形を有する円柱状の傾斜機能材料よりなる封止部材55が挿入されており、封止部材55の外端部分は、バルブ51の封止管部53から外部に露出した状態とされている。
そして、バルブ51の封止管部53の内面と封止部材55の外面とが、前述の石英ガラス封着用材料よりなるフリット60によって気密に封着され、更に、封止管部53の外端にビード部61が形成され、これにより、封止構造が形成されている。
【0032】
封止部材55の各々には、内部リード棒65が、バルブ51の発光管部53内において当該封止部材55の一端から軸方向に伸びるよう保持されている。具体的に説明すると、封止部材55の一端部には、その端面から軸方向に有底孔56が形成されており、この有底孔56内に、内部リード棒65の基端部が挿入されて固定されている。
一方、封止部材55の他端部には、その端面から軸方向に有底孔57が形成されており、この有底孔57内に、外方に伸びる外部リード棒66が挿入されて固定されており、この外部リード棒66の外端には、筒状の連結部材67を介して金属接点68が連結されている。
また、バルブ51の発光管部52内には、フィラメントコイル69が当該発光管部52の軸方向に沿って配置されており、このフィラメントコイル69の両端は、内部リード棒65の各々の先端に保持されている。
【0033】
上記の放電ランプ30の仕様の一例を挙げると、以下のとおりである。
〔バルブ51〕
発光管部52:軸方向の長さ127mm,外径10mm(肉厚2mm),
封止管部53:軸方向の長さ15mm,外径12.2mm(肉厚2.3mm)
〔封止部材55〕
軸方向の長さ23mm,外径7mm
〔ランプ特性〕
ランプ電力:500W
【0034】
以上のような白熱ランプ50においては、例えば以下のようにしてバルブ51の封止管部53と封止部材55とが気密に封着されて封止構造が形成される。
先ず、バルブ51を用意すると共に、封止部材55と、この封止部材55の一端側の有底孔56に挿入されて固定された内部リード棒65と、この内部リード棒65の先端に保持されたフィラメントコイル69と、封止部材55の他端側の有底孔57に挿入されて固定された外部リード棒66とよりなる組立体を作製する。
次いで、この組立体の各々を、バルブ51内に封止部材55が封止管部53内に位置されるよう配置すると共に、当該バルブ51の封止管部53の端部に、前述の石英ガラス封着用材料の粉末が分散されてなるペーストを塗布する。
そして、ガスバーナーなどの加熱手段によって石英ガラス封着用材料を溶融させることにより、バルブ51の封止管部53と封止部材55とを固着させ、その後、封止管部53と封止部材55との間隙からバルブ51内のガスを排気し、更に石英ガラス封着用材料を溶融させることにより、封止管部53と封止部材55とを気密に封着し、以て封止構造が形成される。
【0035】
このような構成の白熱ランプ50によれば、バルブ51の封止管部53の内面と封止部材55の外面とが、上記の石英ガラス封着用材料よりなるフリット60によって封着されているため、図1に示す放電ランプ10と同様の効果が得られる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の石英ガラス封着用材料の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〜7および比較例1〉
下記表1に示す組成の封着用材料を製造した。これらの封着用材料の100〜500℃における平均線膨張係数、軟化温度および1700℃における石英ガラスとの接触角を表1に示す。
【0037】
そして、封着用材料の各々について、以下のような試験を行った。
封着用材料を乳鉢で粉砕して粉末し、この粉末をエタノールに添加した後、ボールミルによって混合することにより、封着用材料の粉末が分散されてなるペーストを調製した。
図4に示すように、一端が封止されたキャップ状の石英ガラスよりなる第1の管材71と、この第1の管材71の内径より小さい外径を有する直管状の石英ガラスよりなる第2の管材72とを用意し、第2の管材72の一端部分の外面に、調製したペーストを塗布した後、当該第2の管材72の一端部分を第1の管材71内に挿入し、この状態で、1600℃から1650℃の温度で加熱して封着用材料を溶融することにより、第1の管材71と第2の管材72とが封着用材料73によって封着されてなる試験片70を作製した。
以上において、第1の管材71は、外径D1が8mm、内径D2が5.9mmであり、第2の管材72は、外径d1が5.8mm、内径d2が2.3mmであり、封着用材料73による第1の管材71と第2の管材72との接合部分74の長さLは10mmである。
また、第1の管材71および第2の管材72を構成する石英ガラスの線膨張係数は5〜7×10-7(1/K)である。
【0038】
〔クラックの有無〕
試験片70における接合部分74を顕微鏡で観察し、クラックの発生の有無を調べた。
〔リーク試験〕
試験片70内のガスをその第2の管材72の他端から真空ポンプによって排気することにより、当該試験片70の内部の圧力を1×10-4Paに減圧し、この状態で、試験片70の外面にエタノールを塗布し、接合部分74におけるリークの有無を調べた。
〔耐圧試験〕
試験片70内にエタノールを導入し、コンプレッサーにより内部の圧力を上昇させ、試験片70の破壊圧力を測定し、理論耐圧の80%以上のものを良好、80%未満のものを不良として評価した。
以上、結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜7に係る封着用材料によれば、その線膨張係数が石英ガラスの線膨張係数に近似しているため、接合部分にクラックが生じることがなく、石英ガラス同士を気密性および耐圧性が高い状態に封着することができる。
これに対し、比較例1に係る封着用材料においては、線膨張係数が石英ガラスの線膨張係数より相当に高いものであるため、接合部分にクラックが生じて十分な気密性が得られないものであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の石英ガラス封着用材料によれば、その線膨張係数が石英ガラスの線膨張係数に近似しているため、封着する際にクラックなどが生じることがなく、その結果、石英ガラスの気密封着を確実に達成することができる。
また、石英ガラスの融点よりも低い温度で軟化するため、石英ガラスを変形することなしに、当該石英ガラスを封着することができる。
また、結晶化材料ではないため、封着時に高い精度の温度管理が不要で、しかも、短い時間で封着作業を行うことができ、その結果、石英ガラスの封着作業において高い時間的効率が得られると共に、水素−酸素炎による水分子などの不純物が石英ガラス中に混入されることを防止または抑制することができる。
【0042】
また、封着用材料が波長0.9〜3μmの光を吸収するものである場合には、加熱時に生ずる輻射エネルギーを有効に利用することでき、従って、当該封着用材料のみを高い効率で加熱することができるため、封着作業時間の短縮を図ることができる。特に、光加熱法によって封着作業を行う場合に極めて有効である。
更に、遷移金属元素および/または希土類元素を含有させることにより、高い効率で光を吸収し、しかも、光の吸収により着色した封着用材料が得られるため、封着作業時に目視により封着用材料を確認することができ、その結果、封着用材料のみを一層高い効率で加熱することができる。
【0043】
本発明のランプによれば、バルブの封止管部と封止部材とが上記の石英ガラス封着用材料によって封着されているため、寸法精度が高くて所期の形状が得られると共に、クラックなどが生じることがなくて高い気密性を有する封止構造が得られ、しかも、石英ガラス中に水分子などの不純物が混入されることが防止または抑制されて長い使用寿命が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のランプをキセノン放電ランプとして実施した場合の第1の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。
【図2】本発明のランプを高圧水銀放電ランプとして実施した場合の第2の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。
【図3】本発明のランプを白熱ランプとして実施した場合の第3の実施の形態における構成を示す説明用断面図である。
【図4】実施例において作製した試験片を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
10 放電ランプ 11 バルブ
12 発光管部 13 封止管部
15 封止部材 20 フリット
21 ビード部 25 電極棒
26 陽極 27 陰極
30 放電ランプ 31 バルブ
32 発光管部 33 封止管部
35 封止部材 36 凹所
37,38 有底孔 40 フリット
45 内部リード棒 46 電極
47 電極棒 48 コイル
49 外部リード棒 50 白熱ランプ
51 バルブ 52 発光管部
53 封止管部 55 封止部材
56,57 有底孔 60 フリット
61 ビード部 65 内部リード棒
66 外部リード棒 67 連結部材
68 金属接点
69 フィラメントコイル
70 試験片 71 第1の管材
72 第2の管材 73 封着用材料
74 接合部分
Claims (4)
- 二酸化珪素を77〜98.4モル%、酸化亜鉛を0〜15モル%および三酸化二硼素を1.6〜15モル%の割合で含有してなり、封着される石英ガラスの線膨張係数をA(1/K)とするとき、A〜A+6×10-7(1/K)の範囲の線膨張係数を有し、かつ、石英ガラスの融点より低い温度で軟化する性質を有することを特徴とする石英ガラス封着用材料。
- 波長0.9〜3μmの光を吸収するものであることを特徴とする請求項1に記載の石英ガラス封着用材料。
- 遷移金属元素および/または希土類金属元素の中から選択された少なくとも1種以上の元素を含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石英ガラス封着用材料。
- 発光管部およびこの発光管部に連設された封止管部を有する石英ガラス製のバルブと、このバルブの封止管部に設けられた封止部材とを具えてなるランプであって、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の石英ガラス封着用材料によって、前記バルブの封止管部と前記封止部材とが封着されていることを特徴とするランプ。
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