JP3772209B2 - カルボン酸の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可塑剤、潤滑剤、伝熱媒体、誘電媒体、繊維、共重合体、塗料樹脂、界面活性剤、防カビ薬、殺虫剤、接着剤等として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質であるポリエステル及びポリアミドの合成における重要な中間体であるカルボン酸の製造方法に関し、更に詳しくは、脂環式ケトンと過酸化水素水溶液の反応によるカルボン酸の新規な製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ケトン類を酸化してカルボン酸を製造する方法としては、硝酸 (Chem. Ber., 1894, 27, 1542-1546)が酸化剤として用いられているが、この手法は反応中の爆発の危険性が高く、また反応後には有毒ガスである窒素酸化物が副生する。過マンガン酸カリウムを酸化剤とする反応(J. Chem. Soc., 1956, 4232-4237)では、反応後に硫酸を用いた後処理が必要であり、操作が危険で煩雑である。硫酸又は過塩素酸存在下、クロム酸(Helv. Chimica Acta., 1948, 31, 422-426、J. Am. Chem. Soc., 1967, 89, 6691-6695)を、または超酸化カリウム(Tetrahedron Lett., 1978, 3689-3690)を酸化剤として用いる方法が知られているが、これらの反応では酸化剤の腐食性、酸又はベンゼン溶媒の使用といった問題点が挙げられる。上記の酸化剤を用いてケトン類からカルボン酸を製造するプロセスは、環境に与える負荷が大きく、工業的に優れた方法とは言い難い。
【0003】
これに対して、酸素や過酸化水素は、安価で腐食性がなく、反応後の副生物は皆無又は無害な水であるために環境負荷が小さく、工業的に利用するのに優れた酸化剤ということができる。
【0004】
酸素を酸化剤としてケトン類からカルボン酸を製造する方法は既に知られているが(Chem. Ber., 1892, 25, 1271-1277、Chem. Ber., 1892, 25, 2095-2102、J. Chem. Soc., 1909, 95, 166-171、J. Org. Chem., 1965, 30, 3768-3771)、これらの方法では基質に対して大過剰の強塩基が必要である。また、マンガンやコバルト塩等の金属触媒存在下、酸素を酸化剤としてケトン類からのカルボン酸の生成が報告されている(USP2005183号明細書、USP2316543号明細書、特開平13-213841、WOP2001-87815号明細書) が、これらの方法では溶媒量の酢酸を用いないと、カルボン酸が得られない。さらに、鉄又はバナジウム触媒を用いて酸素酸化を行った場合(J. Org. Chem., 1983, 48, 1133-1135、J. Org. Chem., 1993, 58, 5663-5665)、ケトンのα位に電子供与性置換基が結合していないと転化率が低い。さらに鉄触媒を用いる反応ではベンゼン溶媒が必要である。
【0005】
一方、過酸化水素を酸化剤としてカルボン酸を得る方法としては、周期律表第3族や13族の金属化合物を触媒量用いる方法が提案されているが(WOP2000−53593明細書)、この方法で得られる生成物は、カルボン酸ではなくエステル又はラクトン化合物である。
【0006】
また、極性溶媒を用い、シクロヘキサノンと過酸化水素との均一溶液を予め調製しておき、この均一溶液を周期律表第6族の金属酸化物等の触媒の存在下で反応させてアジピン酸を製造する方法が提案されている(特開昭54−135720号公報)。
しかしながら、この方法によるアジピン酸の収率はせいぜい50%程度と推定され、工業的なカルボン酸の製造方法としては未だ充分なものとはいえず、また過酸化水素水溶液にシクロヘキサノンを溶解させて均一溶液とするために、酢酸やt−ブチルアルコールなどの極性溶媒の使用が不可欠とされていることから、目的生成物であるアジピン酸を単離する際にその除去手段が必要となり、反応操作や装置が煩雑となる上、極性有機溶媒自身の環境及び人体への影響・毒性も指摘されるに至っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであって、温和な反応条件下で、脂環式ケトン類からカルボン酸を高収率で得ることができると共に反応操作が簡便で反応終了後の溶媒除去操作を不要とし、かつ環境や人体への影響・毒性がきわめて小さい、脂環式ケトン類と過酸化水素水溶液との反応による安全かつ簡便で効率的なカルボン酸の製造方法を提供することをその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、脂環式ケトンの極性溶媒溶液と過酸化水素水溶液との均一溶液系で酸化反応を行う従来の反応方法に代えて、過酸化水素水溶液と脂環式ケトン油性溶液との不均一溶液系を用いる反応を選定すると、従来の常識的な技術的知見とは異なり、対応するカルボン酸が高収率で安全かつ簡便に製造し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)脂環式ケトン油性溶液と過酸化水素水溶液とを、クロム、モリブデン及びタングステンから選ばれた少なくとも一種の金属化合物(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)を含む触媒の存在下、不均一溶液系で反応させることを特徴とするカルボン酸の製造法
(2)脂環式ケトンが、下記一般式(1)
【化2】
Figure 0003772209
(式中、nは1〜18の整数を示し、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基またはアシロキシ基を示し、同一でも相異なっていてもよい。また、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R2とR3、R2とR4又はR3とR4は互いに結合して炭素環を形成していてもよく、更にこれらの環は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載のカルボン酸の製造法。
(3)カルボン酸が、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸又はスベリン酸であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のカルボン酸の製造法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る過酸化水素を用いる脂環式ケトンの酸化反応によるカルボン酸の製造方法は、該酸化反応を、クロム、モリブデン及びタングステンから選ばれた少なくとも1種の金属化合物(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)を含む触媒の存在下、過酸化水素水溶液と脂環式ケトン油性溶液との不均一溶液中で行うことを特徴としている。
【0011】
従来、液液反応においては、原料同士、あるいは原料と酸化剤、反応促進剤などの反応試薬とが相溶性を持たない場合には、反応を円滑に進めるために原料と反応試薬等とが相互に溶解する溶媒を用いて、両者の均一な溶液を予め調製し、しかる後反応させるプロセスが選択率、収率などの点で有利であるとされていた。
【0012】
脂環式ケトンと過酸化水素との反応によるカルボン酸の合成反応においても、前記したように、この発想が踏襲され、特開昭54−135720号公報記載の発明においても、酢酸やtーブチルアルコールのような極性溶媒を用い、シクロヘキサノンと過酸化水素との均一溶液を予め調製しておき、この均一溶液を周期律表第6族の金属酸化物等の触媒の存在下で反応させてアジピン酸を製造するプロセスが採られている。
【0013】
本発明者らは、かかる酸化反応を更に効率的にかつ環境・人体の保護の観点から、種々様々な研究・実験、理論的考察を模索した結果、この過酸化水素を酸化剤とする脂環式ケトンの酸化反応は、従来の技術常識とは異なり、均一溶液系ではなく、脂環式ケトン油性溶液と過酸化水素水溶液との不均一溶液系で行なった場合には、カルボン酸の収率が著しく向上し、しかも環境負荷の軽減に著しく貢献することを知見した。このような知見は従来の技術常識では到底予期できるものではなく、本発明者の弛まぬ実験研究の積み重ねによってはじめて見い出された特異的な現象である。
本発明の不均一溶液系での酸化反応が、カルボン酸の大幅な収率アップにつながる理論的解明は現時点では明らかとなっていないが、油性溶液中では触媒活性種の溶媒和による活性低下が起こらない、或いは何らかの理由によって水―油相界面で反応が大幅に促進される等に起因するところが多いものと推定される。
【0014】
本発明方法で用いる原料としては、従来公知の一般的な脂環式ケトンを使用することができ、特に制限されるものではないが、下記一般式(1)で表される脂環式ケトンが好ましく用いられる。
【化3】
Figure 0003772209
(式中、nは1〜18の整数を示し、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基またはアシロキシ基を示し、同一でも相異なっていてもよい。また、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R2とR3、R2とR4又はR3とR4は互いに結合して炭素環を形成していてもよく、これらの環は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0015】
一般式(I)で表される脂環式ケトンの具体例としては、例えば、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロトリデカノン、シクロテトラデカノン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、シクロヘプタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロノナデカノン、シクロイコサノン、シクロヘニコサノン、1−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、1,2−ジメチルシクロペンタノン、1,3−ジメチルシクロペンタノン、1,4−ジメチルシクロペンタノン、2,3−ジメチルシクロペンタノン、1,2,3−トリメチルシクロペンタノン、1,2,4−トリメチルシクロペンタノン、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタノン、1−メチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサノン、1,3−ジメチルシクロヘキサノン、1,4−ジメチルシクロヘキサノン、1,5−ジメチルシクロヘキサノン、2,3−ジメチルシクロヘキサノン、2,4−ジメチルシクロヘキサノン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサノン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサノン、1,2,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,3,4−トリメチルシクロヘキサノン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,3,4−トリメチルシクロヘキサノン、1,2,3,4−テトラメチルシクロヘキサノン、1,2,3,5−テトラメチルシクロヘキサノン、1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサノン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロヘキサノン、1−メチルシクロヘプタノン、1−メチルシクロオクタノン、1−メチルシクロノナノン、1−メチルシクロデカノン、1−メチルシクロウンデカノン、1−メチルシクロドデカノン、1−メチルシクロトリデカノン、1−メチルシクロテトラデカノン、1−メチルシクロペンタデカノン、1−メチルシクロヘキサデカノン、1−メチルシクロヘプタデカノン、1−メチルシクロオクタデカノン、1−メチルシクロノナデカノン、1−メチルシクロイコサノン、1−メチルシクロヘニコサノン、1−フェニルシクロヘキサノン、1−ベンジルシクロヘキサノン、1、2-シクロヘキサンジオン、1−ヒドロキシシクロヘキサノン、1-クロロシクロペンタノン、1-ブロモシクロペンタノン、1−クロロシクロヘキサノン、1−ブロモシクロヘキサノン、シクロペンタノン-1−カルボン酸、シクロヘキサノン−1−カルボン酸、1−アセチルシクロペンタノン、1−アセチルシクロヘキサノン等が挙げられる。本発明で好ましく使用されるケトンは、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン等である。
【0016】
本発明においては、上記したように、温和な反応条件下で、脂環式ケトンからカルボン酸を高収率で得ることができると共に反応操作が簡便で反応終了後の溶媒除去操作を不要とし、かつ環境や人体への影響・毒性がきわめて小さい、脂環式ケトン類と過酸化水素水溶液との反応による安全かつ簡便で効率的なカルボン酸の製造方法を提供することをその目的としていることから、上記酸化反応を可能な限り有機溶媒を使用することなく不均一溶液系で行うことが極めて重要となる。したがって、上記した脂環式ケトンは、酸化剤である過酸化水素水溶液相とは分相となるようにできればそれ自体の油性溶液として用いることが必要である。
脂環式ケトンの油性溶液としては、脂環式ケトンそれ自体の油性溶液の他、水と相溶のない炭化水素などの非極性溶媒中に溶解させた脂環式ケトンの油性溶媒溶液が挙げられるが、前記した環境負荷の軽減や溶媒除去操作の観点からみて、脂環式ケトンそれ自体の油性溶液を用いることが最も望ましい。
【0017】
本発明方法で用いる酸化剤は、過酸化水素であり、実施に当たってはその水溶液の形態で用いられる。過酸化水素水溶液の濃度は、その濃度に応じて脂環式ケトンの酸化反応は生起するので、特に制限はないが、一般的には1〜80重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲から選ばれる。
【0018】
また、過酸化水素水溶液の使用量にも制限はないが、一般的には脂環式ケトンに対して3.0〜30.0当量、好ましくは3.3〜8.0当量の範囲から選ばれる。
【0019】
本発明方法で用いる触媒は、クロム、モリブデン及びタングステンから選ばれた少なくとも1種の金属化合物(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)である。
【0020】
具体的には、クロム化合物としては、水中でクロム酸アニオンを生成するクロム化合物、例えばクロム酸、三酸化クロム、三硫化クロム、六塩化クロム、リンクロム酸、クロム酸アンモニウム、クロム酸カリウム二水和物、クロム酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、クロム酸、三酸化クロム、リンクロム酸が好ましい。
【0021】
モリブデン化合物としては、水中でモリブデン酸アニオンを生成する化合物、例えばモリブデン酸、三酸化モリブデン、三硫化モリブデン、六塩化モリブデン、リンモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム二水和物、モリブデン酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、モリブデン酸、三酸化モリブデン、リンモリブデン酸が好ましい。
【0022】
タングステン化合物としては、水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物であり、例えばタングステン酸、三酸化タングステン(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)、三硫化タングステン、六塩化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、タングステン酸、三酸化タングステン(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)、リンタングステン酸が好ましい。
【0023】
これらの周期律表第6族金属化合物は単独で使用しても、二種以上を併用しても良い。また、その使用量に特に制限はないが、通常、原料の脂環式ケトンに対して0.0001〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。
【0024】
本発明の製造方法で用いる触媒は、前記した周期律表第6族金属化合物が主体とするものであるが、必要に応じ、リン酸等の補助触媒等を使用することも可能である。
【0025】
本発明方法の反応条件には、特に制約ないが、通常、反応は30〜120℃、好ましくは50〜100℃の範囲で行われる。反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでも良いが、常圧で行うことが好ましい。
【0026】
また、本発明の製造方法においては、反応系中で過酸化水素水溶液と脂環式ケトンとが不均一溶液を形成する方法であれば、原料、酸化剤及び触媒の添加順序や反応態様に特に制限はないが、通常、触媒を混合した過酸化水素水溶液に脂環式ケトンを添加し、あらかじめ3者の不均一混合物を形成しておき、ついでこれらを撹拌しながら反応させる方法が採られる。
【0027】
本発明の製造方法においては、前記した特有な酸化反応プロセスを採ることにより、脂環式ケトンからこれに対応するグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸又はスベリン酸などのカルボン酸を高収率で得ることができる。
【0028】
具体的には、前記一般式(1)の脂環式ケトンにおいて、R4が水素原子、ヒドロキシ基又はハロゲン原子であるケトンからは、下記一般式(2)
【化4】
Figure 0003772209
(式中、n、R1、R2及びR3は前記と同じ意味を表す。)
で表されるジカルボン酸を得ることができる。
【0029】
また、前記一般式(1)の脂環式ケトンにおいて、R4が水素原子、ヒドロキシ基又はハロゲン原子以外の基である場合には、下記一般式(3)
【化5】
Figure 0003772209
(式中、n、R1、R2及びR3は前記と同じ意味を表す。R4はカルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基またはアシロキシ基を示し、同一でも相異なっていてもよい。また、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R2とR3、R2とR4又はR3とR4は互いに結合して炭素環を形成していてもよく、更にこれらの環は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表されるケトカルボン酸を得ることができる。
【0030】
本発明方法で得られるカルボン酸の具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ブラシル酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、ヘプタデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ノナデカンジオン酸、イコサンジオン酸、ヘニコサンジオン酸、5−オキソヘキサン酸、2−メチルグルタル酸、4−メチル−5−オキソヘキサン酸、3−メチル−5−オキソヘキサン酸、2−メチル−5−オキソヘキサン酸、2,3−ジメチルグルタル酸、3,4−ジメチル−5−オキソヘキサン酸、2,4−ジメチル−5−オキソヘキサン酸、2,3−ジメチル−5−オキソヘキサン酸、2,3,4−トリメチル−5−オキソヘキサン酸、6−オキソヘプタン酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、5−メチル−6−オキソヘプタン酸、4−メチル−6−オキソヘプタン酸、3−メチル−6−オキソヘプタン酸、2−メチル−6−オキソヘプタン酸、2,3−ジメチルアジピン酸、2,4−ジメチルアジピン酸、4,5−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、3,5−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、2,5−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、2,3−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、3,4−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、2,4−ジメチル−6−オキソヘプタン酸、2,3,4−トリメチルアジピン酸、3,4,5−トリメチル−6−オキソヘプタン酸、2,4,5−トリメチル−6−オキソヘプタン酸、2,3,4−トリメチル−6−オキソヘプタン酸、2,3,5−トリメチル−6−オキソヘプタン酸、2,3,4,5−テトラメチル−6−オキソヘプタン酸、7−オキソオクタン酸、8−オキソノナン酸、9−オキソデカン酸、10−オキソウンデカン酸、11−オキソドデカン酸、12−オキソトリデカン酸、13−オキソテトラデカン酸、14−オキソペンタデカン酸、15−オキソヘキサデカン酸、16−オキソヘプタデカン酸、17−オキソオクタデカン酸、18−オキソノナデカン酸、19−オキソイコサン酸、20−オキソヘニコサン酸、21−オキソドコサン酸、6−フェニル−6−オキソヘキサン酸、7−フェニル−6−オキソヘプタン酸等が挙げられる。この中でも、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等が好ましく合成される。
【0031】
本発明方法においては、前記反応終了後、生成したカルボン酸を含む混合液を濃縮後、再結晶や蒸留、昇華等の通常の方法によって分離精製することより、高収率、高選択率で目的とするカルボン酸を得ることができる。
【0032】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例1
H2WO4 (25.0 mg, 0.100 mmol)、30%過酸化水素水溶液(3.7 mL, 33 mmol)及びシクロペンタノン(1.0 mL, 10 mmol)を混合し、90℃で20時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却した。グルタル酸の収率を、トリメチルシリルジアゾメタンでメチル化した後にビフェニルを内部標準としてGLCで決定したところ、98%であった。
【0034】
実施例2
H2WO4 (25.0 mg, 0.100 mmol)、30%過酸化水素水溶液(5.1 mL, 44 mmol) 及びシクロヘキサノン(1.0 mL, 10 mmol)を混合し、90 ℃で20時間撹拌した。実施例1と同様の操作を行いGLCによる定量を行ったところ、アジピン酸の収率は99%であった。
【0035】
実施例3
H2WO4 (2.50 g, 0.010 mol)、30%過酸化水素水溶液(370 mL, 3.3 mol) 及びシクロヘキサノン(100 mL, 0.966 mol)を混合し、90℃で20時間撹拌した。0℃ にて一晩静置したところ、白色結晶が析出した。得られた結晶を減圧ろ過によりろ別し、冷水(20 mL)で洗浄した。ヨウ化カリウムデンプン紙を用いてろ液が過酸化物反応を示さないことを確認し、真空乾燥を行った。アジピン酸の白色結晶が92% (130 g, 0.899 mol)の収率で得られた。
【0036】
実施例4
H2WO4 (25.0 mg, 0.100 mmol)、30%過酸化水素水溶液(3.7 mL, 33 mmol)及びシクロヘプタノン(1.2 mL, 10 mmol)を混合し、90 ℃で20時間撹拌した。実施例1と同様の操作を行いGLCによる定量を行ったところ、ピメリン酸の収率は81%であった。
【0037】
実施例5
H2WO4 (25.0 mg, 0.100 mmol)、30%過酸化水素水溶液(3.7 mL, 33 mmol)及びシクロオクタノン(1.3 mL, 10 mmol)を混合し、90 ℃で20時間撹拌した。実施例1と同様の操作を行いGLCによる定量を行ったところ、スベリン酸の収率は85%であった。
【0038】
比較例1
実施例2において、シクロヘキサノンに代えて、t−ブチルアルコール(3 mL)に溶かしたシクロヘキサノン(1.0 mL, 10 mmol)溶液を用い、均一溶液中での酸化反応を実施例2に準じた操作で行い、GLCによる定量を行ったところ、アジピン酸の収率は52%であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明方法によれば、可塑剤、潤滑剤、伝熱媒体、誘電媒体、繊維、共重合体、塗料、界面活性剤、防カビ薬、殺虫剤、接着剤等として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質であるジエステル、ポリエステル及びポリアミドの合成における重要な中間体である、グルタル酸、アジピン酸ピメリン酸やスベリン酸などのカルボン酸を、温和な反応条件下で、かつ高収率で得ることができる。
また、本発明方法は、有機溶媒、酸及び塩基は使用しないため、反応操作が簡便で反応終了後の溶媒除去操作等を不要とすると共に環境や人体への影響・毒性がきわめて小さく、環境に対する負荷を軽減する効果も有し、安全かつ簡便で効率的にカルボン酸を製造することができる。
したがって、本発明方法は工業的に多大な効果をもたらす発明ということができる。

Claims (3)

  1. 脂環式ケトン油性溶液と過酸化水素水溶液とを、クロム、モリブデン及びタングステンから選ばれた少なくとも一種の金属化合物(ただし、タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を除く)を含む触媒の存在下、不均一溶液系で反応させることを特徴とするカルボン酸の製造法。
  2. 脂環式ケトンが下記一般式(1)
    Figure 0003772209
    (式中、nは1〜18の整数を示し、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基またはアシロキシ基を示し、同一でも相異なっていてもよい。また、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R2とR3、R2とR4又はR3とR4は互いに結合して炭素環を形成していてもよく、更にこれらの環は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
    で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸の製造法。
  3. カルボン酸がグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸又はスベリン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカルボン酸の製造法。
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