JP3771558B2 - 土壌および地下水の原位置測定方法および原位置浄化方法並びに揮発性有機化合物回収器 - Google Patents

土壌および地下水の原位置測定方法および原位置浄化方法並びに揮発性有機化合物回収器 Download PDF

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本発明は、揮発性有機化合物(以下、VOCと称する)により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法およびこれを利用した原位置浄化方法並びにこれらに用いるVOC回収器に関する。
VOCにより汚染された土壌や地下水の浄化工法として、汚染土をバックホーやオールケーシング工法により掘削して地上で処理する方法と、原位置で処理する工法とがある。
一般に、地上での処理の場合は、土壌汚染の深度が浅い場合であり、原位置処理の場合は、土壌汚染の深度が深い場合が多い。原位置での処理法としては、例えば、図13に示すように、地盤改良技術を参考に、浄化剤(材)を地盤中に注入あるいは混合あるいは置換して使用することが多い。
例えば、金属系還元剤を利用した透過性浄化壁による対策法(例えば、特許文献1参照)、浄化剤(材)を圧送して浄化する方法(例えば、特許文献2参照)、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物質で汚染された地下水の浄化方法(例えば、特許文献3参照)、水素供与体を供給してVOCを微生物の作用で分解する方法(例えば、特許文献4参照)、オゾンや過マンガン酸カリウム、過酸化水素などの酸化剤に使用による方法(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
特許第3216014号公報 特開平11−77018号公報 特開2001−347280号公報 特開2000−107743号公報 特開2000−301172号公報 特開平11−242020号公報 特開2001−219156号公報 特許第3384453号公報 特許第3420949号公報 特公平7−86301号公報 特開2002−122588号公報 特許第3369111号公報 特開2003−185540号公報 特開平6−222054号公報 特開平9−206732号公報 特開2003−103249号公報 「CPT(コーン貫入試験)手法による土壌汚染調査手法の開発」土木学会誌、Vol.88 No.9 2003 pp50-pp52 「VOCにより汚染された土壌のMIPによる染調査手法」第38回地盤工学研究発表会(秋田)2003年7月 pp2277-pp2278
しかし、上記のような浄化剤(材)を原位置で混合するには、以下のような問題がある。
VOCによる汚染は、地盤中で複雑に分布しているため、事前調査に基づいて浄化剤(材)量を設定しても、事前調査では把握しきれなかった局部的に高濃度の部分(原液溜まり)があった場合には、浄化が不十分となる。
VOCによる汚染は、地盤中で複雑に分布しているため、事前調査で得られたVOC濃度の最大値を基にして浄化剤(材)量の設定が為されることも多く、不経済であった。
汚染が広範囲に分散している場合、全面にわたってボーリング調査を行った後に各種の浄化工事を行う必要があり、調査に拘わる費用が莫大となる。
以上のことから、従来の技術では地盤中の汚染物質の濃度に応じた浄化剤(材)量の確実なまた経済的な設定は困難である。そこで、浄化剤(材)を用いて浄化工事を確実にそして経済的に行うには、まず処理機を貫入させ、その際に深度方向のVOC濃度をあらかじめ測定した上で、原位置浄化処理を行う必要がある。
また、VOC濃度の測定に関しては、以下のような技術が知られている。
大気中のVOCの捕集管を用いた連続自動的測定に関する大気分析装置(例えば、特許文献6参照)があるが、混合処理と同時に測定を行うことは不可能である。
また、土壌もしくは地下水に含まれるVOCを空気もしくは水と共に取り出すポンプと、取り出された空気もしくは水に含まれるVOCを吸着もしくは分解させて空気もしくは水に含まれるVOCを減衰させるVOC処理手段と、このVOC処理手段の入口、出口側の少なくとも一方に配置され、空気もしくは水に含まれるVOCを測定するVOC測定装置と、このVOC測定装置の出力信号に基づいてポンプの回転を制御するVOC処理手段の監視システム(例えば、特許文献7参照)がある。しかし、粘性土の場合、土粒子に吸着したVOCが移動せず、正確な濃度の把握は困難である。
また、ガスコレクターと呼ばれるサンプルワイヤー内蔵のガラス管を用いる土壌の調査法(栗田工業株式会社のフィンガープリント法)があるが、表層でのガス調査用であり、深度方向も含めた正確な汚染物質の濃度把握は困難である。
また、80℃〜125℃に加熱できる50ボルトの交流電源ヒーターと、気体のみ通過できるメンブレンを取り付けたコーンにより、土壌中のVOCを吸引、気化して、窒素などの不活性のキャリアガスにより地上のガスクロマトグラフ分析装置へ運び、検知する計測機器(MIP)がある(例えば、非特許文献1,2参照)。
MIPによる調査方法は、地盤調査のコーン試験機や小型ボーリング機械のジオプローブの先端にMIPを取り付け、所定深度毎に測定する。このため、貫入力に限界があり、砂礫地盤では貫入不能になる。
一般には、地盤調査と浄化工事を連続して行うことはない。この調査によるVOC分布を整理した上で浄化工事を計画し、工事を行う。仮に、この調査に続いて原位置浄化工事を行うというサイクルとすれば、非効率な作業となる。
原位置調査機器のため、機器の大きさ(直径)にはおのずと限界がある。このため、吸入口は直径1cmと小さく、測定は局所的になる(2〜3cmの範囲)。
ところで、VOCで汚染された地盤の詳細なVOC濃度を調査するためには、汚染の平面エリアをグリッドに切って調査地点を定め、その地点でのボーリング、サンプリング、ガス濃度測定がなされる。この調査には、多大な費用がかかる。また、VOC汚染の特徴として、VOCの原液はその地盤を空間的に構成する各土要素の粒度組成や密度その他の土質性状に敏感に対応して決まる変化に富んだ移動経路をたどる。従って、上記の詳細な調査を行ったとしても、得られた結果と実際のVOCの濃度分布が異なることは決して珍しいことではない。
一方、浄化剤(材)を用いてVOCの汚染地盤を浄化する場合、VOCの濃度に応じた浄化剤(材)量を添加する。しかしながら、上記の事前の調査の空間的なVOC濃度の精度に限界があることから、実際には、例えば、調査におけるVOCの最大濃度に対する浄化剤(材)量を浄化対象エリア全域に適用すると、浄化剤(材)は不要な空間に無駄な浄化剤(材)を用いたことになる。また、調査に忠実に従った場合には実際にはVOCの高濃度の空間に低めの濃度を想定して必要量より少なめの浄化剤(材)量を添加してしまい、浄化の目標値をクリアーできないリスクが生じる。また、浄化剤(材)によっては高濃度(原液またはそれに近い濃度のもの)と低濃度のVOC汚染を浄化するのに浄化期間が大きく異なる場合があり、このため、例えば、高濃度の空間領域だけでもその存在を明らかにすることが望まれている。
なお、特許文献8には、VOC処理手段の入り口と出口にて測定をおこない、この結果に応じて土壌もしくは地下水に含まれるVOCを空気とともに取り出すポンプの出力を変化させるVOC処理手段の監視システムに関する発明が開示されている。しかし、特許文献8では、土中を掘削しながらVOCを測定することはできない。また、掘削と同時にこの方法を用いるとしても、VOCの多くは土粒子に吸着しているため、ポンプによって取り出せるVOCの量はごく僅かである。
また、特許文献9には、微生物、微生物の栄養やその活性化のためのインデューサの供給を目的とした土壌浄化装置および汚染土壌の修復方法に関する発明が開示されている。しかし、特許文献9では、微生物を用いたバイオレメディエーションの手法としては非常に優れたものであるが、全ての汚染物質を微生物で浄化できるわけではない。
また、特許文献10には、汚染領域に所定深さの井戸を複数穿設し、各井戸に検知センサーを設置し、各検知センサーの検知結果によって、地層単位毎の汚染状況を検知する地質汚染状況の検出方法および汚染物質の除去方法に関する発明が開示されている。しかし、特許文献10では、所定深さの井戸を複数穿設する必要があり、対象地盤全域の汚染状況を検知するには現実的でない。
また、特許文献11には、広範囲に渡る地下水の汚染具合をリアルタイムに測定するとともに、注意報や警報を発し汚染源に対する処置を促すVOC監視モニタリングシステムに関する発明が開示されている。しかし、特許文献11では、測定したデータをネットワークで通信することに主眼をおいており、測定・掘削などの工法との関係に関する開示がない。
また、特許文献12には、透過度等の透気性を評価する汚染地盤の浄化効果の評価法に関する発明が開示されている。しかし、特許文献12では、2本の井戸(土壌ガス吸引井と土壌ガス観測用井)を設置する必要がある。
また、特許文献13には、掘削した井戸の深度別に異なったガス導入管を用いる土壌ガス試料採取用機器ならびにこれを用いたガス試料採取方法およびガス分析方法に関する発明が開示されている。しかし、特許文献13では、井戸を設置する手間がかかる上に、測定対象となる範囲が狭く、広大な敷地の汚染の場合、現実性がない。
また、特許文献14には、一度掘削後に採取した土壌を簡易で測定する揮発性化合物を含有する汚染土壌の現場調査法および同現場調査用測定装置に関する発明が開示されている。しかし、特許文献14では、正確な値を出せるものの、汚染状況に応じた対策を行うには手間がかかりすぎるという問題がある。
また、特許文献15には、浄化剤(材)を原位置に混合し、未分解の汚染物質を反応熱により気化させる土壌浄化方法および装置に関する発明が開示されている。しかし、特許文献15では、もとの汚染濃度を測定することを目的としたものではないため、浄化剤(材)の投入量が不明である。また、曝気井が混合装置と別に設けられており、その作成に費用がかかるという問題がある。
また、特許文献16には、反応槽においてVOCを効率よく除去するためにマイクロ波が使用されている。しかし、特許文献16では、汚染された土壌の浄化のためにマイクロ波を使用するものであり、汚染土壌中のVOC濃度を測定するという技術はない。
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、浄化に先立ち、混合処理機を用いて地中のVOC濃度を地上で測定する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、この測定方法を利用した土壌および地下水を浄化する方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、VOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において混合処理機に備えたVOC回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発したVOCのガスをVOC回収器に取り込み、ガスの濃度を測定することを特徴とするVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法である。
請求項2に係る発明は、VOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において混合処理機に備えたVOC回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発したVOCのガスをVOC回収器に取り込み、ガスを地上側に吸引し、ガスの濃度を測定することを特徴とするVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法である。
請求項3に係る発明は、マイクロ波の照射は、少なくとも混合攪拌機の貫入時または引き上げ時に行われることを特徴とする請求項1または請求項2記載のVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法である。
請求項4に係る発明は、VOC回収器は、混合処理機の非回転部に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項記載のVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を行った後、次いで、測定に基づいて混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とするVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法である。
請求項6に係る発明は、VOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において混合処理機に備えたVOC回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発したVOCのガスをVOC回収器に取り込み、ガスの濃度を測定し、次いで、攪拌混合機の引き上げ時に測定に基づいて混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とするVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法である。
請求項7に係る発明は、VOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において混合処理機に備えたVOC回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発したVOCのガスをVOC回収器に取り込み、地上側にガスを吸引し、ガスの濃度を測定し、次いで、攪拌混合機の引き上げ時に測定に基づいて混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とするVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法である。
請求項8に係る発明は、マイクロ波照射面にスリットを設けた容器本体と、この容器本体内に設けた透過シートと、この透過シートを介して設けたガス回収室と、このガス回収室に設けたマイクロ波発射部とを備えたことを特徴とするVOC回収器である。
請求項9に係る発明は、マイクロ波照射面に複数のゲートを設けた容器本体と、この容器本体内に設けた前記複数のゲートの開閉機構と、この開閉機構を介して設けたガス回収室と、このガス回収室に設けたマイクロ波発射部とを備えたことを特徴とするVOC回収器である。
請求項10に係る発明は、ガス回収室は、吸気回路および送気回路を介して地上側の測定器に連絡していることを特徴とする請求項8ないし請求項9のいずれか1項記載のVOC回収器である。
請求項11に係る発明は、ガス回収室は、ガスの濃度を測定する装置を備え、その結果を地上側へ連絡することを特徴とする請求項10記載のVOC回収器である。
本発明においては、多様な形態で土中に存在するVOCで汚染された地盤を浄化剤(材)を用いて混合処理機によって浄化する際に、浄化に先立ち、地盤中でVOC回収部からマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発したVOCのガスをVOC回収部に取り込み、VOC濃度を測定することができる。
また、本発明においては、混合処理機を用いて、浄化剤(材)を原位置でVOC汚染地盤に添加、混合する場合、まず、施工するその杭の対象領域(つまり、処理機の1回当たりの処理面積×全深度)にわたって、VOC濃度を測定した上で浄化処理を行うことができる。
本発明によれば、各種の混合処理機を用いた原位置VOCの対策工事において、濃度測定を行いつつ、施工することによって、以下のような効果が期待できる。
汚染濃度に対応した浄化剤(材)を添加するために、汚染濃度の予測違いによる浄化の目標値をクリアできないリスクは生じない。
無駄な浄化剤(材)を使うことなく適切な添加量で施工ができることから材料費のコストダウンとなる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
本実施形態は、図1〜図5に示すように、地盤改良工事の深層混合処理工法あるいは山留め工事のソイル柱列工法において、深層混合処理機を用いて金属系還元剤または鉄粉を汚染土壌あるいは地下水に原位置で添加、混合してVOCを浄化する際に、金属系還元剤または鉄粉を添加施工する前にVOC濃度を予め測定する方法である(請求項1,2,3,4に対応する)。なお、対象とする深層混合処理機は、地盤改良で用いるスラリー系処理機、粉体系処理機、山留め工事で用いるソイル柱列工法のスラリー系処理機がある。
次に、本実施形態に用いる深層混合処理機について説明する。
本実施形態に用いる深層混合処理機は、ベースマシン1と、ベースマシン1によって垂直に立てられたリーダー2およびガイドパイプ(図示せず)と、リーダー2およびガイドパイプ(図示せず)に沿って昇降する電動機ユニット3と、電動機ユニット3によって回転駆動される2本の長い攪拌軸4と、2本の攪拌軸4間に軸受けを介して固定した回収管固定部材5に取り付けた回収器6と、2本の攪拌軸4の先端部に設けた攪拌翼7とを有する。回収器6は、回収管固定部材5を介して固定されているため、回転しない。攪拌翼7は、掘削貫入の速度および施工深度は、リーダー2の下端部に設置した速度計、深度計で計測し、その計測値はA/D変換部を経て自動注入制御装置の中央制御装置(CPU)へ入力される。
回収器6は、底付きの箱形形状の回収器本体6aと、この回収器本体6a内面に貼着した透過シート6bと、この透過シート6bを介して設けたガス回収室6cと、このガス回収室6cに設けたマイクロ波発射部6dとを備えている(請求項8,10に対応する)。回収器本体6aの一側面には、マイクロ波照射面6eが形成されている。マイクロ波照射面6eは、マイクロ波を照射するための複数のスリット6fを設けている。ガス回収室6cは、吸気回路6gおよび送気回路6hを介して地上側のPID式のVOCガス連続測定装置8、送気ポンプ11および吸引ポンプ9に連絡している。マイクロ波発射部6dは、ガス回収室6cに設けた信号線6iを介して地上側の制御器12に連絡している。なお、透過シート6bは、水は通さないが気体は通すことができるマイクロ波透過型のシートであれば良く、特に限定するものではない。また、回収器本体6a内のマイクロ波発射部6dとガス回収室6cとの隔壁およびマイクロ波の照射面(土と接触する面)は耐熱ガラスや耐熱プラスティック、セラミックなどのマイクロ波を透過させる材料とする。
回収器6は、マイクロ波発射部6dから照射されたマイクロ波をスリット6fを介して回収器6の周囲に位置する土に対して照射し、この照射によって揮発した土中のVOCガスを吸引ポンプ11による吸引によりガス回収室6c側へ吸引し、透過シート6bを介してガス回収室6c内に導き、さらに吸気回路6gを介して地上側のPID式のVOCガス連続測定装置8へ導くことができる。
PID式のVOCガス連続測定装置8は、吸気回路6gを介して送られるガスを測定するように構成されている。PID式のVOCガス連続測定装置8は、小型で速い応答性という特徴を生かしてポータブルVOCモニタおよび簡易な連続測定装置に展開されている既存技術である。この既存技術としては、例えば、「横河電機株式会社 連続VOCモニタ VM500」が挙げられる。PID式のVOCガス連続測定装置8の測定可能な条件は、流量:200〜300mL/min、温度:5〜40℃、圧力:大気圧である。検出装置には回収用配管から空気を引抜いて行う。また、簡易VOC測定用のセンサー(「例えば新コスモス電機株式会社 ポータブル型TVOC検知器XP−339V」)などを回収器6内に設置することも可能である。PID式のVOCガス連続測定装置8の後段には、汚染物質の濃度を測定されたガスを処理する処理槽10が設けてある。
次に、本実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を説明する。
先ず、図1、図2、図4に示すように、攪拌翼7によって地盤を回転掘削しながら、または掘削土を攪拌しながら、回収器6からマイクロ波を土中に照射する。
同時に、回収器6に連絡する送気ポンプ10および吸引ポンプ11を作動する。これにより、マイクロ波の照射に伴って生成するVOCが混入した気体を原位置で移動させ、回収器6のスリット6gを介してガス回収室6c内に回収し、このガス回収室6cに連絡する吸気回路6gを介して地上側のPID式のVOCガス連続測定装置8へ導き、その濃度を測定する。ここで、測定された値は、例えば、図5に示すように、攪拌翼7の掘削貫入深度とVOC濃度との関係図として求められる。
この操作は、浄化杭1本1本に行うのが原則であるが、当初から明らかに高濃度のVOCが存在しないことがわかっている場合には、複数の浄化杭に対して一本の測定とすることもある。
ここで、回収器6から照射されるマイクロ波により、汚染領域近傍の土粒子に吸着しているVOCが土粒子から離れやすくなり、また、汚染領域近傍に空洞部分を形成し、汚染物質の一部を気体状にすることが可能となる。そして、移動性の高まったVOCガスは、回収器6を介して吸引されることとなる。
この時、照射されるマイクロ波は、VOC汚染土壌に多く存在し、土粒子に吸着しやすく、生分解性の低いcis−DCEの沸点近傍まで土壌あるいは地下水を加熱できる強度とすることが望ましい。VOC汚染の原因となる物質の沸点は、例えば、テトラクロロエエチレンが121℃、トリクロロエチレンが86.7〜9℃、cis−1,2ジクロロエチレンが60.3℃である。マイクロ波の照射による加熱により揮発と土粒子からの汚染物質の脱離を促進するためには、少なくとも雰囲気温度を40℃以上にする必要がある。
一方、VOC濃度の測定に際し、攪拌翼7を停止せず、攪拌翼7をゆっくり貫入または引き抜きをしながら判定する方式と、攪拌翼7を0.5〜2mおきに現位置で停止または回収しながら汚染状況を判定する方式とが選択できる。
また、地上の吸引ポンプ11で吸引されたVOCガスは、曝気式の水処理装置あるいは活性炭吸着式の水処理、排ガス装置などのVOC処理室10によって処理される。
以上のように、本実施形態によれば、攪拌翼7の貫入時、または引き抜き時または停止した状態で、攪拌翼7に非回転状態に取り付けた回収器6からマイクロ波を土中に照射し、VOCを移動性の高まったガスを回収器6により吸引し、回収器6に連絡するVOCガス連続測定装置8により、VOC濃度を測定するので、対象汚染土壌のVOC濃度を確実に把握することが可能となる。
しかも、回収器6は、攪拌軸4に対して回転しないので、攪拌軸4の作動に影響を受けることなく、生成されたVOCガスを確実に捕捉することが可能となる。加えて、回収器6が攪拌軸4とともに移動するので、VOCの汚染領域を的確に把握することができる。
(第二実施形態)
本実施形態は、第一実施形態におけるVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を用いたVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法である(請求項5,6に対応する)。
本実施形態では、図6、図7、図8に示すように、第一実施形態におけるVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を用いて、攪拌翼7の貫入時にVOC濃度を測定する。そして、攪拌翼7の引き抜き時に、測定結果に基づいて浄化剤(材)(例えば、金属系還元剤または鉄粉、アルミニウム粉末、消石灰、生石灰、有機炭素系、過酸化水素水や過マンガン酸カリなどの酸化剤、増粘材(剤)、混和材(材)、固化材などであり、これら単独またはこれらを組み合わせ、粉体またはスラリーとしてものである。)と薬液などとを混ぜたスラリー状の浄化剤(材)を浄化剤(材)供給プラント13で作り、これをスラリーポンプ14でホース15を介して攪拌翼7へ送り、攪拌翼7の先端部からスラリー状の浄化剤(材)を掘削土中に注入して攪拌混合処理し、原位置で汚染土壌の浄化、改良を行なう。
本実施形態において、攪拌翼7の掘削貫入の速度および施工深度は、リーダー2の下端部に設置した速度計、深度計で計測し、その計測値はA/D変換部を経て自動注入制御装置の中央制御装置(CPU)へ入力される。浄化剤(材)は浄化剤(材)供給プラント13で作り、これをスラリーポンプ14で攪拌翼7へ送り注入する。浄化剤(材)の投入量は、図7に示すように、汚染物質の測定時に測定されたガス中の汚染物質の濃度に基づき、決められる。その輸送管の途中に設置した流量計で浄化剤(材)の注入量を計測し、その計測値はやはりA/D変換部を経て自動注入制御装置の中央制御装置へ入力される。中央制御装置は、前記の計測値と、汚染物質の測定結果により予め設定された決められている浄化剤(材)の注入量とに基づいて、結果を自動注入制御操作盤へ送り、測定結果と照らし合わせた上で、スラリーポンプ14の吐出量が制御される。なお、ここでいう自動注入制御装置や中央制御装置は一般的に用いられているものである。
以上のように、本実施形態によれば、攪拌翼7の貫入時にVOC濃度を測定し、攪拌翼7の引き抜き時に測定結果、高濃度のVOCが確認された深度で浄化剤(材)を噴射することができるので、掘削する原位置におけるVOC濃度を的確に把握し、その結果に応じて浄化剤(材)を含む浄化剤(材)を噴射することができる。
(第三実施形態)
本実施形態は、第一実施形態におけるVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を用いたVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法である(請求項5,7に対応する)。
本実施形態では、図9に示すように、攪拌翼7の一度目の往復では回収器6からマイクロ波を照射し、汚染濃度を測定しながら地盤を攪拌混合し、一度目の往復で得られた測定結果に基づいて、二度目の往復で浄化剤(材)を注入、攪拌混合する。
ここで、汚染物質の濃度と浄化剤(材)の使用量については、実汚染土壌を用いた事前試験を元に決定する。汚染物質の一部が移動している可能性を考慮し、安全率をふまえた量を注入、攪拌混合する。
以上のように、本実施形態によれば、VOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法と、これに基づく測定結果に従ったVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法とを、それぞれ分離して行えるので、VOCで汚染された土壌を確実に浄化することが可能となる。
(第四実施形態)
本実施形態は、開閉機構を設けた回収器6Aを用いた点で、第一実施形態ないし第三実施形態とは相違する。
回収器6Aは、図10ないし図12に示すように、底付きの箱形形状の回収器本体60aと、複数のゲート60cを有し、回収器本体60aの一側面に設けたマイクロ波照射面60bと、回収器本体60aの内側に位置し、各ゲート60cをそれぞれ栓60eにより開閉する開閉機構60dと、この開閉機構60dを介して設けたガス回収室60fと、このガス回収室60fに設けたマイクロ波発射部60gとを備えている(請求項9,10に対応する)。なお、ガス回収室60fとマイクロ波発射部60gとの隔壁およびマイクロ波照射面60bの土と接触する面側は、耐熱ガラスや耐熱プラスティック、セラミックなどのマイクロウエーブを透過させる材料とする。
開閉機構60dは、各ゲート60cと、各ゲート60cをそれぞれ開閉する栓60eと、各栓60eの落下を防止するストッパー60hと、ガス回収室60fから成る圧力室60iと、ガス回収室60fに連絡する送気回路60jおよび送気回路60jに連絡する送気ポンプ11から成る加圧手段60kと、ガス回収室60fに連絡する吸気回路60lおよび吸気回路60lに連絡する吸引ポンプ9から成る吸引手段60mにより構成されている。
開閉機構60dは、所定の深度に達するまでは、加圧手段60kによって圧力室60iの圧力を高めておく。したがって、各栓60eが各ゲート60c内に嵌り込み、各ゲート60cを閉じた状態にし、ガス回収室60f内へ土の侵入を防ぐ。そして、深層混合処理機が所定の深度に達すると、加圧手段60kを停止し、吸引手段60mを駆動して、加圧室60iの圧力を減圧し、各ゲート60c内に嵌り込んでいる各栓60eをストッパー60h方向へ引き込み、その後、マイクロ波発射部60gから照射されるマイクロ波を各ゲート60cから土に向かって照射できるようにする。そして、マイクロ波照射により土からVOCガスを揮発させる。地上の吸引ポンプ9での吸引による気体の流れにより、各ゲート60cは開き揮発したVOCガスは各ゲート60cからガス回収室60f内に入り、さらに地上のPID式のVOCガス連続測定装置8に向けて移動する。
なお、開閉機構60dの動作は、加圧手段60kおよび吸引手段60mを交互に操作することによって、任意の深度において行うことが可能となる。また、マイクロ波発射部60gは、上記各実施形態と同様に、信号線60nを介して地上側の制御器12に連絡している。
本実施形態においても、第一実施形態ないし第三実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記各実施形態において、回収器6,6Aでは、回収したVOCガスを地上側へ送る方法を取ったが、ガス回収室6c,60fにガス濃度を測定する機器を設け、その結果を地上側へ連絡するようにしても良い(請求項11に対応する)。
本発明の第一実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を示す説明図である。 本発明の第一実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法に用いる深層混合処理機を示す説明図である。 図2における回収器の拡大図である。 図3における回収器の断面図である。 本発明の第一実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置測定方法によって得られたVOC濃度と攪拌翼の深度との関係を示す図である。 本発明の第二実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法を示す説明図である。 本発明の第二実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法を示す説明図である。 本発明の第二実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法を示す説明図である。 本発明の第三実施形態に係るVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法を示す説明図である。 本発明の第四実施形態に係る回収器を示す拡大図である。 図10の回収器の作用を説明図である。 図11の要部を示す拡大図である。 従来の深層混合処理機を用いたVOCにより汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法を示す説明図である。
符号の説明
1 ベースマシン
2 リーダー
3 電動機ユニット
4 攪拌軸
5 回収管固定部材(軸受け)
6,6A 回収器
7 攪拌翼
8 VOCガス連続測定装置
9 吸引ポンプ
6a,60a 回収器本体
6b 透過シート
6c,60f ガス回収室
6d,60g マイクロ波発射部
6e,60b マイクロ波照射面
6f スリット
6g,60l 吸気回路
6h,60j 送気回路
6i 信号線
10 処理槽
11 送気ポンプ
12 制御器
60c ゲート
60d 開閉機構
60e 栓
60h ストッパー
60i 圧力室
60k 加圧手段
60m 吸引手段

Claims (11)

  1. 揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において前記混合処理機に備えた揮発性有機化合物回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発した揮発性有機化合物のガスを前記揮発性有機化合物回収器に取り込み、前記ガスの濃度を測定することを特徴とする揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法。
  2. 揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において前記混合処理機に備えた揮発性有機化合物回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発した揮発性有機化合物のガスを前記揮発性有機化合物回収器に取り込み、前記ガスを地上側に吸引し、前記ガスの濃度を測定することを特徴とする揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法。
  3. 前記マイクロ波の照射は、少なくとも前記混合攪拌機の貫入時または引き上げ時に行われることを特徴とする請求項1または請求項2記載の揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法。
  4. 前記揮発性有機化合物回収器は、前記混合処理機の非回転部に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項記載の揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法。
  5. 請求項1ないし請求項4の何れか1項記載の揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置測定方法を行った後、次いで、前記測定に基づいて前記混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とする揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法。
  6. 揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において前記混合処理機に備えた揮発性有機化合物回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発した揮発性有機化合物のガスを前記揮発性有機化合物回収器に取り込み、前記ガスの濃度を測定し、次いで、前記攪拌混合機の引き上げ時に前記測定に基づいて前記混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とする揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法。
  7. 揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化に先立ち、浄化剤(材)を土中に攪拌混合する混合処理機を土中に貫入し、所定の深度において前記混合処理機に備えた揮発性有機化合物回収器から土にマイクロ波を照射し、照射面の土から揮発した揮発性有機化合物のガスを前記揮発性有機化合物回収器に取り込み、地上側に前記ガスを吸引し、前記ガスの濃度を測定し、次いで、前記攪拌混合機の引き上げ時に前記測定に基づいて前記混合処理機により所定量の浄化剤(材)を吐出し、攪拌混合することを特徴とする揮発性有機化合物により汚染された土壌および地下水の原位置浄化方法。
  8. マイクロ波照射面にスリットを設けた容器本体と、この容器本体内に設けた透過シートと、この透過シートを介して設けたガス回収室と、このガス回収室に設けたマイクロ波発射部とを備えたことを特徴とする揮発性有機化合物回収器。
  9. マイクロ波照射面に複数のゲートを設けた容器本体と、この容器本体内に設けた前記複数のゲートの開閉機構と、この開閉機構を介して設けたガス回収室と、このガス回収室に設けたマイクロ波発射部とを備えたことを特徴とする揮発性有機化合物回収器。
  10. 前記ガス回収室は、吸気回路および送気回路を介して地上側の測定器に連絡していることを特徴とする請求項8ないし請求項9のいずれか1項記載の揮発性有機化合物回収器。
  11. 前記ガス回収室は、前記ガスの濃度を測定する装置を備え、その結果を地上側へ連絡することを特徴とする請求項9記載の揮発性有機化合物回収器。
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